(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135363
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】成形機洗浄剤
(51)【国際特許分類】
C11D 3/37 20060101AFI20220908BHJP
C08F 8/46 20060101ALI20220908BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20220908BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20220908BHJP
C11D 3/14 20060101ALI20220908BHJP
C11D 1/66 20060101ALI20220908BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C11D3/37
C08F8/46
C08F10/02
C11D1/04
C11D3/14
C11D1/66
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035115
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝裕
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝太郎
【テーマコード(参考)】
4F206
4H003
4J100
【Fターム(参考)】
4F206AM13
4F206JA07
4H003AB02
4H003DA12
4H003DB03
4H003EA24
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4J100DA15
4J100FA09
4J100FA10
4J100HA61
4J100HC29
4J100HC34
4J100JA00
(57)【要約】
【課題】高い洗浄性と置換容易性を両立することができる成形機洗浄剤を提供すること。
【解決手段】本発明の成形機洗浄剤は、ポリエチレン(A)、無機系フィラー(B)、変性ポリエチレン(C)、界面活性剤(D)および金属石鹸(E)を含有し、ポリエチレン(A)が、極限粘度[η]が10~40dl/gの範囲にある超高分子量エチレン系重合体からなる成分(a-1)5~75質量%と、極限粘度[η]が0.1~5dl/gの範囲にある低分子量ないし高分子量エチレン系重合体からなる成分(a-2)95~25質量%(ただし、成分(a-1)および成分(a-2)の合計量を100質量%とする。)とを含むエチレン重合体組成物であり、ポリエチレン(A)の密度が930~980kg/m3であり、かつ、極限粘度[η]が1~35dl/gである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン(A)、無機系フィラー(B)、変性ポリエチレン(C)、界面活性剤(D)および金属石鹸(E)を含有し、
前記ポリエチレン(A)が、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が10~40dl/gの範囲にある超高分子量エチレン系重合体からなる成分(a-1)5~75質量%と、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.1~5dl/gの範囲にある低分子量ないし高分子量エチレン系重合体からなる成分(a-2)95~25質量%(ただし、成分(a-1)および成分(a-2)の合計量を100質量%とする。)とを含むエチレン重合体組成物であり、
前記ポリエチレン(A)の密度(ASTM D1505に準拠)が930~980kg/m3であり、かつ、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が1~35dl/gである、成形機洗浄剤。
【請求項2】
ポリエチレン(A)および無機系フィラー(B)の合計量を100質量%とした場合、ポリエチレン(A)の含有量が60~99.9質量%であり、無機系フィラー(B)の含有量が0.1~40質量%である、請求項1に記載の成形機洗浄剤。
【請求項3】
前記無機系フィラー(B)が、ガラス繊維、ウォラストナイト、および炭酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の成形機洗浄剤。
【請求項4】
前記変性ポリエチレン(C)が、酸または酸無水物で変性されたエチレン系重合体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の成形機洗浄剤。
【請求項5】
前記変性ポリエチレン(C)の含有量が、0.5~10質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形機洗浄剤。
【請求項6】
前記界面活性剤(D)が、ノニオン性界面活性剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の成形機洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の内部に残存する樹脂等の成形材料を除去するために用いられる成形機洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に樹脂製品を成形するための装置として押出成形機や射出成形機といった各種成形機が用いられる。このような成形機を用いた樹脂成形においては、成形作業終了時に、樹脂や添加剤等の成形材料が成形機内に残留しているため、成形機の内部を洗浄しなければならない場合がある。
【0003】
このような成形機内の洗浄は、従来では成形機を分解して実施されていたが、成形機を分解するのに多大な時間と労力を要し、生産性を著しく低下させてしまうことから、近年では、このような成形機の分解を伴わずに、成形機内に導入して通常の成形操作を実施するだけで成形機内の洗浄を行うことのできる洗浄剤の開発が進められている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
洗浄剤を用いて成形機内部を洗浄する場合、通常、洗浄剤を用いた成形操作(洗浄作業)を複数回行って成形機内部の残留物を除去した後、次の成形で用いられる樹脂等の成形材料を用いた成形操作(置換作業)を複数回行って成形機内部に残留する洗浄剤を排出する。そのため、洗浄剤には、成形機内部の残留物を除去することができる高い洗浄性と、次の成形材料により排出されて成形機内部に残留しないという置換容易性とが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2000/056514号
【特許文献2】特開2001-348600号公報
【特許文献3】国際公開第2019/039542号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業効率やコストの観点から、従来の洗浄剤よりも、洗浄作業および置換作業の回数をさらに低減できる洗浄剤が求められている。
【0007】
本発明は、高い洗浄性と置換容易性(低残留性)の両方を達成することができる成形機洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定のポリエチレン、無機系フィラー、変性ポリエチレン、界面活性剤および金属石鹸を含む成形機洗浄剤により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の成形機洗浄剤は、ポリエチレン(A)、無機系フィラー(B)、変性ポリエチレン(C)、界面活性剤(D)および金属石鹸(E)を含有し、
前記ポリエチレン(A)が、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が10~40dl/gの範囲にある超高分子量エチレン系重合体からなる成分(a-1)5~75質量%と、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.1~5dl/gの範囲にある低分子量ないし高分子量エチレン系重合体からなる成分(a-2)95~25質量%(ただし、成分(a-1)および成分(a-2)の合計量を100質量%とする。)とを含むエチレン重合体組成物であり、
前記ポリエチレン(A)の密度(ASTM D1505に準拠)が930~980kg/m3であり、かつ、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が1~35dl/gである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の成形機洗浄剤によれば、高い洗浄性と置換容易性(低残留性)の両方を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X<Yの場合、X以上Y以下のことを表し、X>Yの場合、Y以上X以下を表す。例えば、「0.1~5dl/g」とは「0.1dl/g以上5dl/g以下」を意味する。
【0012】
本発明に係る成形機洗浄剤は、ポリエチレン(A)、無機系フィラー(B)、変性ポリエチレン(C)、界面活性剤(D)および金属石鹸(E)を含有する。以下、各成分について説明する。
【0013】
[ポリエチレン(A)]
本発明で用いられるポリエチレン(A)は、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が10~40dl/gの範囲にある超高分子量エチレン系重合体からなる成分(a-1)と、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.1~5dl/gの範囲にある低分子量ないし高分子量エチレン系重合体からなる成分(a-2)とを含むエチレン重合体組成物である。なお、ポリエチレン(A)は、後述する変性ポリオレフィン樹脂(C)とは異なる。
【0014】
成分(a-1)および成分(a-2)の合計量を100質量%とした場合、成分(a-1)の含有量は5~75質量%、好ましくは7~60質量%、より好ましくは10~45質量%であり、成分(a-2)の含有量は95~25質量%、好ましくは93~40質量%、より好ましくは90~55質量%である。成分(a-1)および成分(a-2)の含有割合が前記範囲内であることにより、成形機内部の残留物の除去性を向上させることができる。
【0015】
ポリエチレン(A)の密度(ASTM D1505に準拠)は、930~980kg/m3、好ましくは940~978kg/m3、より好ましくは950~976kg/m3である。ポリエチレン(A)の密度が前記範囲内であることにより、成形機内部の残留物の除去性を向上させることができる。
【0016】
ポリエチレン(A)の135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は、1~35dl/g、好ましくは2~30dl/g、より好ましくは3~25dl/gである。ポリエチレン(A)の極限粘度[η]が前記範囲内であることにより、成形機内部の残留物の除去性を向上させることができる。
【0017】
<成分(a-1)>
成分(a-1)は、極限粘度[η]が10~40dl/g、好ましくは15~38dl/g、より好ましくは20~35dl/gの範囲にある超高分子量エチレン系重合体からなる。成分(a-1)の極限粘度[η]が前記範囲内であることにより、成形機内部の残留物の除去性を向上させることができる。
【0018】
成分(a-1)は、エチレンの単独重合体、または、エチレンとプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテンもしくは3-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンとの共重合体である。これらのうち、エチレンの単独重合体、またはエチレンと上記のα-オレフィンとの共重合体であって、エチレンを主成分として構成される共重合体を使用することが好ましく、エチレンの単独重合体であることが特に好ましい。
【0019】
<成分(a-2)>
成分(a-2)は、極限粘度[η]が0.1~5dl/g、好ましくは0.2~4dl/g、より好ましくは0.3~3dl/gの範囲にある低分子量ないし高分子量エチレン系重合体からなる。成分(a-2)の極限粘度[η]が前記範囲内であることにより、成形機内部の残留物の除去性を向上させることができる。
【0020】
成分(a-2)は、エチレンの単独重合体、または、エチレンとα-オレフィンの共重合体である。前記共重合体を構成するα-オレフィンとしては、炭素原子数3~20の直鎖状または分岐状のα-オレフィンであり、具体的にはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ペンテン、3-エチル-4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘプテン、3,4-ジメチル-1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンおよび1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレンおよび1-ブテンが好ましく用いられる。
【0021】
なお、成分(a-2)は、エチレンを主成分として構成されるエチレン・α-オレフィン共重合体であることが好ましく、エチレン含量が60mol%以上であることがより好ましく、エチレン含量が80mol%以上であることがさらに好ましい。
【0022】
<ポリエチレン(A)の含有量>
本発明の成形機洗浄剤全体を100質量%とした場合、ポリエチレン(A)の含有量は、好ましくは47.4~98.9質量%、より好ましくは48.0~90.0質量%である。また、ポリエチレン(A)および無機系フィラー(B)の合計量を100質量%とした場合、ポリエチレン(A)の含有量は、好ましくは60~99.9質量%、より好ましくは62~90質量%である。ポリエチレン(A)の含有量が、前記条件を満たすことにより、高い洗浄性を有する洗浄剤を得ることができる。
【0023】
<ポリエチレン(A)の製造方法>
ポリエチレン(A)の製造方法は、特に限定されず、例えば、予め得た上記成分(a-1)と上記成分(a-2)とを混合することにより製造することができるが、好ましい態様として以下の方法(M-1)および(M-2)が挙げられる。
【0024】
(M-1)成分(a-1)および成分(a-2)を、それぞれ予め公知のオレフィン重合用触媒の存在下で製造した後、混合あるいは混錬することにより製造する方法。
(M-2)公知のオレフィン重合用触媒の存在下、第1工程として成分(a-1)を生成させる工程と、第2工程として成分(a-2)を生成させる工程との少なくとも2段階の工程を含む多段重合法により製造する方法。
【0025】
なお、この際、重合に用いるエチレンなどのオレフィンは、上記成分(a-1)および成分(a-2)の項目において記載した各種オレフィンを制限無く用いることができる。
【0026】
公知のオレフィン重合用触媒としては、前記成分(a-1)および前記成分(a-2)を製造することができるものであれば、特に制限無く用いることができる。具体的には、四塩化チタンまたは三塩化チタンからなるチーグラー・ナッタ触媒、チタンをマグネシウム等の担体に担持した担体担持型固体状チタン触媒、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒が挙げられる。
【0027】
ポリエチレン(A)の製造方法としては、上記のうち、(M-2)で示すように、多段階で重合させる方法が、成分(a-1)が成分(a-2)の中に微分散することで均質なエチレン系重合体組成物(A)を得ることができることから好ましく用いられる。
【0028】
なお、当該多段階で重合させる方法については、例えば、特開平1-129047号公報に記載の重合方法と同様な方法で行うことができる。
【0029】
[無機系フィラー(B)]
本発明で用いられる無機系フィラー(B)としては、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されず、公知の無機系フィラーを用いることができる。好ましい例としては、洗浄剤の洗浄性を高めるとともに、洗浄剤の耐熱性および剛性を高めることができる観点から、ガラス繊維、ウォラストナイト(珪灰石)および炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の成形機洗浄剤全体を100質量%とした場合、無機系フィラー(B)の含有量は、好ましくは0.09~31.6質量%、より好ましくは7.0~31.0質量%である。また、ポリエチレン(A)および無機系フィラー(B)の合計量を100質量%とした場合、無機系フィラー(B)の含有量は、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは10~38質量%である。無機系フィラー(B)の含有量が、前記条件を満たすことにより、高い洗浄性を有する洗浄剤を得ることができる。
【0031】
[変性ポリエチレン(C)]
本発明で用いられる変性ポリエチレン(C)は、ポリエチレン(A)と無機系フィラー(B)の相溶化剤として機能する。変性ポリエチレン(C)は、エチレン由来の構造単位を主成分として含み、かつヘテロ原子を含む官能基(以下、単に「官能基」ともいう。)を有する構造単位を、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%の割合で含む重合体である。この割合は、たとえば国際公開第2015/011935号の[0067]~[0071]に記載の方法で特定することができる。
【0032】
前記官能基としては、たとえばカルボン酸基(無水カルボン酸基を含む)、エステル基、エーテル基、アルデヒド基およびケトン基が挙げられる。官能基を有する構造単位は、たとえばオレフィン重合体を変性反応させることで導入することができる。
【0033】
前記変性ポリエチレン(C)は、酸または酸無水物で変性されたエチレン系重合体、より詳しくは、カルボキシル基および酸無水物基から選ばれる少なくとも1種の基を有する不飽和化合物により変性したエチレン系重合体であることが好ましい。
【0034】
前記不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸およびエンドシス-ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸(商標))等の不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸、ならびにこれらの酸ハライド、アミド、イミド、酸無水物およびエステル等の誘導体などが挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、マレイン酸、ナジック酸およびこれらの酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。無水マレイン酸は、変性前のエチレン系重合体との反応性が比較的高く、無水マレイン酸同士の重合等が生じにくく、基本構造として安定な傾向があり、このため、安定した品質の変性ポリエチレンが得られるなどの様々な優位点がある。
【0035】
変性ポリエチレン(C)の製造方法の一例として、未変性のエチレン系重合体を変性剤(たとえば、不飽和カルボン酸およびその誘導体)でグラフト変性させる方法が挙げられる。
【0036】
ポリエチレンのグラフト変性は、公知の方法で行うことができ、たとえば、ポリエチレンを有機溶媒に溶解し、得られた溶液に不飽和カルボン酸またはその誘導体およびラジカル開始剤などを加え、好ましくは60~350℃、より好ましくは80~190℃の温度で、好ましくは0.5~15時間、より好ましくは1~10時間反応させる方法により行うことができる。
【0037】
ポリエチレンを溶解させる有機溶媒の例としては、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ならびにペンタン、ヘキサンおよびヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0038】
ポリエチレンのグラフト変性の他の方法の例としては、溶媒非存在下で、押出機などでポリエチレンと変性剤(たとえば、不飽和カルボン酸およびその誘導体)とをラジカル開始剤を用いて反応させる方法が挙げられる。この場合、反応温度は、通常、ポリオレフィンの融点以上、たとえば100~350℃であり、反応時間は、通常、0.5~10分間である。
【0039】
ラジカル開始剤の例としては、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンおよび1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどの公知のラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤は、変性前のポリオレフィン100質量部に対して、好ましくは0.001~1質量部の割合で用いられる。
【0040】
本発明の成形機洗浄剤全体を100質量%とした場合、変性ポリエチレン(C)の含有量は、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~8質量%である。変性ポリエチレン(C)の含有量が前記範囲内であることにより、ポリエチレン(A)と無機系フィラー(B)の相溶性を向上させ、高い洗浄性と置換容易性を有する洗浄剤を得ることができる。
【0041】
[界面活性剤(D)]
本発明で用いられる界面活性剤(D)は、特に限定されず、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等を用いることができる。
【0042】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0043】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0044】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0045】
両性イオン界面活性剤としては、リン酸エステル系界面活性剤や、ラウリルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0046】
上記の中では、洗浄剤の置換容易性をより向上させる観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0047】
本発明の成形機洗浄剤全体を100質量%とした場合、界面活性剤(D)の含有量は、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~8質量%である。界面活性剤(D)の含有量が前記範囲内であることにより、置換容易性に優れた洗浄剤を得ることができる。
【0048】
[金属石鹸(E)]
本発明で用いられる金属石鹸(E)としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、12ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ステアリルリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛など、炭素数が12ないし30までのカルボン酸の金属塩等が挙げられる。
【0049】
本発明の成形機洗浄剤全体を100質量%とした場合、金属石鹸(E)の含有量は、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.05~0.9質量%である。金属石鹸(E)の含有量が前記範囲内であることにより、滑剤として機能することにより置換容易性に優れた洗浄剤を得ることができる。
【0050】
[その他の成分]
本発明の成形機洗浄剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した成分(A)~(E)以外の成分を任意成分として含有してもよい。このような他の成分としては、例えば、他のポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂や、樹脂用添加剤(例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤などの安定剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、フィラー、鉱物油系軟化剤、石油樹脂、ワックスなど)など挙げられる。
【0051】
[成形機洗浄剤の製造方法]
本発明の成形機洗浄剤は、上述した各成分を溶融混練することによって製造することができる。溶融混練は公知の方法で行うことができる。
【0052】
得られる成形機洗浄剤のメルトフローレート(MFR;JIS K7210-1:2014に準拠;測定温度190℃;荷重10kgf)は、好ましくは0.1~20g/10分、より好ましくは1~10g/10分である。成形機洗浄剤のMFRが前記範囲内であることにより、高い洗浄性を有する洗浄剤を得ることができる。
【0053】
[成形機洗浄剤の使用方法]
本発明の成形機洗浄剤の使用方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、洗浄剤を成形機に投入して、通常と同様の成形操作(洗浄操作)を必要に応じて複数回行うことにより、成形機内部の残留物を除去することができる。このような洗浄操作を行った後、次の成形で用いられる樹脂等の成形材料を用いた成形操作(置換作業)を必要に応じて複数回行うことにより、成形機内部に残留する洗浄剤を排出することができる。
【0054】
使用できる成形機についても特に限定されず、公知の射出成形機、押出成形機など広く適用できる。
【実施例0055】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0056】
[物性の測定方法]
下記実施例および比較例で用いたポリマーおよび成形機洗浄剤の各物性は、以下の方法にて求めた。
【0057】
(1)極限粘度[η]
135℃、デカリン溶媒中で測定した。
(2)密度
ASTM D1505に準拠して測定した。
(3)MFR
JIS K7210-1:2014に準拠し、測定温度190℃、10kgfの荷重で測定した。
【0058】
[各成分]
実施例および比較例で用いた各成分は以下のとおりである。
<ポリエチレン(A)>
A-1:以下の方法で得られたポリエチレン(A-1)
【0059】
(1)触媒の調製
充分に窒素置換された10Lの撹拌機付反応器に4.0Lの精製ヘキサンおよび95gの無水塩化マグネシウムを加え、撹拌下に室温で350mlのエタノールを2時間かけて滴下した後約1時間室温で混合した。次いで330mlのジエチルアルミニウムクロライドを2時間かけて滴下し、滴下後約1時間室温で混合した後1.3Lの四塩化チタンを1時間かけて滴下し80℃で1時間の反応を行なった。
【0060】
反応終了後、フイルターを用い固体部を分離し、この固体部を、精製ヘキサンを使い2回洗浄することにより固体状チタン触媒成分を得た。該チタン触媒成分中のチタン含有量は6.8質量%、マグネシウム含有量は15質量%、塩素含有量は60質量%であった。また、この固体触媒成分を390倍の光学顕微鏡で観察したところ、約1μm前後の微粒子固体が幾重にも凝集した凝集体であることが観測された。
【0061】
(2)ポリエチレンの製造
充分に窒素置換された24Lのオートクレーブに12Lの精製n-デカンを添加した後、50℃に昇温し、同温度で12mmolのトリエチルアルミニウムおよび上記固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で0.12mmolを添加した。次いで、触媒装入口を閉じオートクレーブの内圧が3.8kg/cm2・Gになるようにエチレンを導入して第1段目の重合を行なった。重合温度は45~46℃に維持した。エチレンを導入後45分が経過したところで速やかに脱圧し、常圧になったところで水素を5.0kg/cm2・G導入し、さらにエチレンを3.0kg/cm2・G導入して全圧を8.0kg/cm2・Gにするとともに、重合温度を80℃に上げて第2段目の重合を行なった。第2段目の重合時間は490分とした。重合終了後、降温し、固体状白色ポリマーを分離し、これを乾燥した。得られたポリエチレン(A-1)の収量は3485gであり、極限粘度[η]は5.73dl/gであり、密度が970kg/m3であった。
【0062】
一方、第1段目のみの重合を同一の条件で別途行なって得られた超高分子量ポリエチレン(エチレン単独重合体)〔(a-1)-1〕の収量は595gであり、極限粘度[η]は28.0dl/gであった。これより、超高分子量ポリエチレン〔(a-1)-1〕の含有量は17.1質量%であると推算された。これより、第2段目で生成した低分子量ないし高分子量ポリエチレン〔(a-2)-1〕の極限粘度[η]は下記式より計算すると、1.14dl/gであった。
【0063】
[η]all=[η]〔(a-1)-1〕×〔(a-1)-1〕質量%+[η]〔(a-2)-1〕×〔(a-2)-1〕質量%
[η]all:ポリマー全体〔ポリエチレン(A)〕の極限粘度[η](dl/g)
[η]〔(a-1)-1〕:〔(a-1)-1〕の極限粘度[η](dl/g)
〔(a-1)-1〕:質量%〔(a-1)-1〕の含有量(質量%)
[η]〔(a-2)-1〕:〔(a-2)-1〕の極限粘度(dl/g)
〔(a-2)-1〕質量%:〔(a-2)-1〕の含有量(質量%)
【0064】
<無機系フィラー(B)>
B-1:ガラスファイバーチョップドストランド(日本電気硝子社製「ESC 03 T480H」)
B-2:ウォラストナイト(NYCO minearals社製「NYGLOS 12」)
【0065】
<変性ポリエチレン(C)>
C-1:以下の方法で得られた変性ポリエチレン(C-1)
エチレン単独重合体(プライムポリマー製「2200J」、MFR=5.2g/10分)100質量部、無水マレイン酸2.0質量部、および有機過酸化物[日本油脂(株)製「パーヘキシン-25B」]0.35質量部をヘキシェルミキサーで混合し、得られた混合物を270℃に設定した100mmφの二軸押出機で、混練時間1分30秒程で溶融グラフト変性することによって、変性ポリエチレン(C)を得た。得られた変性ポリエチレン(C)の無水マレイン酸グラフト量をIR分析で測定したところ、1.0質量%であった。
【0066】
<界面活性剤(D)>
D-1:ノニオン系界面活性剤(丸菱油化工業製「デノン331-L」)
【0067】
<金属石鹸(E)>
E-1:ステアリン酸マグネシウム(日本油脂製「マグネシウムステアレートGP」)
【0068】
[実施例1~2および比較例1~5]
<成形機洗浄剤の製造>
ポリエチレン(A)、変性ポリエチレン(C)、界面活性剤(D)および金属石鹸(E)を下記表1に示す量でドライブレンドし、2軸押出機(東芝社製、φ=26mm、L/D=64、シリンダー温度:230℃)に投入し、無機系フィラー(B)をシリンダーC11付近からサイドフィードして投入し、溶融混錬を行って成形機洗浄剤を得た。得られた成形機洗浄剤のMFRを測定した。
【0069】
【0070】
得られた成形機洗浄剤を用いて、洗浄性および残留性(置換容易性)を下記の方法で評価した。結果を表2に示す。なお、洗浄性および残留性の評価に用いた成形機は、(株)日本製鋼所製の射出成型機「J110-AD」であり、操作条件は以下のとおりである。
(操作条件)
シリンダー温度(℃):50/220/280/280/280/280/280
射出圧力(kg/cm2):600
スクリュー回転数(rpm):80
金型温度(℃):水冷(60℃)
【0071】
<洗浄性>
ポリエチレン(HDPE)の黒色着色成形材料を成形機内に充填後、射出操作により排出して射出成形機内を空にした。次に、得られた成形機洗浄剤を成形機内に投入し、パージ操作(洗浄射出操作)を行った。残留物の影響(黒色の汚班)が無いことが目視で確認されるまでのパージ回数と使用した成形機洗浄剤の量を測定した。
【0072】
<残留性>
洗浄性の測定を行った後、射出操作により残留物を全て排出して成形機内を空にし、次いで、ポリカーボネートを成形機内に充填し、ダンベル形引張試験片を作成した。残留物の影響(成形機洗浄剤の白点)が無いことが目視で確認されるまでのショット回数と使用したポリカーボネート(PC)の量を測定した。
【0073】