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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135088
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】細胞培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/02 20060101AFI20220908BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C12M1/02 A
C12M1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034676
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】504077308
【氏名又は名称】安斎 聡
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安斎 聡
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA11
4B029BB01
4B029CC01
4B029DB15
4B029DF04
4B029GA02
4B029GB07
(57)【要約】
【課題】特定の気体を培養液中に所望の濃度で供給することができる細胞培養装置を提供する。
【解決手段】細胞を含む培養液を貯留する容器2と、培養液に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置11とを有する、細胞培養装置1であって、微細気泡発生装置11は、炭素系の多孔質素材で形成される気泡発生媒体21を有し、気泡発生媒体21は、培養液の接触する部分に配置されるものである。また、細胞培養装置1は、容器2を振とうする振とう装置3を備え、培養液を振とうさせることで細胞に空気を供給するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含む培養液を貯留する容器と、当該培養液に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置とを有する、細胞培養装置であって、
前記微細気泡発生装置は、炭素系の多孔質素材で形成される気泡発生媒体を有し、
前記気泡発生媒体は、培養液の接触する部分に配置される
ことを特徴とする細胞培養装置。
【請求項2】
細胞培養装置は、容器を振とうする振とう装置を備え、培養液を振とうさせることで細胞に空気を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の細胞培養装置。
【請求項3】
前記気泡発生媒体は、容器の壁面であって、培養液が接触する部分に設けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の細胞培養装置。
【請求項4】
前記気泡発生媒体は、容器内部の培養液内に投入される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞等の培養を目的とした培養装置として、培養液の入った培養容器を振とうすることにより培養液に酸素を溶解させて細胞の増殖を促す振とう培養装置が公知となっている。
【0003】
振とう培養装置は、容器を平行に振とうする平行式の振とう培養装置や、容器を回転させる回転式に振とう培養装置が知られている。振とう培養装置内の培養液は、浸透されることで攪拌され培養液内の細胞へ酸素を大量に供給することができる。
【0004】
一方、振とう培養装置において、培養液中に直接酸素や、窒素、水素などの空気以外の気体を供給する方法は現在まで公知となっていない。例えば、振とう容器中にコンプレッサによって気体を供給した場合には、振とうによって気体の大部分が空気中へ放出されることとなり、培養液中の気体濃度をコントロールすることが困難となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-227070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、培養液を振とうしながら、培養液に供給される各種気体の圧力を直接制御できる細胞培養装置が望まれていた。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑み、特定の気体を培養液中に所望の濃度で供給することができる細胞培養装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本発明においては、細胞を含む培養液を貯留する容器と、当該培養液に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置とを有する、細胞培養装置であって、
前記微細気泡発生装置は、炭素系の多孔質素材で形成される気泡発生媒体を有し、
前記気泡発生媒体は、培養液の接触する部分に配置されるものである。
【0010】
また、本発明においては、細胞培養装置は、容器を振とうする振とう装置を備え、培養液を振とうさせることで細胞に空気を供給するものであってもよい。
【0011】
また、本発明においては、前記気泡発生媒体は、容器の壁面であって、培養液が接触する部分に設けられるものであってもよい。
【0012】
また、本発明においては、前記気泡発生媒体は、容器内部の培養液内に投入されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本発明においては、培養液に接触する部分に多孔質素材で形成される気泡発生媒体を有する微細気泡発生装置を配置することにより、培養液内に微細気泡を発生させることができる。これにより、微細気泡となって培養液内に存在する気体は空気中に放出され難くなり、培養液中に特定の気体を所望の濃度で供給することができる。
【0015】
また、振とう方式の細胞培養装置においては、振とう装置を用いて液流を発生させる。この液流を用いて気泡発生媒体の表面の微細気泡を液中に離間させることができるので効率よく培養液中に特定の気体を所望の濃度で供給することができる。また、様々な容器に気泡発生媒体を配置することにより、既存の振とう装置を用いて振とう式の細胞培養を行うことができる。
【0016】
また、微細気泡発生装置の気泡発生媒体は、炭素系の多孔質素材で構成されており、表面に菌が付着し難いため、次亜塩素酸ナトリウムを用いた滅菌処理などの薬剤を使用したサニテーションやオートクレーブを用いた高温滅菌処理をすることにより完全に殺菌することができる。これにより、培養の際の雑菌の付着によるコンタミネーションなどを予防することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る細胞培養装置を示す斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る容器の底面および気泡発生媒体の一部断面拡大図。
図3】本発明の実施形態に係る容器の底面および上面が曲面状の気泡発生媒体の一部断面拡大図。
図4】本発明の実施形態に係る容器の底面および上部が大径部である気泡発生媒体の一部断面拡大図。
図5】本発明の実施形態に係る容器の底面および上部が棒状である気泡発生媒体の一部断面拡大図。
図6】本発明の実施形態に係るフラスコである容器および気泡発生媒体を示す斜視図。
図7】本発明の実施形態に係る蓋付きの容器および気泡発生媒体を示す斜視図。
図8】本発明の実施形態に係るフラスコである容器および投入型の気泡発生媒体を示す斜視図。
図9】本発明の実施形態に係る試験管である容器および熱伝導体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明の一実施形態にかかる細胞培養装置1の全体構成について図1を用いて説明する。
【0019】
細胞培養装置1は、容器2内に液体培地である培養液を貯蔵し、前記培養液内で細胞を培養する装置である。本実施形態に係る細胞培養装置1は、容器2を振とうすることにより容器2内の培養液を動かし、空気を培養液内に取り込むことで、細胞の培養を促進する振とう式の細胞培養装置である。容器2は、振とう装置3に連結されている。
【0020】
容器2は、直方体で形成されている。容器2には、液体培地である培養液が入っており、培養液内に増殖しようとする細胞が混入されている。なお、容器2は、例えば部屋に区切られていてもよい。
【0021】
振とう装置3は、0.5Hz程度の頻度で容器2を振り動かし、細胞と培地とを混ぜ合わせる装置である。振とう培養により、培養液と細胞との接触機会を増加させることで細胞の増殖速度の向上が見込める。振とう装置3は取付部3aを有しており、取付部3aに容器2を固定可能に構成されている。取付部3aは図示せぬ駆動機構により、左右方向へ往復動可能に構成されている。振とう装置3の取付部3aを往復移動させることにより、容器2は振とうする。
【0022】
細胞培養装置1は、培養液に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置11を有する。
微細気泡発生装置11は、気泡発生媒体21と、気体容器23とを備える。気体容器23は圧縮された気体が格納される容器であり、例えば、水素や、窒素など空気以外の気体が注入されている。気体容器23に格納される気体はこれに限定されるものではなく、例えば、酸素であってもよい。また、気体容器23に酸素を格納した場合、気体容器23と気泡発生媒体21との間にオゾン発生装置を設け、オゾン発生装置で発生したオゾンを供給する構成としてもよい。
気体容器23は制御弁23aを備えており、制御弁23aの開度を調整することにより、気体容器23から流出する気体の分圧を制御することが可能となっている。
【0023】
なお、本実施形態においては、一種類の気体を供給するために気体容器23を一つで構成したがこれに限定するものではない。例えば、水素用の気体容器および酸素用の気体容器を設け、それぞれに制御弁を設ける構成とすることで、各気体のガス分圧を制御することが可能となる。
【0024】
次に、容器2に設けられた気泡発生媒体21について説明する。
容器2の底面2aには、気泡発生媒体21が取り付けられている。気泡発生媒体21は、上部に設けられた小径部21aと下部に設けられた大径部21bとから構成される。小径部の直径は、容器2の底面2aに設けられた取付孔2bの内径と同じ長さになるように形成されている。気泡発生媒体21の小径部を容器2の底面に図示せぬシール部材を介して取り付けることにより、容器2の底面を封止しつつ、気泡発生媒体21を培養液と接触させることができる。
【0025】
気泡発生媒体21は、炭素系の多孔質セラミックス素材で形成されている。気泡発生媒体21は、内部に空間21cを有しており、空間21cに気体容器23から圧送される気体が注入される。気泡発生媒体21は、図2に示すように、直径数μm~数十μmの細かな孔21Aを多数有している。また、気泡発生媒体21は導電体であり、気泡発生媒体21から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である気泡発生媒体21を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。微細気泡は、直径数百nm~数十μmの気泡であり、液中に溶存することにより、培養液中の細胞に所定の気体を供給して成長を促進し、または、殺菌能力のある気体を長期間培養液中に存在させることができる。
【0026】
炭素系の多孔質セラミックス素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。また、炭素系の多孔質素材の表面には、厚さ数nmの膜が形成されている。前記膜はケイ素を含む無機質の膜で形成されている。
【0027】
次に、微細気泡発生装置11を用いた振とう式の細胞培養方法について説明する。
振とう式の細胞培養方法においては、容器2に液体培地としての培養液と、細胞とを混合したものを充てんする。
振とう装置3を駆動することにより、取付部3aに固定された容器2が往復振とうする。容器2内の培養液は、容器2の振とうによりかき混ぜられる。これにより、細胞と培養液との接触機会が増えて、細胞の増殖速度が向上する。
【0028】
振とう装置3により容器2の振とうが行われている間に、微細気泡発生装置11から気体が微細気泡として培養液へと供給される。微細気泡発生装置11の気体容器23から所定の圧力で送られた気体は、気泡発生媒体21の空間21c内に供給される。空間21c内に送られた気体は、孔21Aを通って、直径数百nm~数十μmの気泡として気泡発生媒体21の表面に放出される。
【0029】
気泡発生媒体21の表面に放出された気泡は、容器2の振とうにより動いている培養液の流れによって気泡発生媒体21の表面から離間する。これにより、表面に放出された気泡同士が接触して大きくなることなく液中に放出されやすくなる。なお、容器2の振とうは、平行式の振とうに限定されるものではなく、例えば回転式の振とうであってもよい。
【0030】
このように構成することにより、容器2内でせん断流などを発生させることなく大量の微細気泡を発生させることができる。発生した微細気泡は細胞に接触して成長を促進させることができる。細胞の成長が促進されることで、培養期間が短縮され、創薬やゲノムの発現を促進することができるのである。
【0031】
また、例えば、微細気泡に、水素を用いることによって、培養液中の細胞に水素を接触させることで、水素の抗酸化作用によって、細胞の劣化を防止することができる。また、微細気泡に、オゾン等の気体を用いることによって、細胞以外の雑菌の繁殖を抑えることができ、コンタミネーションなどを予防することが可能となる。
【0032】
また、気泡発生媒体21は、表面がコーティングされていることにより、耐腐食性があり、メンテナンスが容易である。また、次亜塩素酸ナトリウムを用いた滅菌処理などの薬剤を使用したサニテーションやオートクレーブを用いた高温滅菌処理をすることにより完全に殺菌することができる。これにより、培養の際の雑菌の付着によるコンタミネーションなどを予防することが可能となる。また、気泡発生媒体21の表面がコーティングされていることにより、気泡発生媒体の剥離による発塵の可能性が少なく、コンタミネーションなどを予防することができる。また、気泡発生媒体21は、表面がコーティングされていることにより、次回以降の使用のために使用後の異物を除去することも簡便となるため、メンテナンスが容易となる。
【0033】
また、投入する気体の温度を変更してもよい。例えば、気体容器23と気泡発生媒体21との間にヒーターを設けて気体温度を上昇させて気泡発生媒体21内に供給することが可能である。この場合、細胞の成長を促進する温度まで培養液の温度を調整させつつ気体を微細気泡として供給することができる。
【0034】
また、気泡発生媒体21は、セラミックス素材で構成されているため、耐熱性に優れる。そのため使用後に、容器2および気泡発生媒体21をオートクレーブで減菌処理を行うことが可能となる。
【0035】
次に、気泡発生媒体21の形状について変更した実施形態について説明する。
図3に示すように気泡発生媒体21は、小径部21aの上面を曲面形状に突出されることも可能である。このように構成することにより、曲面形状の表面から微細気泡が上方だけでなく斜め横方向へも放出されやすくなり、培養液全体に微細気泡が存在しやすくなる。
【0036】
また、図4に示すように、気泡発生媒体21の上部を大径部21dで構成し、下部を小径部21eで構成してもよい。小径部21eの直径は、容器2の底面2aに設けられた取付孔2bの内径と同じ長さになるように形成されている。大径部21dの直径は、小径部21eの直径の略二倍となるように形成されている。気泡発生媒体21の小径部21eを容器2の底面に図示せぬシール部材を介して取り付けることにより、容器2の底面2aを封止しつつ、気泡発生媒体21を培養液と接触させることができる。
【0037】
また、大径部21dの上面は曲面形状に突出させている。このように構成することにより、曲面形状の表面から微細気泡が上方だけでなく斜め横方向へも放出されやすくなり、培養液全体に微細気泡が存在しやすくなる。
【0038】
また、図5に示すように、気泡発生媒体21の上部を小径部21aで構成し、下部を大径部21bで構成してもよい。小径部21aは、棒状に形成されており、小径部21aの上面は曲面形状に突出している。また本実施形態においては、小径部21aの側面の一部が容器2の内部に露出している。このように構成することにより、曲面形状の表面から微細気泡が上方だけでなく斜め横方向へも放出されやすくなり、培養液全体に微細気泡が存在しやすくなる。また、小径部21aの側面からも微細気泡が横方向へ放出されやすくなり、培養液全体に微細気泡が存在しやすくなる。
【0039】
次に、容器2の形状および気泡発生媒体21の形状について変更した実施形態について説明する。
【0040】
図6に示すように、容器2は、三角フラスコであり、容器2の下面に気泡発生媒体21が固定されている。気泡発生媒体21は、図2に示されるように、上部に設けられた小径部21aと下部に設けられた大径部21bとから構成される。小径部21aの直径は、容器2の底面2aに設けられた取付孔2bの内径と同じ長さになるように形成されている。気泡発生媒体21の小径部21aを容器2の底面2aに図示せぬシール部材を介して取り付けることにより、容器2の底面2aを封止しつつ、気泡発生媒体21を培養液と接触させることができる。
【0041】
また、図7に示すように、容器2は、蓋付きの容器で構成されている。蓋つきの容器2は、蓋部分2cを側方に倒した状態における下面2dに気泡発生媒体21が固定されている。気泡発生媒体21は、図2に示されるように、上部に設けられた小径部21aと下部に設けられた大径部21bとから構成される。小径部21aの直径は、容器2の下面2dに設けられた取付孔2bの内径と同じ長さになるように形成されている。気泡発生媒体21の小径部を容器2の下面2d(図2の底面2aに対応する)に図示せぬシール部材を介して取り付けることにより、容器2の下面2dを封止しつつ、気泡発生媒体21を培養液と接触させることができる。
【0042】
また、図8に示すように、気泡発生媒体21を容器2の内部に投入することも可能である。
容器2は、三角フラスコである。容器2の開口部2eには蓋2fが設けられており、蓋には気体通路25が設けられている。気泡発生媒体21は、気体通路25の端部と連結されており、容器2の内部に配置されている。気泡発生媒体21は、球状に形成されている。また蓋2fには、余剰気体を排出するための気体排出管26が設けられている。培養液が充てんされた容器2において、気泡発生媒体21は、培養液内に沈められる。これによって、気泡発生媒体21を培養液と接触させることができる。培養液内に投入された気泡発生媒体21は、球状の表面から微細気泡を放出する。これにより、広範囲にわたって微細気泡を放出することが可能となる。なお、本実施形態においては、気泡発生媒体21を球状に構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、円柱状に形成することも可能である。
【0043】
このように構成することにより、気体通路25および気泡発生媒体21と容器2が別体で形成されているため、気泡発生媒体21単独でオートクレーブで滅菌処理を行うことが可能となる。気泡発生媒体21は、多孔質の炭素系セラミックス素材で形成されているため、耐熱性を有している。したがって、気泡発生媒体21のみを容器2よりも高温で滅菌処理することができるのである。これにより、培養の際の雑菌の付着によるコンタミネーションなどを予防することが可能となる。
【0044】
また、炭素系セラミックス素材を熱伝導体として使用することも可能である。
図9に示すように、容器2は、試験管であり、容器2の下部に熱伝導体31が連結されている。熱伝導体31は、円柱状に形成されており、その中心部に試験管を挿入するための挿入孔31aが設けられている。
【0045】
容器2は、熱伝導体31の挿入孔に挿入されることにより、熱伝導体と接触する。例えば、熱伝導体31を外部のヒーターによって加熱することにより、試験管内部の培養液の温度を上昇させることができるのである。熱伝導体31は、炭素系セラミックス素材を用いており、熱伝導性が非常に高い。このため、ヒーターによる加えられた熱を効率よく試験管内の培養液に伝導することができるのである。
【0046】
以上のように、細胞を含む培養液を貯留する容器2と、培養液に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置11とを有する、細胞培養装置1であって、微細気泡発生装置11は、炭素系の多孔質素材で形成される気泡発生媒体21を有し、気泡発生媒体21は、培養液の接触する部分に配置されるものである。
このように構成することにより、気泡発生媒体21から容器2内の培養液へと所定の気体が微細気泡として供給されることにより、培養液内に気体を溶存させることができる。これにより、微細気泡となって培養液内に存在する気体は空気中に放出され難くなり、培養液中に特定の気体を所望の濃度で供給することができる。したがって、細胞の成長が促進される。細胞の成長が促進されることで、培養期間が短縮され、創薬やゲノムの発現を促進することができるのである。
【0047】
また、細胞培養装置1は、容器2を振とうする振とう装置3を備え、培養液を振とうさせることで細胞に空気を供給するものであってもよい。
このように構成することにより、振とう装置3によって、培養液が左右に振られ液流が発生する。当該液流によって、気泡発生媒体の表面から微細気泡が離間しやすくなり微細気泡が効率よく発生する。
【0048】
また、気泡発生媒体21は、容器2の底面2aであって、培養液が接触する部分に設けられるものであってもよい。
このように構成することにより、気泡発生媒体21が培養液に直接接触することにより、振とうしている培養液の液流に触れやすくなる。
【0049】
また、気泡発生媒体21は、容器2内部の培養液内に投入されるものであってもよい。
このように構成することにより、容器2と気泡発生媒体21は分離しているため、それぞれを別にして洗浄保存することができメンテナンスが容易となる。例えば、気泡発生媒体21のみを容器2よりも高温で滅菌処理することができるのである。これにより、培養の際の雑菌の付着によるコンタミネーションなどを予防することが可能となる。
【0050】
なお、本実施形態においては、気泡発生媒体21は、容器2の底面2aに設けられているが、容器の壁面に設けられていれば、これに限定されるものではなく、例えば容器側面に設けられる構成であってもよい。
【0051】
また、容器2自体を、多孔質セラミックス素材で形成することも可能である。このように構成することにより、コストは高くなるが、気泡発生表面を増加させることができるため、より効率的に細胞を培養することができる。また、容器2を多孔質セラミックス素材で形成することにより、セラミックスは耐熱性が高いため、容器2をオートクレーブで滅菌処理することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1 細胞培養装置
2 容器
2a 底面
2b 取付孔
3 振とう装置
11 微細気泡発生装置
21 気泡発生媒体
21a 小径部
21b 大径部
21c 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9