(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135283
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】多層樹脂成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220908BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220908BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220908BHJP
B29C 44/06 20060101ALI20220908BHJP
B65D 23/00 20060101ALI20220908BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20220908BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20220908BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20220908BHJP
B29L 22/00 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B5/18 101
B29C44/00 F
B29C44/06
B65D23/00 H
B65D25/20 P
B29K23:00
B29K105:04
B29L22:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034995
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池澤 正彰
(72)【発明者】
【氏名】植草 竜也
【テーマコード(参考)】
3E062
4F100
4F214
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AC02
3E062AC08
3E062DA02
3E062DA08
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AK41A
4F100AK69C
4F100AL04B
4F100AL06B
4F100AL07B
4F100AT00A
4F100BA03
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4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA42B
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4F100GB16
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4F214AA11
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4F214UF01
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4F214UG05
4F214UG22
4F214US01
4F214UW06
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂の発泡によりマーキングのために十分な突出部を形成することができる多層樹脂成形体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】多層樹脂成形体4は、合成樹脂からなる基材5と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6と、基材5とエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6との間に介在する変性ポリオレフィン樹脂層7とを備え、変性ポリオレフィン樹脂層7が発泡した発泡膨出部8と、発泡膨出部8を被覆するエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6とからなる突出部3aを備える
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂からなる基材と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層と、該基材と該エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層との間に介在する変性ポリオレフィン樹脂層とを備える多層樹脂成形体であって、
該変性ポリオレフィン樹脂層が発泡した発泡膨出部と、該発泡膨出部を被覆するエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層とからなる突出部を備えることを特徴とする多層樹脂成形体。
【請求項2】
請求項1記載の多層樹脂成形体において、前記突出部は文字、記号、図形のいずれかのマーキングの形状を持つことを特徴とする多層樹脂成形体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の多層樹脂成形体において、前記突出部は前記多層樹脂成形体の表面から0.3~1.5mmの範囲の高さで突出していることを特徴とする多層樹脂成形体。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項記載の多層樹脂成形体において、前記変性ポリオレフィン樹脂層は、前記基材と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層とを接着する接着剤層であることを特徴とする多層樹脂成形体。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項記載の多層樹脂成形体において、前記変性ポリオレフィン樹脂層は、不飽和カルボン酸を共重合又はグラフト重合して変性した酸変性ポリエチレン樹脂又は酸変性ポリプロピレン樹脂を含む樹脂からなることを特徴とする多層樹脂成形体。
【請求項6】
合成樹脂からなる基材と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層と、該基材と該エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層との間に介在する変性ポリオレフィン樹脂層とを備える多層樹脂成形体からなり、
該変性ポリオレフィン樹脂層が発泡した発泡膨出部と、該発泡膨出部を被覆するエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層とからなる突出部を備えることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項7】
合成樹脂からなる基材と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層と、該基材と該エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層との間に介在する変性ポリオレフィン樹脂層とを備える多層樹脂成形体に、レーザー光を照射し、
前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層を加熱して軟化させる一方、前記変性ポリオレフィン樹脂層を加熱して発泡させ、
該発泡により前記多層樹脂成形体表面から膨出した発泡膨出部を前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層により被覆した突出部を形成することを特徴とする多層樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の多層樹脂成形体の製造方法において、前記レーザー光はUVレーザーであることを特徴とする多層樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載の多層樹脂成形体の製造方法において、前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層は30~120μmの範囲の厚さを備えることを特徴とする多層樹脂成形体の製造方法。
【請求項10】
請求項7~請求項9のいずれか1項記載の多層樹脂成形体の製造方法において、前記変性ポリオレフィン樹脂層は20~90μmの範囲の厚さを備えることを特徴とする多層樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層樹脂成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体にレーザー光を照射し、レーザー光が照射された部位の樹脂を発泡させて突出部を形成することにより文字、図形等のマーキングを施した樹脂成形体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の樹脂成形体は、熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体にレーザー光を照射して、該熱可塑性樹脂を軟化溶解させ、次いで溶解樹脂中に含まれる揮発成分等を気化させて、気化した成分により該溶解樹脂が発泡して隆起する現象を利用してマーキングのための突出部を形成することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の樹脂成形体では、前記レーザー光の照射により軟化溶解された溶解樹脂が発泡する際に、マーキングのために十分な突出部を形成することができないことがあるという不都合がある。
【0006】
本発明は、かかる不都合を解消して、熱可塑性樹脂の発泡によりマーキングのために十分な突出部を形成することができる多層樹脂成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体にレーザー光を照射して、レーザー光が照射された部位の樹脂が発泡する際に、マーキングのために十分な突出部を形成することができないことがある理由について、鋭意検討した。
【0008】
この結果、本発明者らは、前記熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体にレーザー光を照射して、該熱可塑性樹脂を軟化溶解させ、次いで溶解樹脂中に含まれる揮発成分等を気化させる際に、気化した成分が該樹脂成形体の外部に放出されることにより、該溶融樹脂の発泡が不十分になることを知見した。本発明者らは、前記知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、特定の層構造を備える多層樹脂成形体にレーザー光を照射すると、気化した成分が該多層樹脂成形体の外部に放出されることなく、レーザー光により溶融された樹脂が十分に発泡して、マーキングのために十分な突出部を形成することができることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
そこで、本発明の多層樹脂成形体は、合成樹脂からなる基材と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層と、該基材と該エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層との間に介在する変性ポリオレフィン樹脂層とを備える多層樹脂成形体であって、該変性ポリオレフィン樹脂層が発泡した発泡膨出部と、該発泡膨出部を被覆するエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層とからなる突出部を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の多層樹脂成形体は、合成樹脂からなる基材と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層と、該基材と該エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層との間に介在する変性ポリオレフィン樹脂層とを備える多層樹脂成形体に、レーザー光を照射し、前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層を加熱して軟化させる一方、前記変性ポリオレフィン樹脂層を加熱して発泡させ、該発泡により前記多層樹脂成形体表面から膨出した発泡膨出部を前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層により被覆した突出部を形成すること特徴とする多層樹脂成形体の製造方法により製造することができる。
【0011】
本発明の多層樹脂成形体の製造方法では、合成樹脂からなる基材と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層と、該基材と該エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層との間に介在する変性ポリオレフィン樹脂層とを備える多層樹脂成形体に、レーザー光を照射する。このようにすると、前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層及び前記変性ポリオレフィン樹脂層が加熱され、該エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層が軟化する一方、該変性ポリオレフィン樹脂層に含まれる低分子量成分、揮発性成分、多層樹脂成形体を形成する成形工程で不可避的に混入する微量の空気等のガス成分が気化する。
【0012】
このとき、前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層は優れたガスバリア性を備えるので、気化した成分が前記多層樹脂成形体の外部に放出されることがなく、前記変性ポリオレフィン樹脂層を十分に発泡させ、前記発泡膨出部を形成することができる。また、このとき、前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層は加熱により軟化されているので、前記発泡膨出部を被覆した状態を維持しつつ、該発泡膨出部に追随して膨出し、該発泡膨出部を前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層により被覆した突出部を形成して、本発明の多層樹脂成形体を得ることができる。
【0013】
本発明の多層樹脂成形体において、前記突出部は文字、記号、図形のいずれかのマーキングの形状を持つことが好ましい。
【0014】
また、本発明の多層樹脂成形体において、前記突出部は前記多層樹脂成形体の表面から0.3~1.5mmの範囲の高さで突出していることが好ましい。本発明の多層樹脂成形体は前記突出部が前記多層樹脂成形体の表面から前記範囲の高さで突出していることが、前記マーキングの形状を持つために好適である。前記突出部の高さが0.3mm未満では前記マーキングの形状として不十分になることがあり、1.5mm超とすることは技術的に困難である。
【0015】
また、本発明の多層樹脂成形体において、前記変性ポリオレフィン樹脂層は、例えば、前記基材と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層とを接着する接着剤層とすることができる。
【0016】
また、本発明の多層樹脂成形体において、前記変性ポリオレフィン樹脂層は、不飽和カルボン酸を共重合又はグラフト重合して変性した酸変性ポリエチレン樹脂又は酸変性ポリプロピレン樹脂を含む樹脂からなることが好ましい。前記変性ポリオレフィン樹脂層は前記樹脂からなることにより、融点がエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂に比べ低いことも相まって、容易に前記発泡膨出部を形成することができる一方、前記基材と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層とを接着する接着剤層として好適に用いることができる。
【0017】
また、本発明の多層樹脂成形体は、合成樹脂製容器とすることができる。
【0018】
本発明の多層樹脂成形体の製造方法において、前記レーザー光は、例えば、UVレーザーであることが好ましい。
【0019】
また、本発明の多層樹脂成形体の製造方法において、前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層は30~120μmの範囲の厚さを備えることが好ましい。前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層は、厚さが30μm未満であるときには、前記気化した成分が前記多層樹脂成形体の外部に放出されて前記発泡膨出部の形成が不十分になることがあり、厚さが120μm超であるときには該エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層により前記発泡膨出部の形成が抑制されることがある。
【0020】
また、本発明の多層樹脂成形体の製造方法において、前記変性ポリオレフィン樹脂層は20~90μmの範囲の厚さを備えることが好ましい。前記変性ポリオレフィン樹脂層は、厚さが20μm未満であるときには、前記発泡膨出部の形成が不十分になることがあり、厚さが90μm超であるときには、発泡が過剰となることがある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の多層樹脂成形体からなる合成樹脂製容器の一実施形態を示す正面図。
【
図2】本発明の多層樹脂成形体の構成を示す説明的断面図。
【
図3】本発明の多層樹脂成形体における突出部の構成を示す説明的断面図。
【
図4】本発明の多層樹脂成形体における突出部の一実施形態を示す写真。
【
図5】本発明の多層樹脂成形体における突出部の他の実施形態を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の多層樹脂成形体からなる合成樹脂製容器1は、例えば、化粧品等のトイレタリー用多層合成樹脂製容器であり、該多層樹脂成形体の表面、例えば、胴部平坦部2a,2bを表示エリアとして、突出部3a,3bからなるマーキングを備えている。
【0024】
合成樹脂製容器1において、突出部3aは半球状であり、突出部3bは平面視長方形状の四角錐台状である。合成樹脂製容器1において、突出部3a,3bは、胴部平坦部2a,2bの表面から0.3~1.5mmの高さで突出しており、文字、記号、図形のいずれかのマーキングの形状を持つことができる。この結果、合成樹脂製容器1は、突出部3a,3bからなる前記マーキングにより所要の表示を行うことができる。
【0025】
図2に示すように、合成樹脂製容器1を形成する多層樹脂成形体4は、合成樹脂からなる基材5と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6と、基材5とエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6との間に介在する変性ポリオレフィン樹脂層7とを備える。
【0026】
基材5を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0027】
エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6を構成するエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂は、例えば、酸素透過率として3.5cm3・20μm/m2・24hrs・atm以下の範囲、好ましくは2.5cm3・20μm/m2・24hrs・atm以下の範囲のガスバリア性と、150~200℃の範囲、好ましくは160~200℃の範囲の融点とを備える。また、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6は、30~120μmの範囲の厚さを備えることが好ましい。
【0028】
変性ポリオレフィン樹脂層7は、基材5とエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6とを接着する接着層としても作用し、例えば、不飽和カルボン酸を共重合又はグラフト重合して変性した酸変性ポリエチレン樹脂又は酸変性ポリプロピレン樹脂を含む樹脂からなることが好ましく、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6を構成するエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂よりも融点、或いは軟化点の低い樹脂からなることが好ましい。また、変性ポリオレフィン樹脂層7は、20~90μmの範囲の厚さを備えることが好ましい。
【0029】
突出部3a,3bは、
図3に突出部3aを例として示すように、多層樹脂成形体4にレーザー光を照射し、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6を加熱して軟化させる一方、変性ポリオレフィン樹脂層7を加熱して軟化、発泡させ、該発泡により多層樹脂成形体4表面から膨出した発泡膨出部8を前記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6により被覆して形成することができる。前記レーザー光としては、波長が10~400nmの紫外域にあるUVレーザー、例えばYVO
4レーザーを用いることができる。
【0030】
次に、本発明の実施例を示す。
【実施例0031】
〔実施例1〕
本実施例では、黒色顔料を配合した黒色のポリエチレンを基材5とし、酸素透過率としてのガスバリア性が1.9cm3・20μm/m2・24hrs・atmであり、融点165℃(軟化点152℃)のエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(株式会社クラレ製、商品名:エバール)をエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6とし、基材5と、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6との間に、不飽和カルボン酸をポリエチレンにグラフト重合した、酸価3.0~10mg/g、軟化点126℃の酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社製、商品名:アドマーNB550)を変性ポリオレフィン樹脂層7として配置して共押出成形により、多層樹脂成形体4としての合成樹脂製容器1を形成した。
【0032】
本実施例で得られた合成樹脂製容器1は、基材5の厚さが1.0mm、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6の厚さが80μm、変性ポリオレフィン樹脂層7の厚さが60μmであった。
【0033】
次に、本実施例で得られた合成樹脂製容器1の胴部平坦部2aの直径1.4mmの円形の領域に、レーザー照射装置(キーエンス社製、商品名:MD-U1000C)を用い、波長355nm、出力2.5WのYVO
4レーザーを、レーザーパワー80%、移動速度1000mm/秒、往路と復路との間隔50μm、照射時間0.1秒の条件で照射して、胴部平坦部2aの表面から約0.5mmの高さで半球状に突出している突出部3aを形成した。得られた突出部3aを
図4に示す。
【0034】
得られた突出部3aの表面は、レーザー光線照射前のエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6の表面と同様に滑らかであり、突出部3aを30倍に拡大して表面の凹凸状態を観察したところ、顕著な凹凸は観察されなかった。
【0035】
〔実施例2〕
本実施例では、実施例1と同一の合成樹脂製容器1の胴部平坦部2bの幅2.0mm、長さ4.5mmの長方形の領域に、レーザー光を縦(長さ)方向と横(幅)方向に移動させて照射した以外は実施例1と全く同一の条件で照射して、胴部平坦部2bの表面から約0.7mmの高さで平面視長方形状の四角錐台状に突出している突出部3bを形成した。得られた突出部3bを
図5に示す。
【0036】
得られた突出部3bの表面は、実施例1と全く同一にして観察した結果、実施例1の突出部3aの表面と同様に滑らかで、顕著な凹凸は観察されなかった。次に、突出部3bの表面の長手方向長さ2.4mmの範囲からa~eの5箇所の測定箇所を選び、表面粗さ測定器(株式会社東京精密製)を用いて表面粗さを測定した。結果を表1に示す。
【0037】
別途、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6の表面のレーザー光非照射部位について、長さ2.4mmの範囲からa~eの5箇所の測定箇所を選び、突出部3bの表面と同一にして、表面粗さを測定した。結果を表1に示す。
【0038】
【0039】
表1から、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6の表面のレーザー光非照射部位の表面粗さRaの平均値が0.168μmであるのに対し、突出部3bの表面の表面粗さRaの平均値は0.201μmであって、19.6%の増加に過ぎない。従って、レーザー光照射の前後で、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6の表面の表面粗さRaに大きな変化はなく、本実施例のレーザー光照射により得られた突出部3bの表面は、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6の表面がレーザー光照射によって加熱軟化し、膨出突出し、次いで冷却固化するという過程を経て形成したにも拘らず、レーザー光照射前のエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層6の表面と同様の滑らかさを維持していることが明らかである。
【0040】
〔比較例1〕
本比較例では、実施例2に用いたものと同一の黒色顔料を配合した黒色のポリエチレンを基材5のみからなる樹脂成形体の表面に、実施例2と全く同一にしてレーザー光線照射を行ったところ、該樹脂成形体の表面には実施例2のような突出部は形成されず、レーザー光照射時間を延ばしても表面が粗面化されるのみで、突出部は形成されなかった。
1…合成樹脂製容器、 2a,2b…胴部平坦部、 3a,3b…突出部、 4…多層樹脂成形体、 5…基材、 6…エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂層、 7…変性ポリオレフィン樹脂層、 8…発泡膨出部。