(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013512
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】クランクシャフトの自動芯出し装置とその自動芯出し制御装置及び自動芯出し制御方法
(51)【国際特許分類】
G01M 1/02 20060101AFI20220111BHJP
G01M 1/16 20060101ALI20220111BHJP
F16C 3/04 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G01M1/02
G01M1/16
F16C3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020128699
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】392036131
【氏名又は名称】株式会社フジテクノ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 積男
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 治
【テーマコード(参考)】
2G021
3J033
【Fターム(参考)】
2G021AB03
2G021AC03
2G021AD02
2G021AM11
3J033AA02
3J033AC01
(57)【要約】
【課題】単気筒エンジンに使用されるクランクシャフトの芯出しに係わり、特に、完全自動化した自動芯出し装置とその自動芯出し制御装置及び制御方法に関する。
【解決手段】 自動芯出装置100は、少なくとも、クランクシャフトKの支持旋回手段10と、上記クランクシャフトの各旋回角度単位α°又は連続測定する測定表示手段20と、上記測定表示手段から得られた測定振れ値Xに対応してクランクシャフトの旋回角度単位毎に、測定振れ値を許容値内に納めるハンマー手段30と、クランクシャフトのクランクウエブK1,K2を打撃時に該クランクウエブの衝撃を受止め手段40からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトの両端軸部を支持する支持旋回手段と、上記クランクシャフトの旋回角度単位に軸振れ及び芯ズレを連続測定する左右一対の軸振れ測定表示手段と、上記各軸振れ測定表示手段から得られた測定振れ値又は芯ズレ値に対応してクランクシャフトの旋回角度単位毎に測定振れを許容値内に納めるべく一対のクランクウエブにおける芯振れ又は芯ズレした側のクランクウエブを投打する左右一対のハンマー手段と、上記ハンマー手段で投打されない側のクランクウエブの旋回を拘束する左右一対のブレーキ手段及び上記各クランクウエブの芯振れしない側を受け止める左右一対の受止め手段及びクランクピンを受止める止棒手段と、上記各手段をシーケンシャル制御する制御手段と、を具備したことを特徴とするクランクシャフトの自動芯出し装置。
【請求項2】
上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、支持旋回手段は、機台上に左右一対の芯押し軸を備え、上記芯押し軸を進退可能とするとともに、上記芯押し軸の旋回制御部を備えてなることを特徴とするクランクシャフトの自動芯出し装置。
【請求項3】
上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、軸振れ測定表示手段は、機台上に左右一対備え、クランクシャフトの両側軸又はクランクウエブの軸振れ値又は芯ズレ値を旋回角度単位毎に検出表示すると共に軸旋回位置とハンマー手段の振り回し打撃力を算出して打撃制御値とすることを特徴とするクランクシャフトの自動芯出し装置。
【請求項4】
上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記ハンマー手段は、機台上の各クランクウエブ上に左右一対備え、各クランクウエブへの打撃力とその打撃速度をトルク制御するサーボモータを備え、上記軸振れ測定表示手段からの軸振れ値又は芯ズレ値に基づいて設定される打撃制御値により作動されることを特徴とするクランクシャフトの自動芯出し装置。
【請求項5】
上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記ブレーキ手段は、機台上の各クランクウエブの対称位置に各々一対備え、上記各クランクウエブにおいて、軸振れ又は芯ズレしないクランクウエブ側を回転拘束させ、軸振れしたクランクウエブ側を自由回転可能としたことを特徴とするクランクシャフトの自動芯出し装置。
【請求項6】
上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記受止め手段と止棒手段は、上記各ハンマー手段とは各クランクウエブを介した反対側に各一対配置され、ハンマー手段の打撃力を受けない側のクランクウエブの受止め手段を機能させて打撃力を吸収させるとともにクランクピンを受止める止棒手段を休止させ、ハンマー手段の打撃力を受ける側のクランクウエブの受止め手段を開放させるとともにクランクピンを受止める止棒手段を機能させ、クランクウエブの打撃変位を許容することを特徴とするクランクシャフトの自動芯出し装置。
【請求項7】
上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記制御手段は、上記支持旋回手段に備えるクランクシャフトの芯押し軸を進退駆動するほかサーボモータの旋回制御部により旋回駆動させ、更に、軸振れ測定表示手段は、両クランクウエブの各軸芯方向の折れ曲がりとなるクランクシャフトのクランクウエブ両側の軸振れ測定値を検出表示すると共に、軸振れ値が許容値を超えた側のクランクウエブとこの軸旋回角度位置とハンマー手段のトルク制御値を定め、更に、上記ハンマー手段で投打されない側のクランクウエブの旋回を拘束すべくブレーキ手段を起動させるとともに上記クランクウエブの軸振れを拘束する受止め手段を起動させ、軸振れ許容値を超えた側のクランクウエブを自由状態とすべく該ブレーキ手段と受止め手段とを機能開放させた状態において、上記ハンマー手段を作動させて軸振れ修正させ、ハンマー打撃後に再度軸振れ測定表示手段で軸振れ値を検知し、上記軸振れ測定値が許容値内に納められるまで、上記各手段を繰返し制御させる自動シーケンシャル制御機能を具備したことを特徴とするクランクシャフトの自動芯出し制御装置。
【請求項8】
上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し制御装置において、上記制御手段は、上記支持旋回手段に備えるクランクシャフトの芯押し軸を進退駆動するほかサーボモータの旋回制御部により旋回駆動させ、軸振れ測定表示手段は、両クランクウエブの各軸芯位置の芯ズレとなるクランクシャフトのクランクウエブ両側の芯ズレ測定値を検出表示すると共に、芯ズレ値が許容値を超えた側のクランクウエブとこの軸旋回角度位置とハンマー手段のトルク制御値を定め、上記ハンマー手段で投打されない側のクランクウエブの旋回を拘束すべくブレーキ手段を起動させるとともに上記クランクウエブの軸ズレを拘束する受止め手段を起動させ、上記芯ズレ許容値を超えた側のクランクウエブを自由状態とすべく該ブレーキ手段を開放させるとともに、上記クランクウエブのクランクピンを止棒手段の凸棒で拘束してハンマー手段の打撃力を受止める状態とし、上記状態にて、上記ハンマー手段を作動させて芯ズレした側のクランクウエブを打撃して軸ズレを修正させ、ハンマー打撃後に再度軸振れ測定表示手段で芯ズレ測定値を検知し、上記芯ズレ測定値が許容値内に納められるまで、上記各手段を繰返し制御させる自動シーケンシャル制御機能を具備したことを特徴とするクランクシャフトの自動芯出し制御装置。
【請求項9】
上記請求項7のクランクシャフトの自動芯出し制御装置において、上記制御手段により、上記支持旋回手段に備えるクランクシャフトの芯押し軸を進退駆動するほかサーボモータの旋回制御部により旋回駆動させ、軸振れ測定表示手段は、両クランクウエブの各軸芯方向の折れ曲がりとなるクランクシャフトのクランクウエブ両側軸振れ測定値を検出表示すると共に、軸振れ値が許容値を超えた側のクランクウエブとこの軸旋回角度位置とハンマー手段のトルク制御値を定め、更に、上記ハンマー手段で投打されない側のクランクウエブの旋回を拘束すべくブレーキ手段を起動させるとともに上記クランクウエブの芯振れを拘束する受止め手段を起動させ、軸振れ許容値を超えた側のクランクウエブを自由状態とすべく該ブレーキ手段と受止め手段とを機能開放させた状態において、上記ハンマー手段を作動させて軸振れ修正させ、ハンマー打撃後に再度軸振れ測定表示手段で軸振れ値を検知し、上記軸振れ測定値が許容値内に納められるまで、上記各手段を繰返し自動制御させることを特徴とするクランクシャフトの自動芯出し制御方法。
【請求項10】
上記請求項8のクランクシャフトの自動芯出し制御装置において、上記制御手段により、上記支持旋回手段に備えるクランクシャフトの芯押し軸を進退駆動するほかサーボモータの旋回制御部により旋回駆動させ、軸振れ測定表示手段は、両クランクウエブの各軸芯位置の芯ズレとなるクランクシャフトのクランクウエブ両側軸ズレ測定値を検出表示すると共に、芯ズレ値が許容値を超えた側のクランクウエブとこの軸旋回角度位置とハンマー手段のトルク制御値を定め、上記ハンマー手段で投打されない側のクランクウエブの旋回を拘束すべくブレーキ手段を起動させるとともに上記クランクウエブの芯ズレを拘束する受止め手段を起動させ、上記芯ズレ許容値を超えた側のクランクウエブを自由状態とすべくブレーキ手段を開放させるとともに、上記クランクウエブのクランクピンを止棒で拘束してハンマー手段の打撃力を受止める状態において、上記ハンマー手段を作動させて軸ズレした側のクランクウエブを打撃して軸ズレ修正させ、ハンマー打撃後に再度軸振れ測定表示手段で芯ズレ測定値を検知し、上記芯ズレ測定値が許容値内に納められるまで、上記各手段を繰返し自動制御させることを特徴とするクランクシャフトの自動芯出し制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに使用される組み立て式のクランクシャフトの芯出しに係わり、特に、従来から単気筒用クランクシャフトの組立と、この後の芯出し工程は熟練工の手作業によっていたが、これを完全自動化した自動芯出し装置とその自動芯出し制御装置とその自動芯し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オートバイや草刈機の単気筒エンジンの組立式のクランクシャフトの芯出し作業は、
図15(a)において、クランクシャフトKは、コンロッドCを支持するクランクピンPで連結されたコ字状部材(クランクウエブ)1,1の両端穴1aに各ベアリングを嵌合するシャフトS1,S2の基端部がカシメ連結して組立てられている。この組立作業後は、熟練工の作業者により、定盤P上の2つのVブロック2,3に左右のシャフトの基部を直接又はベアリングを介して乗せ、各シャフトの末端近くにダイヤルゲージG1,G2の触針を当てた状態で、シャフトを手回し回転させてダイヤルゲージの振れ幅の大小を測定する。そして、
図15(b)に示す場合は、両シャフトS1,S2の各先端側の振れ幅が上方向A1,A2に大きく芯振れしたことを意味する。そこで、
図16(a)に示すように、突出下側(ダイヤルゲージG1,G2が最大に振れる回転位置を上側とし、クランクピンPの右側のコ字状部材1の右端をハンマー(樹脂製)60で叩くと、コ字状部材1は矢線Y1で示す捻り力が働き、シャフトS2の軸心O2をクランクピンPの軸心方向O1に合わせるべく微調節しながらハンマー操作を繰り返えされる。尚、左側のコ字状部材1も同様にハンマー操作され、最終的に両シャフトS1,S2の軸心O1,O2が一直線状になるまで芯出作業を繰り返し、最終的に許容値内に納めている。
【0003】
また、
図16(b)の場合は、右側シャフトS2の先端側のみの振れ幅が下方向A2に大きく芯振れした状態を示し、右側のコ字状部材1の右端をハンマー60でクランクピンPの方向に叩くと、コ字状部材1は矢線Y2で示す捻り力が働き、上記右シャフトS2の軸心O2が上記右シャフトS1の軸心O1と一直線状になるまで芯出し作業が繰り返えされる。尚、
図15(b)に示す如く、振れ幅がC,D方向にも捻りが有ればこの方向の芯出し作業も実施される。そして、振れ幅が各方向に対して5~3/100mm程度以下になるまで、上記芯出し作業が熟練工により繰り返えされる(非特許文献1)。
【0004】
また、特許文献2は、欠肉や凹み疵等のクランクシャフトに部分的に生じる欠陥を、クランクシャフトの全長に亘る曲がりやねじれと区別して精度良く検出する検査方法を提供している。その構成は、光学式の3次元形状測定装置1によってクランクシャフトSの測定対象領域全長に亘る3次元点群データを取得するステップと、取得した3次元点群データをクランクシャフトの回転中心軸Lに平行な方向に沿った複数の小領域毎に分割し、複数の小領域3次元点群データを生成するステップと、生成したデータ毎にクランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となるように、小領域3次元点群データをそれぞれ平行移動及び回転移動させて表面形状モデルに重ね合わせるステップと、重ね合わせた後の小領域3次元点群データと表面形状モデルとの距離に基づき、クランクシャフトの欠肉等の部分的な欠陥を検出するステップを含むものである(特許文献2)。
【0005】
また、特許文献3は、素材クランクシャフトのうち各カウンタウェイトの外形形状を精度良く測定可能なクランクシャフト形状測定機およびクランクシャフト形状測定方法である。その構成は、クランクシャフト形状測定機100は、CW1~CW8を有する素材クランクシャフト1の両端部を把持する第1及び第2チャック装置10,20と、素材クランクシャフト1の外形形状を測定する2次元光学式変位計40を備えるものである(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】WEB:私的・クランクシャフト芯出し方法
【特許文献2】再公表特許W02016/194728号公報
【特許文献3】特開2018-115902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1は、熟練工の作業者により、2つのVブロックにクランクシャフトの左右シャフト(支軸)を乗せ、各シャフト端にダイヤルゲージを当てた状態で、シャフトを回転させてダイヤルゲージの振れ幅の大小を測定する。そして、振れ幅が大きく変位したプラス側のコ字状部材(クランクウエブ又はカウンターウエイト)をハンマーで叩いて、左右シャフトの芯出し作業を繰り返し行い、最終的に許容値5~3/100mm程度内に納めている。上記芯出し作業は、自動化が非常に困難で均一化された芯出し品質は、現在も技能者の感と能力に任せられている。しかして、多量生産されるクランクシャフトに対する芯ズレ、芯振れの均一な品質保証は、自動化技術が成されていないし、作業能率も極めて低いと言う問題が残存している。
【0008】
また、特許文献2は、欠肉や凹み疵等のクランクシャフトに部分的に生じる欠陥を、クランクシャフトの全長に亘る曲がりやねじれと区別して精度良く検出する検査方法及び装置であり、本発明とはその目的、構成手段や作用が大きくなり、本発明とは異なる技術である。
【0009】
また、特許文献3は、素材クランクシャフトのうち各カウンタウェイトの外形形状を精度良く測定可能なクランクシャフト形状測定機およびクランクシャフト形状測定方法を提供するものであり、本発明とはその目的、構成手段や作用が大きくなり、本発明とは全く異なる技術である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特に、上記非特許文献1にみられる問題点や課題を解決すべく、技能者が持つ数々のノウハウを芯出し自動化装置に盛り込むべく、開発したものである。即ち、クランクシャフトの芯出しを完全自動化して大量生産を可能とするもので、オートバイや草刈機の単気筒エンジンから多気筒エンジンの組立式クランクシャフトの芯出し作業を完全自動化したクランクシャフトの自動芯出装置とその自動芯出制御装置と自動芯出制御方法を提供するものである。
【0011】
即ち、本発明の請求項1のクランクシャフトの自動芯し装置は、クランクシャフトの両端軸部を支持する支持旋回手段と、上記クランクシャフトの旋回角度単位に軸振れ及び軸ズレを連続測定する左右一対の軸振れ測定表示手段と、上記各軸振れ測定表示手段から得られた測定振れ値又は軸ズレ値に対応してクランクシャフトの旋回角度単位毎に測定振れを許容値内に納めるべく一対のクランクウエブにおける芯振れし又は軸ズレした側のクランクウエブを投打する左右一対のハンマー手段と、上記ハンマー手段で投打されない側のクランクウエブの旋回を拘束する左右一対のブレーキ手段及び上記各クランクウエブの芯振れしない側を受け止める左右一対の受止め手段及びクランクピンを受止める止棒手段と、上記各手段をシーケンシャル制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする
【0012】
請求項2のクランクシャフトの自動芯出し装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、支持旋回手段は、機台上に左右一対の芯押し軸を備え、上記芯押し軸の少なくとも片側を進退可能とするとともに、上記芯押し軸の旋回制御部を備えてなることを特徴とする。
【0013】
請求項3のクランクシャフトの自動芯出し装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、軸振れ測定表示手段は、機台上に左右一対備え、クランクシャフトの両側軸又はクランクウエブの軸振れ値を旋回角度単位毎に検出表示すると共に軸旋回位置とハンマー手段の振り回し打撃力を算出して打撃制御値とすることを特徴とする。
【0014】
請求項4のクランクシャフトの自動芯し装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記ハンマー手段は、機台上の各クランクウエブ上に左右一対備え、各クランクウエブへの打撃力とその打撃速度をトルク制御するサーボモータを備え、上記軸振れ測定表示手段からの軸振れ値に基づいて設定されるトルク制御値により作動されることを特徴とする。
【0015】
請求項5のクランクシャフトの自動芯出し装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記ブレーキ手段は、機台上の各クランクウエブの対称位置に各々一対備え、上記各クランクウエブにおいて、軸振れしたクランクウエブ側を回転拘束させ、軸振れしないクランクウエブ側を自由回転可能としたことを特徴とする。
【0016】
請求項6のクランクシャフトの自動芯出し制御装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記受止め手段と止棒手段は、上記各ハンマー手段とは各クランクウエブを介した反対側に各一対配置され、ハンマー手段の打撃力を受けない側のクランクウエブの受止め手段を機能させて打撃力を吸収させるとともにクランクピンを受止める止棒手段を休止させ、ハンマー手段の打撃力を受ける側のクランクウエブの受止め手段を開放させるとともにクランクピンを受止める止棒手段を機能させ、クランクウエブの打撃変位を許容することを特徴とする。
【0017】
請求項7のクランクシャフトの自動芯出し制御装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記制御手段は、上記支持旋回手段に備えるクランクシャフトの芯押し軸を進退駆動するほかサーボモータの旋回制御部により旋回駆動させ、更に、軸振れ測定表示手段は、両クランクウエブの各軸芯方向の折れ曲がりとなるクランクシャフトのクランクウエブ両側の軸振れ測定値を検出表示すると共に、軸振れ値が許容値を超えた側のクランクウエブとこの軸旋回角度位置とハンマー手段のトルク制御値を定め、更に、上記ハンマー手段で投打されない側のクランクウエブの旋回を拘束すべくブレーキ手段を起動させるとともに上記クランクウエブの芯振れを拘束する受止め手段を起動させ、軸振れ許容値を超えた側のクランクウエブを自由状態とすべく該ブレーキ手段と受止め手段とを機能開放させた状態において、上記ハンマー手段を作動させて軸振れ修正させ、ハンマー打撃後に再度軸振れ測定表示手段で軸振れ値を検知し、上記軸振れ測定値が許容値内に納められるまで、上記各手段を繰返し制御させる自動シーケンシャル制御機能を具備したことを特徴とする。
【0018】
請求項8のクランクシャフトの自動芯出し制御装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記制御手段は、上記支持旋回手段に備えるクランクシャフトの芯押し軸を進退駆動するほかサーボモータの旋回制御部により旋回駆動させ、軸振れ測定表示手段は、両クランクウエブの各軸芯位置の芯ズレとなるクランクシャフトのクランクウエブ両側の芯ズレ測定値を検出表示すると共に、芯ズレ値が許容値を超えた側のクランクウエブとこの軸旋回角度位置とハンマー手段のトルク制御値を定め、上記ハンマー手段で投打されない側のクランクウエブの旋回を拘束すべくブレーキ手段を起動させるとともに上記クランクウエブの芯ズレを拘束する受止め手段を起動させ、上記芯ズレ許容値を超えた側のクランクウエブを自由状態とすべく該ブレーキ手段を開放させるとともに、上記クランクウエブのクランクピンを止棒手段の凸棒で拘束してハンマー手段の打撃力を受止める状態とし、上記状態にて、上記ハンマー手段を作動させて軸ズレした側のクランクウエブを打撃して芯ズレを修正させ、ハンマー打撃後に再度軸振れ測定表示手段で芯ズレ測定値を検知し、上記芯ズレ測定値が許容値内に納められるまで、上記各手段を繰返し制御させる自動シーケンシャル制御機能を具備したことを特徴とする。
【0019】
請求項9のクランクシャフトの自動芯出し制御方法は、上記請求項7のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記制御手段により、上記支持旋回手段に備えるクランクシャフトの芯押し軸を進退駆動するほかサーボモータの旋回制御部により旋回駆動させ、軸振れ測定表示手段は、両クランクウエブの各軸芯方向の折れ曲がりとなるクランクシャフトのクランクウエブ両側軸振れ測定値を検出表示すると共に、軸振れ値が許容値を超えた側のクランクウエブとこの軸旋回角度位置とハンマー手段のトルク制御値を定め、更に、上記ハンマー手段で投打されない側のクランクウエブの旋回を拘束すべくブレーキ手段を起動させるとともに上記クランクウエブの芯振れを拘束する受止め手段を起動させ、軸振れ許容値を超えた側のクランクウエブを自由状態とすべく該ブレーキ手段と受止め手段とを機能開放させた状態において、上記ハンマー手段を作動させて軸振れ修正させ、ハンマー打撃後に再度軸振れ測定表示手段で軸振れ値を検知し、上記軸振れ測定値が許容値内に納められるまで、上記各手段を繰返し自動制御させることを特徴とする。
【0020】
請求項10のクランクシャフトの自動芯出し制御方法は、上記請求項8のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記制御手段により、上記支持旋回手段に備えるクランクシャフトの芯押し軸を進退駆動するほかサーボモータの旋回制御部により旋回駆動させ、軸振れ測定表示手段は、両クランクウエブの各軸芯位置の軸ズレとなるクランクシャフトのクランクウエブ両側芯ズレ測定値を検出表示すると共に、芯ズレ値が許容値を超えた側のクランクウエブとこの軸旋回角度位置とハンマー手段のトルク制御値を定め、上記ハンマー手段で投打されない側のクランクウエブの旋回を拘束すべくブレーキ手段を起動させるとともに上記クランクウエブの芯ズレを拘束する受止め手段を起動させ、上記芯ズレ許容値を超えた側のクランクウエブを自由状態とすべく該ブレーキ手段を開放させるとともに、上記クランクウエブのクランクピンを止棒で拘束してハンマー手段の打撃力を受止める状態において、上記ハンマー手段を作動させて芯ズレした側のクランクウエブを打撃して芯ズレ修正させ、ハンマー打撃後に再度軸振れ測定表示手段で芯ズレ測定値を検知し、上記芯ズレ測定値が許容値内に納められるまで、上記各手段を繰返し自動制御させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置によると、クランクシャフトの支持旋回手段と、各クランクウエブの軸振れ測定表示手段と、各クランクウエブのハンマー手段とこからの衝撃受止め手段と、上記各手段等をシーケンシャル制御する制御手段と、を具備したから、従来から行われている組立式のクランクシャフトの芯出し作業は、熟練工による手作業から完全に解放され、完全自動化して軸芯振れの無い高品質な組立式のクランクシャフトの大量生産が可能となる。
【0022】
本発明の請求項2のクランクシャフトの自動芯出し装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出装置において、支持旋回手段は、機台上に左右一対の芯押し軸を備え、上記芯押し軸の少なくとも片側を進退可能とするとともに、上記芯押し軸の旋回制御部を備えてなるから、自動化ラインでのクランクシャフトの支持旋回手段への着脱(搬入・搬出)が無人で行なえる上に、保持したクランクシャフトの旋回時の軸芯振れ測定を正確に保証することができる。
【0023】
本発明の請求項3のクランクシャフトの自動芯し装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出装置において、軸振れ測定表示手段は、クランクシャフトの各旋回角度単位若しくは連続測定する接触式乃至非接触式の電子旋回計測信号機能と表示機能と出力機能を具備したから、クランクシャフトの旋回角度位置と芯振れ値とが表示出力されるから、ハンマー手段がクランクシャフト旋回位置に対応したクランクウエブに対する打撃力と受止め手段による打撃力の減衰を自動制御させる情報源となる。
【0024】
本発明の請求項4のクランクシャフトの自動芯出し装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記ハンマー手段は樹脂製ハンマー等を機台上に左右一対備え、クランクウエブへの打撃力を自動制御するトルク・スピード制御可能なサーボモータを備える。即ち、上記軸振れ測定表示手段からの軸振れに基づくトルク・スピード制御値・振れ制御値(打撃値)に基づきハンマー動作されるから、ハンマー手段のクランクウエブへの打撃力を自在にコントロールできる。
【0025】
本発明の請求項5のクランクシャフトの自動芯出し装置は、上記請求項1のクランクシャフトの自動芯出し装置において、上記ブレーキ手段は、機台上の各クランクウエブの対称位置に各々一対備え、軸振れ又は軸ズレしないクランクウエブ側を回転拘束させ、軸振れ又は軸ズレしたクランクウエブ側を自由回転可能とし、ハンマー作用による打撃力での軸振れ修正作用を補助できる。
【0026】
本発明の請求項6の受止め手段は、各ハンマー手段とは各クランクウエブを介した反対側に各一対配置され、ハンマー手段の打撃力を受けない側のクランクウエブの受止め手段を機能させて打撃力を吸収減衰させ、ハンマー手段の打撃力を受ける側のクランクウエブの受止め手段を開放してクランクウエブの打撃変位を許容するから、軸振れしたクランクウエブ側に対するハンマー作用による打撃力での軸振れ修正作用を補助できる。
【0027】
本発明の請求項7のクランクシャフトの自動芯出し制御装置よると、軸振れ許容値を超えた側のクランクウエブのみを自由状態とすべく該ブレーキ手段と受止め手段とを機能開放させた状態において、上記ハンマー手段を作動させて軸振れ修正させ、ハンマー打撃後に再度軸振れ測定表示手段で軸振れ値を検知し、上記軸振れ測定値が許容値内に納められるまで、上記各手段を繰返し制御させる自動シーケンシャル制御機能が発揮できる。
【0028】
本発明の請求項8のクランクシャフトの自動芯出し制御装置よると、両クランクウエブの芯ズレ(軸の中心である芯ズレ)に対し、芯ズレ許容値を超えない側のクランクウエブをブレーキ手段と受止め手段を起動して該クランクウエブを拘束し、芯ズレを起こしたクランクウエブをブレーキ手段解除して自由状態とし、該クランクウエブのクランクピンを受止め手段の凸棒でクランクピンを拘束させた状態で、該クランクウエブを所定の打撃力によるハンマー手段で叩いて芯ズレの芯位置を修正させ、ハンマー打撃後に再度軸振れ測定表示手段で芯ズレ値を検知し、上記芯ズレ測定値が許容値内に納まるまで、上記各手段を繰返し制御させる自動シーケンシャル制御機能が発揮できる。
【0029】
本発明の請求項9,10のクランクシャフトの自動芯出し制御方法は、上記請求項7,8のクランクシャフトの自動芯出し制御装置において、クランクシャフトの自動芯出し作用とその修正手順が最適化されて実施でき、円滑且つ安全に自動制御運転できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態を示し、クランクシャフトの自動芯出し装置の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態を示し、クランクシャフトの自動芯出し装置の拡大正面図である。
【
図3】本発明の実施形態を示し、クランクシャフトの正面図である。
【
図4】本発明の実施形態を示し、クランクウエブの軸振れ測定曲線図である。
【
図5】本発明の実施形態を示し、自動芯出し装置の要部の拡大正面図である。
【
図6】本発明の実施形態を示し、変形実施例のハンマー手段と傾き修正図である。
【
図7】本発明の実施形態を示し、クランクシャフトのブレーキ手段の正面図である。
【
図8】本発明の実施形態を示し、クランクシャフトの各種軸振れ芯ズレの正面図である。
【
図9】本発明の実施形態を示し、クランクウエブ傾きに対するハンマー打撃の作用図である。
【
図10】本発明の実施形態を示し、クランクウエブ傾き修正のフローチャート図である。
【
図11】本発明の実施形態を示し、クランクウエブ軸芯ズレの正面図である。
【
図12】本発明の実施形態を示し、クランクピンの止棒手段とその修正作用図である。
【
図13】軸芯ズレしたクランクシャフトの全体斜視図である。
【
図14】クランクウエブの軸芯ズレ修正のフローチャート図である。
【
図15】従来の熟練工によるクランクシャフト芯出し治具と軸振れ測定の正面図である。
【
図16】従来の熟練工による軸振れしたクランクシャフトの叩き修正作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、
図1乃至
図14を参照して本発明の実施の形態となるクランクシャフトの自動芯出し装置とその制御装置と制御方法を順次説明する。
【実施例0032】
本発明の第1の実施の形態となるクランクシャフトの自動芯出し装置100について、その実施形態を
図1~
図7で示す。先ず、組立式のクランクシャフトKは、
図3に見るように、2つのクランクウエブK1,K2がクランクピンPで繋がれ、これにクランクロッドCが係合された、単気筒用のクランクシャフトである。更に、2つのクランクウエブK1,K2には、その中心に各々のシャフトS1,S2の基部がカシメ結合され、ベアリングB1,B2が嵌合されている。尚、多気筒用クランクシャフトであれば、上記2つのクランクウエブK1,K2が2連,3連と連接された構成となり、その他の構成は単気筒用のクランクシャフトと略同一となる。
続いて、
図1,
図2に示すクランクシャフトKの自動芯出し装置100において、この機台I上には、少なくとも、上記クランクシャフトKの両側軸(シャフト)S1,S2を支持する支持旋回手段10と、上記クランクシャフトKの旋回角度単位α°毎に連続測定する両側軸(シャフト)S1,S2の中腹付近(または図示無しのベアリング外周)に対して、左右一対の軸振れ測定表示手段20と、上記各測定表示手段から得られた測定振れ値Xに対応してクランクシャフトKの旋回角度単位α°毎に測定振れを許容値内に納めるべくクランクウエブK1,K2を打撃・投打するハンマー手段30と、クランクウエブK1,K2の回転を拘束する
図7のブレーキ手段50と、上記ハンマー手段がクランクシャフトKのクランクウエブK1,K2を打撃時に該クランクウエブの衝撃を受止め吸収する楔式の受止め手段40と、
図5に示すように、該受止め手段40内にクランクウエブK1,K2のクランクピンPを下方から止棒61で回転止めする止棒手段60を備えている。更に、上記各手段10~60を予めプログラムされた手順にシーケンシャル制御する制御手段(制御装置)70と、を具備したものである。
【0033】
続いて、上記各手段10~70の構成を詳細説明する。先ず、
図2に示すように、支持旋回手段10は機台I上に左右一対の支持具13,14を備えている。そして、クランクシャフトKの両側軸(シャフト)S1,S2を支持すべく、左右の支持具13,14に装備する芯押し軸11,12が両側軸(シャフト)S1,S2の軸端を支持する。少なくとも片側(図示では左側、勿論両側でも良い)の芯押し軸11は進退可能とするとともに旋回制御部15を備えている。上記旋回制御部15は、サーボモータM1と芯押し軸11とからなり、制御手段70からの指令により、芯押し軸11が進退移動されるとともに、サーボモータM1が芯押し軸11を回転駆動させることで、これに支持連結されたクランクシャフトKは、旋回角度単位α°又は連続して低速度で回転され、クランクシャフトK全体がゆっくり回転駆動される。
【0034】
上記軸振れ測定表示手段20は、
図2に示す如く、機台I上に左右一対備え、クランクシャフトKの両側軸S1,S2におけるクランクウエブK1,K2の軸芯振れ値(芯振れ値とも言う)Xを旋回角度単位α°毎(具体的角度は任意に設定)に検出表示する。上記軸振れ測定表示手段20は、ダイヤルゲージの接触式やレーザ光線を利用した非接触式の電子センサーの何れもが採用可能である。また、軸振れ測定表示手段20は、クランクシャフトKの各旋回角度単位α°毎に、旋回計測信号機能と表示機能と出力機能を各々具備する。即ち、
図2と
図4のように軸振れ曲線(軸振れ値X)として360°の円形に出力表示される。
【0035】
上記ハンマー手段30は、特に
図5に示すように、レバー(支持棒)31の先端に樹脂製ハンマー32を備え、機台I上に左右一対備えている。上記ハンマー手段30のレバー(支持棒)31の基部には、クランクウエブK1,K2に対して垂直に打撃力F0を付与するトルクとスピートを制御可能なサーボモータM2,M3を備えている。即ち、サーボモータM2,M3は、上記軸振れ測定表示手段20からの軸振れ値Xを入力する制御手段70で演算処理されたトルク制御値Tに基づく打撃力F0を発生作動する。尚、ハンマー手段30によるクランクウエブK1,K2への打撃力(打撃値)F0の方向は、例えば、「へ」の字状に芯振れした時には、クランクウエブK1,K2の突出側をハンマー手段30で打撃力F0を与えれば良いとする単純なものではない。
【0036】
更に、
図1,
図2,
図5に示すように、上記受止め手段40は、上記ハンマー手段30とはクランクウエブK1,K2を介した反対側(下方位置)の機台Iに一対配置され、ハンマー手段30からの打撃時にクランクウエブK1,K2に与えられる打撃力F0を反対側で受止める。該受止め手段40の構成は、一対のカム板41とこの駆動シリンダC1,C2とで昇降する各受棒43からなり、上記ハンマー手段30でクランクウエブK1,K2への打撃力(打撃値)F0を与える時のみ、何れかの受棒43をクランクウエブK1またはK2に当接させる。
【0037】
更に、各クランクウエブK1,K2の回転を各々拘束するブレーキ手段50は、
図7に見るよう、各クランクウエブK1,K2の外周面を左右両側から拘束・開放するブレーキシュ51,51を各々備えている。上記ブレーキシュ51,51は、Y型の各リンク機構52が駆動シリンダC3に連結されている。これで、ロッド54が上昇すると、
図7(b)の如く開放し、
図7(a)の如く降下すると各クランクウエブK1,K2を拘束する。上記受止め手段40と上記ブレーキ手段50とは連動關係にあり、軸振れ無いクランクウエブ側の受止め手段40とブレーキ手段50は、クランクウエブを拘束動作させる。逆に、軸振れしたクランクウエブ側の受止め手段40とブレーキ手段50は、クランクウエブを開放し、ハンマー手段30による打撃力F0を受けるクランクウエブの軸振れ・芯ズレを修正させる機能を発揮する。
【0038】
上記各構成により、
図2~
図7に示すように、ハンマー手段30がクランクシャフトKの各旋回角度位置α°に対応したクランクウエブK1,K2に対する打撃力F0と受け手段40,ブレーキ手段50で自動制御する情報源となる。この情報源は、制御手段70により軸旋回位置α°とハンマー手段30の振り回しトルク制御値Tによる打撃力F0が演算処理される。
【0039】
上記クランクシャフトKの自動芯出し装置100は、上記各手段10~60をシーケンシャル制御する制御装置(詳細構成は図示無し)70により運転される。以下で説明する。先ず、上記支持旋回手段10に備える芯押し軸11,12を進退駆動してクランクシャフトKの搬入後に、サーボモータM1を備える旋回制御部13で旋回駆動される。次に、軸振れ測定表示手段20は、クランクシャフトKの各軸部S1,S2の軸振れ値Xを、360°の1回転範囲にわたり検出表示し、軸旋回位置α°毎における振れ幅Xからハンマー手段30の打撃力F0(トルク制御値T)を演算する。そして、上記打撃力F0・トルク制御値Tにより、ハンマー手段30は上記測定表示手段20から得られた軸振れた測定値Xに対応し、クランクシャフトの旋回角度単位α°毎に測定振れを許容値内に納めるべくクランクシャフトKの選択された側のクランクウエブK1又はK2をハンマー32の衝撃力F0で投打する。これに対応して、受止め手段40とブレーキ手段50は、上記ハンマー手段30がクランクシャフトKのクランクウエブK1又はK2を打撃時に、正常な側のクランクウエブK1又はK2を拘束させ、修正する側のクランクウエブK1又はK2を自由状態とし、ハンマーでの衝撃力F0を発生制御させる。しかして、上記軸振れ測定値Xが許容値内に納められるまで、上記各手段10~60を自動制御する機能を備えている。
【0040】
本発明クランクシャフトの自動芯出し装置100と制御装置(制御手段)70とを関連させるシステム構成系は、上記の如くである。尚、上記クランクシャフトKの主な芯振れ傾向形態は、
図8に示すような、3つの代表例からなる。
図8の(a)は、ハの字傾き(X方向)、
図8の(b)はZ方向傾き。
図8の(c)は逆ハの字傾き(X方向)。(d)はツイスト芯ズレ(X方向)、(e)は芯ズレ(Z方向)を示す。ここで、
図8(a)に示す、ハの字傾き(X方向)について、クランクシャフトKの修正作用を
図10に示すフローチャートと各手段による作用図で、以下に説明する。
【0041】
上記自動芯出し装置100と制御装置70によるクランクシャフトKの自動芯出し制御方法により、
図9(a)のハの字傾きNG(X方向)について、
図9(b)の如く、修正する作用を、
図10のフローチャートと上記各手段10~60の作用図で説明する。
先ず、自動芯出し装置100と制御装置70を、「スタート」Aする。これで、
図1の如く、「搬送されて来るクランクシャフトKを支持手段10の芯押し軸11,12にクランプ」Bする。ここで、
図4に示す如く「クランクウエブK1の原点hを測定表示手段20の検出点に合わせる」C。続いて、「支持手段10でクランクシャフトKを360°旋回しながら全周の芯振れ検出・表示」Dする。ここで、「芯振れ値Xの判定で、良否決定」E。「振れ判定が良好、例えば振れ幅0.005mm以下」ならば、YES信号を発信して「クランクシャフトKの芯振れ検査完了」Fで「クランクシャフトKの払出し」Gとなり、「エンド」となる。
【0042】
しかし、「芯振れ値の判定で、良否決定」Eで、N0ならば、「芯振れ補正量Xと補正回転方向位置α°の確定に基づき、ハンマー手段30の衝撃力F0のセット」Hに基づき、「ハンマー手段30は選択された側のクランクウエブK1又はK2を投打駆動」Iとする。尚、この時、正常なクランクウエブK1をブレーキ手段50と受止め手段40で回転拘束と位置拘束し、修正すべきクランクウエブK2を自由状態とされている。上記ハンマー手段30によるクランクウエブK2への衝撃力F0後に、「クランクウエブK1の原点0を測定表示手段20に合わせる」Cに、フィードバックさせ、改めて「支持手段10でクランクシャフトKを360°旋回しながら全周の芯振れ検出・表示」Dする。ここで、「芯振れ値Xの判定で、良否決定」Eする。「振れ判定が良好」ならば、YES信号を発信して「クランクシャフトKの芯振れ完了」Fで「クランクシャフトKの払出し」Gとし、「エンド」となる。まだ、振れ幅0.005mm以上で、N0ならば、上記ハンマー手段30による芯振れ補正作用が繰り返し実施される。「数回繰り返し修正しても、振れ幅0.005mm以上で、振れ判定N0ならば、
図2に示すように、不良クランクシャフトKZとして、このクランプシャフトKZを支持手段10から振り出して、不良品棚に搬出」J、「エンド」となる。
【0043】
次に、
図8(e)に示す芯ズレ(軸ズレ又は軸芯ズレとも言う)が(Z方向)を起こしたクランプシャフトKについての修正を、
図11~
図13に示すクランクウエブK1,K2に対する各手段の関係図と、
図14のフローチャートで説明する。
先ず、クランプシャフトKの軸ズレは、
図11(a)又は
図11(b)の2つの形態となり、クランクウエブK1の軸芯O1に対して、クランクウエブK2の軸芯O2は、芯ズレZを生じている。この斜視図を
図13に示す。上記クランクシャフトKは
図12の如く、自動芯出し装置100の支持手段10にセットされ、クランクウエブK1をブレーキ手段50で拘束する。反対側のクランクウエブK2をフリーとし、
図12に示すように、止棒手段60の止棒61でクランクピンPを下方から回転止めセットアップする。上記止棒手段60は、カム板62とこの進退用の駆動シリンダC3からなる。
【0044】
ここで、
図14のフローチャート図に従って、自動芯出し装置100の制御手段70により修正運転する。
先ず、自動芯出し装置100と制御装置70を「スタート」Aする。これで、
図1の如く、「搬送されて来るクランクシャフトKを支持手段10の芯押し軸11,12にクランプ」Bする。ここで、
図4に示す如く「クランクウエブK1の原点hを測定表示手段20の検出点に合わせる」C。続いて、「支持手段10でクランクシャフトKを360°旋回しながら全周の芯ズレ検出・表示」Dする。ここで、「芯ズレ値Zの判定で、良否決定」E。「芯ズレ判定が良好、例えばズレ幅0.005mm以下」ならば、YES信号を発信して「クランクシャフトKの芯ズレ検査完了」Fで「クランクシャフトKの払出し」Gとなり、「エンド」となる。
【0045】
しかし、「芯ズレ値の判定で、良否決定」Eで、N0ならば、「芯ズレ補正量Zと補正回転方向位置α°の確定に基づき、ハンマー手段30の衝撃力F0のセット」Hに基づき、「ハンマー手段30は選択された側のクランクウエブK1又はK2を投打駆動」Iとする。尚、この時、正常なクランクウエブK1をブレーキ手段50と受止め手段60で回転拘束と位置拘束し、修正すべきクランクウエブK2を自由状態とされている。上記ハンマー手段30によるクランクウエブK2への衝撃力F0後に、「クランクウエブK1の原点Oを測定表示手段20に合わせる」Cに、フィードバックさせ、改めて「支持手段10でクランクシャフトKを360°旋回しながら全周の芯ズレ検出・表示」Zする。ここで、「芯ズレ値Zの判定で、良否決定」Eする。「ズレ判定が良好」ならば、YES信号を発信して「クランクシャフトKの芯ズレ完了」Fで「クランクシャフトKの払出し」Gとし、「エンド」となる。まだ、ズレ幅0.005mm以上で、N0ならば、上記ハンマー手段30による芯ズレ補正作用が繰り返し実施される。「数回繰り返し修正しても、芯ズレ幅0.005mm以上で、ズレ判定N0ならば、
図2に示すように、不良クランクシャフトKZとして、このクランプシャフトKZを支持手段10から振り出して、不良品棚に搬出」J、「エンド」となる。
【0046】
尚、上記するハンマーの叩き方向は、必ずしも、クランクピンPの軸心方向Oに直交する方向とは限らない。即ち、
図6(a)に示すように、ハンマー32の叩き面32aを凸面とし、クランクウエブK1,K2の中央位置を凸部中央位置(ロ)、クランクウエブK1,K2の右角を凸部左角位置(イ)、クランクウエブK1,K2の左角を凸部右角位置(ハ)で叩くべく、ハンマー手段30のハンマー32を左右に微動位置修正させる図示無しの機構を盛り込んでいる。これにより、1つのハンマー手段30により、各種形態のクランクシャフトKの芯振れ修正作用に対応できる。これで、
図6(b)に示すように、クランクウエブK1,K2が左傾きの場合は、この右角をハンマー32で叩き、6図(c)に示すように、修正する。また、6図(d)に示すように、クランクウエブK1,K2が右傾きの場合は、この左角をハンマー32で叩き、
図6(c)に示すように、修正作用される。
【0047】
以上の如く、本発明のクランクシャフトの自動芯出し装置によると、従来は単気筒用のクランクシャフトの芯出し作業は熟練工による手作業から完全に解放され、完全自動化して軸芯振れの無い高品質な単気筒用クランクシャフトの大量生産が可能となる。
【0048】
また、本発明のクランクシャフトの自動芯出し装置によると、各手段をシーケンシャルに制御できるから、クランクシャフトの自動芯出し作用が円滑且つ正確に自動運転できる。
【0049】
更に、本発明のクランクシャフトの自動芯出し制御方法によると、上記クランクシャフトの自動芯出し制御装置において、クランクシャフトの自動芯出し作用が手順良く、円滑且つ安全に自動運転できる。
【0050】
尚、本発明のクランクシャフトKの自動芯出し装置100において、更なる設計変更が可能で、色々と考慮される。
その1は、上記軸振れ測定表示手段20は、
図1,
図2,
図5に示すように、左右一対の軸振れ測定表示手段20は、クランクシャフトKの両側軸(シャフト)S1,S2の軸中腹付近に備え、この軸振れ測定を行っている。しかし、クランクシャフトKの両軸端を支持旋回手段10の芯押し軸11,12で支持されているから、中央位置となるクランクウエブK1,K2が最大軸芯振れとなる。従って、出来る限り軸振れ測定表示手段20は、両クランクウエブK1,K2又はこれに接近した軸部や、
図3に図示するベアリングB1,B2の外周面を計測して軸振れ検出するのが望ましい。
【0051】
その2は、クランクシャフトKを
図15の如く、両クランクウエブ1,1に繋がる両側軸部をVブロック2,3で回転支持する設計変更ならば、両側軸(シャフト)S1,S2の軸振れを検出する方式がベストと言える。このVブロック2,3で回転支持する場合は、軸の浮き止めするローラー手段(図示なし)等を設置するのがベストとなる。
その3は、上記実施例装置100は、単気筒用のクランクシャフトKの実施例で説明したが、2気筒以上の多気筒用の組立式のクランクシャフトにおいても、実施可能である。この場合は、一対の軸振れ測定表示手段20を多連の各クランクウエブK1,K2を感知可能にシャフト)S1,S2の軸芯方向に移動させての測定を行い、ハンマー手段30とその受止め手段40,ブレーキ手段50,止棒部材60等もシャフトの軸芯方向に移動させての実施が可能である。尚、簡便的な検査方法で良いならば、多連のクランクウエブK1,K2における中央位置のクランクシャフトのみの軸振れ測定表示手段20他による検査方法でも良い。
その他、クランクシャフトKの自動芯出し装置100を製造するに際して、細部に亘り、精度向上の為の技術ノウハウを盛り込む事が重要にして可能である。
本発明のクランクシャフトの自動芯出し装置100とその制御装置と芯出し制御方法は、上記実施例のクランクシャフトの芯ズレの修正に限定されず、スプラインシャフトや軸継手の自動芯出し装置としても適用できる。更に、発明の技術的範囲内において自動芯出し装置や制御装置の設計変更や各種の芯出し制御方法が可能である。