(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135165
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】コーヒー抽出バッグ
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A47J31/06 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034791
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】521087645
【氏名又は名称】株式会社EXCELISM
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】谷古宇 俊陽
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA09
4B104BA43
4B104BA77
4B104EA38
(57)【要約】
【課題】廃棄によって自然環境に悪影響を与えることのない、エコなコーヒー抽出バッグの提供。
【解決手段】コーヒー抽出バッグ10は、バッグ本体20と、バッグ本体20に取り付けられた吊り糸40とを含む。バッグ本体20及び吊り糸40は生分解性材料から形成されていて、バッグ本体20に包入されたコーヒー30の原材料は、動物の体内で腸内発酵されたものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッグ本体と、バッグ本体に取り付けられた吊り糸と、吊り糸に取り付けられたタグとを含むコーヒー抽出バッグにおいて、
前記バッグ本体、前記吊り糸及び前記タグは生分解性材料から形成されていて、
前記バッグ本体に包入されたコーヒーの原材料は、動物の体内で腸内発酵されたものであることを特徴とするコーヒー抽出バッグ。
【請求項2】
個包装体に包装されていて、前記個包装体が生分解性材料から形成される請求項1に記載のコーヒー抽出バッグ。
【請求項3】
前記バッグ本体は、生分解性繊維を有するシートから形成されていて、前記生分解性繊維は、前記シートのシールラインと交差する方向に配向されている請求項1又は2に記載のコーヒー抽出バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ等に入れてコーヒーを抽出するためのコーヒー抽出バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一杯分の粉末状のコーヒー挽き豆を充填したコーヒー抽出バッグは、公知である。例えば、特許文献1には、粉末状のコーヒーが包入されたバッグ本体を有するコーヒー抽出バッグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたコーヒー抽出バッグは、バッグ本体(フィルター)が合成繊維である熱可塑性繊維を用いた不織布から形成されている。近年、地球に優しいエコな素材を用いた製品が好まれるところ、一般的な可燃ごみの焼却装置や焼却技術が未発達な発展途上国等では、可燃物である不織布製のバッグ本体であっても大量に廃棄されることで、自然環境に悪影響を与えるおそれがあった。
【0005】
また、近年、国内でも野外キャンプが流行しており、ゴミ収集場のないキャンプ場において、コーヒーフィルターを野外に廃棄することによる自然環境への悪影響が問題になっていた。
【0006】
本発明は、従来のコーヒー抽出バッグの改良であって、廃棄によって自然環境に悪影響を与えることのない、エコなコーヒー抽出バッグの提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、バッグ本体と、バッグ本体に取り付けられた吊り糸と、吊り糸に取り付けられたタグとを含むコーヒー抽出バッグに関する。
【0008】
本発明に係るコーヒー抽出バッグは、前記バッグ本体、前記吊り糸及び前記タグは生分解性材料から形成されていて、前記バッグ本体に包入されたコーヒーの原材料は、動物の体内で腸内発酵されたものであることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るコーヒー抽出バッグは、以下の実施態様を含む。
(1)個包装体に包装されていて、前記個包装体が生分解性材料から形成される。
(2)バッグ本体は、生分解性繊維を有するシートから形成されていて、前記生分解性繊維は、前記シートのシールラインと交差する方向に配向されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るコーヒー抽出バッグは、全体が生分解性材料で形成されていることから、地中に廃棄しても自然環境に悪影響を与えることがなく、エコな商品であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面は、本発明に係るコーヒー抽出バッグの特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
【
図1】個包装袋に包装された状態におけるコーヒー抽出バッグの斜視図。
【
図2】個包装袋から取り出した状態におけるコーヒー抽出バッグの斜視図。
【
図3】(a)コーヒー抽出バッグを正面から視た斜視図。(b)コーヒー抽出バッグを背面から視た斜視図。
【
図4】コーヒー抽出バッグを熱湯が注がれた容器に入れた様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面1-4を参照して、本発明に係るコーヒー抽出バッグ10の詳細を説明すると、以下のとおりである。また、以下の実施形態は、本発明の欠くことのできない要件を含む他に、選択的に採用することのできる要件及び適宜に組み合わせることのできる要件を含んでいる。
【0013】
図1~4を参照すると、コーヒー抽出バッグ10は、個包装袋1に包装された状態で販売されている。コーヒー抽出バッグ10は、縦方向Yと横方向Xと、バッグ本体20と、バッグ本体20の内部に包入された粉末状のコーヒー30と、バッグ本体20に取り付けられた吊り糸40とを含む。
【0014】
吊り糸40は、縦方向Yへ延びるように配置されていて、その基端は、接着又は溶着によってバッグ本体20に取り付けられていて、先端には矩形状のタグ(把持部)50が取り付けられている。
図4に示すとおり、吊り糸40の仮止めされた部分をバッグ本体20から分離して、カップ等の容器2にバッグ本体20を入れて熱湯を注ぎこむことによって、コーヒーを抽出することができる。
【0015】
バッグ本体20は、一定量のコーヒーを抽出可能な通水性濾過性シートから形成される。従来、バッグ本体の材料としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維、天然繊維の単独又は複合繊維からなる織布あるいは不織布、マニラ麻、木材パルプ、ポリプロピレン繊維等からなる混抄紙等が知られている。特に、スパンボンド方式やメルトブローン方式によって生成された合成繊維製の不織布が好適に使用されていた。また、吊り糸も同様に、合成繊維製又はプラスチック製のものが好適に使用されていた。
【0016】
これらの合成繊維の不織布から形成されたバッグ本体20は、例えば地中に埋めるとそれらはほぼ半永久にそのままの状態で地中に残存してしまい、また焼却するとダイオキシンなどの有害物質やCO2が発生してしまうなどとして、これらが環境破壊或いは人体への悪影響などの諸問題を誘発するおそれがある。
【0017】
本発明に係るバッグ本体20を形成する通水性濾過性シートは、廃棄後の生分解性繊維から形成されている。具体的には、生分解性繊維としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等をあげることができる。
【0018】
また、吊り糸40及びタグ50自体も生分解性材料から構成されている。このように、バッグ本体20と吊り糸40及びタグ50とが生分解性材料から構成されることによって、ゴミ捨て場がないキャンプ場等において、コーヒー抽出バッグ10をそのまま地中に廃棄しても、自然環境下で分解されて、その成形状態を維持することなく、また、自然環境に悪影響を与えるおそれはない。
【0019】
バッグ本体20内のコーヒーには、公知のものを制限なく使用することができるが、コピ・ルアク(Kopi Luwak)を使用することが好ましい。コピル・アクは、ジャコウネコ(動物)の糞から採られる未消化のコーヒー豆であるが、ジャコウネコの腸内に存在する消化酵素や腸内細菌による発酵の働きによって、コーヒーに独特の香りが加味される。腸内発酵による通常よりもカフェイン含有量が半減することに加えて、生分解が促進されて、地中における分解、崩壊の速度・度合いが他のコーヒー豆に比べて優れている。
【0020】
このように、コーヒーとしてコピ・アルクを用いることで、コーヒー抽出バッグ10全体の生分解性が向上し、より自然環境に優しい製品であるといえる。
【0021】
個包装袋も生分解性繊維又は生分解性プラスチックから形成されていることが好ましい。個包装袋も生分解性材料から形成されていることで、使用後にコーヒー抽出バッグと一緒に個包装袋を地中に廃棄しても、自然環境に悪影響を与えることはない。
【0022】
図3を参照すると、バッグ本体20は、1枚又は複数枚の通水性濾過性シートを袋状に形成したものであって、両側縁部にはシートの端部が接合されたシールライン41,42が位置する。シールライン41,42は、ヒートシール、接着剤による接着、ミシン縫着又はかしませ接着等の公知の接合手段によって形成される。
【0023】
バッグ本体20を形成する生分解性繊維60は、一定の配向を有している。具体的には、生分解性繊維60は横方向Xへ配向している。ここで、「生分解性繊維60の繊維配向が横方向Xである」とは、生分解性繊維60の総重量のうち、100%が横方向Xに繊維配向されているもののほかに、50%以上が横方向Xに対して-45°~+45°の範囲で繊維配向性を有するものを含む。かかる繊維配向は、この種の分野において公知の方法、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法によって測定することができる。
【0024】
バッグ本体20のシールラインは縦方向Yへ延びており、横方向Xへ延びる生分解性繊維60と交差している。したがって、生分解性繊維60の繊維端がシールラインにおいて接合されることで、生分解性繊維60の毛羽立ちや脱落を抑制することができる。例えば、総重量のうちの少なくとも30%の生分解性繊維60の繊維長がバッグ本体20の横方向Xの寸法よりも大きく、すなわち、一対のシールライン41,42に繊維の両端が交差するように延びていることによって、より効果的に毛羽立ちや脱落を抑制することができる。
【0025】
また、吊り糸40は、バッグ本体20から縦方向Yへ延びていて、その基端側に位置する基端接合部40a、先端側に位置する先端接合部(仮止め部)40b及び中間に位置する中間接合部(仮止め部)40cにおいてバッグ本体20に接合されている。先端接合部40b及び中間接合部40cは、バッグ本体20に仮止めされていて、使用者が吊り糸40を摘持して引っ張ったときに容易に剥離する程度の接合強度を有する。
【0026】
各接合部40a-40cとは、縦方向Yへ延びていて、該部分で生分解性繊維どうしが接着又は溶着されていることで、シールラインと同様に、横方向Xへ延びる生分解性繊維60の毛羽立ちや脱落を効果的に抑制しうる。
【0027】
バッグ本体20の通気度は、5~20m/kpa・Sであることが好ましい。通気度が5m/kpa・S未満の場合には、粉末状のコーヒーから発生する気体がバッグ本体20から外部に出ずにバッグ本体20が浮きやすくなり、充分な抽出を行うことができないおそれがある。通気度が20m/kpa・Sを超える場合には、カップに熱湯を注いだときに、コーヒーの粉末がバッグ本体20の外部に漏れ出てしまうおそれがある。
【0028】
バッグ本体20を形成する通水性濾過性シートとして複数層から形成されたシート材料を使用してもよい。例えば、内層及び外層との間にそれらの構成繊維(生分解性繊維)よりも繊維径の小さな極細繊維(生分解性繊維)から形成された中間層を介在させた3層構造を有するシート材料を使用することができる。かかる場合には、通気性濾過性シートの繊維密度を上げることなく、内外層の繊維間隙に極細繊維が入り込んで通水性濾過性シート全体の繊維間隙を小さくして粉漏れを効果的に抑制することができる。
【0029】
図示していないが、個包装袋1に複数の小孔を形成してもよい。コーヒー豆は、焙煎、挽いた後も炭酸ガスを発生しており、内部に発生した炭酸ガスを外部に放出する必要があるが、複数の小孔を形成することで、内部の炭酸ガスを外部に放出することができる。また、コーヒーの酸化を防止して風味を損なわないように外部の空気の流入を防止するためのバルブ部材を個包装袋に取り付けてもよい。
【0030】
また、バッグ本体20の内面には、内周方向へ延び、かつ、縦方向へ離間して延びる複数のリブを設けていてもよい。かかるリブを設けることで、熱湯をバッグ本体20内で環流させて、コーヒーを効率的に抽出することができる。
【0031】
本明細書において、コーヒー抽出バッグ10を構成する各構成材料には、特に記述がなされている場合を除き、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 個包装袋
10 コーヒー抽出バッグ
20 バッグ本体
30 コーヒー
40 吊り糸
50 タグ
60 生分解性繊維