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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135300
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A01K89/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035032
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】清水 栄仁
(72)【発明者】
【氏名】弘田 悠将
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BA01
2B108BA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロータの軽量化を図りつつ、糸絡みを効果的に防止する魚釣用スピニングリールを提供する。
【解決手段】魚釣用スピニングリールは、ハンドルで連動回転する駆動軸に取着固定される前壁22を具備した筒状部20と、筒状部の両側に対向し前方に向けて突設された一対の支持アームと、ハンドルが設けられるリール本体の前部外周が所定の隙間を以て嵌入する後部フランジ部25と、を備えたロータ10を有する。そして、筒状部20から後部フランジ部25に向けてフランジ開口部25d,25eを形成したことを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルで連動回転する駆動軸に取着固定される前壁を具備した筒状部と、前記筒状部の両側に対向し前方に向けて突設された一対の支持アームと、前記ハンドルが設けられるリール本体の前部外周が所定の隙間を以て嵌入する後部フランジ部と、を備えたロータを有する魚釣用スピニングリールであって、
前記筒状部から前記後部フランジ部に向けてフランジ開口部を形成したことを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記後部フランジ部の開口径は、前記筒状部の後部の開口径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記フランジ開口部は、前記一対の支持アームが形成されるそれぞれの位置に対して略90°の位置で対向して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記後部フランジ部は、略リング状に形成されており、その後端面は、前記一対の支持アームの少なくとも一方の後端面と面一に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項5】
前記筒状部の前壁の外周には、径方向外方に突出する係止部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関し、詳細には、ロータ部分に特徴を有する魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用スピニングリールは、ハンドルの巻き取り回転操作によって連動回転するロータ及び前後動するスプールを備えた構造である。前記ロータには、円筒状に構成された本体の後部両側に一対の支持アーム(アーム部)が対向するように形成されており、一方の支持アームに設けられた釣糸案内装置を介して前後動するスプールに釣糸を巻回するように構成されている。
【0003】
前記ロータに関し、例えば、特許文献1には、強度維持と慣性力低減による軽快な回転性能実現のための軽量化を図る構造が開示されている。この特許文献1に開示されたロータは、一対の支持アーム部間に、略U字形状の補強部材を配設すると共に、この補強部材をロータ後部に接続した構造が開示されている。また、ロータの筒状部には、開口部や切欠部を形成することで軽量化を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4939573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したロータは、筒状部に開口部や切欠部を形成し、略U字形状の補強部材の連結構造によって、軽量化及び強度維持を図るように構成している。しかしながら、魚釣り操作時の釣糸の緩み、糸縒れ、リールの姿勢等の影響により、ロータ後部側とリール本体前部との間に釣糸が落下した際、ロータ後部、支持アーム後部及び補強部材等の間隙から釣糸が内部に落下、浸入し易く、糸絡み問題を誘発するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、ロータの軽量化を図りつつ、糸絡みを効果的に防止する魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、ハンドルで連動回転する駆動軸に取着固定される前壁を具備した筒状部と、前記筒状部の両側に対向し前方に向けて突設された一対の支持アームと、前記ハンドルが設けられるリール本体の前部外周が所定の隙間を以て嵌入する後部フランジ部と、を備えたロータを有する魚釣用スピニングリールであって、前記筒状部から前記後部フランジ部に向けてフランジ開口部を形成したことを特徴とする。
【0008】
上記した構成の魚釣用スピニングリールのロータは、筒状部から、ロータの後部となる後部フランジ部に向けてフランジ開口部を形成したことで、ロータの軽量化と強度維持が図れるようになる。また、後部フランジによって釣糸がロータの内部へ侵入することが防止でき、糸絡みを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロータの軽量化を図りつつ、糸絡みを効果的に防止する魚釣用スピニングリールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一実施形態を示す側面図。
図2図1に示した魚釣用スピニングリールを反対側から見た側面図。
図3図1に示した魚釣用スピニングリールを前方の上方側から見た斜視図。
図4】ロータを斜め上方側から見た斜視図。
図5】ロータの筒状部の前壁を分解して、ロータを上方側から見た斜視図。
図6】ロータを側方側から見た中央断面図。
図7】ロータの正面図。
図8】ロータを釣糸案内装置が設けられていない側から見た側面図。
図9】ロータを釣糸案内装置が設けられている側から見た側面図。
図10】ロータの底面図。
図11】ロータを底側から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る魚釣用スピニングリールの実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
図1から図3は、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一構成例を示す図である。最初に魚釣用スピニングリールの全体構成の概略について説明する。なお、以下の説明において、ロータの前方及び後方は、図1及び図2で示す方向を意味する。
【0012】
魚釣用スピニングリール1のリール本体2には、釣竿に装着される脚部2Aが形成されている。前記リール本体内には、ハンドル軸が軸受を介して回転可能に支持されており、ハンドル軸の端部には、巻き取り操作されるハンドル3が装着されている。また、前記ハンドル軸には、公知の駆動力伝達機構が連結されており、ハンドル3の回転操作に伴ってロータ10を回転駆動すると共に、公知のオシレーティング機構を介してスプール5を前後動させるようになっている。
【0013】
前記スプール5は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の比重の軽い金属、或いは、合成樹脂材等で形成されており、釣糸が巻回される釣糸巻回胴部5aと、釣糸巻回胴部5aの糸巻量を前後方向で規定する前フランジ部5b及び後フランジ部(スカート部)5cとを有している。
【0014】
前記ロータ10には、一対の支持アーム11,12が略180°間隔で、軸方向前方に延出して対向するように形成されており、前記スプール5は、一対の支持アーム間に位置して前後に往復駆動される。各支持アーム11,12の先端部11A,12Aには、ベール支持部材14,15の回動支持部14a,15aが、釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置との間で回動可能に支持されている(図4参照)。また、それぞれのベール支持部材14,15には、半環状のベール17の基端部が取着されており、ベール17は、前記ベール支持部材14,15と共に回動可能となっている。そして、一方のベール支持部材15の先端には、釣糸をスプールに案内する釣糸案内装置50が配設されている(図2参照)。
【0015】
なお、ロータ10は、後述するように筒状部を備えており、前記一対の支持アーム11,12は、筒状部の後部から径方向外方に突出する接続部23を介して前方に突出するように形成される。ロータ10の後部には、筒状部の外周面よりも径方向外方に突出する後部フランジ部25が形成されており、この後部フランジ部25の内周には、公知のようにリール本体2の前部外周(図示せず)が所定の隙間を以て嵌入される。
【0016】
前記釣糸案内装置50は、公知のように、釣糸をスプール5に案内する釣糸案内部(ラインローラ)51と、釣糸をベール17からラインローラ51へ誘導する釣糸誘導部(ラインスライダ)53とを備えており、釣糸誘導部53には、ベール17の一方の基端部17aが結合されている。前記ベール17は、中空形状に形成されており、釣糸誘導部53の装着部53aに一体的に結合されているが、ベール17は、中実構造で釣糸誘導部53の装着部53aに一体的に結合される構成であっても良いし、釣糸誘導部53の装着部53aからそのまま延出させて釣糸誘導部53と共に一体形成される構成であっても良い。また、釣糸誘導部53の装着部53aとベール17の基端部17aとは段差なく面一状に結合されていることが好ましい。
【0017】
図1から図3は、釣糸巻き取り状態を示しており、この状態でハンドル3を回転操作すると、駆動力伝達機構を介してロータ10が回転駆動され、オシレーティング機構を介してスプール5は前後に往復駆動される。これにより、釣糸は、ロータ10と共に回転するベール支持部材15の釣糸案内装置50のラインローラ51を介してスプール5の釣糸巻回胴部5aに均等に巻回される。
【0018】
前記ベール17は、図に示す釣糸巻き取り状態からベール支持部材14,15の回動と共に釣糸放出位置に回動(矢印方向の回動)されると、スプール5に巻回されている釣糸は放出状態(図示せず)となる。そして、この釣糸放出状態で釣糸を放出した後、ベール17を釣糸放出位置から釣糸巻き取り位置に回動すると、釣糸は、ベール17によってピックアップされて釣糸誘導部53に沿ってラインローラ51に案内され、図に示す釣糸巻き取り状態となる。
【0019】
上記した構成において、魚が掛かった状態で釣糸を巻回する際には、釣糸に大きな引張力が作用しており、この状態でロータを巻き取り方向に回転すると、ベール支持部材15を介して支持アーム12には大きな負荷が作用する。この負荷は、特に、釣糸案内装置50が設けられる支持アーム12の反ベール側の側部に作用することから、この部分の強度を向上しないと全体の剛性バランスが低下してしまう。本実施形態では、重量を増加させることなく、この部分の剛性を高めるように、後述するような補強部を設けている。
【0020】
前記ベール17は、釣糸放出位置と釣糸巻き取り位置との間で回動され、いずれか一方の位置に振り分け保持されるようになっている。この場合、釣糸放出位置から釣糸巻取り位置への回動(反転復帰)は、ベール17を手で把持して手動で行なう、或いは、ハンドル3を巻き取り操作した際、反転機構を介して行なうことが可能である。この反転機構は公知であるためその構成については省略するが、支持アーム11,12の一方の内部に組み込むことが可能であり、本実施形態では、釣糸案内装置50が装着される側の支持アーム12内に組み込まれている。このため、支持アーム12の外側には、反転機構を収容するための凹部12B´が形成されており、凹部12B´の開口部は支持アーム12に取着されるカバー部材12Bによって閉塞されるようになっている(図9参照)。
【0021】
前記釣糸案内装置50のラインローラ51は筒状に形成されて、前記ベール支持部材15と釣糸誘導部53との間で回転可能に支持されている。本実施形態のラインローラ51は、前記釣糸誘導部53をベール支持部材15に対して固定する取着部材(本実施形態ではネジ部材)55の軸部に、図示しない公知の軸受を介在させることで回転可能に支持されている。
【0022】
前記釣糸誘導部53は、軽量で摺動性の良い金属材料、例えば、薄膜のステンレス合金やアルミ合金で一体形成されており、ベール支持部材15側で略円形に開口した開口53bを有すると共に、その開口53bの反対側でベール17の基端部17aと結合される前記装着部53aを備えている。
【0023】
また、前記釣糸誘導部53には、前記取着部材55の頭部55aを外側に突出させることなく収容する凹部53Aが形成されている。この凹部53Aは、前記装着部53aからベール支持部材側に向けて、軸方向に沿って、両サイドで次第に広がると共に上昇する一対の傾斜部53d間に形成されている。そして、凹部53Aの両サイドの前記一対の傾斜部53dの上端側は、リング状の環状部53eに一体化されてベール支持部材側が前記開口53bを形成しており、前記一対の傾斜部53dの下端側は、前記装着部53aと一体化されている。
【0024】
上記した構成では、取着部材55がベール17側から差し込まれ(図4の矢印D1方向)、取着部材の軸部の中間部に軸受を介在してラインローラ51が回転可能に支持されている。更に、その軸部の端部に形成された雄ネジ部がベール支持部材15の内面に設けられた雌ネジ部に螺合、固定されて、釣糸誘導部53はベール支持部材15に固定される。このため、釣糸誘導部53をベール支持部材15に取着する取着部材55は、図2及び図3に示すように、ベール17側に面しており、ベール支持部材15の外側面から露出しないため、外側面を滑らかな面に形成して釣糸の絡みを抑制することが可能となる。
【0025】
次に、ロータ10の基本構造について、図1から図3に加え、図4から図11を参照して詳細に説明する。
前記ロータ10の本体10Aは、例えば、アルミ合金やマグネシウム合金、硬質樹脂など、軽量で強度が高い材料で一体形成されている。前記本体10Aには、前記一対の支持アーム11,12が、略180°の間隔をおいて、スプール軸に沿って前方に突出するように一体形成されており、一対の支持アーム11,12間には、筒状部20が形成されている。
【0026】
前記筒状部20の筒壁21は、前方側が前壁22によって閉塞されており、後端は略円形に開口されている。この場合、後端は、後述する後部フランジ部25と一体化されており、後部フランジ部25の後端の内側縁25´は、略円形となって開口している(その開口径をφaとする;図10参照)。また、筒壁21は、略円筒形状に形成されており、その筒壁21には、軽量化が図れるように筒壁開口部が形成されている。本実施形態の筒壁開口部は、筒壁21の上側から筒壁21の後端縁に至る領域まで、周方向に沿って円弧状に形成されており、前記一対の支持アーム11,12と対向している一定範囲の円弧壁21a,21b以外の領域は、略同じ形状の筒壁開口部21d,21eが形成されている(図4から図7参照)。なお、円弧壁21a,21bのそれぞれの下端は、接続部23を介して支持アーム11,12の下端部に接続されており、各円弧壁の表面は、前方に向けて延出する支持アームに対して一定間隔をおいて対向している。
【0027】
このように、筒壁開口部21d,21eを、筒壁21の後端縁を欠いて大きく形成したことで、筒壁開口部21d,21eが形成されている領域は空間となっており、この部分に、筒壁21の後端縁と略同一面内で、径方向に突出するように形成された後部フランジ部25が配設されている。本実施形態の後部フランジ部25は、筒壁21及び一対の支持アーム11,12と一体形成されており、前記開口径φaは、筒壁21の後端(筒状部後部)の開口径φb(図6図10参照)よりも大径に形成されている(φa>φb)。すなわち、後部フランジ部25は、筒壁開口部21d,21eの径方向外方で、筒壁開口部に沿うように環状(略リング状)に形成されてロータの筒状部の後部(筒壁21の後端部)を構成しており、前記支持アーム11,12の基部の各両側部同士を連結している。
【0028】
これにより、後部フランジ部25の径方向内側には、筒壁21の後端縁から後部フランジ部に向けてフランジ開口部25d,25eが形成された状態となっている。本実施形態のフランジ開口部25d,25eは、前記一対の支持アーム11,12が形成されるそれぞれの位置に対して略90°の位置で対向して形成されており、それぞれのフランジ開口部25d,25eが前記筒壁開口部21d,21eと一体化されて、筒状部からフランジ部に亘って大きな開口領域を形成し、これにより、効率的に強度維持を図りながら軽量化されている。この場合、フランジ開口部は、一対の支持アーム11,12が形成される位置(接続部23の位置)に形成されていても良い。
【0029】
前記後部フランジ部25は、前記支持アーム11,12の後端部に接続されて、支持アーム11,12と一体化されており、好ましくは、同一の素材によって一体形成されている。
なお、本実施形態の後部フランジ部25は、支持アーム11,12間において、径方向外側に後部フランジ部25に沿うように湾曲壁25aを一体形成している。この湾曲壁25aは、後述する補強部26a~26dと一体化されており、補強部の表面と面一状で、後部フランジ部25の下端縁から前方に向けて次第に拡径する滑らかなお椀状の表面形状を備えている。
【0030】
前記筒壁21に上記したような筒壁開口部21d,21eを形成すると共に、フランジ開口部25d,25eを有する後部フランジ部25を形成することで、円弧壁21a,21bの両サイドは、広く開口した状態となっている。また、前記筒状部20の筒壁21の前壁22は、筒壁21の開口前端縁を、所定の幅で径方向に接続する平坦状のブリッジ20Aを備えている(図5参照)。この場合、ブリッジ20Aの両サイドは、前記筒壁開口部21d,21eによって、後部フランジ部25に至るまで広い空間状に形成されていても良いが、本実施形態では、円弧壁21a,21bの上端側の両サイドを、半環状のフレーム21f,21gによって接続した構成となっている。すなわち、ブリッジ20Aは、図5に示すように、両支持アーム11,12間で前記筒状部20の筒壁21に橋設された状態となっており、その両側は、前記半環状のフレーム21f,21gが配設されて空間部が形成された状態となっている。
【0031】
なお、筒壁開口部21d,21eを大きく形成することで、ロータとして軽量化が図れるが、あまり周方向に広く形成すると、強度が低下してしまい、特に、支持アーム11,12が形成される位置は、大きな負荷が作用することから、少なくとも、支持アーム11,12と対向する一定範囲の円弧領域には開口部を形成しないことが好ましい。また、半環状のフレーム21f,21gについては、筒壁21の上端縁に沿って形成しても良いが、本実施形態では、筒壁21の上端縁よりも下方位置に形成されており、これにより、円弧壁21a,21bの変形を効果的に防止すると共に、以下のカバー部材を係合させることでカバー部材を安定化させている。
【0032】
前記ブリッジ20Aの表面には、カバー部材(キャップ形状をしたカバー部材)22Aが取着され、このカバー部材22Aとブリッジ20Aによって筒状部20の筒壁21の前壁22が構成されている。このカバー部材22Aは、図5及び図6に示すように、円周壁22aと、円周壁の上方開口縁で径方向外方に突出して糸落ちを抑制する環状フランジ部(係止部)22bと、中央領域に略矩形状の開口22dが形成された底部22cとを備えている。前記円周壁22aは、対向する2か所で円弧状に垂下する一対の円弧壁22a´を備えており、底部22cの裏面は、ブリッジ20Aに対して取着される取着手段、具体的に本実施形態では、4箇所(何か所であっても良く、位置も限定されることはない)に形成したボス22eを介してブリッジ20Aに取着できるようになっている。
【0033】
そして、このカバー部材22Aをブリッジ20Aに取着すると、カバー部材の底部22c、一対の円弧壁22a´によって、上記したブリッジ20Aの両サイドは、半環状のフレーム21f,21gが形成される部分までの開口部が閉塞される。すなわち、このカバー部材22Aの取着状態では、前記環状フランジ部22bが筒壁21の各円弧壁21a,21bの上端縁に当て付いて係止されると共に、円弧状に垂下する一対の円弧壁22a´が、それぞれ半環状のフレーム21f,21gの内面に当て付いて筒壁開口部21d,21eの上側を閉塞する。
【0034】
前記ブリッジ20Aには、中央にスプール軸が挿通されると共に、前記駆動力伝達機構の構成要素であるピニオンギア(駆動軸)に固定するナットを装着するための開口20aが形成されており、更に、前記カバー部材22Aのボス22eが嵌入されるように、ボスと対応する位置に孔20bが4箇所(何か所であっても良く、位置も限定されることはない)に形成されている。
【0035】
このようなブリッジ20Aに対して、前記カバー部材22Aの底部22cをブリッジ20Aの表面に当て付け、孔20bから突出するボス22eを溶着する(図10図11参照)ことで、カバー部材22Aはブリッジ20Aに装着されて、ブリッジと共に前壁22を構成する。この状態では、上記したように、ブリッジ20Aの両側にある半環状のフレーム21f,21gとの間の空間部は、カバー部材22Aによって閉塞された状態となり、フレーム状となった筒壁21の上方部分は効率的に軽量化及び防塵性が図れる。
なお、ロータの筒状部の前壁については、別体であるカバー部材22Aを取着するのではなく、筒状部に一体形成した構造であって良い。このような構造では、筒状部の前壁に、径方向外方に突出する係止部(糸落ち防止用の係止部)が一体形成される。
【0036】
前記後部フランジ部25は、筒状部20の筒壁21に上記した筒壁開口部21d,21eを形成したことで、筒壁21の円弧壁21a,21bの下端の両側は、半環状のフレーム構造で接続された状態となっており、その接続した部分が前記後部フランジ部25となって筒状部20の後端の開口を規定している。この場合、支持アーム11,12の各両側部は、フレーム構造となった後部フランジ部25に一体的に接続されており、後部フランジ部25と共に一体化されている。これにより、ロータの本体10Aは、大きな負荷が作用する一対の支持アーム11,12が効果的に補強され、必要な強度を維持しつつ、可及的に軽量化を図ることが可能となる。
なお、筒状部20の筒壁21に形成される筒壁開口部21d,21eの大きさ、後部フランジ部25の肉厚、表面形状、断面形状を種々変形することにより、ロータとして強度の向が図れると共に、軽量化を効果的に達成することが可能となる。
【0037】
前記支持アーム11,12の各両側部と後部フランジ部25を一体化する接続の仕方や、その接続位置については、特に限定されることはない。例えば、支持アーム11,12の後端の両側部と後部フランジ部25を一体的に接続したり、更に、支持アーム11,12の剛性を高めるために、支持アーム11,12の後端から前方に至る両側の領域で一体的に接続する等、適宜変形することが可能である。特に、一対の支持アームの内、釣糸案内装置50が配設される側の支持アーム12は、上述したように、反ベール側の側面に大きな負荷が作用することから、この部分については、効果的に補強することが好ましい。
【0038】
本実施形態では、支持アーム11,12の各両側部と、ロータの後部となる後部フランジ部25との間は、後端部から支持アームの側部に向けて先細となる形状の補強部26a,26b,26c,26dを形成することで接続されている。
【0039】
この場合、前記反転機構が配設されていない側の支持アーム11は、図1及び図10に示すように、その両側に補強部26a,26bが接続されている。この両側の補強部26a,26bは、支持アーム11の後方側(後部)を開口して二股形状に形成され、そのまま後部フランジ部25に段差のない面一形状となって接続されている。すなわち、両補強部26a,26b間は、略矩形の開口部27が形成された状態となっており、その上方の支持アーム11の外側に前記ベール支持部材14が回動可能に支持されている。
なお、支持アーム11は、単一の板状に形成されて後部フランジ部25に面一状に接続され、その両側に補強部を形成する構造であっても良いが、上記したように二股形状の補強部26a,26bの前方側に円板状の先端部11Aを形成し、ここにベール支持部材14の回動支持部14aを回動可能に取着することで、軽量化を図りつつ剛性を高めることができる。
【0040】
また、前記反転機構が配設されている側の支持アーム12には、図2及び図9に示すように、支持アームの後端からベール支持部材15の支持部分にかけて、その両側に後部フランジ部に向けて延びる補強部26c,26dが接続されている。この場合、反ベール側の補強部26dと支持アーム12との間には、略三角形の開口部28が形成されており、補強部26dは二股状になって後部フランジ部25に接続されている。そして、この支持アーム12の上方の先端部12Aの外側には、前記ベール支持部材15の回動支持部15aが回動可能に支持されている。
【0041】
上記したように、支持アーム11,12に後部フランジ部25に接続される補強部26a~26dを形成したことで、支持アーム11,12の剛性を高めることができ、また、各補強部に上記した開口部27,28を形成し、前方に向けて先細となる形状にしたことで、ロータの本体の軽量化を図ることができ、デザインの向上を図ることが可能となる。この場合、各開口部27,28を規定するエッジは、支持アームの表面と直交する方向に形成されていても良いが、本実施形態のように、内側から外側に向けて次第に広がるような傾斜面(傾斜エッジ27a,28a)にすることで、デザインが向上すると共に、釣糸が絡み難くし、糸切れ等を効果的に防止することが可能となる。また、支持アーム11の両側の補強部26a,26bは、後部フランジ部25に対して段差のない面一形状となって接続されているため、糸絡みし難く、かつ、糸絡みが生じても抜け易くなる。
【0042】
前記支持アーム11,12にベール支持部材14,15を回動可能に支持するための取着方法は、図5に示すように、各支持アーム11,12の先端部11A,12Aの外側にベール支持部材14,15の回動支持部14a,15aを当て付け、矢印D2で示すように、中心領域から径方向外側に向けて、ワッシャ30aを介在して取着部材(本実施形態では、インサート成形されたピンにE型止め輪を取着した部材)30を締め付けることでなされる(支持アーム11側についても同様に固定される;図11参照)。この場合、支持アーム11,12の先端側の内面には、それぞれU字形状の凹所11a,12aが形成されており、内側から挿入される取着部材30の頭部が突出しないように構成されている。
【0043】
これにより、ベール支持部材14,15の支持領域の外側面から取着部材30が露出することはなく、ベール支持部材の外側面を滑らかな面にすることができ、釣糸が絡み難くすることができる。
【0044】
前記支持アーム12内に収容される反転機構を閉塞するカバー部材12Bには、図9に示すように、その内面にボス12dが形成されている。このボス12dには、メス螺子部が形成されており(タッピンネジを螺入する構成であっても良い)、ここに径方向内側から取着部材35を図5の矢印D3方向に螺合することで、カバー部材12Bは支持アーム12に取着される。このため、支持アーム12の反転機構を収容する凹部12B´の底面には、取着されるカバー部材12Bのボス12dと対応する位置にネジ孔12d´が形成されており、この部分に、矢印D3方向に向けて固定部材35を締め付けることでカバー部材12Bは支持アーム12に取着され、凹部12B´に配設される反転機構は閉塞される。
【0045】
この場合、上記したロータの筒壁21の円弧壁21a,21bには、図5に示すように、それぞれ筒壁開口部21h,21iが形成されており、取着部材35の固定作業が容易に行えるようにしている。すなわち、反転機構を収容した支持アーム12にカバー部材12Bを装着した状態で、取着部材35及びそれを固定する治具(図示せず)を支持アーム11の開口部27及びロータの筒壁21の筒壁開口部21h,21iを介して挿入することができ、カバー部材12Bの取着作業を容易に行うことが可能となる。
【0046】
これにより、支持アーム12に取着されるカバー部材12Bの外側面から取着部材35が露出することはなく、外側面を滑らかな面にすることができ、釣糸が絡み難くすることができる。
また、上記した構成では、ロータの筒状部20には、その筒壁21に複数の筒壁開口部21d,21e,21h,21iが形成されると共に、前記補強部26a,26b,26c,26dを介して前記後部フランジ部25と支持アーム11,12が一体化されたフレーム構造となっているため、強度を維持して可及的に軽量化を図ることが可能となる。特に、大きな負荷が作用する支持アーム11,12部分は、円弧壁21a,21bによって補強されると共に、補強部26a,26b,26c,26dと後部フランジ部25によって連結された状態となっているので、バランスが良く、強度の向上が図れるようになる。
【0047】
上記した魚釣用スピニングリールのロータ10は、筒状部20から、ロータの後部となる後部フランジ部25に向けてフランジ開口部25d,25eを形成したことで、ロータの軽量化と強度維持が図れると共に、後部フランジ部25によって釣糸がロータの内部へ侵入することが防止でき、糸絡みを抑制することが可能となる。特に、後部フランジ部25を、一対の支持アーム11,12の後部と略同一面内で、筒状部の後部の開口径よりも大きい開口径なるリング形状にしたことで、釣糸が引っ掛かり難く、ロータ内への侵入も確実に防止することができる。
【0048】
また、筒状部20の筒壁21に筒壁開口部を形成し、この筒壁開口部を規定するブリッジ20A、及び、ここに被着されるカバー部材22Aによって筒状部の前壁22を構成するため、ロータを軽量化しつつ糸落ちを抑制することができる。さらに、前記釣糸誘導部53、ベール支持部材14,15及びカバー部材12Bの夫々を取着するための取着部材55,30,35を、前記カバー部材12Bを含むロータ10及びベール支持部材14の外側面から露出しないように配設されることから、実釣時において釣糸巻き取り時/釣糸放出時に糸絡みを効果的に防止することが可能となる。
【0049】
また、上記した後部フランジ部25によって、ロータ10の後部は、図10図11に示すように、支持アーム12に配設される反転機構の設置領域を除いて、駆動軸の軸心Xを中心として段差のない滑らかな円形リング状に形成される。このように、ロータ10の後部が、駆動軸の軸心Xを中心として段差のない円形リング状に形成されることで、実釣時に、スプールからロータの後部に釣糸が絡みついても抜け易くなると共に、ロータの後部への糸絡みを抑制、防止することが可能となる。特に、後部フランジ部25は、支持アーム11,12間において、径方向外側に後部フランジ部25に沿うように湾曲壁25aを一体形成したことで、釣糸が絡み付いても、前方に滑り易くなり、ロータの後部への糸絡みを、より効果的に抑制、防止することが可能となる。なお、本実施形態では、支持アーム12の後端部の部分で後部フランジ部25は分断されるが、この部分にカバー部材12Bを干渉させることなく、全周に亘って段差のない円形状に構成しても良い。
【0050】
また、本実施形態では、略リング状に形成された後部フランジ部25は、その外表面が支持アーム11,12の外表面との間で段差がないように、補強部26a~26dと一体化されており、後部フランジ部25の外表面と補強部26a~26dの表面とは面一状で接続されているため、ロータの後部だけではなく、支持アーム11,12に至るまで、釣糸が抜け易く、糸絡みを抑制することが可能となる。この場合、後部フランジ部25は、支持アーム11,12のいずれか一方に対して段差がないように接続されていても良い。
【0051】
そして、上記したロータの構造によれば、後部フランジ部25は、筒壁21及び一対の支持アーム11,12と一体形成されており、その開口径φaは、筒壁21の後端の開口径φbよりも大径に形成されており(φa>φb)、前記筒壁開口部21d,21eとフランジ開口部25d,25eは一体的となって筒状部からフランジ部に亘って大きな開口領域を形成するため、上下方向の抜型で容易に製造することが可能となる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、図に示した支持アーム11,12、ベール支持部材14,15の形状は一例を示しただけであり適宜変形することが可能である。この場合、露出部分の形状については、釣糸が引っ掛かり難い、或いは、引っ掛かってもすぐに外れるようになっていれば、表面に凹凸が存在していても良い。また、ロータの筒状部20の筒壁21に形成される開口部については、後部フランジ部25や補強部26a,26b,26c,26dによって強度が確保できれば、その形状、形成個数、形成位置については、適宜、変形することが可能である。また、必要に応じて、上記した構成以外の開口部を形成しても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 魚釣用スピニングリール
2 リール本体
3 ハンドル
5 スプール
10 ロータ
10A ロータの本体
11,12 支持アーム
14,15 ベール支持部材
20 筒状部
20A ブリッジ
21 筒壁
21d,21e 筒壁開口部
22 前壁
22A カバー部材
25 後部フランジ部
25d,25e フランジ開口部
25a 湾曲壁
26a~26d 補強部
50 釣糸案内装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11