(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135347
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】形状測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035091
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】宅見 宗則
(72)【発明者】
【氏名】加藤 尚明
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065DD03
2F065GG06
2F065GG07
2F065HH05
2F065HH13
2F065JJ02
2F065JJ03
2F065JJ25
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL08
2F065LL53
2F065QQ31
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】対象物の形状を高精度に再構成することができる形状測定装置を提供する。
【解決手段】形状測定装置1Aは、光源2、照射光学系3、結像光学系4、空間光変調器5、集光光学系6、リニアセンサ7および処理部9Aを備える。照射光学系3は、光をライン状にして対象物Sに照射する。結像光学系4は、対象物Sで反射された光を入力して結像する。空間光変調器5は、光変調面において1次元状の強度変調パターンが設定され、光変調面に入力した光を空間的に強度変調して出力する。集光光学系6は、空間光変調器5から出力された光をライン状に集光する。リニアセンサ7は、集光光学系6によりライン状に集光された光を複数の画素により受光する。処理部9Aは、強度変調パターンおよびリニアセンサ7からの出力信号に基づいて、リニアセンサ7の複数の画素それぞれについて圧縮センシング技術による解析を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の形状を測定する装置であって、
光を出力する光源と、
前記光源から出力された光を第1方向に延びるライン状にして前記対象物に照射する照射光学系と、
前記照射光学系により前記対象物に照射されて前記対象物で照射方向と異なる方向へ反射された光を入力して結像する結像光学系と、
前記第1方向と異なる方向の1次元状の強度変調パターンが設定され、前記結像光学系を経た光を入力して、その入力した光を前記強度変調パターンに基づいて空間的に強度変調して出力する空間光変調器と、
前記空間光変調器から出力された光を入力して、その入力した光を前記第1方向に延びるライン状に集光する集光光学系と、
フォトダイオードを各々含み1次元配列された複数の画素を有し、前記集光光学系によりライン状に集光された光を前記複数の画素により受光して、前記複数の画素それぞれの受光量に応じた信号を出力するリニアセンサと、
前記空間光変調器において複数の前記強度変調パターンそれぞれが設定された場合に前記リニアセンサから出力された信号に基づいて、前記リニアセンサの前記複数の画素それぞれについて圧縮センシング技術による解析を行って、前記対象物の形状を求める処理部と、
を備える形状測定装置。
【請求項2】
対象物の形状を測定する装置であって、
光を出力する光源と、
前記光源から出力された光を第1方向に延びるライン状にして前記対象物に照射する照射光学系と、
前記照射光学系により前記対象物に照射されて前記対象物で照射方向と異なる方向へ反射された光を入力して結像する結像光学系と、
フォトダイオードを各々含み2次元配列された複数の画素を有し、前記結像光学系を経た光を前記複数の画素により受光して、行毎に与えられる制御信号が第1論理値である行の画素それぞれの受光量に応じた信号を列方向に積算して列毎に出力するエリアセンサと、
前記エリアセンサにおいて複数の前記制御信号のパターンそれぞれが設定された場合に前記エリアセンサから列毎に積算されて出力された信号に基づいて、前記エリアセンサの列毎に圧縮センシング技術による解析を行って、前記対象物の形状を求める処理部と、
を備える形状測定装置。
【請求項3】
前記エリアセンサは、行毎に与えられる制御信号が第2論理値である行の画素それぞれの受光量に応じた信号を列方向に積算して列毎に出力し、
前記処理部は、前記エリアセンサにおいて複数の前記制御信号のパターンそれぞれが設定された場合に前記制御信号の各論理値について前記エリアセンサから列毎に積算されて出力された信号に基づいて、前記エリアセンサの列毎に圧縮センシング技術による解析を行って、前記対象物の形状を求める、
請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記照射光学系は、複数本の光束を第1方向に延びるライン状にして前記対象物に照射する、
請求項1~3の何れか1項に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記第1方向と異なる方向に前記対象物を相対的に搬送する搬送機構を更に備え、
前記処理部は、前記搬送機構による搬送時の前記対象物の各位置において前記対象物の形状を求める、
請求項1~4の何れか1項に記載の形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物の形状を測定する技術として光切断法がある。光切断法では、光源から出力された光を一方向に延びるライン状にして対象物に照射し、その対象物で反射された光をエリアセンサ(複数の画素が2次元配列されたイメージセンサ)により受光して撮像し、その撮像により取得された2次元画像を解析することで、対象物の形状を測定する。撮像により取得された画像の解析に際しては、列毎に重心演算を行うことで、対象物におけるライン状光の照射位置を求める。また、対象物を相対的に移動させて、その移動時の各位置において対象物の形状を求めることにより、対象物の3次元形状を測定することができる。
【0003】
光切断法による3次元形状計測は、例えば、工場ラインでの製品検査に使用され、自動車や鉄鋼、建築、食品業界など様々な製品検査で使用されている。ファクトリーオートメーションなどにより製造や検査の自動化が進むにつれ、ますます光切断法を用いた製品検査が重要となっている。
【0004】
光切断法による画像解析では、画像において必要な情報(対象物におけるライン状光の照射位置に関する情報)がある画素の数は全画素数に比べて非常に少ないにも拘わらず、全画素の信号を読み出した上で画像解析を行っていた。
【0005】
一方、画像において必要な情報がある画素の数が全画素数に比べて非常に少ない場合(スパースである場合)には、圧縮センシング技術を適用することで、信号を読み出すべき画素の数を少なくすることができる。例えば、非特許文献1に記載された技術を用いれば、対象物からの反射光による像を2次元空間光変調器により空間的に強度変調し、その変調後の光をシリンドリカルレンズによりライン状にしてリニアセンサ(複数の画素が1次元配列されたイメージセンサ)により受光して撮像し、その撮像により取得された1次元画像を圧縮センシング技術により解析することで、対象物の形状を測定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】塩見日隆、他、「ベクトルピクセルイメージングの提案」、(一社)日本光学会、Optics & Photonics Japan 2020、予稿17aB7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載された技術を利用した形状測定は、画像全体のスパース性を制約としていることから、画像再構成の精度が低い。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、光切断法および圧縮センシング技術を利用して対象物の形状を高精度に再構成することができる形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様の形状測定装置は、対象物の形状を測定する装置であって、(1) 光を出力する光源と、(2) 光源から出力された光を第1方向に延びるライン状にして対象物に照射する照射光学系と、(3) 照射光学系により対象物に照射されて対象物で照射方向と異なる方向へ反射された光を入力して結像する結像光学系と、(4) 第1方向と異なる方向の1次元状の強度変調パターンが設定され、結像光学系を経た光を入力して、その入力した光を強度変調パターンに基づいて空間的に強度変調して出力する空間光変調器と、(5) 空間光変調器から出力された光を入力して、その入力した光を第1方向に延びるライン状に集光する集光光学系と、(6) フォトダイオードを各々含み1次元配列された複数の画素を有し、集光光学系によりライン状に集光された光を複数の画素により受光して、複数の画素それぞれの受光量に応じた信号を出力するリニアセンサと、(7) 空間光変調器において複数の強度変調パターンそれぞれが設定された場合にリニアセンサから出力された信号に基づいて、リニアセンサの複数の画素それぞれについて圧縮センシング技術による解析を行って、対象物の形状を求める処理部と、を備える。
【0010】
本発明の第2態様の形状測定装置は、対象物の形状を測定する装置であって、(1) 光を出力する光源と、(2) 光源から出力された光を第1方向に延びるライン状にして対象物に照射する照射光学系と、(3) 照射光学系により対象物に照射されて対象物で照射方向と異なる方向へ反射された光を入力して結像する結像光学系と、(4) フォトダイオードを各々含み2次元配列された複数の画素を有し、結像光学系を経た光を複数の画素により受光して、行毎に与えられる制御信号が第1論理値である行の画素それぞれの受光量に応じた信号を列方向に積算して列毎に出力するエリアセンサと、(5) エリアセンサにおいて複数の制御信号のパターンそれぞれが設定された場合にエリアセンサから列毎に積算されて出力された信号に基づいて、エリアセンサの列毎に圧縮センシング技術による解析を行って、対象物の形状を求める処理部と、を備える。
【0011】
本発明の第2態様の形状測定装置において、エリアセンサは、行毎に与えられる制御信号が第2論理値である行の画素それぞれの受光量に応じた信号を列方向に積算して列毎に出力し、処理部は、エリアセンサにおいて複数の制御信号のパターンそれぞれが設定された場合に制御信号の各論理値についてエリアセンサから列毎に積算されて出力された信号に基づいて、エリアセンサの列毎に圧縮センシング技術による解析を行って、対象物の形状を求めるのが好適である。
【0012】
本発明の第1態様および第2態様の形状測定装置において、照射光学系は、複数本の光束を第1方向に延びるライン状にして対象物に照射するのが好適である。また、第1方向と異なる方向に対象物を相対的に搬送する搬送機構が備えられており、処理部は、搬送機構による搬送時の対象物の各位置において対象物の形状を求めるのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光切断法および圧縮センシング技術を利用して対象物の形状を高精度に再構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態の形状測定装置1Aの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、対象物Sにライン状の光Lが照射されている様子を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、空間光変調器5の光変調面におけるライン状の光Lの像および強度変調パターンを説明する図である。
【
図4】
図4は、空間光変調器5の光変調面におけるライン状の光Lの像とリニアセンサ7の各画素との関係を説明する図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の形状測定装置1Bの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、空間光変調器5の光変調面におけるライン状の光Lの像を説明する図である。
【
図7】
図7は、空間光変調器5の光変調面におけるライン状の光Lの像の他の例を説明する図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態の形状測定装置1Cの構成を示す図である。
【
図9】
図9は、エリアセンサ8の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、列読出部32の回路構成例を示す図である。
【
図11】
図11は、列読出部32の他の回路構成例を示す図である。
【
図12】
図12は、列読出部32の更に他の回路構成例を示す図である。
【
図13】
図13は、行制御部21の回路構成例を示す図である。
【
図14】
図14は、画素P
m,nの回路構成例を示す図である。
【
図15】
図15は、
図14に示された画素P
m,nの回路構成例の場合に全画素から電荷を出力する場合の露光から読出までのタイミングの態様の例を示す図である。
【
図16】
図16は、
図14に示された画素P
m,nの回路構成例の場合に全画素から電荷を出力する場合の露光から読出までのタイミングの態様の例を示す図である。
【
図17】
図17は、
図14に示された画素P
m,nの回路構成例の場合に全画素から電荷を出力する場合の露光から読出までのタイミングの態様の例を示す図である。
【
図18】
図18は、
図14に示された画素P
m,nの回路構成例の場合に全画素から電荷を出力する場合の露光から読出までのタイミングの態様の例を示す図である。
【
図19】
図19は、画素P
m,nの他の回路構成例を示す図である。
【
図20】
図20は、第4実施形態の形状測定装置1Dの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
図1は、第1実施形態の形状測定装置1Aの構成を示す図である。形状測定装置1Aは、搬送機構100により搬送されている対象物Sの形状を測定する装置であって、光源2、照射光学系3、結像光学系4、空間光変調器5、集光光学系6、リニアセンサ7および処理部9Aを備える。
【0017】
搬送機構100は、例えば、対象物Sを載置して相対的に搬送するベルトコンベアである。この図には説明の便宜のために、搬送方向をz方向とするxyz直交座標系が示されている。対象物Sが載置される面に垂直な方向をy方向とする。
【0018】
光源2は、対象物Sに照射すべき光を出力する。光源2は、任意のものでよいが、例えばレーザダイオードや発光ダイオードである。照射光学系3は、光源2から出力された光を第1方向(x方向)に延びるライン状にして対象物Sに照射する。照射光学系3は、シリンドリカルレンズを含んで構成され得る。搬送機構100による対象物Sの搬送方向(z方向)は、照射光学系3により対象物Sに照射されるライン状の光の延びる方向(x方向)と異なる。
図2は、対象物Sにライン状の光Lが照射されている様子を模式的に示す図である。
【0019】
結像光学系4は、照射光学系3により対象物Sに照射されて対象物Sで照射方向と異なる方向へ反射された光を入力して結像する。結像光学系4は、球面レンズを含んで構成され得る。このとき、結像光学系4による対象物Sにおけるライン状の光Lの像は、対象物Sへの照射方向と異なる方向に見たものであるから、対象物Sの形状に応じたものとなる。
【0020】
空間光変調器5は、結像光学系4を経た光を光変調面に入力して、その入力した光を強度変調パターンに基づいて空間的に強度変調して出力する。空間光変調器5は、光変調面において2次元の強度変調パターンが設定されてもよいが、本実施形態では第1方向(x方向)と異なる方向の1次元状の強度変調パターンが設定される。強度変調パターンは、ランダムに設定されたものであってもよいし、アダマール行列等に基づいて設定されたものであってもよい。空間光変調器5は、
図1に示されるように反射型のものであってもよいし、透過型のものであってもよい。空間光変調器5は、MEMS技術により作製されたDMD(Digital Micromirror Device)であってもよいし、液晶を用いた空間光変調器であってもよい。
【0021】
集光光学系6は、空間光変調器5から出力された光を入力して、その入力した光を第1方向(x方向)に延びるライン状に集光する。集光光学系6は、シリンドリカルレンズを含んで構成され得る。
【0022】
リニアセンサ7は、1次元配列された複数の画素を有する。複数の画素それぞれは、受光に応じて電荷を発生するフォトダイオードを含む。リニアセンサ7は、集光光学系6によりライン状に集光された光を複数の画素により受光して、複数の画素それぞれの受光量に応じた信号を出力する。
【0023】
処理部9Aは、空間光変調器5において複数の強度変調パターンを順次に設定させる。処理部9Aは、空間光変調器5において複数の強度変調パターンそれぞれを設定した場合にリニアセンサ7から出力された信号に基づいて、リニアセンサ7の複数の画素それぞれについて圧縮センシング技術による解析を行う。処理部9Aは、この解析により、結像光学系4による対象物Sにおけるライン状の光Lの像を求め、対象物Sの形状を求める。また、処理部9Aは、搬送機構100による搬送時の対象物Sの各位置において対象物Sの形状を求めることで、対象物Sの3次元形状を求めることができる。
【0024】
処理部9Aはコンピュータであってよい。処理部9Aは、強度変調パターンや解析により得られた復元画像などを記憶する記憶部(例えば、ハードディスクドライブ、RAM、ROM等)、強度変調パターンや復元画像などを表示する表示部(例えば液晶ディスプレイ等)、測定開始の指示や測定条件の入力などを受け付ける入力部(例えばキーボード、マウス等)、装置全体の動作を制御する制御部(例えばCPU、FPGA等)を備える。
【0025】
図3は、空間光変調器5の光変調面におけるライン状の光Lの像および強度変調パターンを説明する図である。この図において、縦方向に区分された複数の矩形は、空間光変調器5の光変調面における画素を表している。強度変調パターンは、各画素におけるハッチングの有無により表されている。空間光変調器5は、例えば、ハッチングが施された画素に入力された光をリニアセンサ7に入射させず、ハッチングが施されていない画素に入力された光をリニアセンサ7に入射させる。
【0026】
図4は、空間光変調器5の光変調面におけるライン状の光Lの像とリニアセンサ7の各画素との関係を説明する図である。この図において、横方向に区分された複数の矩形は、リニアセンサ7の画素を模式的に表している。リニアセンサ7の第n画素に入力される光は、
図3中の空間光変調器5の光変調面において強度変調パターンにより指定された画素(ハッチングが施されていない画素)のうち、リニアセンサ7の該第n画素に対応する領域から到達した光である。
【0027】
以下では、空間光変調器5の画素の個数をNとし、リニアセンサ7の画素の個数をNとし、強度変調パターンの個数をMとする。強度変調パターンを表す行列をΦとし、リニアセンサ7から出力される信号値をyとし、圧縮センシング技術により復元したい画像(空間光変調器5の光変調面における像)をxとする。このとき、これらの間に下記(1)式の関係が成り立つ。
【0028】
【数1】
下記(2)式は、リニアセンサ7の第1画素からの信号値に関して上記(1)式を具体的に表したものである。下記(3)式は、リニアセンサ7の第2画素からの信号値に関して上記(1)式を具体的に表したものである。このような式がリニアセンサ7の画素毎にある。y
n,mは、M個の強度変調パターンのうちの第mの強度変調パターンを用いたときのリニアセンサ7のN個の画素のうちの第n画素からの信号値を表す。x
n1,n2は、空間光変調器5のN個の画素のうちの第n1画素であってリニアセンサ7のN個の画素のうちの第n2画素に対応する領域の光強度を表す。φ
m,nは、第mの強度変調パターンを用いたときの空間光変調器5の第n画素の光強度変調を表す。mは1以上M以下の整数である。n、n1、n2は1以上N以下の整数である。
【0029】
【0030】
【数3】
M=Nであって、行列Φの逆行列が存在すれば、列毎の画像xは一意的に求められる。これに対し、M<Nである場合、上記の式は劣決定系となり、列毎の画像xは数学的に解くことができない。しかし、M<Nの場合であっても、列毎の画像xがスパースであれば(または、フーリエ変換などの線形変換によりスパースとなれば)、圧縮センシング技術により画像xを復元することができる。具体的には、次の式で表される最適化問題を列毎に解くことにより、画像xを復元することができる。λは、誤差の許容値を表すパラメータである。
【0031】
【数4】
本実施形態では、
図3に示された空間光変調器5の光変調面におけるライン状の光Lの像を復元する際に、列毎に圧縮センシング技術を適用することにより求める。すなわち、本実施形態では、画像全体のスパース性を制約とするのではなく、画像を複数列に区分して列毎のスパース性を制約とするので、全ての値が0となる列が存在する可能性を低くすることができて、画像再構成の精度が高い。
【0032】
本実施形態では、空間光変調器5として1次元状の強度変調パターンを設定することができるものを用いるので、装置を安価に構成することができ、消費電力を低減することができ、フレームレートを高速にすることができる。また、本実施形態では、列毎に圧縮センシング技術を適用するので並列処理が可能であり、並列処理することにより更にフレームレートを高速にすることができる。
【0033】
本実施形態では、空間光変調器5の画素のサイズと比べて、光変調面における像中のライン光が十分細ければ、1画素精度の高さ位置測定が可能である。しかし、空間光変調器5の画素サイズより太いライン光を入射させても画像を再構成することができるので、更に重心演算を行えばサブ画素精度の高さ位置測定が可能である。
【0034】
図5は、第2実施形態の形状測定装置1Bの構成を示す図である。第1実施形態の形状測定装置1A(
図1)と比較すると、第2実施形態の形状測定装置1B(
図5)は、複数組の光源2および照射光学系3を備え、複数本の光束を第1方向(x方向)に延びるライン状にして対象物Sに照射する点で相違する。
図6は、第2実施形態の場合の空間光変調器5の光変調面におけるライン状の光Lの像を説明する図である。第2実施形態では、この図に示されるように、空間光変調器5の光変調面においてライン状の光Lの像が複数現れることになるが、列毎の画像xがスパースであれば(または、フーリエ変換などの線形変換によりスパースとなれば)、第1実施形態の場合と同様にして、圧縮センシング技術により画像xを復元することができる。第2実施形態は、複数のライン光を用いることで測定回数を減らすことが可能であるので、計測時間を減らすことが可能となる。
【0035】
図7は、空間光変調器5の光変調面におけるライン状の光Lの像の他の例を説明する図である。このような像は、例えば、対象物が、ガラスのような半透明物体と、この半透明物体の背後にある物体と、を含むものである場合に得られる。この場合、半透明物体で反射した光と、半透明物体を透過して背後の物体で反射した光とが、空間光変調器5の光変調面に到達し得る。このような場合であっても、列毎の画像xがスパースであれば(または、フーリエ変換などの線形変換によりスパースとなれば)、第1実施形態の場合と同様にして、圧縮センシング技術により画像xを復元することができる。
【0036】
図8は、第3実施形態の形状測定装置1Cの構成を示す図である。形状測定装置1Cは、搬送機構100により搬送されている対象物Sの形状を測定する装置であって、光源2、照射光学系3、結像光学系4、エリアセンサ8および処理部9Cを備える。第1実施形態の形状測定装置1A(
図1)と比較すると、第3実施形態の形状測定装置1C(
図8)は、空間光変調器5、集光光学系6およびリニアセンサ7に替えてエリアセンサ8を備える点で相違し、処理部9Aに替えて処理部9Cを備える点で相違する。
【0037】
エリアセンサ8は、2次元配列された複数の画素を有する。複数の画素それぞれは、受光に応じて電荷を発生するフォトダイオードを含む。エリアセンサ8は、結像光学系4を経た光を複数の画素により受光する。エリアセンサ8は、行毎に与えられる制御信号が第1論理値である行の画素それぞれの受光量に応じた信号を列方向に積算して列毎に出力する。また、エリアセンサ8は、行毎に与えられる制御信号が第2論理値である行の画素それぞれの受光量に応じた信号を列方向に積算して列毎に出力してもよい。第1論理値および第2論理値のうち一方は、第1論理値および第2論理値のうち一方は論理値Hであり、他方は論理値Lである。
【0038】
処理部9Cは、エリアセンサ8の行毎に与えられる制御信号の複数のパターンを順次に設定させる。処理部9Cは、エリアセンサ8において複数の制御信号のパターンそれぞれが設定された場合にエリアセンサ8から列毎に積算されて出力された信号に基づいて、エリアセンサ8の列毎に圧縮センシング技術による解析を行う。或いは、処理部9Cは、エリアセンサ8において複数の制御信号のパターンそれぞれが設定された場合に制御信号が第1論理値および第2論理値それぞれであるときにエリアセンサ8から列毎に積算されて出力された信号に基づいて、エリアセンサ8の列毎に圧縮センシング技術による解析を行う。処理部9Cは、この解析により、結像光学系4による対象物Sにおけるライン状の光Lの像を求め、対象物Sの形状を求める。また、処理部9Cは、搬送機構100による搬送時の対象物Sの各位置において対象物Sの形状を求めることで、対象物Sの3次元形状を求めることができる。
【0039】
図9は、エリアセンサ8の構成を示す図である。エリアセンサ8は、画素アレイ部10、行制御部21および列読出部32を備える。
【0040】
画素アレイ部10は、2次元配列されたN2個の画素P1,1~PN,Nを含む。N2個の画素P1,1~PN,Nは共通の構成を有する。画素Pn1,n2は第n1行第n2列に位置する。各画素は、受光に応じて電荷を発生するフォトダイオードと、このフォトダイオードで発生した電荷を出力する否かを選択するスイッチとを含む。ここで、Nは2以上の整数である。n、n1、n2は1以上N以下の各整数である。
【0041】
行制御部21は、第n行のN個の画素Pn,1~Pn,Nと第n行制御線23nにより接続されている。行制御部21は、この第n行制御線23nを介して第n行制御信号を第n行のN個の画素Pn,1~Pn,Nへ与える。行制御部21は、第1~第Nの行制御信号により、フォトダイオードで発生した電荷を出力すべき行を指定する。
【0042】
列読出部32は、第n列のN個の画素P1,n~PN,nと第n列出力線34nにより接続されている。列読出部32は、この第n列出力線34nを介して、第n列のN個の画素P1,n~PN,nのうちの何れかの画素から出力された電荷を入力する。列読出部32は、入力した電荷量に応じた電圧値を出力するチャージアンプと、このチャージアンプから出力された電圧値に応じたデジタル値を出力するAD変換器とを含んでいてもよい。
【0043】
このエリアセンサ8では、行制御部21から出力される制御信号により第1行~第N行の何れかが選択されて、その選択された行のN個の画素Pn,1~Pn,Nから出力された電荷が第1~第Nの列出力線341~34Nを介して列読出部32に入力される。このとき、複数の行が選択された場合には、その選択された複数の行の画素から第n列出力線34nへ出力された電荷が加算されて、列読出部32に入力される。
【0044】
次に、列読出部32の回路構成例について
図10~
図12を用いて説明する。
図10は、列読出部32の回路構成例を示す図である。この図に示される列読出部32は、NMOSトランジスタ41
1~41
Nおよび変換部49を含む。NMOSトランジスタ41
nのドレインは第n列出力線34
nと接続されている。NMOSトランジスタ41
nのソースは変換部49と接続されている。NMOSトランジスタ41
nは、ゲートに与えられる信号のレベルに応じて、ドレインとソースとの間が導通(オン)および非導通(オフ)の何れかに設定されるスイッチとして作用する。
【0045】
変換部49は、NMOSトランジスタ411~41Nそれぞれのソースと接続されている。変換部49は、入力された電荷の量に応じた電圧値を出力するチャージアンプ、および、このチャージアンプから出力される電圧値に応じたデジタル値を出力するAD変換器を含む。
【0046】
NMOSトランジスタ411~41Nのうちの何れかがオン状態であると、そのオン状態であるNMOSトランジスタ41nと第n列出力線34nを介して接続された第n列のN個の画素P1,n~PN,nの何れかの画素から出力された電荷が変換部49へ入力され、その電荷量に応じたデジタル値が変換部49から出力される。NMOSトランジスタ411~41Nは、同時にオン状態となってもよいし、一つずつ順次にオン状態となってもよい。
【0047】
この図には、NMOSトランジスタ481~48Nも示されている。NMOSトランジスタ48nのドレインは電源電位供給端に接続されている。NMOSトランジスタ48nのソースは第n列出力線34nと接続されている。NMOSトランジスタ48nもスイッチとして作用する。NMOSトランジスタ48nは、オン状態であるとき、第n列出力線34nに接続された第n列のN個の画素P1,n~PN,nそれぞれのフォトダイオードで発生した電荷を初期化することができる。
【0048】
図11は、列読出部32の他の回路構成例を示す図である。この図に示される列読出部32は、NMOSトランジスタ41
1~41
Nおよび変換部49に加えて、NMOSトランジスタ42
1~42
Nおよびキャパシタ43
1~43
Nを含む。NMOSトランジスタ42
nのドレインは第n列出力線34
nと接続されている。NMOSトランジスタ42
nのソースはNMOSトランジスタ41
nのドレインと接続されている。キャパシタ43
nは、NMOSトランジスタ42
nのソースと接地電位供給端との間に設けられている。NMOSトランジスタ42
nもスイッチとして作用する。
【0049】
この回路構成例では、NMOSトランジスタ41nがオフ状態であるとき、NMOSトランジスタ42nがオン状態であると、第n列出力線34nから到達した電荷がキャパシタ43nに転送されて蓄積される。その後、NMOSトランジスタ42nがオフ状態であるとき、NMOSトランジスタ41nがオン状態であると、キャパシタ43nに蓄積されていた電荷が変換部49へ入力され、その電荷量に応じたデジタル値が変換部49から出力される。NMOSトランジスタ411~41Nも、同時にオン状態となってもよいし、一つずつ順次にオン状態となってもよい。
【0050】
図12は、列読出部32の更に他の回路構成例を示す図である。この図に示される列読出部32は、NMOSトランジスタ41
1~41
N、NMOSトランジスタ42
1~42
N、キャパシタ43
1~43
N、NMOSトランジスタ44
1~44
N、NMOSトランジスタ45
1~45
N、キャパシタ46
1~46
N、NMOSトランジスタ47
1~47
Nおよび変換部49を含む。NMOSトランジスタ44
n,45
nおよびキャパシタ46
nは、NMOSトランジスタ41
n,42
nおよびキャパシタ43
nと同様の構成を有する。NMOSトランジスタ47
nのドレインは、NMOSトランジスタ41
n,44
nそれぞれのソースと接続されている。変換部49は、NMOSトランジスタ47
1~47
Nそれぞれのソースと接続されている。
【0051】
この回路構成例では、第n列出力線34nに対し2つのキャパシタ43n,46nが設けられていることにより、各第n列出力線34nから到達した電荷が一方のキャパシタに転送され蓄積されている間に、他方のキャパシタに蓄積されていた電荷が変換部49に入力されて電荷量に応じたデジタル値が変換部49から出力される。例えば、NMOSトランジスタ41n,45nがオフ状態であるときに、NMOSトランジスタ42nがオン状態であると、第n列出力線34nから到達した電荷がキャパシタ43nに転送されて蓄積され、また、NMOSトランジスタ44n,47nがオン状態であると、キャパシタ46nに蓄積されていた電荷が変換部49へ入力され、その電荷量に応じたデジタル値が変換部49から出力される。
【0052】
なお、電荷量に応じたデジタル値を出力する変換部は、列読出部32において一つのみ設けられてもよいし、列読出部32において列毎に設けられてもよい。
【0053】
次に、行制御部21の回路構成例について説明する。行制御部21は、第1~第N行制御信号X
1~X
Nをパラレル入力して第n行制御信号X
nを第n行制御線23
nへ出力してもよいし、また、第1~第N行制御信号X
1~X
Nをシリアルデータとして入力して第n行制御信号X
nを第n行制御線23
nへ出力してもよい。好適には行制御部21は
図13に示される構成とすることができる。
【0054】
図13は、行制御部21の回路構成例を示す図である。この図に示される行制御部21は、シフトレジスタ51およびフリップフロップ52
1~52
Nを含む。シフトレジスタ51は、第1~第N行制御信号X
1~X
Nをシリアル入力して、第n行制御信号X
nをフリップフロップ52
nへ出力する。フリップフロップ52
nは、シフトレジスタ51から出力された第n行制御信号X
nをラッチして、そのラッチした第n行制御信号X
nを第n行制御線23
nへ出力する。
【0055】
フリップフロップ52nはRSフリップフロップであるのが好適である。この場合、フリップフロップ52nは、latchがオンであるとき、ラッチしていた第n行制御信号Xnを第n行制御線23nへ出力することができる。フリップフロップ52nは、setがオンであるとき、論理値Hを第n行制御線23nへ出力することで、画素Pn,1~Pn,Nをリセットすることができる。また、フリップフロップ52nは、resetがオンであるとき、論理値Lを第n行制御線23nへ出力することで、画素Pn,1~Pn,Nをオフとすることができる。
【0056】
この回路構成例のように、行制御部21がシフトレジスタ51およびフリップフロップ521~52Nを含む場合、フリップフロップ52nから第n行制御信号Xnを第n行制御線23nへ出力している間に、シフトレジスタ51は次の第1~第N行制御信号X1~YNをシリアル入力することができる。
【0057】
次に、画素P
m,nの回路構成例について説明する。画素P
m,nは、受光に応じて電荷を発生するフォトダイオードを含み、また、そのフォトダイオードで発生した電荷を列出力線へ出力するか否かを選択するスイッチを含む。
図14は、画素P
m,nの回路構成例を示す図である。この図に示される画素P
m,nは、フォトダイオードPDおよびスイッチSWを含む。スイッチSWは、MOSトランジスタにより構成され得る。
【0058】
スイッチSWは、フォトダイオードPDと列出力線34nとの間に設けられている。行制御部21から行制御線23mを介して送られてきた行制御信号Xmが論理値Hであるとき、スイッチSWは、オン状態となって、フォトダイオードPDで発生した電荷を列出力線34nへ出力させる。行制御信号Xmが論理値Lであるとき、スイッチSWは、オフ状態となって、フォトダイオードPDで発生した電荷を列出力線34nへ出力させない。
【0059】
図14に示された画素P
m,nの回路構成例では、各行制御信号X
mの論理値を反転することで、全ての画素から電荷を読み出すことができる。これにより測定時間を短縮することができる。
図15~
図18は、全画素から電荷を出力する場合の露光から読出までのタイミングの態様の例を示す図である。
【0060】
図15に示されるタイミングの態様例では、全ての画素が同時に露光を開始し、一定期間経過後に1または複数の行の画素から電荷が読み出される。この1回目の電荷読出が終了した後に他の行の画素(1回目に電荷読出をしなかった行の画素)から電荷が読み出される。1回目に電荷読出が行われた行の画素と、2回目に電荷読出が行われた行の画素とでは、露光時間が異なることになるが、圧縮センシング技術による最適化問題を解く際に露光時間の差異を容易に補正することができる。このタイミングの態様は、
図10に示された列読出部32の回路構成例の場合に適用が可能である。
【0061】
図16に示されるタイミングの態様例では、各画素のリセットを適切なタイミングで行うことにより、全ての画素の露光時間を一定にする。一定期間の露光が終了した1または複数の行の画素から電荷が読み出される。この1回目の電荷読出が終了した後に他の行の画素(1回目に電荷読出をしなかった行の画素)から電荷が読み出される。このタイミングの態様は、
図11に示された列読出部32の回路構成例の場合であって、露光時間が読出時間以上である場合に適用が可能である。
【0062】
図17に示されるタイミングの態様例でも、各画素のリセットを適切なタイミングで行うことにより、全ての画素の露光時間を一定にする。一定期間の露光が終了した1または複数の行の画素から電荷が列読出部32に転送され、その後、電荷量に応じたデジタル値が列読出部32から出力される。この1回目の電荷転送が終了した後に他の行の画素(1回目に電荷読出をしなかった行の画素)において、リセットおよび一定期間の露光が行われた後、電荷が列読出部32に転送され、その後、電荷量に応じたデジタル値が列読出部32から出力される。このタイミングの態様は、
図11に示された列読出部32の回路構成例の場合に適用が可能であり、露光時間が読出時間より短い場合であっても適用が可能である。
【0063】
図18に示されるタイミングの態様例でも、各画素のリセットを適切なタイミングで行うことにより、全ての画素の露光時間を一定にする。一定期間の露光が終了した1または複数の行の画素から電荷が列読出部32に転送され、その後、電荷量に応じたデジタル値が列読出部32から出力される。他の行の画素(1回目に電荷読出をしなかった行の画素)において、リセットおよび一定期間の露光が行われた後、電荷が列読出部32に転送され、その後、電荷量に応じたデジタル値が列読出部32から出力される。1回目の電荷転送の後に2回目の電荷転送が行われる。このタイミングの態様は、
図12に示された列読出部32の回路構成例の場合に適用が可能である。
【0064】
次に、画素P
m,nの他の回路構成例について説明する。
図19は、画素P
m,nの他の回路構成例を示す図である。この図に示される画素P
m,nは、フォトダイオードPDおよび2個のスイッチSW1,SW2を含む。スイッチSW1,SW2は、MOSトランジスタにより構成され得る。
【0065】
行制御信号Xmが論理値Hであるとき、スイッチSW1はオン状態となり、スイッチSW2はオフ状態となる。行制御信号Xmが論理値Lであるとき、スイッチSW1はオフ状態となり、スイッチSW2はオン状態となる。スイッチSW1,SW2は、一方がオン状態であるとき、他方がオフ状態となる。スイッチSW1は、オン状態であるとき、フォトダイオードPDで発生した電荷を列出力線34n,1へ出力させる。スイッチSW2は、オン状態であるとき、フォトダイオードPDで発生した電荷を列出力線34n,2へ出力させる。
【0066】
この回路構成例では、エリアセンサ8は、行毎に与えられる制御信号が論理値Hである行の画素それぞれの受光量に応じた信号を列方向に積算して列毎に列出力線へ出力するとともに、行毎に与えられる制御信号が論理値Lである行の画素それぞれの受光量に応じた信号を列方向に積算して列毎に別の列出力線へ出力することができる。
【0067】
そして、処理部9Cは、エリアセンサ8において複数の制御信号のパターンそれぞれが設定された場合に制御信号の各論理値についてエリアセンサ8から列毎に積算されて出力された信号に基づいて、エリアセンサ8の列毎に圧縮センシング技術による解析を行って、対象物Sの形状を求めることができる。これにより測定時間を短縮することができる。
【0068】
本実施形態でも、エリアセンサ8の受光面におけるライン状の光Lの像を復元する際に、列毎に圧縮センシング技術を適用することにより求める。すなわち、本実施形態でも、画像全体のスパース性を制約とするのではなく、画像を複数列に区分して列毎のスパース性を制約とするので、全ての値が0となる列が存在する可能性を低くすることができて、画像再構成の精度が高い。
【0069】
本実施形態では、空間光変調器を用いる必要がないので、更に装置を安価にかつ容易に構成することができ、更に消費電力を低減することができる。また、本実施形態でも、列毎に圧縮センシング技術を適用するので並列処理が可能であり、並列処理することにより更にフレームレートを高速にすることができる。
【0070】
本実施形態でも、エリアセンサ8の画素のサイズと比べて、受光面における像中のライン光が十分細ければ、1画素精度の高さ位置測定が可能である。しかし、エリアセンサ8の画素サイズより太いライン光を入射させても画像を再構成することができるので、更に重心演算を行えばサブ画素精度の高さ位置測定が可能である。
【0071】
図20は、第4実施形態の形状測定装置1Dの構成を示す図である。第3実施形態の形状測定装置1C(
図8)と比較すると、第4実施形態の形状測定装置1D(
図20)は、複数組の光源2および照射光学系3を備え、複数本の光束を第1方向(x方向)に延びるライン状にして対象物Sに照射する点で相違する。第4実施形態の場合のエリアセンサ8の受光面におけるライン状の光Lの像は、
図6に示されたものと同様である。第4実施形態では、
図6に示されるように、エリアセンサ8の受光面においてライン状の光Lの像が複数現れることになるが、列毎の画像xがスパースであれば(または、フーリエ変換などの線形変換によりスパースとなれば)、第3実施形態の場合と同様にして、圧縮センシング技術により画像xを復元することができる。第4実施形態は、複数のライン光を用いることで測定回数を減らすことが可能であるので、計測時間を減らすことが可能となる。
【0072】
また、例えば、対象物が、ガラスのような半透明物体と、この半透明物体の背後にある物体と、を含むものである場合に、エリアセンサ8の受光面におけるライン状の光Lの像が
図7に示されるような場合であっても、列毎の画像xがスパースであれば(または、フーリエ変換などの線形変換によりスパースとなれば)、第1実施形態の場合と同様にして、圧縮センシング技術により画像xを復元することができる。
【符号の説明】
【0073】
1A~1D…形状測定装置、2…光源、3…照射光学系、4…結像光学系、5…空間光変調器、6…集光光学系、7…リニアセンサ、8…エリアセンサ、9A,9C…処理部、10…画素アレイ部、21…行制御部、23…行制御線、32…列読出部、34…列出力線、P1,1~PN,N…画素。