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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135197
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
H05K1/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034837
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】酒井 将一郎
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】岡山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠一
(72)【発明者】
【氏名】山口 賀人
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA01
5E338AA02
5E338AA03
5E338AA12
5E338CC09
5E338CD25
5E338EE26
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】配線層の厚みの均一性に優れ、かつ寸法変化が低減されたフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の一態様のフレキシブルプリント配線板は、ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層される1本又は複数本の配線を有する配線層と、上記ベースフィルムの上記少なくとも一方の面側に含まれる上記配線層の非積層領域が含む所定の第1領域に、電気的に孤立するよう上記配線層と間隔を空けて積層される1又は複数のめっき部とを備え、平面視で、上記第1領域の面積に対する上記第1領域上の上記めっき部の形成領域の面積の第1比率が25%以上75%以下であり、上記第1領域における上記ベースフィルムに対してそれぞれ平行であり、かつ互いに直交する第1方向及び第2方向の2の線膨張係数の比が0.5以上2.0以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、
上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層される1本又は複数本の配線を有する配線層と
を備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記ベースフィルムの上記少なくとも一方の面側が、上記配線層が積層されない領域である非積層領域を含み、
上記非積層領域が第1領域を含み、上記第1領域に、電気的に孤立するよう上記配線層と間隔を空けて積層される1又は複数のめっき部をさらに備え、
上記第1領域は、上記配線層から最短距離で15mmまでの間の領域であり、
平面視で、上記第1領域の面積に対する上記第1領域上の上記めっき部の形成領域の面積の比率である第1比率が25%以上75%以下であり、
上記第1領域における上記ベースフィルムに対してそれぞれ平行であり、かつ互いに直交する方向である第1方向及び第2方向の2の線膨張係数の比が0.5以上2.0以下であるフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
上記第1比率と、平面視で上記配線層の周縁で囲まれた領域の面積に対する上記配線層の形成領域の面積の比率である第2比率との差が、絶対値で10%以内である請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
上記第1領域における上記第1方向の線膨張係数に対する上記ベースフィルムと平行かつ上記第1方向及び第2方向の双方に対して45°の角度で傾斜する方向である第3方向の線膨張係数の比が、0.5以上2.0以下である請求項1又は請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
上記第1領域における上記第1方向のヤング率に対する上記第2方向のヤング率の比が0.1以上10以下であり、
上記第1領域における上記第1方向のヤング率に対する上記第3方向のヤング率の比が0.1以上10以下である請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
上記めっき部が、平面視で互いに傾斜した複数の線状の部分が繋がった形状を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
上記めっき部が、平面視で折れ線状、波形状、多角形の隙間を有する格子状又はこれらの組み合わせの形状を有する請求項5に記載のフレキシブルプリント配線板。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、様々な電子機器の回路を構成するために広く利用されている。近年、電子機器の小型化に伴い、フレキシブルプリント配線板の小型化及びその配線密度の増大が著しい。
【0003】
このような小型のフレキシブルプリント配線板として、シート状の絶縁性基材と、この基材の表面にめっきによって積層される配線を有する配線層とを備えるものが提案されている(特開2018-195681号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-195681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、めっきによって配線層を形成するフレキシブルプリント配線板では、厚みが不均一な配線層が形成されるおそれがある。
【0006】
一方、上記フレキシブルプリント配線板では、配線層が絶縁性の被覆層で覆われる場合がある。この場合、被覆時の加熱等により、配線板の寸法が変化するおそれがある。このように寸法が変化すると、スルーホールを形成する際の孔の位置ずれ(座切れ)、実装不良といった不具合が生じるおそれがある。
【0007】
そこで、配線層の厚みの均一性に優れ、かつ寸法変化が低減されたフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層される1本又は複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記ベースフィルムの上記少なくとも一方の面側が、上記配線層が積層されない領域である非積層領域を含み、上記非積層領域が第1領域を含み、上記第1領域に、電気的に孤立するよう上記配線層と間隔を空けて積層される1又は複数のめっき部をさらに備え、上記第1領域は、上記配線層から最短距離で15mmまでの間の領域であり、平面視で、上記第1領域の面積に対する上記第1領域上の上記めっき部の形成領域の面積の比率である第1比率が25%以上75%以下であり、上記第1領域における上記ベースフィルムに対してそれぞれ平行であり、かつ互いに直交する方向である第1方向及び第2方向の2の線膨張係数の比が0.5以上2.0以下である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、配線層の厚みの均一性に優れ、かつ寸法変化が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的平面図である。
図2図2は、図1のフレキシブルプリント配線板を示す模式的端面図であって、図1のAA矢視方向の模式的端面図である。
図3図3は、格子状のめっき部における三角形の隙間の配置例を、上記隙間の重心の配置によって示す模式的平面図である。
図4図4は、格子状のめっき部における三角形の隙間の他の配置例を、上記隙間の重心の配置によって示す模式的平面図である。
図5図5は、図1のフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための模式的端面図であって、図1のAA矢視方向と同方向に視た模式的端面図である。
図6図6は、図1のフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための模式的端面図であって、図1のAA矢視方向と同方向に視た模式的端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層される1本又は複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記ベースフィルムの上記少なくとも一方の面側が、上記配線層が積層されない領域である非積層領域を含み、上記非積層領域が第1領域を含み、上記第1領域に、電気的に孤立するよう上記配線層と間隔を空けて積層される1又は複数のめっき部をさらに備え、上記第1領域は、上記配線層から最短距離で15mmまでの間の領域であり、平面視で、上記第1領域の面積に対する上記第1領域上の上記めっき部の形成領域の面積の比率である第1比率が25%以上75%以下であり、上記第1領域における上記ベースフィルムに対してそれぞれ平行であり、かつ互いに直交する方向である第1方向及び第2方向の2の線膨張係数の比が0.5以上2.0以下である。
【0012】
ここで、本発明者らが鋭意研究したところ、以下の知見を知得した。すなわち、上記第1領域に占める上記めっき部の面積が大きくなる程、当該フレキシブルプリント配線板の全体の剛性が大きくなって寸法変化が小さくなる一方、配線層の厚みバラツキが大きくなる傾向にある。逆に、上記第1領域に占める上記めっき部の形成領域の面積が小さくなる程、配線層の厚みバラツキが小さくなる一方、当該フレキシブルプリント配線板の全体の剛性が小さくなって寸法変化が大きくなる傾向にある。加えて、上記第1領域における互いに直交する2方向の線膨張係数が互いに近づく程、当該フレキシブルプリント配線板の寸法変化が小さくなる傾向にある。
【0013】
よって、上記知見より、上記第1領域における上記めっき部の形成領域の面積に関する上記第1比率が上記上限以下であることで、配線層の厚みバラツキが低減される。これにより、当該フレキシブルプリント配線板は、厚みの均一性に優れる。上記第1比率が上記下限以上であることで、当該フレキシブルプリント配線板の全体としての寸法変化が低減される。加えて、上記第1領域における上記2方向の線膨張係数の比が上記範囲内であることで、上記第1領域の上記2方向の線膨張係数が互いに比較的近い値となり、当該フレキシブルプリント配線板においてベースフィルムよりも硬い(剛性が大きい)金属部分の配置バランスが向上する。このように、上記2方向の線膨張係数の比が上記範囲内であることでも、当該フレキシブルプリント配線板の全体としての寸法変化が低減される。従って、当該フレキシブルプリント配線板は、配線層の厚みの均一性に優れ、かつ寸法変化が低減されたものである。
【0014】
上記第1比率と、平面視で上記配線層の周縁で囲まれた領域の面積に対する上記配線層の形成領域の面積の比率である第2比率との差が、絶対値で10%以内であるとよい。
【0015】
このように、上記第1比率と上記第2比率との差が上記範囲内であることで、配線層の形成領域が占める面積比率と上記めっき部の形成領域が占める面積比率とが互いに比較的近い値となるため、当該フレキシブルプリント配線板においてベースフィルムよりも硬い(剛性が大きい)金属部分の配置バランスがより向上する。これにより、当該フレキシブルプリント配線板の寸法変化がより低減される。
【0016】
上記第1領域における上記第1方向の線膨張係数に対する上記ベースフィルムと平行かつ上記第1方向及び第2方向の双方に対して45°の角度で傾斜する方向である第3方向の線膨張係数の比が、0.5以上2.0以下であるとよい。
【0017】
このように、上記第1方向の線膨張係数に対する上記第3方向の線膨張係数の比が上記範囲内であることで、上記3方向での線膨張係数が互いに比較的近い値となる。これにより、当該フレキシブルプリント配線板の寸法変化がより低減される。
【0018】
上記第1領域における上記第1方向のヤング率に対する上記第2方向のヤング率の比が0.1以上10以下であり、上記第1領域における上記第1方向のヤング率に対する上記第3方向のヤング率の比が0.1以上10以下であるとよい。
【0019】
このように、上記第1方向のヤング率に対する上記第2方向のヤング率の比が上記範囲内であり、上記第1方向のヤング率に対する上記第3方向のヤング率の比が上記範囲内であることで、上記3方向でのヤング率が互いに比較的近い値となる。これにより、当該フレキシブルプリント配線板の寸法変化がより低減される。
【0020】
上記めっき部が、平面視で互いに傾斜した複数の線状の部分が繋がった形状を有するとよい。
【0021】
このように、上記めっき部が上記形状を有することで、上記第1領域の上記第1比率が上記範囲内であり、かつ上記線膨張係数の比が上記範囲内である当該フレキシブルプリント配線板を作製し易くなる。また、上記ヤング率の比が上記範囲内である当該フレキシブルプリント配線板を作製し易くなる。よって、より確実に、配線層の厚みの均一性に優れ、かつ当該フレキシブルプリント配線板の寸法変動が低減される。
【0022】
上記めっき部が、平面視で折れ線状、波形状、多角形の隙間を有する格子状又はこれらの組み合わせの形状を有するとよい。
【0023】
このように、上記めっき部が上記形状を有することで、上記第1領域の上記第1比率が上記範囲内であり、かつ上記線膨張係数の比が上記範囲内である当該フレキシブルプリント配線板をより作製し易くなる。また、上記ヤング率の比が上記範囲内である当該フレキシブルプリント配線板をより作製し易くなる。よって、さらに確実に、配線層の厚みの均一性に優れ、かつ当該フレキシブルプリント配線板の寸法変動が低減される。
【0024】
ここで、「配線層から最短距離で15mmまでの間の第1領域」とは、配線層の周縁で囲まれた領域から最短距離で15mmまでの領域を意味する。「配線層の周縁で囲まれた領域」とは、配線層が巻き形状に形成されていない(すなわち、幅方向に互いに隣接する部分を有しない)1本の配線を有する場合には、この配線の周縁によって描かれる領域(すなわち、配線自身)を意味し、配線層が巻き形状に形成されている(すなわち、幅方向に隣接する部分を有する)1本の配線を有する場合には、最も端に位置する複数の周縁と、これら周縁の端縁同士を最短距離で結ぶ仮想線分とによって描かれる領域(配線内の隙間も含む)を意味し、配線層が複数の配線を有する場合には、これら配線のうち最も端に位置する複数の配線の複数の周縁と、これら周縁の端縁同士を最短距離で結ぶ仮想線分とによって上記周縁と一緒に描かれる領域(複数の配線同士及び各配線内の隙間を含む)を意味する。
【0025】
「めっき部の形成領域の面積」とは、第1領域におけるめっき部が形成されている部分の面積を意味する。この面積は、第1領域に形成されているめっき部自身(めっき部内の隙間を含まない)の平面視の面積とする。「第1領域の線膨張係数」とは、当該フレキシブルプリント配線板から上記第1領域を切り取った切り取り片について測定される線膨張係数の値を意味する。「配線層の形成領域の面積」とは、ベースフィルム上に形成されている配線層自身(配線内の隙間を含まない)の面積を意味する。「第1方向及び第2方向の2の線膨張係数の比」とは、上記第1方向の線膨張係数に対する上記第2線膨張係数の比を意味する。「第1領域のヤング率」とは、上記切り取り片について測定されるヤング率の値を意味する。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係るフレキシブルプリント配線板及びその製造方法の実施形態について図面を参照しつつ詳説する。なお、本実施形態において「表面側」とは、ベースフィルムの厚み方向のうち、配線層が積層される側を指すものであり、本実施形態の表裏がフレキシブルプリント配線板の使用状態における表裏を決定するものではない。
【0027】
[フレキシブルプリント配線板]
図1及び図2に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線板10は、絶縁性を有するベースフィルム3と、上記ベースフィルム3の一方の面側(表面側)に積層される配線13を有する配線層11とを主に備える。上記ベースフィルム3の一方の面側(表面側)が、配線層11が積層されない領域である非積層領域Kを含み、この非積層領域Kが、後述する第1領域K1を含む。当該フレキシブルプリント配線板10は、上記第1領域K1に、上記配線層11と間隔を空けて配置されるめっき部41をさらに備える。当該フレキシブルプリント配線板10は、ベースフィルム3又は配線層11の表面側にカバーフィルム(被覆層)をさらに備えてもよい。なお、本実施形態では、非積層領域Kと第1領域K1とが一致している態様を示す。また、図1には、非積層領域Kの第1領域K1に形成されるめっき部41の具体的な形状を省略するが、この図1には、例えば後述するような形状のめっき部41が形成される。
【0028】
<ベースフィルム>
ベースフィルム3は、絶縁性を有する合成樹脂製の層である。ベースフィルム3は、可撓性も有する。このベースフィルム3は、配線層11を形成するための基材でもある。ベースフィルム3の形成材料としては、絶縁性及び可撓性を有するものであれば特に限定されず、例えばシート状に形成された低誘電率の合成樹脂フィルムを採用し得る。この合成樹脂フィルムの主成分としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が挙げられる。「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば形成材料中50質量%以上を占める成分を意味する。ベースフィルム3は、ポリイミド等の例示した樹脂以外の他の樹脂、帯電防止剤等を含有してもよい。
【0029】
ベースフィルム3の平均厚みの下限としては、特に限定されないが、3μmが好ましく、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。ベースフィルム3の平均厚みの上限としては、特に限定されないが、200μmが好ましく、150μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。ベースフィルム3の平均厚みが上記下限未満である場合、ベースフィルム3の絶縁強度及び機械的強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム3の平均厚みが上記上限を超える場合、当該フレキシブルプリント配線板10が不要に厚くなるおそれがある。ここで、「平均厚み」とは、任意の十点において測定した厚みの平均値を意味する。
【0030】
<配線層>
配線層11は、ベースフィルム3の表面側に直接又は他の層を介して積層される。配線層11が有する配線13としては、例えば信号を送るための信号線、電力供給用の電流を送るための電流線、磁界発生用の電流を送るための電流線等が挙げられる。本実施形態では、配線13が磁界発生用の電流線、すなわちコイル線である場合について説明するが、配線13は、これに限定されるものではない。
【0031】
配線13は、渦巻き状(巻き形状)に形成され、その内側端部にランド部13aを有する。なお、巻線13は、その外側端部にランド部を有してもよい。また、配線13は、2のランド部をそれぞれ内側端部及び外側端部に有してもよい。
【0032】
配線13は、ベースフィルム3の表面側に積層される第1導電性下地層23と、第1導電性下地層23のベースフィルム3と反対の側(表面側)に積層される配線用めっき層25とによって形成される。第1導電性下地層23は、後述する導電性下地層M(例えば図5参照)の一部によって形成される。
【0033】
第1導電性下地層23の形成材料としては、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、これらの合金等が挙げられる。これら形成材料については、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制する点で、第1導電性下地層23が、ベースフィルム3(例えばポリイミド)と接する側に、上記ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含むことが好ましい。さらに、第1導電性下地層23が、除去が容易で絶縁性を保つことが容易なニッケル及びクロムから選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含むことがより好ましい。また、第1導電性下地層23が、この第1層の上側(ベースフィルム3とは反対の側)に、銅を主成分とする層(第2層)を含むことがより好ましい。この銅を主成分とする層が配置されることにより、電気めっきにより配線層11を形成する際に作業の短時間化が可能となる。
【0034】
例えば、上記第1層の平均厚みの下限としては、1nmが好ましく、2nmがより好ましい。上記第1層の平均厚みの上限としては、15nmが好ましく、8nmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限に満たない場合、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制することが困難になるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超える場合、上記第1層が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第1層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成され得る。
【0035】
例えば、上記第2層の平均厚みの下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。上記第2層の平均厚みの上限としては、2μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限に満たない場合、電気めっきによって配線層11を形成する時間が過度に長くなるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超える場合、上記第2層が容易に除去され難くなり、配線13間(図1では巻線部間)の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第2層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成されることが好ましく、これらを組み合わせて形成されてもよい。特に、第1導電性下地層23の最上面側に無電解銅めっき層が配置されることが好ましく、これにより、それよりも内層がスパッタ法で形成された場合に、このスパッタ法によって生じ得る欠陥等をカバーすることができる。
【0036】
配線用めっき層25を形成するための第1金属材料としては、例えば銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、これらの合金等が挙げられる。これらの中で、導電性を良好なものとする観点及びコストを低減する観点から銅又は銅合金が好ましい。例えば配線用めっき層25は、平面視で(ベースフィルム3に垂直な方向に視て)、第1導電性下地層23と同じ形状に形成される。
【0037】
配線層11の周縁で囲まれた領域の面積に対するこの配線層11の形成領域の面積の比率である第2比率は、特に限定されず、適宜設定される。例えば上記第2比率の下限としては、25%が好ましく、30%がより好ましく、40%がさらに好ましい。上記第2比率の上限としては、75%が好ましく、70%がより好ましく、60%がさらに好ましい。上記第2比率が上記下限に満たない場合、当該フレキシブルプリント配線板10の寸法変化が大きくなるおそれがある。一方、上記第2比率が上記上限を超える場合、膜厚バラツキが大きくなるおそれがある。
【0038】
配線13の平均線幅Lの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましく、15μmがさらに好ましい。配線13の平均線幅Lの上限としては、100μmが好ましく、75μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。配線13の平均線幅Lが上記下限に満たない場合、配線13の電気抵抗が大きくなり過ぎるおそれや、機械的強度が不足するおそれがある。一方、配線13の平均線幅Lが上記上限を超える場合、省スペース化を図ることができないおそれがある。ここで、「平均線幅」とは、1本の配線13における上記長手方向と垂直な断面の最大幅を上記長手方向に平均した値を意味する。「線幅」とは、上記長手方向と垂直な方向の寸法を意味する。「平均線幅」は当該配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、配線13における最も幅の大きい部分の長さを測定可能な顕微鏡等によって測定し、それらの平均値として算出される。なお、以下において他の部材等の「平均線幅」も、これと同様に測定される値である。
【0039】
なお、各配線13間を接続するためのビア(スルーホール、ブラインドビア、フィルドビア)を有するランド部分、実装部品との接続するランド部分、他のプリント基板やコネクターとの接続するためのランド部分等のランド部分については、上記及び下記にて規定する「線幅」から除外するものとする。また、このランド部については、下記にて規定する「間隔」及び「厚み」からも除外するものとする。
【0040】
隣接する配線13の平均間隔Sの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましく、15μmがさらに好ましい。配線13の平均間隔Sの上限としては、100μmが好ましく、75μmがより好ましく、25μmがさらに好ましい。配線13の平均間隔Sが上記下限に満たない場合、短絡が発生するおそれがある。一方、配線13の平均間隔Sが上記上限を超える場合、省スペース化を図ることができないおそれがある。ここで、「平均間隔」とは、2本の配線13(図1では2本の巻線部)の隣接面間の距離を配線13の長手方向(図1では巻き方向)に平均した値を意味する。「間隔」とは、2本の配線13(図1では2本の巻線部)における対向する隣接面間の距離を意味する。この「平均間隔」は、当該配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、配線13間(図1では巻線部間)の隙間における最も間隔の小さい部分の長さを測定可能な顕微鏡等によって測定し、それらの平均値として算出される。なお、以下において他の部材等の「平均間隔」も、これと同様に測定される値である。
【0041】
配線13の平均厚みの下限としては、7μmが好ましく、15μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。配線13の平均厚みの上限としては、100μmが好ましく、80μmがより好ましく、60μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記下限に満たない場合、配線13の電気抵抗が大きくなるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超える場合、配線13を形成するために線幅を大きくする必要が生じ、省スペース化を図ることができないおそれがある。ここで、「平均厚み」とは、1本の配線13の任意の十点において測定した厚みの平均値を意味する。「厚み」とは、このベースフィルムに垂直な方向におけるベースフィルムと配線13の上端縁との間の距離を意味する。「平均厚み」は、当該配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、配線13において、任意の十点の断面観察による厚みを測定し、測定結果の平均値を算出することによって得られる。なお、以下において他の部材等の「平均厚み」も、これと同様に測定される値である。
【0042】
ランド部13aの平均厚み、最大線幅等は、適宜設定し得る。
【0043】
<めっき部>
1又は複数のめっき部41は、ベースフィルム3の表面側における配線層11の非積層領域Kに含まれる第1領域K1に、電気的に孤立するよう配線層11と間隔を空けて積層される。このように、めっき部41は、導通されないように電気的に孤立して形成されるめっき層であり、非配線用(ダミー)配線に相当する。めっき部41は、第2導電性下地層43と、この第2導電性下地層43上に積層される非配線用(ダミー)めっき層45とを有する。上記第1領域K1は、上記配線層11から最短距離で15mmまでの間の領域である。なお、上述した通り、平面視でのベースフィルムの寸法によっては、本実施形態のように非積層領域Kと第1領域K1とが一致する場合がある。
【0044】
第2導電性下地層43は、後述する導電性下地層M(例えば図5参照)の一部によって形成される。第2導電性下地層43としては、第1導電性下地層23と同様のものが挙げられる。第2導電性下地層43の平均厚みは、第1導電性下地層23と同様に設定され得る。
【0045】
非配線用めっき層45の形成材料としては、上述した第1金属材料と同様のものが挙げられる。
【0046】
めっき部41は、平面視で、すなわちベースフィルム3に垂直な方向(図1の紙面と垂直な方向)に視て、第1領域K1の面積に対するこの第1領域K1における上記めっき部41の形成領域の面積の比率である第1比率が25%以上75%以下であるように形成される。めっき部41は、配線層11の外側の非積層領域、内側の非積層領域、又は内側及び外側の双方に形成され得る。本実施形態では、一例として、めっき部41が配線層11の外側の非積層領域Kに形成される場合について説明する。
【0047】
ここで、第1領域K1について、上記配線層11の非積層領域Kの少なくとも一部分が配線層11から最短距離で15mmに満たない場合、この部分については、非積層領域Kの周縁までの間の領域であるものとする。また、この部分は、配線層11から最短距離で少なくとも1mm以上までの間の領域(配線層11から周縁まで1mm以上離れた領域)を有するものとする。
【0048】
上記第1比率の下限は、上記のように25%であり、加えて、30%が好ましく、40%がより好ましい。上記第1比率の上限は、上記のように75%であり、加えて、70%が好ましく、60%がより好ましい。上記第1比率が上記下限に満たない場合、当該フレキシブルプリント配線板10の寸法変化を十分に低減させることができないおそれがある。一方、上記第1比率が上記上限を超える場合、当該フレキシブルプリント配線板10が配線層11の厚みの均一性に劣るおそれがある。
【0049】
上記第1比率と、上述した第2比率(平面視で配線層11の周縁で囲まれた領域の面積に対する配線層11の形成領域の面積の比率)との差としては、絶対値で、10%以内が好ましく、5%以内がより好ましい。上記差が上記範囲を満たさない場合、配線層11の積層領域とめっき部41の積層領域との間で金属部分が占める面積が大きく異なる結果、当該フレキシブルプリント配線板10の寸法変化が大きくなるおそれがある。なお、配線層11(又は配線13)の積層領域とは、ベースフィルム3上における配線層11(又は配線13)の周縁で囲まれた領域であって、配線層11内の隙間を含む領域をいう。また、めっき部41の積層領域とは、非積層領域Kにおけるめっき部41の周縁で囲まれた領域であって、めっき部41内の隙間を含む領域をいい、ここでは第1領域K1である。
【0050】
めっき部41は、上記第1領域K1に上記第1比率が上記範囲内でベースフィルム3上に積層されればよく、上記非積層領域Kにおける上記第1領域K1以外の領域におけるめっき部41の形成面積の比率(占有比率)は、特に限定されず、適宜設定される。例えば、上記非積層領域Kにおける上記第1領域K1以外の領域においても、この領域における上記めっき部41の占有比率を上記範囲内に設定し得る。
【0051】
めっき部41は、上記第1領域K1における上記ベースフィルム3と平行かつ互いに直交する方向である第1方向(図1のX方向)及び第2方向(図2のY方向)の2の線膨張係数の比が0.5以上2.0以下であるように形成される。
【0052】
上記第1方向及び第2方向の線膨張係数の比((第2方向の線膨張係数)/(第1方向の線膨張係数))、すなわち第1線膨張係数比の下限としては、上記のように0.5であり、さらに0.7が好ましく、0.9がより好ましい。上記第1線膨張係数比の上限としては、上記のように2.0であり、さらに1.5が好ましく、1.2がより好ましい。上記第1線膨張係数比が上記下限に満たない場合、及び上記第1線膨張係数比が上記上限を超える場合、第1方向と第2方向との間で線膨張係数のバランス(異方性)が悪くなり、寸法変化が大きくなるおそれがある。
【0053】
上記第1領域K1の上記2方向以外の方向の線膨張係数は、例えば、以下のように設定され得る。例えば上記第1領域K1における上記第1方向の線膨張係数に対する上記ベースフィルム3と平行かつ上記第1方向及び第2方向の双方に対して45°の角度で傾斜する方向である第3方向(図1のZ方向)の線膨張係数の比((第3方向の線膨張係数)/(第1方向の線膨張係数))、すなわち第2線膨張係数比の下限としては、0.5が好ましく、0.7がより好ましく、0.9がさらに好ましい。上記第2線膨張係数比の上限としては、2.0が好ましく、1.5がより好ましく、1.2がさらに好ましい。上記第2線膨張係数比が上記下限に満たない場合、及び上記第2線膨張係数比が上記上限を超える場合、第1方向及び第2方向と、第3方向との間で線膨張係数のバランスの一層の向上が困難になるおそれがある。
【0054】
上記第1方向、第2方向及び第3方向の各線膨張係数は、特に限定されず、上記各比を満たすように適宜設定され得る。例えば上記第1方向の線膨張係数の下限としては、14ppm/Kが好ましく、16ppm/Kがより好ましく、25ppm/Kがさらに好ましい。上記第1方向の線膨張係数の上限としては、100ppm/Kが好ましく、50ppm/Kがより好ましく、30ppm/Kがさらに好ましい。上記第1方向の線膨張係数が上記下限に満たない場合、及び上記上限を超える場合、配線13の積層領域とめっき部41の積層領域との間で線膨張係数の差が大きくなり、当該フレキシブル配線板10内の線膨張係数のバランスが悪くなるおそれがある。
【0055】
例えば上記第2方向の線膨張係数の下限としては、14ppm/Kが好ましく、16ppm/Kがより好ましく、25ppm/Kがさらに好ましい。上記第2方向の線膨張係数の上限としては、100ppm/Kが好ましく、50ppm/Kがより好ましく、30ppm/Kがさらに好ましい。上記第2方向の線膨張係数が上記下限に満たない場合、及び上記上限を超える場合、配線13の積層領域とめっき部41の積層領域との間で線膨張係数の差が大きくなり、当該フレキシブル配線板10内の線膨張係数のバランスが悪くなるおそれがある。
【0056】
例えば上記第3方向の線膨張係数の下限としては、14ppm/Kが好ましく、16ppm/Kがより好ましく、25ppm/Kがさらに好ましい。上記第3方向の線膨張係数の上限としては、100ppm/Kが好ましく、50ppm/Kがより好ましく、30ppm/Kがさらに好ましい。上記第3方向の線膨張係数が上記下限に満たない場合、及び上記上限を超える場合、配線13の積層領域とめっき部41の積層領域との間で線膨張係数の差が大きくなり、当該フレキシブル配線板10内の線膨張係数のバランスが悪くなるおそれがある。
【0057】
上記第1領域K1における第1方向、第2方向及び第3方向以外の方向の線膨張係数は、特に限定されない。例えば上記第1領域K1における上記3方向以外の方向の線膨張係数が、上記3方向の線膨張係数と同様の関係に設定されてもよい。
【0058】
上記第1領域K1における線膨張係数同士の関係に加えて、例えば上記第1領域K1における上記第1方向、第2方向及び第3方向のヤング率同士の関係が適宜設定され得る。例えば上記第1領域K1における第1方向のヤング率に対する上記第2方向のヤング率の比((第2方向のヤング率)/(第1方向のヤング率))、すなわち第1ヤング率比の下限としては、0.1が好ましく、0.2がより好ましく、0.5がさらに好ましい。上記第1ヤング率比の上限としては、10が好ましく、5がより好ましく、2がさらに好ましい。加えて、上記第1領域K1における第1方向のヤング率に対する上記第3方向のヤング率の比((第3方向のヤング率)/(第1方向のヤング率))、すなわち第2ヤング率比の下限としては、0.1が好ましく、0.2がより好ましく、0.5がさらに好ましい。上記第2ヤング率比の上限としては、10が好ましく、5がより好ましく、2がさらに好ましい。上記第1ヤング率比及び第2ヤング率比が上記下限に満たない場合、及び上記上限を超える場合、第1方向及び第2方向と、第3方向との間でヤング率のバランスの一層の向上が困難になるおそれがある。
【0059】
上記第1方向、第2方向及び第3方向の各ヤング率は、特に限定されず、上記各比を満たすように適宜設定され得る。例えば上記第1方向のヤング率の下限としては、4000MPaが好ましく、10000MPaがより好ましく、20000MPaがさらに好ましい。上記第1方向のヤング率の上限としては、100000MPaが好ましく、70000MPaがより好ましく、50000MPaがさらに好ましい。上記第1方向のヤング率が上記下限に満たない場合、及び上記上限を超える場合、配線13の積層領域とめっき部41の積層領域との間でヤング率の差が大きくなり、ヤング率のバランスが悪くなるおそれがある。
【0060】
例えば上記第2方向のヤング率の下限としては、4000MPaが好ましく、10000MPaがより好ましく、20000MPaがさらに好ましい。上記第2方向のヤング率の上限としては、100000MPaが好ましく、70000MPaがより好ましく、50000MPaがさらに好ましい。上記第2方向のヤング率が上記下限に満たない場合、及び上記上限を超える場合、配線13の積層領域とめっき部41の積層領域との間でヤング率の差が大きくなり、ヤング率のバランスが悪くなるおそれがある。
【0061】
例えば上記第3方向のヤング率の下限としては、4000MPaが好ましく、10000MPaがより好ましく、20000MPaがさらに好ましい。上記第3方向のヤング率の上限としては、100000MPaが好ましく、70000MPaがより好ましく、50000MPaがさらに好ましい。上記第3方向のヤング率が上記下限に満たない場合、及び上記上限を超える場合、配線13の積層領域とめっき部41の積層領域との間でヤング率の差が大きくなり、ヤング率のバランスが悪くなるおそれがある。
【0062】
上記第1領域K1における第1方向、第2方向及び第3方向以外の方向のヤング率は、特に限定されない。例えば上記第1領域K1における上記3方向以外の方向のヤング率が、上記3方向のヤング率と同様の関係に設定されてもよい。
【0063】
めっき部41の形状は、上記面積の比率及び線膨張係数の比を満たす限り、特に限定されず、適宜設定され得る。また、めっき部41の形状は、例えば上記ヤング率の比を満たすように適宜設定され得る。例えば、めっき部41は、平面視(図1の紙面方向)で互いに傾斜した複数の線状の部分が繋がった形状を有するよう形成され得る。
【0064】
このように、めっき部41が上記形状を有することで、上記第1領域K1の上記第1比率が上記範囲内であり、かつ上記線膨張係数の比が上記範囲内である当該フレキシブルプリント配線板10を作製し易くなる。また、上記ヤング率の比が上記範囲内である当該フレキシブルプリント配線板10を作製し易くなる。よって、より確実に、配線層11の厚みの均一性に優れ、かつ当該フレキシブルプリント配線板10の寸法変動が低減される。
【0065】
このようなめっき部41の形状としては、例えば平面視で折れ線状、波形状、多角形の隙間を有する格子状又はこれらの組み合わせの形状が挙げられる。めっき部41がこれらの形状を有することで、上記第1領域K1の上記第1比率が上記範囲内であり、かつ上記線膨張係数の比が上記範囲内である当該フレキシブルプリント配線板10をより作製し易くなる。また、上記ヤング率の比が上記範囲内である当該フレキシブルプリント配線板10をより作製し易くなる。よって、さらに確実に、配線層11の厚みの均一性に優れ、かつ当該フレキシブルプリント配線板10の寸法変動が低減される。
【0066】
このような形状を有するめっき部41は、図示は省略するが、例えば以下のように形成される。
【0067】
(めっき部の形状例1:格子状(ハニカム状))
例えば、平面視で複数の六角形(例えば正六角形)の隙間を有する格子状(ハニカム状)の形状であって、これら複数の隙間が互いに鋭角(例えば60°、又は鈍角)をなす2方向(図示は省略するが、例えば図1の左右方向及び左下から右上への斜め方向)に沿って配置されるように形成される。上記隙間の格子の幅、隙間の大きさ等は限定されず、第1比率と線膨張係数の比とが上記範囲内となるように決定されればよい。例えば格子の幅や隙間の大きさ等は、めっき部の形成領域全体にわたり、ほぼ一様であることが好ましい。このように格子の幅、隙間の大きさ等が限定されないことは、以下、他の格子状、波型形状においても同様である。
【0068】
(めっき部の形状例2:格子状(三角形状1))
例えばめっき部41は、複数の三角形(例えば二等辺三角形、正三角形)の隙間を有する格子状であって、これら複数の隙間が互いに直交する2方向(例えば図1の左右方向及び上下方向)に沿って配置されるように形成される。例えば図3に示すように、隙間の形状である複数の三角形が、その各重心G1が図3に示す各位置に配置されるように形成される。この図3では、複数の重心G1が、図3の互いに直交する2方向(左右方向及び上下方向)に沿って配置され、かつ、これら2方向のうちの一方向(例えば上下方向)に並んだ複数の重心G1を通る仮想直線X1を対称軸として互いに線対称であるように配置される。より具体的には、図3において、重心G1を有し、かつ頂点が上を向く上向きの複数の三角形と、重心G1を有し、かつ頂点が下を向く下向きの複数の三角形とが交互に配置される。この場合において、隣接する上向きの三角形における上向きの頂点に対向する辺(底辺)が断続的に(互いに間隔を空けて)一直線上に並び、これら底辺を結ぶと図3の左右方向に沿った直線となる。同様に、隣接する下向きの三角形における下向きの頂点に対向する辺(底辺)が断続的に(互いに間隔を空けて)一直線上に並び、これら底辺を結ぶと図3の左右方向に沿った直線となる。また、複数の重心G1が、隣接する4の重心G1が四角形を描き、かつこのひし形が上下方向及び左右方向に連続して隙間なく繰り返されるように配置される。これら重心G1の配置に応じて、かつ格子が形成されるように(すなわち、各三角形が互いに離間しているように)各三角形の隙間が形成される。また、形成される三角形の複数の隙間は、全体として、上述したように図3の左右方向及び上下方向に沿って配置される。
【0069】
(めっき部の形状例3:格子状(四角形状1))
例えばめっき部41は、複数の四角形(例えば正方形)の隙間を有する格子状であって、これら複数の隙間が互いに鋭角(又は鈍角、例えば45°)をなす2方向(図示は省略するが、例えば図1の左右方向及び左下から右上への斜め方向)に沿って配置されるように形成される。この場合において、例えば、各正方形が図1の左右方向に沿った二辺(図1の上側の辺と下側の辺)を有する。図1の左右方向に隣接する正方形における上側の辺は、図1の左右方向に断続的に(互いに間隔を空けて)一直線上に並び、これらを結ぶと図1の左右方向に沿った直線となる。上記左右方向に隣接する正方形における下側の辺についても同様である。一方で、上記各正方形は、図1の上下方向に沿った二辺(図1の左側の辺と右側の辺)を有するが、図1の上下方向に隣接する正方形における左側の辺を結んでも直線とはならず(左側の辺が一直線上に並んでおらず)、これら左側の辺は左右にずれて位置する。上記上下方向に隣接する正方形における右側の辺についても左側の辺と同様である。
【0070】
(めっき部の形状例4:波型形状1)
例えば複数のめっき部41は、一方向(図示は省略するが、例えば図1の上下方向)に沿って互いに平行であるように延びる波型形状(ジグザグ状)であって、隣接する2つの波型形状のめっき部の山(例えば図1の左側の頂点)同士及び谷(例えば図1の右側の頂点)同士がそれぞれ一直線上に並び、山同士及び谷同士をそれぞれ結ぶと図1の左右方向に沿った直線となる。また、このような複数のめっき部41は、上記山同士を結ぶ直線に対し線対称であり、上記谷同士を結ぶ直線に対し線対称である。
【0071】
(めっき部の形状例5:波型形状2)
例えば複数のめっき部41は、一方向(例えば図1の上下方向)に延びる波型形状(ジグザグ状)であって、隣接する2つの(一対の)波型形状のめっき部の間の中心線(例えば図1の上下方向)に対し線対称である。
【0072】
(めっき部の形状例6:格子状(三角形状2))
例えばめっき部41は、複数の三角形(例えば二等辺三角形、正三角形)の隙間を有する格子状であって、これら複数の隙間が互いに直交する2方向(例えば図1の左右方向及び上下方向)に沿って配置されるように形成される。より具体的には、例えば図4に示すように、隙間の形状である複数の三角形が、その各重心G2が図4に示す各位置に配置されるように形成される。この図4では、複数の重心G2が、図4の互いに直交する2方向(左右方向及び上下方向)に沿って配置され、かつ、これら2方向のうちの一方向(例えば上下方向)に並んだ複数の重心G2を通る仮想直線X2を対称軸として互いに線対称であるように配置される。より具体的には、図4において、重心G2を有し、かつ頂点が上を向く上向きの複数の三角形と、重心G2を有し、かつ頂点が下を向く下向きの複数の三角形とが交互に配置される。この場合において、隣接する上向きの三角形における上向きの頂点に対向する辺(底辺)が断続的に(互いに間隔を空けて)一直線上に並び、これら底辺を結ぶと図4の左右方向に沿った直線となる。同様に、隣接する下向きの三角形における下向きの頂点に対向する辺(底辺)が断続的に(互いに間隔を空けて)一直線上に並び、これら底辺を結ぶと図4の左右方向に沿った直線となる。また、複数の重心G2が、隣接する6の重心G2が六角形を描き、かつこの六角形が連続して隙間なく上下方向及び左右方向に繰り返されるように配置される。これら重心G2の配置に応じて、かつ格子が形成されるように(すなわち、各三角形が互いに離間しているように)各三角形の隙間が形成される。また、形成される三角形の複数の隙間は、全体として、上述したように図4の左右方向及び上下方向に沿って配置される。
【0073】
(めっき部の形状例7:格子状(四角形状2))
例えばめっき部41は、複数の四角形(例えば正方形)の隙間を有する格子状であって、これら複数の隙間が互いに直交する2方向(図示は省略するが、例えば図1の左右方向及び上下方向)に沿って配置されるように形成される。この場合において、例えば、各正方形が図1の左右方向に沿った二辺(図1の上側の辺と下側の辺)を有する。図1の左右方向に隣接する正方形における上側の辺は、図1の左右方向に断続的に(互いに間隔を空けて)一直線上に並び、これらを結ぶと図1の左右方向に沿った直線となる。上記左右方向に隣接する正方形における下側の辺についても同様である。同様に、上記各正方形は、図1の上下方向に沿った二辺(図1の左側の辺と右側の辺)を有する。図1の上下方向に隣接する正方形における左側の辺は、図1の上下方向に断続的に(互いに間隔を空けて)一直線上に並び、これらを結ぶと図1の上下方向に沿った直線となる。上記上下方向に隣接する正方形における右側の辺についても左側の辺と同様である。
【0074】
上記した各めっき部の隙間の形状、線の形状、平均線幅、平均間隔、平均厚み等は、特に限定されず、上記比率及び線膨張係数の比を満たすよう適宜設定され得る。また、これらは、上記ヤング率の比を満たすよう適宜設定され得る。
【0075】
<フレキシブルプリント配線板の製造方法>
次に、当該フレキシブルプリント配線板10の製造方法について説明する。
【0076】
当該フレキシブルプリント配線板10の製造方法は、レジストパターンRを用い、一方の面側(表面側)に導電性下地層Mが積層されたベースフィルム3の上記導電性下地層M上に第1金属材料を電気めっきすることにより、配線用めっき層25及び非配線用めっき層45を形成するめっき工程と、上記めっき工程の後、上記レジストパターンR及び上記導電性下地層Mにおける上記配線用めっき層25及び非配線用めっき層43の非積層領域を除去する除去工程とを備える。上記導電性下地層Mの一部、及び配線用めっき層25によって配線13を有する配線層11が形成され、上記導電性下地層Mの別の一部及び非配線用めっき層45によって電気的に孤立しためっき部41が形成される。
【0077】
〔導電性下地層〕
導電性下地層Mは、ベースフィルム3の表面側に積層される。この導電性下地層Mは、予めベースフィルム3の表面側の全面に積層されたものを用いる。導電性下地層Mの一部が、第1導電性下地層23となり、導電性下地層Mの他の一部が、第2導電性下地層43となる。
【0078】
導電性下地層Mの形成材料としては、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、これらの合金等が挙げられる。これら形成材料については、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制する点で、導電性下地層Mが、ベースフィルム3(例えばポリイミド)と接する側に、上記ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含むことが好ましい。さらに、導電性下地層Mが、除去が容易で絶縁性を保つことが容易なニッケル及びクロムから選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含むことがより好ましい。また、導電性下地層Mが、この第1層の上側(ベースフィルム3とは反対の側)に、銅を主成分とする層(第2層)を含むことがより好ましい。この銅を主成分とする層が配置されることにより、電気めっきにより配線層11を形成する際に作業の短時間化が可能となる。
【0079】
例えば、上記第1層の平均厚みの下限としては、1nmが好ましく、2nmがより好ましい。上記第1層の平均厚みの上限としては、15nmが好ましく、8nmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限に満たない場合、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制することが困難になるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超える場合、上記第1層が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第1層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成され得る。
【0080】
例えば、上記第2層の平均厚みの下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。上記第2層の平均厚みの上限としては、2μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限に満たない場合、電気めっきによって配線層11を形成する時間が過度に長くなるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超える場合、上記第2層が容易に除去され難くなり、配線13間(図1では巻線部間)の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第2層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成されることが好ましく、これらを組み合わせて形成されてもよい。特に、導電性下地層Mの最上面側に無電解銅めっき層が配置されることが好ましく、これにより、それよりも内層がスパッタ法で形成された場合に、このスパッタ法によって生じ得る欠陥等をカバーすることができる。
【0081】
〔めっき工程〕
本工程は、導電性下地層Mの表面にレジストパターンRを形成するレジストパターン形成工程と、形成されたレジストパターンRを用い、導電性下地層M上に第1金属材料を電気めっきすることにより、配線13の配線用めっき層25及びめっき部41の非配線用めっき層45を形成するめっき層形成工程とを有する。
【0082】
(レジストパターン形成工程)
本工程では、図5に示すようにレジストパターンRを導電性下地層Mの表面に形成する。具体的には導電性下地層Mの表面に感光性フィルム等のレジスト膜を積層し、積層されたレジスト膜を露光及び現像することにより、所定のパターンを有するレジストパターンRを形成する。上記レジスト膜の積層方法としては、例えばレジスト組成物を導電性下地層Mの表面に塗工する方法、ドライフィルムフォトレジストを導電性下地層Mの表面に積層する方法等が挙げられる。レジスト膜の露光及び現像条件は、用いるレジスト組成物等に応じて適宜調節可能である。レジストパターンRの開口部は、形成すべき配線用めっき層25及び非配線用めっき層45の形状等に応じて適宜設定され得る。
【0083】
(めっき層形成工程)
本工程では、導電性下地層Mに通電しつつ上記第1金属材料を電気めっきすることにより、図6に示すように導電性下地層MにおけるレジストパターンRの非積層領域に配線用めっき層25及び非配線用めっき層45を形成する。
【0084】
〔除去工程〕
本工程は、導電性下地層MからレジストパターンRを剥離する剥離工程と、導電性下地層Mにおける配線用めっき層25及び非配線用めっき層45の非積層領域(不要領域)をエッチングするエッチング工程とを有する。
【0085】
(剥離工程)
本工程では、導電性下地層MからレジストパターンRを剥離する。この剥離液としては、公知のものを用いることができ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性水溶液、アルキルベンゼンスルホン酸等の有機酸系溶液、エタノールアミン等の有機アミン類と極性溶剤との混合液等が挙げられる。
【0086】
(エッチング工程)
本工程では、配線用めっき層25及び非配線用めっき層45をマスクとして導電性下地層Mをエッチングする。このエッチングにより、図2に示すようにベースフィルム3に第1導電性下地層23を介して配線用めっき層25が積層された配線13が得られる。また、ベースフィルム3に第2導電性下地層43を介して非配線用めっき層45が積層されためっき部41が得られる。上記エッチングには導電性下地層Mを形成する金属を浸食するエッチング液が使用される。当該製造方法においては、このように、いわゆるセミアディティブ法が好適に用いられる。
【0087】
<利点>
当該フレキシブルプリント配線板10は、上記第1領域K1におけるめっき部41の上記第1比率が上記上限以下であることで、配線層11の厚みバラツキが低減される。よって、当該フレキシブルプリント配線板10は、厚みの均一性に優れる。上記第1比率が上記下限以上であることに加えて、上記第1領域K1の上記線膨張係数が上記範囲内であることで、当該フレキシブルプリント配線板10の寸法変化が低減される。従って、当該フレキシブルプリント配線板10は、配線層11の厚みの均一性に優れ、かつ寸法変化が低減されたものである。
【0088】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0089】
上記実施形態では、単一のベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面に積層された配線層とを有するフレキシブルプリント配線板について説明したが、当該フレキシブルプリント配線板は、単一のベースフィルムの両面に配線層が積層されたものであってもよい。また、当該フレキシブルプリント配線板は、複数のベースフィルムを有し、各ベースフィルムが一方の面又は両面に複数の配線層を有する多層プリント配線板であってもよい。
【0090】
上記実施形態では、配線層が1本の配線を有する場合について説明したが、配線層が複数本の配線を有してもよい。
【0091】
上記実施形態では、配線13がコイル状である場合について説明したが、配線13はその他の形状であってもよい。
【0092】
上記実施形態では、配線13が1層の配線用めっき層を有する場合について説明したが、配線13が2層以上の配線用めっき層を有する態様も採用し得る。この場合、例えば、上述した製造方法において、除去工程後、非配線用めっき層45には通電せず、配線用めっき層25のみに通電してさらなる電気めっきを行うことで、2層目の配線用めっき層を形成することができる。3層目以降の配線用めっき層を有する場合には、2層目の配線用めっき層の形成と同様の電気めっきを繰り返せばよい。
【実施例0093】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
モデル実験として、ベースフィルム上に種々のめっき部を形成し、このベースフィルムとめっき部との積層体の特性値について評価した。
【0095】
<試料の作製>
(実験例1)
ベースフィルムの一面側(表面側)に導電性下地層が積層されたフィルム(ユーピレックス-S、宇部興産社製)を用いた。めっき部として、上述しためっき部の形状例1(格子状(ハニカム状))と同様の形状を有するめっき部を作製した。具体的には、上述したように、上記フィルムの導電性下地層上に、めっき部に応じた複数の開口部を有するレジストパターンを用い、導電性下地層に導通しつつ導電性下地層上に第1金属材料としての銅材料を電気めっき槽内で電気めっきした後、除去工程を行うことにより、非配線用めっき層を形成した。この電気めっきにおいては、導電性下地層における平面視で縦200μm×横200μmの正方形の領域に、平均厚みを10μm、平均線幅を20μmに設定し、上記領域の面積に対するめっき部の形成領域の面積の比率が50%となるように格子の隙間(正六角形)の大きさを設定して、めっき部を形成した。その後、得られた積層体を上記めっき部の周縁に合わせて縦200μm×横200μmの正方形状の領域を切り出して、実験例1の試料を得た。
【0096】
(実験例2~7)
上記第1領域K1におけるめっき部の形状を、下記のように、上述しためっき部の形状例2~7と同様の形状に変更すること以外は実験例1と同様にして、実験例2~実験例7の試料を作製した。
実験例2:格子状(三角形状1)
実験例3:格子状(四角形状1)
実験例4:平行な波型形状(波型形状1)
実験例5:線対称な波型形状(波型形状2)
実験例6:格子状(三角形状2)
実験例7:格子状(四角形状2)
【0097】
(実験例8)
上記第1領域K1におけるめっき部の形状を、互いに平行であるように図1の上下方向に沿って延びる直線状の形状に変更すること以外は実験例1と同様にして、実験例8の試料を作製した。
【0098】
<評価>
(線膨張係数)
実験例1~8の試料について、下記の条件でシミュレーションによる熱応力解析を実施することにより、切り出し片の隣接する2辺にそれぞれ平行であり、互いに直交する2方向(図1の左右方向をX方向(第1方向)、上下方向をY方向(第2方向)とする。)の熱膨張係数を測定した。また、各試料について、X方向及びY方向の双方に対して45°の角度で傾斜するZ方向(第3方向)の熱膨張係数を測定した。各試料について得られたX方向の線膨張係数、Y方向の線膨張係数、Z方向の線膨張係数、線膨張係数の比((Y方向の線膨張係数)/(X方向の線膨張係数)、(Z方向の線膨張係数)/(X方向の線膨張係数))を表1に示す。
・熱解析条件
雰囲気温度:180°から20℃まで降温
ベースフィルムの線膨張係数:90×10-6[/K]
銅の線膨張係数:16.2×10-6[/K]
【0099】
(ヤング率)
実験例1~8の試料について、下記の条件で上記線膨張係数と同様のシミュレーションによる熱応力解析を実施することにより、上記X方向、Y方向及びZ方向のヤング率を測定した。各試料について得られたX方向のヤング率、Y方向のヤング率、Z方向のヤング率、ヤング率の比((Y方向のヤング率)/(X方向のヤング率)、(Z方向のヤング率)/(X方向のヤング率))を表2に示す。
・熱解析条件
雰囲気温度:180°から20℃まで降温
ベースフィルムのヤング率:2000[MPa]
銅のヤング率:110000[MPa]
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
表1に示すように、めっき部を有する試料の互いに直交する2方向の線膨張係数の比が0.5以上2.0以下である場合、これら試料の寸法変化が小さくなることがわかった。この結果、ベースフィルムにおける配線層の非積層領域において、配線層から最短距離で15mmまでの間の第1領域に、占有比率(面積比率)が25%以上75%以下であり、かつ上記線膨張係数の比が上記範囲内であるようにめっき部を形成することで、フレキシブルプリント配線板の寸法変化が低減されると推察される。また、このフレキシブルプリント配線板の厚みの均一性も向上するものと推察される。加えて、X方向の線膨張係数に対するY方向の線膨張係数の比(第1線膨張係数比)が1に近づくことで、上記寸法変化がより低減され、これに加えて、X方向の線膨張係数に対するZ方向の線膨張係数の比(第2線膨張係数比)も1に近づくことで、上記寸法変化がさらに低減すると推察される。また、上記第2線膨張係数比の方が上記第1線膨張係数比よりも、より1に近づく傾向にあることがわかった。
【0103】
表2に示すように、X方向のヤング率に対するY方向のヤング率の比(第1ヤング率比)が1に近づくことに加えて、X方向のヤング率に対するZ方向のヤング率の比(第2ヤング率比)も1に近づくことで、フレキシブルプリント配線板の寸法変化が一層低減すると推察される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、配線層の厚みの均一性に優れ、かつ寸法変化が低減される。従って、小型の電子機器等に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0105】
10 フレキシブルプリント配線板
3 ベースフィルム
11 配線層
13 配線
13a ランド部
23 第1導電性下地層
25 配線用めっき層
41 めっき部
43 第2導電性下地層
45 非配線用めっき層
K 配線層が積層されない領域(非積層領域)
K1 第1領域
L 平均線幅
S 平均間隔
M 導電性下地層
R レジストパターン
G1、G2 三角形の隙間の重心
X1、X2 仮想直線(対称軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6