(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135186
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】竪型炉
(51)【国際特許分類】
F27D 1/00 20060101AFI20220908BHJP
F27B 14/10 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F27D1/00 D
F27B14/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034823
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】古田 倫靖
(72)【発明者】
【氏名】岩元 孝史
【テーマコード(参考)】
4K046
4K051
【Fターム(参考)】
4K046AA01
4K046CB06
4K046CB08
4K046CB15
4K046CB16
4K046CD02
4K046EA05
4K051AA03
4K051AA06
4K051AB03
4K051AB05
4K051BB01
4K051BB03
4K051BB06
(57)【要約】
【課題】底板の剥離が抑えられた竪型炉を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の竪型炉1は、炉底部と、炉底部の外周から立設した壁部5と、を備える有底筒状の竪型炉1であって、炉底部が、スタンプ層3と、定型耐火物よりなり、炉底部の内表面2aを形成する底板2と、底板2の外周面20と壁部5との間に充填した不定形耐火物よりなる内底材4と、を有する。そして、底板2が、その外周面20に、その厚さ方向において、部分的に縮径した縮径部23を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉底部と、前記炉底部の外周から立設した壁部と、を備える有底筒状の竪型炉であって、
前記炉底部が、
定型耐火物よりなり、前記炉底部の内表面を形成する底板と、
不定形耐火物をスタンプ施工してなり、前記底板の下面に形成されたスタンプ層と、
前記底板の外周面と前記壁部との間に充填した不定形耐火物よりなる内底材と、
を有し、
前記底板の外周面は、その厚さ方向において、部分的に縮径した縮径部を有することを特徴とする竪型炉。
【請求項2】
前記縮径部は、前記底板の全周にわたって形成されている請求項1記載の竪型炉。
【請求項3】
前記底板は、厚さ方向の断面における内表面側の幅が、外表面側の幅より短い請求項1~2のいずれか1項に記載の竪型炉。
【請求項4】
前記縮径部は、内周面の内表面側の端部に接続する部分が前記底板の厚さ方向に対して、鋭角をなして形成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の竪型炉。
【請求項5】
前記壁部は、内周面が定型耐火物よりなり、
前記内底材と当接する部分に、内周面からくぼんだ凹部を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の竪型炉。
【請求項6】
前記底板の材料、前記内底材の材料、及び前記壁部の前記定型耐火物のそれぞれの熱膨張率は、いずれも25×10-6/K以下である請求項5記載の竪型炉。
【請求項7】
前記底板の材料の熱膨張率、前記内底材の材料の熱膨張率、前記壁部の前記定型耐火物の熱膨張率は、最大のものと最小のものとの差が、10×10-6/K以下である請求項5~6のいずれか1項に記載の竪型炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型炉に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱炉を用いて金属を溶融処理することがある。誘導加熱炉には、上部が開口した有底筒状の竪型炉の外周に、誘導加熱のためのコイルを巻回した構成のものがある。
【0003】
竪型炉は、例えば、特許文献1に記載の構成を有する。竪型炉は、炉底を形成する炉底部と、炉底部の外周から上方に立設した壁部と、を備えている。そして、炉底部は、不定形耐火物をスタンプして形成されたスタンプ層上に、板状の定型耐火物よりなる底板を配置して形成される。そして、底板の外周面と壁部との間には、スタンプ層と同様に、不定形耐火物を充填して形成された内底材が形成されている。
【0004】
従来の炉底部は、板状の底板の外周面が厚さ方向で滑らかな形状であり、内底材との界面も滑らかに形成されていた。このため、竪型炉の内部の溶湯(すなわち、誘導加熱により溶融した金属の金属溶湯)が対流して生じる攪拌力により、底板が浮き上がってスタンプ層から剥離するという問題があった。また、底板と内底材との界面に溶湯が差し込み、溶湯が底板の外周面(スタンプ層との界面)に回り込み、底板がスタンプ層から剥離するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、底板の剥離が抑えられた竪型炉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の竪型炉は、炉底部と、前記炉底部の外周から立設した壁部と、を備える有底筒状の竪型炉であって、前記炉底部が、定型耐火物よりなり、前記炉底部の内表面を形成する底板と、不定形耐火物をスタンプ施工してなり、前記底板の下面に形成されたスタンプ層と、前記底板の外周面と前記壁部との間に充填した不定形耐火物よりなる内底材と、を有し、前記底板の外周面は、その厚さ方向において、部分的に縮径した縮径部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の竪型炉は、底板が縮径部を有している。この構成は、底板が外周面に凹凸形状を有した構成である。そして、本発明の竪型炉は、内底材がこの縮径部の内部にまで充填される。縮径部の内部に充填した内底材が、底板が浮き上がることを防止する。加えて、底板と内底材の界面に溶湯(具体的には、竪型炉で処理される溶湯)が差し込んでも、界面が凹凸により複雑な形状となっており、溶湯が底板の下面側に回り込み難くなっている。この結果、本発明の竪型炉は、下面に形成されたスタンプ層から底板が剥離して浮き上がることが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の竪型炉の構成を示す断面図である。
【
図2】実施形態の竪型炉の底板の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を用いて本発明を具体的に説明する。なお、実施形態は、本発明を具体的に実施する1つの形態であり、本発明をこれらの形態のみに限定するものではない。また、実施形態において特に言及されない構成や材料は、従来の竪型炉と同様の構成や材料とすることができる。
【0011】
[実施形態]
本形態の竪型炉1は、上方が開口した有底筒状の竪型炉であり、
図1に断面図で示したように、底板2、スタンプ層3、内底材4、壁部5、炉本体6を有する。本形態の竪型炉1は、炉内に投入した金属等を誘導加熱で溶融する。
本形態の竪型炉1は、有底筒状の形状の底部を形成する炉底部と、炉底部の外周から立設した壁部と、を備える。竪型炉1は、有底筒状の形状の軸方向が上下方向(鉛直方向)に沿って設けられている。
【0012】
炉底部は、有底筒状の底部を形成する。炉底部は、炉の内表面が水平方向に沿って広がる。本形態の炉底部は、円形状を有している。壁部は、炉底部の外周から立設して形成されている。壁部は、円形状の炉底部の外周部から上方に向かって伸びている。壁部は、円筒形状をなすように形成されている。炉底部は、底板2、スタンプ層3、内底材4、炉本体6を有する。
【0013】
底板2は、定型耐火物よりなる。底板2の定型耐火物は、予め、所定の形状に形成されている。本形態では、底板2は、プレキャストブロックよりなる。
底板2は、炉底部の内表面(炉の内周面)を形成する。底板2は、炉底部に沿った外周形状を有する。すなわち、底板2は、略円板形状を有する。
【0014】
底板2は、
図2に断面図で示したように、上面(内表面2a)及び下面(外表面2b)が鉛直方向に垂直な面に沿って広がる板状の形状を有する。底板2は、厚さ方向に垂直な断面での形状が、全体として略台形形状を有する。底板2は、全体として略錐台形状の断面形状を有する。具体的には、
図2において、内表面2a側の幅(すなわち、底板2の内表面2aの径)が、外表面2b側の幅(すなわち、底板2の外表面2bの径)よりも短く形成されている。ここで、内表面2aとは、竪型炉1の炉の内表面(すなわち、炉内に貯留する溶湯に当接する表面)を形成する面を示す。外表面2bとは、内表面2aに背向する面であって、スタンプ層3との対向面(スタンプ層3と当接する面)を示す。
【0015】
底板2は、内表面2aと外表面2bとを接続する円環状の外周面20を有する。外周面20は、
図2に示したように、第1傾斜面部21、第1垂直面部22、縮径部23、第2傾斜面部24、第2垂直面部25を内表面2aから外表面2bに向けてこの順序で有する。外周面20は、全周にわたって同じ形状である。すなわち、底板2は、厚さ方向で内径が変化する円形(真円形状)の外周形状を有する。
第1傾斜面部21は、内表面2aに接続し、その径が徐々に拡径するようにテーパ形状をなすように形成されている。
第1垂直面部22は、第1傾斜面部21に接続し、その径が変化しない円柱状をなすように形成されている。
縮径部23は、第1垂直面部22に接続し、底板2の外径が部分的に縮径するように形成されている。
【0016】
縮径部23は、
図2に示したように、外周面20のうち、第1垂直面部22の下端及び第2傾斜面部24の上端から内径側にくぼんだ形状で形成されている。第1垂直面部22の下端及び第2傾斜面部24の上端は同じ径である。縮径部23は、くぼんだ部分の断面形状が略三角形状をなしている。縮径部23の内周面のうち、上面側の部分は、鉛直方向(底板2の厚さ方向)に対して鋭角をなすように形成されている。下面側の部分は、鉛直方向に対して略直角をなすように形成されている。縮径部23は、断面形状が略三角形状の内部は、角部のない滑らかな形状をなしている。縮径部23のこの断面形状は、その内部に内底材4の不定形耐火物が充填しやすい形状である。
第2傾斜面部24は、縮径部23に接続し、その径が徐々に拡径するようにテーパ形状をなすように形成されている。第2傾斜面部24は、第1垂直面部22の下端と同じ径である。
第2垂直面部25は、第2傾斜面部24と外表面2bとを接続し、その径が変化しない円柱状をなすように形成されている。
【0017】
スタンプ層3は、底板2の下面に形成された、不定形耐火物よりなる層である。スタンプ層3は、不定形耐火物粉末をスタンプ施工(圧縮成形)して形成される。スタンプ層3を形成する不定形耐火物粉末は、その材料や粒径が限定されない。スタンプ層3は、不定形耐火物粉末を炉本体6の内周面上に投入し、上方から治具で押し固めて形成することができる。
【0018】
内底材4は、底板2の外周面20と壁部5との間に充填した不定形耐火物よりなる。内底材4は、底板2の縮径部23及び壁部5の凹部52の内部に充填している。内底材4は、スタンプ層3と同様に、不定形耐火物粉末をスタンプ施工(圧縮成形)して形成される。詳しくは、内底材4は、底板2の外周面20と壁部5との間に不定形耐火物粉末を投入し、スタンプ施工(圧縮成形)して形成される。内底材4は、その上面が底板2の内表面2aと同一平面をなす。
【0019】
壁部5は、内周面が定型耐火物により形成された、円筒形状の部材である。壁部5は、内周面を形成する定型耐火物層50と、定型耐火物層50の外周に位置して不定形耐火物よりなる外周スタンプ層51と、を有する。
本形態の定型耐火物層50は、略円筒形状の部材であるが、複数の小片を組み合わせて形成したものでも良い。
外周スタンプ層51は、定型耐火物層50の外周面に当接して設けられた略円筒形状の部分である。外周スタンプ層51は、形状が異なること以外はスタンプ層3と同様の構成である。
【0020】
定型耐火物層50の内周面には、内周面からくぼんだ凹部52が形成されている。凹部52は、定型耐火物層50の内周面の全周にわたって同一の断面形状で形成されている。凹部52は、内底材4に対面する位置、すなわち底板2の内表面2aより下方の位置であって、底板2の縮径部23に対向する位置に形成されている。
凹部52は、その断面形状が限定されない。凹部52は、縮径部23と同様な断面形状、すなわちその内部に内底材4の不定形耐火物が充填しやすい形状であることが好ましい。
【0021】
炉本体6は、セメントにより形成された炉殻と、炉殻の外周に配設された誘導加熱コイルと、を備える。炉殻は、底板2、スタンプ層3、内底材4、壁部5を収容可能な有底筒状の形状を有する。誘導加熱コイルは、炉内に投入した金属等を誘導加熱する。
【0022】
本形態の竪型炉1において、底板2、内底材4及び壁部5を形成する材料のそれぞれは、熱膨張率が近接していることが好ましい。具体的には、底板2の材料の熱膨張率、内底材4の材料の熱膨張率、壁部5の材料の熱膨張率は、最大のものと最小のものとの差が、10×10-6/K以下である。
【0023】
本形態における底板2及び壁部5は、1600℃での熱膨張率が25×10-6/Kのアルミナ系の耐火物よりなる。本形態における内底材4及びスタンプ層3は、1600℃での熱膨張率が25×10-6/Kのアルミナ系の耐火物であって、底板2の材料を不定形化(粉末化)した材料よりなる。本形態での具体的な熱膨張率の差は、6.25×10-6/Kである。なお、熱膨張率の値は、本形態の竪型炉1を実使用するときの温度(1600℃)での値である。
なお、アルミナ系の耐火物は、アルミナを95mass%以上の割合で含有する耐火物である。アルミナ系の耐火物は、スピネルやマグネシア、シリカ等を含有していてもよい。
【0024】
(具体例)
本形態の竪型炉1は、例えば、有底筒状の内周面の内径がφ580mm、深さ(開口部から底板2の内表面2aまでの深さ)が630mm、の円筒形状の炉内空間の炉に適用できる。
【0025】
本例の竪型炉1の底板2は、全体の厚さ(内表面2aと外表面2bとの距離)が70mm、内表面2aの外径がφ480mm、外表面2bの外径がφ520mm、第1傾斜面部21の厚さ(底板2の厚さ方向の長さ)が20mm、第1垂直面部22の外径がφ500mm、第1垂直面部22の厚さが10mm、縮径部23の厚さが20mm、縮径部23のくぼみの深さ(第1垂直面部22の外径から内径側にくぼんだ深さ)が10mm、第2傾斜面部24の厚さが10mm、第2垂直面部25の外径がφ520mmの形状で形成されている。
【0026】
本例の竪型炉1の底板2の縮径部23は、そのくぼみの深さが10mmであるが、このくぼみの深さは20mm以下であればよい。20mmを超えると、内底材4が縮径部23のくぼみの内部に充填される充填性が悪化する。充填性が悪化すると、底板2の外周面20と内底材4との間にすき間が形成され、溶湯の差し込みが生じやすくなり、底板2がスタンプ層3から剥離しやすくなる。
【0027】
本例の竪型炉1の底板2の縮径部23及び凹部52の形成される厚さ方向での位置は、縮径部23及び凹部52の内部に内底材4が充填可能な位置であれば、限定されるものではない。また、縮径部23及び凹部52の形成される厚さ方向での位置は、本例のように同じであっても、異なっていてもいずれでもよい。
本例の竪型炉1において、底板2は、その軸芯が、円形の炉底部の軸芯に一致する状態で配される。すなわち、底板2の外表面2bの外周と壁部5の内周面との間に30mmの間隔が存在する。
【0028】
本例の竪型炉1において、底板2の内表面2aの面積は、炉底部の面積(すなわち、円筒状の壁部5の内部の断面積)の60%以上であることが好ましい。内表面2aの面積が60%以上となると、炉底部に底板2が占める面積が大きくなり、溶湯による炉底部の摩耗(損傷)が抑えられる。底板2は、定型耐火物よりなることから、充填した不定形耐火物よりなる内底材4より気孔率が低く、高強度であるため摩耗が生じにくい。このため、内表面2aの面積が大きくなるほど、炉底部の摩耗が抑えられる。
【0029】
底板2の外周面20と壁部5との間の距離が15mm以上であることが好ましい。内表面2aの占める割合は大きいほど上記した耐摩耗性の効果を発揮できるが、大きくなりすぎると底板2の外周面20と壁部5との間の距離が短くなる。そうすると、不定形耐火物を充填しにくくなるとともに、スタンプ施工(圧縮成形)が行いにくくなる。つまり、内底材4を形成しにくくなる。底板2の外周面20と壁部5との間の距離が15mm以上となることで、内底材4を形成できる。
【0030】
(作用効果)
本例の竪型炉1は、炉底部と、炉底部の外周から立設した壁部5と、を備える有底筒状の竪型炉1であって、炉底部が、定型耐火物よりなり、炉底部の内表面2aを形成する底板2と、不定形耐火物をスタンプ施工してなり、底板2の下面(外表面)2bに形成されたスタンプ層3と、底板2の外周面20と壁部5との間に充填した不定形耐火物よりなる内底材4と、を有する。そして、底板2は、その外周面20に、その厚さ方向において、部分的に縮径した縮径部23を有する。
【0031】
本形態の竪型炉1は、底板2の外周面20と内底材4との界面が、お互いに入り組んだ複雑な形状となっている。この構成となることで、竪型炉1に貯留する溶湯の対流により底板2が浮き上がろうとしても、縮径部23内に入り込んだ内底材4が第2傾斜面部24及び第2垂直面部25の浮き上がりを規制する。この作用により、底板2が浮き上がってスタンプ層3から剥離することが抑えられる。
【0032】
また、本形態の竪型炉1は、底板2の外周面20と内底材4との界面が複雑な形状となっており、底板2の外周面20と内底材4との界面に溶湯が差し込んだとしても、差し込んだ溶湯が底板2の外表面2bに到達するまでの距離が長くなっている。この結果、本形態の竪型炉1は、底板2の外表面2bとスタンプ層3との界面に到達しにくくなり、差し込んだ溶湯が底板2が浮き上がらせてスタンプ層3から剥離することが抑えられる。
【0033】
本形態の竪型炉1は、縮径部23が底板2の外周面20の全周にわたって形成されている。この構成によると、上記の効果を全周で発揮することができ、より確実に底板2が浮き上がってスタンプ層3から剥離することが抑えられる。
【0034】
本形態の竪型炉1は、底板2が、厚さ方向の断面における内表面2a側の幅が、外表面2b側の幅より短い。この構成によると、底板2と壁部5との間の空間(内底材4の不定形耐火物が充填される空間)が、上方側が広く開口した形状となっている。すなわち、不定形耐火物を充填しやすくなる。さらに、この構成によると、不定形耐火物を充填したときに、縮径部23及び凹部52に不定形耐火物が充填されやすくなる。つまり、内底材4を形成しやすくなる。
【0035】
本形態の竪型炉1は、縮径部23が、内周面の内表面側の端部に接続する部分が鉛直方向(底板2の厚さ方向)に対して、鋭角をなして形成されている。この形状となることで、上方側から内底材4の不定形耐火物が簡単に充填できる。すなわち、すき間なく不定形耐火物を充填することができ、すき間の無い内底材4を形成できる。
【0036】
本形態の竪型炉1は、壁部5が、内周面が定型耐火物よりなり、内底材4と当接する部分に、内周面からくぼんだ凹部52を有する。この構成によると、内底材4が壁部5に固定される。すなわち、底板2を固定する内底材4が固定されることで、より確実に底板2が浮き上がってスタンプ層3から剥離することが抑えられる。
【0037】
本形態の竪型炉1では、底板2の材料、内底材4の材料、壁部5の定型耐火物のそれぞれの1600℃での熱膨張率が、いずれも25×10-6/K以下である。熱膨張率が小さいことから、底板2、内底材4、壁部5のそれぞれが熱膨張しても体積変化が小さく、熱膨張による損傷が生じにくくなる。
【0038】
本形態の竪型炉1は、底板2の材料の熱膨張率、内底材4の材料の熱膨張率、壁部5の定型耐火物の熱膨張率が、最大のものと最小のものとの差が、10×10-6/K以下である。この構成によると、竪型炉1の内周面(特に、溶湯に当接する部分)の熱膨張率の差が小さくなる。そうすると、竪型炉1に溶湯を貯留して高温にさらされても、底板2、内底材4及び壁部5の熱膨張率の差が小さくなることで、熱膨張差に起因する損傷が抑えられる。なお、この熱膨張率の差は、小さいほど好ましく、5×10-6/K以下であることがより好ましく、熱膨張差がゼロであることが最も好ましい。すなわち、底板2、内底材4及び壁部5が熱膨張率が同じ材料(同じ組成の材料)で形成されることが最も好ましい。
【0039】
本形態の竪型炉1は、上記のように、底板2が浮き上がってスタンプ層3から剥離することが抑えられている。そうすると、底板2の厚さを従来のものより薄くできる。具体的には、従来の竪型炉1では、底板2自身の大きな質量により浮き上がりを防止していた。換言すると、大きな質量を有するように、底板2の厚さが過剰に厚くなっていた。これに対し、本形態の底板2は、底板2が内底材4で固定されているため、底板2の厚さを従来のものより薄くしても、スタンプ層3から剥離することが抑えられる。この結果、本形態の底板2は、例えば、具体例に示すように70mmの厚さとすることができる。
【0040】
[変形形態1]
実施形態1では、底板2に一つの縮径部23が形成されているが、縮径部23の数は1に限定されない。2つ以上の縮径部23を形成していてもよい。
同様に、凹部52の数も2以上であってもよい。
縮径部23及び凹部52は、底板2又は壁部5の全周にわたって形成されているが、全周でなくともよい。すなわち、部分的に切れた環状に形成されていてもよい。
縮径部23及び凹部52は、底板2又は壁部5の周方向に沿って形成されているが、周方向でなくともよい。例えば、らせん状や鉛直方向に沿って形成されていてもよい。
【0041】
縮径部23及び凹部52は、底板2又は壁部5の外周面又は内周面からくぼんで形成されているが、この形態に限定されない。底板2の外周面20又は壁部5の内周面から突出した突出部を形成し、突出部以外の部分を縮径部23又は凹部52としてもよい。
これらの各変形形態でも、実施形態と同様な効果を発揮できる。
【0042】
[変形形態2]
実施形態1では、底板2が定型耐火物としてプレキャストブロックで形成されているが、これに限定されず、焼結体で形成していてもよい。
焼結体は、プレキャストブロックと比較して高い強度を有している。焼結体よりなる底板2は、強度に優れており損傷が生じにくくなる。例えば、竪型炉1(誘導加熱炉)で金属の溶解を行う時には、上方の開口部から原料(例えば金属塊)が投入され、底板2に物理的な衝撃が加わる。底板2が焼結体よりなると、この物理的な衝撃が底板2に加わっても、底板2の損傷(具体的には割れや欠損)が抑えられる。
【0043】
[変形形態3]
実施形態1の竪型炉1は、誘導加熱炉であるがこの構成に限定されない。
本形態の竪型炉は、誘導加熱装置に替えて、炉底レンガ層が形成された竪型炉であってもよい。本形態の竪型炉においても、実施形態と同様な効果を発揮する。
【符号の説明】
【0044】
1:竪型炉、2:底板、2:底板、20:外周面、21:第1傾斜面部、22:第1垂直面部、23:縮径部、24:第2傾斜面部、25:第2垂直面部、3:スタンプ層、4:内底材、5:壁部、50:定型耐火物層、51:外周スタンプ層、52:凹部、6:炉本体。