(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135214
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】演奏制御装置、演奏制御方法及び演奏制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/18 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B25J9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034873
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】永塚 正樹
(72)【発明者】
【氏名】奥 成郁
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS36
3C707BS27
3C707ES01
3C707ES04
3C707HS27
3C707JU02
3C707KS39
3C707KT15
3C707LS00
3C707LV14
3C707MT01
3C707MT14
3C707WA03
3C707WM11
3C707WM25
(57)【要約】
【課題】ユーザの簡単な操作入力によってロボットに楽器を演奏させることができる演奏制御装置を提供する。
【解決手段】演奏制御装置は、ロボットの手部の位置及びロボットの手部が楽器を操作するタイミングを含む演奏モーションを表す図形(50a~54)を表示装置に表示する表示制御部と、ユーザによる図形(50a~54)の操作入力に応じて、演奏モーションを編集する編集部と、編集部によって編集された演奏モーションの情報に基づいて、ロボットを動作させるジョブプログラムを生成するジョブ生成部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに楽器を演奏させるための演奏制御装置であって、
前記ロボットの手部の位置及び前記ロボットの手部が楽器を操作するタイミングを含む演奏モーションを表す図形を表示装置に表示する表示制御部と、
ユーザによる前記図形の操作入力に応じて、前記演奏モーションを編集する編集部と、
前記編集部によって編集された前記演奏モーションの情報に基づいて、前記ロボットを動作させるジョブプログラムを生成するジョブ生成部と、を備える演奏制御装置。
【請求項2】
前記ロボットの手部が楽器を操作するタイミングは、前記ロボットの少なくとも一つの指部が楽器を押すタイミングであることを特徴とする請求項1に記載の演奏制御装置。
【請求項3】
前記演奏モーションは、前記ロボットの複数の指部のうち楽器を押す少なくとも1つの指部の選択を含むことを特徴とする請求項2に記載の演奏制御装置。
【請求項4】
前記演奏モーションは、前記ロボットの少なくとも1つの指部が楽器を押した状態の持続時間を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の演奏制御装置。
【請求項5】
前記演奏モーションは、前記ロボットの少なくとも1つの指部が楽器を押すタイミングの前に、前記ロボットの少なくとも1つの指部が楽器を押す動作を開始してから実際に楽器を押すまでの前処理時間を含むことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一項に記載の演奏制御装置。
【請求項6】
前記演奏モーションは、前記ロボットの手部を移動させるタイミングを含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の演奏制御装置。
【請求項7】
前記演奏モーションは、演奏に無関係なロボットの一部を動作させる振付けモーションを含むことを特徴とする1ないし6のいずれか一項に記載の演奏制御装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記編集部によって編集された前記演奏モーションの情報に基づいて、前記表示装置に押下中の指部の音階を表示することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか一項に記載の演奏制御装置。
【請求項9】
前記演奏制御装置は、前記編集部によって編集された前記演奏モーションの情報に基づいて、シミュレーション用の音を鳴らすようにサウンドシステムを制御するサウンド制御部を備えることを特徴とする請求項8に記載の演奏制御装置。
【請求項10】
ロボットに楽器を演奏させるための演奏制御方法であって、
前記ロボットの手部の位置及び前記ロボットの手部が楽器を操作するタイミングを含む演奏モーションを表す図形を表示装置に表示する表示ステップと、
ユーザによる前記図形の操作入力に応じて、前記演奏モーションを編集する編集ステップと、
前記編集部によって編集された前記演奏モーションの情報に基づいて、前記ロボットを動作させるジョブプログラムを生成するジョブ生成ステップと、を備える演奏制御方法。
【請求項11】
ロボットに楽器を演奏させるための演奏制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記ロボットの手部の位置及び前記ロボットの手部が楽器を操作するタイミングを含む演奏モーションを表す図形を表示装置に表示する表示機能と、
ユーザによる前記図形の操作入力に応じて、前記演奏モーションを編集する編集機能と、
前記編集部によって編集された前記演奏モーションの情報に基づいて、前記ロボットを動作させるジョブプログラムを生成するジョブ生成機能と、を実現させる演奏制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに楽器を演奏させるための演奏制御装置、演奏制御方法及び演奏制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロボットに楽器を演奏させるための演奏制御装置が開示されている(特許文献1参照)。演奏制御装置は、演奏制御プログラムが組み込まれたコンピュータからなる。
【0003】
演奏制御装置は、演奏制御プログラムを実行することにより、音楽に応じた多数のモーション(姿勢)指令を順次ロボットに送信する。ロボットは、演奏制御装置から送信された多数のモーション(姿勢)指令に基づいて、その手部と指部を順次動作させる。具体的には、ロボットは、その手部を楽器(ピアノの鍵盤)の所定位置まで移動させ、指部で楽器(ピアノの鍵盤)を押す。これにより、ロボットが楽器を演奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の演奏制御装置においては、ユーザが楽器の各音階に対応するロボットのモーション(姿勢)をあらかじめ登録しておき、ユーザが音楽に応じた多数のモーション(姿勢)指令を作成する必要がある。
【0006】
このため、例えば指が3本あるロボットで2オクターブ(24音)の音階を持つ楽器を演奏するためには、72種類のモーション(姿勢)を登録しておく必要があり、全姿勢を管理するのが大変であるという課題がある。また、ロボットの操作入力に精通しているユーザしかモーション(姿勢)指令を作成できないという課題もある。
【0007】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、ユーザの簡単な操作入力によってロボットに楽器を演奏させることができる演奏制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ロボットに楽器を演奏させるための演奏制御装置であって、前記ロボットの手部の位置及び前記ロボットの手部が楽器を操作するタイミングを含む演奏モーションを表す図形を表示装置に表示する表示制御部と、ユーザによる前記図形の操作入力に応じて、前記演奏モーションを編集する編集部と、前記編集部によって編集された前記演奏モーションの情報に基づいて、前記ロボットを動作させるジョブプログラムを生成するジョブ生成部と、を備える演奏制御装置である。
【0009】
本発明の他の態様は、ロボットに楽器を演奏させるための演奏制御方法であって、前記ロボットの手部の位置及び前記ロボットの手部が楽器を操作するタイミングを含む演奏モーションを表す図形を表示装置に表示する表示ステップと、ユーザによる前記図形の操作入力に応じて、前記演奏モーションを編集する編集ステップと、前記編集部によって編集された前記演奏モーションの情報に基づいて、前記ロボットを動作させるジョブプログラムを生成するジョブ生成ステップと、を備える演奏制御方法である。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、ロボットに楽器を演奏させるための演奏制御プログラムであって、コンピュータに、前記ロボットの手部の位置及び前記ロボットの手部が楽器を操作するタイミングを含む演奏モーションを表す図形を表示装置に表示する表示機能と、ユーザによる前記図形の操作入力に応じて、前記演奏モーションを編集する編集機能と、前記編集部によって編集された前記演奏モーションの情報に基づいて、前記ロボットを動作させるジョブプログラムを生成するジョブ生成機能と、を実現させる演奏制御プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロボットの手部に焦点を当てたユーザインターフェースを使用して演奏モーションを作成するので、ロボットの手部の位置や手部の楽器操作のタイミングが分かり易く、ユーザの簡単な操作入力によってロボットに楽器を演奏させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の演奏制御装置によって制御されるロボットの斜視図である。
【
図3】本実施形態の演奏制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態の演奏制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図5】演奏モーションを表す図形の例を示す図である。
【
図6】演奏モーションを表す図形の例を示す図である。
【
図7】演奏モーションを表す図形とロボットの指部の動作との対応関係を示す図である(
図7(a)は演奏モーションを表す図形を示し、
図7(b1)~(b3)はロボットの指部の動作を示す)。
【
図8】演奏モーションを表す図形とロボットの指部の動作との対応関係を示す図である(
図8(a)は演奏モーションを表す図形を示し、
図8(b1)(b2)はロボットの指部の動作を示す)。
【
図9】演奏モーションを表す図形とロボットの動作との対応関係を示す図である(
図9(a)(b)は演奏モーションを表す図形を示し、
図9(c1)(c2)はロボットの指部の動作を示す)。
【
図10】
図10(a)は楽譜を表す図形の例を示し、
図10(b)は演奏モーションを表す図形の例を示す。
【
図12】ロボットの手部の移動範囲を示す図である。
【
図13】
図13(a)はロボットの左側の手部が指板を持つ例を示し、
図13(b)はロボットの右側の手部が指板を持つ例を示す。
【
図15】ロボットの手部の移動範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の演奏制御装置、演奏制御方法及び演奏制御プログラムを説明する。ただし、本発明は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
<ロボットの構成>
【0014】
図1は、本実施形態の演奏制御装置21によって制御されるロボット1の斜視図である。ロボット1は、例えば人間型ロボットであり、腰部2と、腰部2に腰関節3を介して連結される胴部4と、胴部4に肩関節5を介して連結される左右(ロボット側からみ見た左右)2本の腕部6と、胴部4に首関節10を介して連結される頭部11と、を備える。各腕部6は、上腕部7と、上腕部7に肘関節9を介して連結される下腕部8と、を備える。下腕部8には、手首関節12を介して手部14が連結される。手部14は、手平部13(
図2参照)と、手平部13に指関節16を介して連結される指部15を有する。ロボット1の各関節は、サーボモータによって駆動される。なお、ロボットは、手部14を有して楽器を演奏するものであれば、人間型ロボットに限定されるものではない。
【0015】
図2は、ロボット1の手部14の詳細図である。手平部13には、円盤17を回転させるサーボモータ18が設けられる。各円盤17と各指部15は、ロッド19を介して連結される。サーボモータ18を駆動させることによって、指部15が指関節16を中心にして回転し、指部15が楽器20を押し下げたり、楽器20から指部15を離したりする。14bは楽器の保持部である。なお、
図2では、複数本(3本)の指部15が動作可能に構成されているが、動作可能な指部15は1本でもよい。また、手部14は楽器に合わせて適宜構成すればよい。
【0016】
図1に示すように、楽器20は指板20aを有する。楽器20は、例えば電子楽器である。この楽器20では、ロボット1の手部14の指部15が指板20aを押すだけで音が出て、指部15が指板20aを押す位置を変えることで音階が変わる。なお、楽器は電子楽器に限られることはなく、ピアノ等の鍵盤楽器でもよいし、リコーダ等の吹奏楽器でもよく、ギター等の弦楽器でもよいし、太鼓等の打楽器でもよい。
【0017】
ロボット1は、演奏制御装置21によって制御される。演奏制御装置21は、人間と同様にロボット1が音楽に合わせて楽器を演奏するように、ロボット1の各関節のサーボモータ18を制御する。すなわち演奏制御装置21は、ロボット1の手部14が楽器20に沿って移動し(この実施形態では、手部14が指板20aに沿って移動し)、かつロボット1の手部14が楽器20を操作する(この実施形態では、指部15が指板20aを押す)ように、ロボット1の各関節のサーボモータ18を制御する。なお、ロボット1の手部14による楽器20の操作は、上記実施形態に限られることはなく、例えば、鍵盤楽器の場合、ロボット1の指部15が鍵盤を押してもよく、吹奏楽器の場合、ロボット1の指部15が音孔を塞いでもよく、弦楽器の場合、ロボット1の手部14が直接又は弓等を用いて弦を引いてもよく、打楽器の場合、ロボット1の手部14が直接又はばち等を用いて打楽器を叩いてもよい。
<演奏制御装置のハードウェア構成>
【0018】
図3は、本実施形態の演奏制御装置21のハードウェア構成例を示すブロック図である。演奏制御装置21のハードウェアは、例えばパーソナルコンピュータ等の汎用情報処置装置である。
【0019】
図3に示すように、演奏制御装置21は、CPU22、ROM23、RAM24、表示装置25、キーボード26、マウス27、記憶装置28、通信インターフェース29、VRAM30、キースキャン回路31、マウススキャン回路32、音源部33、サウンドシステム34、バス35を備える。表示装置25は、VRAM30を介してバス35に接続される。キーボード26は、キースキャン回路31を介してバス35に接続される。マウス27は、マウススキャン回路32を介してバス35に接続される。マウス27は、タブレット、タッチスクリーン、タッチパネル等であってもよい。
【0020】
表示装置25は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。表示装置25には、後述する演奏モーションを表す図形が表示される。ユーザは、マウス27を操作することにより、表示装置25上に表示されるカーソルを移動させ、指示を行うことができる。マウススキャン回路32は、マウス27の移動及び操作を検出し、バス35を介して検出信号をCPU22に出力する。キーボード26は、文字、数字、記号等を入力するためのキーを有する。キースキャン回路31は、キーボード26のオン・オフを検出し、検出信号をCPU22に出力する。
【0021】
記憶装置28は、例えばハードディスク、CD-ROM、DVD、又はメモリーカード等である。記憶装置28には、後述する演奏制御プログラム、後述する演奏モーションを表す図形の描画情報、後述する編集部によって編集された演奏モーションの情報、後述するロボット1の姿勢の情報等が記憶される。
【0022】
CPU22は、記憶装置28に記憶されている演奏制御プログラムをRAM24に展開し、RAM24に展開された演奏制御プログラムを実行することにより、演奏制御装置21の全体を制御する。RAM24は、CPU22の処理に使用される情報を一次的に記憶する。
【0023】
通信インターフェース29は、USB、LAN、又はインターネット等の通信ネットワークに接続されるインターフェースである。通信インターフェース29には、有線又は無線でロボット1が接続される。通信インターフェース29はロボット1に信号を送信し、ロボット1から信号を受信する。
【0024】
音源部33は、音源としてのソフトウェアや効果付与のためのDSPを含む。音源部33は、後述する編集部によって編集された演奏モーションの情報に基づいてサウンド信号を生成し、サウンド信号をサウンドシステム34に出力する。サウンドシステム34は、D/A変換器、アンプ及びスピーカを有し、サウンド信号に基づいてシミュレーション用の音を鳴らす。
<演奏制御装置の機能構成>
【0025】
図4は、本実施形態の演奏制御装置21の機能構成例を示すブロック図である。演奏制御装置21は、表示制御部41、編集部42、ジョブ生成部43、サウンド制御部44を備える。これらの機能構成は、CPU22が演奏制御プログラムを実行することにより実現される。
【0026】
表示制御部41は、ロボット1の手部14の位置及びロボット1の手部14が楽器20を操作するタイミングを含む演奏モーションを表す図形を表示装置25に表示する。編集部42は、ユーザによる図形の操作入力に応じて、演奏モーションの情報を編集する。ジョブ生成部43は、編集部42によって編集された演奏モーションの情報に基づいて、ロボット1を動作させるジョブプログラムを生成する。ジョブ生成部43が生成したジョブプログラムは、通信インターフェース29を介してロボット1に送信される。サウンド制御部44は、編集部42によって編集された演奏モーションの情報に基づいて、シミュレーション用の音を鳴らすように音源部33とサウンドシステム34を制御する。
<演奏制御装置の具体的な処理>
【0027】
上記のように構成された演奏制御装置21における具体的な処理及びユーザの操作入力について
図5ないし
図9を参照して説明する。
【0028】
まず、演奏制御装置21の表示制御部41は、演奏モーションを表す図形を表示装置25に表示する。
図5は、表示装置25に表示される演奏モーションを表す図形50a~54の例を示す。
図6に示すように、演奏モーションを表す図形50a~54は、表示装置25の演奏モーション表示領域101に表示される。
【0029】
図5の図形50aは、楽器20の指板20aを表す。3つの〇51a~51cは、ロボット1の3つの指部15を表す。3つの○51a~51cを代表する1番上の〇51aの上下方向の位置が指板20a上のロボット1の手部14の位置を表す。●51cは、3つの指部15のうち、ユーザの操作入力によって選択された指部15(楽器20を押す指部15)を表す。●51cがロボット1の指部15が楽器20を押すタイミングを表す。●51cから右側に延びる斜線の帯52がロボット1の指部15が楽器20を押した状態の持続時間を表す。●51cから左側に延びる斜線の帯53は、ロボット1の指部15が楽器20を押す動作を開始してから実際に楽器20を押すまでの前処理時間を表す。ドットが附された矩形ゾーン54は、ロボット1の手部14を移動させる(ロボット1の腕部6を動かす)タイミングを表す。
図5の横軸が時間を示し、
図5の縦軸が指板20a上の手部14の位置を示す。図形55は、音楽の速度に合わせたタイミングインジケータである。
【0030】
次に、編集部42は、ユーザによる図形50a,51~54の操作入力に応じて、演奏モーションを編集する。例えばユーザがマウス27で複数の○51a,51b,51cのうちの1つの〇51cをクリックすると、編集部42は、楽器20を押す指部15として、〇51cが表す、ロボット1の一番下の指部15を選択する。表示制御部41は、ユーザによって選択された○51cを●51cに変更する。
【0031】
また、例えばユーザがマウス27で図形50aと●51cをドラッグ&ドロップすると、編集部42は、●51cが表す、ロボット1の指部15が楽器20を押すタイミングを決定する。表示制御部41は、図形50aと●51cの左右方向の位置を変更して表示する。
【0032】
さらに、例えばユーザがマウス27で帯52の右端をドラッグ&ドロップすると、編集部42は、帯52が表す、ロボット1の指部15が楽器20を押した状態の持続時間を決定する。表示制御部41は、帯52の長さを変更して表示する。
【0033】
さらに、例えばユーザがマウス27で帯53の左端をドラッグ&ドロップすると、編集部42は、帯53の長さが表す、ロボット1の指部15が楽器20を押す動作を開始してから実際に楽器20を押すまでの前処理時間を決定する。表示制御部41は、帯53の長さを変更して表示する。
【0034】
さらに、例えばユーザがマウス27で矩形ゾーン54をドラッグ&ドロップすると、編集部42は、矩形ゾーン54が表す、ロボット1の手部14が移動するタイミングを決定する。表示制御部41は、矩形ゾーン54を変更して表示する。
【0035】
図7は、演奏モーションを表す図形である●51b,帯52,帯53とロボット1の指部15の動作との対応関係を示す図である。
図7(a)の帯53は、
図7(b1)(b2)に示すように、ロボット1の指部15が楽器20を押す動作を開始してから実際に楽器20を押すまでの前処理時間(指部15の移動時間)を表す。帯53の長さを調節することで、●51bの時点で確実に音を鳴らすことが可能になる。また、帯53の長さを調節することで、指部15の速度を調節できる(例えば帯53の長さが短いと、指部15が素早く動作する)ので、鍵盤楽器や打楽器で音の強弱を調節できる。
【0036】
図7(a)の●51bは、
図7(b2)に示すように、ロボット1の指部15が楽器20を押すタイミングを表す。
図7(a)の帯52は、ロボット1の指部15が楽器20を押した状態の持続時間を表す。
図7(a)の領域102(帯52がない区間)は、
図7(b3)に示すように、指部15が楽器20から離れている時間を表す。ユーザの操作入力により、●51bの位置と帯52の長さを調節することで、音が鳴るタイミング、音の持続時間を調節することができる。
【0037】
●51bの上下方向の位置は、楽器20の指板20a上の指部15の位置を表すので、ユーザの操作入力により、●51bの上下方向の位置を調節することで、音階を調節することができる。
【0038】
図8は、演奏モーションを表す図形である矩形ゾーン54とロボット1の指部15の動作との対応関係を示す図である。
図8(a)の矩形ゾーン54は、ロボット1の手部14を移動させるタイミングを表す。矩形ゾーン54の幅が広いと、ロボット1の手部14がゆっくり移動し、矩形ゾーン54の幅が狭いと、ロボット1の手部14が素早く移動する。
【0039】
図8(a)に示すように、帯52と矩形ゾーン54を重ねると、
図8(b1)(b2)に示すように、ロボット1の指部15が楽器20を押しながらロボット1の手部14を移動させることができる。このため、音を鳴らしながら音階を滑らかに変化させるスライド演奏が可能になる。
図8(a)の領域103に示すように、●51bの左側の帯53の長さをゼロにして、一つ前の●51bの右側の帯52を●51bに近づけると、●51bが表す指部15で楽器20を押し続けることができる。
【0040】
図9は、演奏モーションを表す図形である●51b,●51c,帯52,帯53とロボット1の動作との対応関係を示す図である。
図9(a)に示すように、隣り合う●51bが同じ指部15であれば、帯52と帯53を重なるように配置することはできない。同じ指部15が楽器20を押す状態と楽器20から離れた状態を両立できないからである。
【0041】
図9(b)に示すように、隣り合う●51bと●51cが違う指部15であれば、帯52と帯53を重なるように配置することができる。この場合、
図9(c1)に示すように、●51bが表す指部15(指2)が押下げ中に●51cが表す指部15(指3)が押下げ準備をし、
図9(c2)に示すように、指3が楽器20を押すと同時に、指2が楽器から離れる。このように、帯52と帯53を重なるように配置することで、素早い指部15の切り替えが可能になる。
【0042】
次に、ジョブ生成部43は、編集部42によって編集された演奏モーションの情報に基づいて、ロボット1を動作させるジョブプログラムを生成する。演奏モーションには、ロボット1の手部14の位置及びロボット1の指部15が楽器20を押すタイミング等が含まれるので、ロボット1に楽器20を演奏させることができる。
<音階の表示、シミュレーション用の音の発生>
【0043】
図6の領域104に示すように、表示制御部41は、編集部42によって編集された演奏モーション(手部14の上下方向の位置、後述する指同士の距離、及び手部14の位置と音階との関係)の情報に基づいて、表示装置25にロボット1の押下中の指部15の音階、例えばC4を表示すると共に、表示装置25に指板20a上の手部14の位置、例えば0.110を表示する。
【0044】
サウンド制御部44は、編集部42によって編集された上記演奏モーションの情報に基づいて、シミュレーション用の音を鳴らすように音源部33とサウンドシステム34を制御する。これにより、編集した演奏モーションを実際のロボット1を動作させることなく、シミュレーション上で再生して確認できる。再生処理が開始されると、表示制御部41は、タイミングインジケータを表す図形55を右方向に移動させる。
<振付けモーション>
【0045】
演奏モーションには、演奏に無関係なロボット1の一部(頭部11、胴部4等)を動作させる振付けモーションが含まれる。
図6に示すように、表示制御部41は、表示装置25に振付けモーションを表す図形56a,56bを表示する。振付けモーションを表す図形56a,56bは、振付けモーション表示領域105に表示される。
【0046】
例えば、図形56aは、ロボット1の胴部4を左方向に回転させる動作を表し、図形56bは、ロボット1の胴部4を右方向に回転させる動作を表す。振付けモーションは、予め登録、すなわち記憶装置28に記憶されている。
【0047】
編集部42は、ユーザによる操作入力、例えばマウス27で図形56a,56bをドラッグ&ドロップに応じて、振付けモーションを編集する。編集部42は、演奏モーションを編集した後に、振付けモーションを追加編集する。なお、ロボット1の腕部6の動作振付けモーションは、ロボット1の腕部6の演奏モーションによって上書きされる。編集部42は、ロボット1関節角度の時系列データ等の振付けモーションであっても、演奏モーションとの合わせ込みが可能である。
【0048】
振付けモーションとして、指板20aを持つ手部14と逆側の手部14を動作させることもできる。この場合、編集部42は、ユーザの操作入力、例えばユーザがマウス27を用いて楽器20の保持部20b(
図1参照)を表す図形50をクリックする等により、図形50が現れるタイミングで逆側の手部14の指部15が閉じる等の振付けモーションを作成する。
【0049】
ジョブ生成部43は、編集部42によって編集された振付けモーションの情報に基づいて、ロボット1を動作させる。これにより、ロボット1に演奏に合わせた振付けモーションをつけることができる。
<楽譜を表すユーザインターフェース>
【0050】
図10(a)に示すように、表示制御部41は、5線譜上に音符を配置した楽譜を表す図形61を表示装置25に表示してもよい。編集部42は、ユーザの操作入力によって楽譜を編集する。楽譜を表す図形61は一般的な音楽の楽譜に対応しているので、ユーザはより簡単に音楽を作成できる。
【0051】
表示制御部41は、編集部42によって編集された楽譜の情報に基づいて、
図10(a)に示す楽譜を表す図形61を、
図10(b)に示す演奏モーションを表す図形に変換する。手部14の位置の微調整、手部14を移動させるタイミング、楽器20を押す指部15の選択等は、
図10(b)に示す演奏モーションを表す図形を用いて行われる。
<初期設定>
【0052】
図11は、表示制御部41が表示装置25に表示する初期設定画面の例を示す。表示装置25には、ロボット1の基準姿勢を設定するためのダイアログ62が表示される。ユーザは、予め登録しておいたロボット1の姿勢を基準姿勢としてダイアログ62に入力する。編集部42は、演奏モーションを作成する際、設定されたロボット1の基準姿勢を加味する。ユーザが設定するロボット1の基準姿勢はこれだけでよく、音楽に応じて多数の姿勢を設定する必要はない。
【0053】
表示装置25には、指板20aの長さを設定するためのダイアログ63が表示される。
図12に示すように、指板20aの長さは、ロボット1の手部14の移動範囲(腕部6の動作範囲)を表す。ユーザは、このダイアログ63に手部14の移動範囲を入力する。なお、編集部42は、ロボット1の手部14を移動させる演奏モーションを作成する際、ロボット1の指板20aを持つ手部14をその甲に平行に移動させるように演奏モーションを作成する。編集部42は、指板20aを持つ手部14を、楽器20を固定する方の手部14に近づけるように演奏モーションを作成してもよい。
【0054】
表示装置25には、楽器20の指板20aを持つ手部14と楽器20を固定する手部14を設定するためのダイアログ66a,66bが表示される。ユーザがダイアログ66aを選択すると、表示制御部41がダイアログ66aに指板20aを持つ手部14の選択肢(手部14a又は手部14b(
図13(a)(b)参照))を表示する。また、ユーザがダイアログ66bを選択すると、表示制御部41がダイアログ66aに指板20aを固定する手部14の選択肢(手部14a又は手部14b)を表示する。編集部42は、ユーザの操作入力に応じて、
図13(a)に示すように、ロボット1の左側の手部14aが指板20aを持ち、右側の手部14bが楽器20を固定するように演奏モーションを作成するか、又は
図13(b)に示すように、ロボット1がその反対に動作するように演奏モーションを作成する。これにより、ロボット1の、楽器20を弾く手部14と固定する手部14をそれぞれ設定することができる。また、演奏モーション作成後であっても、ダイアログ66a,66bにて反対の手部14に切り替えた上で、基準姿勢を切り替えることにより、ロボット1に反対側の手部14で楽器20を演奏させることができる。
【0055】
図11に示すように、表示装置25には、ロボット1の指部15同士の距離を設定するためのダイアログ67が表示される。また、表示装置25には、手部14の位置(ハンド位置)と音階(一番上の指の音名)との関係を設定するためのダイアログ68が表示される。ダイアログ68中のC3、D3、E3等は、ド、レ、ミ等の音階を表す。この設定を元に、表示制御部41は、表示装置25に押下中の指部15の音階を表示する。
【0056】
図14に示すように、初期設定画面において、指板20aの長さを設定する替わりに、ロボット1の基準姿勢1(符号64)、基準姿勢2(符号65)を設定するようにしてもよい。
図15に示すように、基準姿勢1はロボット1の手部14の上端位置を表し、基準姿勢2はロボット1の手部14の下端位置を表す。この場合、編集部42は、基準姿勢1と基準姿勢2との間を按分して手部14を移動させる演奏モーションを作成する。
<本実施形態の演奏制御装置の効果>
【0057】
以上に本実施形態の演奏制御装置21の構成例、機能例、具体的な処理例を説明した。本実施形態の演奏制御装置21によれば、以下の効果を奏する。
【0058】
ロボット1の手部14に焦点を当てたユーザインターフェースを使用して演奏モーションを作成するので、ロボット1の手部14の位置や手部14の楽器操作のタイミングが分かり易く、ユーザの簡単な操作入力によってロボット1に楽器20を演奏させることができる。
【0059】
ロボット1の姿勢を多数登録する必要がないので、ロボット1の姿勢の管理が容易である。
【0060】
ロボット1の指部15が楽器20を押すタイミングを設定することができる。
【0061】
複数の指部15があるロボット1において、どの指部15で指板20aを押すかを選択可能であり、指部15の切り替えによる素早い演奏が可能である。
【0062】
演奏モーションを表す図形が帯52を含むので、ロボット1の指部15が楽器20を押した状態の持続時間を設定することができる。
【0063】
演奏モーションを表す図形が帯53を含むので、前処理時間を設定することができ、楽譜に合わせた最適なタイミングで音を鳴らすことが可能である。
【0064】
演奏モーションを表す図形が矩形ゾーン54を含むので、スライド演奏等の、指板20aを持つ楽器20の特性を活かした演奏が可能である。
【0065】
演奏モーションに振付けモーションを合わせ込むことも可能である。
【0066】
表示装置25にロボット1の押下中の指部15の音階を表示するので、実際にロボット1を動かさなくても演奏の確認が可能である。
【0067】
サウンド制御部44がシミュレーション用の音を鳴らすので、実際にロボット1を動かさなくても演奏の確認が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…ロボット、14…手部、15…指部、20…楽器、21…演奏制御装置、34…サウンドシステム、41…表示制御部、42…編集部、43…ジョブ生成部、44…サウンド制御部、50a~54…演奏モーションを表す図形