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特開2022-135068プロピレン系樹脂組成物およびその用途
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  • 特開-プロピレン系樹脂組成物およびその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135068
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20220908BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220908BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C08L23/14
C08L23/08
C08L53/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034652
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄也
(72)【発明者】
【氏名】金山 靖男
(72)【発明者】
【氏名】上北 弘幸
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB05X
4J002BB15W
4J002BP02W
4J002DE236
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002EC056
4J002EG046
4J002EG076
4J002EW046
4J002FD206
4J002GC00
4J002GG01
4J002GL00
4J002GQ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リブ近傍の白化が抑制され、剛性、耐衝撃性のバランスに優れた成形体が得られるプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記A1~A5を満たすプロピレン系重合体Aを91~96質量部及び下記B1,B2を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体Bを4~9部を含む組成物。
(A1)JISK7210準拠、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定したMFRAが1~30g/10分
(A2)プロピレン単独重合体セグメントとプロピレン・エチレン共重合体セグメントを含む
(A3)室温n-デカン不溶部(Dinsol)86~95質量%、室温n-デカン可溶部(Dsol)5~14質量%を含む
(A4)Dsolのエチレン単位含有量が25~45質量%
(A5)Dsolの135℃デカリン中極限粘度[η]が2.5~4.0dL/g
(B1)測定温度190℃のMFRBが1~30g/10分
(B2)密度が890~930kg/m3
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(A1)~(A5)を満たすプロピレン系重合体(A)を91~96質量部、および下記要件(B1)および(B2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を4~9質量部〔ただし、プロピレン系重合体(A)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計量を100質量部とする。〕を含むことを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
(A1)JIS K 7210に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFRA)が、1~30g/10分である。
(A2)プロピレンを単独で重合させてなるプロピレン単独重合体セグメントと、プロピレンとエチレンを共重合させてなるプロピレン・エチレン共重合体セグメントを含む。
(A3)室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)を86~95質量%、および室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)を5~14質量%〔ただし、(Dinsol)と(Dsol)の合計量を100質量%とする。〕を含む。
(A4)室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)のエチレンに由来する構成単位の含有量が25質量%以上、45質量%未満である。
(A5)室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)の135℃デカリン中における極限粘度[ηsol]が2.5~4.0dL/gである。
(B1)JIS K 7210に準拠して、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFRB)が、1g/10分以上、30g/10分未満である。
(B2)密度が890~930kg/m3である。
【請求項2】
造核剤を、プロピレン系樹脂組成物:100質量部に対して0.03~0.4質量部を含むことを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物を射出成形してなる成形体。
【請求項4】
成形体が、リブ形状を有する請求項3に記載の成形体。
【請求項5】
成形体が、コンテナまたはパレットである請求項3または4に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、成形収縮による白化が抑制された成形体を得るに好適なプロピレン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン(オレフィン系重合体)は、生産に係るエネルギーが小さく、軽量かつリサイクル性にも優れることから、各産業界における、循環型社会を形成するための3R(Reduce、Reuse、Recycle)への取り組みのなかで、更に注目が高まっている。ポリオレフィンは、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、家電製品、機械部品、電気部品、自動車部品など、種々の分野で利用されている。
【0003】
オレフィン系重合体の中でも、ポリプロピレンは剛性、耐熱性に優れるが、ポリエチレンに比べると、耐寒性、耐衝撃性に劣ることから、ポリプロピレンの耐寒性、耐衝撃性を改良する方法が多々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリプロピレンとして、230℃におけるメルトフローレートが2~80g/10分、ホモ部立体規則性が0.960以上、且つ全エチレン含有量が2~12重量%であるエチレン-プロピレンブロック共重合体を用い、当該ブロック共重合体60~99重量部と、190℃におけるメルトフローレートが1~60g/10分、密度が0.860~0.940g/cm3であるポリエチレン1~40重量部とを混合することにより、食品分野、医療分野のキャップなどの小型の成形体の耐衝撃性、落下時に発生する白化を低減できることが示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ポリプロピレンとして、230℃におけるメルトフローレートが2~20(g/10分)でホモ部立体規則性が0.960以上で且つ全エチレン含有量が6~12(重量%)であるエチレン-プロピレンブロック共重合体を用い、当該ブロック共重合体85~95重量部と、190℃におけるメルトフローレートが30~60(g/10分)、密度0.957~0.966(g/cm3)である高密度ポリエチレン5~15重量部とを混合することにより、飲料キャップなどの小型の成形体の耐衝撃性が改良されることが示されている。
【0006】
一方、コンテナやパレットのような大型の成形体は、その使用用途から、剛性や耐衝撃性といった物理的強度が高いレベルで要求されるため、リブ形状を持つ成形体であることが多い。ところが、リブ形状を持つ成形体は、成形時の成形体の収縮により生じる応力が起因となって、成形体の一部が白化する場合があることが分った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-255319号公報
【特許文献2】特開2004-182955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、リブ近傍での成形収縮により生じる応力が起因となって発生する白化(ヒケ白化)が抑制され、且つ、剛性、耐衝撃性のバランスに優れた成形体を得るに好適な、プロピレン系樹脂組成物、および当該組成物からなるコンテナやパレット等の大型成形体を得ることにある。
【0009】
さらに、本発明は、プロピレン系樹脂組成物の組成と配合するエチレン・α-オレフィン共重合体成分の最適化を図ることで、ヒケ白化の抑制を達成すると共に、コンテナやパレット等の大型成形体に要求される剛性と耐衝撃性のバランスの目標を達成できるプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
また、本発明はこのプロピレン系樹脂組成物を用いたコンテナやパレット等の大型成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記要件(A1)~(A5)を満たすプロピレン系重合体(A)を91~96質量部、および下記要件(B1)および(B2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を4~9質量部〔ただし、プロピレン系重合体(A)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計量を100質量部とする。〕を含むことを特徴とするプロピレン系樹脂組成物に係る。
(A1)JIS K 7210に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFRA)が、1~30g/10分である。
(A2)プロピレンを単独で重合させてなるプロピレン単独重合体セグメントと、プロピレンとエチレンを共重合させてなるプロピレン・エチレン共重合体セグメントを含む。
(A3)室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)を86~95質量%、および室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)を5~14質量%〔ただし、(Dinsol)と(Dsol)の合計量を100質量%とする。〕を含む。
(A4)室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)のエチレンに由来する構成単位の含有量が25質量%以上、45質量%未満である。
(A5)室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)の135℃デカリン中における極限粘度[η]が2.5~4.0dL/gである。
(B1)JIS K 7210に準拠して、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFRB)が、1g/10分以上、30g/10分未満である。
(B2)密度が890~930kg/m3である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体は、リブ近傍での成形収縮により生じる応力が起因となって発生する白化(ヒケ白化)が抑制され、且つ、剛性、耐衝撃性のバランスに優れた成形体である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例で用いた成形体の平面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<プロピレン系重合体(A)>
本発明のプロピレン系樹脂組成物を構成する成分の一つであるプロピレン系重合体(A)は、下記要件(A1)~(A5)を満たすプロピレン系重合体である。
【0015】
〔要件(A1)〕
JIS K 7210に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFRA)が、1~30g/10分、好ましくは1~20g/10分、より好ましくは1~15g/10分である。
MFRAが上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物を射出成形した際にショートショットが生じる虞がある。またMFRAが上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体の機械的強度が低下する虞がある。
【0016】
〔要件(A2)〕
プロピレンを単独で重合させてなるプロピレン単独重合体セグメントと、プロピレンとエチレンを共重合させてなるプロピレン・エチレン共重合体セグメントを含む。
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体セグメントとプロピレン・エチレン共重合体セグメントを含むことにより、プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体は、大型成形品に要求される剛性と耐衝撃性のバランスに優れる。
【0017】
〔要件(A3)〕
室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)を86~95質量%、好ましくは86~92質量%、より好ましくは86~90質量%、および室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)を5~14質量%、好ましくは8~14質量%、より好ましくは10~14質量%〔ただし、(Dinsol)と(Dsol)の合計量を100質量%とする。〕を含む。
【0018】
プロピレン系重合体(A)において、n-デカンに不溶な部分(Dinsol)とは、通常、主にプロピレン由来の構成単位からなる成分であり、結晶性を有し、高い剛性を示すと考えられる。n-デカンに可溶な部分(Dsol)とは、通常、主にプロピレンおよびエチレン由来の構成単位からなる成分である。Dsol成分は結晶性を示さないか、もしくは結晶性が低い成分であり、ガラス転移温度が低く、耐衝撃性、およびエチレン・α-オレフィン共重合体(B)との相溶性を発現すると考えられる。これはゴム成分と言われることもある。プロピレン系重合体(A)は、通常、n-デカンに不溶な部分(Dinsol)およびn-デカンに可溶な部分(Dsol)を有するプロピレン系共重合体(いわゆるブロック共重合体)である。
【0019】
solの割合が上記範囲を下回り、Dinsolの割合が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性が低下し、また、ヒケ白化の改良効果が劣る傾向にある。これはDsolの割合が減ることにより衝撃に対しての吸収エネルギーが低下し、また成形収縮時に生じる応力を分散し、吸収する効果が低くなるためと考えられる。
【0020】
一方、Dinsolの割合が上記範囲を下回り、Dsolの割合が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物の高速での成形性が劣る場合があり、またプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体の剛性が低下する傾向にある。これは剛性に寄与するDinsolの成分が減少するためだと考えられる。
前記Dinsolの割合および前記Dsolの割合は、後述する実施例で採用した方法により測定した場合のものである。
【0021】
〔要件(A4)〕
室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)のエチレンに由来する構成単位の含有量が25質量%以上、45質量%未満、好ましくは27~43質量%、より好ましくは30~40質量%である。なお、質量%は、Dsolにおけるエチレンに由来する構成単位の含有量とプロピレンに由来する構成単位の含有量の合計量を100質量%とする量である。
【0022】
室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)のエチレンに由来する構成単位の含有量はプロピレン単独重合体セグメントとプロピレン・エチレン共重合体セグメントの相溶性に寄与する。
【0023】
エチレンに由来する構成単位の含有量が上記範囲を下回るとプロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の剛性が劣る傾向がある。これはプロピレン単独重合体セグメントとプロピレン・エチレン共重合体セグメントの相溶性が高くなり、剛性に寄与するプロピレン単独重合体セグメントにプロピレン・エチレン共重合体セグメントに溶け込みが生じ、結晶性が低下するためと考えられる。一方、エチレンに由来する構成単位の含有量が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体はブツが発生しやすくなり、耐衝撃性の低下や外観不良が発生しやすい傾向がある。これはプロピレン単独重合体セグメントとプロピレン・エチレン共重合体セグメントの相溶性が低くなり、分散不良を起こすためと考えられる。
【0024】
〔要件(A5)〕
室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)の135℃デカリン中における極限粘度[ηsol]が2.5~4.0dL/g、好ましくは2.7~3.8dL/g、より好ましくは2.9~3.6dL/gである。
前記極限粘度[ηsol]の値は、後述する実施例で採用した方法により測定した場合のものである。
【0025】
極限粘度[ηsol]が上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐衝撃性が劣る傾向がある。これはDsolの分子量が低下し、衝撃吸収エネルギーが低くなる為と考えられる。また極限粘度[ηsol]が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体はブツが発生しやすくなり、耐衝撃性の低下や外観不良が発生しやすい傾向がある。これはDsolの分子量が高く、分散不良を起こすためと考えられる。
【0026】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、その製造方法に特に限定はないが、通常は、メタロセン化合物含有触媒存在下、またはチーグラーナッタ触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
【0027】
なお、本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、チーグラーナッタ触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られることが好ましい。分子量分布が広く成形性が良好な樹脂が得られ易い為である。
【0028】
(メタロセン化合物含有触媒)
前記メタロセン化合物含有触媒としては、メタロセン化合物、並びに、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、さらに必要に応じて粒子状担体とからなるメタロセン触媒を挙げることができ、好ましくはアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造等の立体規則性重合をすることのできるメタロセン触媒を挙げることができる。前記メタロセン化合物の中では、国際公開第01/27124号に例示されている架橋性メタロセン化合物、国際公開第2010/74001号の[0068]~[0076]に記載のメタロセン化合物などが好ましい。また、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、さらには必要に応じて用いられる粒子状担体としては、国際公開第01/27124号、特開平11-315109号公報等に開示された化合物を制限無く使用することができる。
【0029】
(チーグラーナッタ触媒)
プロピレン系重合体(A)は、高立体規則性チーグラーナッタ触媒を用いることにより製造することができる。前記高立体規則性チーグラーナッタ触媒としては、公知の種々の触媒が使用できる。たとえば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、(b)有機金属化合物触媒成分と、(c)シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する有機ケイ素化合物触媒成分とからなる触媒を用いることができ、この触媒成分は公知の方法、たとえば国際公開第2010/74001号の[0078]~[0094]に記載の方法で製造することができる。
【0030】
上記のような固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、および有機ケイ素化合物触媒成分(c)からなる触媒を用いてプロピレンの重合を行うに際して、予め予備重合を行うこともできる。予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、および必要に応じて有機ケイ素化合物触媒成分(c)の存在下に、オレフィンを重合させる。
【0031】
予備重合するオレフィンとしては、炭素数2~8のα-オレフィンを用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテンなどの直鎖状のオレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの分岐構造を有するオレフィン等を用いることができる。これらは共重合させてもよい。
【0032】
予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)1g当り0.1~1000g程度、好ましくは0.3~500g程度の重合体が生成するように行うことが望ましい。予備重合量が多すぎると、本重合における(共)重合体の生成効率が低下することがある。予備重合では、本重合における系内の触媒濃度よりもかなり高い濃度で触媒を用いることができる。
【0033】
本重合の際には、固体状チタン触媒成分(a)(または予備重合触媒)を重合容積1L当りチタン原子に換算して約0.0001~50ミリモル、好ましくは約0.001~10ミリモルの量で用いることが望ましい。有機金属化合物触媒成分(b)は、金属原子の量に換算して、重合系中のチタン原子1モルに対して約1~2000モル、好ましくは約2~500モル程度の量で用いることが望ましい。有機ケイ素化合物触媒成分(c)は、有機金属化合物触媒成分(b)の金属原子1モル当り約0.001~50モル、好ましくは約0.01~20モル程度の量で用いることが望ましい。
【0034】
〈プロピレン系重合体(A)の製造方法〉
前記プロピレン系重合体(A)は、前述のメタロセン化合物含有触媒存在下、またはチーグラーナッタ触媒存在下でプロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
【0035】
連続多段重合により前記プロピレン系重合体(A)を製造する場合、各段においてはプロピレンを単独重合させるか、またはプロピレンとエチレンとを共重合させる。
重合は、気相重合法あるいは溶液重合法、懸濁重合法などの液相重合法いずれで行ってもよく、各段を別々の方法で行ってもよい。また連続式、半連続式のいずれの方式で行ってもよく、各段を複数の重合器たとえば2~10器の重合器に分けて行ってもよい。工業的には連続式の方法で重合することが最も好ましく、この場合2段目以降の重合を2器以上の重合器に分けて行うことが好ましく、これによりゲルの発生を抑制することができる。
【0036】
重合媒体として、不活性炭化水素類を用いてもよく、また液状のプロピレンを重合媒体としてもよい。また各段の重合条件は、重合温度が約-50~+200℃、好ましくは約20~100℃の範囲で、また重合圧力が常圧~10MPa(ゲージ圧)、好ましくは約0.2~5MPa(ゲージ圧)の範囲内で適宜選択される。
【0037】
プロピレン系重合体(A)は、たとえば、2つ以上の重合器を直列につなげた反応装置で、次の二つの工程([工程1]および[工程2])を連続的に実施することによって得られる。プロピレン系重合体(A)の製造の際には、二つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用いそれぞれの重合装置で[工程1]を行ってもよく、また二つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用いそれぞれの重合装置で[工程2]を行ってもよい。また、[工程1]と[工程2]とを別々に行い、それぞれで得られた重合体を単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混練し、プロピレン系重合体(A)を製造してもよい。
【0038】
以下、[工程1]と[工程2]とを連続して実施することによりプロピレン系重合体(A)を製造する方法について記載する。
【0039】
[工程1]は、重合温度0~100℃、重合圧力常圧~5MPaゲージ圧で、プロピレンを重合させる工程であって、Dinsolの主成分となるプロピレン系重合体を製造する工程である。剛性に優れる成形体を得るにはプロピレンのみを重合させることが好ましく、また、必要に応じて水素ガスに代表される連鎖移動剤も導入し、[工程1]で生成される重合体の極限粘度[ηinsol]を調整してもよい。
【0040】
また、上記方法以外でも、重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物存在下で溶融混練処理することによりメルトフローレート(MFR)(JIS K 7210、測定温度230℃、荷重2.16kg)を調整することができる。重合で得られたプロピレン系重合体を、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行うことにより該MFRは高くなり、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行う際の有機過酸化物の添加量を増やすことで該MFRはより高くなる。重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物存在下で溶融混練処理する場合、プロピレン系重合体100質量部に対して有機過酸化物を0.005から0.05質量部の間で使用することが望ましい。また、上記有機過酸化物存在下での溶融混練処理は、下記後処理工程後に行ってもよい。
【0041】
上記有機過酸化物存在下での溶融混練処理で使用することができる有機過酸化物としては、特に限定はされないが、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、t-ブチルパーアセテート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチル-ジ-パーアジペート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、メチル-エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジキユミルパーオキサイド、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルキユミルパーオキサイド、1,1-ビス-(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジ-イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キユメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラ-メチルブチルハイドロパーオキサイドもしくは2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ハイドロパーオキシ)ヘキサンなどの有機過酸化物を例示できる。また、これらのうち、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンがより好ましい。
【0042】
[工程2]は、重合温度0~100℃、重合圧力常圧~5MPaゲージ圧で、プロピレンとエチレンとを共重合させる工程であって、プロピレンのフィード量に対するエチレンのフィード量の割合を[工程1]のときよりも大きくすることによって、Dsolの主成分となるプロピレン・エチレン共重合体(エラストマー)を製造する工程である。必要に応じて水素ガスに代表される連鎖移動剤も導入し、[工程2]で生成される重合体の極限粘度[ηsol]を調整してもよい。
【0043】
プロピレン系重合体(A)は、上記[工程1]および[工程2]を連続的に実施することによって得られ、要件(A1)~(A5)は以下のようにして調整することができる。
要件(A1)におけるMFRAは、[工程1]または[工程2]を行う際のモノマー(すなわち、[工程1]では、プロピレンのフィード量に対する連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の割合を調整することにより調整できる。すなわち、この割合を大きくすることでMFRAを高くすることができ、この割合を小さくすることでMFRAを低くすることができる。また、[工程2]では、プロピレンおよびエチレンのフィード量に対する連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の割合を調整することにより調整できる。
【0044】
また、上記方法以外でも、重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物の存在下で溶融混練処理することによりMFRAを調整することができる。重合で得られたプロピレン系重合体を、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行うことによりMFRAは高くなり、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行う際の有機過酸化物の添加量を増やすことでMFRAはより高くなる。重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物存在下で溶融混練処理する場合、有機過酸化物は、プロピレン系重合体100質量部に対して0.005~0.05質量部使用することが望ましい。また、上記有機過酸化物存在下での溶融混練処理は、下記後処理工程後に行ってもよい。有機過酸化物としては、特に限定はなく、従来公知の有機過酸化物、たとえば2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、および1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン)が挙げられる。
【0045】
要件(A3)における前記Dinsolの割合および前記Dsolの割合は、上記[工程1]および[工程2]の重合時間を調整することにより、調整することが出来る。つまり、全重合時間に占める[工程1]の重合時間の割合を高めることで、Dinsolの割合を大きく、Dsolの割合を小さくすることが出来る。また、全重合時間に占める[工程2]の重合時間の割合を高めることで、Dinsolの割合を小さく、Dsolの割合を大きくすることが出来る。
【0046】
要件(A4)における前記Dsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合は、[工程2]を行う際のプロピレンフィード量に対するエチレンフィード量の割合を調整することにより調整できる。つまり、このフィード量の割合を大きくすることにより、前記構成単位の割合を大きくすることができ、このフィード量の割合を小さくすることにより、前記構成単位の割合を小さくすることができる。
【0047】
要件(A5)における極限粘度[ηsol]は、[工程2]を行う際の連鎖移動剤として用いる水素ガスのフィード量により調整できる。つまり、モノマー(すなわち、プロピレンおよびエチレン)のフィード量に対する水素ガスのフィード量の割合を大きくすることにより極限粘度[ηsol]を小さくすることができ、モノマーのフィード量に対する水素ガスのフィード量の割合を小さくすることにより極限粘度[ηsol]を大きくすることができる。
【0048】
重合終了後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行うことにより、プロピレン系重合体(A)がパウダーとして得られる。
また、プロピレン系重合体(A)として市販品を使用してもよい。
【0049】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(B)>
本発明のプロピレン系樹脂組成物を構成する成分の一つであるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、下記要件(B1)および(B2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体である。
【0050】
前記α-オレフィンとしては炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられ、その例としてはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
【0051】
〔要件(B1)〕
JIS K 7210に準拠して、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFRB)が、1g/10分以上、30g/10分未満、好ましくは1~20g/10分、より好ましくは1~10g/10分である。
【0052】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のMFRが上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐衝撃性が劣る傾向がある。これは分子量が高くなると、分散不良を起こすためと考えられる。上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐衝撃性が劣る傾向がある。これは分子量が低くなると、衝撃に対しての吸収エネルギーが低くなるためと考えられる。
【0053】
〔要件(B2)〕
密度が890~930kg/m3で、好ましくは895~925kg/m3、より好ましくは900~920kg/m3である。
【0054】
なお、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度の値は、エチレン系重合体(B)のMFR測定時に得られるストランドを、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したものをサンプルとして用い、密度勾配管法によって測定した場合のものである。
【0055】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度が上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の剛性が劣る傾向がある。一方、上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体のヒケ白化の改良効果が劣る傾向にある。これは成形収縮時に生じる応力を吸収する効果が低くなるためと考えられる。
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、従来公知の方法で製造することができる。
【0056】
要件(B1)におけるMFRBは、エチレンおよびα-オレフィンを共重合してエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を製造する際に、エチレンおよびα-オレフィンのフィード量に対する連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の割合を調整することにより調整できる。すなわち、この割合を大きくすることでMFRBを高くすることができ、この割合を小さくすることでMFRBを低くすることができる。
【0057】
要件(B2)における密度は、エチレンおよびα-オレフィンを共重合してエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を製造する際の、エチレンフィード量に対するα-オレフィンフィード量の割合を調整することにより調整できる。つまり、α-オレフィンのフィード量を大きくすることにより、密度を低くすることができ、α-オレフィンのフィード量を小さくすることにより、密度を高くすることができる。
【0058】
また、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)として市販品を使用してもよい。市販品の例としては、プライムポリマー社製のウルトゼックス、ネオゼックス、エボリューや日本ポリエチレン社製のノバテック、ハーモレックス、住友化学社製のスミカセン、三井化学社製のタフマー等が挙げられる。
【0059】
<プロピレン系樹脂組成物>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上記プロピレン系重合体(A)を91~96質量部、好ましくは92~96質量部、より好ましくは93~96質量部、および上記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を4~9質量部、好ましくは4~8質量部、より好ましくは4~7質量部〔ただし、プロピレン系重合体(A)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計量を100質量部とする。〕を含む組成物である。
【0060】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の量が上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体のヒケ白化の改良効果が劣る傾向にある。これは成形収縮時に生じる応力を分散し、吸収する効果が低くなるためと考えられる。またエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の量が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の剛性が劣る傾向にある。これは、剛性に寄与するプロピレン系重合体(A)の成分が減少するためと考えられる。
【0061】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(B)に加え、好ましくは、下記造核剤を、プロピレン系重合体(A)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計量100質量部に対して、0.03~0.4質量部、より好ましくは0.04~0.25質量部、さらに好ましくは0.05~0.10質量部含む。
【0062】
〔造核剤(C)〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物に含まれる造核剤としては、特に限定はないが、ソルビトール系造核剤、リン系造核剤、カルボン酸金属塩系造核剤、ポリマー造核剤、無機化合物等が挙げられる。造核剤としては、ソルビトール系造核剤、リン系造核剤、ポリマー造核剤が好ましい。
【0063】
ソルビトール系造核剤の具体例としては、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトール(該化合物を含む市販品として商品名「ミラッドNX8000」シリーズ、ミリケン社製(「NX8000」は、上記化学物質+蛍光増白剤+ブルーミング剤、「NX8000K」は「NX8000」の蛍光増白剤抜き、「NX8000J」は蛍光増白剤とブルーミング剤両方抜き)が挙げられる)、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ-(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトールが挙げられる。
【0064】
リン系造核剤の具体例としては、ナトリウム-ビス-(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カリウム-ビス-(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)ナトリウム塩(商品名「アデカスタブ(登録商標)NA-11」、(株)ADEKA製)、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)水酸化アルミニウム塩を主成分とする複合物(商品名「アデカスタブNA-21」、(株)ADEKA製)、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートと12-ヒドロキシステアリン酸とを含み、かつリチウムを必須性分として含む複合物(商品名「アデカスタブNA-71」、(株)ADEKA製)が挙げられる。
【0065】
カルボン酸金属塩造核剤の具体例としては、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩、ヒドロキシ-ジ(p-t-ブチル安息香酸)アルミニウム(商品名「AL-PTBBA」、ジャパンケムテック製)、アジピン酸アルミニウム、安息香酸ナトリウムが挙げられる。
【0066】
ポリマー造核剤としては分岐状α-オレフィン重合体が好適に用いられる。分岐状α-オレフィン重合体の例として、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンの単独重合体、あるいはそれら相互の共重合体、さらにはそれらと他のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。低温耐衝撃性、剛性の特性が良好であること、および経済性の観点から、特に、3-メチル-1-ブテンの重合体が好ましい。
【0067】
無機化合物の具体例としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウムが挙げられる。
これらの造核剤の中でも、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)ナトリウム塩、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピフェニル)メチレン]-ノニトール、およびヒドロキシ-ジ(p-t-ブチル安息香酸)アルミニウムが好ましい。
【0068】
これらの造核剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物が、造核剤(C)を含有する場合は、当該組成物から形成されるコンテナやパレットなどの大型成形体の剛性に優れる。これは結晶化度の向上による高剛性化によると推定される。
【0069】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜中和剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、気泡防止剤、分散剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、架橋剤、架橋助剤等の添加剤;染料、顔料等の着色剤で例示される成分(以下「他の成分」と記載する。)を含んでいてもよい。
【0070】
本発明のプロピレン系樹脂組成物が、他の成分を含む場合には、他の成分の量は、プロピレン系重合体(A)およびエチレン系重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.01~5質量部である。
【0071】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、JIS K 7210に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(以下、単に「MFR」とも記載する。)が、通常、1~30g/10分、好ましくは1~20g/10分、より好ましくは1~15g/10分である。
【0072】
《プロピレン系樹脂組成物の製造方法》
本発明のプロピレン系樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、該製造方法としては、例えば各成分を混練機で溶融混練して、プロピレン系樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。混練機として、例えば単軸混練押出機、多軸混練押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。溶融混練条件は、混練時の剪断、加熱温度、剪断による発熱などによって溶融樹脂の劣化が起こらない限り、特に制限されない。溶融樹脂の劣化を防止する観点から、加熱温度を適正に設定したり、酸化防止剤や熱安定剤を添加したりすることは、効果的である。
【0073】
<成形体>
本発明の成形体は、上述した本発明のプロピレン系樹脂組成物を含むことを特徴としている。その具体例としては、本発明のプロピレン系樹脂組成物を押出成形、圧縮成形、射出成形したものが挙げられる。これら成形体の中でも、射出成形体が好ましい。
【0074】
本発明の成形体としては、容器、家電部品、住宅設備、日用品、コンテナ、パレットなどの物流用途等が挙げられる。中でも耐衝撃性および剛性の観点からコンテナ、パレットなどの大型成形体が挙げられる。
【実施例0075】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた重合体の物性は、以下の方法により、測定した。
【0076】
<プロピレン系重合体(A)の物性>
〔MFRA
プロピレン系重合体のペレットのメルトフローレイト(MFRA)は、JIS K 7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
【0077】
〔DinsolおよびDsol量〕
プロピレン系重合体(A)のDinsolおよびDsolの割合は以下の方法により求めた。
プロピレン系重合体(A)のサンプル5gにn-デカン200mlを加え、145℃、30分間加熱溶解を行い、溶液(1)を得る。
【0078】
次に約2時間かけて、溶液を室温25℃まで冷却を行い、25℃で30分間放置し、析出物(α)を含む溶液(2)を得る。
その後、溶液(2)から析出物(α)を目開き約15μmの濾布でろ別し、析出物(α)を乾燥させた後、析出物(α)の質量を測定する。該析出物(α)の質量をサンプル質量(5g)で除したものを、n-デカン不溶部(Dinsol)の割合とする。
【0079】
また、析出物(α)をろ別した溶液(2)を、溶液(2)の約3倍量のアセトン中に入れ、n-デカン中に溶解していた成分を析出させ、析出物(β)を得る。
その後、析出物(β)をガラスフィルター(G2、目開き約100~160μm)でろ別し、乾燥させた後、析出物(β)の質量を測定する。
このときの析出物(β)の質量をサンプル質量(5g)で除したものをn-デカン可溶部(Dsol)の割合とする。
【0080】
〔Dsolの、デカリン中135℃で測定した極限粘度[ηsol]〕
プロピレン系重合体(A)の前記Dsolの、デカリン中135℃で測定した極限粘度[ηsol]は下記のようにして決定した。
サンプルは、前記のDinsolおよびDsolの割合を求めた際に得られた析出物(β)を用いた。
このサンプル約25mgをデカリン25mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。
【0081】
このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。
この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求め、この値をDsolの、デカリン中135℃で測定した極限粘度[ηsol]とした。
【0082】
〔Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量〕
プロピレン系重合体(A)の前記Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量は13CNMRの測定に基づき下記のようにして測定・算出し決定した。
【0083】
サンプルは、前記のDinsolおよびDsolの割合を求めた際に得られた析出物(α)および(β)を用いた。
この析出物(α)および(β)を試料として、下記条件にてそれぞれ13C-NMRの測定を行った。
【0084】
13C-NMR測定条件〉
測定装置:日本電子製LA400型核磁気共鳴装置
測定モード:BCM(Bilevel Complete decoupling)
観測周波数:100.4MHz
観測範囲:17006.8Hz
パルス幅:C核45°(7.8μ秒)
パルス繰り返し時間:5秒
試料管:5mmφ
試料管回転数:12Hz
積算回数:20000回
測定温度:125℃
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン:0.35ml/重ベンゼン:0.2ml
試料量:約40mg
【0085】
測定で得られたスペクトルより、下記文献(1)に準じて、モノマー連鎖分布(トリアッド(3連子)分布)の比率を決定し、前記のDinsolおよびDsol中のエチレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下E(mol%)と記す)およびプロピレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下P(mol%)と記す)を算出した。求められたE(mol%)およびP(mol%)から下記(式1)に従い質量%に換算しプロピレン系重合体の前記のDinsolおよびDsol中のエチレンに由来する構成単位の含有量(質量%)(以下E(wt%)と記す)を算出した。
E(wt%)=E(mol%)×28×100/[P(mol%)×42+E(mol%)×28](式1)
文献(1):Kakugo,M.; Naito,Y.; Mizunuma,K.; Miyatake,T., Carbon-13 NMR determination of monomer sequence distribution in ethylene-propylene copolymers preparedwith delta-titanium trichloride-diethylaluminum chloride. Macromolecules 1982, 15, (4), 1150-1152
【0086】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の物性>
〔MFRB
ASTM D-1238(測定温度190℃、荷重2.16kg)に従ってメルトフローレート(MFRB)を測定した。
【0087】
〔密度〕
メルトフローレート測定時(ASTM D-1238)に得られるストランドを、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したものをサンプルとして用い、密度勾配管法にて密度の測定を行い、エチレン系重合体の密度を決定した。
実施例で用いたプロピレン系重合体(A)および比較例で用いたプロピレン系重合体(E)は、以下の製造方法で製造したプロピレン系重合体を用いた。
【0088】
〔プロピレン系重合体(A-1)の製造〕
(1)固体触媒成分の調整
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mLおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0089】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200mL中に、この均一溶液の75mLを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。
【0090】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mLの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0091】
ここで、前記遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。予め窒素置換した100mLの枝付きシュレンクに上記固体触媒成分の上澄み液10mLを注射器で採取し装入した。次に、窒素気流にて溶媒ヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40mL、50容量%硫酸10mLを装入し30分間攪拌した。この水溶液をろ紙を通して100mLメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤としてconc.H3PO4:1mLとチタンの発色試薬として3%H22水溶液:5mLを加え、さらにイオン交換水で100mLにメスアップした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用い420nmの吸光度を観測し遊離チタンの検出を行った。この吸収が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去および遊離チタンの検出を行った。
【0092】
上記のように調製された固体状チタン触媒成分(A)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部は触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分(A)の組成は、チタン:2.3質量%、塩素:61質量%、マグネシウム:19質量%、DIBP:12.5質量%であった。
【0093】
(2)予備重合触媒成分の調製
内容積500mLの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタンを400mL、トリエチルアルミニウム19.2mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン3.8mmol、上記固体状チタン触媒成分(A)4gを加えた。内温を20℃に保持し、攪拌しながらプロピレンを導入した。1時間後、攪拌を停止し結果的に固体状チタン触媒成分(A)1g当たり2gのプロピレンが重合した予備重合触媒成分(B)を得た。
【0094】
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.17MPa-G装入した。
内温80℃、全圧3.2MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で1時間重合を行った。
【0095】
(3-2)重合―2(重合[工程2])
プロピレン単独重合体の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素/エチレン=0.10m.r.装入し、続いてエチレン/(エチレン+プロピレン)=0.40m.r.の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.60MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
【0096】
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体を真空乾燥した。
【0097】
得られたプロピレン系重合体(A-1)の、メルトフローレート(MFRA)(JIS K 7210、測定温度230℃、荷重2.16kg)は5.0g/10分、Dinsolは88.0質量%、Dsolは12.0質量%、極限粘度[ηsol]は3.3dL/g、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の質量が33.0質量%であった。
【0098】
〔プロピレン系重合体(A-2)の製造〕
(1)(2)の工程は上記プロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.35MPa-G装入した。
内温80℃、全圧3.2MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で1時間重合を行った。
【0099】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
プロピレン単独重合体の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素/エチレン=0.10m.r.装入し、続いてエチレン/(エチレン+プロピレン)=0.40m.r.の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.60MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
【0100】
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体を真空乾燥した。
【0101】
得られたプロピレン系重合体(A-2)の、メルトフローレート(MFRA)(JIS K 7210、測定温度230℃、荷重2.16kg)は10g/10分、Dinsolは88.0質量%、Dsolは12.0質量%、極限粘度[ηsol]は3.4dL/g、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の質量が33.0質量%であった。
【0102】
〔プロピレン系重合体(E-1)の製造〕
(1)(2)の工程は上記プロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6Lトリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入した。
内温80℃、全圧3.2MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で1時間重合を行った。
【0103】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
プロピレン単独重合体の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素/エチレン=0.20m.r.装入し、続いてエチレン/(エチレン+プロピレン)=0.40m.r.の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.60MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
【0104】
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体を真空乾燥した。
【0105】
得られたプロピレン系重合体(E-1)の、メルトフローレート(MFRA)(JIS K 7210、測定温度230℃、荷重2.16kg)は5.0g/10分、Dinsolは88.0質量%、Dsolは12.0質量%、極限粘度[ηsol]は2.0dL/g、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の質量が33.0質量%であった。
【0106】
〔プロピレン系重合体(E-2)の製造〕
(1)(2)の工程は上記プロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.17MPa-G装入した。
内温80℃、全圧3.2MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で1時間重合を行った。
【0107】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
プロピレン単独重合体の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素/エチレン=0.10m.r.装入し、続いてエチレン/(エチレン+プロピレン)=0.21m.r.の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.60MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
【0108】
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体を真空乾燥した。
【0109】
得られたプロピレン系重合体(E-2)の、メルトフローレート(MFRA)(JIS K 7210、測定温度230℃、荷重2.16kg)は5.0g/10分、Dinsolは88.0質量%、Dsolは12.0質量%、極限粘度[ηsol]は3.3dL/g、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の質量が22.0質量%であった。
【0110】
〔プロピレン系重合体(E-3)の製造〕
(1)(2)の工程は上記プロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程2])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.25MPa-G装入した。
内温80℃、全圧3.2MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で1時間重合を行った。
【0111】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
プロピレン単独重合体の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素/エチレン=0.04m.r.装入し、続いてエチレン/(エチレン+プロピレン)=0.33m.r.の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.60MPa-G(導入ガス量により変動)で70分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
【0112】
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体を真空乾燥した。
【0113】
得られたプロピレン系重合体(E-3)の、メルトフローレート(MFRA)(JIS K 7210、測定温度230℃、荷重2.16kg)は5.0g/10分、Dinsolは85.0質量%、Dsolは15.0質量%、極限粘度[ηsol]は4.5dL/g、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の質量が29.0質量%であった。
【0114】
実施例および比較例で用いたエチレン・α-オレフィン共重合体を以下に示す。
〔エチレン・1-ヘキセン共重合体(B-1)〕
密度903kg/m3、MFRB(190℃)3.8g/10分(プライムポリマー製、商品名:エボリュー SP0540)
〔エチレン・1-ヘキセン共重合体(B-2)〕
密度913kg/m3、MFRB(190℃)3.8g/10分(プライムポリマー製、商品名:エボリュー SP1540)
〔エチレン・α-オレフィン共重合体(F-1)〕
密度949kg/m3、MFRB(190℃)0.8g/10分(プライムポリマー製、商品名:ハイゼックス 5000S)
〔エチレン・α-オレフィン共重合体(F-2)〕
密度885kg/m3、MFRB(190℃)3.6g/10分(三井化学製、商品名:タフマーA-4085S)
【0115】
実施例および比較例で用いたプロピレン系樹脂組成物は、以下の方法で調整した。
(1)造粒
表1(実施例・比較例)に示す配合にて、プロピレン系重合体と、エチレン・α-オレフィン共重合体を所定の量を配合し、添加剤として、フェノール系酸化防止剤のIrganox1010(商品名、BASF社製)を0.05質量部、リン系酸化防止剤のIrgafos168(商品名、BASF社製)を0.05質量部、中和剤のステアリン酸カルシウム(日東化成社製)を0.10質量部、造核剤としてAL-PTBBA(商品名、DIC社製)を0.10質量部配合し、ヘンシェルミキサーにて攪拌混合した。
【0116】
得られた混合物を東芝機械株式会社製の二軸押出機(TEM35BS)を用いて下記条件にて溶融混練してストランド状のプロピレン系樹脂組成物を得た。
型式:TEM35BS(35mm二軸押出機)
スクリュー回転数:300rpm
吐出量:30kg/h
スクリーンメッシュ:#200
樹脂温度:230℃
得られたストランドを水冷後ペレタイザーにて切断することにより、プロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
実施例および比較例で得られた成形体の評価は以下の方法で行った。
【0117】
〔ヒケ白化評価〕
プロピレン系樹脂組成物のペレットを用いて、以下の方法で容器を成形した。
型締め力140トンの電動射出成形機(日精樹脂工業社製NEX140 IV-18E)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度20℃、射出1次圧力100MPa、射出速度30mm/sec、射出充填時間2.5sec、保持圧力、55MPa、保圧時間12.5sec、冷却時間60secの条件で、プロピレン系樹脂組成物のペレットを射出成形し、図1に示した成形体を射出成形した。
【0118】
リブ形状の裏側のヒケ白化を目視で評価し、下記のような5段階の評点で判定した。
1:白化が非常に目立つ
2:白化が目立つ
3:白化がやや目立つ
4:白化がほとんど目立たない
5:白化してない
【0119】
〔引張弾性率〕
射出成形法により試験片を成形し、成形後に室温23±5℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室に72時間放置した後、JIS K 7161に準拠して求めた。
【0120】
〔シャルピー衝撃強さ(ノッチ有、23℃)〕
射出成形法により試験片を成形し、成形後に室温23±5℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室に72時間放置した後、JIS K 7111に準拠して求めた。
【0121】
〔実施例1〕
上記製造方法で得たプロピレン系重合体(A-1)96質量部および上記エチレン・1-ヘキセン共重合体(B-1)4質量部を配合し、上記記載の方法で造粒してプロピレン系樹脂組成物を得た後、上記記載の方法で成形体および試験片を作製し、上記記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0122】
〔実施例2〕
実施例1で用いたプロピレン系樹脂組成物に替えて、プロピレン系重合体(A-1)およびエチレン・1-ヘキセン共重合体(B-1)の配合量を表1に示す配合量に替える以外は実施例1と同様に行い成形体および試験片を作製し、上記記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0123】
〔実施例3〕
実施例2で用いたエチレン・1-ヘキセン共重合体(B-1)に替えて、エチレン・1-ヘキセン共重合体(B-2)を用いる以外は実施例2と同様に行い成形体および試験片を作製し、上記記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0124】
〔実施例4〕
実施例2で用いたプロピレン系重合体(A-1)に替えて、プロピレン系重合体(A-2)を用いる以外は実施例2と同様に行い成形体および試験片を作製し、上記記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0125】
〔比較例1〕
実施例1で用いたプロピレン系樹脂組成物に替えて、プロピレン系重合体(A-1)を単独で用いる以外は実施例1と同様に行い成形体および試験片を作製し、上記記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0126】
〔比較例2~8〕
実施例1で用いたプロピレン系樹脂組成物に替えて、表1に示すプロピレン系重合体およびエチレン・α-オレフィン共重合体を用い、且つその配合量を表1に示す量で用いる以外は実施例1と同様に行い成形体および試験片を作製し、上記記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0127】
【表1】
図1