(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135353
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】豆類処理装置、あんの製造装置、及び豆類の渋切り管理方法
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20220908BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20220908BHJP
【FI】
A47J27/14 D
A23L11/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035101
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】500148592
【氏名又は名称】株式会社カジワラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梶原 秀浩
(72)【発明者】
【氏名】清遠 匡章
(72)【発明者】
【氏名】毛利 友香
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝利
【テーマコード(参考)】
4B020
4B054
【Fターム(参考)】
4B020LB15
4B020LC02
4B020LG08
4B020LP04
4B020LP15
4B020LZ01
4B020LZ03
4B054AA03
4B054AB02
4B054AB15
4B054AB20
4B054AC03
4B054CA01
4B054CB04
4B054CB07
4B054CC12
4B054CE01
4B054CE15
4B054CE20
(57)【要約】
【課題】灰汁、渋、耐熱菌などの除去を行うとともに、煮豆中の機能性成分、風味、香りなどを残すことを可能にする豆類処理装置、あんの製造装置を提供する。
【解決手段】傾斜動作が可能に起立支持されて上端が開口27の容器13と、容器13の開口27の一側部に配置され容器13の内部で前炊きした豆類は通さず前炊きの湯を通すように開口27の一側部を容器13の傾斜状態で通水域とするための渋切り部材7と、容器13の傾斜状態で開口27の他側部に向けて容器13外の横方向から容器13内へ設定温度の洗浄水を散布可能とする外部散布栓9とを備えたことを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜動作が可能に起立支持されて上端が開口の容器と、
前記容器の開口の一側部に配置され前記容器の内部で前炊きした豆類は通さず前炊きの湯を通すように前記開口の一側部を前記容器の傾斜状態で通水域とするための渋切り部材と、
前記容器の傾斜状態で前記開口の他側部に向けて容器外の横方向から容器内へ設定温度の洗浄水を散布可能とする外部散布栓と、
を備えた、
豆類処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の豆類処理装置であって、
前記外部散布栓は、スプレー栓である、
豆類処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の豆類処理装置であって、
前記外部散布栓は、前記容器を支持するフレームに取り付けられた、
豆類処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の豆類処理装置であって、
前記フレームは、前記傾斜状態した容器の通水域から渋切り排出した湯を受ける受け部を備え、
前記外部散布栓は、前記受け部の上部位置に取り付けられた、
豆類処理装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の豆類処理装置であって、
前記容器は、前記傾斜動作が可能に回転可能に支持され、
前記外部散布栓は、前記容器の回転中心Cを含めて45°の範囲で散布する、
豆類処理装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の豆類処理装置であって、
前記外部散布栓の散布を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記豆類を前炊きした湯を前記渋切り部材による通水域を通して行う渋切り1回の後に前記外部散布栓の洗浄水の散布による排水の濁度が前記渋切り1回の後に渋切り2回を行った場合の各排水の濁度の間の値となるように前記外部散布栓の洗浄水の散布を制御する、
豆類処理装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の豆類処理装置を含むあんの製造装置であって、
前記容器は、あん製造のために攪拌駆動される攪拌部を備えた、
あんの製造装置。
【請求項8】
豆類を容器内で前炊きした後に豆類は通さず前炊きの湯を通して渋切りした湯又は渋切りした豆類を洗浄した洗浄水に含まれる渋に基づくあんの渋みをホルマジン濃度で管理する、
豆類の渋切り管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、前炊きした小豆を渋切り後にあん練り調理するあんの製造方法等に用いる豆類処理装置、あんの製造装置、及び豆類の渋切り管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、あんを製造するに際し、まず、洗浄した小豆をステンレス製などの豆煮篭に入れ、これを豆煮釜内に入れて前炊きを行ない前炊きした湯を捨てることで1~数回渋切りを行っている。その後、本炊きをして小豆を茹でるように煮上げ、蒸らして豆煮釜から豆煮篭を取り出す煮上げ工程を行なう。
【0003】
次に、煮上げた小豆を豆煮篭から攪拌羽根を有する練り釜に移し、砂糖などの調味料を加え、攪拌羽根を回転させ、小豆と調味料とを攪拌しつつ加熱し、煮詰めて練り上げる煮詰め練り上げ工程を行ない、製品である粒あんを得て、これを練り釜から取り出している。
【0004】
また、煮上げた小豆を豆煮篭から攪拌羽根を有する練り釜に移すことが煩雑であることから特許文献1には、1つの煮練り兼用釜の釜本体内に小豆を入れたままで、前炊き、煮上げ、煮詰め練り上げの両工程を行わせる粒あん煮練り方法及び装置が開示されている。
【0005】
これら何れのあん製造においても前炊き後の渋切りが製造されたあんの品質を大きく左右することになる。
【0006】
つまり、あんは嗜好品であり、様々な品質のあんが製造されている。あんにはミネラル、ポリフェノール、食物繊維、ビタミンなどの機能性成分、旨み成分、香気成分と共に、渋、灰汁、耐熱菌が含まれる。粒あんの場合、前炊き後の渋切り、洗浄の度合いによりあんの色調が変化すると共に、それら渋、灰汁、耐熱菌等の含有量があんの品質に微妙に影響することになる。
【0007】
ここで表現を簡易とするため、灰汁、渋、耐熱菌の成分を、『渋み等』と記述し、ミネラル、ポリフェノール、食物繊維、ビタミンなどの機能性成分、旨み成分、香気成分を『風味等』と記述する。
【0008】
例えば特許文献1に記載のあんの製造装置では、前炊き後、釜本体を傾斜させ渋切り用のパンチング板を通して湯を捨て、渋切りを行っている。この渋切り動作が1回限りでは製品の渋みが強くなっていた。これに対し渋切り動作を2回行うと渋みは少なくなるが、風味等も損なわれてしまうという問題があった。
【0009】
一方、特許文献2では、前炊き後に排出管の弁を開いて釜本体内の湯を渋の排出口から排出させると共に、シャワー管から釜本体内に水を散布させて渋切りを2~3分行い、前炊き工程を終了するようにしている。
【0010】
このように起立姿勢の釜本体に水を散布させて、渋み等の追加除去を行う方法は、渋みは少なくなるが、効果が大きくなく、風味等も損なわれてしまうという問題があった。
【0011】
つまり、前炊き後、釜本体下部の排出口から排水して渋切りするときは、煮豆が垂直方向に密な充填状態となっている。特に下部の排出口付近の煮豆が全体から大きな重量を受けることで最も密な状態となる。
【0012】
このような充填状態では下方向に流れる煮汁により煮豆が重力方向に配向し、押付けられ、密な充填状態がさらに進行することになる。このため、渋切り(煮豆と渋み等を含有する煮汁との分離)に時間がかかり、かつ分離が不十分となる。更に、洗浄液が煮豆の間を均一には流下せず、一部の抵抗の少ない煮豆間の流路に固定され、そこにある煮汁しか洗浄置換されず、他の煮豆間にある煮汁の切れが不十分となる、半面、時間がかかるため、洗浄液により、流路にある煮豆中の風味等を失っていた。
【0013】
ここで、漉し餡を作る時、煮豆を粉砕し、水と徹底的に混合し、豆中の各成分を水側に移動させ、豆汁(生あん)と分離する晒しと呼ばれる工程を経る。この晒し工程を経ると小豆本来の香り、機能性成分は豆汁側にかなり残存し、灰汁、渋み等はほぼ完全に除去される。これらから、豆の煮熟において、灰汁、渋み、耐熱菌などは、主に煮汁側に含まれ、機能性物質、香りなどは煮豆中にも比較的高濃度で含まれていることが分かる。
【0014】
このため、前炊き後の煮汁の切れ(分離)が悪いと、灰汁、渋、耐熱菌などの除去が不十分になる。そして洗浄を強めると、煮汁の切れの若干の改善とともに、煮豆中の機能性成分、風味、香りなどをかなり失う原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許3445808公報
【特許文献2】特開昭60-149353公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
解決しようとする問題点は、前炊き後の渋切りが不十分であると灰汁、渋、耐熱菌など過度に残り、渋切りを重ねて行うと渋切りは十分であるものの煮豆中の機能性成分、風味、香りなどを大きく失う原因となり、起立姿勢の釜本体に水を散布させて渋切りを行う場合には洗浄液の流路が固定され、煮汁の一部しか洗浄置換されず、煮汁の切れが不十分となる、半面、洗浄液により、流路にある煮豆中の機能性成分、香り、風味等をかなり失う原因となっていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、灰汁、渋、耐熱菌などを適度に除去すると共に、煮豆中の機能性成分、風味、香りなどを残すことを可能にするため、以下の手段とした。
【0018】
本発明の豆類処理装置は、傾斜動作が可能に起立支持されて上端が開口の容器と、前記容器の開口の一側部に配置され前記容器の内部で前炊きした豆類は通さず前炊きの湯を通すように前記開口の一側部を前記容器の傾斜状態で通水域とするための渋切り部材と、前記容器の傾斜状態で前記開口の他側部に向けて容器外の横方向から容器内へ設定温度の洗浄水を散布可能とする外部散布栓とを備えた。
【0019】
本発明のあんの製造装置は、前記豆類処理装置を含むあんの製造装置であって、前記容器は、あん製造のために攪拌駆動される攪拌羽根を備えた。
【0020】
本発明の豆類の渋切り管理方法は、豆類を容器内で前炊きした後に豆類は通さず前炊きの湯を通して渋切りした湯又は渋切りした豆類を洗浄した洗浄水に含まれる渋に基づくあんの渋みをホルマジン濃度で管理する。
【発明の効果】
【0021】
この発明の豆類処理装置は、傾斜状態の容器の開口の一側部から前炊きの湯を通して、渋切りしたとき、容器の内部で分散移動した豆類の上に外部散布栓により設定温度の洗浄水を散布して素早く適度に洗浄することができる。
【0022】
この発明のあんの製造装置は、渋切り後に外部散布栓により設定温度の洗浄水を散布して洗浄した後の豆を用い、攪拌羽根により攪拌駆動し、あんを製造することができる。
【0023】
この発明の豆類の渋切り管理方法は、豆類を容器内で前炊きした後に豆類は通さず前炊きの湯を通して渋切りした湯又は渋切りした豆類を洗浄した洗浄水に含まれる渋に基づくあんの渋みをホルマジン濃度で管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施例1に係るあんの製造装置の一部を断面にした正面図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係るあんの製造装置の煮煉り兼用釜の一部を断面にした正面図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係るあんの製造装置の釜本体への多孔板の取り付けを示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施例1に係るあんの製造装置の釜本体の後傾状態を示す一部省略の概略側面図である。
【
図5】
図5は、実施例1に係るあんの製造装置の釜本体の起立支持を示す一部省略の概略側面図である。
【
図6】
図6は、実施例1に係るあんの製造装置の釜本体の前傾状態を示す一部省略の概略側面図である。
【
図7】
図7は、実施例1に係り、渋切り・洗浄の収支を示す図表である。
【
図8】
図8は、実施例1に係り、ホルマジン検量線の測定データを示す図表である。
【
図9】
図9は、実施例1に係り、検量線を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施例1に係り、ホルマジン濃度測定結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、灰汁、渋、耐熱菌などの除去を行うとともに、煮豆中の機能性成分、風味、香りなどを残すことを可能にするという目的を以下のように実現した。
【0026】
本発明の豆類処理装置は、傾斜動作が可能に起立支持されて上端が開口の容器と、前記容器の開口の一側部に配置され前記容器の内部で前炊きした豆類は通さず前炊きの湯を通すように前記開口の一側部を前記容器の傾斜状態で通水域とするための渋切り部材と、前記容器の傾斜状態で前記開口の他側部に向けて容器外の横方向から容器内へ設定温度の洗浄水を散布可能とする外部散布栓とを備えて実現した。
【0027】
前記渋切り部材は、前記容器の開口の一側部に配置され前記容器の内部で前炊きした豆類は通さず前炊きの湯を通すように前記開口の一側部を前記容器の傾斜状態で通水域とすればよく、多孔板、メッシュ板等で構成することができる。
【0028】
前記外部散布栓は、一側部に渋切り部材が取り付けられた開口の他側部に向けて容器外の横方向から水又は湯を適時に散布可能であればよく、例えば一つの孔から散布するスプレー栓或いは複数の孔から散布するシャワー栓で実現できる。シャワー栓からの散布にマイクロバブルを含んでも実現できる。
【0029】
前記設定温度の洗浄水は、加熱した洗浄水、つまり洗浄湯を含む。
【0030】
前記外部散布栓は、前記容器を支持するフレーム、例えば前記傾斜状態した容器の通水域から渋切り排出した湯を受ける受け部の上部位置に取り付けられて実現できる。
【0031】
前記容器は、前記傾斜動作が可能に回転可能に支持され、前記外部散布栓は、前記容器の回転中心を含めて45°の範囲で散布することで実現できる。容器の傾斜動作は、起立支持に対して前傾、後傾させる動作として実現できる。
【0032】
本発明の豆類処理装置は、前記外部散布栓の散布を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記豆類を前炊きした湯を前記渋切り部材による通水域を通して行う渋切り1回の後に前記外部散布栓の洗浄水の散布による排水の濁度が前記渋切り1回の後に渋切り2回目を行った場合の各排水の濁度の間の値となるように前記外部散布栓の洗浄水の散布を制御することで実現した。
【0033】
本発明のあんの製造装置は、前記容器に、あん製造のために攪拌駆動される攪拌部を備えて実現できる。
【0034】
本発明の渋切り管理方法は、豆類を容器内で前炊きした後に豆類は通さず前炊きの湯を通して渋切りした湯又は渋切りした豆類を洗浄した洗浄水に含まれる渋をホルマジン濃度で管理することで実現できる。
【実施例0035】
図1は、実施例1に係るあんの製造装置の一部を断面にした正面図である。
図2は、実施例1に係るあんの製造装置の煮煉り兼用釜の一部を断面にした正面図である。
図3は、実施例1に係るあんの製造装置の釜本体への多孔板の取り付けを示す平面図である。
図4は、実施例1に係るあんの製造装置の釜本体の後傾状態を示す一部省略の概略側面図である。
図5は、実施例1に係るあんの製造装置の釜本体の起立支持を示す一部省略の概略側面図である。
図6は、実施例1に係るあんの製造装置の釜本体の前傾状態を示す一部省略の概略側面図である。
【0036】
図1~
図3のように、あんの製造装置1は、豆類処理装置3を含み、煮煉り兼用釜5と、渋切り部材としての多孔板7と、外部散布栓9との他、あん製造のために攪拌駆動される攪拌羽根11を備えている。
【0037】
前記煮煉り兼用釜5は、上面が開口した容器としての釜本体13に下部外周を包囲するジャケット15を備えている。釜本体13の下方には、釜本体13を支持するフレームの接地されたベース17が備えられている。ベース17の一側部には支柱19が固定され、他側部には制御ボックス21が支持されている。
【0038】
前記支柱19、制御ボックス21間には、釜傾動機構23の水平な軸25a、25bによって釜本体13が前傾、後傾動作が可能に起立支持されて上端が開口27となっている。
【0039】
前記釜傾動機構23は、制御ボックス21側の軸25bが図示省略した釜用電動機に連結されている。この釜用電動機の正,逆回転によって、釜本体13がジャケット15と共に正面側下がりの前傾、背面側下がりの後傾、及び垂直な起立支持の3位置で停止することが可能となっている。釜本体13の後傾位置は、水平に対して-95~+95度の範囲としている。この釜本体13の角度は、釜本体13の起立支持で上下に密になっている煮豆を横方向に分散移動させるためのものである。
【0040】
図3のように、前記釜本体13の開口27には、一側部に前記多孔板7が配置され取り付けられている。多孔板7は、直径と平行な横方向の縁部7aが開口27を横断している。多孔板7は、着脱自在であり、前記釜本体13の内部で前炊きした豆は通さず前炊きの湯を通すように開口27の一側部を通水域とする。多孔板7による通水域は、開口27の面積の40%としている。但し、この通水域は、外部散布栓9による散布の障害とならない関係とする。開口27の一側部は、後傾した釜本体13の開口27の下部側となる。この後傾した釜本体13の開口27における多孔板7の縁部7aは、ほぼ水平となる。
【0041】
前記釜本体13の前傾で、前記開口27の他側部から前記釜本体13内の内容物を取り出し可能にすると共に前記釜本体13の後傾で前記多孔板7の通水域から前炊きの湯を渋切り排出可能として前記豆類処理装置3を構成する。開口27の他側部は、前傾した釜本体13の開口27の下部側となる。
【0042】
前記釜本体13の開口27には、釜蓋28が備えられている。釜蓋28は、制御ボックス21側へ延びる釜開閉アーム30の先端部に支持されている。蓋開閉アーム30の基端部は、制御ボックス21上の回動軸32に結合支持されている。回動軸32が蓋開閉機構に連結され、蓋開閉機構の蓋用電動機の正,逆回転によって釜蓋28が釜本体13の開口27を開閉するように構成されている。
【0043】
前記釜蓋28には、スプレー栓などで構成された内部散布栓が支持されている。内部散布栓には、給水給湯配管35が接続されている。給水給湯管35は、バルブ及びフレキシブルホースを介して給水源、給湯源の双方に分けて接続されている。
【0044】
前記外部散布栓9は、傾斜状態、つまり
図4のように後傾した釜本体13において開口27の他部側に向けて配置されている。この配置により外部散布栓9は、前記釜本体13外の横方向から設定温度の洗浄水を釜本体13内へ散布可能としている。
【0045】
前記外部散布栓9は、前記釜本体13の後傾により釜本体13の内部で分散移動した前炊きした煮豆の上に設定温度の洗浄水を全体的に散布する。外部散布栓9は、3個連設されている。3個の外部散布栓9は、開口27の多孔板7がない他側部に向けて設置されている。なお、外部散布栓9の数は、外部散布栓9の機能と開口27との関係で決まり、釜本体13の内部で分散移動した前炊きした小豆の上に設定温度の洗浄水を全体的に散布することができれば単一にすることもできる。
【0046】
前記外部散布栓9は、前記釜本体13が傾斜動作する回転中心Cを含めてほぼ45°の範囲で散布する。外部散布栓9には、制御ボックス19によるバルブ制御で約80℃の湯がポンプにより圧送されるようになっている。この圧送により散布されるに設定温度の洗浄水としての洗浄湯の散布は、例えば小豆3kgに対して10.4Lを30秒間で行った。
【0047】
前記外部散布栓9は、前記釜本体13を支持するフレームに取り付けられている。本実施例1において前記フレームは、前記後傾した釜本体13の通水域から渋切り排出した湯を受ける受け部29を備え、前記外部散布栓9の取り付けは、前記受け部29の上部位置としている。受け部29は、横断面が凹形状となっており、釜本体13が
図4のように後傾して渋切りする熱湯を受けて下方から排出する。この受け部29の上部は、外部散布栓9が開口27の他側部に配向するのに適している。このため、フレーム側に外部散布栓9を適切に支持するための特別な支持部材を省略することができる。
【0048】
前記3個の外部散布栓9は、給水給湯管31に取り付けられている。給水給湯管31は、受け部29の上部に沿って配管されている。給水給湯管31は、給水給湯源(図示省略)に接続されている。この外部散布栓9と釜本体13の回転中心Cまでの距離は750mmに設定されている。
【0049】
図1等のように、前記煮練り兼用釜5は、加熱機構33を備えている。加熱機構33は、前記ジャケット15を備えている。ジャケット15は、釜本体13の下部外周面を覆う上段ジャケット36と、釜本体13の下端部下面を覆う下段ジャケット37とを備えている。これら上段ジャケット36及び下段ジャケット37に囲まれた内部に独立して各蒸気室が区画されている。これらの蒸気室は、蒸気圧の調節機構39を介してフレキシブルホースに接続され、このホースが蒸気供給源に接続されている。調節機構39は、配管及び調整弁等で構成されている。
【0050】
前記煮練り兼用釜5があん製造のために備える前記攪拌羽根11は、釜本体13内に設けた攪拌軸41に支持されている。攪拌軸41は、制御ボックス21内の攪拌用電動機(図示省略)に連動構成されている。
【0051】
前記制御ボックス21は、前記外部散布栓9の散布等を制御し、あん練り工程等において撹拌羽根5の駆動制御を行う。制御ボックス21は、その他、各種のバルブ等、あんの製造装置1全体を制御する。
【0052】
あんの製造に際しては、煮練り兼用釜5上部の釜蓋28を開き、例えばあん用の豆である小豆30Kgを適宜の手段で釜本体13内に投入し、投入完了後に釜蓋28を閉じ、豆煮工程を開始する。
【0053】
続いて、給湯源からフレキシブルホースおよび給水給湯管35を経て釜蓋28から釜本体13内に80℃以上の湯を前炊き水として50Kg供給し、小豆30Kg+前炊き水50Kgにして湯の供給を停止する。加熱機構33から釜本体13の上段,下段ジャケット36、37内の両蒸気室に加熱用の蒸気を供給する。品温=99℃になったところで、15分間前炊きし、小豆を激しい対流によって煮熟し、15分間経過で、蒸気の供給を停止する。なお、前炊きにおいて、前炊き水が99℃になるまで加熱機構33の各弁開平制御により下段ジャケット37の蒸気室内を3Kg/cm2Gの蒸気圧にし、上段ジャケット36の蒸気室内を0.4Kg/cm2Gの蒸気圧にして加熱している。
【0054】
一方、前炊き水が99℃になってからは、各弁の開閉制御によって、配管に流れている3Kg/cm2G の蒸気をそのままの圧力で流したり、減圧用のニードル弁を経由させることによって0.4Kg/cm2Gの蒸気を流すようにしている。なお、この前炊きの温度としては、90℃~100℃の間で行なうが、60℃~100℃の間であれば、次に続く渋切りの効果は一応認められる。
【0055】
蒸気の供給を停止した後、煮練り兼用釜5上部の釜蓋28を開き、
図4のように釜本体13を後傾させる。この後傾により多孔板7から小豆を流出させずに、沸騰水またはこれに近い熱湯を35Kg程度、すなわち約2/3程度を捨てる渋切りを1回行う。
【0056】
次に、
図4のように前記3個の外部散布栓9から80℃の熱湯を洗浄水として散布し、煮豆を洗浄する。前記小豆30Kgに対して洗浄水量10.4Lを洗浄時間30秒で散布した。3個の外部散布栓9からの散布は、後傾した釜本体13内に開口27の多孔板7の無い他部を通り行われる。なお、洗浄水は、多孔板7に多少かかることもある。起立位置から後傾した釜本体13内の煮豆は、内部で分散移動して釜本体13の傾斜状態に沿ってならされている。
【0057】
この状態の煮豆は、釜本体13が
図1、
図2の垂直状態の場合に比較して傾斜方向にばらけており、重力方向に配向し且つ押付けられることが抑制されている。この押付けの抑制により煮豆の密な充填状態が緩和されることになる。このため、3個の外部散布栓9から全体的に散布される湯の切れの速度が速く、灰汁、渋、耐熱菌などの除去を短時間で十分に行うことができ、洗浄液へ、煮豆から風味等(機能性成分、風味、香りなど)が溶出し・失うことも抑制できる。
【0058】
次に、釜本体13を前下がりに傾動させた後、釜本体13を
図1、
図2、
図5の垂直な起立支持に戻し、釜本体13内の小豆を平らにし、釜本体13内に水を供給し、給水W3 =小豆30Kg+浸漬水60Kg=90Kgにする。なお、実際に給水されるのは、前記渋切り時に残存する水分があるため、90Kg-45Kg=45Kgである。
【0059】
そして、一般的な水温18℃と小豆の温度99℃とによって一担温度を下げた後、加熱により50℃~60℃に昇温し、この温度を15分間保つ前炊き浸漬を行う。この場合、50℃~60℃迄の昇温と温度保持の為の温度調整には、調節機構39の各調整弁が適宜開閉制御されるようにしてその目的を達成するようにしている。これによって、一般的にビックリ水と言われる効果により、次の3項目のうち、少なくとも1項目を達成することができる。
(a)小豆の表皮のしわを伸ばして小豆の皮のはがれを防止できる。
(b)湯の表面に浮いた小豆を沈めて煮むらを防止できる。
(c)小豆と水との温度差によって新しいきれいな水が吸水される。
【0060】
特に、この前炊き浸漬は、渋切り・洗浄を行なった後に行なうため、熱い豆の中に新しい水が入り、渋の無いきれいな水が豆の中に吸水される利点がある。
【0061】
前記両蒸気ジャケット36,37の蒸気室に蒸気をそれぞれ供給し、90℃で、15分間本炊き膨潤を行い、90℃に温度を保つ。
【0062】
この場合も、90℃迄の昇温と温度保持の為の温度調整には、調節機構39の各調整弁が適宜開閉制御されることでその目的を達成するようにしている。このように、90℃前後で温度調節を行なうことによって、100℃で沸騰する場合と違って、水分の蒸発量も少ない。なお、上記排出する浸漬水35Kg,供給水45Kg、洗浄熱湯10.4Lの数値については、特に限定されるものではなく、小豆の種類によって若干異なるものであることを承知されたい。
【0063】
前記本炊き膨潤が終わると、釜の内部の温度を99℃迄上昇させる。この場合も前述したと同様に、99℃迄の昇温と温度保持の為の温度調整には、調節機構39の各調整弁が適宜開閉制御されることでその目的を達成できる。
【0064】
釜の温度が99℃迄上昇したところで、99℃で20分本炊きさせる。この本炊きでは釜本体13内では弱い対流が起きて煮むらを防ぎ、小豆の皮,実を軟化させるご飯炊き状態とし、表面部の小豆が落し蓋となり、小豆が踊らないので,腹割れを生じさせることもない。ここで、前述のご飯炊き状態とは、炊き上がった状態で、蒸発と素材である小豆に吸収されることで水分が無くなった状態をいう。
【0065】
前記本炊きが終わると、この状態で,小豆が煮えているか否かを検査する。
【0066】
前記検査をすることによって豆煮ができたことを確認し、必要量の砂糖を釜本体13内に投入し、釜蓋28が閉じる。蒸気ジャケット36,37内の蒸気室の蒸気を0.4Kg/cm2Gに保ち,30分間で砂糖が溶解し煮えた小豆が蜜漬けになる。小豆の攪拌はしない。このようにすると、小豆の餡ヤケが少なく、色がよく、砂糖の溶解も速い。また、釜本体13の内部を真空にして溶解すると砂糖の溶解も早く、色の良い餡ができる。
【0067】
前記砂糖溶解・蜜漬けが終了した後、調節機構39の各調整弁が適宜開閉制御されることで前記蒸気室の蒸気圧を3Kg/cm2Gに自動切替えし、攪拌装置の攪拌羽根11の攪拌駆動を2~3分間停止させてから5~10rpmの速度で2回攪拌を行うなどの間欠回転を行う。
【0068】
このようにして、高温の加熱をしながら間欠攪拌を行い、重量が所定の値まで減少したら連続攪拌に移行する。但し、連続攪拌への移行は一定時間経過したときに行なう場合も有り得る。なお、連続攪拌に移行しても釜本体13の蒸気室は3Kg/cm2Gの蒸気圧を保持する。
【0069】
その後、釜蓋28を開かれ、適量の水飴・寒天などの添加物を釜本体13内に投入し、釜蓋28が閉じられる。但し、水飴,寒天などの添加物の投入は、間欠攪拌の際に行なう場合もある。
【0070】
引き続いて、蒸気室内の蒸気圧を3Kg/cm2Gとした状態で、連続攪拌が進められるが、重量が仕上げ重量まで減少したら加熱は停止する。但し、攪拌は餡焼けを防止するために続行される。
【0071】
最後に、攪拌羽根11の駆動を停止させ、餡練り工程を完了させた後、釜蓋28が開いた状態で、釜本体13を
図5のように前下がりに大きく前傾させて、粒餡を容器等に移し、和菓子の餡として用いる。
【0072】
なお、小豆に限られることなく、隠元豆などの白餡を製造する場合など豆類一般にも適用できる。
【0073】
前記のようにして、渋切り1回の後にそのまま後傾した釜本体13内に外部散布栓9による加熱した洗浄水を散布する。この散布された洗浄水は、後傾により傾斜方向にならされた煮豆を全体的に素早く洗浄し、且つ排出される。渋切り1回や渋切り2回と比較して灰汁、渋、耐熱菌などを適度に除去すると共に、煮豆中の機能性成分、風味、香りなどを可能な限り残すことができる。官能評価の結果、1回渋切りと2回渋切りの中間の渋みで、小豆の香りは1回渋切りに近い香りを実現できた。
【0074】
ここで、比較例の渋切1回の動作は前記の通りであるが、渋切り2回の比較例は、一例として以下のように行った。
【0075】
実施例の装置において渋切り1回の後、釜本体13を前下がりに傾動させた後、起立位置に戻し、釜本体13内の小豆を平らにして水を供給し、給水W3 =小豆30Kg+浸漬水50Kg=80Kgにする。なお、実際に給水されるのは、前記渋切り時に残存する水分があるため、80Kg-45Kg=35Kgである。
【0076】
そして、一般的な水温18℃と小豆の温度99℃とによって一担温度を下げた後、50℃~60℃に昇温し、この温度を15分間保つ前炊き浸漬を行う。前記前炊き浸漬の15分間が経過した後、釜蓋28を開き、釜1を後下がりに傾動させることで水切りし、浸漬水35Kgを捨てる二度目の渋切りとして渋切2回を行った。
【0077】
[煮汁の濁度と煮汁中の灰汁、渋含有量との関連性、豆類の渋切り管理方法]
前炊き煮汁中の灰汁、渋は水に不溶な物がかなりあり、前炊きした煮汁は濁っている。豆煮を繰り返すとこの不溶物質は煮釜の壁に付着蓄積し、衛生管理上清掃を定期的に行っている。従って煮汁の濁度と灰汁、渋の含有量は正の相関がある。
【0078】
[濁度からの渋みの予測]
1回目の渋切り液は煮豆に付着して残る煮汁と同じものである。従って渋切り液の濁度から、あんの渋みの予測ができる。2回目の渋切り液は煮豆に付着して残る煮汁と近似している。従って渋切り液の濁度から、あんの渋みの予測ができる。
【0079】
渋切り後洗浄を行う場合、洗浄水量を一定にして洗浄操作を行うと、洗浄排水の濁度が高ければ煮豆側に残る濁り等も多いと判定できる。即ち、洗浄排水の濁度から、煮豆側に残る渋み等を推定できる。洗浄操作よりの排水の濁度で、製造したあんの渋みを予測でき、官能評価を補える。
【0080】
1回目、2回目の渋切り排水の濁度は、製造したあんの渋みを予測できるので、この濁度を所定に保つよう、渋切り回数、洗浄の有無、前炊き条件等で調整する。この洗浄排水の濁度は、製造したあんの渋みを予測できるので、この濁度を所定に保つよう前炊き条件等で調整する。通常、この濁度の濃度範囲は、渋切り1回時の排水と、前記渋切り1回の後に渋切り2回目を行った場合の各排水の濁度の間の値となる。
【0081】
上記のように、本発明実施例の豆類処理装置では、小豆30Kgを前炊きした後、釜本体13を後傾させて多孔板7による通水域から前炊きの湯を通すことで渋切り1回を行わせ、渋切り1回後に外部散布栓9から80℃の熱湯を洗浄水として釜本体13の開口27内へ0.3467L/sで30秒間、合計10.4L散布した。釜本体13のサイズは、Φ700mm深さ750mm、240L、後傾時の傾斜角度は、-95度外部散布栓9は、散布角45°、外部散布栓9と釜本体13の回転中心Cまでの距離750mmとした。
【0082】
前記外部散布栓9の散布で排水された洗浄水の濁度を測定するとホルマジン濃度480mg/Lであった。この濁度は、渋切り1回の時の排水のホルマジン濃度2500mg/Lと渋切り2回の時の180mg/Lとの何れでもない中間値とし、この中間地の濁度を得るように前炊き条件、渋切り回数、洗浄有無を調整した。
【0083】
なお、濁度は、水の濁りの程度を表すものである。JISK0101(工業用水試験方法)に定めがある。精製水1Lに対し、標準物質であるホルマジン1mgを含ませ、均一に分散させた懸濁液の濁りが濁度1度と定義される。単位はホルマジン濁度単位FTU(Formazin Turbidity Unit)」が用いられる。この標準液と試料とを比較することで、試料の濁度を決定する。本実施例では、渋切り1回、2回の時の排水と渋切り1回後の外部散布栓9による上記排水とを標準液と比較し、上記濁度を得た。
【0084】
官能評価では洗浄液量を増加した例でも味の差異が認められず、前記濁度は、測定例の上記ホルマジン濃度は或る程度幅が許容される。480mg/Lの他 例えば100mg/L、237mg/L、247mg/Lなど任意に選択することができる。
【0085】
本発明実施例のあん製造装置では、前記濁度の選択により、様々な種類の旨みを感じるあんを製造することができる。つまり、外部散布栓9による加熱した洗浄水の散布で煮豆を素早く洗浄し、灰汁、渋、耐熱菌などを適度に除去すると共に、煮豆中の機能性成分、風味、香りなどを可能な限り残し、その後の本炊き後の撹拌羽根11による煮豆の撹拌により渋みの少ない、或は渋みのない豆の香りの高いなど、あんの製造ができる。
【0086】
例えば、ホルマジン濃度480mg/Lの洗浄後の煮豆を用いてあんを製造すると、灰汁、渋、耐熱菌などを適度に除去すると共に、煮豆中の機能性成分、風味、香りなどを可能な限り残った煮豆により渋みのない、或は少ない豆の香りの高いあんであるとの官能評価を得ることができた。この場合、官能評価の方法としては、2点比較法を用い、評価者は18人とした。渋切り1回+洗浄の粒あんを基準とし、渋切り1回と2回の2種のあんを官能比較を2点比較法で行った。評価項目として、渋みと小豆の香り大小、あんの好ましさ・嗜好性でより好ましいものを選択した。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
官能評価の結果を纏めると、あんの味の差は微妙であるが、渋みは予想通り2回渋切りが最も少なく、次いで渋切り1回+洗浄、渋切り1回の順に濃くなった。小豆の香りは、渋切り1回が一番高く、渋切り1回+洗浄は渋切り1回に近い評価で、渋切り2回は風味が少ないという評価であった。洗浄による渋の除去が、香りを失わずに行われている。全体としてのあんの美味しさは嗜好の問題があり、評価が分かれた。即ち、2回渋切りが不評と言う事ではない。
【0091】
これに対し前記渋切り1回の煮豆を用いてあんを製造すると、適度な渋、アクの除去とまでは言えず、小豆風味はあるものの豆本来の渋味が大きく残る炊上りとなる。前記渋切り2回の煮豆を用いてあんを製造すると、上記渋切り1回の後に熱水洗浄する実施例よりも、渋、アクが除去されて上品な炊上りになる一方で、小豆風味の流出も起こり、香り等がなくなる。
【0092】
次に、渋切後の洗浄効果を水の場合とお湯の場合とで手鍋スケールで測定した。回収洗浄水の濁度測定を行って評価した。湯洗浄は、水洗浄に比べて濁度が高く、煮熟豆から付着物がより多く落ちていることが判った。
【0093】
テスト装置は、13LのSUS鍋であり、IH加熱式とし、鍋傾動架台に支持させた。
【0094】
豆は、普通小豆1Kg、水2Kg、前炊き27分、前炊き・渋切り後に水又は熱湯でスプレー洗浄を6秒間行い、洗浄した液を回収し濁度を測定した。
【0095】
具体的操作は以下の通りである。
【0096】
豆と水を入れた13LSUS鍋をIH加熱で27分前炊きした。
【0097】
SUS鍋上面の端に、豆と煮汁を濾別する網を取り付けた。
【0098】
鍋傾動架台に鍋を固定した後、傾動させ、網を用いて煮汁をすべて切る。
【0099】
鍋を傾けたままにし、ポンプを回して水または熱湯で煮豆をスプレー洗浄する。
【0100】
スプレーノズルは、上記実施例で用いた外部散布栓9と同一であり、1基用いた。
【0101】
スプレー水が煮豆全体にかかるようにノズルと鍋位置を調整した結果、ノズルと鍋の距離は118cmに設定した。スプレー洗浄は6.9L/minで0.1分であり、豆重量当りの洗浄水量を実施例と同一にした。回収した洗浄液の量を
図7に示す。
【0102】
[濁度の測定結果]
洗浄液の洗浄効果度合いを濁度、ホルマジン濃度で評価した。吸光度法で濁度を測定した。吸光度とホルマジン濃度の検量線を、波長660nm、吸収セル10mmで測定した。ホルマジン標準液の透過率を
図8に示す。それをもとに作成した検量線を
図9に示す。
【0103】
採取した各洗浄水は回収した原液のまま吸収セルに入れ測定。測定中に数値に変動が見られた。数値の変動は大きな浮遊物が測定中に沈んでいくためで、時間が経つにつれ透過率が上がる傾向が見られた。そのため、吸光度計にセットする直前に試料をピペッティングし、セット直後の数値を結果とすることにした。
図10に測定した濁度の結果を示す。
【0104】
1度(ホルマジン)は、1L中にホルマジン1mgを含んでいる状態である。
【0105】
これらより結論として熱水洗浄の方が水洗浄よりも洗浄効果が高いことが分った。
【0106】
さらに説明すると、小豆の前炊きは、小豆の皮部分に含まれる渋を沸騰水で溶解除去する操作である。
【0107】
モデル的に言うと、渋はタンニン類等で、小豆の表面で固形として(或いはペースト)として存在する。この渋には、水溶性と水に不溶性の両方が含まれる。熱水で小豆を煮沸すると、水溶性の渋を含む、水溶性の成分が小豆の表面組織から、沸騰水に溶出する。 この時、水に不溶性の成分は溶けずに残存するが、小さい粒子状物質となり熱水側に出て来る。この微粒子の量を濁度で見ている。
【0108】
従って濁度と渋は正の相関があると言える。渋は不安定な物質で、自己縮合し、煮釜の壁等に、樹脂状に成長する。前炊きで、大部分の渋を熱水に溶出させ、これを、煮豆と渋を含む煮汁に分離(渋切り)し、更に熱水で、分離した煮豆に残った煮汁を除去することになる。
【0109】
この時、前炊き終了時に、煮豆は、大部分の渋は溶出して無くなっている状態である。この煮豆は、まだ豆の子葉部分の煮熟は終わっておらず、澱粉(あん粒子)のα化(膨潤)は終わっておらず(吸水量半分程度)、この後本炊きが行われる。
【0110】
この時本炊き側に持ち込まれる渋は、渋切りで煮豆に付着残存した煮汁とまだ熱水に溶解されず、煮豆側に残っている固体の渋となる。
【0111】
あんの味から考えると、最初にあった渋の量に較べれば、極一部がのこっていると、判断出来る。つまり、水溶性で未溶解の渋の残量は若干であろうと、推定される。
【0112】
言わば、お茶の出涸らし状態にあると考えられる。そのため残存する煮汁をどうやって除去するかが、大きなテーマになる。
【0113】
例えて言うと、お茶の出涸らしに水を振り掛けて、其のまま、流下する液を見た場合、温度が高くてもお茶が出ない状態となる。
【0114】
小豆においても、渋切り後に熱水で洗浄しても、追加の渋の溶出は起こらず、濁度も変わらないと予測できる。しかし、上記の洗浄結果のように水温により濁度が相当に変化した。
【0115】
渋切り後の小豆が出涸らし状態にあるとして、何故、温度の効果が出るのかを考えると、上記釜本体13の後傾により煮豆を粗く充填した状態にして水を微粒子にスプレー状で振り掛ける場合、温度が高いと水の粘度が低いので煮豆に付着した煮汁の洗浄置換がより効率的に起きていると考えられる。
【0116】
上記表1~表3のように、豆類である小豆を煮練り兼用釜5内で前炊きした後に豆類は通さず前炊きの湯を通して渋切りした湯(渋切り1回)及びその後の渋切り2回の何れにおいても、渋切りした湯のホルマジン濃度があんの渋み等と密接に関係する。
【0117】
したがって、渋切りした湯のホルマジン濃度を検出し、この濃度に基づいてあんの渋みを管理することができる。
【0118】
また、上記実施例の外部散布栓9により煮練り兼用釜5の後傾状態で設定温度の洗浄水(湯)を散布し、渋切りした豆類を洗浄した場合にも、排水される洗浄水に含まれる渋に基づくあんの渋みをホルマジン濃度で管理することができる。