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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135138
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】地盤変状検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20060101AFI20220908BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20220908BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G01V1/00 D
G01N27/00 J
G01N27/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034752
(22)【出願日】2021-03-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・令和2年12月18日 第62回 地盤工学シンポジウム にて発表(公益社団法人地盤工学会主催:東京都文京区千石4丁目38番2号)
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶺 聖
【テーマコード(参考)】
2G060
2G105
【Fターム(参考)】
2G060AA14
2G060AC01
2G060AF07
2G060AG03
2G060CA01
2G060FA07
2G060GA01
2G060HC15
2G060HC22
2G060HD01
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE02
2G105MM01
2G105NN02
(57)【要約】
【課題】簡単な装置構成でかつ確実に斜面等の崩壊を検知することが可能な地盤変状検知装置を提供する。
【解決手段】地盤変状検知装置100は、土150に挿入可能に構成され、土150の水分を検知する検知部130と、検知部130により検知された土150の水分の状態に基づいて導通又は非導通するスイッチング素子120と、スイッチング素子120の導通又は非導通により変動するスイッチング素子の電圧に基づいて土150の変状の有無を報知する発光部140とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土に挿入可能に構成され、前記土の水分を検知する検知部と、
前記検知部により検知された前記土の水分の状態に基づいて導通又は非導通するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の導通又は非導通により変動する前記スイッチング素子の電圧に基づいて前記土の変状の有無を報知する報知部と、
を備える地盤変状検知装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、ゲート、ドレイン及びソースを有するP型のMOSFETであり、
前記検知部は、第1の電極及び第2の電極を有し、
前記ゲートは、前記第1の電極に接続され、
前記ソースは、電源のプラス側に接続され、
前記第2の電極は、前記電源のプラス側に接続され、
前記報知部は、前記ドレインに接続されると共に前記電源のマイナス側に接続され、
前記ゲートと前記電源のマイナス側との間には抵抗が設けられ、
前記抵抗の値は、500KΩ~1MΩである、
請求項1に記載の地盤変状検知装置。
【請求項3】
前記土に水分が含まれている場合には、前記MOSFETが導通することで前記MOSFETのドレイン-ソース間電圧がゼロの値となる状態が維持され、
前記報知部は、前記ドレイン-ソース間電圧に基づいて前記土の変状の有無を報知する、
請求項1又は2に記載の地盤変状検知装置。
【請求項4】
前記報知部は、点灯及び消灯する発光部であり、
前記土に水分が含まれている場合に消灯し、前記土に水分が含まれていない場合に点灯する、
請求項1に記載の地盤変状検知装置。
【請求項5】
前記スイッチング素子は、ゲート、ドレイン及びソースを有するN型のMOSFETであり、
前記検知部は、第1の電極及び第2の電極を有し、
前記ゲートは、前記第2の電極に接続され、
前記ソースは、電源のマイナス側に接続され、
前記第1の電極は、前記電源のプラス側に接続され、
前記報知部は、前記ドレインに接続される共に前記電源のプラス側に接続され、
前記ゲートと前記電源のマイナス側との間には抵抗が設けられ、
前記抵抗の値は、10KΩ~100KΩである、
請求項1に記載の地盤変状検知装置。
【請求項6】
前記土に水分が含まれている場合には、前記MOSFETが導通することで前記MOSFETのドレイン-ソース間電圧が所定の電圧の値となる状態が維持され、
前記報知部は、前記ドレイン-ソース間電圧に基づいて前記土の変状の有無を報知する、
請求項5に記載の地盤変状検知装置。
【請求項7】
前記報知部は、点灯及び消灯する発光部であり、
前記土に水分が含まれている場合に点灯し、前記土に水分が含まれていない場合に消灯する、
請求項5に記載の地盤変状検知装置。
【請求項8】
前記検知部の前記第1の電極及び前記第2の電極は、炭素材料からなり、前記土の水分の電気抵抗に基づいて前記土に水分が含まれているか否かを検知する、
請求項1~7の何れか一項に記載の地盤変状検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地盤変状検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、山腹の斜面や自然の急傾斜の崖等では、台風による集中豪雨、地震等の影響により、がけ崩れ(表層崩壊)、地すべり、洪水等が発生することで、斜面が崩壊する災害が発生し易い状況にある。そこで、斜面の崩壊を早期に検知することが要求されている。
【0003】
斜面の崩壊を検知する技術として、例えば、特許文献1には、特定の伸び率を有する複数の線を被膜下降して作られたケーブルセンサを崩壊の危険のある斜面に敷設し、地すべりにより線が切断された場合に斜面の崩壊を検知する斜面崩壊の予測システムが開示されている。また、特許文献2には、対向する2つの金具間に同軸ケーブルを挟持し、斜面崩壊が生じて杭と桁の相対位置の変化により金属間の同軸ケーブルが切断された場合に斜面の崩壊の発生を検知する斜面崩壊検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3427072号公報
【特許文献2】実用新案登録第2565292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の予測システム及び特許文献2に開示の斜面崩壊検出装置では、複数の部品が必要となり、装置の構成が複雑になってしまうという問題がある。また、特許文献1に開示の予測システム等では、斜面の崩壊以外でも切断されてしまう可能性があり、確実に斜面の崩壊を検知することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、確実でかつ簡単な装置構成により斜面等の崩壊を検知することが可能な地盤変状検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の地盤変状検知装置発明は、土に挿入可能に構成され、前記土の水分を検知する検知部と、前記検知部により検知された前記土の水分の状態に基づいて導通又は非導通するスイッチング素子と、前記スイッチング素子の導通又は非導通により変動する前記スイッチング素子の電圧に基づいて前記土の変状の有無を報知する報知部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、検知部により検知された土の水分の状態に応じて導通又は非導通するスイッチング素子を設け、スイッチング素子の導通又は非導通により変動するスイッチング素子の電圧に基づいて土の変状の有無を報知するので、確実でかつ簡単な装置構成により斜面等で崩壊が発生したか否かを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る地盤変状検知装置の概略構成例を示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る地盤変状検知装置の設置例を示す図である。
図3】第1の実施の形態に係るスイッチング素子のゲートと電源のマイナス電極との間に異なる抵抗を接続した場合におけるドレイン-ソース間電圧と土中の体積含水率との関係を示すグラフである。
図4】第2の実施の形態に係る地盤変状検知装置の概略構成例を示す図である。
図5】第2の実施の形態に係るスイッチング素子のゲートと電源のマイナス電極との間に異なる抵抗を接続した場合におけるドレイン-ソース間電圧と土中の体積含水率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
(地盤変状検知装置100の構成例)
図1は、第1の実施の形態に係る地盤変状検知装置100の概略構成の一例を示す。
【0012】
図1に示すように、地盤変状検知装置100は、電源110と、スイッチング素子120と、土壌水分検知センサ(検知部)130と、発光部(報知部)140とを備える。
【0013】
電源110は、例えば電池、バッテリー、ソーラー充電器又はAC電源等で構成される。ソーラー充電器は、発電が可能であるため、電源110を山の斜面等に長期間設置する場合には好適である。また、電源110としては、天候に依存せずに夜間や無風でも24時間発電することが可能な土壌微生物燃料電池を採用しても良い。
【0014】
スイッチング素子120は、P型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)で構成される。スイッチング素子120は、ゲートG1とドレインD1とソースS1とを有する。ドレインD1は、発光部140のプラス側に接続される。ソースS1は、電源110のプラス側に接続される。
【0015】
ゲートG1は、印可される所定の電圧に基づいて、ソースS1からドレインD1に流れる電流を導通(通電)又は非導通(遮断)する。ゲートG1は、土壌水分検知センサ130の第1の電極130aに接続され、土壌水分検知センサ130の土壌の検知状態に基づいて所定の電圧が印可されるとスイッチング素子120をオン状態とする。
【0016】
スイッチング素子120のゲートG1と電源110のマイナス側との間には、抵抗R1が設けられる。本実施の形態において抵抗R1の抵抗値は、以下の条件を満たすように設定される。一般的にゲートG1の抵抗値が小さい場合は、スイッチング時間が短くなり、リンキングが起きる可能性がある。ゲートG1の抵抗値が大きい場合は、スイッチング時間が長くなり、スイッチング損失が増えて発熱する。また、土150の中の水分がどのような状態であっても、土壌水分検知センサ130により土150の水分を敏感に検知可能とする。これらの条件を満たすため、抵抗R1の抵抗値は、例えば、500KΩ~1MΩであることが好ましい。
【0017】
土壌水分検知センサ130は、土150の水分を検知するためのセンサであり、一対の第1の電極130a及び第2の電極130bを有する。第1の電極130aはスイッチング素子120のゲートG1に接続され、第2の電極130bは電源110のプラス側に接続される。土壌水分検知センサ130は、第1の電極130aと第2の電極130bとの間の土(水分)150の電気抵抗に基づいて、土150に流れる電流に比例した電圧を出力する。なお、本実施の形態において、土壌の一例として土150を例に挙げているが、これに限定されることはなく、例えば砂、砂利、泥、又はこれらが混ざった土壌等にも土壌水分検知センサ130を適用することができる。また、土壌水分検知センサ130としては、例えば、土150の誘電率を測定することで土150の水分量を検知するセンサであっても良い。
【0018】
第1の電極130a及び第2の電極130bは、例えば炭素材料からなる細長の棒状部材で構成される。第1の電極130a及び第2の電極130bを棒状とすることで土壌に挿入し易くできる。また、第1の電極130a及び第2の電極130bを炭素材料で構成することで、抵抗率が低く、耐熱性が高く、かつ導電性を向上させることができる。また、室温での化学的安定性が高く、強酸、アルカリ、有機溶媒による腐食がなく、壊れにくく、低コスト化を図ることができる。
【0019】
発光部140は、作業者が視認可能なように地面から露出するように設置され、土壌水分検知センサ130による土150に含まれる水分の検知結果に応じてスイッチング素子120がオン又はオフすることで点灯又は消灯する。発光部140には、例えばLED(Light Emitting Diode)を用いることができる。発光部140は、プラス側がスイッチング素子120のドレインD1に接続され、マイナス側が電源110のマイナス側に接続される。なお、報知部としては、発光部140に限定されることはなく、例えば土壌水分検知センサ130による土150の水分の検知結果を作業者に案内する音声又は警告音であっても良い。また、発光部140の点灯又は消灯に基づく情報を有線又は無線通信により作業者が所有する情報処理装置に送信し、情報処理装置の表示部の画面上に土壌水分検知センサ130による土150の水分の検知結果を表示するようにしても良いし、情報処理装置のスピーカを用いて音声により報知するようにしても良い。
【0020】
(地盤変状検知装置100の設置場所)
図2は、第1の実施の形態に係る地盤変状検知装置100の設置場所の一例を示す。地盤変状検知装置100は、図2に示すように、例えば山300の斜面300aに設置される。また、地盤変状検知装置100は、斜面300aに沿って複数個所に設置しても良い。地盤変状検知装置100を複数個所に設置することで、どの高さ、位置で斜面300aの崩壊が発生したかを特定できる。
【0021】
なお、図2では、地盤変状検知装置100の一式を山300の斜面300aに設置しているが、これに限定されることはない。例えば、土壌水分検知センサ230を山300の斜面300aに設置し、その他の発光部240等を土壌水分検知センサ230の設置個所から離れた建物等に設置することもできる。これにより、安全を確保した場所において、斜面300aで崩壊が発生したか否かを把握できる。また、地盤変状検知装置100の設置個所としては、例えば、河川に形成される堤防の頂面や斜面等に設置することもできるし、自然の斜面、盛土の斜面に設置することもできる。
【0022】
(ドレイン-ソース間電圧VDSと土150の体積含水率との関係)
図3は、スイッチング素子120のゲートG1と電源110のマイナス側との間に異なる抵抗R1を接続した場合における、ドレイン-ソース間電圧VDSと土150の体積含水率との関係を示すグラフである。
【0023】
なお、図3において、縦軸はドレイン-ソース間電圧VDSを示し、横軸は土150の体積含水率を示す。また、電源110の電圧は例えば5Vとし、土壌水分検知センサ130の第1の電極130a及び第2の電極130bの長手方向の長さを50mmとした。また、抵抗R1として、抵抗値の異なる10KΩ、100KΩ、500KΩ、1MΩをそれぞれ用いた。
【0024】
図3に示すように、土150の体積含水率が0%のとき、すなわち土壌水分検知センサ130の第1の電極130a及び第2の電極130bが斜面300aの崩壊により土150から外れて露出した状態となったとき、抵抗R1が10KΩ、100KΩ、500KΩ、1MΩの何れの場合も、スイッチング素子120がオフ状態となり、ドレイン-ソース間電圧VDSは5Vとなった。
【0025】
また、抵抗R1が1MΩである場合において、土150の体積含水率が約1.0%以上となるとき、ゲートG1に大きな抵抗R1を接続したことでスイッチング素子120がオン状態となり、ドレイン-ソース間電圧VDSが急激に低下して0Vとなった。
【0026】
また、抵抗R1が500KΩである場合において、土150の体積含水率が約10%以上となるとき、ゲートG1に大きな抵抗R1を接続したことでスイッチング素子120がオン状態となり、ドレイン-ソース間電圧VDSが0Vとなった。
【0027】
また、抵抗R1が100KΩである場合において、土150の体積含水率が約17.5%以上となるとき、ゲートG1に大きな抵抗R1を接続したことでスイッチング素子120がオン状態となり、ドレイン-ソース間電圧VDSが0Vとなった。
【0028】
また、抵抗R1が10KΩである場合には、土150の体積含水率が少なくとも20%付近まで上昇しても、ドレイン-ソース間電圧VDSが5Vの状態が維持され、ほとんど変化することはなかった。
【0029】
これらから、ゲートG1と電源110との間に接続する抵抗R1が大きくなるほど、土150の水分が少量の場合であってもスイッチング素子120がオンとなり、ドレイン-ソース間電圧VDSを0Vにすることができる。また、第1の実施の形態では、様々な土壌について、抵抗R1を変更することで、土壌の水分の変化を監視することが可能である。例えば、抵抗R1を1MΩとした場合において、ドレイン-ソース間電圧VDSが0Vとなったときに、土150の体積含水率が約1.0%以上であると推定できる。また、抵抗R1を500KΩとした場合において、ドレイン-ソース間電圧VDSが0Vとなったときに、土150の体積含水率が約10%以上であると推定できる。
【0030】
(スイッチング素子120の動作例)
次に、斜面300aの崩壊を検知する場合における地盤変状検知装置100の動作の一例について説明する。なお、電源110の電圧を例えば5Vとし、スイッチング素子120に接続する抵抗R1の抵抗値を1MΩとした。
【0031】
土壌水分検知センサ130を構成する第1の電極130a及び第2の電極130bは、例えば、山300等の斜面300aの土150に埋め込まれた状態で設置される。この状態において、例えば豪雨や地震等が発生しておらず、斜面300aが崩壊していない場合には、第1の電極130a及び第2の電極130bの土150に埋まった状態は維持される。土壌水分検知センサ130は、第1の電極130aと第2の電極130bとの間にある土150の水分を検知する。第1の実施の形態では、スイッチング素子120のゲートG1に大きな抵抗R1を接続しているので、土150の水分がわずかな場合であっても土150の水分を敏感に検知できる。
【0032】
このとき、スイッチング素子120のゲートG1にはスイッチング素子120をオンすることが可能な閾値よりも高い電圧が印可され、スイッチング素子120がオン状態となる。これにより、図3に示すように、ドレイン-ソース間電圧VDSが0Vとなり、ドレイン電流は流れないので、発光部140は消灯する。第1の実施の形態では、土壌水分検知センサ130の第1の電極130a及び第2の電極130bが土150に挿入されている間は、発光部140は常に消灯する。作業者は、発光部140が消灯していることを視認により確認することで、第1の電極130a及び第2の電極130bが土150に埋まった状態であり、斜面300aの崩壊が発生していないことを確認できる。
【0033】
これに対し、例えば豪雨等の発生により斜面が崩壊した場合、土壌水分検知センサ130の第1の電極130a及び第2の電極130bは、土砂等の流れによって土150から外れて土150の表面に露出した状態となる。これにより、土壌水分検知センサ130の第1の電極130a及び第2の電極130bとの間は土150ではなく、空気となるため、空気の電気抵抗に応じて土壌水分検知センサ130の出力電圧は低下する。
【0034】
そのため、スイッチング素子120のゲートG1に印可される電圧はゼロとなり、スイッチング素子120はオフ状態となる。このとき、図3に示すように、ドレイン-ソース間電圧VDSが上昇し、ドレイン電流が流れることで発光部140が点灯する。作業者は、発光部140が点灯していることを視認により確認することで、土壌水分検知センサ130が土150から露出した状態であり、斜面300aの崩壊が発生した可能性が高いことを確認できる。
【0035】
第1の実施の形態によれば、土壌水分検知センサ130により検知された土150の水分の状態に応じてオン又はオフ可能なスイッチング素子120を設け、このスイッチング素子120のオン又はオフによって変動するドレイン-ソース間電圧VDSに基づいて土150の変状の有無を報知できる。つまり、第1の電極130a及び第2の電極130bが土150から外れたか否かで、斜面300a等の崩壊を確認できる。これにより、従来よりも簡単な装置構成で、かつ確実に斜面300a等の崩壊の有無を予測、確認できる。また、簡単な装置構成であるため、低コスト化を図ることができる。
【0036】
また、第1の電極130a及び第2の電極130bを炭素材料で形成するため、土150に長期間、第1の電極130a及び第2の電極130bが埋まった状態であっても腐食等を防止できる。
【0037】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、スイッチング素子220としてN型のMOSFETを用いる点において、P型のMOSFETを用いる上記第1の実施の形態とは相違している。なお、第2の実施の形態の地盤変状検知装置200において、上記第1の実施の形態の地盤変状検知装置100と共通する構成及び機能については説明を簡略化又は省略する。
【0038】
(地盤変状検知装置200の構成例)
図4は、第2の実施の形態に係る地盤変状検知装置200の概略構成の一例を示す。
【0039】
図4に示すように、地盤変状検知装置200は、電源210と、スイッチング素子220と、土壌水分検知センサ230と、発光部(報知部)240とを備える。
【0040】
スイッチング素子220は、N型のMOSFETで構成される。スイッチング素子220は、ゲートG2とドレインD2とソースS2とを有する。ドレインD2は、発光部240のマイナス側に接続される。ソースS2は、電源210のマイナス側に接続される。
【0041】
ゲートG2は、印加される所定の電圧に基づいて、ドレインD2からソースS2に流れるドレイン電流を導通(通電)又は非導通(遮断)する。第2の実施の形態においてゲートG2は、土壌水分検知センサ230の第2の電極230bに接続され、土壌水分検知センサ230による土250の水分の検知結果に応じて印可される所定の電圧に基づいてスイッチング素子220をオン状態とする。
【0042】
スイッチング素子220のゲートG2と電源210のマイナス側との間には、抵抗R2が接続される。抵抗R2は、第1の実施の形態と同様に、土250の水分がどのような状態であっても土壌水分検知センサ230により土250の水分を敏感に検知可能な値に設定される。例えば、抵抗R2の値は、10KΩ~100KΩであることが好ましい。
【0043】
土壌水分検知センサ230は、土250の水分を検知するためのセンサであり、一対の第1の電極230a及び第2の電極230bを有する。第1の電極230aは電源210のプラス側に接続され、第2の電極230bはスイッチング素子220のゲートG2に接続される。第1の電極230a及び第2の電極230bは、例えば炭素材料からなる細長の棒状部材で構成され、土250に挿入し易いようになっている。
【0044】
発光部240は、作業者が視認可能なように地面から露出した位置に設置され、土壌水分検知センサ230による土250の水分の検知結果に応じてスイッチング素子220が導通又は非導通することで点灯又は消灯する。発光部240には、例えばLEDを用いることができる。発光部240は、プラス側が電源210のプラス側に接続され、マイナス側がスイッチング素子220のソースS2に接続される。
【0045】
(ドレイン-ソース間電圧VDSと土250の体積含水率との関係)
図5は、スイッチング素子220のゲートG2と電源210のマイナス側との間に異なる抵抗R2を接続した場合における、ドレイン-ソース間電圧VDSと土250の体積含水率との関係を示すグラフである。
【0046】
なお、図5において、縦軸はドレイン-ソース間電圧VDSを示し、横軸は土250の体積含水率を示す。また、電源210の電圧は例えば5Vとし、第1の電極230a及び第2の電極230bの長手方向の長さを50mmとした。また、抵抗R2として、抵抗値の異なる10KΩ、100KΩをそれぞれ用いた。
【0047】
図5に示すように、土250の体積含水率が0%のとき、すなわち土壌水分検知センサ230の第1の電極230a及び第2の電極230bが斜面300aの崩壊により土250から抜かれて露出した状態となったとき、抵抗R2が10KΩ、100KΩの何れの場合も、スイッチング素子220がオフの状態となり、ドレイン-ソース間電圧VDSは0Vとなった。
【0048】
また、土250の体積含水率が約1%以上となるとき、すなわち土壌水分検知センサ230の第1の電極230a及び第2の電極230bが水分を含む土250に挿入されているとき、スイッチング素子220がオン状態となり、ドレイン-ソース間電圧VDSは約4.5Vとなった。抵抗R2が10KΩ、100KΩの何れの場合も、ドレイン-ソース間電圧VDSの反応はほぼ同じとなった。
【0049】
(スイッチング素子220の動作例)
次に、斜面の崩壊を検知する場合における地盤変状検知装置200の動作の一例について説明する。なお、電源210の電圧を例えば5Vとし、スイッチング素子120に接続する抵抗R2の抵抗値を100KΩとした。
【0050】
土壌水分検知センサ230を構成する第1の電極230a及び第2の電極230bは、例えば、図2に示すように、山300等の斜面300aの土250に挿入されて設置される。この状態において、例えば豪雨や地震等が発生しておらず、斜面300aが崩壊していない場合には、第1の電極230a及び第2の電極230bの土250に埋まった状態は維持される。土壌水分検知センサ230は、第1の電極230aと第2の電極230bとの間にある土250の水分を検知する。第2の実施の形態でも、スイッチング素子220のゲートG2に大きな抵抗R2を接続しているので、土250の水分がわずかな場合であっても土250の水分を敏感に検知できる。
【0051】
このとき、スイッチング素子220のゲートG2にはスイッチング素子220をオンすることが可能な閾値よりも高い電圧が印可され、スイッチング素子220がオン状態となる。これにより、図5に示すように、ドレイン-ソース間電圧VDSが上昇し、ドレイン電流が流れることで発光部240が点灯する。第2の本実施の形態では、土壌水分検知センサ230の第1の電極230a及び第2の電極230bが土250に挿入されている間、発光部240は常に点灯する。作業者は、発光部240が点灯していることを視認により確認することで、土壌水分検知センサ230の第1の電極230a及び第2の電極230bが土250に埋まった状態であり、斜面300aの崩壊が発生していないことを確認できる。
【0052】
これに対し、例えば豪雨等の発生により斜面が崩壊した場合、土壌水分検知センサ230の第1の電極230a及び第2の電極230bは、土砂等の流れによって土250から外れて土250の表面に露出した状態となる。これにより、土壌水分検知センサ230の第1の電極230aと第2の電極230bとの間は、土250ではなく、空気となるため、空気の電気抵抗に応じて土壌水分検知センサ230の出力電圧は低下する。
【0053】
そのため、スイッチング素子220のゲートG2に印可される電圧はゼロとなり、スイッチング素子120はオフ状態となる。このとき、図5に示すように、ドレイン-ソース間電圧VDSは0Vとなり、ドレイン電流は流れないので発光部240は消灯した状態となる。作業者は、発光部240が消灯していることを視認により確認することで、土壌水分検知センサ230が土250から露出した状態であり、斜面300aの崩壊が発生した可能性が高いことを確認できる。
【0054】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、土壌水分検知センサ230により検知された土250の水分の状態に応じてオン又はオフ可能なスイッチング素子220を設け、このスイッチング素子220のオン又はオフによって変動するドレイン-ソース間電圧VDSに基づいて土250の変状の有無を報知できるので、従来よりも簡単な装置構成で、かつ確実に斜面300a等の崩壊の有無を予測、確認できる。また、簡単な装置構成であるため、低コスト化を図ることができる。
【0055】
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0056】
100,200 地盤変状検知装置
110,210 電源
120,220 スイッチング素子
130,230 土壌水分検知センサ(検知部)
130a,230a 第1の電極
130b,230b 第2の電極
140,240 発光部(報知部)
150,250 土
D1,D2 ドレイン
G1,G2 ゲート
R1,R2 抵抗
S1,S2 ソース
図1
図2
図3
図4
図5