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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135297
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】電子楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035029
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】田畑 亮
(72)【発明者】
【氏名】保田 善彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 信賢
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478JJ02
5D478JJ14
(57)【要約】
【課題】電子楽器において、スピーカを筐体の外側に露出させることなく、筐体の薄型化を図ることができ、さらに、電子楽器が台に載置された状態であってもスピーカの音を効率よく筐体の外側に放射できるようにする。
【解決手段】電子楽器MI1は、上下方向に間隔をあけて配置された上パネル11及び下パネル12を含み内部に空間を有する筐体1と、筐体1の内部に配置されたスピーカ3と、筐体1の内部においてスピーカ3を保持する構造体5と、を備える。スピーカ3は、少なくとも上向きに音を放射するように配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に間隔をあけて配置された上パネル及び下パネルを含み内部に空間を有する筐体と、
前記筐体の内部に配置されたスピーカと、
前記筐体の内部において前記スピーカを保持する構造体と、を備え、
前記スピーカは、少なくとも上向きに音を放射するように配置されている電子楽器。
【請求項2】
前記構造体は、前記筐体の内部の空間を前記スピーカが収容される第一空間と前記第一空間とは別の第二空間とに区画する空間区画壁を有し、
前記空間区画壁は、前記第一空間と前記第二空間とが上向きに順番に並ぶように前記第一空間と前記第二空間とを区画する上下区画壁部を含み、
前記スピーカは、互いに逆位相の音を前記第一空間と前記第二空間とに放射するように前記上下区画壁部に保持されている請求項1に記載の電子楽器。
【請求項3】
前記第一空間が前記筐体の壁部によっても構成され、
前記第一空間をなす前記筐体の壁部に、前記第一空間と前記筐体の外側の空間とを連通する連通孔が形成されている請求項2に記載の電子楽器。
【請求項4】
前記連通孔は、前記筐体の外側から見て、下方に向く前記筐体の下面、前記上下方向に直交する左右方向に向く前記筐体の側面、及び、前記上下方向及び前記左右方向に直交する後方に向く前記筐体の背面、のいずれか一つに開口している請求項3に記載の電子楽器。
【請求項5】
前記連通孔は、前記筐体の底壁部及び後壁部に跨って形成されている請求項3又は請求項4に記載の電子楽器。
【請求項6】
前記筐体の前記連通孔を内側から覆う不織布を備える請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の電子楽器。
【請求項7】
前記構造体は、前記不織布を前記筐体の内面に押さえつける不織布押え部を有する請求項6に記載の電子楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スピーカを備えた電子楽器(鍵盤楽器)が開示されている。特許文献1の電子楽器では、スピーカが筐体の外側(特に上側)から見えないように筐体の内部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5561498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スピーカを備える電子楽器には、持ち運びが可能で、台に載置した状態で使用するものがある。このような電子楽器の筐体の厚さは薄い方がより好ましい。また、外観意匠の観点から、スピーカは電子楽器の使用者から見えない位置(あるいは見えにくい位置)に配置されることが好ましい。また、このような電子楽器を台に載置した状態で使用する場合には、スピーカから放射される音が台の載置面によって阻害されないことが好ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、スピーカを筐体の外側に露出させることなく、筐体の薄型化を図ることができ、さらに、台に載置された状態であってもスピーカの音を効率よく筐体の外側に放射できる電子楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、上下方向に間隔をあけて配置された上パネル及び下パネルを含み内部に空間を有する筐体と、前記筐体の内部に配置されたスピーカと、前記筐体の内部において前記スピーカを保持する構造体と、を備え、前記スピーカは、少なくとも上向きに音を放射するように配置されている電子楽器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子楽器において、スピーカを筐体の外側に露出させることなく、筐体の薄型化を図ることができ、さらに、電子楽器が台に載置された状態であってもスピーカの音を効率よく筐体の外側に放射できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る電子楽器を示す平面図である。
図2図1の電子楽器のII-II矢視断面図である。
図3図1,2の電子楽器において、筐体下部(下パネル)上にスピーカ及び構造体を設けた構造を示す斜視図である。
図4図3のIV-IV矢視断面図である。
図5図3の構造において、スピーカを構造体から取り外した状態を示す分解斜視図である。
図6図3の構造を筐体下部と不織布と構造体とスピーカとに分解した分解斜視図である。
図7図3の構造において、筐体の壁部に形成された連通孔を筐体の外側から見た斜視図である。
図8図3のVIII-VIII矢視断面図である。
図9図3のIX-IX矢視断面図である。
図10】筐体の壁部に形成された連通孔の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1~9を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、電子楽器MI1は、筐体1と、スピーカ3と、構造体5と、を備える。本実施形態の電子楽器MI1は、鍵盤部7をさらに備える。鍵盤部7は、複数の鍵71を一方向(X軸方向)に配列することで構成されている。本実施形態の電子楽器MI1は、例えば、電子回路を利用して様々な音を発生させるシンセサイザーであってよい。
【0010】
筐体1は、上下方向(Z軸方向)に間隔をあけて配された上パネル11と下パネル12とを含み、内部に空間(以下、内部空間と呼ぶ。)を有する。
以下の説明では、上下方向において下パネル12から上パネル11に向かう方向(Z軸正方向)を上方と呼び、上方の逆方向(Z軸負方向)を下方と呼ぶことがある。また、上下方向に直交する方向であって複数の鍵71が配列される方向(X軸方向)を左右方向と呼び、上下方向及び左右方向に直交する方向(Y軸方向)を前後方向と呼ぶことがある。また、図面におけるY軸正方向を前方と呼び、Y軸負方向を後方と呼ぶことがある。
【0011】
筐体1は、上パネル11の周縁から下パネル12の周縁まで下方に延びる周壁部13を含む、これにより、上パネル11と下パネル12との間に内部空間が形成される。本実施形態において、周壁部13の一部は上パネル11と一体に形成されて上パネル11と共に筐体上部1Aを構成する。周壁部13の残部は下パネル12と一体に形成されて下パネル12と共に筐体下部1Bを構成する。これら筐体上部1Aと筐体下部1Bとが上下方向に重ねて配置されることで、内部空間を有する筐体1が構成される。
筐体上部1A(主に上パネル11)には、鍵盤部7を設置するための開口部111が形成されている。開口部111は、筐体1のうち前方側の部分に位置し、主に上方に開口している。
【0012】
図2~5に示すように、スピーカ3は、筐体1の内部に配置され、入力信号に応じた音を出力する。スピーカ3の具体的な構成は任意であってよい。本実施形態のスピーカ3は、入力信号に基づいて振動する加振器31と、加振器31と共に振動することで音を放射する振動板32と、を備える。加振器31は、例えばボイスコイル型のアクチュエータであってよい。振動板32は、例えば平板状など任意の形状に形成されてよいが、本実施形態では加振器31から離れるにしたがって径寸法が大きくなるコーン形状(円錐状、円錐台状)に形成されている。
加振器31及び振動板32の配列方向におけるスピーカ3の寸法は、配列方向に直交する方向におけるスピーカ3の寸法よりも小さい。
【0013】
加振器31は、加振器31及び振動板32の配列方向に振動する。このため、スピーカ3から出力される主な音は、コーン形状とされた振動板32の内面から主にD1方向(加振器31と振動板32とが順番に並ぶ方向)に伝播する。また、スピーカ3からは、コーン形状とされた振動板32の外面からD2方向(D1方向と逆の方向)などにも伝播する。D1方向に伝播する音の位相とD2方向に伝播する音の位相とは、互いに逆位相である。
【0014】
図2に示すように、構造体5は、筐体1の内部においてスピーカ3を保持する。構造体5に保持されたスピーカ3は、当該スピーカ3から主に音を放射する方向(D1方向)が上向きとなるように配置される。
構造体5に保持された状態でスピーカ3から放射される音の主な放射方向(D1方向)は、例えば完全な上方(Z軸正方向)であってもよいが、本実施形態では、上方に対して前方(Y軸正方向)に傾斜する方向(すなわち斜め上方)となっている。これにより、電子楽器MI1の使用者(演奏者)が主に位置する電子楽器MI1の前側(前後方向において鍵盤部7が位置する側)に向かって、スピーカ3の音が放射される。したがって、電子楽器MI1の使用者は、スピーカ3から放射された音を聞き取りやすくなる。
【0015】
スピーカ3及び構造体5は、筐体1の内部空間の任意の位置に配置されてよい。本実施形態において、スピーカ3及び構造体5は、図1,2に示すように、筐体1の内部空間のうち鍵盤部7(筐体上部1Aの開口部111)よりも後方側の部分に配置されている。具体的に、スピーカ3及び構造体5は、筐体1の後端部分に位置している。また、スピーカ3及び構造体5は、筐体1の内部空間のうち下端部分に位置している。さらに、本実施形態のスピーカ3及び構造体5は、左右方向において互いに間隔をあけた位置に2組配置されている。
【0016】
図2~5に示すように、構造体5は、筐体1の内部空間をスピーカ3が収容される第一空間S1と、第一空間S1とは別の第二空間S2とに区画する空間区画壁50を有する。空間区画壁50は、第一空間S1と第二空間S2とが上方(Z軸正方向)に順番に並ぶように区画する上下区画壁部51を含む。また、空間区画壁50は、主に上下方向に直交する方向(X軸方向、Y軸方向)に関して、筐体1の内部空間を第一空間S1と第二空間S2とを区画する環状区画壁部52も含む。
【0017】
図4~6に示すように、上下区画壁部51は、概ね平板状に形成されている。上下区画壁部51は、その板厚方向が概ね上下方向に向くように配置される。上下区画壁部51には、その板厚方向に貫通する貫通孔511が形成されている。
上下区画壁部51は、スピーカ3が互いに逆位相の音を第一空間S1(下向き)と第二空間S2(上向き)とに放射するようにスピーカ3を保持する。具体的に、スピーカ3は、上下区画壁部51の貫通孔511を塞ぐように上下区画壁部51に取り付けられる。この点についてより具体的に説明すれば、コーン形状の振動板32のうち加振器31とは逆側の端部には、フランジ部33が形成されている。そして、加振器31及び振動板32が上下区画壁部51よりも下側に位置するように(すなわち第一空間S1に配置されるように)、当該フランジ部33が上下区画壁部51の上面51aにネジ止め等によって固定される。これにより、スピーカ3が上下区画壁部51の貫通孔511を塞ぐ。
【0018】
この状態では、図3,4に示すように、振動板32の内面が第二空間S2側(主に上方側)に向いており、振動板32の外面が第一空間S1側(主に下方側)に向いている。これにより、上下区画壁部51に保持されたスピーカ3から第二空間S2に上向きの音(主にD1方向に伝播する音)を放射することができる。また、スピーカ3から第一空間S1に下向きの音(主にD2方向に伝播する音)を放射することができる。
本実施形態において、上下区画壁部51は、その板厚方向が上下方向に対して前方に若干傾斜するように配置される。これにより、上下区画壁部51に保持されたスピーカ3から放射される音の主な放射方向(D1方向)が、上方に対して前方(Y軸正方向)に傾斜する方向となる。
【0019】
図3~6に示すように、環状区画壁部52は、上下区画壁部51の周縁から下方に延びる環状又は筒状に形成されている。環状区画壁部52は、上下区画壁部51の下側に位置するスピーカ3を囲む。本実施形態の構造体5は、上下方向から見た平面視で矩形状に形成されている。また、構造体5は、平面視から見た縦横の辺が前後方向及び左右方向にそれぞれ延びるように配置される。このため、環状区画壁部52は、前後方向に並ぶ前側壁部521及び後側壁部522と、左右方向に並ぶ左側壁部523及び右側壁部524とを有する。
【0020】
図2,4,5に示すように、スピーカ3を収容する第一空間S1は、上記した構造体5だけではなく、筐体1の壁部によっても構成されている。本実施形態において、スピーカ3及び構造体5は、前述したように筐体1の内部空間のうち後端部分かつ下端部分に配置されている。このため、第一空間S1を構成する筐体1の壁部は、下パネル12である筐体1の底壁部14、及び、底壁部14の後端から上方に延びる後壁部15である。これら底壁部14及び後壁部15は、筐体下部1Bの一部として構成されている。後壁部15の上端部には後方に延びる延出壁部16が形成されている。
【0021】
また、図3~6に示すように、本実施形態では、筐体下部1Bの内面に、構造体5(特に環状区画壁部52)と共に第一空間S1と第二空間S2とに区画するための区画リブ17が形成されている。区画リブ17は、筐体下部1Bの内面から突出して、筐体下部1Bの内面のうち第一空間S1をなす領域を囲む環状に形成されている。区画リブ17は、筐体下部1Bの内面をなす底壁部14の底面14a、後壁部15の内側面15a、延出壁部16の上面16aにわたって形成されている。
【0022】
図3~5に示すように、構造体5の環状区画壁部52の下端が区画リブ17の上端に突き当たるように、構造体5が筐体下部1B上に配置されることで、筐体1の内部空間を第一空間S1と第二空間S2とに区画することができる。筐体下部1B上に配置された構造体5は、ネジ止め等によって筐体下部1Bに固定される。
【0023】
図4,6,7に示すように、第一空間S1を構成する筐体1の底壁部14及び後壁部15(筐体1の壁部)には、第一空間S1と筐体1の外側の空間とを連通する連通孔141,151が形成されている。これにより、連通孔141,151は、筐体1の外側から見て、下方に向く筐体1(底壁部14)の下面14b、及び、後方に向く筐体1(後壁部15)の背面15bに開口している。
【0024】
本実施形態では、底壁部14及び後壁部15に形成された連通孔141,151は、左右方向に間隔をあけて複数(図示例では14個)並んでいる。また、底壁部14に形成された複数の連通孔141は、前後方向に間隔をあけて複数(図示例では2個)並んでいる。底壁部14に形成された連通孔141と後壁部15に形成された連通孔151とは、互いに独立している。
【0025】
本実施形態の電子楽器MI1は、図4~6,8に示すように、不織布9をさらに備える。不織布9は、筐体1の連通孔141,151を内側から覆う。これにより、スピーカ3が連通孔141,151を通して筐体1の外側から視認されることを抑制又は防止することができる。また、筐体1の外側の塵埃が第一空間S1に侵入することを抑制することもできる。不織布9は、スピーカ3の音が通過できるように構成されている。
【0026】
本実施形態において、不織布9は、区画リブ17によって囲まれた筐体下部1Bの内面の領域全体に配される。すなわち、不織布9は、区画リブ17によって囲まれた底壁部14の底面14a及び後壁部15の内側面15aの領域に配される。区画リブ17によって囲まれた底壁部14の底面14a及び後壁部15の内側面15aの領域は、同一の不織布9によって覆われる。区画リブ17は、筐体1の内面に配置された不織布9のずれや動きを規制する。
【0027】
本実施形態において、不織布9は、両面テープや溶接によって底壁部14の底面14aの領域に固定される。不織布9は、例えば、両面テープによって底壁部14の底面14aの領域の一部に仮止めされた後に、区画リブ17によって囲まれた底面14aの前端領域において数か所(例えば3か所)で溶接される。また、不織布9は、構造体5の不織布押え部53によって、後壁部15の内側面15aに押さえつけられた状態に保持される(特に図5,8参照)。
【0028】
不織布押え部53は、空間区画壁50に一体に形成されている。不織布押え部53は、前後方向において筐体下部1Bの後壁部15に対向する環状区画壁部52の後端部のうち、左右方向における環状区画壁部52の両端部に位置する。各不織布押え部53は、後壁部15の内側面15aに沿うように上下方向に延びている。不織布押え部53の一部は、環状区画壁部52よりも下方に突出している。2つの不織布押え部53は、筐体1の内部空間を第一空間S1と第二空間S2とに区画するように構造体5が筐体下部1B(の内面)上に配置されることで、後壁部15の内側面15aに配された不織布9の左右方向の両端部分を内側面15aに向けて押さえつける。
以上により、区画リブ17によって囲まれた筐体下部1Bの内面の領域全体に不織布9を保持することができる。
【0029】
図5,6,9に示すように、構造体5の環状区画壁部52のうち、左右方向の両端において前後方向に延びて、第一空間S1を構成する左側壁部523及び右側壁部524の内面523a,524aは、互いに平行して前後方向及び上下方向に延びるほぼ平坦な面に形成されている。すなわち、左側壁部523及び右側壁部524の内面523a,524aには、大きな段差や凹凸が形成されていない。これにより、左右方向における第一空間S1の寸法は、前後方向や上下方向においてほぼ変化しない。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の電子楽器MI1では、スピーカ3が筐体1の内部に配置されていることで、スピーカ3が筐体1の外側に露出することを防ぐことができる。これにより、外観意匠が良好な電子楽器MI1を提供することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態の電子楽器MI1では、スピーカ3が上向きに音を放射するように配置されている。すなわち、加振器31及び振動板32の配列方向が概ね上下方向に並ぶようにスピーカ3が配置されている。加振器31及び振動板32の配列方向におけるスピーカ3の寸法は、配列方向に直交する方向におけるスピーカ3の寸法よりも小さい。このため、スピーカ3が前後方向や左右方向に向けて音を放射するように配置される場合と比較して、上下方向におけるスピーカ3の寸法を小さく抑えることができる。したがって、スピーカ3を内部に配置する筐体1の薄型化を図ることができる。
【0032】
さらに、本実施形態の電子楽器MI1では、スピーカ3が上向きに音を放射するように配置されている。このため、下パネル12が台に接触するように電子楽器MI1を不図示の台に載置した状態であっても、スピーカ3の音を効率よく筐体1の外側に放射することができる。
【0033】
なお、本実施形態の電子楽器MI1では、スピーカ3から上向きに放射した音は、例えば図2に示すように、筐体上部1A(上パネル11)に形成された鍵盤部7用の開口部111を通して筐体1の外側に放射することができる。具体的に、スピーカ3から上向きに放射した音は、開口部111の縁部分と鍵盤部7との隙間を通して筐体1の前方に放射することができる。また、開口部111に隣接する上パネル11の縁から下方に延びて開口部111の内面をなす板状部分に、前後方向(板厚方向)に貫通する貫通孔を形成した場合、スピーカ3から上向きに放射した音は、当該板状部分の貫通孔を通して筐体1の前方に放射することもできる。
また、筐体1内部に設けられた電子回路を操作するための操作子が上パネル11に設けられる場合、スピーカ3から上向きに放射した音は、上パネル11に形成された操作子用の貫通孔を通して筐体1の外側(特に上方)に放射することもできる。
【0034】
上記したように、スピーカ3から上向きに放射された音を筐体1の前方や上方に放射できることで、スピーカ3から放射された音を筐体1の外側に放射するための専用の孔(放音用の孔)を上パネル11に形成する必要がなくなる。したがって、上パネル11上における操作子の実装領域を広く確保することができる。
【0035】
また、本実施形態の電子楽器MI1では、スピーカ3を保持する構造体5の上下区画壁部51によって、筐体1の内部空間が、スピーカ3を収容する第一空間S1と、第一空間S1の上側に位置する第二空間S2とに区画される。また、スピーカ3は、互いに逆位相の音を第一空間S1と第二空間S2とに放射するように上下区画壁部51に保持されている。このため、スピーカ3から第二空間S2に上向きの音を放射することができ、また、スピーカ3から第一空間S1に下向きの音を放射することができる。
そして、スピーカ3から放射される互いに逆位相の音は、上下区画壁部51によって区画された第一空間S1と第二空間S2とに放射される。これにより、スピーカ3から放出される逆位相の音が互いに干渉して打ち消し合うことを防ぐことができる。
【0036】
また、本実施形態の電子楽器MI1では、第一空間S1をなす筐体1の壁部(底壁部14、後壁部15)に、第一空間S1と筐体1の外側の空間とを連通する連通孔141,151が形成されている。このため、スピーカ3から第一空間S1に放出される音を、筐体1の連通孔141,151を通して筐体1の外側に放射することができる。これにより、スピーカ3の音を筐体1の外側に効率よく放射することができる。
また、当該連通孔141,151が形成されていることで、第一空間S1が筐体1の外側に対して密閉されている場合と比較して、第一空間S1における空気ばねの影響が小さくなり、スピーカ3の振動板32が振動しやすくなる。その結果として、スピーカ3から放射される音の音量の増強を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態の電子楽器MI1では、筐体1の外側から見て、連通孔141,151が筐体1の下面14b及び筐体1の背面15bに開口している。このため、筐体1の前側(前後方向において鍵盤部7が配置されている側)から電子楽器MI1を見ても、連通孔141,151を視認し難くなる。したがって、筐体1に連通孔141,151を形成しても、筐体1の前側から見た電子楽器MI1の外観意匠(デザイン性)を保持することができる。筐体1の前側には、主に電子楽器MI1の使用者(演奏者)が居ることが多いため、特に使用者から見た電子楽器MI1の外観意匠を保持することができる。
【0038】
また、本実施形態の電子楽器MI1によれば、構造体5は、不織布9を筐体1の内面に押さえつけるための不織布押え部53をさらに有する。このため、筐体1の内部空間を第一空間S1と第二空間S2とに区画するように構造体5を筐体1の内面に設置するだけで、不織布9を筐体1の内面に押さえつけることができる。これにより、不織布9を、両面テープや溶接のみによって筐体1の内面に固定する場合と比較して、効率よく(短時間で)不織布9を筐体1の内面に保持することができる。また、電子楽器MI1の製造コストの削減を図ることもできる。
【0039】
また、本実施形態の電子楽器MI1では、第一空間S1の左右方向の両端を構成する構造体5の左側壁部523及び右側壁部524の内面523a,524a(第一空間S1の内側の側面)が、互いに平行して前後方向及び上下方向に延びる平坦な面に形成されている。これにより、これらの左側壁部523及び右側壁部524の内面523a,524aに大きな段差や凹凸が形成される場合と比較して、第一空間S1に放射されたスピーカ3の音に関して、所定の周波数帯域(例えば500Hz付近の帯域)におけるPeak-Dipを低減あるいは解消することができる。すなわち、第一空間S1に放射されたスピーカ3の音の周波数特性を改善することができる。
【0040】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0041】
本発明の電子楽器では、例えば図10に示すように、底壁部14に形成された連通孔141と後壁部15に形成された連通孔151とが繋がっていてもよい。すなわち、第一空間S1と筐体1の外側の空間とを連通する連通孔は、筐体1の底壁部14と後壁部15とに跨って形成されてもよい。図10においては、互いに繋がっている底壁部14及び後壁部15の連通孔141,151が、左右方向に間隔をあけて複数(図示例では14個)並んでいる。
底壁部14の連通孔141と後壁部15の連通孔151とが繋がる場合には、筐体1の外側に対する第一空間S1の開口面積が大きくなる。これにより、スピーカ3から放射される音の音量の増強をさらに図ることができる。
【0042】
本発明の電子楽器において、構造体5と共に第一空間S1を構成する筐体1の壁部には、例えば左右方向における底壁部14の端部から上方に延びる側壁部18(図2参照)が含まれてもよい。この場合、側壁部18には、第一空間S1と筐体1の外側の空間とを連通する連通孔が形成されてもよい。この連通孔は、筐体1の外側から見て、左右方向に向く筐体1の側面18b(図1参照)に開口するため、上記実施形態と同様に、連通孔を形成しても、筐体1の前側から見た電子楽器の外観意匠を保持することができる、という効果を奏する。
【0043】
本発明の電子楽器において、構造体5と共に第一空間S1を構成する筐体1の壁部は、例えば底壁部14、後壁部15及び側壁部18のうち一つ又は二つだけであってもよい。また、第一空間S1を構成する筐体1の壁部は、例えば底壁部14、後壁部15及び側壁部18の三つ全てであってもよい。
【0044】
本発明の電子楽器では、例えば筐体1の内面に区画リブ17が形成されなくてもよい。例えば、構造体5の環状区画壁部52の下端が筐体1の内面に直接接することで、筐体1の内部空間が第一空間S1と第二空間S2とに区画されてもよい。
【0045】
本発明の電子楽器において、構造体5の空間区画壁50は、例えば環状区画壁部52を備えず、上下区画壁部51のみを備えてもよい。この場合、上下区画壁部51は、筐体1の内部空間のうち下方側の空間領域全体を第一空間S1とし、上方側の空間領域全体を第二空間S2とするように構成されてもよい。
【0046】
本発明の電子楽器において、構造体5は、例えば筐体1と一体に形成されてもよい。構造体5が筐体1の筐体下部1Bと一体に形成される場合には、例えば、筐体下部1Bのうち少なくとも第一空間S1を画成する壁部(例えば底壁部14、後壁部15)が、筐体下部1Bの他の壁部と別個に形成され、構造体5の下側に配されるスピーカ3の部分を覆う蓋として機能してもよい。
【0047】
本発明の電子楽器において、スピーカ3が収容される第一空間S1は、例えば構造体5のみよって構成されてもよい。この場合、構造体5は、環状区画壁部52の下端を塞ぐように構成されればよい。
【0048】
本発明の電子楽器において、スピーカ3は、構造体5によって保持された状態で、少なくとも上向きに音を放射するように構成されていればよい。すなわち、スピーカ3は、例えば下向きに音を放射しないように構成されてもよい。
【0049】
本発明の電子楽器は、鍵盤部7を備える鍵盤楽器に限らず、例えばDJミキサーなどであってもよく、音の作成や編集を行ったり、音を発生させたりするための操作子(例えば操作ボタン)を備えてよい。
【符号の説明】
【0050】
1…筐体、3…スピーカ、5…構造体、9…不織布、11…上パネル、12…下パネル、14…底壁部(壁部)、14b…下面、15…後壁部(壁部)、15b…背面、18…側壁部(壁部)、18b…側面、50…空間区画壁、51…上下区画壁部、53…不織布押え部、141,151…連通孔、MI1…電子楽器、S1…第一空間、S2…第二空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10