(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135155
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】嵌合具及び嵌合具付き袋体
(51)【国際特許分類】
A44B 19/16 20060101AFI20220908BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A44B19/16
B65D33/25 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034778
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】野呂 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼川 新
【テーマコード(参考)】
3B098
3E064
【Fターム(参考)】
3B098AA10
3B098AB00
3E064AA05
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA30
3E064BA39
3E064BA46
3E064EA04
3E064HN13
(57)【要約】
【課題】嵌合具付き袋体における合成樹脂使用量を削減でき、それでいながら嵌合具として使用可能な剛性及び靭性を有する嵌合具、及びこれを用いた嵌合具付き袋体を提供する。
【解決手段】嵌合具10は、帯状の第1基材16の対向面に長手方向に沿って第1嵌合部18が設けられた第1嵌合部材12と、帯状の第2基材20の対向面に長手方向に沿って第2嵌合部22が設けられた第2嵌合部材14とを備え、第1基材16、第1嵌合部18、第2基材20及び第2嵌合部22が、セルロース粉と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物の総質量に対する前記セルロース粉の割合が50質量%超であり、前記セルロース粉の平均粒径が20μm以下であり、前記熱可塑性樹脂が、エチレン-酢酸ビニル共重合体と無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の帯状の第1嵌合部材及び第2嵌合部材を備え、
前記第1嵌合部材が、帯状の第1基材と、前記第1基材の対向面に長手方向に沿って設けられた第1嵌合部と、を備え、
前記第2嵌合部材が、帯状の第2基材と、前記第2基材の対向面に長手方向に沿って設けられ、前記第1嵌合部と着脱自在に嵌合する第2嵌合部と、を備える嵌合具であって、
前記第1基材、前記第1嵌合部、前記第2基材及び前記第2嵌合部が、セルロース粉と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物からなり、
前記樹脂組成物の総質量に対する前記セルロース粉の割合が50質量%超であり、
前記セルロース粉の平均粒径が20μm以下であり、
前記熱可塑性樹脂が、エチレン-酢酸ビニル共重合体と無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを含む、嵌合具。
【請求項2】
前記嵌合具の総質量に対する前記セルロース粉の割合が50質量%超である、請求項1に記載の嵌合具。
【請求項3】
前記樹脂組成物の総質量に対する前記セルロース粉の割合が50質量%超85質量%以下、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が10質量%以上45質量%未満、前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンの割合が5質量%以上15質量%未満である、請求項1又は2に記載の嵌合具。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、熱可塑性オレフィン系エラストマをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の嵌合具。
【請求項5】
前記樹脂組成物の総質量に対する前記セルロース粉の割合が50質量%超75質量%以下、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が10質量%以上35質量%未満、前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンの割合が5質量%以上15質量%未満、前記熱可塑性オレフィン系エラストマの割合が10質量%以上28質量%未満である、請求項4に記載の嵌合具。
【請求項6】
前記樹脂組成物の最大延伸倍率が270%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の嵌合具。
【請求項7】
前記樹脂組成物の曲げ弾性率が110~270MPaである、請求項1~6のいずれか一項に記載の嵌合具。
【請求項8】
前記第1嵌合部材が、前記第1基材の外側面側に積層された第1シール層を備え、
前記第2嵌合部材が、前記第2基材の外側面側に積層された第2シール層を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の嵌合具。
【請求項9】
内容物を収容する袋本体と、前記袋本体の内面に取り付けられた請求項1~8のいずれか一項に記載の嵌合具と、を具備する、嵌合具付き袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合具及び嵌合具付き袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、薬品、雑貨等の様々な分野において、袋本体の開口部近傍の内面に、開口部を開閉自在に封じる嵌合具が取り付けられた嵌合具付き袋体が包装用資材として広く用いられる。嵌合具としては、一対の帯状の基材のそれぞれの対向面に、互いに着脱自在に嵌合する第1嵌合部と第2嵌合部が、それら基材の長手方向に沿ってそれぞれ設けられたものが挙げられる。
【0003】
袋本体の材料としては一般に、熱可塑性樹脂が用いられる。
嵌合具の材料には、第1嵌合部や第2嵌合部を成形可能な成形性、第1嵌合部と第2嵌合部を着脱自在に嵌合させるための適度な剛性及び靭性が求められる。このような観点から、嵌合具の材料としては一般に、ポリプロピレン樹脂が用いられる。
【0004】
近年、海洋プラスチック問題を始め、合成樹脂製品の廃棄物が問題視されている。そのため、合成樹脂製品、なかでも利用後すぐに廃棄される包装用資材に対し、原材料の少なくとも一部を合成樹脂以外の原材料に転換し、合成樹脂使用量を削減する要望が年々高まっている。
合成樹脂以外の原材料としては、例えば、紙等のセルロース材料が用いられる。
【0005】
特許文献1には、基材層を含む特定の層構成の積層体をヒートシールして形成された包装体に、チャックテープのような再封性手段が設けられた貼付薬用包装袋が提案されている。また、基材層に紙を用いることが提案されている。
しかし、基材層に紙を用いたとしても、特許文献1の包装袋における合成樹脂使用量の削減割合はさほど大きくない。
なお、特許文献1では、チャックテープの材料については特に検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、嵌合具付き袋体における合成樹脂使用量を削減でき、それでいながら嵌合具として使用可能な剛性及び靭性を有する嵌合具、及びこれを用いた嵌合具付き袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を有する。
[1]一対の帯状の第1嵌合部材及び第2嵌合部材を備え、
前記第1嵌合部材が、帯状の第1基材と、前記第1基材の対向面に長手方向に沿って設けられた第1嵌合部と、を備え、
前記第2嵌合部材が、帯状の第2基材と、前記第2基材の対向面に長手方向に沿って設けられ、前記第1嵌合部と着脱自在に嵌合する第2嵌合部と、を備える嵌合具であって、
前記第1基材、前記第1嵌合部、前記第2基材及び前記第2嵌合部が、セルロース粉と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物からなり、
前記樹脂組成物の総質量に対する前記セルロース粉の割合が50質量%超であり、
前記セルロース粉の平均粒径が20μm以下であり、
前記熱可塑性樹脂が、エチレン-酢酸ビニル共重合体と無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを含む、嵌合具。
[2]前記嵌合具の総質量に対する前記セルロース粉の割合が50質量%超である、前記[1]の嵌合具。
[3]前記樹脂組成物の総質量に対する前記セルロース粉の割合が50質量%超85質量%以下、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が10質量%以上45質量%未満、前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンの割合が5質量%以上15質量%未満である、前記[1]又は[2]の嵌合具。
[4]前記熱可塑性樹脂が、熱可塑性オレフィン系エラストマをさらに含む、前記[1]~[3]のいずれかの嵌合具。
[5]前記樹脂組成物の総質量に対する前記セルロース粉の割合が50質量%超75質量%以下、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が10質量%以上35質量%未満、前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンの割合が5質量%以上15質量%未満、前記熱可塑性オレフィン系エラストマの割合が10質量%以上28質量%未満である、前記[4]の嵌合具。
[6]前記樹脂組成物の最大延伸倍率が270%以上である、前記[1]~[5]のいずれかの嵌合具。
[7]前記樹脂組成物の曲げ弾性率が110~270MPaである、前記[1]~[6]のいずれかの嵌合具。
[8]前記第1嵌合部材が、前記第1基材の外側面側に積層された第1シール層を備え、
前記第2嵌合部材が、前記第2基材の外側面側に積層された第2シール層を備える、前記[1]~[7]のいずれかの嵌合具。
[9]内容物を収容する袋本体と、前記袋本体の内面に取り付けられた前記[1]~[8]のいずれかの嵌合具と、を具備する、嵌合具付き袋体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、嵌合具付き袋体における合成樹脂使用量を削減でき、それでいながら嵌合具として使用可能な剛性及び靭性を有する嵌合具、及びこれを用いた嵌合具付き袋体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の嵌合具の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の嵌合具の他の例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の嵌合具付き袋体の一例を示す概略正面図である。
【
図4】
図3の嵌合具付き袋体を開封した様子を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[嵌合具]
本発明の嵌合具は、一対の帯状の第1嵌合部材及び第2嵌合部材を備える。第1嵌合部材は、帯状の第1基材と、第1基材の対向面に長手方向に沿って設けられた第1嵌合部と、を備える。第2嵌合部材は、帯状の第2基材と、第2基材の対向面に長手方向に沿って設けられ、第2嵌合部と着脱自在に嵌合する第2嵌合部と、を備える。
第1基材、第1嵌合部、第2基材及び第2嵌合部は、セルロース粉と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(X)」とも記す。)からなる。樹脂組成物(X)の総質量に対するセルロース粉の割合は、50質量%超である。熱可塑性樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合体と無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを含む。
本発明の嵌合具は、内容物を収容する袋本体の内面に取り付けられる。袋本体の内面に、袋本体に形成される開口部に沿うように本発明の嵌合具が取り付けられることで、開口部を開閉自在に閉じることができる。
【0012】
以下、本発明の嵌合具の一例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
本実施形態例の嵌合具10は、
図1に示すように、一対の帯状の第1嵌合部材12と第2嵌合部材14とを備える。
第1嵌合部材12は、帯状の第1基材16と、第1基材16の対向面16aに長手方向に沿って設けられた突条の雄側嵌合部からなる第1嵌合部18とを備える。第1基材16と第1嵌合部18は一体に成形されている。
第2嵌合部材14は、帯状の第2基材20と、第2基材20の対向面20aに長手方向に沿って設けられ、第1嵌合部18と着脱自在に嵌合する雌側嵌合部からなる第2嵌合部22とを備える。第2基材20と第2嵌合部22は一体に成形されている。
【0014】
嵌合具10は、袋本体に取り付けられる際、第1基材16の第1の側縁16b及び第2基材20の第1の側縁20bが袋本体に形成される開口部側、第1基材16の第2の側縁16c及び第2基材20の第2の側縁20cが袋本体の内容物側となるように取り付けられる。
【0015】
第1嵌合部18は、第1基材16の対向面16aに、第1基材16の長手方向に沿って設けられている。第1嵌合部18は、第1基材16の対向面16aから立ち上がる幹部18aと、幹部18aの先端部に設けられ、幹部18aよりも大きい断面略半円形状の頭部18bとを備える。
【0016】
第2嵌合部22は、第2基材20の対向面20aに、第2基材20の長手方向に沿って設けられている。第2基材20は、第2基材20の対向面20aから断面円弧状に立ち上がる第1アーム部22aと第2アーム部22bからなり、第1アーム部22aと第2アーム部22bによって凹部22cが形成されている。
【0017】
第1嵌合部18と第2嵌合部22は、第1嵌合部18の頭部18bを第2嵌合部22の凹部22cに嵌め込むことで、着脱自在に嵌合できるようになっている。
第1嵌合部18及び第2嵌合部22の断面形状は、第1嵌合部18と第2嵌合部22を互いに着脱することで、袋本体の開口部の開閉が繰り返し行えるものであればよく、公知の断面形状を採用できる。
【0018】
第1基材16の厚さは、0.1~0.4mmが好ましく、0.12~0.3mmがより好ましい。第1基材16の厚さが下限値以上であれば、嵌合具10を袋本体に熱溶着したときに、充分なシール強度が得られる。第1基材16の厚さが上限値以下であれば、充分な柔軟性が得られる。
第2基材20の厚さの好ましい態様は、第1基材16の厚さの好ましい態様と同じである。第1基材16と第2基材20の厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0019】
第1基材16の幅は、2~60mmが好ましく、3~40mmがより好ましい。第1基材16の幅が下限値以上であれば、嵌合具10を袋本体に熱溶着したときに、充分なシール強度が得られる。第1基材16の幅が上限値以下であれば、取り扱いが容易であり、流通及び保管時に嵌合具の変形が生じにくい。
第2基材20の幅の好ましい態様は、第1基材16の幅の好ましい態様と同じである。
第1基材16の幅と第2基材20の幅は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
第1基材16、第1嵌合部18、第2基材20及び第2嵌合部22は、樹脂組成物(X)からなる。樹脂組成物(X)については後で詳しく説明する。第1基材16、第1嵌合部18、第2基材20、第2嵌合部22それぞれを形成する樹脂組成物(X)は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0021】
第1基材16、第1嵌合部18、第2基材20及び第2嵌合部22が樹脂組成物(X)からなることから、嵌合具10は、セルロース粉と熱可塑性樹脂とを含む。
嵌合具10の総質量に対するセルロース粉の割合は、50質量%超が好ましく、53質量%超が好ましい。セルロース粉の割合が上記下限値以上であれば、嵌合具付き袋体における合成樹脂使用量の削減効果に優れる。また、熱可塑性樹脂の割合が少なくても充分な剛性が発現する。
また、嵌合具10の総質量に対するセルロース粉の割合は、85質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましく、56質量%以下が特に好ましい。セルロース粉の割合が上記上限値以下であれば、嵌合具10の靭性がより優れる。
【0022】
(樹脂組成物)
樹脂組成物(X)は、セルロース粉と熱可塑性樹脂とを含む。
熱可塑性樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」とも記す。)と無水マレイン酸変性ポリオレフィン(以下、「MA-PO」とも記す。)とを含む。
【0023】
セルロース粉の平均粒径は、20μm以下であり、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。平均粒径が上記上限値以下であれば、樹脂組成物の成形性、靭性がより優れる。
また、セルロース粉の平均粒径は、5μm以上が好ましい。平均粒径が上記下限値以上であれば、樹脂組成物の剛性がより優れる。
平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される。
【0024】
セルロース粉は、例えば、精製された高純度のコットンリンター、木材、竹、バガス等を由来とするパルプを使用し、これらのパルプをナイフミル、竪型ローラミル、ジェットミル等の粉砕機で粉砕した粉末パルプを原料とし、目的の平均粒径となるよう分級する方法により製造できる。
セルロース粉は、市販品を使用してもよい。セルロース粉の市販品としては、日本製紙株式会社製のKCフロック、レッテンマイヤージャパン株式会社製のセルロースマイクロファイバー等が挙げられる。
【0025】
EVAは、エチレン単位と酢酸ビニル単位とを含む。
EVAは、必要に応じて、EVAの特性を損なわない範囲で、エチレン単位及び酢酸ビニル単位以外の他の単量体単位をさらに含んでいてもよい。
【0026】
EVAのエチレン単位の含有量(以下、「エチレン含有量」とも記す。)は、EVAを構成する全ての単量体単位の合計質量に対し、60~90質量%が好ましく、70~85質量%がより好ましい。エチレン含有量が上記下限値以上であれば、樹脂組成物(X)の剛性がより優れ、上記上限値以下であれば、樹脂組成物(X)の靭性がより優れる。
【0027】
EVAの酢酸ビニル単位の含有量(以下、「酢酸ビニル含有量」とも記す。)は、EVAを構成する全ての単量体単位の合計質量に対し、10~40質量%が好ましく、15~30質量%がより好ましい。酢酸ビニル含有量が上記下限値以上であれば、樹脂組成物(X)の靭性がより優れ、上記上限値以下であれば、樹脂組成物(X)の剛性がより優れる。
【0028】
EVAのメルトマスフローレート(MFR)は、0.5~400g/10分が好ましく、3~400g/10分がより好ましい。EVAのMFRが上記下限値以上であれば、樹脂組成物(X)の剛性がより優れ、上記上限値以下であれば、樹脂組成物(X)の靭性、成形性、外観がより優れる。
EVAのMFRは、JIS K 6924-1に準拠し、温度125℃、荷重3.19Nの条件で測定される。
【0029】
EVAの曲げ弾性率は、5~150MPaが好ましく、10~50MPaがより好ましい。EVAの曲げ弾性率が上記範囲内であれば、樹脂組成物(X)の曲げ弾性率が後述する好ましい範囲内となりやすい。
曲げ弾性率は、JIS K 7171に準拠して、温度23℃、相対湿度50%の条件で測定される。
【0030】
MA-POは、相溶化剤として機能する。熱可塑性樹脂がMA-POを含むことで、セルロース粉がEVAに分散しやすくなる。
MA-POとしては、α-オレフィン-無水マレイン酸共重合体、α-オレフィン重合体と無水マレイン酸との混合物、α-オレフィンとα-オレフィン-無水マレイン酸共重合体と無水マレイン酸との混合物等が挙げられる。
α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
【0031】
MA-POの溶融粘度は、100~15000mPa・sが好ましく、200~5000mPa・sがより好ましい。MA-POの溶融粘度が上記下限値以上であれば、靭性、成形性がより優れ、上記上限値以下であれば、剛性がより優れる。
溶融粘度は、キャピラリーレオメータにより測定される。
【0032】
MA-POの酸価は、5~150mgKOH/gが好ましく、30~100mgKOH/gがより好ましい。MA-POの酸価が上記下限値以上であれば、成形性がより優れ、上記上限値以下であれば、外観がより優れる。
酸価は、中和滴定により測定される。
【0033】
熱可塑性樹脂は、熱可塑性オレフィン系エラストマ(以下、「TPO」とも記す。)をさらに含むことが好ましい。熱可塑性樹脂がTPOを含むと、樹脂組成物(X)の靭性が向上する。
【0034】
TPOとしては、プロピレン-エチレン共重合熱可塑性エラストマ、エチレン-プロピレン-ジエン三元重合熱可塑性エラストマ等が挙げられる。これらの中でも、成形性、靭性の点で、プロピレン-エチレン共重合熱可塑性エラストマが好ましい。
プロピレン-エチレン共重合熱可塑性エラストマのエチレン含有量は、プロピレン-エチレン共重合熱可塑性エラストマを構成する全単量体の合計質量に対し、5~30質量%が好ましく、15~20質量%がより好ましい。
【0035】
TPOのMFRは、0.5~10g/10分が好ましく、3~5g/10分がより好ましい。TPOのMFRが上記下限値以上であれば、樹脂組成物(X)の剛性がより優れ、上記上限値以下であれば、樹脂組成物(X)の靭性、成形性がより優れる。
TPOのMFRは、JIS K 6922-1(ASTM D1238)に準拠し、温度190℃、荷重2.16kg(21.18N)の条件で測定される。
【0036】
TPOの融点は、50~160℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。TPOの融点が上記下限値以上であれば、靭性がより優れ、上記上限値以下であれば、剛性がより優れる。融点は示差走査熱量計(DSC)により測定される。
【0037】
TPOの曲げ弾性率は、5~50MPaが好ましく、5~10MPaがより好ましい。TPOの曲げ弾性率が上記範囲内であれば、樹脂組成物(X)の曲げ弾性率が後述する好ましい範囲内となりやすい。
【0038】
熱可塑性樹脂は、必要に応じて、上記以外の他の熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0039】
樹脂組成物(X)は、必要に応じて、セルロース粉及び熱可塑性樹脂以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤等の添加剤が挙げられる。
【0040】
樹脂組成物(X)の総質量に対するセルロース粉の割合は、50質量%超であり、53質量%超が好ましい。セルロース粉の割合が上記下限値以上であれば、嵌合具付き袋体における合成樹脂使用量の削減効果に優れる。また、熱可塑性樹脂の割合が少なくても充分な剛性が発現する。
また、樹脂組成物(X)の総質量に対するセルロース粉の割合は、85質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましく、56質量%以下が特に好ましい。セルロース粉の割合が上記上限値以下であれば、樹脂組成物(X)の靭性、成形性がより優れる。
【0041】
樹脂組成物(X)の総質量に対する熱可塑性樹脂の割合は、50質量%未満であり、47質量%以下が好ましい。熱可塑性樹脂の割合が上記上限値以下であれば、嵌合具付き袋体における合成樹脂使用量の削減効果に優れる。
また、樹脂組成物(X)の総質量に対する熱可塑性樹脂の割合は、15質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましく、44質量%以上が特に好ましい。熱可塑性樹脂の割合が上記下限値以上であれば、樹脂組成物(X)の靭性、成形性がより優れる。
【0042】
樹脂組成物(X)の総質量に対するEVAの割合は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。熱可塑性樹脂がTPOを含まない場合は、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。EVAの割合が上記下限値以上であれば、樹脂組成物(X)の剛性がより優れる。
また、樹脂組成物(X)の総質量に対するEVAの割合は、45質量%未満が好ましい。熱可塑性樹脂がTPOを含む場合は、35質量%未満がより好ましく、25質量%未満がさらに好ましく、20質量%未満が特に好ましい。EVAの割合が上記上限値以下であれば、樹脂組成物(X)の靭性がより優れる。
【0043】
樹脂組成物(X)の総質量に対するMA-POの割合は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上がさらに好ましい。MA-POの割合が上記下限値以上であれば、樹脂組成物(X)の靭性、成形性がより優れる。
また、樹脂組成物(X)の総質量に対するMA-POの割合は、15質量%未満が好ましく、13質量%未満がより好ましく、11質量%未満がさらに好ましい。MA-POの割合が上記上限値以下であれば、樹脂組成物(X)の剛性、外観がより優れる。
【0044】
熱可塑性樹脂がTPOを含む場合、樹脂組成物(X)の総質量に対するTPOの割合は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。TPOの割合が上記下限値以上であれば、樹脂組成物(X)の靭性、成形性がより優れる。
また、樹脂組成物(X)の総質量に対するTPOの割合は、40質量%未満が好ましく、28質量%未満がより好ましい。TPOの割合が上記上限値以下であれば、樹脂組成物(X)の剛性がより優れる。
【0045】
熱可塑性樹脂がTPOを含まない場合、樹脂組成物(X)としては、樹脂組成物(X)の総質量に対し、セルロース粉の割合が50質量%超85質量%以下、EVAの割合が10質量%以上45質量%未満、MA-POの割合が5質量%以上15質量%未満であるものが好ましく、セルロース粉の割合が50質量%超60質量%以下、EVAの割合が20質量%以上45質量%未満、MA-POの割合が5質量%以上15質量%未満であるものがより好ましい。
【0046】
熱可塑性樹脂がTPOを含む場合、樹脂組成物(X)としては、樹脂組成物(X)の総質量に対し、セルロース粉の割合が50質量%超75質量%以下、EVAの割合が10質量%以上35質量%未満、MA-POの割合が5質量%以上15質量%未満、TPOの割合が10質量%以上28質量%未満であるものが好ましく、セルロース粉の割合が50質量%超60質量%以下、EVAの割合が20質量%以上35質量%未満、MA-POの割合が5質量%以上15質量%未満、TPOの割合が16質量%以上28質量%未満であるものがより好ましい。
【0047】
樹脂組成物(X)の総質量に対する他の熱可塑性樹脂の割合は、0質量%以上10質量%未満が好ましく、0質量%以上5質量%未満がより好ましい。
【0048】
樹脂組成物(X)の総質量に対する他の成分の割合は、0質量%以上5質量%未満が好ましく、0質量%以上2質量%未満がより好ましい。
【0049】
樹脂組成物(X)の最大延伸倍率は、270%以上が好ましく、270~430%がより好ましい。樹脂組成物(X)の最大延伸倍率が270%以上であれば、樹脂組成物(X)の靭性がより優れ、着脱時に第1嵌合部18や第2嵌合部22の割れが発生しにくい。また、樹脂組成物(X)の最大延伸倍率が270~430%であれば、成形性が良好で、第1嵌合部18や第2嵌合部22を成形しやすい。
最大延伸倍率は、以下の方法により求められる。
キャピラリーレオメータにより、試料(樹脂組成物(X))を溶融させ、温度170℃、押出速度10mm/minにてダイから押し出し、押し出された溶融物を、滑車を介して引取ロールで引取速度を1m/minから徐々に増加させながら引き取り、ダイ出口にて溶融物が破断した時の引取速度を最大引取速度とし、下記式により最大延伸倍率を算出する。引取速度の加速度は0.1m/min2とする。詳しい測定方法は後述する実施例に記載のとおりである。
最大延伸倍率=最大引取速度(mm/min)/押出速度(mm/min)
(例えば、最大引取速度が2m/min(2×103mm/min)の場合、最大延伸倍率=2×103/10=200となる。)
【0050】
樹脂組成物(X)の曲げ弾性率は、110~270MPaが好ましく、110~150MPaがより好ましい。曲げ弾性率が上記下限値以上であれば、樹脂組成物(X)の剛性がより優れ、上記上限値以下であれば、樹脂組成物(X)の靭性がより優れる。
曲げ弾性率は、JIS K 7171に準拠し、温度23℃、相対湿度50%、試験速度1mm/min±20%の条件で測定される。
【0051】
樹脂組成物(X)の引張降伏応力は、4~13MPaが好ましく、4~9MPaがより好ましい。引張降伏応力が上記下限値以上であれば、靭性、成形性がより優れ、上記上限値以下であれば、剛性がより優れる。
引張降伏応力は、JIS K 7161-1に準拠し、温度23℃、相対湿度50%、試験速度50mm/min±10%の条件で測定される。
【0052】
(製造方法)
嵌合具10の製造方法としては、第1基材16、第1嵌合部18、第2基材20及び第2嵌合部22の形成材料として樹脂組成物(X)を使用する以外は特に限定されず、公知の方法を採用できる。
例えば、セルロース粉とMA-POとを混合し、得られた混合物とEVA、必要に応じてTPOを溶融混練して樹脂組成物(X)を得、得られた樹脂組成物(X)を成形して第1嵌合部材12又は第2嵌合部材14を得る方法が挙げられる。
混合方法としては、スーパーミキサ、ヘンシェルミキサ等で乾式混合する方法が挙げられる。
溶融混練方法としては、原料を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機に供給して溶融混練する方法が挙げられる。
成形方法としては、押出成形法、射出成形法、インフレーション成形法、真空成形法等が挙げられる。
【0053】
なお、本発明の嵌合具は、前記した嵌合具10には限定されない。
例えば、本発明の嵌合具は、
図2に例示した嵌合具10Aであってもよい。
図2における
図1と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
嵌合具10Aは、第1嵌合部材12が、第1基材16の外側面16d側に積層された第1シール層26を備え、第2嵌合部材14が、第2基材20の外側面20d側に積層された第2シール層30を備える以外は、嵌合具10と同じである。
嵌合具10Aにおいて、樹脂組成物(X)としては、樹脂組成物(X)の総質量に対するセルロース粉の割合が、嵌合具10Aの総質量に対するセルロース粉の割合よりも高いものが用いられる。嵌合具10Aの総質量に対するセルロース粉の好ましい割合は、嵌合具10と同じである。
【0054】
第1シール層26としては、公知のシール層が採用でき、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、オレフィン系エラストマ、スチレン系エラストマ、酸変性オレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマ等が挙げられる。
第2シール層30の態様は、第1シール層26の態様と同様である。
第1シール層26及び第2シール層30には、必要に応じて安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤等の公知の添加剤が添加されていてもよい。
【0055】
第1シール層26の厚さは、0.01~0.2mmが好ましく、0.05~0.1mmがより好ましい。第1シール層26の厚さが下限値以上であれば、嵌合具を袋本体に熱溶着したときに、十分なシール強度が得られる。第1シール層26の厚さが上限値以下であれば、十分な柔軟性が得られる。また、嵌合具10の総質量に対するセルロース粉の割合を高くできる。
第2シール層30の厚さの好ましい態様は、第1シール層26の厚さの好ましい態様と同じである。
【0056】
また、本発明の嵌合具では、第1基材と第1シール層との間や第2基材と第2シール層との間に、1以上の他の層を備えていてもよい。他の層としては、バリア層、接着層等が挙げられる。バリア層の材質としては、ポリビニルアルコール等が挙げられる。接着層の材質としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0057】
また、本発明の嵌合具における第1嵌合部及び第2嵌合部は、雄型嵌合部と雌型嵌合部の組み合わせには限定されない。例えば、第1嵌合部及び第2嵌合部がそれぞれ、並行した複数の雄型嵌合部を有し、互いの雄型嵌合部の頭部を対向する2つの雄型嵌合部の間に挿入して互いに引っ掛けて着脱するようにしてもよい。
【0058】
[嵌合具付き袋体]
本発明の嵌合具付き袋体は、内容物を収容する袋本体と、前記袋本体の内面に取り付けられた本発明の嵌合具とを具備する。
本発明の嵌合具付き袋体は、本発明の嵌合具を備える以外は公知の態様を採用できる。
【0059】
以下、本発明の嵌合具付き袋体の一例として、前述した嵌合具10を備えた嵌合具付き袋体1(以下、「袋体1」という。)について説明する。
本実施形態の袋体1は、
図3に示すように、内容物を収容する密封された状態の袋本体50と、袋本体50内の上部の内面に、横方向に沿って取り付けられた嵌合具10とを具備している。
【0060】
袋本体50は、第1のフィルム材52と第2のフィルム材54が重ね合わされ、それらの周縁部56が全てヒートシールされることで形成されており、密封された状態になっている。また、袋本体50における嵌合具10よりも上部側には、横方向に沿って切断補助線58が設けられており、その端部にノッチ60が形成されている。
【0061】
嵌合具10は、嵌合具10の第1基材16の外側面16dが袋本体50の第1のフィルム材52に溶着され、嵌合具10の第2基材20の外側面20dが袋本体50の第2のフィルム材54に溶着されている。また、嵌合具10は、第1基材16の第1の側縁16b及び第2基材20の第1の側縁20bが開口部側、第1基材16の第2の側縁16c及び第2基材20の第2の側縁20cが内容物側となるように取り付けられている。
【0062】
袋本体50の形状は、本実施形態では矩形である。ただし、袋本体50の形状は矩形には限定されない。また、袋本体50の大きさも特に限定されず、袋本体50に収容する内容物によって適宜選定すればよい。
【0063】
袋本体50を形成する第1のフィルム材52と第2のフィルム材54は、ヒートシールにより嵌合具10を溶着できるものであればよく、例えば、シーラント層のみからなる単層フィルム、少なくともシーラント層と基材層とを有し、シーラント層が一方の最表層(袋本体の内面側)に位置する積層フィルムが挙げられる。前記積層フィルムは、バリア層等の機能層をさらに有していてもよい。
【0064】
シーラント層としては、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、無延伸ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマ等が挙げられる。
シーラント層の厚さは、0.01~0.05mmが好ましく、0.01~0.02mmがより好ましい。シーラント層の厚さが下限値以上であれば、十分なシール強度が得られる。シーラント層の厚さが上限値以下であれば、袋体1の合成樹脂含有量をより低くできる。
【0065】
基材層としては、紙、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。
基材層としては、袋体1の合成樹脂含有量の削減の観点から、パルプを含む紙が好ましい。パルプを含む紙としては、上質紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、片艶晒クラフト紙、特殊両晒クラフト紙、晒クラフト紙等が挙げられる。
紙の坪量は、40~100g/m2が好ましく、50~70g/m2がより好ましい。
紙を基材層とする積層フィルムの例としては、ラミネート紙等が挙げられる。
【0066】
切断補助線58は、袋本体50における嵌合具10よりも上部を切断して開封するのを補助する線である。切断補助線58としては、例えば、袋本体50の第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54における切断補助線58の部分をそれ以外の部分に比べて薄肉化した弱化線、ミシン目からなる弱化線、列状に形成された細孔からなる弱化線が挙げられる。また、切断補助線58は、前記弱化線には限定されず、ハサミやカッター等で切断する位置を示す、印刷等で形成した線であってもよい。
切断補助線58は、本実施形態では袋本体50の横方向に沿って形成されているが、この形態には限定されず、袋本体50の幅方向に対して傾斜して設けられていてもよい。
【0067】
ノッチ60の形状は、この例では三角形状であるが、特に限定されず、半円形状、直線状等であってもよい。
袋体1は、嵌合具10を用いる以外は公知の方法で製造できる。
【0068】
袋体1の開封時には、ノッチ60から切断補助線58に沿って袋本体50の上部を切断して除去することで、
図4に示すように、上部に開口部62を形成して開封することができる。袋体1に形成した開口部62は、嵌合具10の第1嵌合部18と第2嵌合部22を着脱することで繰り返し開閉できる。
【0069】
なお、本発明の嵌合具付き袋体は、前述した袋体1には限定されない。
例えば、本発明の嵌合具付き袋体は、前記したような嵌合具10以外の本発明の嵌合具を具備する嵌合具付き袋体であってもよい。
また、嵌合具付き袋体の袋本体は特に限定されず、嵌合具付き袋体の袋本体として知られる様々な形態の袋本体を採用できる。例えば、袋体1は切断補助線58を利用して開封するまでは密封状態の袋体であるが、予め開口部が形成された袋本体を有する嵌合具付き袋体であってもよい。
【実施例0070】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。「部」は「質量部」を示す。
【0071】
[原料]
本実施例で使用した原料を以下に示す。
EVA1:東ソー製「ウルトラセンYX11」、EVA、MFR=0.2g/10分、酢酸ビニル含有量=32質量%、密度956kg/m3、曲げ弾性率10MPa。
EVA2:東ソー製「ウルトラセン626」、EVA、MFR=3g/10分、酢酸ビニル含有量=15質量%、密度936kg/m3、曲げ弾性率50MPa。
EVA3:東ソー製「ウルトラセン722」、EVA、MFR=400g/10分、酢酸ビニル含有量=28質量%、密度944kg/m3、曲げ弾性率10MPa。
PP:住友化学製「ノーブレンFL6737」、ランダムポリプロピレン(ホモ)、MFR=3g/10分、密度894kg/m3。
TPO:エクソンモービル製「Vistamaxx6102FL」、プロピレン-エチレン共重合熱可塑性エラストマ、エチレン含有量16質量%、MFR=3g/10分、融点55℃、曲げ弾性率14MPa。
MA-PO1:三菱ケミカル製「ダイヤカルナ30M」、オレフィン系ワックス(α-オレフィン-無水マレイン酸共重合体66.8質量%、α-オレフィン系重合体32.9質量%、無水マレイン酸0.3質量%)、融点70~76℃、溶融粘度140~210mPa・s、酸価95~110mgKOH/g。
MA-PO2:三洋化成工業製「ユーメックス1010」、α-オレフィン-無水マレイン酸共重合体、融点135℃、溶融粘度6000mPa・s、酸価52mgKOH/g。
セルロース粉は、日本製紙株式会社製のKCフロック W-06MG、W-10MG2、W-300F、W-100Fを用いた。各セルロース粉の平均粒径を、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製乾式粒度分布計「MASTER SIZER 3000」)を用いて測定したところ、W-06MGの平均粒径が6μm、W-10MG2の平均粒径が10μm、W-300Fの平均粒径が28μm、W-100Fの平均粒径が37μmであった。
【0072】
[実施例1~12、比較例1~13]
(樹脂組成物の調製)
表1~3に示す配合に従って、以下の手順で樹脂組成物を調製した。
まず、セルロース粉とMA-POとをスーパーミキサで混合して混合物を得た。
次いで、得られた混合物と残りの原料(EVE、PP、TPO)とを、同方向二軸押出機にて、成形温度150~180℃、スクリュー回転数40~100rpmの条件で溶融混練し、直径2~4mmのストランド状に押し出し、押し出された混錬物を裁断して樹脂組成物のペレットを得た。
【0073】
(嵌合具の作製)
図1に示した形態の嵌合具を、以下の手順で作製した。
雄側嵌合部を有する第1嵌合部材及び雌側嵌合部を有する第2嵌合部材を形成するための複合異形ダイを用意した。上記樹脂組成物のペレットを、単軸押出機にて、成形温度150~180℃の条件で溶融混練し、前記複合異形ダイに導いて共押出し成形した後、冷却水槽に導いて冷却固化させ、巻取機にて巻取った。第1基材及第2基材の厚さは、0.2mmとした。
【0074】
(評価)
[分散性]
樹脂組成物のペレットを温度150~180℃で射出成形し、厚さ3mmのシート状の試験片を得た。得られた試験片の一部をミクロトームで切削した断面をマイクロスコープで観察し、以下の基準で評価した。
○:無作為に選択された100mm×100mmの範囲に最大径50μm以上の凝集体が存在しない。
×:無作為に選択された100mm×100mmの範囲に最大径50μm以上の凝集体が存在する。
【0075】
[ジッパー成形可否]
上記嵌合具の作製において、嵌合具を問題なく成形できた場合を○(成形可)、嵌合部(第1嵌合部、第2嵌合部)又は帯状の基材(第1基材、第2基材)に欠損が発生した場合を×(成形不可)とした。
【0076】
[最大延伸倍率]
樹脂組成物のペレットについて、JIS K 7199に準拠し、(株)東洋精機製作所キャピログラフ(キャピラリーレオメーター)を用い、以下の手順で最大延伸倍率を求めた。
1.出口にダイが設置されたシリンダー内に樹脂組成物のペレットを充填し、170℃に加熱して溶融させる。
2.シリンダーの入口からピストンを10mm/min(一定)の速度で下降させる。これにより、直径Φ1mmのダイ出口から溶融物が10mm/minの速度で押し出される。
3.ダイから押し出されたストランド状の溶融物を滑車に通し、引取ロールに挟む。
4.引取ロールの速度を1m/minからスタートし、徐々に上げていく。このときの引取速度の加速度は0.1m/min2とする。
5.ダイ出口の溶融物が切れたときの引取速度を記録する。
6.上記1~5の操作を合計で3回繰り返し(N=3)、記録した引取速度の最小値を最大引取速度とし、下記式により最大延伸倍率を算出する。
最大延伸倍率=最大引取速度(mm/min)/押出速度(mm/min)
なお、引取速度を計測不能であったものは「不可」とした。
【0077】
[曲げ弾性率]
樹脂組成物のペレットを温度150~180℃で射出成形し、厚さ3mmのシートを得た後、幅25±0.5mm×長さ60±3mmに切り出して試験片を得た。得られた試験片について、JIS K 7171に準拠し、温度23℃、相対湿度50%、試験速度1mm/min±20%の条件で曲げ弾性率を求めた。
【0078】
[引張降伏応力]
樹脂組成物のペレットを温度170℃で射出成形し、厚さ3mmのシートを得た後、JIS K 7161-2に準拠し、1B形試験片を切り出した。得られた試験片について、JIS K 7161-1に準拠し、温度23℃、相対湿度50%、試験速度50mm/min±10%の条件で引張降伏応力を求めた。
【0079】
各例の評価結果を表1~3に示す。
表1~3中、「-」は、測定又は評価を実施していないことを示す。
【0080】
【0081】
【0082】