(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135245
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】車載カメラ装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 3/74 20170101AFI20220908BHJP
B60Q 3/60 20170101ALI20220908BHJP
【FI】
B60Q3/74
B60Q3/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034928
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】清野 譲
【テーマコード(参考)】
3K040
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040CA06
3K040DB01
3K040EA02
3K040EB01
3K040EC04
3K040GA03
3K040GB00
(57)【要約】
【課題】測距と運転者のモニタリングとを安価に実現することができる車載カメラ装置を提供する。
【解決手段】車載カメラ装置1は、車内に光を出射可能な光源10と、第1の照明期間M1中に光源10からパルス光を出射し、第1の照明期間M1よりも長い第2の照明期間M2中に光源10から連続光を出射するように光源10を制御する光制御部43と、パルス光により照明された車内の画像を取得するTOFカメラ20と、TOFカメラにより取得された画像を用いて測距を行う第1の分析部41と、連続光により照明された車内の画像を取得する運転者カメラ30と、運転者カメラ30により取得された画像を用いて運転者の状態を取得する第2の分析部42とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内に光を出射可能な光源と、
第1の照明期間中に前記光源から第1の照明光を出射し、前記第1の照明期間よりも長い第2の照明期間中に前記光源から第2の照明光を出射するように前記光源を制御する光制御部と、
前記第1の照明光により照明された前記車内の画像を取得する第1のカメラと、
前記第1のカメラにより取得された画像を用いて測距を行う第1の分析部と、
前記第2の照明光により照明された前記車内の画像を取得する第2のカメラと、
前記第2のカメラにより取得された画像を用いて運転者の状態を取得する第2の分析部と
を備える、車載カメラ装置。
【請求項2】
前記第1の照明光はパルス光である、請求項1に記載の車載カメラ装置。
【請求項3】
前記第2の照明光は連続光である、請求項1又は2に記載の車載カメラ装置。
【請求項4】
前記光源から出射された光を拡散可能な光拡散部材と、
前記光源から出射される光の光路上の受光位置と、前記光路から外れた退避位置との間で前記光拡散部材を移動させる移動機構と、
前記第1の照明期間中に前記光拡散部材を前記受光位置に保持し、前記第2の照明期間中に前記光拡散部材を前記退避位置に保持するように前記移動機構を動作させる拡散制御部と
をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の車載カメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラ装置に係り、特に自動車などの車内の画像を取得する車載カメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの車両にカメラを設置し、車内の画像を取得して乗員数を検出したり、運転者の状態などをモニタリングしたりすることが多くなってきている(例えば、特許文献1参照)。例えば、車内の乗員数を検出する場合には、TOF(Time of Flight)カメラとTOFカメラ用の光源とを用いて測距が行われて乗員の数が検出される。また、いわゆるドライバモニタリングシステム(DMS)と呼ばれる運転者の状態をモニタリングするシステムにおいては、運転者を撮像するカメラと運転者を照明するための光源とが用いられる。このように、それぞれの用途に応じて異なるカメラと光源が必要とされる。したがって、例えば光源にレーザ光を用いる場合には、それぞれの用途ごとにレーザ光源を用意する必要が生じ、コストも増大してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、測距と運転者のモニタリングとを安価に実現することができる車載カメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、測距と運転者のモニタリングとを安価に実現することができる車載カメラ装置が提供される。この車載カメラ装置は、車内に光を出射可能な光源と、第1の照明期間中に上記光源から第1の照明光を出射し、上記第1の照明期間よりも長い第2の照明期間中に上記光源から第2の照明光を出射するように上記光源を制御する光制御部と、上記第1の照明光により照明された上記車内の画像を取得する第1のカメラと、上記第1のカメラにより取得された画像を用いて測距を行う第1の分析部と、上記第2の照明光により照明された上記車内の画像を取得する第2のカメラと、上記第2のカメラにより取得された画像を用いて運転者の状態を取得する第2の分析部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における車載カメラ装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す車載カメラ装置の動作を説明するタイムチャートである。
【
図3】
図3は、
図2の第1の照明期間中の状態を模式的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図2の第2の照明期間中の状態を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る車載カメラ装置の実施形態について
図1から
図4を参照して詳細に説明する。
図1から
図4において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図4においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態における車載カメラ装置1の構成を模式的に示すブロック図である。
図1に示すように、この車載カメラ装置1は、例えば自動車などの車内に光を出射可能な光源10と、TOFカメラ20(第1のカメラ)と、運転者カメラ30(第2のカメラ)と、制御部40と、これらの構成要素を収容する筐体50とを含んでいる。
【0009】
TOFカメラ20は制御部40に接続されており、TOFカメラ20により取得された画像データが制御部40に出力されるようになっている。TOFカメラ20からの画像データは、制御部40の第1の分析部41で処理されて測距データに変換され、この測距データを用いて例えば車内の乗員の数や車内の機器を操作するために乗員が行うジェスチャなどが検出される。同様に、運転者カメラ30も制御部40に接続されており、運転者カメラ30により取得された画像データが制御部40に出力されるようになっている。運転者カメラ30からの画像データは、制御部40の第2の分析部42で分析され、例えば運転者の状態(注意力の低下や居眠りの兆候など)が検出される。
【0010】
光源10としては例えば波長940nmのレーザ光を出射可能な垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)などを用いることができる。光源10からの光は筐体50に形成された開口52を通じて車内に出射される。光源10は、制御部40内の光制御部43に接続されており、この光制御部43によって光源10の動作が制御されるようになっている。
【0011】
また、車載カメラ装置1は、光源10からの光を拡散可能な光拡散部材60と、光拡散部材60を
図1の矢印Aの方向に沿って移動可能な移動機構70とを含んでいる。
図1においては、光拡散部材60は、光源10から出射される光の光路Pから外れた位置(以下、この位置を「退避位置」という)に位置しているが、光拡散部材60は、移動機構70によって点線で示すように光源10から出射される光の光路P上に移動することが可能であり、この位置で光源10からの光を受けることができるようになっている。このときの光拡散部材60の位置を「受光位置」ということとする。このような光拡散部材60としてはガラス製の拡散板やプリズム、ビームスプリッタなど公知の光拡散部材を用いることができる。
【0012】
移動機構70は制御部40内の拡散制御部44に接続されており、この拡散制御部44によって移動機構70の動作が制御されるようになっている。例えばこの拡散制御部44から移動機構70内の図示しないモータに信号が送られることによって、移動機構70が光拡散部材60を退避位置から受光位置に、あるいは受光位置から退避位置に移動するようになっている。
【0013】
次に、この車載カメラ装置1の動作について説明する。
図2は、車載カメラ装置1の動作を説明するタイムチャートである。
図2に示すように、車載カメラ装置1が動作している間の期間は、第1の照明期間M1と、移動期間Tと、第2の照明期間M2とに分けられる。
【0014】
第1の照明期間M1においては、制御部40の光制御部43が光源10を所定の周期及びパルス幅で点灯させ、光源10からパルス光(第1の照明光)が出射されるようになっている。この第1の照明期間M1になるまでに、制御部40の拡散制御部44が移動機構70を動作させて光拡散部材60を受光位置に移動しておく。第1の照明期間M1中は、光拡散部材60はこの受光位置に保持される。
【0015】
図3は、第1の照明期間M1中の状態を示すものである。
図3に示すように、第1の照明期間M1中は光拡散部材60が受光位置に保持されているため、光源10から出射されたパルス光は光拡散部材60により拡散され、車内のより広い範囲がパルス光により照明される。TOFカメラ20は、このパルス光により照明された車内の画像を取得し、この画像データが制御部40の第1の分析部41に出力される。制御部40の第1の分析部41では、TOFカメラ20からの画像データが処理されて測距データに変換され、この測距データを用いて例えば車内の乗員の数や車内の機器を操作するために乗員が行うジェスチャなどが検出される。
【0016】
このように、第1の照明期間M1中には光拡散部材60が受光位置に保持されるため、第1の照明期間M1中に光源10から出射されるパルス光が光拡散部材60によって拡散されるので、車内の広い範囲がパルス光により照明される。したがって、車内の測距を広範囲にわたって行うことができる。
【0017】
第1の照明期間M1が終了すると移動期間Tが開始する。この移動期間T中に制御部40の拡散制御部44が移動機構70を動作させて光拡散部材60を受光位置から退避位置に移動させる。また、制御部40の光制御部43が光源を連続的に点灯させ、光源10から連続光が出射される。
【0018】
移動期間Tが終了すると第2の照明期間M2が開始する。第2の照明期間M2においても制御部40の光制御部43は光源を連続的に点灯させ、光源10から連続光(第2の照明光)を出射させる。また、第2の照明期間M2中は、光拡散部材60は退避位置に保持される。
【0019】
図4は、第2の照明期間M2中の状態を示すものである。
図4に示すように、第2の照明期間M2中は光拡散部材60が退避位置に保持されているため、光源10から出射された連続光は直接車内(運転者が座っている領域周辺)に照明される。運転者カメラ30は、この連続光により照明された運転者の画像を取得し、この画像データが制御部40の第2の分析部42に出力される。制御部40の第2の分析部42では、運転者カメラ30からの画像データが分析され、例えば運転者の状態(注意力の低下や居眠りの兆候など)が検出される。
【0020】
ここで、第2の照明期間M2は第1の照明期間M1よりも長くなっている。例えば第1の照明期間M1を3秒程度、第2の照明期間M2を5秒程度にすることができる。これは、運転者の状態をモニタリングして車両の安全性を高めることの方が、測距により乗員の数や乗員のジェスチャを検出することよりも重要であるため、測距よりも長い期間にわたって運転者の状態をモニタリングすべきであるからである。
【0021】
第2の照明期間M2が終了すると移動期間Tが開始する。この移動期間T中に制御部40の拡散制御部44が移動機構70を動作させて光拡散部材60を退避位置から受光位置に移動させる。移動期間Tが終了すると再び第1の照明期間M1が開始し、上述した処理が繰り返される。
【0022】
このように、本実施形態における車載カメラ装置1によれば、第1の照明期間M1中にパルス光(第1の照明光)により照明された車内の画像を用いて測距を行い、第1の照明期間M1よりも長い第2の照明期間M2中に連続光(第2の照明光)により照明された車内の画像を用いて運転者の状態を得ることができる。したがって、測距と運転者のモニタリングとを単一の光源10で実現することが可能となり、測距と運転者のモニタリングに必要なコストを低減することができる。
【0023】
また、従来のシステムでは測距と運転者のモニタリングを同時に並行して行うので、2つの光源からの光が互いに干渉することを避けために2つの光源の光の波長を変える必要があったが、本実施形態の車載カメラ装置1によれば、1つの光源10からの光を時間的に分割して測距と運転者のモニタリングに用いるようにしているため、光の干渉や波長を考慮する必要がない。
【0024】
図2に示す例では、移動期間T中は、光源10から連続光が出射されているが、移動期間T中は連続光に代えてパルス光を光源10から出射してもよいし、あるいは光源10を消灯してもよい。
【0025】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、測距と運転者のモニタリングとを安価に実現することができる車載カメラ装置が提供される。この車載カメラ装置は、車内に光を出射可能な光源と、第1の照明期間中に上記光源から第1の照明光を出射し、上記第1の照明期間よりも長い第2の照明期間中に上記光源から第2の照明光を出射するように上記光源を制御する光制御部と、上記第1の照明光により照明された上記車内の画像を取得する第1のカメラと、上記第1のカメラにより取得された画像を用いて測距を行う第1の分析部と、上記第2の照明光により照明された上記車内の画像を取得する第2のカメラと、上記第2のカメラにより取得された画像を用いて運転者の状態を取得する第2の分析部とを備える。上記第1の照明光はパルス光であってもよく、上記第2の照明光は連続光であってもよい。
【0026】
このような構成によれば、第1の照明期間中に第1の照明光により照明された車内の画像を用いて測距を行い、第1の照明期間よりも長い第2の照明期間中に第2の照明光により照明された車内の画像を用いて運転者の状態を得ることができる。したがって、測距と運転者のモニタリングとを単一の光源で実現することが可能となり、測距と運転者のモニタリングに必要なコストを低減することができる。
【0027】
上記車載カメラ装置は、上記光源から出射された光を拡散可能な光拡散部材と、上記光源から出射される光の光路上の受光位置と、上記光路から外れた退避位置との間で上記光拡散部材を移動させる移動機構と、上記第1の照明期間中に上記光拡散部材を上記受光位置に保持し、上記第2の照明期間中に上記光拡散部材を上記退避位置に保持するように上記移動機構を動作させる拡散制御部とをさらに備えることが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、第1の照明期間中に光源から出射される第1の照明光を光拡散部材により拡散して広範囲を照明することができ、広範囲の測距を行うことができる。
【0029】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
1 車載カメラ装置
10 光源
20 TOFカメラ(第1のカメラ)
30 運転者カメラ(第2のカメラ)
40 制御部
41 第1の分析部
42 第2の分析部
43 光制御部
44 拡散制御部
50 筐体
60 光拡散部材
70 移動機構
M1 第1の照明期間
M2 第2の照明期間
T 移動期間
P 光路