(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135318
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ヒータ異常判定装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/18 20060101AFI20220908BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20220908BHJP
F02D 41/22 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F01N3/18 C
F02D45/00 345
F02D41/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035054
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】山口 一実
【テーマコード(参考)】
3G091
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G091BA27
3G091CA03
3G091EA15
3G091EA30
3G301JB01
3G301PD05B
3G301PD11B
3G301PD13B
3G384BA47
3G384DA46
3G384FA00B
3G384FA38B
3G384FA39B
3G384FA40B
3G384FA77B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒータが異常か否かを判定する精度を高める。
【解決手段】ヒータ異常判定装置1は、エンジン2の排気通路3内に設置されたセンサ4を加熱するヒータの作動開始から第1作動時間が経過した時点のヒータの温度が、センサ4を活性化させる活性化温度よりも低いプレヒート温度になるようにヒータを作動させるヒータ制御部121と、ヒータの温度であるヒータ温度を順次取得する温度取得部122と、第1作動時間が経過した後の第1時点で、ヒータ温度がプレヒート温度未満であると判定した場合、第1時点から第1作動時間よりも長い第2作動時間が経過した後の第2時点で、ヒータ温度がプレヒート温度未満か否かを再度判定し、第2時点で、ヒータ温度がプレヒート温度未満であると判定した場合、ヒータが異常であると判定し、ヒータ温度がプレヒート温度以上であると判定した場合、ヒータが正常であると判定する異常判定部124とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路内に設置されたセンサを加熱するヒータの作動開始から第1作動時間が経過した時点の前記ヒータの温度が、前記センサを活性化させる活性化温度よりも低いプレヒート温度になるように前記ヒータを作動させるヒータ制御部と、
前記ヒータの温度であるヒータ温度を順次取得する温度取得部と、
前記第1作動時間が経過した後の第1時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを判定する異常判定部と、
を有し、
前記異常判定部は、
前記第1時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満であると判定した場合、前記第1時点から前記第1作動時間よりも長い第2作動時間が経過した後の第2時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを再度判定し、
前記第2時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満であると判定した場合、前記ヒータが異常であると判定し、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度以上であると判定した場合、前記ヒータが正常であると判定する、
ヒータ異常判定装置。
【請求項2】
前記温度取得部は、前記排気通路の通路内温度をさらに取得し、
前記ヒータ異常判定装置は、前記通路内温度が低いほど前記第2作動時間を長く設定する作動時間設定部をさらに有し、
前記異常判定部は、前記第1時点から、前記作動時間設定部が設定した前記第2作動時間が経過した前記第2時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを判定する、
請求項1に記載のヒータ異常判定装置。
【請求項3】
前記エンジンがオンであるかオフであるかを検知する検知部をさらに有し、
前記異常判定部は、前記エンジンがオフになったことを前記検知部が検知したオフ検知時点から所定時間が経過する前に、前記エンジンがオンになったことを前記検知部が検知した場合、前記第1時点から前記オフ検知時点までの時間を前記第2作動時間から減算した残時間を算出し、前記エンジンがオンになったことを前記検知部が検知したオン検知時点から前記残時間が経過した時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを再度判定する、
請求項1又は2に記載のヒータ異常判定装置。
【請求項4】
前記エンジンがオンであるかオフであるかを検知する検知部をさらに有し、
前記異常判定部は、
前記エンジンがオフになったことを前記検知部が検知したオフ検知時点から所定時間が経過した後に、前記エンジンがオンになったことを前記検知部が検知した場合、前記エンジンがオンになったことを前記検知部が検知したオン検知時点から前記第1作動時間が経過した後の前記第1時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを判定し、
前記第1時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満であると判定した場合、前記第1時点から前記第2作動時間が経過した後の前記第2時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを再度判定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒータ異常判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを加熱するヒータが異常か否かを判定するヒータ異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにおける燃料の燃焼状態の把握に用いられるセンサが正常か否かを診断する技術が知られている。特許文献1には、センサを加熱するヒータの温度が所定温度以上に所定時間以上維持されているか否かによって正常か否かを診断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、センサに水が付着している場合、ヒータの温度が所定温度以上にならないことがある。この場合、ヒータが正常であるのにも関わらず、ヒータが異常であると判定してしまう場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ヒータが異常か否かを判定する精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、エンジンの排気通路内に設置されたセンサを加熱するヒータの作動開始から第1作動時間が経過した時点の前記ヒータの温度が、前記センサを活性化させる活性化温度よりも低いプレヒート温度になるように前記ヒータを作動させるヒータ制御部と、前記ヒータの温度であるヒータ温度を順次取得する温度取得部と、前記第1作動時間が経過した後の第1時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを判定する異常判定部と、を有し、前記異常判定部は、前記第1時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満であると判定した場合、前記第1時点から前記第1作動時間よりも長い第2作動時間が経過した後の第2時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを再度判定し、前記第2時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満であると判定した場合、前記ヒータが異常であると判定し、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度以上であると判定した場合、前記ヒータが正常であると判定する、ヒータ異常判定装置を提供する。
【0007】
前記温度取得部は、前記排気通路の通路内温度をさらに取得し、前記ヒータ異常判定装置は、前記通路内温度が低いほど前記第2作動時間を長く設定する作動時間設定部をさらに有し、前記異常判定部は、前記第1時点から、前記作動時間設定部が設定した前記第2作動時間が経過した前記第2時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを判定してもよい。
【0008】
前記ヒータ異常判定装置は、前記エンジンがオンであるかオフであるかを検知する検知部をさらに有し、前記異常判定部は、前記エンジンがオフになったことを前記検知部が検知したオフ検知時点から所定時間が経過する前に、前記エンジンがオンになったことを前記検知部が検知した場合、前記第1時点から前記オフ検知時点までの時間を前記第2作動時間から減算した残時間を算出し、前記エンジンがオンになったことを前記検知部が検知したオン検知時点から前記残時間が経過した時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを再度判定してもよい。
【0009】
前記ヒータ異常判定装置は、前記エンジンがオンであるかオフであるかを検知する検知部をさらに有し、前記異常判定部は、前記エンジンがオフになったことを前記検知部が検知したオフ検知時点から所定時間が経過した後に、前記エンジンがオンになったことを前記検知部が検知した場合、前記エンジンがオンになったことを前記検知部が検知したオン検知時点から前記第1作動時間が経過した後の前記第1時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを判定し、前記第1時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満であると判定した場合、前記第1時点から前記第2作動時間が経過した後の前記第2時点で、前記ヒータ温度が前記プレヒート温度未満か否かを再度判定してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒータが異常か否かを判定する精度を高められるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ヒータ異常判定システムの構成を模式的に示す図である。
【
図4】ヒータ異常判定装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ヒータ異常判定システムSの構成]
図1は、ヒータ異常判定システムSの構成を模式的に示す図である。ヒータ異常判定システムSは、ヒータ異常判定装置1と、エンジン2と、排気通路3と、センサ4と、ヒータ5と、ヒータ温度センサ6と、通路内温度センサ7と、ヒータ異常警告ランプ8とを有する。ヒータ異常判定システムSは、トラック等の車両に搭載されている。ヒータ異常判定システムSは、エンジン2の排気ガス中に含まれる物質を検出するセンサ4を加熱するヒータ5に異常があるか否かを判定する。なお、ヒータ異常判定システムSは車両に限らず、船舶、産業機械その他の移動体や定置式エンジンに搭載されてもよい。
【0013】
エンジン2は、燃料と吸気(空気)との混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。本実施の形態に係るエンジン2は、4気筒のディーゼルエンジンである。エンジン2は、4気筒以外のエンジンであってもよい。
【0014】
排気通路3は、エンジン2と接続された排気管である。排気通路3は、エンジン2の排気ガスを車両の外部へ排出させる。排気ガスが流れる排気通路3には、センサ4が設けられている。
【0015】
センサ4は、エンジン2の排気通路3内に設置されている。センサ4は、排気ガスに含まれる物質を検出する。センサ4が検出する物質は、例えば一酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素である。本実施の形態においては、センサ4は窒素酸化物を検出するNOxセンサである。センサ4は、活性化する温度(例えば700度から800度程度)に達して活性化状態になると、排気通路3内のNOxの量に応じた検出値を出力する。具体的には、センサ4は、排気ガス中の酸素を除去した後、NO2をNOに変換し、NOをNO還元触媒で分解したときに発生する酸素の量に比例した検出値を出力する。なお、センサ4は、NOxセンサに限らず、ラムダセンサであってもよい。
【0016】
ヒータ5は、センサ4の内部に配置されている。ヒータ5は、通電されることにより発熱して、センサ4を加熱する。ヒータ5は、センサ4が活性化する温度まで、センサ4を加熱する。ヒータ5は、例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータであるが、これに限定するものではない。
【0017】
ヒータ温度センサ6は、ヒータ5の温度を順次検出する温度センサである。ヒータ温度センサ6は、例えば熱電対又はサーミスタである。ヒータ温度センサ6がヒータ5の温度を検出する間隔は適宜設定すればよい。ヒータ温度センサ6がヒータ5の温度を検出する間隔の具体的な値は例えば100ミリ秒である。
【0018】
通路内温度センサ7は、排気通路3内の通路内温度を検出する温度センサである。具体的には、通路内温度センサ7は、排気通路3内を流れる排気ガスの温度を通路内温度として検出する。また、通路内温度センサ7は、排気通路3の表面温度や内面温度を通路内温度として検出してもよい。通路内温度センサ7が通路内温度を検出する間隔は適宜設定すればよい。通路内温度センサ7が通路内温度を検出する間隔の具体的な値は、例えば、ヒータ温度センサ6がヒータ5の温度を検出する間隔と同じ100ミリ秒である。
【0019】
ヒータ異常警告ランプ8は、ヒータ5に異常が生じたことを報知するランプである。ヒータ異常警告ランプ8は、ヒータ異常判定装置1の制御によりヒータ5が正常である場合に消灯し、ヒータ5が異常である場合に点灯する。
【0020】
ヒータ異常判定装置1は、ヒータ5が異常か否かを判定する。ヒータ異常判定装置1は、記憶部11と、制御部12とを有する。記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶する。
【0021】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、ヒータ制御部121、温度取得部122、検知部123、異常判定部124及び作動時間設定部125としての機能を実現する。
【0022】
ヒータ制御部121は、エンジン2がオンになったタイミングでヒータ5を作動させる。例えば、ヒータ制御部121は、ヒータ温度が所定の温度になるようにヒータ5を作動させる。具体的には、ヒータ制御部121は、ヒータ温度が、センサ4を活性化させる活性化温度(例えば700度から800度程度)になるようにヒータ5を作動させる。
【0023】
センサ4に水が付着した状態で活性化温度になるようにヒータ5を作動させると、センサ4に異常が生じる場合がある。そのため、ヒータ制御部121は、ヒータ5を活性化温度になるように作動させる前に、ヒータ温度がプレヒート温度になるように作動させる。プレヒート温度は、活性化温度よりも低い温度である。プレヒート温度は、例えば水が蒸発する温度である。プレヒート温度の具体的な値は例えば100℃である。ヒータ制御部121は、ヒータ5の作動開始から第1作動時間が経過した時点のヒータ温度がプレヒート温度になるようにヒータ5を作動させる。第1作動時間は適宜設定すればよい。第1作動時間の具体的な値は例えば2秒である。
【0024】
温度取得部122は、ヒータ5の温度であるヒータ温度を順次取得する。温度取得部122は、ヒータ温度センサ6がヒータ温度を検出する毎に、ヒータ温度センサ6からヒータ温度を取得する。また、排気通路3の通路内温度を取得する。具体的には、温度取得部122は、通路内温度センサ7が検出した通路内温度を取得する。
【0025】
検知部123は、車両のエンジン2がオンであるかオフであるかを検知する。例えば、検知部123は、エンジン2を制御するエンジン制御装置からエンジン2がオンであることを示すオン情報を取得することにより、エンジン2がオンであることを検知する。また、検知部123は、エンジン2がオフであることを示すオフ情報をエンジン制御装置から取得することにより、エンジン2がオフであることを検知する。
【0026】
異常判定部124は、ヒータ温度がプレヒート温度未満か否かに基づいてヒータ5に異常があるか否かを判定する。具体的には、まず、異常判定部124は、ヒータ5が作動開始してから第1作動時間が経過した第1時点で、ヒータ温度がプレヒート温度未満か否かを判定する。このとき、センサ4に水が付着しているとヒータ5の熱が水の加熱にも使われてしまうので、ヒータ温度がプレヒート温度に達しない。
【0027】
そこで、異常判定部124は、第1時点でヒータ温度がプレヒート温度未満であると判定した場合、第1時点から第2作動時間が経過した後の第2時点で再度判定を行う。第2作動時間は第1作動時間よりも長くする。第2作動時間は、センサ4に付着した水が蒸発するのにかかると推定される時間である。第2作動時間の具体的な値は例えば120秒である。ヒータ制御部121は、第1時点から第2作動時間が経過するまでの間、ヒータ温度がプレヒート温度になるようにヒータ5を作動させ続ける。このようにすることで、異常判定部124は、センサ4に付着した水が蒸発した蓋然性が高い状態でセンサ4を再判定できる。
【0028】
以下、
図2を参照しながら、ヒータ温度がプレヒート温度未満か否かに基づいてヒータ5に異常があるか否かを判定する処理を説明する。温度取得部122は、ヒータ温度センサ6からヒータ温度を順次取得しているものとする。
【0029】
図2は、ヒータ温度の時間変化を示す図である。
図2の横軸は時刻tを示す。縦軸は温度Kを示す。ヒータ制御部121は、時刻t0でヒータ5を作動させる。そして、ヒータ制御部121は、ヒータ5が作動開始した時刻t0から第1作動時間D1が経過した後の第1時点t1でヒータ温度がプレヒート温度Bになるようにヒータ5を作動させる。
【0030】
実線R1は、センサ4に水が付着しておらず、ヒータ5が正常である場合のヒータ温度の時間変化を示すグラフである。破線R2は、センサ4に水が付着していてヒータ5が正常である場合のヒータ温度の時間変化を示すグラフである。点線R3は、ヒータ5が異常である場合のヒータ温度の時間変化を示すグラフである。
【0031】
異常判定部124は、第1時点t1で、ヒータ温度がプレヒート温度B未満か否かを判定する。センサ4に水が付着しておらず、ヒータ5に異常がない場合、ヒータ温度は、ヒータ制御部121の制御どおりに第1時点t1でプレヒート温度B以上になる(実線R1を参照)。異常判定部124は、ヒータ温度がプレヒート温度B以上である場合、ヒータ5が正常であると判定する。ヒータ5が正常である場合、ヒータ制御部121は、第1時点t1から予め定められた時間が経過するまでプレヒート温度Bを維持するようにヒータ5を作動させる。ヒータ制御部121は、予め定められた時間が経過した後、活性化温度Aになるようにヒータ5を作動させる。
【0032】
センサ4に水が付着していた場合(破線R2)又はヒータ5に異常がある場合(点線R3)、ヒータ温度は第1時点t1でプレヒート温度B未満である。異常判定部124は、ヒータ温度がプレヒート温度B未満であると判定した場合、第1時点t1の後の第2時点t2で、ヒータ温度がプレヒート温度B未満か否かを再度判定する。第2時点t2は、第1時点t1から第2作動時間D2が経過した後の時点である。ヒータ制御部121は、第1時点t1から第2時点t2になるまでの間、ヒータ温度がプレヒート温度になるようにヒータ5を作動させ続ける。
【0033】
第2作動時間D2の間、ヒータ制御部121がヒータ5をプレヒート温度Bになるように作動させるから、ヒータ5が正常であれば、センサ4に付着していた水は第2時点t2において蒸発している。そのため、ヒータ5が正常である場合、ヒータ温度は、第2時点t2でプレヒート温度B以上になる。異常判定部124は、第2時点t2で、ヒータ温度がプレヒート温度B以上であると判定した場合、ヒータ5が正常であると判定する。ヒータ制御部121は、ヒータ5が正常であると異常判定部124が判定した時点(第2時点t2)で、活性化温度Aになるようにヒータ5を作動させる。
【0034】
ヒータ5に異常がある場合、第2作動時間D2が経過した第2時点t2になっても、ヒータ温度はプレヒート温度B未満である。ヒータ5の異常は、例えばヒータ5に電力を供給する電線の断線やヒータ5の損傷等である。異常判定部124は、第2時点で、ヒータ温度がプレヒート温度B未満であると判定した場合、ヒータ5が異常であると判定する。異常判定部124は、ヒータ5が異常であると判定した場合、ヒータ異常警告ランプ8を点灯させる。このようにすることで、車両を運転する運転者は、ヒータ5に異常があることを把握できる。
【0035】
ところで、車両の周辺温度が低く排気通路3内の温度が低い場合、排気通路3内の温度が高い場合よりも、センサ4に付着した水が蒸発するまでに長い時間がかかる。そこで、ヒータ異常判定装置1は、通路内温度が低いほど第2作動時間D2を長くして、第2時点t2でセンサ4に付着した水を蒸発させられるようにする。
【0036】
作動時間設定部125は、温度取得部122が取得した通路内温度が低いほど第2作動時間D2を長く設定する。例えば、作動時間設定部125は、通路内温度が10℃下がるごとに第2作動時間D2を10秒長くする。ヒータ制御部121は、長く設定された第2作動時間D2の間、ヒータ温度がプレヒート温度になるようにヒータ5を作動させ続ける。このようにすることで、作動時間設定部125は、排気通路3内の温度が低く、水が蒸発するまでに長い時間がかかる場合であっても、センサ4に付着した水が蒸発させられるようになる。
【0037】
異常判定部124は、第1時点t1でヒータ温度がプレヒート温度B未満である場合、第1時点t1から、作動時間設定部125が設定した第2作動時間D2が経過した第2時点t2で、ヒータ温度がプレヒート温度B未満か否かを再度判定する。このようにすることで、異常判定部124は、排気通路3内の温度が低く水が蒸発しにくい状況であっても、センサ4に付着した水が蒸発した蓋然性が高い状態で再度判定を行うことができる。
【0038】
第1時点t1から第2作動時間D2が経過する前に、車両を運転する運転者の操作等によりエンジン2がオフになる場合がある。エンジン2がオフになった後、エンジン2が再びオンになる際に、エンジン2がオフになってからオンになるまでの停止時間が短ければ、ヒータ温度はある程度高く、センサ4に付着した水の量は少なくなっていると考えられる。停止時間が短い場合、エンジン2がオンになった時点から判定を再開することで、判定にかかる時間が短くなる。
【0039】
そこで、ヒータ異常判定装置1は、停止時間に基づいて、エンジン2がオンになった時点から判定を再開したり、判定をやり直したりする。以下、
図3を参照しながら説明する。
【0040】
図3は、エンジン2の動作のシーケンス図である。
図3の横軸は時刻tを示す。時刻t0でエンジン2がオンになり、ヒータ制御部121はヒータ5を作動させる。異常判定部124は、第1時点t1から第1作動時間D1が経過した第1時点t1で、ヒータ温度がプレヒート温度B未満であると判定したものとする。
【0041】
第1時点t1から、エンジン2がオンになっている始動時間xが経過した時刻t3においてエンジン2がオフになった。検知部123は、時刻t3でエンジン2がオフになったことを検知する。以下、エンジン2がオフになったことを検知部123が検知した時刻をオフ検知時点と言う。
【0042】
続いて、エンジン2がオフになった時刻t3から停止時間yが経過した時刻t4においてエンジン2がオンになった。検知部123は、時刻t4でエンジン2がオンになったことを検知する。以下、エンジン2がオンになったことを検知部123が検知した時刻をオン検知時点と言う。
【0043】
異常判定部124は、オフ検知時点(時刻t3)から所定時間が経過する前に、エンジン2がオンになったことを検知部123が検知した場合、判定を再開する。具体的には、異常判定部124は、時刻t3から時刻t4までの停止時間yが所定時間未満である場合、判定を再開する。所定時間は、周辺温度に基づいて適宜定めればよい。例えば、所定時間は、周辺温度が低いほど短くする。所定時間の具体的な値は例えば1分である。
【0044】
異常判定部124は、判定を再開する場合、第1時点t1からオフ検知時点(時刻t3)までの始動時間xを特定する。次に、異常判定部124は、第2作動時間D2から特定した始動時間xを減算した残時間zを算出する。そして、異常判定部124は、オン検知時点(時刻t4)から残時間zが経過した時点(時刻t5)で、ヒータ温度がプレヒート温度B未満か否かを再度判定する。このように、異常判定部124は、停止時間が所定時間よりも短くヒータ温度が比較的高い場合には、第1時点t1で行った判定を省略し、オン検知時点(時刻t4)から判定を再開する。その結果、異常判定部124は、第1時点t1での判定をやり直す場合よりも、ヒータ5が異常か否かを判定する処理にかかる時間を短くできる。
【0045】
異常判定部124は、オフ検知時点(時刻t3)から所定時間が経過した後に、エンジン2がオンになったことを検知部123が検知した場合、判定をやり直す。具体的には、まず、異常判定部124は、オン検知時点(時刻t4)から第1作動時間D1が経過した後の第1時点t1で、ヒータ温度がプレヒート温度B未満か否かを判定する。そして、異常判定部124は、第1時点t1で、ヒータ温度がプレヒート温度B未満であると判定した場合、ヒータ5が異常か否かの判定を再度行う。具体的には、異常判定部124は、第1時点t1から第2作動時間D2が経過した後の第2時点t2で、ヒータ温度がプレヒート温度B未満か否かを再度判定する。異常判定部124は、停止時間が所定時間より長い場合には第1時点t1での判定からやり直すから、エンジン2がオフになっている間にセンサ4に水が付着していたとしても誤判定を抑制できる。
【0046】
[ヒータ異常判定装置1が実行する処理の流れ]
図4は、ヒータ異常判定装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4のフローチャートは、エンジン2がオンになったら実行される。また、温度取得部122は、ヒータ温度を順次取得しているものとする。
【0047】
まず、ヒータ制御部121は、ヒータ5を作動させる(ステップS1)。具体的には、ヒータ制御部121は、ヒータ5の作動開始から第1作動時間D1が経過した第1時点t1のヒータ温度がプレヒート温度Bになるようにヒータ5を作動させる。
【0048】
次に、異常判定部124は、ヒータ5の作動開始から第1作動時間D1が経過したか否かを判定する(ステップS2)。異常判定部124は、ヒータ5の作動開始から第1作動時間D1が経過していない場合(ステップS2でNo)、ヒータ5の作動開始から第1作動時間D1が経過するまで待機する。
【0049】
異常判定部124は、ヒータ5の作動開始から第1作動時間D1が経過した場合(ステップS2でYes)、ヒータ温度がプレヒート温度B未満であるか否かを判定する(ステップS3)。異常判定部124は、ヒータ温度がプレヒート温度B以上である場合(ステップS3でNo)、ヒータ5が正常であると判定する(ステップS4)。
【0050】
異常判定部124は、ヒータ温度がプレヒート温度B未満である場合(ステップS3でYes)、第1時点t1から第2作動時間D2が経過したか否かを判定する(ステップS5)。異常判定部124は、第1時点t1から第2作動時間D2が経過していない場合(ステップS5でNo)、第1時点t1から第2作動時間D2が経過するまで待機する。
【0051】
異常判定部124は、第1時点t1からから第2作動時間D2が経過した場合(ステップS5でYes)、ヒータ温度がプレヒート温度B未満であるか否かを再度判定する(ステップS6)。異常判定部124は、ヒータ温度がプレヒート温度B以上である場合(ステップS6でNo)、ヒータ5が正常であると判定する(ステップS4)。異常判定部124は、ヒータ温度がプレヒート温度B未満である場合(ステップS6でYes)、ヒータ5が異常であると判定する(ステップS7)。
【0052】
[ヒータ異常判定システムSの効果]
以上説明したとおり、ヒータ異常判定装置1は、ヒータ5の作動開始から第1作動時間D1が経過した第1時点t1でヒータ温度がプレヒート温度か否かを判定する。次に、ヒータ異常判定装置1は、第1時点t1でヒータ温度がプレヒート温度未満であると判定した場合、第1時点t1から第2作動時間D2が経過した第2時点t2でヒータ温度がプレヒート温度未満であるか否かを再度判定する。
【0053】
このように、ヒータ異常判定装置1は、第1時点t1でヒータ温度がプレヒート温度未満であっても、ヒータ5が異常であると判定せず、第1時点t1から第2作動時間D2が経過した第2時点t2で再度判定する。その結果、ヒータ異常判定装置1は、センサ4に水が付着したことにより第1時点t1でヒータ温度がプレヒート温度以上にならない場合に、ヒータ5が異常であると判定してしまうことを抑制できる。したがって、ヒータ異常判定装置1は、ヒータ5が異常か否かを判定する精度を高められる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0055】
S ヒータ異常判定システム
1 ヒータ異常判定装置
11 記憶部
12 制御部
121 ヒータ制御部
122 温度取得部
123 検知部
124 異常判定部
125 作動時間設定部
2 エンジン
3 排気通路
4 センサ
5 ヒータ
6 ヒータ温度センサ
7 通路内温度センサ
8 ヒータ異常警告ランプ