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  • 特開-はんだの溶融持続時間算出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135151
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】はんだの溶融持続時間算出方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/00 20060101AFI20220908BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20220908BHJP
   B23K 1/20 20060101ALI20220908BHJP
   B23K 35/30 20060101ALN20220908BHJP
   C22C 5/02 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
B23K1/00 Z
H01L21/52 E
B23K1/20 Z
B23K35/30 310A
C22C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034772
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮本 光教
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047BA01
5F047BA42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】はんだ、特に薄膜はんだにおける溶融持続時間の算出方法を提供し、算出されたはんだの溶融持続時間に基づいて適切な厚さ、組成のはんだを設計し、信頼性の高い接合体を提供する。
【解決手段】金属材料表面に形成されたはんだの溶融持続時間算出方法であって、前記はんだを融点以上で加熱し溶融したときに前記はんだと前記金属材料との界面において生成される前記はんだと前記金属材料からなる金属間化合物の組成比と、当該金属間化合物の生成速度と、に基づき前記はんだの溶融持続時間を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料表面に形成されたはんだの溶融持続時間算出方法であって、前記はんだを融点以上で加熱し溶融したときに前記はんだと前記前記金属材料との界面において生成される前記はんだと前記金属材料からなる金属間化合物の組成比と、当該金属間化合物の生成速度と、に基づき前記はんだの溶融持続時間を算出することを特徴とするはんだの溶融持続時間算出方法。
【請求項2】
前記はんだが共晶点を有する2元合金を主成分とする共晶はんだであって、前記はんだの共晶点から過共晶側と、共晶点から亜共晶側とのそれぞれの溶融持続時間を算出し、そのそれぞれの溶融持続時間の和を前記はんだの総溶融持続時間とすることを特徴とする溶融持続時間算出方法。
【請求項3】
前記はんだはAuSnはんだ、前記金属材料はPtであり、前記はんだに含まれるAuとSnの原子比をそれぞれMAu、MSn、前記金属間化合物のAu、Snの原子比をそれぞれRSn、RAu、前記金属材料の原子数消費速度をMPt、前記はんだの共晶点におけるAuとSnの原子数をそれぞれMSn029とMAu071、前記はんだが所定温度で溶融停止するSnの組成をC’Snとしたとき、前記はんだの溶融持続時間Sは数式1によって算出されることを特徴とする請求項2に記載のはんだの溶融持続時間算出方法。
【数1】
【請求項4】
前記はんだの膜厚が10μm以下の薄膜はんだであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の溶融持続時間算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材同士を接合するために用いる、はんだの溶融持続時間の算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部には、多数の電子部品が用いられており、これらの部材の多くは回路基板上にはんだ材料を用いて接合される。接合には、古くはPbSnはんだが用いられてきたが、近年では、環境影響の観点からPbフリーはんだが広く使われている。
【0003】
Pbフリーはんだとしては、InSn、SnAgCu、AuSnなどのSn系はんだや、Sn系はんだより高融点であるAuGe、AuSiなどのAu系はんだ等が用いられている。中でもSnAgCuはんだは安価で融点も低いため広く用いられ、高い信頼性を要求される部材には、AuSnはんだが好ましく用いられている。特許文献1には、このようなPbフリーはんだによって電子部品と回路基板とを高い接合強度で接続するための接続条件を算出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4136641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
はんだ接合において、はんだと接合される電子部品や回路基板には、はんだとの接合のための金属材料からなる金属膜が形成されており、この金属膜とはんだとが接合される。はんだ接合の際、はんだは溶融すると、はんだと金属膜とが反応してはんだと金属膜との界面にはんだと金属膜とを構成する材料からなる金属間化合物が生成される。この金属間化合物の生成は、はんだの溶融時間の経過とともに進行する。
【0006】
多くの電子部品の場合、電子部品と回路基板とは多量のはんだ材料を用いて接合される。このように多量のはんだ材料を用いた接合の場合、はんだの溶融が長時間に及んでも、はんだのうち金属間化合物となる部分の占める割合は小さく、はんだの大部分の組成に変化はない。したがって、はんだの溶融持続時間に大きな影響はなく、はんだを融点以上の温度で加熱すれば、何度でも溶融させ、接合することができる。
【0007】
しかし、電子部品の中でも特にレーザー素子等の部品は、高い位置精度での実装と、高い接合信頼性が要求されるため、厚さ1~3μm程度の薄膜はんだを用いて接合するのが一般的である。このような薄膜はんだを利用した接合の場合、はんだの溶融時間の経過とともに金属間化合物の生成が進み、はんだの量が少ない(薄膜である)ことより、短い溶融時間の間ではんだの大部分の組成が金属化合物の組成へと変化してしまう。このようにはんだの組成が変動すれば、はんだの融点が変動し、たちまちはんだが固化してしまい、適切な接合が行えないといった問題が発生する。したがって、はんだにより部材が接合された接合体において、高い信頼性を有する接合体を得るためには、はんだの溶融持続時間は一つの重要な要素であり、はんだの溶融持続時間を制御すること、すなわち、はんだ組成の時間的変動を適切に制御することが重要である。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、はんだ、特に薄膜はんだにおける溶融持続時間の算出方法を提供し、算出されたはんだの溶融持続時間に基づいて適切な厚さ、組成のはんだを設計し、信頼性の高い接合体の提供に寄与するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
金属材料表面に形成されたはんだの溶融持続時間算出方法であって、前記はんだを融点以上で加熱し溶融したときに前記はんだと前記前記金属材料との界面において生成される前記はんだと前記金属材料からなる金属間化合物の組成比と、当該金属間化合物の生成速度と、に基づき前記はんだの溶融持続時間を算出するはんだの溶融持続時間算出方法とする。
さらに、前記はんだが共晶点を有する2元合金を主成分とする共晶はんだであって、前記はんだの共晶点から過共晶側と、共晶点から亜共晶側とのそれぞれの溶融持続時間を算出し、そのそれぞれの溶融持続時間の和を前記はんだの総溶融持続時間とする溶融持続時間算出方法とする。
さらにまた、前記はんだはAuSnはんだ、前記金属材料はPtであり、前記はんだに含まれるAuとSnの原子比をそれぞれMAu、MSn、前記金属間化合物のAu、Snの原子比をそれぞれRSn、RAu、前記金属材料の原子数消費速度をMPt、前記はんだの共晶点におけるAuとSnの原子数をそれぞれMSn029とMAu071、前記はんだが所定温度で溶融停止するSnの組成をC’Snとしたとき、前記はんだの溶融持続時間Sは次式によって算出されるはんだの溶融持続時間算出方法とする。
また、前記はんだの膜厚が10μm以下の薄膜はんだである溶融持続時間算出方法とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、はんだの溶融持続時間を算出することができ、算出されたはんだの溶融持続時間に基づいて適切な厚さ、組成のはんだを設計することで信頼性の高い接合体の提供に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】AuSn共晶はんだの溶融持続時間を算出する計算モデル図であり、半導体レーザー素子を接合するための薄膜サブマウントの断面構造を模式的に示した図である。
図2】実験より推定されたPt消費速度を示す図である。
図3】AuSn状態図の共晶点近傍を示した図である。
図4】AuSn状態図上の共晶点より亜共晶側の液相線をプロットし、グラフ化した図である。
図5】AuSnはんだの溶融持続時間の実験値と計算値とを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係るはんだの溶融持続時間算出方法について説明する。ここでは、はんだとして、薄膜のAuSn共晶はんだを例としてはんだの溶融持続時間の算出方法を説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0013】
図1は、AuSn共晶はんだの溶融持続時間を算出する計算モデル図であり、半導体レーザー素子を接合するための薄膜サブマウントの断面構造を模式的に示した図である。薄膜サブマウント100は、AlN基板(セラミック基板)101の表面に、半導体レーザー素子等の電子部品と薄膜サブマウント100とを接合するためのAuSnはんだ203を備える。AlN基板101とAuSnはんだ203の間には、AuSnはんだ203側より、バリア層と呼ばれるPt層202、Pt層202とAlN基板(セラミック基板)101と密着するためのTi層201が配置されている。薄膜サブマウント100のAuSnはんだ203の上面には、電子部品(不図示)のメタライズ(Au)面が接合される。
【0014】
AuSnはんだ203が溶融したとき、仮にAuSnはんだ203の組成変動がゼロであれば理論上、半永久的に溶け続ける。しかし現実には、AuSnはんだ203が溶融すると、AuSnはんだ203とPt層202との間で界面反応が起こり、界面にPtとAuとSnからなる金属間化合物(IMC:InterMetallic compound)が生成される。ここで、Pt層202の下層に配置されたTi層201は、AuSn層203と反応しないため、IMCにはTiは含まれない。AuSnはんだ203とPt層202との間で生成されるIMCは、代表的にはPtSnAuのようにSnリッチの組成と考えられるので、IMCの生成量に比例してAuSnはんだ203中のSnは、その多くがIMCの組成へと置き換わる。換言すると、AuSnはんだ203中のSnはIMC生成によって大量に消費されることとなる。また、同様にPt層202のPtもIMCの生成により消費される。このようにIMCが生成されると、IMCに含まれるSnはAuSnはんだ203中から供給されたものであるため、結果的にAuSnの組成はAuリッチ側に組成変化し、AuSnはんだ203の加熱温度が一定であってもやがて固化し、溶融が停止することとなる。
【0015】
本発明は、このIMCの生成に着目し、AuSnはんだ203の溶融持続時間を算出するものであり、より具体的には、金属材料表面に形成されたはんだにおいて、はんだと金属材料との界面に形成される金属間化合物(IMC)の組成(原子数)と、IMCの生成速度とに基づいて、はんだの溶融持続時間を算出するものである。本発明は、特にはんだが薄膜(体積が極めて小さい)の場合に特に有用である。なお、ここでいう薄膜とは、10μm以下の膜厚のことである。
【0016】
上記モデルケースにおいて、AuSnはんだ203の溶融持続時間は、以下の算出方法により求めることができる。AuSnはんだ203の溶融持続時間を得るため、まず、AuSnはんだ203を構成する材料である、Au、Snの組成を求める。AuSnはんだ203中のAuの組成は、AuとSnの密度と厚さから数式1で表すことができる。ここで、dAuとdSnはそれぞれAuとSnの密度(g/cm)であり、DAuとDSnはAuSnはんだ203中のAuとSnに対応する厚さ(m)である。AuSnはんだ203の反応場の面積は一定であると仮定すれば、DAuとDSnは体積と等価と考えて差し支えない。
【0017】
【数1】
【0018】
次に、数式1で求められるAuの組成より、AuSnはんだ203を構成する材料であるAu、Snの組成(原子数)を算出する。数式1からDAuとDSnについて解けば、DAuとDSnはそれぞれ数式2、数式3となる。
【0019】
【数2】
【0020】
【数3】
【0021】
数式2、数式3により求められたAuとSnの厚さDAuとDSnを用い、数式4、数式5によってAuとSnの原子数MAuとMSnが求められる。ここで、SはAuSnが融解する面積(反応場の面積)、Nはアボガドロ定数(6.02×1023atoms/mol)、mAuとmSnはそれぞれAuとSnのモル質量(g/mol)である。
【0022】
【数4】
【0023】
【数5】
【0024】
次に、AuSnはんだ203のAuとSnの組成変動がすなわち溶融持続時間を決定することより、この組成変動量を求めるために、AuSnと反応するPt層202のPt原子の消費速度を求める。図2は、実験より推定されたPt消費速度を示す図である。図2は、AlN基板101上にPt層202を蒸着により形成したときの、AlN基板101の加熱温度とPt層202の消費速度との関係を示す。図2に示すように、Pt消費速度CPtは、加熱温度Tの2次関数に近似することができ、AlN基板101の加熱温度Tが300℃<T<380℃においては、数式6に示す2次関数で近似できる。
【0025】
【数6】
【0026】
なお、数式6は、Pt層202を蒸着法で成膜した場合のPt消費速度CPtであり、Pt層202の製法を例えばスパッタ法等に変更した場合、Pt消費速度CPtは変化する。このように、Pt層202に代表されるはんだの下地層となる金属材料の消費速度はその製法や加熱温度により変化するため、消費速度を適宜調整することで、はんだの溶融持続時間を調整することが可能である。
【0027】
数式6で得られるPt消費速度CPt (nm/s)から、Pt原子数消費速度MPt (atoms/s)について数式7を使って求めることができる。ここで、dPtはPtの密度、mPtはPtのモル質量である。なお、Pt消費速度CPt、Pt原子数消費速度MPtは、AuSnはんだ203とPt層202とが反応する速度であり、換言すれば、IMC生成速度を示している。
【0028】
【数7】
【0029】
次に、AuSnはんだ203の溶融持続時間を求めていく。図3は、AuSn状態図の共晶点近傍を示した図である。AuSnはんだ203を融点以上で加熱した時、PtとSnとAuからなるIMC(例えば、PtSnAu)で大量のSnが消費されるため、AuSnはんだ203のAu組成が上がる(Sn組成が下がる)方向に組成変化する。つまり、溶融されたAuSnはんだ203の状態は、例えば、溶融開始点を溶融開始点A(過共晶)とすると、溶融とともに組成が変化していき、共晶点Epを通って溶融終了点B(亜共晶)に達することになる。溶融持続時間を(1)開始点A~共晶点Ep、(2)共晶点Ep~溶融終了点Bまで、の2つのプロセスに分解して計算する。プロセス(1)では、AuSnはんだ203の組成変動が進行する(Sn組成が下がる)にしたがい、共晶点に向かい液相線が下がるため、AuSnはんだ203は途中で固化することは無い。プロセス(2)では、組成変動が進行する(Sn組成が下がる)にしたがい液相線が上がるため、所定の加熱温度TにおけるAuSnはんだ203の組成が液相線を越え固液共存または固相となるまでAuSnはんだ203は溶融持続し、液相線を超えると固化する。
【0030】
第一に、プロセス(1)の溶融持続時間S1(s)を求める。AuSnはんだ203のSnの組成CSn(atomic%)は数式8で表せる。ここで、M’AuとM’SnはAnSn溶融中のAuとSnの原子数である。
【0031】
【数8】
【0032】
AuとSnの原子数M’AuとM’Snは、以下のようにIMCの化合物原子比RSn、RAuとPt消費原子数MPtによって数式9、数式10により計算できる。ここで、RSnとRAuはそれぞれIMC中のAu、Snの原子比である。例えば、IMCがPtSnAuと仮定すれば、RSn=4、RAu=1である。なお、プロセス(1)では共晶点までの溶融であるのでAuSnはんだ203のSnの組成CSn=0.29である。
【0033】
【数9】
【0034】
【数10】
【0035】
そして、数式8に数式9,数式10を代入してS1について解けば、プロセス(1)のAuSnはんだ203の溶融持続時間S1は数式11となる。但し、ここではIMCの組成および生成速度は、溶融経過時間によらず不変としている。
【0036】
【数11】
【0037】
第二に、プロセス(2)の溶融持続時間S2(s)を求める。まず、温度Tで溶融停止するAuSnはんだ203のSnの組成C’Snを求める。図4は、AuSn状態図上の共晶点より亜共晶側(図3の左側)の液相線をプロットし、グラフ化した図である。図4の近似曲線を数式化し、C’SnはTの関数として、数式12で表すことができる。
【0038】
【数12】
【0039】
そして、S1を求めた時と同様に、AuSnはんだ203の溶融中のAuSn組成C’SnとAuとSnの原子数M’’AuとM’’Snは数式13、数式14、数式15で表される。ここで、MSn029とMAu071は、共晶点におけるAuとSnの原子数である。
【0040】
【数13】
【0041】
【数14】
【0042】
【数15】
【0043】
数式13に数式14,数式15を代入してS2について解けば、プロセス(2)におけるAuSnはんだ203の溶融持続時間S1は数式16となる。
【0044】
【数16】
【0045】
最後に、AuSnはんだ203の総溶融持続時間Stotal(s)は、数式17で求められる。
【0046】
【数17】
【0047】
ここで、上記により算出されたはんだの溶融持続時間について検証する。図5は、AuSn組成Au=68wt%(Sn=32wt%)、膜厚5μmのAuSnを蒸着法で成膜したPt層上で溶融させたときの溶融持続時間の実験値と、上述した算出方法で計算した計算値をプロットし比較した図である。図5に示す通り、実験値と計算値は概ね、一致していることがわかる。
【0048】
本発明のはんだの溶融持続時間算出方法は、次のような場合に活用できる。例えば、半導体レーザー素子を基板に接合する場合、はんだの接合温度に加え、パルス加熱(短時間)やリフロー加熱(長時間)など、接合条件範囲は様々考えられる。上述のモデルケースで考えた場合、Pt層とAuSnはんだ間で生成されるIMC(PtSnAu)は、後の接合強度に関係しており、IMCの生成が少ないと接合強度が低下し、逆に生成が多すぎると、AuやSn、Ptの拡散速度の違いからカーケンダルボイドが生成してしまい、これもまた接合強度低下につながってしまう。すなわち、IMC生成量を適度に調整する必要がある。
【0049】
上述した溶融持続時間算出方法で明らかになったように、AuSnはんだ203の溶融持続時間は、主にAuSnはんだ203の組成と膜厚、Pt消費速度の3つの因子から成る。従って、溶融持続時間が、要求される接合条件の下で、最適な時間となるように3つの因子を任意調整することで、接合構造体を設計することが可能となる。
【0050】
具体的には、AuSnはんだ203の組成は、AuSnはんだ203成膜時のAuとSnの蒸発レートを変更することによって調整し、AuSnはんだ203の膜厚は、成膜時の時間を変更することによって調整し、Pt消費速度は、成膜法および成膜時の温度を変更することにより調整可能である。以上の手段によって、任意の溶融持続時間を有する接合構造体を設計・製造することが可能となる。
【0051】
以上、本発明のはんだの溶融持続時間算出方法を、実施例に基づき説明してきたが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。例えば、実施例では、はんだはを2元系合金からなるAuSnはんだ203としたが、例えば、SnAgCu系合金の3元共晶はんだとしてもよい。その場合においても、はんだと接する金属材料とはんだとの金属間化合物の組成比と、その生成速度を実施例と同様の考えで求めて溶融持続時間を求めることができる。また、はんだは共晶型に限らずSnSb包晶型はんだ等の非共晶であってもよい。その場合、共晶はんだを例とする実施例ではプロセス(1)、プロセス(2)に分割し、それぞれのプロセスにおけるはんだの溶融持続時間を算出し、その総和を最終的な溶融持続時間としたが、はんだ材料の状態図により、一つのプロセスで溶融持続時間を算出してもよい。また、実施例では、AuSnはんだ203と接する金属材料をPt層202としたが、他の金属材料でもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0052】
100 薄膜サブマウント
101 AlN基板
201 Ti層
202 Pt層
203 AuSnはんだ
図1
図2
図3
図4
図5