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特開2022-13535発電素子、発電装置、電子機器、及び発電素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013535
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】発電素子、発電装置、電子機器、及び発電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 37/00 20060101AFI20220111BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01L37/00
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138916
(22)【出願日】2020-08-19
(62)【分割の表示】P 2020113330の分割
【原出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】516230102
【氏名又は名称】株式会社GCEインスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】後藤 博史
(72)【発明者】
【氏名】坂田 稔
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン ラーシェ マティアス
(57)【要約】
【課題】出力電圧の向上を図ることができる発電素子、発電装置、電子機器、及び発電素子の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の方向に積層された複数の積層体1を備え、複数の前記積層体1は、第1主面11aと、該第1主面11aと前記第1の方向において対向する第2主面11bとを有するとともに、導電性を有する基板11を含む第1電極部10と、前記第1主面11aに接して設けられ、前記基板11とは異なる仕事関数を有する第2電極22と、前記第2主面11b側に設けられる中間部14と、を含み、前記第1電極部10は、前記基板11と前記中間部14との間に設けられ、前記第2主面11bに接する第1電極21を含み、前記第1電極21の仕事関数は、前記第2電極22の仕事関数より大きいことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子であって、
第1の方向に積層された複数の積層体を備え、
複数の前記積層体は、
第1主面と、該第1主面と前記第1の方向において対向する第2主面とを有するとともに、導電性を有する基板を含む第1電極部と、
前記第1主面に接して設けられ、前記基板とは異なる仕事関数を有する第2電極と、
前記第2主面側に設けられる中間部と、
を含み、
前記第1電極部は、前記基板と前記中間部との間に設けられ、前記第2主面に接する第1電極を含み、
前記第1電極の仕事関数は、前記第2電極の仕事関数より大きいこと
を特徴とする発電素子。
【請求項2】
前記基板の比抵抗値が、1×10-6Ω・cm以上1×10Ω・cm以下であること
を特徴とする請求項1記載の発電素子。
【請求項3】
前記中間部は、ナノ粒子を含むとともに、前記ナノ粒子は導電物を含み、
前記基板の比抵抗値は、前記中間部の比抵抗値より小さいこと
を特徴とする請求項1又は2記載の発電素子。
【請求項4】
前記第1電極部は、前記中間部を囲み、他の前記積層体を支持する支持部を含み、
前記支持部は、前記基板の一部が酸化したものであること
を特徴とする請求項1~3のうち何れか1項記載の発電素子。
【請求項5】
前記基板は、半導体であり、前記第1主面及び前記第2主面の少なくとも何れかに設けられた縮退部と、非縮退部とを有すること
を特徴とする請求項1~4のうち何れか1項記載の発電素子。
【請求項6】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子を備えた発電装置であって、
前記発電素子は、
第1の方向に積層された複数の積層体を備え、
複数の前記積層体は、
第1主面と、該第1主面と前記第1の方向において対向する第2主面とを有するとともに、導電性を有する基板を含む第1電極部と、
前記第1主面に接して設けられ、前記基板とは異なる仕事関数を有する第2電極と、
前記第2主面側に設けられる中間部と、
を含み、
前記第1電極部は、前記基板と前記中間部との間に設けられ、前記第2主面に接する第1電極を含み、
前記第1電極の仕事関数は、前記第2電極の仕事関数より大きいこと
を特徴とする発電装置。
【請求項7】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子と、前記発電素子を電源に用いて駆動させることが可能な電子部品と、を含む電子機器であって、
前記発電素子は、
第1の方向に積層された複数の積層体を備え、
複数の前記積層体は、
第1主面と、該第1主面と前記第1の方向において対向する第2主面とを有するとともに、導電性を有する基板を含む第1電極部と、
前記第1主面に接して設けられ、前記基板とは異なる仕事関数を有する第2電極と、
前記第2主面側に設けられる中間部と、
を含み、
前記第1電極部は、前記基板と前記中間部との間に設けられ、前記第2主面に接する第1電極を含み、
前記第1電極の仕事関数は、前記第2電極の仕事関数より大きいこと
を特徴とする電子機器。
【請求項8】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子の製造方法であって、
第1主面と、該第1主面と第1の方向において対向する第2主面とを有するとともに導電性を有する基板を含む第1電極部を形成する第1電極部形成工程と、
前記基板とは異なる仕事関数を有する第2電極を前記第1主面に接して形成する第2電極形成工程と、
前記第2電極と前記第1電極部をこの順に2以上積層させる積層工程と、
中間部を、前記第2電極と、前記第2主面との間に形成する中間部形成工程と、
を有し、
前記第1電極部は、前記基板と前記中間部との間に設けられ、前記第2主面に接する第1電極を含み、
前記第1電極の仕事関数は、前記第2電極の仕事関数より大きいこと
を特徴とする発電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子、発電装置、電子機器、及び発電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱エネルギーを利用して電気エネルギーを生成する発電素子の開発が盛んに行われている。特に、電極の有する仕事関数の差分を利用した電気エネルギーの生成に関し、例えば特許文献1に開示された熱電素子等が提案されている。このような熱電素子は、電極に与える温度差を利用して電気エネルギーを生成する構成に比べて、様々な用途への利用が期待されている。
【0003】
特許文献1には、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電素子であって、第1積層部と、第1積層部の上に積層された第2積層部と、を有する積層体を備え、第1積層部及び第2積層部は、積層体の積層方向と交わる主面を有する基材と、基材内に設けられた配線と、積層方向に沿って、配線と離間して設けられた第1電極層と、基材内において配線と接し、第1電極層と配線との間に設けられ、第1電極層とは異なる仕事関数を有する第2電極層と、基材内に設けられ、第1電極層と第2電極層との間に接して設けられ、ナノ粒子を含む中間部と、をそれぞれ有し、第1積層部の有する第1電極層は、第2積層部の有する配線に接し、ナノ粒子は、第1電極層の仕事関数と、第2電極層の仕事関数との間の仕事関数を有する熱電素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6411612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、発電素子を発電装置として用いる場合、得られる電流や電圧を高くするために、電極部分を積層した構成が要求される。この点、特許文献1に開示された熱電素子では、基材内に設けられ、第2電極層と接する配線が開示されている。このため、電極と配線間の接触抵抗に起因する素子全体の抵抗が増加し、出力電圧向上の妨げになることが懸念として挙げられる。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、出力電圧の向上を図ることができる発電素子、発電装置、電子機器、及び発電素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る発電素子は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子であって、第1の方向に積層された複数の積層体を備え、複数の前記積層体は、第1主面と、該第1主面と前記第1の方向において対向する第2主面とを有するとともに、導電性を有する基板を含む第1電極部と、前記第1主面に接して設けられ、前記基板とは異なる仕事関数を有する第2電極と、前記第2主面側に設けられる中間部と、を含み、前記第1電極部は、前記基板と前記中間部との間に設けられ、前記第2主面に接する第1電極を含み、前記第1電極の仕事関数は、前記第2電極の仕事関数より大きいことを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る発電素子は、第1発明において、前記基板の比抵抗値が1×10-6Ω・cm以上1×10Ω・cm以下であることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る発電素子は、第1発明又は第2発明において、前記中間部は、ナノ粒子を含むとともに、前記ナノ粒子は導電物を含み、前記基板の比抵抗値は、前記中間部の比抵抗値より小さいことを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る発電素子は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記第1電極部は、前記中間部を囲み、他の前記積層体を支持する支持部を含み、前記支持部は、前記基板の一部が酸化したものであることを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る発電素子は、第1発明~第4発明の何れかにおいて、前記基板は、半導体であり、前記第1主面及び前記第2主面の少なくとも何れかに設けられた縮退部と、非縮退部とを有することを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る発電装置は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子を備えた発電装置であって、前記発電素子は、第1の方向に積層された複数の積層体を備え、複数の前記積層体は、第1主面と、該第1主面と前記第1の方向において対向する第2主面とを有するとともに、導電性を有する基板を含む第1電極部と、前記第1主面に接して設けられる中間部と、を含み、前記第1電極部は、前記基板と前記中間部との間に設けられ、前記第2主面に接する第1電極を含み、前記第1電極の仕事関数は、前記第2電極の仕事関数より大きいことを特徴とする。
【0013】
第7発明に係る電子機器は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子と、前記発電素子を電源に用いて駆動させることが可能な電子部品と、を含む電子機器であって、前記発電素子は、第1の方向に積層された複数の積層体を備え、複数の前記積層体は、第1主面と、該第1主面と前記第1の方向において対向する第2主面とを有するとともに、導電性を有する基板を含む第1電極部と、前記第1主面に接して設けられる中間部と、を含み、前記第1電極部は、前記基板と前記中間部との間に設けられ、前記第2主面に接する第1電極を含み、前記第1電極の仕事関数は、前記第2電極の仕事関数より大きいことを特徴とする。
【0014】
第8発明に係る発電素子の製造方法は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子の製造方法であって、第1主面と、該第1主面と第1の方向において対向する第2主面とを有するとともに導電性を有する基板を含む第1電極部を形成する第1電極部形成工程と、前記基板とは異なる仕事関数を有する第2電極を前記第1主面に接して形成する第2電極形成工程と、前記第2電極と前記第1電極部をこの順に2以上積層させる積層工程と、中間部を、前記第2電極と、前記第2主面との間に形成する中間部形成工程と、を有し、前記第1電極部は、前記基板と前記中間部との間に設けられ、前記第2主面に接する第1電極を含み、前記第1電極の仕事関数は、前記第2電極の仕事関数より大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明~第5発明によれば、複数の積層体は、導電性を有する基板を含む第1電極部と、第2電極と、中間部と、を含む。このため、複数の積層体の間に配線が不要となり、素子全体の抵抗の増加を抑制することができる。これにより、出力電圧の向上を図ることができる。また、積層に伴う基板起因の抵抗増大を抑制できる。これにより、発電効率の更なる向上を図ることができる。
【0016】
特に第2発明によれば、基板の比抵抗値が1×10-6Ω・cm以上1×10Ω・cm以下である。このため、積層体の積層数に伴い増加する抵抗、を抑制することができる。これにより、発電素子の発電効率の更なる向上を図ることができる。
【0017】
特に第3発明によれば、中間部に含まれるナノ粒子は導電物を含む。このため、中間部内をナノ粒子が移動し易くなる。これにより、発電効率の向上を図ることが可能となる。
【0018】
特に第4発明によれば、支持部は、基板の一部が酸化したものである。このため、新たに支持部を形成する場合に比べて、支持部の高さを高精度に制御することができ、電極間ギャップの大きさを高精度に設定することができる。これにより、発電効率の安定化を図ることが可能となる。
【0019】
特に第5発明によれば、基板は、半導体であり、第1主面及び第2主面の少なくとも何れかに設けられた縮退部と、非縮退部とを有する。このため、縮退部を有しない構成に比べて、第2電極等の他の構成との接触抵抗を低減させることができる。これにより、素子全体の抵抗の増加を抑制することが可能となる。
【0020】
第6発明によれば、発電素子への電気的配線の接続や、発電素子の検査を容易化することができる。このため、形成しやすい中間部を持つ発電素子を備えた発電装置を提供できる。
【0021】
第7発明によれば、発電素子への電気的配線の接続や、発電素子の検査を容易化することができる。このため、発電素子を含む電子機器を得ることができる。
【0022】
第8発明によれば、発電素子は、第1発明から第5発明の発電素子の製造方法により製造される。このため、複数の積層体の間に配線が不要となり、素子全体の抵抗の増加を抑制することができる。これにより、出力電圧の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1(a)は、第1実施形態に係る発電素子及び発電装置の一例を示す模式断面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA-A線に沿った模式断面図である。
図2図2は、中間部の一例を示す模式断面図である。
図3図3は、第1実施形態における発電素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4(a)~(i)は、第1実施形態における発電素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る発電素子及び発電装置の一例を示す模式断面図である。
図6図6は、第3実施形態に係る発電素子及び発電装置の一例を示す模式断面図である。
図7図7(a)~図7(d)は、発電素子を備えた電子機器の例を示す模式ブロック図であり、図7(e)~図7(h)は、発電素子を含む発電装置を備えた電子機器の例を示す模式ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態としての発電素子及び発電素子の製造方法それぞれの一例について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、各電極部が積層される高さ方向を第1の方向Zとし、第1の方向Zと交差、例えば直交する1つの平面方向を第2の方向Xとし、第1の方向Z及び第2の方向Xのそれぞれと交差、例えば直交する別の平面方向を第3の方向Yとする。また、各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における発電素子100、発電装置200の一例を示す模式図である。図1に示すように、発電素子100は、第1の方向に積層された複数の積層体1を備える。発電素子100を構成する積層体1の個数は、必要な電力を考慮して適宜増減すればよく、特に限定されるものではない。
【0026】
<発電装置200>
図1(a)は、第1実施形態に係る発電素子を備えた発電装置の一例を示す模式断面図である。
【0027】
図1(a)に示すように、発電装置200は、発電素子100と、第1配線101と、第2配線102とを含む。発電素子100は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。このような発電素子100を備えた発電装置200は、例えば、図示せぬ熱源に搭載又は設置され、熱源の熱エネルギーを元として、発電素子100が発生させた電気エネルギーを、第1配線101及び第2配線102を介して負荷Rへ出力する。負荷Rの一端は第1配線101と電気的に接続され、他端は第2配線102と電気的に接続される。負荷Rは、例えば電気的な機器を示している。負荷Rは、発電装置200を主電源又は補助電源に用いて駆動される。
【0028】
発電素子100の熱源としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の電子デバイス又は電子部品、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子、自動車等のエンジン、工場の生産設備、人体、太陽光、及び環境温度等を利用することができる。例えば、電子デバイス、電子部品、発光素子、エンジン、及び生産設備等は人工熱源である。人体、太陽光、及び環境温度等は自然熱源である。発電素子100を備えた発電装置200は、例えばIoT(Internet of Things)デバイス及びウェアラブル機器等のモバイル機器や自立型センサ端末の内部に設けることができ、電池の代替又は補助として用いることができる。さらに、発電装置200は、太陽光発電等のような、より大型の発電装置への応用も可能である。
【0029】
<発電素子100>
発電素子100は、例えば、上記人工熱源が発した熱エネルギー、又は上記自然熱源が持つ熱エネルギーを電気エネルギーに変換し、電流を生成する。発電素子100は、発電装置200内に設けるだけでなく、発電素子100自体を、上記モバイル機器や上記自立型センサ端末等の内部に設けることもできる。この場合、発電素子100自体が、上記モバイル機器又は上記自立型センサ端末等の、電池の代替部品又は補助部品となる。
【0030】
発電素子100は、複数の積層体1を備える。各積層体1は、第1電極部10と、第2電極22と、中間部14を含む。第1電極部10は、例えば基板11と、支持部30とを含む。基板11は、第1主面11aと、第1主面11aと第1の方向Zにおいて対向する第2主面11bとを有するとともに導電性を有する。第2電極22は、第1主面11aに接して設けられ、基板11とは異なる仕事関数を有する。中間部14は、第2主面11b側に設けられ、ナノ粒子を含む。中間部14は、支持部30と、第1封止部31と、第2封止部32により積層体1内に保持される。
【0031】
<基板>
基板11は、導電性を有する板状の部材である。第1の方向Zに沿った基板11の厚みは、例えば0.03mm以上1.0mm以下である。基板11の厚みをこのような範囲とすることで、発電素子100の厚みを薄くすることができる。一方、基板11の厚みが0.03mmを下回ると、基板11が変形し易くなり、中間部14の厚みを制御しにくくなる。また、基板11の厚みが1.0mmより厚ければ、発電素子100の寸法が大きくなり過ぎてしまう。
【0032】
また、基板11の厚みは、例えば積層体1の短手方向(図1(b)における第2の方向X)における外形寸法の1/10以下であればよい。基板11の厚みをこのような条件とすることで、発電素子100の厚みを薄くすることができるが、この範囲外であれば発電素子100の厚みが大きくなるという不都合が生じる。基板11の第2の方向Xの幅は、中間部14の第2の方向Xの幅よりも大きい。
【0033】
基板11の材料としては、導電性を有する金属材料を選ぶことができる。金属材料としては、例えば鉄、アルミニウム、銅、又はアルミニウムと銅との合金等を挙げることができる。また、基板11の材料としては、例えばSi、GaN等の導電性を有する半導体の他、導電性高分子材料を用いてもよい。
【0034】
基板11は、第1主面11aと、第2主面11bを有する。以下の説明では、第2電極22と接する側(第1の方向Zにおける上側)の面を第1主面11aとし、中間部14あるいは支持部30が設けられる側(第1の方向Zにおける下側)の面を第2主面11bとする。基板の形状は、正方形、長方形、その他、円盤状であってもよい。
【0035】
基板11の比抵抗値は、例えば1×10-6Ω・cm以上1×10Ω・cm以下であればよい。基板11の比抵抗値が1×10-6Ω・cmを下回ると、材料の選定が難しい。また、基板11の比抵抗値が1×10Ω・cmよりも大きいと、電流のロスが増大する。
【0036】
また、基板11の比抵抗値は、例えば中間部14の比抵抗値、支持部30の比抵抗値よりも小さい値であればよい。基板11の比抵抗値が、中間部14の比抵抗値、支持部30の比抵抗値よりも大きいと、高い出力電圧を得ることができない懸念がある。
【0037】
<第2電極>
第2電極22は、第1主面11aに設けられ、基板11とは異なる仕事関数を有する。第2電極22は、基板11との間に仕事関数差が生じるのであれば、いかなる材料により構成されてもよいが、例えば、以下に示す金属から選ぶことができる。
白金(Pt)
タングステン(W)
アルミニウム(Al)
チタン(Ti)
ニオブ(Nb)
モリブデン(Mo)
タンタル(Ta)
レニウム(Re)
【0038】
第2電極22の材料として、非金属導電物を選ぶことも可能である。非金属導電物の例としては、シリコン(Si:例えばp型Si、あるいはn型Si)、及びグラフェン等のカーボン系材料等を挙げることができる。
【0039】
第2電極22の第1の方向Zに沿った厚さは、例えば4nm以上1μm以下である。より好ましくは、4nm以上50nm以下である。
【0040】
<中間部>
図2は、中間部14の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、中間部14は、積層体1の下方側に位置し、積層体1が複数積層された場合に、上側の積層体1の基板11と下側の積層体1の第2電極22との間に設けられる。中間部14は、基板11との仕事関数との第2電極22の仕事関数との間の仕事関数を有するナノ粒子141を含む。
【0041】
基板11と第2電極22との間には、第1の方向Zに沿って電極間ギャップGが設定される。発電素子100では、電極間ギャップGは、支持部30の第1の方向Zに沿った厚さによって設定される。電極間ギャップGの幅の一例は、例えば、10μm以下の有限値である。電極間ギャップGの幅は狭いほど、発電素子100の発電効率が向上する。また、電極間ギャップGの幅は狭いほど、発電素子100の第1の方向Zに沿った厚さを薄くできる。このため、例えば、電極間ギャップGの幅は狭い方がよい。電極間ギャップGの幅は、例えば、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。なお、電極間ギャップGの幅と、支持部30の、第1の方向Zに沿った厚さとは、ほぼ等価である。
【0042】
中間部14は、例えば、複数のナノ粒子141と、溶媒142と、を含む。複数のナノ粒子141は、溶媒142内に分散されている。中間部14は、例えば、ナノ粒子141が分散された溶媒142を、ギャップ部140内に充填することで得られる。ナノ粒子141の粒子径は、電極間ギャップGよりも小さい。ナノ粒子141の粒子径は、例えば、電極間ギャップGの1/10以下の有限値とされる。ナノ粒子141の粒子径を、電極間ギャップGの1/10以下とすると、ギャップ部140内に、ナノ粒子141を含む中間部14を形成しやすくなる。これにより、発電素子100の生産に際し、作業性が向上する。
【0043】
ナノ粒子141は、例えば導電物を含む。ナノ粒子141の仕事関数の値は、例えば、基板11の仕事関数の値と、第2電極22の仕事関数の値との間にある。例えば、ナノ粒子141の仕事関数の値は、3.0eV以上5.5eV以下の範囲とされる。これにより、中間部14内にナノ粒子141がない場合に比較して、電気エネルギーの発生量を、さらに増加させることが可能となる。なお、ナノ粒子141の仕事関数の値は、基板11の仕事関数の値と第2電極22の仕事関数の値の間以外であってもよい。
【0044】
ナノ粒子141の材料の例としては、金及び銀の少なくとも1つを選ぶことができる。なお、ナノ粒子141の仕事関数の値は、基板11の仕事関数の値と、第2電極22の仕事関数の値との間にあればよい。したがって、ナノ粒子141の材料には、金及び銀以外の導電性材料を選ぶことも可能である。
【0045】
ナノ粒子141の粒子径は、例えば、2nm以上10nm以下である。また、ナノ粒子141は、例えば、平均粒径(例えばD50)3nm以上8nm以下の粒子径を有してもよい。平均粒径は、例えば粒度分布計測器を用いることで、測定することができる。粒度分布計測器としては、例えば、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布計測器(例えばMicrotracBEL製Nanotrac WaveII-EX150等)を用いればよい。
【0046】
ナノ粒子141は、その表面に、例えば絶縁膜141aを有する。絶縁膜141aの材料の例としては、絶縁性金属化合物及び絶縁性有機化合物の少なくとも1つを選ぶことができる。絶縁性金属化合物の例としては、例えば、シリコン酸化物及びアルミナ等を挙げることができる。絶縁性有機化合物の例としては、アルカンチオール(例えばドデカンチオール)等を挙げることができる。絶縁膜141aの厚さは、例えば20nm以下の有限値である。このような絶縁膜141aをナノ粒子141の表面に設けておくと、電子eは、例えば、基板11とナノ粒子141との間、並びにナノ粒子141と第2電極22との間を、トンネル効果を利用して移動できる。このため、例えば、発電素子100の発電効率の向上が期待できる。
【0047】
溶媒142には、例えば、沸点が60℃以上の液体を用いることができる。このため、室温(例えば15℃~35℃)以上の環境下において、発電素子100を用いた場合であっても、溶媒142の気化を抑制することができる。これにより、溶媒142の気化に伴う発電素子100の劣化を抑制することができる。液体の例としては、有機溶媒及び水の少なくとも1つを選ぶことができる。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、トルエン、キシレン、テトラデカン、及びアルカンチオール等を挙げることができる。なお、溶媒142は、電気的抵抗値が高く、絶縁性である液体がよい。
【0048】
なお、中間部14は、溶媒142を含まず、ナノ粒子141のみを含むようにしてもよい。中間部14が、ナノ粒子141のみを含むことで、例えば、発電素子100を、高温環境下で用いる場合であっても、溶媒142の気化を考慮する必要が無い。これにより、高温環境下における発電素子100の劣化を抑制することが可能となる。
【0049】
<支持部>
支持部30は、第1電極部10において、例えば基板11と一体に設けられる。支持部30は、中間部14を囲み、他の積層体1を支持する。支持部30の比抵抗値は、中間部14の比抵抗値よりも大きい。
【0050】
<発電素子100の動作>
熱エネルギーが発電素子100に与えられると、基板11と第2電極22との間に電流が発生し、熱エネルギーが電気エネルギーに変換される。基板11と第2電極22との間に発生する電流量は、熱エネルギーに依存する他、第2電極22の仕事関数と、基板11の仕事関数との差に依存する。
【0051】
発生する電流量は、例えば、基板11と第2電極22との仕事関数差を大きくすること、及び電極間ギャップを小さくすることで増やすことができる。例えば、発電素子100が発生させる電気エネルギーの量は、上記仕事関数差を大きくすること、及び上記電極間ギャップを小さくすること、の少なくとも何れか1つを考慮することで増加させることができる。
【0052】
<<発電素子100の製造方法>>
次に、発電素子100の製造方法の一例を、説明する。図3は、第1実施形態に係る発電素子100の製造方法の一例を示すフローチャートである。図4(a)~図4(i)は、第1実施形態に係る発電素子100の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【0053】
<酸化膜形成工程:S110>
先ず、図4(a)に示すような、導電性を有する基板11の一方側の面(例えば第2主面11b)上に、図4(b)に示すような酸化膜12(支持部30)を形成する(酸化膜形成工程:S110)。酸化膜形成工程S110では、基板11本体を高温でアニール処理して基板11に酸化膜12を形成する。酸化膜形成工程S110では、例えば、スパッタリング法又は蒸着法を用いて、酸化膜12を塗布するほか、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット法、及びスプレイ印刷法等を用いて形成してもよい。酸化膜形成工程S110では、酸化膜としてシリコン酸化膜が用いられるほか、ポリイミド、PMMA(Polymethyl methacrylate)、又はポリスチレン等のポリマーが用いられてもよい。
【0054】
<レジスト形成工程:S120>
次に、図4(c)に示すように、酸化膜12の上にレジスト(フォトレジスト)13を形成する(レジスト形成工程:S120)。レジスト13の形成では、先ずスピンコート法により酸化膜12の上にレジスト13を塗布する。次に、塗布されたレジスト13に対し、所定のフォトマスクを用いて露光する。露光後、レジスト13の現像を行う。
【0055】
フォトレジストの現像では、露光されたレジスト13が除去される。現像後に残ったレジスト13は、図4(c)に示すように、酸化膜12上に間隔を空けて配置される。酸化膜12上のレジスト13の位置は、支持部30が形成される位置に相当する。なお、フォトレジストの塗布、露光、現像の各処理は、公知の技術を用いて行うこととしてもよい。
【0056】
<エッチング工程:S130>
次に、図4(d)に示すように、レジスト13で覆われていない部分の酸化膜12を除去するためにエッチングする(エッチング工程:S130)。エッチングによりレジスト13で覆われていない部分が除去されるよう、酸化膜12をパターン加工する。パターン加工の結果、レジスト13で覆われている部分の酸化膜12は除去されず、支持部30として形成される。なお、支持部30は、基板11の一部が酸化することにより形成されてもよい。
【0057】
<レジスト除去工程:S140>
次に、図4(e)に示すように、レジスト13を除去する(レジスト除去工程:S140)。具体的には、支持部30の形成が完了したため、支持部30を形成するために用いたレジスト13を除去する。
【0058】
<電極配置工程:S150>
次に、図4(f)に示すように、基板11上に第2電極22を配置する(電極配置工程:S150)。具体的には、基板11のうち、支持部30が配置されていない第1主面11a上に第2電極22を配置する。
【0059】
<切断工程:S160>
次に、図4(g)に示すように、基板11を第2電極22とともに切断する(切断工程:S160)。具体的には、基板11の幅方向中央部分に沿ってダイシングにより基板11及び第2電極22を切断する。ダイシングによる切断の結果同じ厚みを有する複数の第1電極部10が形成される。基板11をダイシングする位置は任意である。なお、酸化膜形成工程S110~切断工程S160の工程を複数回実施してもよい。
【0060】
<積層工程:S170>
次に、図4(h)に示すように、第2電極22と第1電極部10の第2主面11bとを向い合わせた状態で積層する(積層工程:S170)。具体的には、第1の方向Zに沿って下側の第2電極22と上側の第1電極部10の支持部30が接するように配置する。第2電極22上への第1電極部10の配置に際しては、第2電極22と支持部30の材料が同じであることが望ましい。例えば、第2電極22の材料を支持部30の先端に予め形成すればよく、あるいは支持部30の材料を第2電極22に予め形成すればよい。
【0061】
<中間部形成工程:S180>
次に、図4(i)に示すように、第2電極22と第1電極部10の第2主面11bと間に、ナノ粒子を含む中間部14を形成する(中間部形成工程:S180)。具体的には、下側の第1電極部10の第2電極22と上側の第1電極部10の基板11及び支持部30により形成されたスペースに中間部14を形成する。中間部14の形成に際しては、例えば、複数のナノ粒子141を含む溶媒142を毛細管現象等により注入することにより行う。
【0062】
以上、各工程S110~S180の処理を行うことにより、複数の積層体1が積層された発電素子100が形成される。なお、上述した各工程S110~S180の処理を複数回実施してもよい。
【0063】
なお、第1電極部形成工程は、例えば本実施形態における酸化膜形成工程(S110)~レジスト除去工程(S140)に相当し、第2電極形成工程は、例えば本実施形態における電極配置工程(S150)に相当し、積層工程は、例えば本実施形態における積層工程(S170)に相当し、中間部形成工程は、例えば本実施形態における中間部形成工程(S180)に相当する。
【0064】
本実施形態によれば、第2電極22と第1電極部10と中間部14とがこの順に積層された積層体1が2以上積層された発電素子100が形成される。このため、積層時に各層間の配線が不要となる。これにより、出力電圧の向上を図ることができる。また、配線が不要となることに伴い、発電素子100の構造上の簡素化を図ることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、基板11の比抵抗値が1×10-6Ω・cm以上1×10Ω・cm以下である。このため、発生した電流に対する抵抗を抑制することができる。これにより、発電素子の発電効率の向上を図ることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、基板11の比抵抗値が中間部14の比抵抗値より小さい。このため、積層に伴う基板起因の抵抗増大を抑制できる。これにより、発電効率の更なる向上を図ることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、基板11の比抵抗値が支持部30の比抵抗値より小さい。このため、支持部への導通を防ぐことができる。これにより、発電効率の更なる向上を図ることができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、中間部14の比抵抗値が支持部30の比抵抗値より小さい。このため、支持部への導通を防ぐことができる。これにより、発電効率の更なる向上を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、基板11の厚みが0.03mm以上1.0mm以下である。このため、基板のサイズを小さくすることができる。これにより、発電素子100全体の寸法を小さくすることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、基板11の厚みが積層体の短手方向における外形寸法の1/10以下である。このため、基板11を複数重ねても発電素子100全体の厚みを抑制することができる。これにより、発電素子100の転倒を防止することができ、転倒に伴う発電素子100の劣化を防止することができる。
【0071】
なお、支持部30は、基板11の一部を酸化させて形成してもよい。このため、基板11の一部が支持部30として機能する。これにより、支持部30を容易に形成することができる。
【0072】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における発電素子100、発電装置200について説明する。上述した第1実施形態と、第2実施形態との違いは、第1電極部10が基板11と支持部30以外に第1電極21を有している点であり、その他の点は共通している。従って、以下の説明では、第1実施形態と異なっている点を主に説明し、共通する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
図5は、第2実施形態に係る発電素子100、発電装置200の一例を示す模式図である。各積層体51は、第1電極部10と、第2電極22と、中間部14とを有して構成されている。第1電極部10は、基板11と、第1電極21とを有する。第1電極21は第2主面11bに接して設けられ、一対の支持部30に挟まれた状態で基板11と中間部14の間に配置される。第1電極21の仕事関数は第2電極22の仕事関数より大きくてもよく、第2電極22の仕事関数が第1電極21の仕事関数より大きくてもよい。
【0074】
なお、第1電極21は、一対の支持部30に挟まれた状態ではなく、第1の方向Zにおいて支持部30と基板11に挟まれた状態で配置されてもよい。即ち、積層体51は第2電極22、基板11、第1電極21、支持部30がこの順に積層されてもよい。また、第1電極21は、第2電極22と同じ材料で形成されてもよく、あるいは異なる材料で形成されてもよい。
【0075】
本実施形態によれば、第1電極部10は、基板11と中間部14との間に設けられ、第2主面11bに接する第1電極21を含む。このため、第1電極の厚さを制御することで、電極間ギャップの大きさを高精度に設定することができる。これにより、発電効率の安定化を図ることが可能となる。
【0076】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態における発電素子100、発電装置200について説明する。上述した第1実施形態と、第3実施形態との違いは、基板11が半導体であり、基板11が縮退部62と、非縮退部63とを有する点であり、その他の点は共通している。従って、以下の説明では、第1実施形態と異なっている点を主に説明し、共通する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0077】
図6は、第3実施形態に係る発電素子100、発電装置200の一例を示す模式図である。各積層体61は、第2電極22と、第1電極部10と、中間部14とを有して構成されている。基板11は、表面の一部が縮退した縮退部62と、縮退していない非縮退部63を有する。具体的には、縮退部62は、基板11上側の第1主面11a及び下側の第2主面11bの少なくともいずれかに設けられ、非縮退部63は一対の縮退部62間に設けられている。第2電極22及び中間部14は、縮退部62と接した状態で配置される。基板11は、半導体であり、例えば、シリコンに不純物としてリンなどの5価元素を添加したn型シリコン、n-ZnO,n-InGaZnO,n-MgZnO,n-InZnOのいずれかにより形成されていてもよいが、これらの以外のn型半導体であってもよい。
【0078】
縮退部62は、例えばn型のドーパントを高濃度に半導体にイオン注入することや、n型のドーパントを含むガラスなどの材料を半導体にコーティングし、コーティング後に熱処理を行うことによって生成される。
【0079】
基板11に縮退部62が形成されることにより、縮退部62が形成されていない場合と比較して抵抗が低減する。このため、基板11と第2電極22との間に効率よく電流を発生させることができる。これにより、発電素子100の抵抗を低減させることができる。
【0080】
なお、縮退部62は、第1主面11aあるいは第2主面11bのいずれか一方側にのみ設けられてもよい。但し、縮退部62が第1主面11a及び第2主面11bの両方に設けられることにより、一方側にのみ設けられる場合と比較して、より効率よく電流を発生させることができる。また、基板11にドープされる不純物は、n型であればP、As、Sb等、P型であればB、Ba、Al等であるが、これに限定されない。また、縮退部62の不純物の濃度は、例えば、1×1019イオン/cmであれば、電子eを効率よく放出させることができる。但し、フェルミ準位が伝導帯端エネルギーよりも十分大きく、いわゆる、縮退状態が実現できるのであれば、この範囲に限定されるものではない。
【0081】
本実施形態によれば、基板11は、半導体であり、不純物がドープされた縮退部62と、不純物がドープされていない非縮退部63とを有する。このため、より効率よく電流が発生する。これにより、発電素子100の発電効率が向上する。
【0082】
(第3実施形態:電子機器500)
<電子機器500>
上述した発電素子100及び発電装置200は、例えば電子機器に搭載することが可能である。以下、電子機器の実施形態のいくつかを説明する。
【0083】
図7(a)~図7(d)は、発電素子100を備えた電子機器500の例を示す模式ブロック図である。図7(e)~図7(h)は、発電素子100を含む発電装置200を備えた電子機器500の例を示す模式ブロック図である。
【0084】
図7(a)に示すように、電子機器500(エレクトリックプロダクト)は、電子部品501(エレクトロニックコンポーネント)と、主電源502と、補助電源503と、を備えている。電子機器500及び電子部品501のそれぞれは、電気的な機器(エレクトリカルデバイス)である。
【0085】
電子部品501は、主電源502を電源に用いて駆動される。電子部品501の例としては、例えば、CPU、モーター、センサ端末、及び照明等を挙げることができる。電子部品501が、例えばCPUである場合、電子機器500には、内蔵されたマスター(CPU)によって制御可能な電子機器が含まれる。電子部品501が、例えば、モーター、センサ端末、及び照明等の少なくとも1つを含む場合、電子機器500には、外部にあるマスター、あるいは人によって制御可能な電子機器が含まれる。
【0086】
主電源502は、例えば電池である。電池には、充電可能な電池も含まれる。主電源502のプラス端子(+)は、電子部品501のVcc端子(Vcc)と電気的に接続される。主電源502のマイナス端子(-)は、電子部品501のGND端子(GND)と電気的に接続される。
【0087】
補助電源503は、発電素子100である。発電素子100は、上述した発電素子100の少なくとも1つを含む。発電素子100のアノード(例えば第1電極部10)は、電子部品501のGND端子(GND)、又は主電源502のマイナス端子(-)、又はGND端子(GND)とマイナス端子(-)とを接続する配線と、電気的に接続される。発電素子100のカソード(例えば第2電極部13b)は、電子部品501のVcc端子(Vcc)、又は主電源502のプラス端子(+)、又はVcc端子(Vcc)とプラス端子(+)とを接続する配線と、電気的に接続される。電子機器500において、補助電源503は、例えば主電源502と併用され、主電源502をアシストするための電源や、主電源502の容量が切れた場合、主電源502をバックアップするための電源として使うことができる。主電源502が充電可能な電池である場合には、補助電源503は、さらに、電池を充電するための電源としても使うことができる。
【0088】
図7(b)に示すように、主電源502は、発電素子100とされてもよい。発電素子100のアノードは、電子部品501のGND端子(GND)と電気的に接続される。発電素子100のカソードは、電子部品501のVcc端子(Vcc)と電気的に接続される。図7(b)に示す電子機器500は、主電源502として使用される発電素子100と、発電素子100を用いて駆動されることが可能な電子部品501と、を備えている。発電素子100は、独立した電源(例えばオフグリッド電源)である。このため、電子機器500は、例えば自立型(スタンドアローン型)にできる。しかも、発電素子100は、環境発電型(エナジーハーベスト型)である。図7(b)に示す電子機器500は、電池の交換が不要である。
【0089】
図7(c)に示すように、電子部品501が発電素子100を備えていてもよい。発電素子100のアノードは、例えば、回路基板(図示は省略する)のGND配線と電気的に接続される。発電素子100のカソードは、例えば、回路基板(図示は省略する)のVcc配線と電気的に接続される。この場合、発電素子100は、電子部品501の、例えば補助電源503として使うことができる。
【0090】
図7(d)に示すように、電子部品501が発電素子100を備えている場合、発電素子100は、電子部品501の、例えば主電源502として使うことができる。
【0091】
図7(e)~図7(h)のそれぞれに示すように、電子機器500は、発電装置200を備えていてもよい。発電装置200は、電気エネルギーの源として発電素子100を含む。
【0092】
図7(d)に示した実施形態は、電子部品501が主電源502として使用される発電素子100を備えている。同様に、図7(h)に示した実施形態は、電子部品501が主電源として使用される発電装置200を備えている。これらの実施形態では、電子部品501が、独立した電源を持つ。このため、電子部品501を、例えば自立型とすることができる。自立型の電子部品501は、例えば、複数の電子部品を含み、かつ、少なくとも1つの電子部品が別の電子部品と離れているような電子機器に有効に用いることができる。そのような電子機器500の例は、センサである。センサは、センサ端末(スレーブ)と、センサ端末から離れたコントローラ(マスター)と、を備えている。センサ端末及びコントローラのそれぞれは、電子部品501である。センサ端末が、発電素子100又は発電装置200を備えていれば、自立型のセンサ端末となり、有線での電力供給の必要がない。発電素子100又は発電装置200は環境発電型であるので、電池の交換も不要である。センサ端末は、電子機器500の1つと見なすこともできる。電子機器500と見なされるセンサ端末には、センサのセンサ端末に加えて、例えば、IoTワイヤレスタグ等が、さらに含まれる。
【0093】
図7(a)~図7(h)のそれぞれに示した実施形態において共通することは、電子機器500は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子100と、発電素子100を電源に用いて駆動されることが可能な電子部品501と、を含むことである。
【0094】
電子機器500は、独立した電源を備えた自律型(オートノマス型)であってもよい。自律型の電子機器の例は、例えばロボット等を挙げることができる。さらに、発電素子100又は発電装置200を備えた電子部品501は、独立した電源を備えた自律型であってもよい。自律型の電子部品の例は、例えば可動センサ端末等を挙げることができる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 :積層体
10 :第1電極部
11 :基板
11a :第1主面
11b :第2主面
12 :酸化膜
13 :レジスト
14 :中間部
140 :ギャップ部
141 :ナノ粒子
142 :溶媒
21 :第1電極
22 :第2電極
30 :支持部
31 :第1封止部
32 :第2封止部
51 :積層体
61 :積層体
62 :縮退部
63 :非縮退部
100 :発電素子
101 :第1配線
102 :第2配線
200 :発電装置
500 :電子機器
R :負荷
S110 :酸化膜形成工程
S120 :レジスト形成工程
S130 :エッチング工程
S140 :レジスト除去工程
S150 :電極配置工程
S160 :切断工程
S170 :積層工程
S180 :中間部形成工程
Z :第1の方向
X :第2の方向
Y :第3の方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7