(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135200
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】支持部材及び触媒コンバータの支持構造
(51)【国際特許分類】
B60K 13/04 20060101AFI20220908BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B60K13/04 C
F16B5/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034844
(22)【出願日】2021-03-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆治
(72)【発明者】
【氏名】八塚 駿
【テーマコード(参考)】
3D038
3J001
【Fターム(参考)】
3D038BA02
3D038BA13
3D038BB01
3D038BC15
3D038BC24
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JA10
3J001KA19
(57)【要約】
【課題】第1の方向と当該第1の方向と垂直な第2の方向との少なくとも二方向の制振を可能にする。
【解決手段】貫通孔6a,7aを有するステー6,7を備える触媒コンバータ1を車両9に支持するための支持部材10は、弾性材料によって形成されステー6,7を挟み込んで支持するように一対設けられ一方が車両9側に当接する第1支持部材11と、一対の第1支持部材11の間に設けられ、弾性材料によって第1支持部材11とは別体に形成され貫通孔6a,7aの内周側を支持する第2支持部材12と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する取付部を備える触媒コンバータを車両に支持するための支持部材であって、
弾性材料によって形成され前記取付部を挟み込んで支持するように一対設けられ一方が前記車両側に当接する第1支持部材と、
一対の前記第1支持部材の間に設けられ、弾性材料によって前記第1支持部材とは別体に形成され前記貫通孔の内周側を支持する第2支持部材と、
を備える、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項2】
請求項1に記載の支持部材であって、
前記取付部は、一端部が前記触媒コンバータに固定される板ばね部材の他端部に設けられ、
前記触媒コンバータに加わる振動は、前記板ばね部材の弾性変形によって吸収され、前記板ばね部材の他端部を上下に挟み込んだ前記第1支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の厚み方向の振動が吸収され、前記板ばね部材の他端部に設けられる前記貫通孔の内周側に配置される前記第2支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の長手方向の振動が吸収される、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項3】
請求項2に記載の支持部材であって、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材によって前記板ばね部材を支持した状態においては、前記第1支持部材及び前記第2支持部材が互いに上下に当接する一対の境界面と、前記板ばね部材の上端面及び下端面とが面方向に面一となっている、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の支持部材であって、
前記第2支持部材と前記貫通孔の内周面との間には所定の隙間が設けられている、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の支持部材であって、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、筒状であり、
前記第2支持部材は、前記第1支持部材よりも外径が小さく、
前記第2支持部材は、一対の前記第1支持部材に挟み込まれて当該一対の前記第1支持部材と同軸に固定される、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項6】
請求項5に記載の支持部材であって、
一対の前記第1支持部材のうち前記車両と当接しない他方における前記取付部と反対の面に当接するワッシャと、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との内周を挿通し前記ワッシャの軸方向端部に当接するカラーと、
前記カラーの内周を挿通して前記ワッシャを前記車両に対して固定するボルトと、
を更に備える、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項7】
触媒コンバータと、当該触媒コンバータを車両に支持するための支持部材と、を備える触媒コンバータの支持構造であって、
前記触媒コンバータは、貫通孔を有する取付部を備え、
前記支持部材は、
弾性材料によって形成され前記取付部を挟み込んで支持するように一対設けられ一方が前記車両側に当接する第1支持部材と、
一対の前記第1支持部材の間に設けられ、弾性材料によって前記第1支持部材とは別体に形成され前記貫通孔の内周側を支持する第2支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、外周の全周に形成されて前記取付部が差し込まれる溝部を有する、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項8】
請求項7に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記取付部は、一端部が前記触媒コンバータに固定される板ばね部材の他端部に設けられ、
前記触媒コンバータに加わる振動は、前記板ばね部材の弾性変形によって吸収され、前記板ばね部材の他端部を上下に挟み込んだ前記第1支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の厚み方向の振動が吸収され、前記板ばね部材の他端部に設けられる前記貫通孔の内周側に配置される前記第2支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の長手方向の振動が吸収される、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項9】
請求項8に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材によって前記板ばね部材を支持した状態においては、前記第1支持部材及び前記第2支持部材が互いに上下に当接する一対の境界面と、前記板ばね部材の上端面及び下端面とが面方向に面一となっている、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一つに記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記第2支持部材と前記貫通孔の内周面との間には所定の隙間が設けられている、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項11】
触媒コンバータと、当該触媒コンバータを車両に支持するための支持部材と、を備える触媒コンバータの支持構造であって、
前記触媒コンバータは、貫通孔を有する取付部を備え、
前記支持部材は、外周の全周に形成されて前記取付部が差し込まれる溝部を有し、
前記取付部は、前記溝部に差し込まれる先端部に面取り部を有する、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項12】
請求項11に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記溝部における前記取付部の径方向の長さは3.0mm以上である、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項13】
請求項11に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記支持部材は、
弾性材料によって形成され前記取付部を挟み込んで支持するように一対設けられ一方が前記車両に当接する第1支持部材と、
一対の前記第1支持部材の間に設けられ、弾性材料によって前記第1支持部材とは別体に形成され前記貫通孔の内周を支持する第2支持部材と、
を備え、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、同軸の筒状であり、
前記溝部は、前記第2支持部材の外周の全周に形成される、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項14】
請求項13に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記溝部の径方向の長さは3.0mm~6.0であり、
前記面取り部の径方向の長さは、0.1mm~0.5mmである、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項15】
請求項14に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記面取り部の径方向の長さは、0.2mm~0.5mmである、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項16】
請求項15に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記面取り部の径方向の長さは、0.3mm~0.5mmである、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項17】
請求項13から16のいずれか一つに記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記支持部材は、
一対の前記第1支持部材のうち前記車両と当接しない他方の前記第1支持部材における前記取付部と反対の面に当接するワッシャと、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との内周を挿通し前記ワッシャの軸方向端部に当接するカラーと、
前記カラーの内周を挿通して前記ワッシャを前記車両に対して固定するボルトと、
を更に備える、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項18】
請求項13から17のいずれか一つに記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記取付部は、一端部が前記触媒コンバータに固定される板ばね部材の他端部に設けられ、
前記触媒コンバータに加わる振動は、前記板ばね部材の弾性変形によって吸収され、前記板ばね部材の他端部を上下に挟み込んだ前記第1支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の厚み方向の振動が吸収され、前記板ばね部材の他端部に設けられる前記貫通孔の内周側に配置される前記第2支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の長手方向の振動が吸収される、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項19】
請求項13から18のいずれか一つに記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材によって前記取付部を支持した状態においては、前記第1支持部材及び前記第2支持部材が互いに上下に当接する一対の境界面と、前記取付部の上端面及び下端面とが面方向に面一となっている、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項20】
請求項13から19のいずれか一つに記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記第2支持部材と前記貫通孔の内周面との間には所定の隙間が設けられている、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材及び触媒コンバータの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ねじを締めて制振部品を車体へ取り付ける際に制振部品が回転することを防止するために、制振部品に位置決め部が設けられている触媒コンバータの車体連結構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案公告第209336481号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の連結構造では、ねじの締結方向の制振は可能であるが、ねじの締結方向と垂直な方向の制振はできない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、上記締結方向に相当する第1の方向と当該第1の方向と垂直な第2の方向との少なくとも二方向の制振を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、貫通孔を有する取付部を備える触媒コンバータを車両に支持するための支持部材であって、弾性材料によって形成され前記取付部を挟み込んで支持するように一対設けられ一方が前記車両側に当接する第1支持部材と、一対の前記第1支持部材の間に設けられ、弾性材料によって前記第1支持部材とは別体に形成され前記貫通孔の内周側を支持する第2支持部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様では、支持部材は、取付部を挟み込んで支持する一対の第1支持部材と、一対の第1支持部材の間に第1支持部材とは別体に設けられ貫通孔の内周側を支持する第2支持部材と、を備える。そのため、支持部材によって触媒コンバータを車両に支持することで、第1支持部材が取付部を第1の方向に弾性支持し、第2支持部材が取付部を第2の方向に弾性支持する。したがって、第1の方向と当該第1の方向と垂直な第2の方向との少なくとも二方向の制振を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータの支持構造の斜視図である。
【
図7】
図7は、支持部材の耐荷重試験について説明する図である。
【
図8】
図8は、支持部材の耐荷重試験における押し込み量と荷重との関係を説明するグラフである。
【
図9】
図9は、本発明の支持構造が適用される変形例に係る触媒コンバータを示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の支持構造が適用される他の変形例に係る触媒コンバータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る触媒コンバータの支持構造(以下、単に「支持構造」と称する。)100について説明する。
【0010】
まず、
図1及び
図2を参照して、支持構造100の全体構成について説明する。
図1は、支持構造100の斜視図である。
図2は、
図1におけるII矢視図である。
【0011】
支持構造100は、触媒コンバータ1と、支持部材10と、を備える。
【0012】
触媒コンバータ1は、車両9に支持される。
図1及び
図2には、触媒コンバータ1が取り付けられる車両9の一部のみを示している。なお、触媒コンバータ1は、車両9に搭載されるエンジン(図示省略)に支持されてもよい。この場合も、触媒コンバータ1は車両9に支持されていると言える。
【0013】
触媒コンバータ1は、エンジンから排出される排気ガスに含まれる炭化水素や一酸化炭素を酸化させて二酸化炭素と水分にすると共に、窒素酸化物の還元及び微小粒子状物質の除去を行い、排気ガスを浄化する。触媒コンバータ1は、排気ガス流れ経路におけるエンジンの下流に直接接続される。なお、触媒コンバータ1は、エンジンに過給機が設けられる場合には、過給機の排気出口部の下流に直接接続される。そのため、触媒コンバータ1は、エンジンからの振動伝達を受けてしまう。また、本実施形態では、触媒コンバータ1は、浄化性能を高めるために二つの触媒を有する。更に、本実施形態では、エンジンルームの省スペース化に伴い、触媒コンバータ1のレイアウトが折れ曲がったL字形状である。そのため、触媒コンバータ1全体の振動が、例えば、一つの触媒のみを有するストレートタイプの触媒コンバータと比べて複雑化する。
【0014】
触媒コンバータ1は、ケース2と、ケース2に収容される複数の触媒(図示省略)と、を有する。
【0015】
ケース2は、入口側筒部3と、中間筒部4と、出口側筒部5と、板ばね部材としてのステー6,7と、を有する。
【0016】
入口側筒部3は、内部にTWC(三元触媒)を収容する。入口側筒部3は、排気ガスが流入する入口側開口部3aを有する。入口側筒部3は、排気ガスの流れを所定角度(例えば、90°)屈曲させるように、即ち略L字型の流路を形成するように構成される。入口側筒部3は、排気ガスの流れ方向に沿って対称に分割して形成された2つの金属製板状部材を溶接などによって接合することで形成される。
【0017】
中間筒部4は、入口側筒部3に接合され内部にGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルタ)を収容する。中間筒部4は、金属製板状部材によって楕円筒形状に形成される。中間筒部4は、一端の外周面が入口側筒部3の内周面に溶接などによって接合される。中間筒部4は、他端の外周面が、出口側筒部5の内周面に溶接などによって接合される。
【0018】
出口側筒部5は、一端が中間筒部4に接合され、他端に排気側管路(図示省略)に接続するための出口側フランジ5aが設けられる。出口側筒部5は、出口側開口部5bを有する。出口側筒部5は、GPFを通過した排気ガスを、排気ガスを外部へ排出する排気管(図示省略)に導く。出口側筒部5は、排気ガスの流れ方向に沿って分割して形成された2つの金属製板状部材を溶接などによって接合することで形成される。
【0019】
ステー6は、板金材料をプレス加工することによって形成される。ステー6は、出口側筒部5の出口側フランジ5aに取り付けられる。ステー6は、一端部が触媒コンバータ1に固定される。ステー6の他端部には、取付部8が設けられる。
図2に示すように、ステー6の取付部8には、貫通孔6aが設けられる。貫通孔6aは、円形に形成される。貫通孔6aには、支持部材10の後述する溝部13に差し込まれる先端部の軸方向両端に面取り部6b,6cが形成される(
図4参照)。
【0020】
ステー7は、板金材料をプレス加工することによって形成される。ステー7は、出口側筒部5の出口側フランジ5aから離れた位置に取り付けられる。
図2に示すように、ステー7は、貫通孔7aを有する。
【0021】
面取り部6b,6cは、径方向の長さが0.1~0.5[mm]、即ち斜面の角度が45°のC面取りであればC0.1~C0.5である。面取り部6b,6cは、C面取りではなく、R面取り等他の形状であってもよい。
【0022】
ステー6は、支持部材10を介して車両9に支持される。ステー7は、車両9に直接支持される。なお、ステー6のみを支持部材10を介して支持するのに代えて、ステー6,7を共に支持部材10を介して車両9に支持してもよい。即ち、ステー6,7の少なくとも一つが支持部材10を介して車両9に支持されていればよい。
【0023】
支持部材10は、ステー6と車両9との間に設けられる。支持部材10については、
図3から
図6Bを参照しながら詳細に説明する。
【0024】
ここで、車両9の走行時に振動が加わると、触媒コンバータ1にその振動が伝達される。また、エンジンから高温の排気ガスが流入すると、触媒コンバータ1のケース2が熱変形して貫通孔6aと貫通孔7aとの距離が変化するおそれがある。そこで、支持構造100では、触媒コンバータ1を、支持部材10を介して車両9に支持することで、振動を抑制すると共に、熱変形による貫通孔6aと貫通孔7aとの距離の変化を吸収している。
【0025】
次に、
図3から
図6Bを参照して、支持部材10について詳細に説明する。
図3は、支持部材10の中心線を含む平面による断面図である。
図4は、
図3におけるIV部の拡大図である。
図5Aは、第1支持部材11の平面図である。
図5Bは、
図5Aにおける側面の断面図である。
図6Aは、第2支持部材12の平面図である。
図6Bは、
図6Aにおける側面の断面図である。
【0026】
図3に示すように、支持部材10は、一対の第1支持部材11と、第2支持部材12と、ワッシャ14と、カラー15と、ボルト16と、を備える。
【0027】
第1支持部材11は、弾性材料によって筒状に形成される。ここでは、第1支持部材11は円筒状に形成されるが、筒状であればよいので、円筒状に限られない。第1支持部材11は、ステー6を厚さ方向から挟み込んで支持する。第1支持部材11の一方は、車両9に当接する。第1支持部材11の厚さT1(
図5B参照)は、例えば10.0[mm]である。第1支持部材11は、内周を中心軸に沿って軸方向に貫通する貫通孔11aを有する。なお、ステー6は、弾性変形可能な板ばね部材であり、触媒コンバータ1に加わる振動を車両9側に伝達しないように吸収する機能がある。
【0028】
第2支持部材12は、弾性材料によって第1支持部材11とは別体に第1支持部材11と同軸の筒状に形成される。ここでは、第2支持部材12は円筒状に形成されるが、筒状であればよいので、円筒状に限られない。第2支持部材12は、一対の第1支持部材11の間に挟まれるように設けられる。第2支持部材12は、ステー6の貫通孔6aの内周を支持する。第2支持部材12の厚さT2(
図6B参照)は、例えば6.0[mm]である。第2支持部材12は、内周を中心軸に沿って軸方向に貫通する貫通孔12aを有する。貫通孔12aの内径は、貫通孔11aの内径と同じである。第2支持部材12と貫通孔6aの内周面との間には所定の隙間Cが設けられている(
図4参照)。
【0029】
第2支持部材12は、第1支持部材11よりも外径が小さい。具体的には、第1支持部材11の外径D1(
図5A参照)は、例えば36.0[mm]であるのに対して、第2支持部材12の外径D2(
図6A参照)は、例えば29.0[mm]である。第1支持部材11と第2支持部材12との外径の違いにより、支持部材10には溝部13が形成される。
【0030】
溝部13は、第2支持部材12の外周の全周にわたって形成される。溝部13には、ステー6が差し込まれる。
図4に示すように、溝部13の軸方向の高さHgは、ボルト16が締結されておらず圧縮されていない状態の第2支持部材12の厚さT2と略同一又は高く、例えば6.0[mm]である。溝部13の径方向の長さ(深さ)Dgは、3.0~6.0[mm]である。これにより、面取り部6b,6cが形成されても、溝部13におけるステー6の径方向の長さDcを、3.0[mm]以上に維持することができる。よって、ステー6と当接して支持する第1支持部材11の面積を、充分に確保できるので、ステー6を安定して支持することができる。
【0031】
第1支持部材11及び第2支持部材12によってステー6を支持した状態においては、第1支持部材11及び第2支持部材12が互いに上下に当接する一対の境界面と、ステー6の上端面及び下端面とが面方向に面一となっている。なお、第1支持部材11及び第2支持部材12によってステー6を支持した状態とは、ボルト16が締結された締結状態のことである。
【0032】
図3に示すように、ワッシャ14は、一対の第1支持部材11のうち車両9と当接しない一方におけるステー6と反対の面に当接する。ワッシャ14は、環状の薄板状に形成される。ワッシャ14の外径は、第1支持部材11の外径と略同一である。ワッシャ14の内径は、第1支持部材11及び第2支持部材12の内径よりも小さく、後述するカラー15の内径と略同一である。これにより、ワッシャ14が第1支持部材11の全面に当接するので、一対の第1支持部材11及び第2支持部材12を軸方向に均等に圧縮することができる。
【0033】
カラー15は、第1支持部材11と第2支持部材12との内周を挿通する。カラー15は、円筒状に形成される。カラー15の外径は、第1支持部材11及び第2支持部材12の内径と略同一である。カラー15の内径は、ワッシャ14の内径と略同一であり、後述するボルト16の外径よりも大きい。カラー15の軸方向の一端はワッシャ14の軸方向端部に当接し、他端は車両9に当接する。カラー15は、一対の第1支持部材11及び第2支持部材12の圧縮量を規定通りの圧縮量に設定する。
【0034】
ボルト16は、カラー15の内周を挿通して車両9に締結される。ボルト16の頭部16aは、ワッシャ14を車両9に対して固定する。即ち、ボルト16は、ワッシャ14の軸方向の位置を規定する。ボルト16が締結されることで、一対の第1支持部材11及び第2支持部材12の圧縮量を規定通りの圧縮量にすると共に、溝部13に差し込まれるステー6,7を一対の第1支持部材11の間に挟んで支持することができる。
【0035】
次に、支持構造100の作用について説明する。
【0036】
車両9の走行時に振動が加わると、触媒コンバータ1にその振動が伝達される。このとき、まず、ステー6の弾性変形によってその振動を抑制しつつ、更に、一対の第1支持部材11がステー6を挟んで支持すると共に、第2支持部材12がステー6の貫通孔6aの内周を支持している。第1支持部材11は、ステー6を軸方向に弾性支持し、第2支持部材12は、ステー6を軸方向と垂直な径方向に弾性支持する。そのため、車両9から触媒コンバータ1へ伝達される振動を段階的に吸収することができる。
【0037】
また、エンジンから高温の排気ガスが流入すると、触媒コンバータ1のケース2が熱変形して貫通孔6aと貫通孔7aとの距離が変化することがある。このとき、第2支持部材12がステー6の貫通孔6aの内周を支持しているので、熱変形による貫通孔6aと貫通孔7aとの距離の変化を吸収することができる。
【0038】
即ち、触媒コンバータ1に加わる振動は、ステー6の弾性変形によって吸収され、ステー6の他端部を上下に挟み込んだ第1支持部材11の弾性変形によってステー6の厚み方向の振動が吸収され、ステー6の他端部に設けられる貫通孔6aの内周側に配置される第2支持部材12の弾性変形によってステー6の長手方向の振動が吸収される。
【0039】
以上のように、支持部材10は、ステー6を挟み込んで支持する一対の第1支持部材11と、一対の第1支持部材11の間に第1支持部材11とは別体に設けられ貫通孔6aの内周側を支持する第2支持部材12と、を備える。そのため、支持部材10によって触媒コンバータ1を車両9に支持することで、第1支持部材11がステー6を軸方向(第1の方向)に弾性支持し、第2支持部材12がステー6を径方向(第2の方向)に弾性支持する。したがって、軸方向と当該軸方向と垂直な径方向との少なくとも二方向の制振を可能にできる。
【0040】
また、ステー6を径方向(第2の方向)に弾性支持する第2支持部材12は、一対の第1支持部材11とは別体に形成されるため、ステー6が径方向(第2の方向)に振動や弾性変形などにより動いた際に、第1支持部材11はステー6に引っ張られることがない。よって、第1支持部材11に亀裂が生じにくくなる。
【0041】
更に、ステー6には面取り部6b,6cが形成されるため、経年劣化などよりステー6が第1支持部材11又は第2支持部材12に押し込まれたときに角部が出ないので、第1支持部材11又は第2支持部材12の境界面(互いに上下で当接する面)に亀裂が生じにくくなる。
【0042】
そして、本実施形態によれば、上述したとおり、支持部材10によって上記軸方向と当該軸方向と垂直な径方向との少なくとも二方向の制振を可能にしている。また、第1支持部材11と第2支持部材12とを別々に構成して組み合わせたことで、ステー6から受ける振動に対して支持部材10の破壊等を防止でき、耐久性を高めることできる。即ち、高い振動耐久性と優れた制振性とを両立した支持構造100を実現することができる。
【0043】
なお、本実施形形態の支持構造100では、触媒コンバータ1を二つのステー6,7を使って二箇所で支持する構造(
図2参照)を採用しており、
図2における下側の締結部分に支持部材10を適用している。このときのボルト16による締め付け方向は、触媒コンバータ1の触媒の径方向に沿っている。これにより、触媒コンバータ1における触媒の径方向における振動を第1支持部材11によって吸収し、この触媒の径方向に交差する方向の振動、特に直交する方向の振動を第2支持部材12によって吸収することができる。なお、ステー7側の締結部分に支持部材10を適用してもよい。この場合、振動吸収性能を更に高めることができる。
【0044】
また、支持部材10によって車両9の走行時における振動対策ができるので、触媒コンバータ1の構造での振動対策を軽減することができる。したがって、触媒コンバータ1の軽量化が可能であると共に、コストの削減が可能である。
【0045】
次に、
図7及び
図8を参照して、支持部材10の面取り部6b,6cの大きさについて説明する。
図7は、支持部材10の耐荷重試験について説明する図である。
図8は、支持部材10の耐荷重試験における押し込み量と荷重との関係を説明するグラフである。
図8では、横軸は押し込み量S[mm]であり、縦軸は荷重L[N]である。
【0046】
図7に示すように、支持部材10の耐荷重試験は、支持部材10がステー6を支持した状態で、試験機50がステー6を軸方向に押圧して、第1支持部材11の破断限界を確認するものである。ここでは、比較例としての面取り部6b,6cが形成されないステー6と、面取り部6b,6cの径方向の長さが0.2[mm](C0.2)のステー6と、面取り部6b,6cの径方向の長さが0.5[mm](C0.5)のステー6と、の三種類を用いて耐荷重試験を行った。
【0047】
図8では、ステー6に面取り部6b,6cが形成されない場合の試験結果を破線で示し、ステー6に径方向の長さが0.2[mm](C0.2)の面取り部6b,6cが形成される場合を一点鎖線で示し、ステー6に径方向の長さが0.5[mm](C0.5)の面取り部6b,6cが形成される場合を一点鎖線で示す。
【0048】
図8に示すように、面取り部6b,6cが形成されないステー6は、押し込み量SがS1[mm]のときに破断した。このときの荷重Lは、L1[N]であった。
【0049】
これに対して、面取り部6b,6cの径方向の長さが0.2[mm](C0.2)のステー6は、押し込み量SがS1よりも大きなS2[mm]のときに破断した。このときの荷重Lは、L1よりも大きなL2[N]であった。
【0050】
更に、面取り部6b,6cの径方向の長さが0.5[mm](C0.5)のステー6は、押し込み量SがS2よりも更に大きなS3[mm]のときに破断した。このときの荷重Lは、L2よりも更に大きなL3[N]であった。
【0051】
このように、ステー6の面取り部6b,6cの径方向の長さを0.2~0.5[mm](C0.2~C0.5)にすることで、車両9から触媒コンバータ1に伝達される振動を吸収できると共に、支持部材10の耐久性を向上させることができる。また、ステー6の面取り部6b,6cの径方向の長さを0.3~0.5[mm](C0.3~C0.5)にすることで、支持部材10の耐久性を更に向上させることができる。
【0052】
次に、
図9を参照して、支持構造100が適用される変形例に係る触媒コンバータ101について説明する。
図9は、支持構造100が適用される変形例に係る触媒コンバータ101を示す図である。
【0053】
触媒コンバータ101は、ケース102と、ケース102に収容される少なくとも一つの触媒(図示省略)と、を有する。ケース102は、触媒コンバータ1から放出する熱を遮熱するための遮熱カバーであり、触媒コンバータ101の本体に固定される。なお、ケース102は、触媒コンバータ101の外周面に対して所定の隙間を設けて配置される。これにより、触媒コンバータ101とケース102との間に空気層が形成され、断熱効果を高めることができる。
【0054】
ケース102は、一端と他端とが屈曲した略筒部材である。ケース102の一端には、入口側開口部3aが開口する。ケース102の他端には、出口側開口部5bが開口する。ケース102は、入口側筒部103と、出口側筒部105と、板ばね部材としてのステー(図示省略)と、を有する。
【0055】
入口側筒部103は、排気ガスが流入する入口側開口部3aを有する。入口側筒部103は、排気ガスの流れを所定角度(例えば、150°)屈曲させるように、即ち略U字型の流路を形成するように構成される。入口側筒部103は、排気ガスの流れ方向に沿って分割して形成された2つの金属製板状部材を溶接などによって接合することで形成される。
【0056】
出口側筒部105は、一端が入口側筒部103に溶接などによって接合され、他端が排気側管路(図示省略)に接続される。出口側筒部105は、出口側開口部5bを有する。出口側筒部105は、触媒を通過した排気ガスを、排気ガスを外部へ排出する排気管(図示省略)に導く。出口側筒部105は、排気ガスの流れ方向に沿って分割して形成された2つの金属製板状部材を溶接などによって接合することで形成される。
【0057】
このようなケース102で覆われた触媒コンバータ101は、ケース102で覆われていない触媒コンバータと比べて、エンジンから受ける振動を受けて複雑に振動するが、本実施形態の支持構造100を適用した場合、即ち支持部材10を介して車両9に支持した場合に、軸方向と当該軸方向と垂直な径方向との二方向の制振を可能にできる。
【0058】
次に、
図10を参照して、支持構造100が適用される他の変形例に係る触媒コンバータ201について説明する。
図10は、支持構造100が適用される他の変形例に係る触媒コンバータ201を示す図である。
【0059】
触媒コンバータ1は、ケース2と、ケース2に収容される複数の触媒(図示省略)と、を有する。
【0060】
ケース2は、入口側筒部203と、中間筒部4と、出口側筒部5と、板ばね部材としてのステー6,7と、を有する。
【0061】
入口側筒部203は、内部にTWC(三元触媒)を収容する。入口側筒部203は、排気ガスが流入する入口側開口部3aを有する。入口側筒部203は、排気ガスの流れを所定角度(例えば、90°)屈曲させるように、即ち略L字型の流路を形成するように構成される。入口側筒部203は、排気ガスの流れ方向に沿って対称に分割して形成された2つの金属製板状部材を溶接などによって接合することで形成される。
【0062】
このような触媒コンバータ201では、図示しないが、ケース2内に第1触媒と第2触媒とが収容され、具体的には、第1触媒を流れる排気ガスの方向を第1方向とした場合、第1方向に沿って流れる排気ガスを浄化する第1触媒と、第1触媒を通過した排気ガスであって第1方向と交差する第2方向に沿って流れる排気ガスを浄化する第2触媒と、が配置されることになる。
【0063】
更に、
図10に示す触媒コンバータ201は、第1触媒及び第2触媒が、少なくともいずれか一方が他方に対して第1方向及び第2方向と直交する第3方向に離れるように配置される。ここでは、触媒コンバータ201の上流側部分となる第1触媒を収容する部分が、その下流側部分である第2触媒を収容する部分と比べて、エンジンから離れる方向にシフトして配置される。このとき、第2触媒を収容する触媒コンバータ201の下流側部分とエンジン本体とで挟まれた隙間には、後述するEGR装置30が配置され、このEGR装置30は、触媒コンバータ201のうち第2触媒を通過した排気ガスの流路を形成する排気管に接続される。
【0064】
このように
図10に示す触媒コンバータ201は、全体形状が複雑な形状を有しているため、エンジンから受ける振動も複雑な伝達となる。そのため、本実施形態の支持部材10を用いることで、触媒コンバータ201における複雑な振動を効果的に抑制することができる。
【0065】
図10に示すように、入口側筒部203は、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置30との干渉を防止するために、中間筒部4の中心軸からEGR装置30の反対側にオフセットされている。この場合には、EGR装置30は、エンジンと触媒コンバータ201の間に配置される。
【0066】
このような触媒コンバータ201を支持部材10を介して車両9に支持した場合にも同様に、軸方向と当該軸方向と垂直な径方向との少なくとも二方向の制振を可能にできる。なお、このような触媒コンバータ201に上述した
図9に示す遮熱カバーを適用した場合にも、本実施形態の支持構造100を適用することにより、少なくとも二方向の制振を可能にできる。
【0067】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0068】
貫通孔6aを有するステー6を備える触媒コンバータ1,101,201を車両9に支持するための支持部材10は、弾性材料によって形成されステー6を挟み込んで支持するように一対設けられ一方が車両9側に当接する第1支持部材11と、一対の第1支持部材11の間に設けられ、弾性材料によって第1支持部材11とは別体に形成され貫通孔6aの内周側を支持する第2支持部材12と、を備える。
【0069】
この構成では、支持部材10は、ステー6を挟み込んで支持する一対の第1支持部材11と、一対の第1支持部材11の間に第1支持部材11とは別体に設けられ貫通孔6aの内周側を支持する第2支持部材12と、を備える。そのため、支持部材10によって触媒コンバータ1,101,201を車両9に支持することで、第1支持部材11がステー6を軸方向(第1の方向)に弾性支持し、第2支持部材12がステー6を径方向(第2の方向)に弾性支持する。したがって、軸方向と当該軸方向と垂直な径方向との少なくとも二方向の制振を可能にできる。
【0070】
また、触媒コンバータ1,101,201と、当該触媒コンバータ1,101,201を車両9に支持するための支持部材10と、を備える支持構造100であって、触媒コンバータ1,101,201は、貫通孔6aを有するステー6を備え、支持部材10は、外周の全周に形成されてステー6が差し込まれる溝部13を有し、ステー6は、溝部13に差し込まれる先端部に面取り部6b,6cを有する。
【0071】
この構成では、支持部材10は、ステー6が差し込まれる溝部13を有する。そのため、支持部材10によって触媒コンバータ1,101,201を車両9に支持することで、ステー6を溝部13の軸方向(第1の方向)に弾性支持すると共に、ステー6を溝部13の径方向(第2の方向)へ弾性支持する。したがって、軸方向と当該軸方向と垂直な径方向との少なくとも二方向の制振を可能にできる。
【0072】
また、ステー6を径方向(第2の方向)に弾性支持する第2支持部材12は、一対の第1支持部材11とは別体に形成されるため、ステー6が径方向(第2の方向)に振動や弾性変形などにより動いた際に第1支持部材11はステー6に引っ張られることがない。よって、第1支持部材11に亀裂が生じにくくなる。
【0073】
更に、ステー6には面取り部6b,6cが形成されるため、経年劣化などよりステー6が第1支持部材11又は第2支持部材12に押し込まれたときに角部が出ないので、第1支持部材11又は第2支持部材12に亀裂が生じにくくなる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0075】
例えば、第1支持部材11と第2支持部材12とを同一の弾性材料によって形成してもよいし、別々の弾性材料によって形成してもよい。この場合、第1支持部材11の弾性力と第2支持部材12の弾性力とを同一の弾性力としてもよいし、互いに異なる弾性力としてもよい。例えば、第1支持部材11がステー6から受ける振動入力方向での弾性力と、第2支持部材12がステー6から受ける振動入力方向での弾性力を同一としてもよいし、ステー6から受けるそれぞれの振動方向で弾性力に差をつけてもよい。このように本実施形態では、第1支持部材11と第2支持部材12とを別々に構成したことで、支持構造100の破壊防止、即ち高い振動耐久性を確保すると共に、複雑化する触媒コンバータ1からの振動入力を支持構造100によってより有効に吸収することができる。
【0076】
また、例えば、一対の第1支持部材11とステー6とを上下で挟んだ状態において、第2支持部材12とステー6の端部との間に所定の隙間(クリアランス)Cを設けてもよい(
図4参照)。この場合には、第1支持部材11とステー6との間での摩擦によってステー6から第2支持部材12側に入力される振動を抑えつつ、更に、ステー6が第1支持部材11と共に大きく振動した場合にステー6の端部と第2支持部材12とを当接させることで、振動を段階的に抑えることができる。これにより、比較的小さい振動は、第1支持部材11だけで振動吸収を行いつつ、比較的大きい振動は、第1支持部材11と共に第2支持部材12による吸収も可能となる。これにより、ステー6が面方向(長手方向)にスライド移動したときの衝撃吸収をより効果的に吸収できるだけでなく、支持構造100における耐久性についても高めることができ、更に、第2支持部材12とステー6の端部との間には所定の隙間(クリアランス)Cを設けておくことで、ステー6を支持固定する際(締結時)の組み付けも容易となる。
【0077】
更に、上述した実施形態では、ステー6に面取り部6b,6cを設けた構造を例示して説明しているが、面取り部6b、6cが設けられていないステー6に対しても、本実施形態は高い振動吸収効果と共に高い耐久性を得ることができる。
【符号の説明】
【0078】
100 支持構造
1,101,201 触媒コンバータ
2 ケース
6 ステー(板ばね部材)
6a 貫通孔
6b 面取り部
6c 面取り部
8 取付部
9 車両
10 支持部材
11 第1支持部材
12 第2支持部材
13 溝部
14 ワッシャ
15 カラー
16 ボルト
【手続補正書】
【提出日】2021-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する取付部を備える触媒コンバータを車両に支持するための支持部材であって、
弾性材料によって形成され前記取付部を挟み込んで支持するように一対設けられ一方が前記車両側に当接する第1支持部材と、
一対の前記第1支持部材の間に設けられ、弾性材料によって前記第1支持部材とは別体に形成され前記貫通孔の内周側を支持する第2支持部材と、
を備え、
前記取付部は、一端部が前記触媒コンバータに固定される板ばね部材の他端部に設けられ、
前記触媒コンバータに加わる振動は、前記板ばね部材の弾性変形によって吸収され、前記板ばね部材の他端部を上下に挟み込んだ前記第1支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の厚み方向の振動が吸収され、前記板ばね部材の他端部に設けられる前記貫通孔の内周側に配置される前記第2支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の長手方向の振動が吸収される、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項2】
請求項1に記載の支持部材であって、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材によって前記板ばね部材を支持した状態においては、前記第1支持部材及び前記第2支持部材が互いに上下に当接する一対の境界面と、前記板ばね部材の上端面及び下端面とが面方向に面一となっている、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の支持部材であって、
前記第2支持部材と前記貫通孔の内周面との間には所定の隙間が設けられている、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の支持部材であって、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、筒状であり、
前記第2支持部材は、前記第1支持部材よりも外径が小さく、
前記第2支持部材は、一対の前記第1支持部材に挟み込まれて当該一対の前記第1支持部材と同軸に固定される、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項5】
請求項4に記載の支持部材であって、
一対の前記第1支持部材のうち前記車両と当接しない他方における前記取付部と反対の面に当接するワッシャと、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との内周を挿通し前記ワッシャの軸方向端部に当接するカラーと、
前記カラーの内周を挿通して前記ワッシャを前記車両に対して固定するボルトと、
を更に備える、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項6】
触媒コンバータと、当該触媒コンバータを車両に支持するための支持部材と、を備える触媒コンバータの支持構造であって、
前記触媒コンバータは、貫通孔を有する取付部を備え、
前記支持部材は、
弾性材料によって形成され前記取付部を挟み込んで支持するように一対設けられ一方が前記車両側に当接する第1支持部材と、
一対の前記第1支持部材の間に設けられ、弾性材料によって前記第1支持部材とは別体に形成され前記貫通孔の内周側を支持する第2支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、外周の全周に形成されて前記取付部が差し込まれる溝部を有し、
前記取付部は、一端部が前記触媒コンバータに固定される板ばね部材の他端部に設けられ、
前記触媒コンバータに加わる振動は、前記板ばね部材の弾性変形によって吸収され、前記板ばね部材の他端部を上下に挟み込んだ前記第1支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の厚み方向の振動が吸収され、前記板ばね部材の他端部に設けられる前記貫通孔の内周側に配置される前記第2支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の長手方向の振動が吸収される、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項7】
請求項6に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材によって前記板ばね部材を支持した状態においては、前記第1支持部材及び前記第2支持部材が互いに上下に当接する一対の境界面と、前記板ばね部材の上端面及び下端面とが面方向に面一となっている、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記第2支持部材と前記貫通孔の内周面との間には所定の隙間が設けられている、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項9】
触媒コンバータと、当該触媒コンバータを車両に支持するための支持部材と、を備える触媒コンバータの支持構造であって、
前記触媒コンバータは、貫通孔を有する取付部を備え、
前記支持部材は、外周の全周に形成されて前記取付部が差し込まれる溝部を有し、
前記取付部は、前記溝部に差し込まれる先端部に面取り部を有し、
前記支持部材は、
弾性材料によって形成され前記取付部を挟み込んで支持するように一対設けられ一方が前記車両に当接する第1支持部材と、
一対の前記第1支持部材の間に設けられ、弾性材料によって前記第1支持部材とは別体に形成され前記貫通孔の内周を支持する第2支持部材と、
を備え、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、同軸の筒状であり、
前記溝部は、前記第2支持部材の外周の全周に形成され、
前記取付部は、一端部が前記触媒コンバータに固定される板ばね部材の他端部に設けられ、
前記触媒コンバータに加わる振動は、前記板ばね部材の弾性変形によって吸収され、前記板ばね部材の他端部を上下に挟み込んだ前記第1支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の厚み方向の振動が吸収され、前記板ばね部材の他端部に設けられる前記貫通孔の内周側に配置される前記第2支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の長手方向の振動が吸収される、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項10】
請求項9に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記溝部における前記取付部の径方向の長さは3.0mm以上である、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記溝部の径方向の長さは3.0mm~6.0であり、
前記面取り部の径方向の長さは、0.1mm~0.5mmである、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項12】
請求項11に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記面取り部の径方向の長さは、0.2mm~0.5mmである、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項13】
請求項12に記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記面取り部の径方向の長さは、0.3mm~0.5mmである、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか一つに記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記支持部材は、
一対の前記第1支持部材のうち前記車両と当接しない他方の前記第1支持部材における前記取付部と反対の面に当接するワッシャと、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との内周を挿通し前記ワッシャの軸方向端部に当接するカラーと、
前記カラーの内周を挿通して前記ワッシャを前記車両に対して固定するボルトと、
を更に備える、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか一つに記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材によって前記取付部を支持した状態においては、前記第1支持部材及び前記第2支持部材が互いに上下に当接する一対の境界面と、前記取付部の上端面及び下端面とが面方向に面一となっている、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか一つに記載の触媒コンバータの支持構造であって、
前記第2支持部材と前記貫通孔の内周面との間には所定の隙間が設けられている、
ことを特徴とする触媒コンバータの支持構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明のある態様によれば、貫通孔を有する取付部を備える触媒コンバータを車両に支持するための支持部材であって、弾性材料によって形成され前記取付部を挟み込んで支持するように一対設けられ一方が前記車両側に当接する第1支持部材と、一対の前記第1支持部材の間に設けられ、弾性材料によって前記第1支持部材とは別体に形成され前記貫通孔の内周側を支持する第2支持部材と、を備え、前記取付部は、一端部が前記触媒コンバータに固定される板ばね部材の他端部に設けられ、前記触媒コンバータに加わる振動は、前記板ばね部材の弾性変形によって吸収され、前記板ばね部材の他端部を上下に挟み込んだ前記第1支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の厚み方向の振動が吸収され、前記板ばね部材の他端部に設けられる前記貫通孔の内周側に配置される前記第2支持部材の弾性変形によって前記板ばね部材の長手方向の振動が吸収される。