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  • 特開-カップリング 図1
  • 特開-カップリング 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135282
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】カップリング
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/12 20060101AFI20220908BHJP
   F16F 15/18 20060101ALI20220908BHJP
   F16F 15/136 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F16D3/12 Z
F16F15/18 A
F16F15/136 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034994
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】辻 仁志
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 優矢
(57)【要約】
【課題】簡単に捩り剛性を変えることのできるカップリングを提供する。
【解決手段】カップリング1は、軸2に対して相対回転不能に取り付けられる第1継手部5と、軸3に対して相対回転不能に取り付けられる第2継手部6と、第1継手部5と第2継手部6との間に連結され、捩り振動を吸収する中間部7と、備え、磁場を発生する磁場発生部9を更に備える。中間部7は、磁気粘弾性エラストマ7を含む。磁場発生部9は、磁気粘弾性エラストマ7に磁場を印加する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の軸に対して相対回転不能に取り付けられる第1継手部と、
他方の軸に対して相対回転不能に取り付けられる第2継手部と、
前記第1継手部と前記第2継手部との間に連結され、捩り振動を吸収する中間部と、
を備えるカップリングであって、
磁場を発生する磁場発生部を更に備え、
前記中間部は、磁気粘弾性エラストマを含み、
前記磁場発生部は、前記磁気粘弾性エラストマに磁場を印加する、
ことを特徴とするカップリング。
【請求項2】
請求項1に記載のカップリングにおいて、
前記磁気粘弾性エラストマは、少なくとも磁路が貫通する部分において平板状に形成されている、
ことを特徴とするカップリング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップリングに関する。
【背景技術】
【0002】
軸と軸を連結し、回転動力を駆動側から従動側へ伝えるカップリングが知られている(例えば特許文献1~4を参照。)。同文献に開示されたカップリングは、駆動側の軸に固定される駆動側継手部と、従動側の軸に固定される従動側継手部と、これらの継手部の間に連結される中間部とを備えている。特許文献1~3に開示されたカップリングでは、上記中間部に板ばねが含まれ、特許文献4に開示されたカップリングでは、上記中間部にゴム材が含まれる。
【0003】
カップリングの一般的な役割として、(1)駆動側から従動側に動力伝達すること、(2)駆動側と従動側の軸の取付誤差を吸収すること、(3)駆動側の振動を吸収すること、(4)駆動側のモータなどの熱を従動側に伝えないことが挙げられる。特許文献1~4に開示されたカップリングでは、上記(3)の役割に関し、駆動側の振動は、中間部において吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-167743号公報
【特許文献2】特開2002-372068号公報
【特許文献3】特開昭62-155335号公報
【特許文献4】特開2014-092168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カップリングにおいて吸収される捩り振動は、カップリングの捩り剛性を変えることで抑制することができ、その捩り振動の共振点を変えることもできる。
【0006】
しかしながら、特許文献1~4に開示されたカップリングでは、捩り剛性を変えるために、カップリングの中間部に使用されている板ばねやゴム材を剛性の異なるものに取り換え、あるいは、カップリングを丸ごと捩り剛性の異なる別のカップリングに取り換えることが必要となる。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みて創案されたものであり、簡単に捩り剛性を変えることのできるカップリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係るカップリングは、一方の軸に対して相対回転不能に取り付けられる第1継手部と、他方の軸に対して相対回転不能に取り付けられる第2継手部と、前記第1継手部と前記第2継手部との間に連結され、捩り振動を吸収する中間部と、を備え、磁場を発生する磁場発生部を更に備える。前記中間部は、磁気粘弾性エラストマを含み、前記磁場発生部は、前記磁気粘弾性エラストマに磁場を印加する。
【0009】
かかる構成を備えるカップリングによれば、その捩り剛性を簡単に変えることができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係るカップリングは、第1の態様に係るカップリングにおいて、前記磁気粘弾性エラストマは、少なくとも磁路が貫通する部分において平板状に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単に捩り剛性を変えることのできるカップリングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るカップリングを示す断面図である。
図2】本発明の実施の形態の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るカップリングについて、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本実施形態に係るカップリング1は、図1に示すように、駆動側回転軸2と従動側回転軸3との間に連結されるものであって、第1継手部5、第2継手部6、中間部7および磁場発生部9を備えている。
【0015】
第1継手部5は、駆動側回転軸2に対して相対回転不能に取付けられ、駆動側回転軸2と一体に回転する。第1継手部5は、後述するように、磁場発生部9の第1インナーヨーク15aを兼ねている。したがって、第1継手部5は、磁性体を用いて構成されていることが望ましい。
【0016】
第2継手部6は、従動側回転軸3に対して相対回転不能に取付けられ、従動側回転軸3と一体に回転する。第2継手部6は、後述するように、磁場発生部9の第2インナーヨーク15bを兼ねている。したがって、第2継手部6は、磁性体を用いて構成されていることが望ましい。
【0017】
第1継手部5及び第2継手部6は、互いに軸方向に対向する端面をそれぞれ有している。第1継手部5及び第2継手部6のそれぞれの端面の間に、軸方向に微小な間隔を空けて径方向に延びる微小隙間20が形成されている。
【0018】
中間部7は、第1継手部5と第2継手部6との間に連結されている。本実施形態では、中間部7は、微小隙間20に介装されており、軸方向に見て円形状である平板状に形成された磁気粘弾性エラストマ7である。本実施形態では、磁気粘弾性エラストマ7は、微小隙間20の全体に亘って充填されている。
【0019】
磁気粘弾性エラストマ7は、マトリックスとしての粘弾性をもつ基質エラストマ(弾性材料)と、基質エラストマ内に分散された多数の導電性の磁性粒子とを有する。磁気粘弾性エラストマ7は、基質エラストマ内に導電性の磁性粒子が分散されていることにより、印加される磁場の強さに応じて弾性率や減衰特性などの機械的特性が可逆的に変化する。
【0020】
基質エラストマの構成材料としては、例えば超軟質ウレタン樹脂、エチレン-プロピレンゴム、シリコーンゴム等の室温で粘弾性を有する公知の高分子材料が挙げられる。
【0021】
磁性粒子は、磁場の作用によって磁気分極する性質を有する。磁性粒子は、透磁率が高く、残留磁化の小さいものが好ましい。磁性粒子の構成材料としては、例えば、鉄、窒化鉄、炭化鉄、カルボニル鉄、磁性酸化鉄類、フェライト類、ニッケル、コバルト、又はコバルト鉄の合金類、マグネタイト、ゲーサイト等が挙げられる。磁性粒子の形状は、特に限定されず、例えば球形、針形、平板形等であってよい。磁性粒子の粒径は、特に限定されず、例えば0.01μm~500μm程度であってよい。
【0022】
磁性粒子は、基質エラストマ内において、印加される磁場の強度が十分に低いとき、互いの相互作用は無視できるほど小さく、かつ、印加される磁場の強度が高まるに従って、磁気相互作用によって互いに作用する引力が増大するように振る舞う。磁性粒子のこの振る舞いによって、磁気粘弾性エラストマの弾性率や剛性(捩り剛性を含む)が変化可能となっている。磁性粒子の基質エラストマに対する割合は、任意に設定できるが、例えば体積分率で5%~85%程度であってよい。基質エラストマ内の磁性粒子の分散状態は、基質エラストマの各部において均一にしてもよいし、一部に密度差を設けてもよい。
【0023】
磁気粘弾性エラストマ7は、その一方が第1継手部5に固定され、その他方が第2継手部6に固定されている。これにより、駆動側回転軸2と従動側回転軸3との間で捩り方向に変位が生じると、磁気粘弾性エラストマ7は、その捩り方向に弾性変形する。
【0024】
磁場発生部9は、磁場を発生し、その磁場を中間部7(磁気粘弾性エラストマ7)に印加する。本実施形態では、磁場発生部9は、ヨーク15とコイル16とを含んで構成されている。
【0025】
ヨーク15は、本実施形態では、第1インナーヨーク15a、第2インナーヨーク15bおよびアウターヨーク15cで構成されている。ヨーク15を構成する部材は何れも当然に磁性体を用いて構成されている。
【0026】
本実施形態では、第1継手部5が第1インナーヨーク15aの役割を兼ねており、第2継手部6が第2インナーヨーク15bを兼ねている。
【0027】
アウターヨーク15cは、一方の端面が第1インナーヨーク15aの径方向外側面に微小隙間を介して対向し、他方の端面が第2インナーヨーク15bの径方向外側面に微小隙間を介して対向している。本実施形態では、アウターヨーク15cは、全体的に環状に形成され、断面が略C字状に形成されている。
【0028】
アウターヨーク15cの軸方向の両側には、ベアリングハウジング部材17が固定されている。一方のベアリングハウジング部材17と第1継手部5との間にベアリング18が介装され、他方のベアリングハウジング部材17と第2継手部6との間にベアリング18が介装されている。したがって、第1継手部5、第2継手部6及び中間部7は、アウターヨーク15cおよびコイル16に対して回転可能となっている。なお、ベアリングハウジング部材17は、非磁性体を用いて構成されていることが望ましい。
【0029】
コイル16は、アウターヨーク15cの内側に巻設されている。コイル16には、給電部21から所望の電流値の電流が給電可能となっている。コイル16は、電流が給電されると、ヨーク15内に磁路を形成することができる。ヨーク15内に磁路が形成されると、第1インナーヨーク15a(第1継手部5)と第2インナーヨーク15b(第2継手部6)とに挟まれている中間部7(磁気粘弾性エラストマ7)に磁場が印加される。
【0030】
上述の構成を備えるカップリング1において、給電部21によりコイル16に電流を印加すると、例えば図1の矢印Pの方向に沿って、ヨーク15内に磁路が形成される。特に、第1継手部5と第2継手部6との間の微小隙間20に介装された磁気粘弾性エラストマ7を貫通する磁路が形成され、磁気粘弾性エラストマ7は、印加される磁場の強さに応じた大きさの捩り剛性を発現する。そして、コイル16に印加する電流値を変えることにより、磁気粘弾性エラストマ7の捩り剛性を変化させることができるので、カップリング1の捩り剛性も変えることができる。
【0031】
このように、本実施形態に係るカップリング1によれば、コイル16に印加する電流値を変えるだけで、カップリング1の捩り剛性を変えることができるので、簡単にカップリング1に入力される捩り振動を抑制でき、その捩り振動の共振点を変えることも簡単に行うことができる。
【0032】
また、本願発明者は、磁気粘弾性エラストマ7の代わりに磁気粘性流体を用いたカップリングも発明しているが、磁気粘弾性エラストマ7を用いた本実施形態に係るカップリング1は、磁気粘性流体を用いたものと比べて、流体の漏れを生じる可能性が全くないという利点がある。
【0033】
また、上述の構成を備えるカップリング1において、磁気粘弾性エラストマ7は、平板状に形成されているので、第1継手部5と第2継手部6との相対回転に伴う捩れを周方向のせん断力として受けることができ、磁場発生部9により適切に捩り剛性を制御されることで、カップリング1に入力される捩り振動を効果的に抑制することができる。
【0034】
<変形例>
上述した本発明の実施の形態では、中間部は全て磁気粘弾性エラストマにより構成されていたが、中間部の一部を磁気粘弾性エラストマで構成し、中間部の他の部分を弾性変形可能な部材で構成してもよい。なお、上記の実施形態において説明した部材と同じ部材において同符号を付して説明を省略する場合がある。
【0035】
例えば、図2に示すように、中間部7Aは、軸線N上に第1継手部5及び第2継手部6に跨って設けられた中央ゴム7Aaと、第1継手部5及び第2継手部6の側面近傍において第1継手部5及び第2継手部6に跨って設けられた環状ゴム7Abと、中央ゴム7Aaと環状ゴム7Abとの径方向の間であって第1継手部5と第2継手部6との間に形成される微小隙間20に介装されている磁気粘弾性エラストマ7Acと、で構成されている。中央ゴム7Aa、環状ゴム7Ab及び磁気粘弾性エラストマ7Acのいずれも、その一方が第1継手部5に固定され、その他方が第2継手部6に固定されている。中央ゴム7Aa、環状ゴム7Ab及び磁気粘弾性エラストマ7Acのいずれも、駆動側回転軸2と従動側回転軸3との間で捩り方向に変位が生じると、その捩り方向に弾性変形する。中央ゴム7Aa及び環状ゴム7Abは、それぞれ一定の弾性率を有し、駆動側回転軸2又は従動側回転軸3から捩り振動が入力されると、捩り方向に弾性変形しながらその捩り振動を吸収する。
【0036】
磁場発生部9Aは、磁場を発生し、その磁場を中間部7Aの内の磁気粘弾性エラストマ7Acに印加する。
【0037】
このような構成を備えるカップリング1Aにおいても、微小隙間20に介装される磁気粘弾性エラストマ7Acを貫通する磁路が形成され、磁気粘弾性エラストマ7Acは、印加される磁場の強さに応じた大きさの捩り剛性を発現する。そして、コイル16に印加する電流値を変えることにより、磁気粘弾性エラストマ7Acの捩り剛性を変化させることができるので、カップリング1の捩り剛性も変えることができる。
【0038】
したがって、本変形例に係るカップリング1Aによれば、コイル16に印加する電流値を変えるだけで、カップリング1Aの捩り剛性を変えることができるので、簡単にカップリング1Aに入力される捩り振動を抑制でき、その捩り振動の共振点を変えることも簡単に行うことができる。
【0039】
また、上述した本発明の実施の形態では、中間部を構成する磁気粘弾性エラストマが全て平板状に形成されていたが、磁気粘弾性エラストマのうちの少なくとも磁路が貫通する部分において平板状に形成されていてもよい。この場合であっても、磁気粘弾性エラストマのうちの当該部分において、第1継手部5と第2継手部6との相対回転に伴う捩れを周方向のせん断力として受けることができ、磁場発生部9により適切に捩り剛性を制御されることで、カップリング1に入力される捩り振動を効果的に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば、軸と軸を連結するためのカップリングに適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1,1A カップリング
5 第1継手部
6 第2継手部
7 中間部(磁気粘弾性エラストマ)
7A 中間部
7Aa 中央ゴム
7Ab 環状ゴム
7Ac 磁気粘弾性エラストマ
9,9A 磁場発生部
15 ヨーク
15a 第1インナーヨーク
15b 第2インナーヨーク
15c アウターヨーク
16 コイル
20 微小隙間
N 軸線
図1
図2