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特開2022-135351情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135351
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4865 20200101AFI20220908BHJP
   G01S 17/894 20200101ALI20220908BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G01S7/4865
G01S17/894
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035098
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 誠
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA12
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA21
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA19
2F112FA41
2F112GA01
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB20
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA48
5J084BB14
5J084CA03
5J084CA10
5J084CA23
5J084CA32
5J084CA70
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】計測時の条件に適合した方法で静止物体の距離を高精度に算出する。
【解決手段】情報処理装置において、取得手段は、出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する。ビン幅決定手段は、計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定する。ヒストグラム作成手段は、決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成する。距離推定手段は、ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する取得手段と、
前記計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定するビン幅決定手段と、
決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
前記ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する距離推定手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記ビン幅決定手段は、前記物体の計測距離に基づいて、計測点毎に前記ビン幅を決定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記計測データは、物体の反射強度を含み、
前記ビン幅決定手段は、前記反射強度に基づいて、計測点毎に前記ビン幅を決定する請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記計測データは、物体の反射率を含み、
前記ビン幅決定手段は、前記反射率に基づいて、計測点毎に前記ビン幅を決定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記計測データは、外光の受光量を含み、
前記ビン幅決定手段は、前記外光の受光量に基づいて、計測点毎に前記ビン幅を決定する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
各計測点において推定された静止物体の距離に基づいて、複数の計測点に対応する背景マップを作成するマップ作成手段を備える請求項1乃至5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置により実行される情報処理方法であって、
出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する取得工程と、
前記計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定するビン幅決定工程と、
決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、
前記ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する距離推定工程と、
を備える情報処理方法。
【請求項8】
出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する取得手段と、
前記計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定するビン幅決定手段と、
決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
前記ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する距離推定手段、
としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを格納した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周辺の情報を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、計測対象物に光を照射して計測対象物からの反射光を検出し、計測対象物に光を照射するタイミングと、計測対象物からの反射光を検出するタイミングとの時間差により計測対象物までの距離を算出する測距装置が知られている。特許文献1には、投光パターンの検出状態により、投光パターンを投光するための点灯パターンを変更し、前方車両との距離や傾きを検出する前方車両認識装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-082750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような測距装置を用いて、背景マップを作成することができる。背景マップとは、静止物体の距離を示すマップである。具体的に、測距装置を道路脇などの所定の場所に固定設置し、所定時間にわたり計測範囲内の静止物体までの距離を計測する。各計測点毎に、その計測点に対応する静止物体の距離を算出し、計測点毎の静止物体の距離を示す背景マップを作成する。所定時間にわたる計測データを使用することにより、計測範囲内に車両や人などの移動物体が進入しても、移動物体を除外して静止物体の距離マップを作成することができる。
【0005】
ライダなどの測距装置では計測データに誤差が含まれるが、この誤差は測距装置による計測条件に応じて変化する特性を有する。よって、計測条件に適合した方法で静止物体の距離を算出する必要がある。
【0006】
本発明の解決しようとする課題としては、上記のものが一例として挙げられる。本発明は、計測条件に適合した方法で静止物体の距離を高精度に算出することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項に記載の発明は、情報処理装置であって、出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する取得手段と、前記計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定するビン幅決定手段と、決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、前記ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する距離推定手段と、を備える。
【0008】
他の請求項に記載の発明は、情報処理装置により実行される情報処理方法であって、出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する取得工程と、前記計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定するビン幅決定工程と、決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、前記ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する距離推定工程と、を備える。
【0009】
他の請求項に記載の発明は、プログラムであって、出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する取得手段と、前記計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定するビン幅決定手段と、決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、前記ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する距離推定手段、としてコンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】背景マップを作成するための装置構成を示す。
図2】背景マップの例を示す。
図3】ライダの概略構成を示すブロック図である。
図4】計測距離のヒストグラムの例を示す。
図5】背景マップ作成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】背景マップ作成装置の機能構成を示すブロック図である。
図7】背景マップ作成処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態では、情報処理装置は、出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する取得手段と、前記計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定するビン幅決定手段と、決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、前記ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する距離推定手段と、を備える。
【0012】
上記の情報処理装置では、取得手段は、出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する。ビン幅決定手段は、計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定する。ヒストグラム作成手段は、決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成する。距離推定手段は、ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する。これにより、物体の計測条件に応じたビン幅のヒストグラムを用いて、静止物体の距離を正確に推定することができる。
【0013】
上記の情報処理装置の一態様では、前記ビン幅決定手段は、前記物体の計測距離に基づいて、計測点毎に前記ビン幅を決定する。この態様では、計測条件として物体の計測距離を用いてビン幅を決定する。
【0014】
上記の情報処理装置の他の一態様では、前記計測データは、物体の反射強度を含み、前記ビン幅決定手段は、前記反射強度に基づいて、計測点毎に前記ビン幅を決定する。この態様では、計測条件として物体の反射強度を用いてビン幅を決定する。
【0015】
上記の情報処理装置の他の一態様では、前記計測データは、物体の反射率を含み、前記ビン幅決定手段は、前記反射率に基づいて、計測点毎に前記ビン幅を決定する。この態様では、計測条件として物体の反射率を用いてビン幅を決定する。
【0016】
上記の情報処理装置の他の一態様では、前記計測データは、外光の受光量を含み、前記ビン幅決定手段は、前記外光の受光量に基づいて、計測点毎に前記ビン幅を決定する。この態様では、計測条件として反射光の受光量を用いてビン幅を決定する。
【0017】
上記の情報処理装置の他の一態様は、各計測点において推定された静止物体の距離に基づいて、複数の計測点に対応する背景マップを作成するマップ作成手段を備える。この態様では、推定された静止物体の距離を用いて背景マップが作成される。
【0018】
本発明の他の実施形態では、情報処理装置により実行される情報処理方法は、出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する取得工程と、前記計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定するビン幅決定工程と、決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、前記ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する距離推定工程と、を備える。これにより、物体の計測条件に応じたビン幅のヒストグラムを用いて、静止物体の距離を正確に推定することができる。
【0019】
本発明の他の実施形態では、プログラムは、出射光に対応する反射光を受光し、物体の計測距離を含む計測データを計測点毎に取得する取得手段と、前記計測データに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定するビン幅決定手段と、決定されたビン幅を用いて、計測点毎に物体の計測距離のヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、前記ヒストグラムに基づき、各計測点における静止物体の距離を推定する距離推定手段、としてコンピュータを機能させる。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記の情報処理装置を実現することができる。このプログラムは、記憶媒体に記憶して取り扱うことができる。
【実施例0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
[全体構成]
図1は、背景マップを作成するための装置構成を示す。本実施例では、ライダ100と背景マップ作成装置200とを用いて背景マップを作成する。ライダ100は、複数の計測点毎の計測データD1を生成し、背景マップ作成装置200へ出力する。背景マップ作成装置200は、ライダ100から入力された計測データD1を用いて、ライダ100による計測範囲に対応する背景マップを作成する。
【0021】
前述のように、背景マップとは、ライダ100による計測範囲における静止物体の距離を示すマップである。図2は、背景マップの例を示す。図2(A)は、道路脇のある地点に固定設置したカメラにより撮影した画像40を示す。画像40は、片側一車線の道路を写したものであり、道路の他に、左右のフェンス41、42と、信号機43とが映っている。
【0022】
図2(B)は、図2(A)の画像40と同一範囲について作成した背景マップの例を示す。背景マップ45は、ライダ100による計測点毎に静止物体の距離をグレースケールの明るさにより示している。図2(B)の例では、静止物体の距離が近い計測点ほど明るい色で示され、静止物体の距離が遠い計測点ほど暗い色で示されている。図2(B)の例では、信号機43の領域は、信号機43の距離に対応する明るさで示されている。また、フェンス41、42及び地面の領域は、基本的に手前の領域から奥の領域に向かって明るい色から暗い色へと変化するグラデーションで示されている。具体的に、手前側の計測点ではライダ100の設置位置に近い道路が静止物体として計測されるため、背景マップ45の下側の領域は明るい色で示されている。一方、奥側の計測点では遠くの道路や空が静止物体として計測されるため、背景マップ45の上側の領域は暗い色で示されている。
【0023】
[ライダの構成]
図3は、ライダ100の概略構成を示すブロック図である。本実施例では、ライダ100は、道路脇などに固定設置される。ライダ100は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対してレーザ光(「照射光」とも呼ぶ。)を照射し、当該照射光が物体により反射されて戻った光(「反射光」とも呼ぶ。)を受光することで、ライダ100から物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の3次元位置を示す点群情報を生成する。ライダ100は、背景マップの作成対象となる領域を計測範囲に含むように設置されている。
【0024】
図3に示すように、ライダ100は、主に、送信部1と、受信部2と、ビームスプリッタ3と、スキャナ5と、ピエゾセンサ6と、制御部7と、メモリ8と、を有する。
【0025】
送信部1は、パルス状の照射光をビームスプリッタ3に向けて出射する光源である。送信部1は、例えば、赤外線レーザ発光素子を含む。送信部1は、制御部7から供給される駆動信号Sg1に基づき駆動される。
【0026】
受信部2は、例えばアバランシェフォトダイオード(Avalanche PhotoDiode)であり、受光した光量に対応する検出信号Sg2を生成し、生成した検出信号Sg2を制御部7へ供給する。
【0027】
ビームスプリッタ3は、送信部1から射出されるパルス状の照射光を透過する。また、ビームスプリッタ3は、スキャナ5を通じて入射した反射光を、受信部2に向けて反射する。
【0028】
スキャナ5は、例えば静電駆動方式のミラー(MEMSミラー)であり、制御部7から供給される駆動信号Sg3に基づき、傾き(即ち光走査の角度)が所定の範囲内で変化する。スキャナ5は、ビームスプリッタ3を透過した照射光をライダ100の外部へ向けて反射すると共に、ライダ100の外部から入射する反射光をビームスプリッタ3へ向けて出射する。ライダ100の計測範囲内において照射光が照射される点を「計測点」とも呼ぶ。
【0029】
スキャナ5には、ピエゾセンサ6が設けられている。ピエゾセンサ6は、スキャナ5のミラー部を支持するトーションバーの応力により生じる歪みを検出する。ピエゾセンサ6は、生成した検出信号Sg4を制御部7へ供給する。検出信号Sg4は、スキャナ5の向きの検出に用いられる。
【0030】
メモリ8は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。メモリ8は、制御部7が所定の処理を実行するために必要なプログラムを記憶する。また、メモリ8は、制御部7により参照される各種パラメータを記憶する。メモリ8には、制御部7により生成された最新の所定フレーム数分の点群情報が記憶される。
【0031】
制御部7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などの各種プロセッサを含む。制御部7は、メモリ8に記憶されたプログラムを実行することで、所定の処理を実行する。なお、制御部7は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組合せ等により実現されてもよい。また、制御部7は、FPGA(field-programmable gate array)又はマイクロコントローラ等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路であってもよく、ASSP(Application Specific Standard Produce)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等であってもよい。
【0032】
制御部7は、機能的には、送信駆動ブロック70と、スキャナ駆動ブロック71と、点群情報生成ブロック72と、点群情報処理ブロック73と、を有する。
【0033】
送信駆動ブロック70は、送信部1を駆動する駆動信号Sg1を出力する。駆動信号Sg1は、送信部1に含まれるレーザ発光素子の発光時間と、当該レーザ発光素子の発光強度を制御するための情報を含む。送信駆動ブロック70は、駆動信号Sg1を用いて送信部1に含まれるレーザ発光素子の発光強度を制御する。
【0034】
スキャナ駆動ブロック71は、スキャナ5を駆動するための駆動信号Sg3を出力する。駆動信号Sg3は、スキャナ5の共振周波数に対応する水平駆動信号と、垂直走査するための垂直駆動信号と、を含む。また、スキャナ駆動ブロック71は、ピエゾセンサ6から出力される検出信号Sg4を監視することで、スキャナ5の走査角度(すなわち照射光の射出方向)を検出する。
【0035】
点群情報生成ブロック72は、受信部2から供給される検出信号Sg2に基づき、ライダ100を基準点として、照射光が照射された物体までの距離と方向とを計測点毎に示す点群情報を生成する。この場合、点群情報生成ブロック72は、照射光を射出してから受信部2が反射光を検出するまでの時間を、光の飛行時間(Time of Flight)として算出する。なお、物体による照射光の反射光以外に受信部2が受けた光を外光と呼ぶ。受信部2は、例えば、照射光を照射した後、受けた光量がピークとなった時点を以て、反射光として検出する。ここで、ピーク以外(ピークを成している光以外)に受信部2が受けた光は、外光である。
【0036】
そして、点群情報生成ブロック72は、算出した飛行時間に応じた距離と、受信部2が受信した反射光に対応する照射光の照射方向とを計測点毎に示す点群情報を生成し、生成した点群情報を点群情報処理ブロック73に供給する。以後では、全計測点に対する1回分の走査により得られる点群情報を、1フレーム分の点群情報とする。点群情報は、計測データの一例である。
【0037】
ここで、点群情報は、計測点を画素とし、各計測点が示す距離を画素値とする画像とみなすことができる。点群情報は、計測点毎の反射強度の情報を含む。また、点群情報は、計測点毎の外光の受光量(平均値・分散値)を含んでもよい。
【0038】
点群情報処理ブロック73は、点群情報生成ブロック72から供給される点群情報に基づき、ライダ100の計測範囲(走査範囲)における計測点毎の計測データD1を生成し、外部へ出力する。計測データD1は、ライダの計測範囲に含まれる計測点毎に、計測された物体までの距離(以下、「計測距離」とも呼ぶ。)、反射強度、反射光の受光量などを含む。計測データD1は、背景マップ作成装置200へ出力される。
【0039】
[背景マップ作成装置]
(原理説明)
まず、背景マップ作成の原理について説明する。背景マップ作成装置200は、ライダ100により得られた計測点毎の計測データD1に基づいて、各計測点における静止物体の距離を推定し、背景マップを作成する。この際、背景マップ作成装置200は、計測点毎にライダ100による計測距離のヒストグラムを作成して各計測点の距離を推定する。
【0040】
図4(A)は、ある計測点Xにおいて得られた計測距離のヒストグラムの例を示す。この計測点Xでは、ライダの100の設置位置から約15mの位置に静止物体があるとする。ライダ100は、所定時間計測を行うことにより、各計測点について複数(N個)の計測データを取得する。図4(A)は、ある計測点Xにおいて得られたN個の計測データに含まれるN個の計測距離をヒストグラム化したものである。なお、図4(A)のヒストグラムのビン幅は0.1mとする。ライダ100による計測には誤差があるため、N個の計測距離は多少の誤差を含むが、背景マップ作成装置200は、N個の計測距離をヒストグラム化することにより、度数のピークに相当する計測距離を、その計測点Xにおける静止物体の距離と推定する。これにより、各計測点で得られた計測距離が多少の誤差を含んでいても、その計測点における静止物体の距離を正しく推定することができる。
【0041】
しかしながら、ライダ100による計測距離の誤差の有無や大きさは、ライダ100による計測条件に応じて変化する。具体的には、測定誤差は、物体までの距離、物体の反射率、外光の量などの周辺環境などによって変化する。ライダ100は、照射光が物体で反射した反射光を受光して計測を行うため、物体までの距離が遠いほど誤差は大きくなる。また、物体の反射率が小さいほど誤差が大きくなる。さらに、周辺環境として、夜間などの外光(背景光)が少ない環境では誤差は小さいが、昼間のような外光の多い環境では誤差が大きくなる。このため、一定のビン幅のヒストグラムを用いた場合、上記のように計測条件が変化して誤差が大きくなると、静止物体の距離を正しく推定することができなくなるという問題がある。
【0042】
この問題について詳しく説明する。図4(B)は、ある計測点Yにおいて得られた計測距離のヒストグラムの例を示す。図4(B)は、ある計測点Yにおいて得られたN個の計測データに含まれるN個の計測距離をヒストグラム化したものである。計測点Yでは、ライダ100の設置位置から30m付近に静止物体があるものとする。なお、図4(B)のヒストグラムのビン幅は、図4(A)と同様に0.1mとする。図4(A)と比較するとわかるように、計測点Yでは、ライダ100からの距離が遠くなる分、ライダによる計測距離の誤差(ばらつき)が大きくなる。このため、計測点Yでは、計測点Xと同じビン幅0.1mでヒストグラムを作成すると、各計測距離が複数のビンに分散してしまうため、十分に大きな度数のピークを見つけることができず、正確な推定距離を得ることができない。
【0043】
そこで、本実施例では、ライダ100による計測条件に応じて、ヒストグラムのビン幅を変更する。即ち、ライダによる計測距離の誤差が大きい条件では、誤差が小さい条件よりもヒストグラムのビン幅を大きくする。図4(C)は、計測点Yにおいて得られたN個の計測距離を、ビン幅1mでヒストグラム化したものである。図4(B)と比較するとわかるように、同じN個の計測距離を用いた場合であっても、ビン幅を大きくすることにより、ヒストグラムに明確なピークが表れる。こうして、計測条件に起因して計測距離の誤差が変化した場合でも、静止物体の距離を正しく推定することが可能となる。具体的には、背景マップ作成装置200は、計測条件毎に以下のようにビン幅を変更する。
【0044】
(A)ライダからの距離
ライダの計測誤差は、ライダから物体までの距離が近いほど小さく、距離が遠いほど大きい。よって、背景マップ作成装置200は、計測点が近いほどビン幅を小さくし、計測点が遠いほどビン幅を大きくする。例えば、背景マップ作成装置200は、各計測点におけるN個の計測距離の平均値を算出し、平均値が小さいほどビン幅を小さくし、平均値が大きいほどビン幅を大きくすればよい。
【0045】
(B)反射強度
ライダの計測誤差は、物体の反射強度が大きいほど小さく、反射強度が小さいほど大きい。よって、背景マップ作成装置200は、計測点における反射強度が大きいほどビン幅を小さくし、反射強度が小さいほどビン幅を大きくする。例えば、背景マップ作成装置200は、各計測点におけるN個の反射強度の平均値を算出し、その平均値が大きいほどビン幅を小さくし、平均値が小さいほどビン幅を小さくすればよい。この方法では、物体自体の反射強度に応じてビン幅が変更されるため、計測点にある物体がライダから近くても、物体の反射強度が小さい場合には、ビン幅は大きく設定される。また、計測点にある物体がライダから遠くても、物体の反射強度が大きい場合には、ビン幅は小さく設定される。
【0046】
なお、ライダからの距離と、物体の反射強度の両方を用いてビン幅を決定してもよい。例えば、ある計測点におけるライダからの距離を「x」、距離に関する係数を「a」、その計測点における反射強度を「y」、反射強度に関する係数を「b」としたとき、ビン幅Wを以下のように求めてもよい。
W = ax+by
【0047】
(C)外光(背景光)の量
夜間などの外光(背景光)が少ない環境では、外光の受光量の平均や分散が小さくなり、昼間などの外光が多い環境では、外光の受光量の平均や分散が大きくなる。このため、外光の受光量の平均や分散から、外光の強さや誤差の大きさを推定することができる。よって、背景マップ作成装置200は、外光の平均や分散が小さいほどビン幅を小さくし、外光の平均や分散が大きいほどビン幅を大きくする。例えば、背景マップ作成装置200は、各計測点におけるN個の受光量の平均値と分散値を算出し、平均値が小さいほどビン幅を小さく、平均値が大きいほどビン幅を大きくするとともに、分散値が小さいほどビン幅を小さく、分散値が大きいほどビン幅を大きくする。なお、平均値と分散値の両方ではなく、いずれか一方のみを用いてもよい。また、反射光の受光量に基づくビン幅の制御を、上記の(A)ライダからの距離、及び、(B)物体の反射強度の一方又は両方に基づくビン幅の制御と組み合わせてもよい。
【0048】
(ハードウェア構成)
図5は、背景マップ作成装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。背景マップ作成装置200は、通信部201と、制御部202と、メモリ203と、入力部204と、表示部205とを備える。
【0049】
通信部201は、有線又は無線により外部装置と通信する。具体的に、通信部201はライダ100から計測データD1を受信する。
【0050】
制御部202は、例えば、CPU、GPUなどの各種プロセッサを含む。制御部7は、メモリ8に記憶されたプログラムを実行することで、所定の処理を実行する。制御部7は、プログラムを実行するコンピュータの一例である。なお、制御部7は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組合せ等により実現されてもよい。
【0051】
メモリ203は、RAM、ROM、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。メモリ203は、制御部202により参照される各種パラメータを記憶する。また、メモリ203には、ライダから受信した計測データD1が記憶される。さらに、メモリ203は、制御部7が所定の処理を実行するために必要なプログラムを記憶する。この場合、メモリ203は、プログラムを記憶したディスク状記憶媒体などを含んでもよい。
【0052】
入力部204は、操作者が必要な設定や指示を行うために使用される。また、表示部205は、例えば液晶ディスプレイなどであり、必要に応じて図2(B)に例示するような背景マップを表示するために使用される。
【0053】
(機能構成)
図6は、背景マップ作成装置200の機能構成を示すブロック図である。背景マップ作成装置200は、機能的には、ビン幅決定部211と、ヒストグラム作成部212と、距離推定部213と、マップ作成部214とを備える。
【0054】
ライダ100から出力された計測データD1は、ビン幅決定部211及びヒストグラム作成部212へ入力される。ビン幅決定部211は、計測データD1の計測点毎に、ヒストグラムのビン幅を決定する。具体的に、ビン幅決定部211は、前述のように、ライダからの距離、反射強度、外光(背景光)の受光量のいずれか1つ又は複数の組み合わせに基づいてヒストグラムのビン幅を決定する。ビン幅決定部211は、決定したビン幅をヒストグラム作成部212へ出力する。
【0055】
ヒストグラム作成部212は、計測データD1の計測点毎に、計測距離のヒストグラムを作成する。この際、ヒストグラム作成部212は、ビン幅決定部211が決定したビン幅を有するヒストグラムを作成する。そして、ヒストグラム作成部212は、作成したヒストグラムを距離推定部213へ出力する。
【0056】
距離推定部213は、計測点毎に、ヒストグラムに基づいて静止物体の距離を推定する。具体的には、距離推定部213は、ヒストグラム作成部212が作成したヒストグラムにおける度数のピークに対応する計測距離を、その計測点における静止物体の距離と推定する。距離推定部213は、各計測点について推定した距離をマップ作成部214へ出力する。
【0057】
マップ作成部214は、距離推定部213が推定した計測点毎の距離に基づいて、背景マップを作成する。具体的には、マップ作成部214は、ライダ100による計測範囲(走査範囲)に属する各計測点に対して、その計測点について推定された静止物体の距離を対応付けたマップを背景マップとして作成する。背景マップは、例えば図2(B)に例示するように、各計測点を1つの画素に対応付け、各計測点における静止物体の距離をその画素の明るさ又は色などに対応付けた画像として表示することができる。
【0058】
(背景マップ作成処理)
図7は、背景マップ作成処理のフローチャートである。この処理は、図5に示す制御部202が予め用意されたプログラムを実行し、図6に示す各要素として動作することにより実現される。
【0059】
まず、制御部202は、ライダ100から取得した、1つの計測点の計測データD1を取得する(ステップS11)。次に、ビン幅決定部211は、その計測点の計測データに基づいて、その計測点についてのヒストグラムのビン幅を決定する(ステップS12)。具体的には、ビン幅決定部211は、前述のように、ライダからの距離、反射強度、外光(背景光)の受光量のいずれか1つ又は複数の組み合わせに基づいて、ヒストグラムのビン幅を決定する。
【0060】
次に、ヒストグラム作成部212は、その計測点の計測データを用いて、ステップS12で決定されたビン幅のヒストグラムを作成する(ステップS13)。次に、距離推定部213は、作成されたヒストグラムにおける度数のピークに相当する距離を、その計測点における静止物体の距離と推定する(ステップS14)。こうして、ステップS11で選択された1つの計測点について、静止物体の距離が得られる。
【0061】
次に、制御部202は、ライダ100から取得した全ての計測点の計測データD1について処理が完了したか否かを判定する(ステップS15)。全ての計測点について処理が完了していない場合(ステップS15:No)、制御部202は、ステップS11へ戻り、別の1つの計測点の計測データD1を取得し、ステップS12~S14の処理を実行する。こうして、ライダ100から取得した全ての計測点の計測データD1について静止物体の距離が推定されるまで、ステップS11~S14が繰り返される。そして、全ての計測点について静止物体の距離が推定されると(ステップS15:Yes)、マップ作成部214は、全ての計測点についての距離を用いて背景マップを作成する(ステップS16)。そして、処理は終了する。
【0062】
[変形例]
上記のライダ100は、計測データとして物体の反射強度を出力しているが、物体の反射強度の代わりに、物体の反射率を計算して出力するタイプのライダも知られている。例えば、ベロダイン(Velodyne)ライダは、反射光の反射強度と物体の距離に基づいて物体の反射率を推定し、反射率の値を出力する。本実施例は、このようなタイプのライダに対しても適用することができる。この場合、ライダの計測誤差は、物体の反射率が大きいほど小さく、物体の反射率が小さいほど大きいと考えられる。よって、ビン幅決定部211は、対象となる計測点の反射率の値の平均値などを計算し、反射率が大きいほどビン幅を小さくし、反射率が小さいほどビン幅を大きくすればよい。
【0063】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0064】
1 送信部
2 受信部
3 ビームスプリッタ
5 スキャナ
6 ピエゾセンサ
7 制御部
8 メモリ
100 ライダ
200 背景マップ作成装置
202 制御部
211 ビン幅決定部
212 ヒストグラム作成部
213 距離推定部
214 マップ作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7