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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135349
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】消音装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/033 20060101AFI20220908BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F16L55/033
G10K11/16 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035093
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】奥山 信輔
【テーマコード(参考)】
3H025
5D061
【Fターム(参考)】
3H025CA01
3H025CB16
3H025CB35
5D061EE05
5D061EE22
5D061EE28
(57)【要約】
【課題】透過損失が大きく、周波数に応じた調整が容易で、消音効果を生じる周波数の範囲が広い消音装置を提供する。
【解決手段】流体が流れる主管2に挿入される消音装置1であって、主管2の内側に位置する内管3と、内管3の外面に設けられ、主管2の内面に接触する螺旋状のフィン4a、4bと、フィン4a、4bによって形成される螺旋状の溝6a、6bを仕切る仕切部5とが設けられている。主管2と内管3との間に、フィン4a、4bと仕切部5とで囲まれるサイドブランチチャンバ7a、7bが設けられている。螺旋状の溝6a、6bの上流側端部又は下流側端部にサイドブランチチャンバ7a、7bと連通する出入口8a、8bが設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる主管に挿入される消音装置であって、
前記主管の内側に位置する内管と、
前記内管の外面に設けられ、前記主管の内面に接触する螺旋状のフィンと、
前記フィンによって形成される螺旋状の溝を仕切る仕切部とが設けられ、
前記主管と前記内管との間に、前記フィンと前記仕切部とで囲まれるサイドブランチチャンバが設けられ、
前記螺旋状の溝の上流側端部又は下流側端部に前記サイドブランチチャンバと連通する出入口が設けられていることを特徴とする消音装置。
【請求項2】
前記仕切部は、前記螺旋状の溝の中間部に形成され、
前記サイドブランチチャンバは、前記仕切部より上流側の第1サイドブランチチャンバと、前記仕切部より下流側の第2サイドブランチチャンバとからなることを特徴とする請求項1に記載の消音装置。
【請求項3】
前記仕切部は、前記螺旋状の溝の上流側端部又は下流側端部に形成され、
前記サイドブランチチャンバは、前記仕切部より上流側又は下流側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の消音装置。
【請求項4】
前記仕切部は、前記螺旋状の溝の上流側の第1仕切部と、下流側の第2仕切部とからなり、
前記第1仕切部と前記第2仕切部との間に共鳴チャンバが設けられ、
前記内管の内面に、前記共鳴チャンバと連通するように開口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の消音装置。
【請求項5】
前記螺旋状のフィンは、複数条のフィンからなり、
前記複数条のフィンによって形成される複数条の螺旋状の溝は、前記仕切部が形成された螺旋状の第1溝と、前記仕切部が無い螺旋状の第2溝とからなり、
前記主管と前記内管との間に、前記螺旋状の第2溝に沿って、前記主管を流れる流体の副流路が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の消音装置。
【請求項6】
前記フィンを密封する外筒が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の消音装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置の冷媒配管、排気管等に挿入される消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置において、コンプレッサの機械騒音や冷媒のキャビテーションによる騒音が配管を介してエバポレータに伝わり、吹出口からドライバに伝わるか、あるいは、配管の途中でエンジンルームの空間を介して車体経由でドライバに伝わる。このため、車両用空調装置の配管には、マフラー型のサイレンサが介設されたり、内挿型のサイレンサが挿入されている。マフラー型のサイレンサは、大型で重く、ろう付けによるコストアップが生じるため、近年では、内挿型のサイレンサが多く採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、内管の外面に、らせん状のフィンを設けたものが記載されている。これは、内外の流路長の差により位相差が生じて、音の干渉を引き起こし、消音効果が生じるが、消音効果のある周波数を調整するには、内外の流路長の差を変化させるしかなく、調整が困難である。
【0004】
特許文献2には、管状の本体に挿入される消音器であって、該消音器と本体との間に共鳴器チャンバが設けられ、本体の流路が接続チャンネルを介して共鳴器チャンバに接続された消音器が記載されている。また、特許文献3には、内側部材を包囲する外側部材をベローズとし、内側部材と外側部材との間にキャビティが形成され、内側部材の開口がキャビティに開放している吸音装置が記載されている。これらは、いずれも共鳴型で、共鳴周波数が共鳴器の形状で決まるので、消音効果のある周波数が狭い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許公開公報EP2138750A1
【特許文献2】特許第5785173号公報明細書
【特許文献3】特開2005-84693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、透過損失が大きく、周波数に応じた調整が容易で、消音効果を生じる周波数の範囲が広い消音装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、
(1)流体が流れる主管に挿入される消音装置であって、
前記主管の内側に位置する内管と、
前記内管の外面に設けられ、前記主管の内面に接触する螺旋状のフィンと、
前記フィンによって形成される螺旋状の溝を仕切る仕切部とが設けられ、
前記主管と前記内管との間に、前記フィンと前記仕切部とで囲まれるサイドブランチチャンバが設けられ、
前記螺旋状の溝の上流側端部又は下流側端部に前記サイドブランチチャンバと連通する出入口が設けられていることを特徴とする。
【0008】
(2)前記仕切部は、前記螺旋状の溝の中間部に形成され、
前記サイドブランチチャンバは、前記仕切部より上流側の第1サイドブランチチャンバと、前記仕切部より下流側の第2サイドブランチチャンバとからなることが好ましい。
【0009】
(3)前記仕切部は、前記螺旋状の溝の上流側端部又は下流側端部に形成され、
前記サイドブランチチャンバは、前記仕切部より上流側又は下流側に形成されていることが好ましい。
【0010】
(4)前記仕切部は、前記螺旋状の溝の上流側の第1仕切部と、下流側の第2仕切部とからなり、
前記第1仕切部と前記第2仕切部の間に共鳴チャンバが設けられ、
前記内管の内面に、前記共鳴チャンバと連通するように開口が設けられていることが好ましい。
【0011】
(5)前記螺旋状のフィンは、複数条のフィンからなり、
前記複数条のフィンによって形成される複数条の螺旋状の溝は、前記仕切部が形成された螺旋状の第1溝と、前記仕切部が無い螺旋状の第2溝とからなり、
前記主管と前記内管との間に、前記螺旋状の第2溝に沿って、前記主管を流れる流体の副流路が形成されていることが好ましい。
【0012】
(6)前記フィンを密封する外筒が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1から3の発明によれば、螺旋状の溝の上流側端部又は下流側端部からサイドブランチチャンバに進入した音波は、仕切部で反射して螺旋状の溝の上流側端部又は下流側端部に戻り、内管の音波と逆位相になって干渉し、消音される。仕切部の位置を変えることで、消音効果を生じる周波数を調整することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、内管の内面に設けられた開口から共鳴チャンバに進入した音波のエネルギーが共鳴チャンバで吸収され、消音される。このため、サイドブランチチャンバによる広範囲の周波数域での消音効果と、共鳴チャンバによる特定周波数域での消音効果とが複合した消音効果が得られる。特に、サイドブランチチャンバによる消音効果が得にくい周波数領域を共鳴チャンバによる消音効果で補うことで、より広範囲の周波数領域で消音効果を得ることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、複数条のフィンによって形成される複数条の螺旋状の溝のうち、仕切部が無い螺旋状の第2溝を副流路と、内管の内側の主流路との間の流路の差により、音波の位相差が生じて、音の干渉を引き起こし、消音効果が生じる。このため、サイドブランチチャンバによる広範囲の周波数域での消音効果と、副流路と主流路の位相差による消音効果とが複合した消音効果が得られる。
【0016】
請求項6の発明によれば、外筒がサイドブランチチャンバ、共鳴チャンバを密封しているので、主管の曲がりや振動によるサイドブランチチャンバや共鳴チャンバの漏れが防止され、消音効果を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る消音装置の主管の一部を破断した斜視図。
図2図1の消音装置の上流側から見た斜視図。
図3図1の消音装置の下流側から見た斜視図。
図4図1の消音装置を挿入した主管の縦断面図。
図5図1の消音装置の変形例を示す斜視図及び正面図。
図6】消音効果の解析に用いた発明例と比較例とを示す斜視図。
図7】比較例(spiral 1)、発明例(spiral 2)の透過損失の解析結果を示すグラフ。
図8】比較例(spiral 1)、発明例(spiral 2)の透過損失の解析結果を低周波数域、高周波数域、全周波数域の平均値で示したグラフ。
図9】本発明の第2実施形態に係る消音装置の斜視図。
図10図9の消音装置を挿入した主管の縦断面図。
図11図9の消音装置の変形例を示す斜視図。
図12】本発明の第3実施形態に係る消音装置の主管の一部を破断した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る消音装置1を示す。消音装置1は、車両用空調装置の冷媒が流れる配管に設けられる。具体的には、消音装置は、図示しないコンプレッサ、コンデンサ、膨張弁及びエバポレータからなる車両用空調装置におけるエバポレータ又はコンプレッサの出口側の配管(以下、「主管」という)2に挿入される。主管2は、ゴムや合成樹脂等の弾性と可撓性とを有する素材で形成されているが、これに限らず、アルミニウム等の可撓性を有さない素材を使用してもよい。主管2には、図1において左側の上流から右側の下流に流体(以下「冷媒」という)が流れるものとする。
【0020】
図2図3に示すように、消音装置1は、内管3と、フィン4と、仕切部5とを備えている。
【0021】
内管3は、主管2の内径より小さい外径を有する。内管3の肉厚は、流路確保のため、できるだけ薄いほうが好ましい。内管3の長さは、任意であるが、主管2を設置する場所での主管2の曲がりを妨げない程度の長さが好ましい。内管3の内側は、主管2を流れる流体の主流路10を形成する。
【0022】
フィン4は、2条の螺旋状の第1フィン4aと第2フィン4bとからなっている。第1フィン4aは、内管3の外面に設けられ、内管3の上流側の端部から下流側の端部まで、所定のピッチpで螺旋状に延びている。第2フィン4bは、内管3の上流側の端部の第1フィン4aとは180度位相がずれた位置から下流側の端部まで、第1フィン4aと同じピッチpで螺旋状に延びている。第2フィン4bは、第1フィン4aの隣接する2つの側面の中間に位置する。フィン4の高さは、内管3の外面から主管2の内面までの径方向の寸法と等しい。このため、フィン4の外端面は、主管2の内面に接触している。フィン4の厚さは、内管3の肉厚と同じが好ましいが、これに限るものではない。第1フィン4aと第2フィン4bとは、主管2と内管3との間に、2条の螺旋状の第1溝6aと第2溝6bとを形成している。本実施形態では、フィン4は2条であるが、1条でも3条以上でもよい。
【0023】
仕切部5は、第1溝6aの第1フィン4aの側面と、これと隣接する第2フィン4bの側面との間に設けられ、第1溝6aを上流側と下流側とに仕切っている。仕切部5の位置は任意であるが、仕切部5の上流側と下流側とに形成されるサイドブランチチャンバ7a、7bの長さを決定する。仕切部5の高さは、フィン4の高さと同じである。仕切部5の厚さは、フィン4の厚さと同じが好ましいが、これに限るものではない。
【0024】
消音装置1は、図示しない固定部材により、主管2の外側から仕切部5を含むフィン4の一部が締め付けられることにより、主管2の内部に固定されている。第1フィン4aと第2フィン4bとの外端面及び仕切部5の外端面は、消音装置1が主管2に挿入されたときに主管2の内面と密着する。これにより、後述するサイドブランチチャンバ7a、7bが、主管2によって密封されるようになっている。固定手段の代用として、消音装置1を主管2に挿入するとき、圧入したり、シール材を用いてもよい。
【0025】
図4に示すように、主管2と内管3との間で、かつ、第1フィン4aと第2フィン4bとが形成する螺旋状の第1溝6aには、仕切部5の上流側に螺旋状の第1サイドブランチチャンバ7aが形成され、仕切部5の下流側に螺旋状の第2サイドブランチチャンバ7bが形成されている。第1サイドブランチチャンバ6aの出入口8aは、第1溝6aの上流側端部にあり、第2サイドブランチチャンバ7bの出入口8bは、第2溝6bの下流側端部にある。
【0026】
また、主管2と内管3との間で、かつ、第1フィン4aと第2フィン4bとが形成する螺旋状の第2溝6bは、内管3の上流側端部から下流側端部まで副流路9を形成する。
【0027】
次に、本実施形態の消音装置1の作用について説明する。
【0028】
図4に示すように、主管2内を流れる冷媒は、消音装置1の上流側端部で、内管3の内側の主流路10と、内管3の外側の螺旋状の副流路9とに流入し、下流側端部で、内管3の内側の主流路10より流出するとともに、内管3の外側の螺旋状の副流路9より流出する。消音装置1の上流側の図示しない音源から発生する音(コンプレッサの機械騒音や、冷媒のキャビテーションによる騒音)は、冷媒とともに下流側に伝搬し、消音装置1の内管3の内側の主流路10と、内管3の外側の副流路9とに進入する。なお、音源は、下流側にあってもよく、その場合は、上流側で消音効果が生じることになる。
【0029】
内管3内を伝搬してきた音波は、内管3の上流側端部の出入口8aから第1サイドブランチチャンバ7aに進入し、また、内管3の下流側端部の出入口8bから第2サイドブランチチャンバ7bに進入し、各サイドブランチチャンバ7a、7bの仕切部5で反射して出入口8a、8bに戻り、ここで、内管3の音波と逆位相になって干渉し、消音される。
【0030】
ここで、主管2の断面積をS、サイドブランチチャンバ7a、7bの断面積をSs、サイドブランチチャンバ7a、7bの長さをl、音波の周波数をf、音速をcとすると、消音装置1での透過損失TLは、数1で表される。なお、サイドブランチチャンバの長さlは、出入口8a、8bから仕切部5までの螺旋に沿った距離である。
【数1】
【0031】
第1サイドブランチチャンバ7aと、第2サイドブランチチャンバ7bとの消音効果に加え、内管3の内側の主流路10と、内管3の外側の副流路9との流路長の差により、主流路10を伝搬してきた音波と、副流路9を伝搬してきた音波との位相差が生じて、音の干渉を引き起こし、消音効果が生じる。
【0032】
本実施形態の消音装置1では、仕切部5の位置を変えることで、第1サイドブランチチャンバ7aと、第2サイドブランチチャンバ7bとの長さを調整し、音源の周波数に応じて消音効果を高くすることができる。
【0033】
第1実施形態の消音装置1は、主管2と内管3との間で、かつ、第1フィン4aと第2フィン4bとが形成する螺旋状の第1溝6aの中間部に仕切部5を設けたが、図5(a)に示すように、螺旋状の第1溝6aの上流側端部に仕切部5を設けたり、又は、図5(b)に示すように、下流側端部に仕切部5を設けてもよい。
【0034】
第1実施形態の消音装置1において、図5(c)に示すように、内管3の上流側端部の内面は、下流側に向かって縮径するテーパー面11aで形成されていてもよい。同様に、内管3の下流側端部の内面は、下流側に向かって拡径するテーパー面11bで形成されていてもよい。これにより、主管2から内管3を経て主管2に流出する冷媒の圧力損失を低減することができる。
【0035】
本発明者らは、第1実施形態の消音装置1の消音効果を確認するため、図6に示す2つの解析モデルについて、コンピュータシミュレーションによる音響解析を行った。
【0036】
図6において、比較例(spiral 1)は、2条の螺旋状のフィン4a、4bを有するが、仕切部が無く、サイドブランチチャンバを有しない構造である。これに対し、発明例(spiral 2)は、図2に示す第1実施形態の消音装置1と同じもので、サイドブランチチャンバ7a、7bを有する構造である。各解析モデルは、いずれも外径20mm、内径8mm、全長100mmとした。各解析モデルについて、音源の周波数を変化させて透過損失を求めた。
【0037】
この音響解析では、媒質は、温度25℃、圧力0.101325MPa(標準気圧)、密度1.184kg/m、音速346.25m/sの空気とした。消音効果が得られる狙いの周波数を0~4000Hzとした。サイドブランチの長さをl、音速をcとすると、狙いの周波数fの理論値は、数2で求めた。具体的には、第1サイドブランチチャンバ7a、第2サイドブランチチャンバ7bの狙いの周波数は、それぞれ421Hz、3785Hzとした。
【数2】
【0038】
仕切部が無い第2溝6bは、主流路10の長さをli、副流路9の長さをloとすると、狙いの周波数fの理論値は、数3で求めた。具体的には、第2溝6bの狙いの周波数は、1365Hzとした。
【数3】
【0039】
図7は、周波数を0から8000Hzまで変化させたときの透過損失を示す。図7より、発明例(spiral 2)は、4000~8000Hzで、比較例(spiral 1)よりも、透過損失のピークの数が多く、消音効果が大きいことが確認された。
【0040】
図8は、0~4000Hzの低周波数における透過損失の平均、4000~8000Hzの高周波数における透過損失の平均、全周波数における透過損失の平均を示す。図8より、比較例(spiral 1)に比べて、発明例(spiral 2)は、透過損失が大きく、消音効果が大きいことが確認された。
【0041】
<第2実施形態>
図9図10は、本発明の第2実施形態に係る消音装置20を示す。
【0042】
第2実施形態の消音装置20は、内管3の外面に第1仕切部5aと、第2仕切部5bとが設けられ、上流側の第1仕切部5aと内管3の上流側端部との間に第1サイドブランチチャンバ7aが形成され、下流側の仕切部5bと内管3の下流側端部との間に第2サイドブランチチャンバ7bが形成され、さらに、第1仕切部5aと第2仕切部5bとの間に共鳴チャンバ21が形成されている。第1サイドブランチチャンバ7a、第2サイドブランチチャンバ7bの構成は、長さ寸法以外は、前記第1実施形態のものと同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
共鳴チャンバ21は、主管2の内面と、内管3の外面と、第1フィン4aと、第2フィン4bと、第1仕切部5aと、第2仕切部5bとで囲まれた空間で形成されている。共鳴チャンバ21に連通する開口22は、第1仕切部5aと第2仕切部5bとの中間で、内管3の壁を貫通するように形成されている。
【0044】
第2実施形態の消音装置20では、第1サイドブランチチャンバ7a、第2サイドブランチチャンバ7bの消音効果に加えて、共鳴チャンバ21による消音効果を奏する。すなわち、内管3に進入した音波のエネルギーが、共鳴チャンバ21で吸収され、消音される。
【0045】
ここで、共鳴チャンバ21の容積をV,開口22の断面積をSr、開口22の長さをl、音速をcとすると、共鳴周波数ωrは、数4で表される。
【数4】
【0046】
したがって、共鳴チャンバ21の共鳴周波数を入射音の周波数と一致させることで、特定域の周波数の消音効果を奏することができ、第1サイドブランチチャンバ7a、第2サイドブランチチャンバ7bの消音効果と合わせて、消音効果を生じる周波数の範囲を広くすることができる。
【0047】
第2実施形態の消音装置20は、第1仕切部5aと第2仕切部5bとの間に共鳴チャンバ21を設け、第1仕切部5aと内管3の上流側端部との間に第1サイドブランチチャンバ7aを設け、第2仕切部5bと内管3の下流側端部との間に第2サイドブランチチャンバ7bを設けたが、図11(a)に示すように、第1仕切部5aを内管3の上流側端部に設け、第2仕切部5bを第1仕切部5aの下流側に設けて、第1仕切部5aと第2仕切部5bとの間に共鳴チャンバ21を設け、第2仕切部5bと内管3の下流側端部との間にサイドブランチチャンバ7を設けてもよい。また、図11(b)に示すように、第2仕切部5bを内管3の下流側端部に設け、第1仕切部5aを第1仕切部5bの上流側に設けて、第1仕切部5aと第2仕切部5bとの間に共鳴チャンバ21を設け、第1仕切部5aと内管3の上流側端部との間にサイドブランチチャンバ7を設けてもよい。また、仕切部の数を増やすことで、複数の共鳴チャンバを設けてもよい。
【0048】
<第3実施形態>
図12は、本発明の第3実施形態に係る消音装置30を示す。
【0049】
第3実施形態に係る消音装置30は、図2の第1実施形態の消音装置1を外筒31に圧入して、外筒31が、各サイドブランチチャンバ7a、7bを密封するように形成されている。
【0050】
外筒31は、ナイロン等の合成樹脂で形成されている。外筒31は、アルミニウム等の金属でもよいが、消音装置1を外筒31に挿入したとき、消音装置1の螺旋状のフィン4a、4bと仕切部5の外端面とが、外筒31の内面と密着するように、シール材又は接着剤を用いることが好ましい。
【0051】
第3実施形態に係る消音装置30は、外筒31を装着した状態で、冷媒の流路を形成する主管2に挿入される。第3実施形態に係る消音装置30では、主管2がエンジンルーム内で配管される際に曲げられることがあっても、外筒31が各サイドブランチチャンバを密封しているので、主管2の曲がりや振動によるサイドブランチチャンバの漏れが防止され、消音効果を維持することができる。
【0052】
本発明は、前記実施形態に限るものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨の範囲内で修正し変更することができる。
例えば、フィンの数は、前記実施形態のように2条に限らないし、仕切部の位置すなわちサイドブランチチャンバの長さも適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…消音装置(第1実施形態)
2…主管
3…内管
4…フィン
4a…第1フィン
4b…第2フィン
5…仕切部
5a…第1仕切部
5b…第2仕切部
6…溝
6a…第1溝
6b…第2溝
7…サイドブランチチャンバ
7a…第1サイドブランチチャンバ
7b…第2サイドブランチチャンバ
8…出入口
8a…第1出入口
8b…第2出入口
9…副流路
10…主流路
11a、11b…テーパー面
20…消音装置(第2実施形態)
21…共鳴チャンバ
22…開口
30…消音装置(第3実施形態)
31…外筒

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12