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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135322
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220908BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20220908BHJP
   A47L 5/24 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H05K1/02 J
A47L9/28 V
A47L5/24 A
A47L9/28 Z
A47L9/28 U
H05K1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035060
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】富崎 一秀
(72)【発明者】
【氏名】塙 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小森 啓礼
(72)【発明者】
【氏名】山谷 遼
(72)【発明者】
【氏名】板垣 慶太
【テーマコード(参考)】
3B057
5E338
【Fターム(参考)】
3B057DE05
5E338AA02
5E338AA03
5E338CC04
5E338CC05
5E338CD12
5E338EE12
(57)【要約】
【課題】
静電気保護パターンを形成すると、回路基板上の部品配置およびパターン配線が可能な領域が減少するため回路基板および電子機器の小型化が難しくなるという課題があった。
【解決手段】
本発明は、筐体と、該筐体に組み込まれる電動機と、回路基板と、を備える電気機器であって、該筐体は開口部を備え、該開口部の近傍に該回路基板は配置され、該回路基板は該電動機を駆動するための駆動素子と、該駆動素子を動作させるための制御回路と、を備え、該回路基板上の該駆動素子に電流を流すパターンから該開口部までの絶縁距離は、該制御回路から該開口部までの絶縁距離よりも短いことを特徴とする電気機器を提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、該筐体に組み込まれる電動機と、回路基板と、を備える電気機器であって、
該筐体は開口部を備え、
該開口部の近傍に該回路基板は配置され、
該回路基板は該電動機を駆動するための駆動素子と、該駆動素子を動作させるための制御回路と、を備え、
該回路基板上の該駆動素子に電流を流すパターンから該開口部までの絶縁距離は、該制御回路から該開口部までの絶縁距離よりも短いことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
請求項1記載の電気機器であって、
該回路基板は電池と接続され、
該パターンは、該電池のプラス極に接続されて該駆動素子に電流を流す第一のパターンと、該電池のマイナス極に接続されて該駆動素子に電流を流す第二のパターンがあることを特徴とする電気機器。
【請求項3】
請求項2記載の電気機器であって、
該制御回路は該第一のパターンと該第二のパターンに囲まれた領域内に配置されていることを特徴とする電気機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気機器であって、
該回路基板は、該制御回路に関係する第一のランドと、該駆動素子に電流を流すパターン上に配置された第二のランドと、を備え、
該回路基板上の該第二のランドから該開口部までの絶縁距離は、該第一のランドから該開口部までの絶縁距離よりも短いことを特徴とする電気機器。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気機器であって、
該回路基板は、該制御回路の関係する第一のスルーホールと、該駆動素子に電流を流すパターン上に配置された第二のスルーホールと、を備え、
該回路基板上の該第二のスルーホールから該開口部までの絶縁距離は、該第一のスルーホールから該開口部までの絶縁距離よりも短いことを特徴とする電気機器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電気機器であって、
該電気機器は電気掃除機であることを特徴とする。
【請求項7】
請求項7記載の電気掃除機であって、
該開口部は該電動機で吸気した風を排気する排気口であることを特徴とする電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を備えた電気掃除機などの電気機器に組み込まれる回路基板において、静電気保護パターンを備えた回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特許文献1および特許文献2において回路の周囲を静電気保護パターンで取り囲んだ回路基板、特許文献2および特許文献3において静電気を放電させるための鋭角な導体部を設けた回路基板がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3690519号
【特許文献2】特開2001-308586号
【特許文献3】特開平10-321398号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術文献である特許文献1の図1および段落0011において、「基板1上における電子部品(図示略)が配置された内部回路2の周囲であって基板1の縁部近傍に、外部からの静電気から内部回路2の電子部品を保護するために、この静電気を放電させるための静電気保護パターン3 A が形成されている。」とあるように、静電気から回路基板を保護するための方法の一つとして、筐体の隙間等と回路基板の間に、樹脂やシートやテープなどの絶縁部品を追加して絶縁距離を確保する対策がある。しかし、この対策の場合、別途、樹脂やシートやテープを備える必要があり、コストアップや製品小型化が難しくなる。また、静電気から回路基板を保護するための他の方法として、回路基板上に静電気保護パターンを設けることで安価に保護対策ができることが知られている。しかしながら、このような静電気を放電させるためだけの静電気保護パターンを形成すると、回路基板上の部品配置およびパターン配線が可能な領域が減少するため回路基板および電子機器の小型化が難しくなるという課題があった。
【0005】
さらに、特許文献2の段落0018には「この領域212に丸い点状のランド部を密集させて配置し、そこに半田を盛ることで、より静電気放電を誘発するようにしてもよい。」との記載があり、特許文献3の段落0014には「筐体外部から進入した静電気を積極的に端面スルーホールの鋭角部分に放電させるようにしたものであり、他の電気回路への静電気の進入による電気部品の破壊や回路の誤動作を防止」との記載があるように、例えば回路基板の絶縁材料であるレジストに覆われた静電気保護パターンは放電しにくいため、ランドを設けて銅箔を露出させたり、半田フィレットやスルーホールの鋭角部を設けることで静電気が放電しやすくする工夫がされている。しかしながら、このような工夫を追加すると、静電気を放電させるためだけの静電気保護パターンに使う面積がさらに大きくなり、回路基板上の部品配置およびパターン配線が可能な領域が減少するため回路基板および電子機器の小型化が難しくなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、筐体と、該筐体に組み込まれる電動機と、回路基板と、を備える電気機器であって、該筐体は開口部を備え、該開口部の近傍に該回路基板は配置され、該回路基板は該電動機を駆動するための駆動素子と、該駆動素子を動作させるための制御回路と、を備え、該回路基板上の該駆動素子に電流を流すパターンから該開口部までの絶縁距離は、該制御回路から該開口部までの絶縁距離よりも短いことを特徴とする電気機器を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回路基板上の部品配置およびパターン配線が可能な領域を減少することなく静電気から回路基板を保護することができるので基板および電子機器の小型化をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の回路基板を組み込んだ電気掃除機の斜視図である。
図2】本発明の回路基板を組み込んだ電気掃除機の側面図である。
図3】本発明の回路基板を組み込んだ電気掃除機の断面図である。
図4】本発明を適用していない回路基板を組み込んだ電気掃除機断面の部分拡大図であり、静電気放電経路の説明図である。
図5】本発明の回路基板の説明図である。
図6】本発明の回路基板を組み込んだ電気掃除機断面の部分拡大図であり、静電気放電経路の説明図である。
図7】本発明の回路基板の静電気保護パターンに設けたランドの説明図である。
図8】本発明の回路基板の静電気保護パターンに設けたスルーホールの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は電池2を電源とする電気掃除機1の斜視図である。電気掃除機1は、樹脂を材料とした外部筐体10の内部に電動機であるファンモータ5、同様に電動吸口4の内部に電動機である吸口モータ6を備えている。ファンモータ5は例えば三相ブラシレスモータ、吸口モータ6は例えば直流モータを搭載する。電池2は例えばリチウムイオン電池を搭載することによって、充電して繰り返し使用でき、電源コードを必要としないため持ち運びやすくする。なお、本実施例では電池2を電源とする電気掃除機1を実施例としたが、商用電源を電源とする電気掃除機であっても本発明を実施することが可能である。
【0011】
図2は電気掃除機1の外部筐体10付近の側面図である。回路基板20は外部筐体10の内部に組み込まれており、ファンモータ5および吸口モータ6を駆動することができる。また、外部筐体10は開口部12を排気口として備えており、ファンモータ5で吸気した風によりダストケース3にゴミを集塵したあと、フィルターを介して排気口である開口部12から排気を行う。回路基板20は風路内に配置されており、ゴミを集塵したあとの風で回路基板20や、回路基板20上の駆動素子23の冷却を行っている。
【0012】
図3図2の電気掃除機のA-A´断面図である。内部筐体11は回路基板20を支持している。外部筐体10と内部筐体11の突合せ面は隙間13が作られている。この隙間13はどんなに精度良く筐体同士を突き合わせても静電気からすれば通り道となる。そのため、静電気が回路基板20に飛ぶことによる動作不良や、故障を妨げるために、通常は開口部を設けないようにしたり、絶縁部品を追加したり、内部筐体11に壁を設けたりと、絶縁距離を確保するなどの各種対策を取る必要がある。しかしながら、電気掃除機1は開口部12をモータの排気口として用いているため、開口部を削除することはできない。また、製品を小型化、軽量化するにあたり、絶縁部品を追加したり、内部筐体11に壁を設けたりするなどして絶縁距離の確保は難しい。そこで、本実施例では、回路基板上で各種工夫を行うようにした。
【0013】
図4は本発明を実施していない回路基板20を組み込んだ電気掃除機断面の部分拡大図である。大気中で帯電した物体を別の物体に近づけた時に静電気放電が発生する絶縁距離は、物体間の電位差が1kVあたり1mmを目安の数値として使うことができる。開口部12から回路基板20までの沿面距離と空間距離の合計を約10mmとすると、10kV以上に帯電した物体を、0kVに帯電した回路基板20が組み込まれた電気掃除機の開口部12に近づけると、静電気放電経路50で静電気が放電して回路基板20上の制御回路21を誤動作または故障させる場合がある。
【0014】
図5は本発明の回路基板20の説明図である。回路基板20は、電源である電池2に接続され、制御回路21、駆動素子23を備える。駆動素子23は電動機であるファンモータ5および吸口モータ6を駆動することができる。制御回路21はマイコン、トランジスタ、抵抗、コンデンサ、インダクタなどがパターンによって配線接続されており、駆動素子23に電流を流し、駆動素子の動作を制御することができる。なお、制御回路21を配置できる領域22内であれば設計者は自由に設計することができる。駆動素子はMOSFET、トランジスタなどで構成され、電池2のプラス極に接続され駆動素子に電流を流すパターン24(第一のパターン)、電池2のマイナス極に接続され駆動素子に電流を流すパターン25(第二のパターン)によって配線接続されている。ここで、制御回路21は第一のパターン24と第二のパターン25に囲まれた領域内に配置する。駆動素子に電流を流す第一のパターン24または第二のパターン25は、大電流を流すためパターン幅を広くとっており低インピーダンスとなっている。図4で説明したとおり、筐体10、11はその突合せ面が隙間13となるため、回路基板20に静電気が放電するおそれがある。そこで、隙間13と制御回路20の間に駆動素子に電流を流す第一のパターン24または第二のパターン25を配線して静電気保護パターン26として兼用する。すると、静電気放電経路50は開口部12から制御回路21ではなく、開口部12から駆動素子に電流を流す第一のパターン24または第二のパターン25までの経路を取るので、静電気放電による電流は大地アース31に対して対地容量32が大きい電池2またはファンモータ5に流れていくので制御回路21を誤動作や破壊から保護することができる。駆動素子23に静電気放電による電流が流れる可能性があるが、駆動素子23は大電流に耐える部品を選定しているので、静電気放電による電流に対しても耐力があり故障する可能性は小さい。
【0015】
図6は本発明の回路基板20を組み込んだ電気掃除機断面の部分拡大図である。開口部12から制御回路21までの絶縁距離よりも、開口部12から駆動素子に電流を流す第一のパターン24または第二のパターン25までの絶縁距離が短くなるように、駆動素子に電流を流す第一のパターン24または第二のパターン25を配線しているので、静電気放電経路50は開口部12から制御回路21まではなく、開口部12から駆動素子に電流を流す第一のパターン24または第二のパターン25までとなる。これにより、制御回路21を誤動作または故障から保護することができる。
【0016】
図7は本発明の回路基板20に第一のランド40a、第二のランド40bを設けた説明図である。ここで、第一のランド40aは制御回路21の回路に関するランドであり、制御回路を配置できる領域22内にある。第一のランド40aは、部品を実装するためや検査用のテストピンを当てるために設ける。次に、第二のランド40bは駆動素子に電流を流す第一のパターン24および第二のパターン25上に設けたランドであり、隙間13から第一のランド40aまでの絶縁距離がd2の時、第二のランド40bを隙間13からの絶縁距離がd1となる位置に配置してd2>d1となるようにする。第一のランド40aおよび第二のランド40bは絶縁材料であるレジストで覆われてなく、銅箔が露出しているため静電気が放電しやすいが、このような位置関係で配置することで、静電気は隙間13から近い第二のランド40bに放電され、制御回路21を保護することができる。また、駆動素子に電流を流す第一のパターン24および第二のパターン25は元々大電流を流すパターンとして幅を広く設計されており、ランド40を追加するために幅を太くしたりする必要がない。第二のランド40bに半田を塗布することでさらに放電しやすくすることもできる。
【0017】
図8は本発明の回路基板20に第一のスルーホール41a、第二のスルーホール41bを設けた説明図である。ここで、第一のスルーホール41aは制御回路21の回路に関係するスルーホールであり制御回路を配置できる領域22内にあり、両面基板や多層基板を設計する際に回路基板に穴をあけメッキを施すことで層間のパターンを接続する目的に設ける。次に、第二のスルーホール41bは駆動素子に電流を流す第一のパターン24および第二のパターン25上に設けたスルーホールであり、基板の裏面側の駆動素子に電流を流す第一のパターン24および第二のパターン25と接続しており、隙間13から第一のスルーホール41aまでの絶縁距離がd4の時、第二のスルーホール41bを隙間13からの絶縁距離がd3となる位置に配置してd4>d3となるようにする。第一のスルーホール41aおよび第二のスルーホール41bは絶縁材料であるレジストで覆われてなく銅箔が露出しており、穴の部分が鋭角となっており静電気が放電しやすいが、このような位置関係で配置することで、静電気は隙間13から近い第二のスルーホール41bに放電され、制御回路21を保護することができる。また、駆動素子に電流を流す第一のパターン24および第二のパターン25は元々大電流を流すパターンとして幅を広く設計されており、第二のスルーホール41bを追加するために幅を太くしたりする必要がない。第二のスルーホール41bに半田を流し込むと、穴によるパターン幅減少を補いつつパターンによる放熱性能を上げることができる。
【0018】
説明は省略するが、第一のランド40aに対して第二のスルーホール41bを設ける、または、第一のスルーホール41aに対して第二のランド40bを設けることで静電気保護をすることも可能である。
【0019】
図7図8について、従来技術との差異は、第二のランド40bまたは第二のスルーホール41bを静電気保護専用パターンではなく、元々必要でありパターン幅を広く取っている駆動素子に電流を流すパターン上に設けたことであり、基板の実装面積を減少することなく静電気保護効果を上げることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 電気掃除機
2 電池
3 ダストケース
4 電動吸口
5 ファンモータ
6 吸口モータ
10 外部筐体
11 内部筐体
12 排気口
13 隙間
20 回路基板
21 制御回路
22 制御回路を配置できる領域
23 駆動素子
24 駆動素子に電流を流す第一のパターン
25 駆動素子に電流を流す第二のパターン
26 静電気保護パターン
30 回路グラウンド
31 大地アース
32 対地容量
40a 第一のランド
40b 第二のランド
41a 第一のスルーホール
41b 第二のスルーホール
50 静電気放電経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8