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特開2022-135152硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び電子部品
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  • 特開-硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び電子部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135152
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220908BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20220908BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20220908BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/004 501
G03F7/038 501
H05K3/28 D
H05K3/28 F
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034774
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋一朗
(72)【発明者】
【氏名】内山 強
(72)【発明者】
【氏名】宮部 英和
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA05
2H197CA07
2H197CE01
2H197HA02
2H197JA22
2H197JA24
2H225AC33
2H225AC36
2H225AC55
2H225AC63
2H225AC72
2H225AD07
2H225AD34
2H225AE12P
2H225AE15P
2H225AN21P
2H225AN36P
2H225AN38P
2H225AN46P
2H225AP03P
2H225AP09P
2H225AP11P
2H225BA01P
2H225BA09P
2H225CA11
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA27
5E314AA32
5E314AA42
5E314BB02
5E314BB11
5E314CC01
5E314CC02
5E314CC07
5E314CC15
5E314EE01
5E314EE03
5E314FF02
5E314FF03
5E314FF05
5E314FF19
5E314GG24
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】 回路基板表面に、現像残渣を発生させにくく、さらに、形成された硬化物のパターンの深部にアンダーカットが発生しにくい、硬化物のパターン形成が可能な硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムを提供する。
【解決手段】 回路基板上に硬化物のパターンを形成する方法に用いる硬化性樹脂組成物であって、前記硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、無機フィラーと、エポキシ樹脂とを含み、前記硬化物のパターンを形成する方法は、回路基板上に前記硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜を形成したのち、前記乾燥塗膜に対するパターン露光処理と、アルカリ水溶液による現像処理と、酸性水溶液による洗浄処理とを、前記の処理順に含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物の提供。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に硬化物のパターンを形成する方法に用いる硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、無機フィラーと、エポキシ樹脂とを含み、
前記硬化物のパターンを形成する方法は、回路基板上に前記硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜を形成したのち、前記乾燥塗膜に対するパターン露光処理と、アルカリ水溶液による現像処理と、酸性水溶液による洗浄処理とを、前記の処理順に含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機フィラーの配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し40~130質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し30~70質量部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
回路基板上に硬化物のパターンを形成する方法に用いるドライフィルムであって、
前記ドライフィルムは、アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、無機フィラーと、エポキシ樹脂とを含む硬化性樹脂組成物を支持体に塗工することによって得られる樹脂層を有し、
前記硬化物のパターンを形成する方法は、回路基板上に前記ドライフィルムの樹脂層を積層したのち、前記樹脂層に対するパターン露光処理と、アルカリ水溶液による現像処理と、酸性水溶液による洗浄処理とを、前記の処理順に含むことを特徴とする、ドライフィルム。
【請求項5】
前記無機フィラーの配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し40~130質量部であることを特徴とする、請求項4に記載のドライフィルム。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し30~70質量部であることを特徴とする、請求項4又は5に記載のドライフィルム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物、又は、請求項4~6のいずれか一項に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られる硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を含む、電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムに関し、さらに、それらを用いた硬化物、及びこの硬化物を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化や多機能化が求められるなか、電子部品に含まれる回路基板の回路の微細化が進んでいる。このような回路基板上に硬化物のパターンを形成するには、絶縁材料としてアルカリ現像型組成物が用いられている。従来のアルカリ現像型組成物としては、例えば、エポキシ樹脂などの樹脂成分、着色剤など添加剤といった多種多様な成分を含むものが用いられている。
【0003】
また、アルカリ現像型組成物は、回路基板上に塗布、パターン露光されたのちに、アルカリ水溶液により現像され、不要部分(未露光部分)を除去することで、回路基板上に硬化物のパターンを形成することに用いられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、カルボキシル基含有感光性樹脂と、光重合開始剤と、希釈剤と、エポキシ化合物と、黒色着色剤とを含有する黒色硬化性樹脂組成物が、解像性に優れ、黒色への調整が容易で、また熱処理後の色調変化を防止できることが開示されている。さらに、特許文献1には、解像性を評価する際、回路基板上に黒色硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥し、露光した後、炭酸ナトリウム水溶液にて現像することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-257711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている黒色硬化性樹脂組成物(アルカリ現像型組成物)は、エポキシ化合物や黒色着色剤に加え、無機フィラー(体質顔料)を含み得るものである。このように複雑な成分組成であるとパターニング露光後のアルカリ水溶液による現像の際、樹脂成分や無機フィラー等により回路基板表面に現像残渣を発生させるおそれがあった。近年の微細化された回路基板においては、微小な現像残渣であっても電子部品の不具合の原因となるおそれがあるため、その対策が必要である。
【0007】
この現像残渣を抑制するため組成物中の成分を減じたり、アルカリ現像液を変更するなどした場合には、硬化物パターンの回路基板側の深部が、アルカリ現像液に溶解しやすくなり、硬化物のパターンにアンダーカットの形状異常が発生するおそれがあった。また、硬化物のパターンにアンダーカットが生じながら現像残渣が発生する場合もあった。
回路の微細化が進むなか、わずかな硬化物パターンの形状異常であっても金めっき耐性が低下したり、電子部品の不具合の原因となり、その対策が必要である。
【0008】
そこで本発明の目的は、回路基板表面に、現像残渣を発生させにくく、さらに、形成された硬化物のパターンにおける基板側の深部にアンダーカットが発生し難い、硬化物のパターン形成が可能な硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的の実現に向け鋭意検討した結果、特定の組成を有する硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムを、パターニング露光及びアルカリ水溶液による現像処理の後、さらに酸性水溶液による洗浄処理を行う特定のパターン形成方法に用いることにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
【0010】
本発明(1)は、
回路基板上に硬化物のパターンを形成する方法に用いる硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、無機フィラーと、エポキシ樹脂とを含み、
前記硬化物のパターンを形成する方法は、回路基板上に前記硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜を形成したのち、前記乾燥塗膜に対するパターン露光処理と、アルカリ水溶液による現像処理と、酸性水溶液による洗浄処理とを、前記の処理順に含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物である。
本発明(2)は、
前記無機フィラーの配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し40~130質量部であることを特徴とする、前記発明(1)の硬化性樹脂組成物である。
本発明(3)は、
前記エポキシ樹脂の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し30~70質量部であることを特徴とする、前記発明(1)又は(2)の硬化性樹脂組成物である。
本発明(4)は、
回路基板上に硬化物のパターンを形成する方法に用いるドライフィルムであって、
前記ドライフィルムは、アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、無機フィラーと、エポキシ樹脂とを含む硬化性樹脂組成物を支持体に塗工することによって得られる樹脂層を有し、
前記硬化物のパターンを形成する方法は、回路基板上に前記ドライフィルムの樹脂層を積層したのち、前記樹脂層に対しするパターン露光処理と、アルカリ水溶液による現像処理と、酸性水溶液による洗浄処理とを、前記の処理順に含むことを特徴とする、ドライフィルムである。
本発明(5)は、
前記無機フィラーの配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対し40~130質量部であることを特徴とする、前記発明(4)のドライフィルムである。
本発明(6)は、
前記エポキシ樹脂の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対し30~70質量部であることを特徴とする、前記発明(4)又は(5)の硬ドライフィルムである。
本発明(7)は、
前記発明(1)~(3)のいずれかの硬化性樹脂組成物、又は、前記発明(4)~(6)のいずれかのドライフィルムの樹脂層を硬化して得られる硬化物である。
本発明(8)は、
前記発明(7)の硬化物を含む、電子部品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路基板上に乾燥塗膜、又は、樹脂層を形成したのち、パターン露光処理と、アルカリ水溶液による現像処理と、酸性水溶液による洗浄処理とを行った回路基板表面に、現像残渣を発生させにくく、さらに、形成された硬化物のパターンの深部にアンダーカットが発生しにくい、硬化物のパターン形成が可能な硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は硬化物パターンのアンダーカット量の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物について説明するが、本発明は以下には何ら限定されない。
【0014】
説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0015】
本明細書において、「樹脂組成物」を「硬化性樹脂組成物」の意味で使用することがある。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリル」と記載されている場合、「メタクリル」、及び「アクリル」の両方を含むものとする。
【0017】
本明細書において、数値範囲の上限値と下限値とが別々に記載されている場合、矛盾しない範囲で、各下限値と各上限値との全ての組み合わせが実質的に記載されているものとする。
【0018】
1.硬化性樹脂組成物、及びドライフィルム
本発明の硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、無機フィラーと、エポキシ樹脂とを含む。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、その他の成分を含むことができる。
【0019】
本発明のドライフィルムは、アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、無機フィラーと、エポキシ樹脂とを含む硬化性樹脂組成物から得られる樹脂層、即ち、本発明の硬化性樹脂組成物をPETフィルムのような支持体に塗工することによって得られる樹脂層を有する。
【0020】
アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、無機フィラーと、エポキシ樹脂とを含む硬化性樹脂組成物は、従来のアルカリ水溶液によるパターン形成方法に用いると、回路基板表面に現像残渣が発生しやすく、また、形成された硬化物のパターン深部にアンダーカットが発生しやすいものであった。すなわち、現像残渣の抑制とアンダーカットの抑制を両立しつつ、良好な硬化物のパターン形状を得ることは困難であった。
しかしながら、前記硬化性樹脂組成物を、アルカリ水溶液による現像処理の後に酸性水溶液による洗浄処理を行う特定のパターン形成方法に用いることにより、回路基板表面に現像残渣が発生しにくく、また、硬化物のパターンにアンダーカットが発生しにくいものとなる。よって、現像残渣の抑制とアンダーカットの抑制を両立しつつ、良好な硬化物のパターン形状を得ることができる。なお、硬化性樹脂組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルムにおいても同様の効果を奏することができる。
【0021】
以下、硬化性樹脂組成物のそれぞれの成分について説明する。
1-1.アルカリ可溶性樹脂
本発明にかかるアルカリ可溶性樹脂は、本発明の効果が阻害されない限りにおいて特に限定されないが、例えば、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物、カルボキシル基含有樹脂、フェノール性水酸基、及びカルボキシル基を有する化合物、チオール基を2個以上有する化合物を挙げることができる。これらのうち、カルボキシル基含有樹脂、又は、フェノール樹脂は、下地との密着性が優れるため好ましく、カルボキシル基含有樹脂は、さらに現像性に優れるため、より好ましい。カルボキシル基含有樹脂は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂でも、エチレン性不飽和基を有さないカルボキシル基含有樹脂でもよい。
【0022】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下の化合物(オリゴマー、又は、ポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0023】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合に
より得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0024】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物、及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基、及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0025】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基、及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0026】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物、及びジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0027】
(5)前記(2)又は(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0028】
(6)前記(2)又は(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0029】
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0030】
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0031】
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基
酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0032】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0033】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0034】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0035】
(13)前記(1)~(12)等に記載のカルボキシル基含有樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有樹脂。
【0036】
前記カルボキシル基含有樹脂のうち、前記(7)、(8)、(10)、(11)、(13)のカルボキシル基含有樹脂の少なくともいずれか1種を含むことが好ましく、更なる絶縁信頼性を向上させる観点からは前記(10)又は(11)に記載のカルボキシル基含有樹脂を含むことがより好ましい。
【0037】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて特に限定されないが、例えば、40~200mgKOH/gであり、好ましくは45~120mgKOH/gである。アルカリ可溶性樹脂の酸価が、かかる範囲にある場合には、露光後の、塗膜や樹脂層の、アルカリ水溶液による現像が容易となり、正常な硬化物パターンの描画が容易となる。
【0038】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、1,500~150,000とすることができ、1,500~100,000が好ましく、1,500~50,000がより好ましく、1,500~30,000が特に好ましい。重量平均分子量がかかる範囲にある場合には、タックフリー性能、貯蔵安定性、露光後の塗膜や樹脂層の耐湿性、現像性に優れ、現像時の膜減り、及び解像度の低下を抑制することができる硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムを得ることができる。
【0039】
アルカリ可溶性樹脂は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0040】
1-2.光重合開始剤
本発明にかかる光重合開始剤は、本発明の効果が阻害されない限りにおいて特に限定されず、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0041】
光重合開始剤としては、例えば、ビス-(2,6-ジロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;
2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;
1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;
ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;
アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;
チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;
アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;
アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;
エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;
ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ)-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;
フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0042】
光重合開始剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて特に限定されないが、例えば、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0.5~20質量部が好ましい。光重合開始剤の配合量が、かかる範囲にある場合には、表面硬化性に優れ、ハレーションが生じにくく、良好な解像性を有する硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムを得ることができる。
【0043】
1-3.無機フィラー
本発明にかかる無機フィラーは、本発明の効果が阻害されない限りにおいて特に限定されないが、例えば、シリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、水酸化アルミニウム、ガラス粉末、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、非繊維状ガラス、ハイドロタルサイト、ミネラルウール、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、亜鉛華等の無機フィラーを挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。これらのうち、シリカ及び硫酸バリウムの少なくともいずれか1種を含む場合が、硬化物の耐熱性や機械特性が向上するので好ましい。
【0044】
無機フィラーの平均粒径は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて特に限定されないが、その上限を10μm以下、3μm以下とすることができる。また、その下限は、0.01μm以上、0.05μm以上とすることができる。無機フィラーの平均粒径は、例えば、レーザー回折法により測定されたD50の値とすることができる。ここで、無機フィラーの平均粒径は、一次粒子の粒径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒径も含めた平均粒径(D50)であり、レーザー回折式粒子径分布測定装置と動的光散乱法による測定装置により求めることができる。レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EXII、動的光散乱法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のNanotrac Wave II UT151が挙げられる。無機フィラーの平均粒径がかかる範囲にある場合には、露光時の光照射の乱反射を抑えて硬化物パターンの微細加工を容易にすることができる。
【0045】
無機フィラーとしては、表面処理が施されたものであってもよく、それらの表面に硬化性反応基を導入可能な表面処理が施されたものでもよい。
ここで、硬化性反応基とは、カルボキシル基含有樹脂やエポキシ樹脂等と硬化反応する基を指し、光硬化性反応基でも熱硬化性反応基でもよい。光硬化性反応基としては、メタクリル基、アクリル基、ビニル基、スチリル基等が挙げられ、熱硬化性反応基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、イミノ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。
無機フィラーの表面に硬化性反応基を導入する方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いて導入すればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理すればよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を用いることができる。なお、硬化性反応基を有しない表面処理された無機フィラーとしては、例えば、シリカ-アルミナ表面処理、チタネート系カップリング剤処理、アルミネート系カップリング剤処理、有機処理がされた無機フィラー等が挙げられる。
【0046】
無機フィラーの配合量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、40~130部であることが好ましく、70~110質量部であることがより好ましい。55~85質量部の範囲内であると、さらに現像残渣とアンダーカットを抑制し、金めっき耐性に優れた硬化物を得ることができる。
【0047】
1-4.エポキシ樹脂
本発明にかかるエポキシ樹脂は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて特に限定されず、液状、半固形、固形のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、
金めっき耐性の観点から固形エポキシ樹脂と半固形エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
なお、本明細書において、固形エポキシ樹脂とは40℃で固体状であるエポキシ樹脂をいい、半固形エポキシ樹脂とは20℃で固体状であり、40℃で液状であるエポキシ樹脂をいい、液状エポキシ樹脂とは20℃で液状のエポキシ樹脂をいう。液状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。例えば、特開2016-079384の段落23~25に記載の方法にて行なう。
【0048】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ブロム化エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビキシレノール型若しくはビフェノール型エポキシ樹脂、又は、それらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート樹脂;テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;ナフタレン基含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;シルセスキオキサン骨格を有するエポキシ樹脂;グリシジル(メタ)アクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジル(メタ)アクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体;CTBN変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0049】
これらのうち、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂は、脂環骨格を有するため、本発明の硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムの解像性を向上させる点で好ましい。また、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂は、芳香環骨格を有するため、本発明の硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムの耐熱性を向上させる点で好ましい。
【0050】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、本発明の効果が阻害されない限りにおいて特に限定されないが、例えば、それぞれ150g/eq.以上とすることができ、200g/eq.以上が好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量がかかる範囲にある場合には、微細な回路パターンを被覆しても絶縁信頼性、及び密着性に優れた硬化物を形成することができる硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムを得ることができる。ここで、エポキシ当量は、本発明の硬化性樹脂組成物、又は、ドライフィルムに含まれる各エポキシ樹脂の値である。
【0051】
エポキシ樹脂の配合量は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて特に限定されないが、例えば、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し30~70質量部であることが好ましく、より好ましくは45~70質量部であり、さらにより好ましくは、45質量部~55質量部である。45~70質量部であると、さらに優れた金めっき耐性を有する硬化物を得ることができる。45質量部~55質量部であると、さらに現像残渣とアンダーカットを抑制し、優れた金めっき耐性を有する硬化物を得ることができる。
【0052】
1-5.感光性モノマー
本発明の硬化性樹脂組成物は、公知慣用の感光性モノマーを含有し得る。感光性モノマーは、例えば、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物である。このような感光性モノマーは、活性エネルギー線照射により組成物を硬化させるものである。
本発明において用いられる感光性モノマーは、例えば、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル、又は、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートなどのジオールのジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの少なくともいずれか1種を付加して得たジオールのジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートなどのグリコールのジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物のジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物のジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジアクリレート、シクロヘキシルジアクリレートなどの環状構造を有するジアクリレート、あるいはこれらに対応するメタアクリレートモノマーなどの2官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリアクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、あるいはこれらのシルセスキオキサン変性物等に代表される多官能アクリレート、あるいはこれらに対応するメタアクリレートモノマー、3官能メタクリレートエステル、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレートなどの多官能(メタ)アクリレート、又はこれらの2種以上の組み合わせ等が挙げられる。
このような感光性モノマーの含有量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、10~70質量部の範囲が好ましい。感光性モノマーの配合量がこのような範囲内であれば、硬化性樹脂組成物が十分な光硬化性を有し、タック性(指触乾燥性)も良好となる。
【0053】
1-6.熱硬化触媒
硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含むことから、熱硬化触媒を含有することが好ましい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU-CAT(登録商標)3503N、U-CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)等が挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂用の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
熱硬化触媒を硬化性樹脂組成物中に配合する場合、その配合量は、通常用いられる割合で十分であり、エポキシ樹脂100質量部に対して例えば0.01~15質量部である。
【0054】
1-7.着色剤
硬化性樹脂組成物には、着色剤を配合することができる。着色剤としては、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。
着色剤はその目的に応じて任意に配合することができ、着色剤を配合する場合、着色剤の配合量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して例えば0.01~5質量%である。
【0055】
1-8.その他の成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、電子材料の分野において公知慣用のその他の成分を添加することができる。その他の成分としては、上述したアルカリ可溶性樹脂及びエポキシ樹脂以外の光硬化性化合物、熱硬化性化合物;有機溶媒;重合禁止剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;可塑剤;難燃剤;帯電防止剤;老化防止剤;酸化防止剤;抗菌・防黴剤;消泡剤;レベリング剤;増粘剤;密着性付与剤;チキソ性付与剤;光開始助剤;増感剤;光塩基発生剤;熱可塑性樹脂;エラストマー;有機フィラー;離型剤;表面処理剤;分散剤;分散助剤;表面改質剤;安定剤;蛍光体;等を挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0056】
2.ドライフィルムの製造方法
本発明のドライフィルムは、本発明の硬化性樹脂組成物を、支持体上に塗布し、その後乾燥して得られた樹脂層を有するものである。本発明のドライフィルムは、本発明の硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で支持体上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で3~100μm、好ましくは5~40μmの範囲で適宜設定することができる。
【0057】
支持体としては、プラスチックフィルムを好適に用いることができ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。支持体の厚さについては特に限定されないが、一般に、10~150μmの範囲とすることができる。
【0058】
支持体上に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥した後、さらに、塗膜の表面に塵が付着するのを防ぐ等の目的で、塗膜の表面に剥離可能なフィルム(以下、「カバーフィルム」とも称す)を積層してもよい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに樹脂層と支持体との接着力よりも樹脂層とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布した後に行う乾燥処理は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等を用いて行うことができる。
【0060】
3.回路基板の製造方法(硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムの用途)
本発明の電子部品は、本発明の硬化性樹脂組成物、又は、ドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有する。本発明の電子部品の製造方法としては、硬化物のパターン形成方法として、回路基板上に前記硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜を形成したのち、前記乾燥塗膜に対するパターン露光処理と、アルカリ水溶液による現像処理と、酸性水溶液による洗浄処理とを、前記の処理順に含むことを特徴とする。即ち、回路基板上に乾燥塗膜又は樹脂層を形成したのち、パターン露光処理、アルカリ水溶液による現像処理、酸性水溶液による洗浄処理の処理順が守られている限りにおいて、それぞれの処理の前後に、その他の処理が行われてもよい。その他の処理としては、回路基板製造上公知の処理を行うことができ、特に限定されず、例えば、酸性水溶液による洗浄処理の後に純水によるリンス処理や加熱処理を実施してもよい。ここで、アルカリ水溶液による現像処理と酸性水溶液による洗浄処理は、連続して行うことが好ましい。
【0061】
以下に、本発明の硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムを用いた電子部品の製造方法について説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物により乾燥塗膜を形成する方法としては、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、前記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、回路基板上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの乾燥塗膜を形成することができる。
【0062】
本発明のドライフィルムにより回路基板上に樹脂層を積層する方法としては、例えば、ラミネーター等によりドライフィルムの樹脂層が回路基板と接触するように回路基板上に貼り合わせた後、支持体を剥がすことにより、回路基板上に樹脂層を積層(形成)することができる。
【0063】
回路基板としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。回路には、前処理が施されていてもよく、例えば、四国化成社製のGliCAP、メック社製のNew Organic AP(Adhesion promoter)、アトテックジャパン社製のNova Bond等で前処理を施し、ソルダーレジスト等の硬化被膜との密着性等を向上させたり、防錆剤で前処理を施してもよい。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法、及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0065】
パターン露光処理としては、例えば、回路基板に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光することができる。
【0066】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で活性エネルギー線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直接描画機のランプ光源、又は、レーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0067】
アルカリ水溶液による現像処理としては、例えば、パターン露光処理後の未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%の炭酸ナトリウム水溶液や炭酸カリウム水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。
【0068】
アルカリ水溶液による現像処理としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。これらは混合して用いてもよい。
【0069】
酸性水溶液による洗浄処理としては、例えば、アルカリ水溶液による現像処理後に、パターン硬化物を酸性水溶液(例えば、0.3~3体積%の硫酸水溶液、酢酸水溶液洗浄、0.3~3質量%のクエン酸水溶液、二酸化炭素ガスを純水に溶解させpH5に調整した炭酸水)により洗浄する。
【0070】
酸性水溶液による洗浄処理としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、洗浄液としては、酸性水溶液であれば、特に限定されないが、無機酸水溶液としては、例えば、硫酸、亜硫酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、炭酸、リン酸、ホウ酸、過酸化水素等の水溶液を挙げることができる。また、有機酸水溶液としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸等のカルボン酸;ホスホン酸;スルホン酸;酢酸等を挙げることができる。これらは、混合して用いてもよい。
【0071】
酸性水溶液の濃度は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて特に限定されないが、例えば、酸の水溶液中の濃度が0.5質量%以上5質量%以下である。酸性水溶液の濃度がかかる範囲にある場合には、硬化物のパターンの安定性に優れる。
【0072】
酸性水溶液による洗浄処理における処理時間は、特に限定されるものではなく、酸性水溶液の組成や濃度、洗浄処理方法(例えば、ディピング法やシャワー法)、回路基板の種類や用いられている金属等に応じて決定することができる。処理時間としては、例えば、10秒間~60秒間とすることができ、好ましくは10~30秒である。
【0073】
酸性水溶液による洗浄処理に用いられる酸性水溶液の温度も、特に限定されるものではなく、酸性水溶液の組成や濃度、洗浄処理方法(例えば、ディピング法やシャワー法)、回路基板の種類や用いられている金属等に応じて決定することができる。酸性水溶液の温度としては、例えば、0~50℃とすることができ、好ましくは20~30℃である。
【0074】
酸性水溶液による洗浄処理ののち、硬化物に活性エネルギー線を照射後加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後活性エネルギー線を照射、又は、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化膜を形成する。
【0075】
本発明の硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムは、回路基板上に硬化膜を形成するために好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用され、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁層、カバーレイを形成するために使用される。また、高度な信頼性が求められる微細な配線パターンを備えるプリント配線板、例えばパッケージ基板、特にFC-BGA用の永久被膜(特にソルダーレジスト)の形成に好適である。例えば、L/Sが10/10以下、即ち、ライン幅Lが10μm以下、ライン間スペースが10μm以下のファインピッチであっても好適に用いることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物、及びドライフィルムは、回路表面の粗度が小さくても配線パターンを備えるプリント配線板、例えば高周波用のプリント配線板にも好適に用いることができる。例えば、表面粗度Raが0.5μm以下、特に0.3μm以下であっても好適に用いることができる。
【実施例0076】
次に、実施例、及び比較例により、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらには何ら限定されない。
【0077】
<<<硬化性樹脂組成物の作製>>>
以下に各樹脂組成物(実施例1~12、及び比較例1~5の組成物)の作製手順を説明する。
【0078】
<<樹脂の合成>>
<合成例1 アルカリ可溶性樹脂A-1の合成>
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、ビスフェノールA456部、水228部、37%ホルマリン649部を仕込み、40℃以下の温度を保ち、25%水酸化ナトリウム水溶液228部を添加した、添加終了後50℃で10時間反応した。反応終了後40℃まで冷却し、40℃以下を保ちながら37.5%リン酸水溶液でpH4まで中和した。その後静置し水層を分離した。分離後メチルイソブチルケトン300部を添加し均一に溶解した後、蒸留水500部で3回洗浄し、50℃以下の温度で減圧下、水、溶媒等を除去した。得られたポリメチロール化合物をメタノール550部に溶解し、ポリメチロール化合物のメタノール溶液1230部を得た。得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液の一部を真空乾燥機中室温で乾燥したところ、固形分が55.2%であった。
得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液500部、2,6-キシレノール440部を仕込み、50℃で均一に溶解した。均一に溶解した後50℃以下の温度で減圧下メタノールを除去した。その後シュウ酸8部を加え、100℃で10時間反応した。反応終了後180℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、ノボラック樹脂A550部を得た。さらに、温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、前記のノボラック樹脂Aを130部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次に加熱昇温し、150℃、8kg/cmでエチレンオキシド45部を徐々に導入し反応させた。反応はゲージ圧0.0kg/cmとなるまで約4時間を続けた後、室温まで冷却した。この反応溶液に3.3部の36%塩酸水溶液を添加混合し、水酸化ナトリウムを中和した。この中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターにて脱溶剤して、水酸基価が175g/eq.であるノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りエチレンオキシドが平均1モル付加しているものであった。
このように得られたノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物175部、アクリル酸50部、p-トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トルエン130部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら攪拌して、115℃に昇温し、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させたのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液を、5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去したのち、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、固形分68%のアクリレート樹脂溶液を得た。
次に、撹拌器、及び還流冷却器の付いた4つ口フラスコに、得られたアクリレート樹脂溶液312部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トリフェニルホスフィン0.3部を仕込み、この混合物を110℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸45部を加え、4時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたアルカリ可溶性樹脂A-1は、不揮発分72%、固形分酸価65mgKOH/gであった。またアルカリ可溶性樹脂A-1の重量平均分子量は、11,000であった。
【0079】
<合成例2 アルカリ可溶性樹脂A-2の合成>
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、クレゾールノボラック樹脂(アイカ工業製ショウノールCRG-951、OH当量:119.4)119.4部、水酸化カリウム1.19部、及びトルエン119.4部を導入し、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8部を徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56部を添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2mgKOH/g(307.9g/eq.)であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキシドが平均1.08モル付加したものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液293.0部、アクリル酸43.2部、メタンスルホン酸11.53部、メチルハイドロキノン0.18部、及びトルエン252.9部を、撹拌機、温度計、及び空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5部、及びトリフェニルホスフィン1.22部を、撹拌器、温度計、及び空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8部を徐々に加え、95~101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして、固形分65%、固形分の酸価87.7mgKOH/gのアルカリ可溶性樹脂A-2を得た。またアルカリ可溶性樹脂A-2の重量平均分子量は、2,500であった。
【0080】
<合成例3 感光性モノマーの合成>
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、ビスフェノールA456部、水228部、37%ホルマリン649部を仕込み、40℃以下の温度を保ち、25%水酸化ナトリウム水溶液228部を添加した、添加終了後50℃で10時間反応した。反応終了後40℃まで冷却し、40℃以下を保ちながら37.5%リン酸水溶液でpH4まで中和した。その後静置し水層を分離した。分離後メチルイソブチルケトン300部を添加し均一に溶解した後、蒸留水500部で3回洗浄し、50℃以下の温度で減圧下、水、溶媒等を除去した。得られたポリメチロール化合物をメタノール550部に溶解し、ポリメチロール化合物のメタノール溶液1230部を得た。得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液の一部を真空乾燥機中室温で乾燥したところ、固形分が55.2%であった。
得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液500部、2,6-キシレノール440部を仕込み、50℃で均一に溶解した。均一に溶解した後50℃以下の温度で減圧下メタノールを除去した。その後シュウ酸8部を加え、100℃で10時間反応した。反応終了後180℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、ノボラック樹脂A550部を得た。さらに、温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、前記のノボラック樹脂Aを130部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次に加熱昇温し、150℃、8kg/cmでエチレンオキシド45部を徐々に導入し反応させた。反応はゲージ圧0.0kg/cmとなるまで約4時間を続けた後、室温まで冷却した。この反応溶液に3.3部の36%塩酸水溶液を添加混合し、水酸化ナトリウムを中和した。この中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターにて脱溶剤して、水酸基価が175g/eq.であるノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りエチレンオキシドが平均1モル付加しているものであった。
このように得られたノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物175部、メタクリル酸75部、p-トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トルエン130部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら攪拌して、115℃に昇温し、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させたのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液を、5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去したのち、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、固形分68%の感光性モノマー溶液を得た。また感光性モノマーの重量平均分子量は、8,000であった。
【0081】
<<硬化性樹脂組成物の調製>>
表1~3に示す種々の成分を同表に示す割合にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、ビーズミルを用いて混練し、各実施例、及び比較例毎に硬化性樹脂組成物を調製した。表中の配合量は、質量部を示す。なお、撹拌機の攪拌条件は、回転数が800rpm、撹拌時間が10min.撹拌機羽が12cmであり、ビーズミルの条件としては、コニカル型K-8(ビューラ社製)を使用し、ジルコニアビーズ(充填率88%)、回転数は1000rpm、吐出量20%、ビーズ粒径0.65mmを用いた。
【0082】
<<<評価>>>
各実施例、及び各比較例にかかる硬化性樹脂組成物について、以下の評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0083】
<<現像性評価>>
表1~3の実施例及び比較例の通りに組成物を調製した後、50μmのギャップを有するアプリケーターを用いてPETフィルム上に塗布し、乾燥(80℃,20分間)し、PETフィルム上に樹脂層を有するドライフィルムを得た。
このドライフィルムを縦10cm×横10cmのサイズに切り出し、銅張積層板(FR-4基板)に樹脂層をラミネート処理して樹脂層付き基板を得た。
この基板に対して、表1~3中のアルカリ水溶液を用いて、現像液30℃、スプレー圧0.2MPaにて45秒、60秒、又は90秒間処理した後に、25℃の酸性水溶液へ15秒間浸漬し、水洗を60秒間行い、評価用の基板を得た。
この基板の表面の硬化物層を光学顕微鏡にて用いて現像残渣を確認した。なお、比較例1,2においては、酸性水溶液への浸漬は行わなかった。
◎:45秒にて現像可能。
〇:60秒にて現像可能。
△:90秒にて現像可能。
×:現像不可。
【0084】
<<アンダーカット評価>>
(1)アンダーカット量評価基板の作製
実施例及び比較例の組成物をPETフィルム上に50μmのギャップを有するアプリケーターを用いて塗布した後に、熱風循環式乾燥炉(80℃,20分間)してドライフィルムを得た。
このドライフィルムの樹脂層をラミネート装置にてFR-4基板に熱圧着し、樹脂層を有する基板を得た。
この基板に対し、ネガマスクを介してレーザーダイレクト露光機(株式会社 オーク製作所製:Mms 60、露光量300mJ/cm)を用いて活性エネルギーを照射した後に、表1~3中のアルカリ水溶液を用いて、現像液30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒、酸処理25℃、酸処理時間15秒、水洗時間60秒を実施し、L/S:300μmの硬化物パターンを有する基板を得た。この後にUV照射(高圧水銀灯:1000mJ/cm)、熱風循環式乾燥炉を用いて150℃、60分間にて本硬化を行い、断面評価用基板を作成した。
(2)アンダーカット量の測長方法
上記(1)にて得られた基板を、硬化物パターンの断面が観察できるように切断し、樹脂に包埋し、硬化物パターンの断面が観察できるように、研磨機を用いて研磨した。なお、研磨にはサンドペーパーの600番、1000番、2000番を用い、必要に応じて4000番にて断面表面を観察可能になる迄、研磨を行った。走査型電子顕微鏡にて硬化物パターンの断面を観察し、アンダーカット量を測定した(図1参照)。図1に示した基準線とアンダーカット線との間の最短距離である。ここで、基準線X、及びアンダーカット線Yは観察断面表面の同一平面内にあるものとする。基準線Xは、硬化物パターン断面を正面とした場合に、硬化物パターン側面に沿って基板表面に引いた直線と、基板との交点(図1の交点A)を通過する基板に対して垂直な直線である。アンダーカット線Yは、アンダーカットされたパターン硬化物の辺と基板との交点(図1の交点B)を通過する基板に対して垂直な直線である。
◎:アンダーカット量が平均(n=5)で5μm以下
○:アンダーカット量が平均(n=5)で6μm以上10μm以下
△:アンダーカット量が平均(n=5)で11μm以上15μm以下
×:アンダーカット量が平均(n=5)で20μm以上
【0085】
<<金めっき耐性評価>>
上記アンダーカット量評価基板の作製と同様の方法にて評価用試験基板を得た。得られた評価基板に対し、下記の条件にて無電解金めっき処理を行ない、その後の試験基板について外観の変化及びセロハン粘着テープを用いたピーリング試験を行い、硬化膜の剥離状態を確認した。
評価基準は下記の通りである。
◎:評価基板の外観変化もなく、テープピーリング試験後に硬化膜の剥離が全くないこと。
○:評価基板の外観において、めっき液の染み込みがあるものの、テープピーリング試験後に硬化膜の剥離が全くないこと。
△:評価基板の外観において、めっき液の染み込みがあるものの、テープピーリング試験後に硬化膜の一部の剥離が確認できること。
×:硬化膜の大きな浮き及びめっきの潜りが認められ、テープピーリング試験後に硬化膜の剥れが大きいこと。
<無電解金めっきの処理手順>
硬化物パターンを熱硬化させた評価用基板を、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミッド社製、Metex L-5Bの20vol%水溶液)に3分間浸漬した後に水洗し、14.3wt%過硫酸アンモニウム水溶液に室温で3分間浸漬してソフトエッチングを行い、次いで流水中に3分間浸漬して水洗した。
その後、10vol%硫酸水溶液に室温で評価用基板を1分間浸漬した後、流水にて水洗した。さらに、30℃の触媒液(メルテックス社製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)を用いて3分間浸漬することにより触媒を付与し、流水処理をした後に、3分間浸漬水洗した。
このようにして触媒を付与した評価用基板を、85℃のニッケルめっき液(メルテックス社製、メルプレートNi-865Mの20vol%水溶液)に20分間浸漬して、無電解ニッケルめっきを行った。そして、10vol%硫酸水溶液に室温で1分間浸漬した後、流水中に1分間浸漬して水洗した。
次いで、85℃の金めっき液(メルテックス社製、メルプレート AU-6601MA 10vol%、メルプレート AU-6601 MB 10vol%、シアン化金カリウム3wt%の水溶液)に30分間浸漬して無電解金めっきを行った後、60℃温水にて3分間浸漬にて湯洗した。
最後に水洗、及び乾燥を行い、無電解金めっきを施した金めっき耐性評価用試料を得た。
【0086】
【表1】
*1 カーボンブラック:MA-100(三菱ケミカル株式会社)
*2 BYK-350(ビッケミー・ジャパン社製)
*3 DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能アクリルモノマー、日本化薬社株式会社製)
*4 ラロマーLR8863:EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(BASFジャパン社製)
*5 TPO:アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製)
*6 JMT784:チタノセン系光重合開始剤(Yueyang Kimoutain Sci-tech Co.Ltd.製)
*7 キノパワー QS-30:ナフトキノン系重合禁止剤(川崎化成工業社製)
*8 SiO、平均粒径:0.5μm、表面処理なし
*9 PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
*10 B-33:硫酸バリウム(堺化学工業社製)
*11 CA(カルビトールアセテート)
*12 ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP-7200L;DIC社製)
*13 ビフェニルアラフキル型エポキシ樹脂(NC-3000H;日本化薬社製)
*14 ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N-870;DIC社製)
*15 ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER834;三菱ケミカル社製)
【表2】
【0087】
【表3】
図1