(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013510
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】手術用鉗子
(51)【国際特許分類】
A61B 17/28 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A61B17/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020128696
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】515243349
【氏名又は名称】株式会社水貝製作所
(72)【発明者】
【氏名】林 和樹
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG05
(57)【要約】
【課題】 手術中に於ける把持部の確実な開閉を連続して行えることができ、且つ把持部の把持力の適正化、把持部側面への目盛線付加により操作性、安全性の向上を図った医療用鉗子を提供すること。
【解決手段】 本発明の手術用鉗子Aは、一対のレバー体1からなり、各レバー体1A及びレバー体1Bは物を把持するための把持部11と指をかけて回動させる操作部12と、把持部11と操作部12との間に設けられた枢着部13と、枢着部13と操作部12の間に設けられ掛止して回動角の拡大を阻止するラチェット部14を備えた手術用鉗子Aであって、ラチェット部14A及びラチェット部14Bが掛合前に把持部11閉じられ、手術時の把持部11の連続した開閉操作を容易にできるようにした。また、把持部側面への目盛線付加により、把持部移動量の視認性を向上させた。また、把持部11と操作部12間のレバー体1に於いて、枢着部13とラチェット部14間の薄肉化とチタン材の適用によりレバー体の低剛性化を図り問題の解決をした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のレバー体より成り、各レバー体は、臓器、血管等の把持、若しくは患部の把持、剥離をするための把持部と指を掛けて把持部を開閉させる操作部と、把持部と操作部との間に設けられた枢着部と、操作部と枢着部の間に設けられ掛止して回転角の拡大を阻止するラチェット部を備えた把持具であって、一対のラチェット部掛合前に把持部が全閉となることを特徴とする手術用鉗子。
【請求項2】
手術中に於ける把持部の連続した開閉をラチェット部を介さずに行うことのできることを特徴とする請求項1記載の手術用鉗子。
【請求項3】
手術中に於ける把持部の移動量が定量的に視認できる目盛を、把持部側面に付加したことを特徴とする請求項1記載の手術用鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用鉗子の把持部とラチェット部の開閉操作及び、把持部移動量の定量的可視化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において鉗子、開創器等の把持具が使用されているが、人体の臓器、血管等の把持、または患部等の把持、剥離に用いられるもので、特異な機能が要求される。
この手術用鉗子は通常、一対のレバー体とよりなり、該レバー体は、把持する部分と手で回動する操作部分と、把持する部分と操作部の間の枢着部分と、支点部分と操作部分の間に設けられたラチェット部を有するものである。
そして、把持した状態でラチェット部分が掛合しそれ以上把持部の拡大回動を阻止する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-126637
【特許文献2】特開2015-217261
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1、特許文献2の把持具に於いて把持部の開閉を繰り返し行う場合、その都度ラチェットの掛合をレバー体回転方向に対し垂直方向にレバー体に負荷をかけ解除する構造となっている。
【0005】
また、把持部を対象臓器、血管、患部等までの到達途中に於いて、把持部を拡げたり閉じたりして観察をしながら移動させるが、ラチェットの掛合開始時は、把持部が完全に閉じない構造となっている。さらに、把持部が閉じる位置は、ラチェット部が全掛合した位置で、このラチェットの掛合を開放するには、操作部を回動方向に対し垂直に負荷をかけ開放する構造となっている。
【0006】
さらに、ラチェット全掛合で把持部が閉じる構造であるため、臓器、血管等の把持力が安定しにくい構造となっている。
【0007】
また、手術時に内視鏡下で臓器、血管、患部等を把持するが、把持部移動確認は操作者の勘による構造となっている。
【0008】
このように従来の手術用鉗子では、手術時の操作性及び、把持部の移動量の視認性が悪く、安全性が十分ではなかった。
本発明は、以上の問題点を解決するためのものである。
すなわち、手術中に於ける把持部の連続した開閉操作をスムーズに行え、且つ、医療用鉗子が、対象とする臓器、血管、患部へ到達過程での対象物の把持、解放及び、把持部の定量的な移動量の視認性を確保し、従来品に対しより安全に行える手術用鉗子を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、把持部の開閉位置とラチェット部の掛合する位置の最適化、レバー体の低剛性化及び、把持部側面への等間隔な目盛線付加により本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、一対のレバー体1よりなり、各レバー体1は、物を把持するための把持部11と、指を掛けて回動させる操作部12と、把持部11と操作部12との間に設けられた枢着部13と、枢着部13と操作部12の間に設けられ掛止して回転角の拡大を阻止するラチェット部14を備えた手術用鉗子Aであって、ラチェット部14A及び14Bが掛合前に把持部11が閉じられる。また、把持部11側面に等間隔の目盛線を付加した構造とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の手術用鉗子Aは、一対のレバー体1からなり、各レバー体1A及びレバー体1Bは、物を把持するための把持部11と指をかけて回動させる操作部12と、把持部11と操作部12との間に設けられた枢着部13と、枢着部13と操作部12の間に設けられ掛止して回動角の拡大を阻止するラチェット部14を備えた手術用鉗子Aであって、ラチェット部14A及びラチェット部14Bが掛合前に把持部11が閉じられ、手術時の把持部11の連続した開閉を容易にできるようにした。また、把持部側面に設けた目盛線により、把持部移動量及び血管の太さを定量的に視認できるようにした。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態を示す手術用鉗子を示す図で、
図1(A)は平面図、
図1(B)は正面図、
図1(C)は右側面図,
図1(D)は把持部側面への目盛線設置図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の手術用鉗子の動作説明をする平面図で、
図2(A)は、把持部を開いた状態を示す。
図2(B)は、ラチェット部が掛合前に把持部が完全に閉じた状態を示す。
図2(C)は、把持部が全閉後にラチェット部が全掛合した状態を示す。
図2(D)は操作部12を軸方向に其々逆方向に動かし、ラチェットの掛合を開放する方法について示す。なお、枢着部13Aと枢着部13Bの各作用軸ピンDの間は、連結板により接続されている。
【
図3】
図3は、本発明の手術用鉗子のレバーの低剛性化を説明する部分平面図で、
図3(A)は、把持部と操作部との間のレバー体に於いて、枢着部とラチェット部の間の薄肉部分を示す。
図3(B)は、
図3(A)G部の薄肉部分全周の断面を示す。
【
図5】
図5は、従来品の手術用鉗子の動作を示す平面図で、
図5(A)は、把持部を開いた状態を示す。
図5(B)は、ラチェット部が掛合し始めの把持部の状態を示す。
図5(C)は、把持部を全閉し同時にラチェット部が全掛合した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について必要に応じ図面および図を参照しながら詳細説明をする。但し、これらの実施形態は何れも例示であり、本発明についての限定的解釈を与えるものではない。
なお、図面中、同一又は対応する部分については同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
また、図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。本説明での把持部側面とは、把持面以外のすべての面を含む。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係わる手術用鉗子Aを示す図であり、
図1(A)は平面図、
図1(B)は正面図、
図1(C)は右側面図、
図1(D)は把持部側面への目盛線設置図である。
【0015】
また、
図2は、
図1の手術用鉗子Aに於いて把持部の開閉状態とラチェット部の掛合状態を示すものである。
図に示すように、第1実施形態に係る手術用鉗子Aは、一対のレバー体1(第1レバー体1A、第2レバー体1B)からなり、各レバー体1は物を把持するための把持部11(第1把持部11A、第2把持部11B)と指をかけて回動させる操作部12(第1操作部12A、第2操作部12B)と、把持部11と操作部12との間に設けられた枢着部13(第1枢着部13A、第2枢着部13B)と、枢着部13と操作部12の間に設けられ掛止して回動角の拡大を阻止するラチェット部14(第1ラチェット部14A,第2ラチェット部14B)を備えている。
【0016】
詳しくは、レバー体1の端部にある把持部11は、人体の一部である臓器、血管等を把持するものであり、各把持当接面には、必要に応じ凹凸部等が設けられている。
また、各レバー体1は、枢着部13となって支軸ピンCにより枢着されており、一方の端部に把持部11が設けられ、他方の端部には、操作部12が設けられている。
各操作部12は、穴を有しており、使用時は、この穴に指を掛けてレバー体1を回動させることができる。
【0017】
また、各レバー体1の操作部の付け根には、互いに対向するようにラチェット部14(第1ラチェット部14A、第2ラチェット部14B)が突設されている。
このラチェット部14には、逆止め状の爪Eが形成されており、対向するラチェット部14が相互に接近する方向に回動することで掛合する。
また、把持部11が完全に閉じた時ラチェット部14は、掛合前の状態である。
【0018】
さらに、ラチェット部14を相互に接近させラチェットに設けられた爪Eを掛合させるとラチェット14は、開き方向への回動を阻止し掛合状態を保つ。この状態を開放するためには、
図2(D)に示す第1操作部12Aと第2操作部12Bを軸方向に其々逆方向に荷重Fを加え行うようになっている。
【0019】
また、把持部側面に設置した目盛線により、手術用鉗子の移動量をより正確に操作者が把握できるようになっている。
【0020】
従来の手術用鉗子Aにおいて、
図5従来品鉗子平面図に示すように把持部11を閉じた状態でラチェット部14が全掛合する位置となっている。このため、把持部11の開放は、操作部12を其の都度軸方向に開いて行わなければならない。更に、手術中に把持部11を開閉させ対象臓器、患部へ到達させるが、上記のラチェット部14の開放操作が伴い把持部11のブレが生じる。また、把持部の移動量は操作者の勘によるため安全性の面で十分でない。
【0021】
本発明の手術用鉗子Aは、把持部11の全閉位置がラチェット部14Aとラチェット部14Bが掛合前の位置となっているため、手術時に連続した把持部11の開閉操作が容易に行える。また、把持部11の側面に設けた目盛線により、内視鏡下での手術時において、把持部11の移動量が定量的に把握できる。
【0022】
更に、把持部11と操作部12間のレバー体において、枢着部13とラチェット部14の間を薄肉化することによりレバー体の低剛性化ができ操作力の軽減を図っている。また、チタン材を使用することで従来のステンレス材に対しより操作力の軽減ができ問題の解決をした。
【符号の説明】
【0023】
1・・・レバー体
1A・・・第1レバー体
1B・・・第2レバー体
11A・・・第1把持部
11B・・・第2把持部
12・・・操作部
12A・・・第1操作部
12B・・・第2操作部
13A・・・第1枢着部
13B・・・第2枢着部
14・・・ラチェット部
14A・・・第1ラチェット部
14B・・・第2ラチェット部
A・・・医療用鉗子
C・・・・支軸ピン
C1・・・第1支軸ピン
C2・・・第2支軸ピン
D・・・作用軸ピン
D1・・・第1作用軸ピン
D2・・・第2作用軸ピン
E・・・爪