(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135108
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】高圧容器
(51)【国際特許分類】
F17C 13/04 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
F17C13/04 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034703
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】井上 康史
(72)【発明者】
【氏名】藪下 真大
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】鴨 三範
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172BA01
3E172BB12
3E172BB17
3E172CA12
3E172JA01
(57)【要約】
【課題】軸方向の耐力を得やすく、高圧充填に耐え、長期間に亘ってガス漏れが生じない構造であって、かつ、封止部材に、例えば、容器弁の弁機構等の各種機構を適用することができる高圧容器を提供すること。
【解決手段】容器本体1の口金部11に内部側から平行雌ねじ41及びテーパー雌ねじ51をその順に形成し、封止部材2、3を、平行雌ねじ41に螺合する平行雄ねじ42を形成し、この平行雌ねじ41と平行雄ねじ42の螺合箇所より内部側に第1のシール部材6を配設した第1の封止部材2と、テーパー雌ねじ51に螺合するテーパー雄ねじ52を形成した第2の封止部材3とで構成し、第1の封止部材2と第2の封止部材3とを、第1の封止部材2から延出し、第2の封止部材3に第2のシール部材7を配設して挿入されるガス流路を形成した管部21によって接続し、管部21の外周側の第1の封止部材2と第2の封止部材3の間に、中間室8を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口金部に封止部材を螺合することによって、容器本体の口金部を封止するようにした高圧容器において、
前記容器本体の口金部に内部側から平行雌ねじ及びテーパー雌ねじをその順に形成し、前記封止部材を、
前記平行雌ねじに螺合する平行雄ねじを形成し、第1のシール部材を配設した第1の封止部材と、
前記テーパー雌ねじに螺合するテーパー雄ねじを形成した第2の封止部材とで構成し、
前記第1の封止部材と第2の封止部材とを、第1の封止部材又は第2の封止部材から延出し、第2の封止部材又は第1の封止部材に第2のシール部材を配設して挿入されるガス流路を形成した管部によって接続し、
前記管部の外周側の第1の封止部材と第2の封止部材の間に、中間室を形成するようにしたことを特徴とする高圧容器。
【請求項2】
前記第1の封止部材がバルブホルダを、第2の封止部材が弁箱を、それぞれ構成し、第1の封止部材から延出し、第2の封止部材に挿入されるガス流路を形成した管部の先端にバルブを配設するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の高圧容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガスや液化ガス等を充填して、保管するために使用される高圧容器に関し、特に、高圧ガスや液化ガス等を充填後、高圧状態のまま保管するための高圧容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧ガスや液化ガス等を充填する高圧容器はさまざまな分野で使用されているが、例えば、消火剤ガスの技術分野において、充填圧力を60MPa又はそれ以上に高めて、ガス充填量を増やすことの要請があり、そのために高圧充填に耐え、例えば、15年以上の長期間に亘ってガス漏れが生じない構造の高圧容器が必要になっている。
【0003】
ところで、この種の高圧容器は、容器本体の口金部に、弁機構(容器弁)や封止プラグ等からなる封止部材(本明細書において、単に、「封止部材」という。)を螺合することによって、容器本体の口金部を封止するようにされている。
【0004】
より具体的には、高圧容器の容器本体の口金部に平行雌ねじを形成するとともに、封止部材に前記平行雌ねじに螺合する平行雄ねじを形成し、さらに、シール部材を配設する構造にしたり(例えば、特許文献1参照。)、高圧容器の容器本体の口金部にテーパー雌ねじを形成するとともに、封止部材に前記テーパー雌ねじに螺合するテーパー雄ねじを形成する構造が採用されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された、平行ねじによる螺合構造は、高圧充填に耐えるための軸方向の耐力を得やすいという利点を有する反面、温度変化や振動によって、弛みが発生しやすいという問題があり、一方、特許文献2に開示された、テーパーねじによる螺合構造は、螺合構造単独でシールができるという利点を有する反面、高圧充填に耐えるための軸方向の耐力を得にくいという問題があった。
【0006】
この問題に対処するために、平行ねじとテーパーねじを組み合わせた螺合構造が本件出願人らによって提案されている(例えば、特許文献3~5参照。)が、封止部材に、例えば、容器弁の弁機構等の各種機構(例えば、特許文献6に記載された減圧機構を備えた容器弁等。)を適用するための具体的な構造については、検討課題とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-279000号公報
【特許文献2】特開平7-260096号公報
【特許文献3】特開平10-332085号公報
【特許文献4】特開2018-179151号公報
【特許文献5】特開2018-189099号公報
【特許文献6】特開2008-175261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の高圧容器の有する問題点に鑑み、軸方向の耐力を得やすく、高圧充填に耐え、長期間に亘ってガス漏れが生じない構造であって、かつ、封止部材に、例えば、容器弁の弁機構等の各種機構を適用することができる高圧容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の高圧容器は、
容器本体の口金部に封止部材を螺合することによって、容器本体の口金部を封止するようにした高圧容器において、
前記容器本体の口金部に内部側から平行雌ねじ及びテーパー雌ねじをその順に形成し、前記封止部材を、
前記平行雌ねじに螺合する平行雄ねじを形成し、第1のシール部材を配設した第1の封止部材と、
前記テーパー雌ねじに螺合するテーパー雄ねじを形成した第2の封止部材とで構成し、
前記第1の封止部材と第2の封止部材とを、第1の封止部材又は第2の封止部材から延出し、第2の封止部材又は第1の封止部材に第2のシール部材を配設して挿入されるガス流路を形成した管部によって接続し、
前記管部の外周側の第1の封止部材と第2の封止部材の間に、中間室を形成するようにしたことを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記第1の封止部材がバルブホルダを、第2の封止部材が弁箱を、それぞれ構成し、第1の封止部材から延出し、第2の封止部材に挿入されるガス流路を形成した管部の先端にバルブを配設するようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高圧容器によれば、軸方向の耐力を得やすく、高圧充填に耐え、長期間に亘ってガス漏れが生じない構造であって、かつ、封止部材に、例えば、容器弁の弁機構等の各種機構を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の高圧容器の第1実施例を示す断面図である。
【
図2】本発明の高圧容器の第2実施例を示す断面図である。
【
図3】本発明の高圧容器の第3実施例を示す断面図である。
【
図4】本発明の高圧容器の第4実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の高圧容器の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に、本発明の高圧容器の第1実施例を示す。
この高圧容器は、容器本体1の口金部11に封止部材2、3を螺合することによって、容器本体1の口金部11を封止するようにした高圧容器において、容器本体1の口金部11に内部側から平行雌ねじ41及びテーパー雌ねじ51をその順に形成し、封止部材2、3を、平行雌ねじ41に螺合する平行雄ねじ42を形成し、この平行雌ねじ42と平行雄ねじ41の螺合箇所より内部側に第1のシール部材6を配設した第1の封止部材2と、テーパー雌ねじ51に螺合するテーパー雄ねじ52を形成した第2の封止部材3とで構成し、第1の封止部材2と第2の封止部材3とを、第1の封止部材2から延出し、第2の封止部材3に第2のシール部材7を配設して挿入されるガス流路を形成した管部21によって接続し、管部21の外周側の第1の封止部材2と第2の封止部材3の間に、中間室8を形成するようにしている。
【0015】
ここで、テーパー雌ねじ51とテーパー雄ねじ52からなるテーパーねじのねじ径は、平行雌ねじ41と平行雄ねじ42からなる平行ねじのねじ径より大きく設定するようにする。
【0016】
そして、本実施例においては、第1の封止部材2がバルブホルダを、第2の封止部材3が弁箱を、それぞれ構成し、第1の封止部材2から延出し、第2の封止部材3に第2のシール部材を配設して挿入されるガス流路を形成した管部の先端にバルブ9を配設するようにすることができる。
【0017】
なお、ガス流路を形成した管部21は、本実施例においては、第1の封止部材2から延出するようにしているが、第2の封止部材3から延出し、第1の封止部材2に第2のシール部材7を配設して挿入されるようにすることもできる。
【0018】
また、平行雄ねじ42やテーパー雄ねじ52の表面にシール用テープ等のシール部材やシール剤を施して、平行雌ねじ41やテーパー雌ねじ51に螺合するようにすることができる。
【0019】
また、シール部材6、7は、例えば、エラストマー製、フッ素樹脂等の合成樹脂製、ステンレススチール等の金属製のOリングやガスケットを単独で用いたり、バックアップリングと組み合わせて用いる等、従来から汎用されているシール部材(シール構造)を適宜採用することができる。
【0020】
ここで、シール部材6を配設する溝は、第1の封止部材2及び容器本体1の口金部11のいずれに形成することもでき、また、シール部材7を配設する溝は、第1の封止部材2及び第2の封止部材3のいずれに形成することもできる。
【0021】
また、シール部材6は、本実施例においては、第1の封止部材2の周面に配設するようにしているが、
図2の本発明の高圧容器の第2実施例に示すように、第1の封止部材2の端面が当接する容器本体1の口金部11(又は封止部材2の端面側(図示省略))に配設するようにすることもできる。このように、第1の封止部材2の端面と容器本体1の口金部11とが当接することで隙間が実質的に存在しないか、存在しても極めて小さい箇所にシール部材6を配設することにより、シール部材6に偏った負荷がかかることを防止でき、耐久性等の点で優位性がある。
【0022】
このほか、シール部材6を、
図3の本発明の高圧容器の第3実施例に示すように、平行雌ねじ42と平行雄ねじ41の螺合箇所より外部側の第1の封止部材2の周面に配設するようにすることもできる。
【0023】
この高圧容器によれば、平行雌ねじ41と平行雄ねじ42からなる平行ねじによる螺合構造と、テーパー雌ねじ42とテーパー雄ねじ52からなるテーパーねじによる螺合構造との2箇所の螺合構造によって、軸方向の耐力を得やすく、高圧充填に耐え、長期間に亘ってガス漏れが生じない構造であって、かつ、封止部材に、例えば、容器弁の弁機構等の各種機構を適用すること(例えば、
図4の本発明の高圧容器の第4実施例に示すように、封止部材に、特許文献6に記載された減圧機構を備えた容器弁10の構造を適用すること)ができる。
特に、封止部材を第1の封止部材2及び第2の封止部材3に分割し、その間に、中間室8を形成することで、第2の封止部材3を構成する弁箱に加わる内圧を制限し、必要なねじ長さを短くできる。
また、容器本体1の内部から大気間に、シール部材6、7及びテーパー雌ねじ42とテーパー雄ねじ52からなるテーパーねじによる螺合構造を有することで、テーパーねじによる螺合構造単体よりも高気密性を確保でき、ガスの漏洩を確実に防止することができる。
【0024】
以上、本発明の高圧容器について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実
施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の高圧容器は、軸方向の耐力を得やすく、高圧充填に耐え、長期間に亘ってガス漏れが生じない構造であって、かつ、封止部材に、例えば、容器弁の弁機構等の各種機構を適用することができることから、消火剤ガスを充填、保管する高圧容器に好適に用いることができるほか、高圧ガスや液化ガス等を充填する、保管する高圧容器に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 容器本体
11 口金部
2 第1の封止部材
3 第2の封止部材
41 平行雌ねじ
42 平行雄ねじ
51 テーパー雌ねじ
52 テーパー雄ねじ
6 シール部材
7 シール部材
8 中間室
9 バルブ
10 減圧機構を備えた容器弁