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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135373
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】光触媒付送風機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/08 20060101AFI20220908BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220908BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20220908BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20220908BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20220908BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20220908BHJP
【FI】
F24F13/08 A
B01J35/02 J
A61L9/00 C
A61L9/18
F24F8/22
F24F7/003
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035131
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000140269
【氏名又は名称】株式会社遠藤照明
(72)【発明者】
【氏名】木村 正明
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 浩亨
(72)【発明者】
【氏名】松村 輝久
【テーマコード(参考)】
3L081
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
3L081AA01
3L081BA03
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180AA19
4C180CC03
4C180DD03
4C180EA30X
4C180EA33X
4C180EA34X
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH19
4C180LL04
4C180LL11
4C180LL14
4C180MM08
4G169BA04A
4G169BA48A
4G169CA10
4G169DA05
4G169HB01
4G169HE03
4G169HE07
4G169HF02
(57)【要約】
【課題】
光触媒付送風機において、天井等の高所設置可能な具体的な構造及び動作を実現すること。
【解決手段】
本発明に係る光触媒付送風機は、下向き又は上向きの送風を行うファンと、前記ファンの上側に設けられた風向き調整ベースと、前記風向き調整ベースの横に設けられ、気流を通す光触媒フィルターと、前記光触媒フィルターを励起する光源と、を備え、前記風向き調整ベースは、気流が前記ファンと前記光触媒フィルターとを通るように側面が傾斜している。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下向き又は上向きの送風を行うファンと、
前記ファンの上側に設けられた風向き調整ベースと、
前記風向き調整ベースの横に設けられ、気流を通す光触媒フィルターと、
前記光触媒フィルターを励起する光源と、
を備え、
前記風向き調整ベースは、気流が前記ファンと前記光触媒フィルターとを通るように側面が傾斜している
光触媒付送風機。
【請求項2】
光触媒フィルター付ユニットは前記光触媒フィルターを複数備え、
前記光触媒フィルター付ユニットは、一体として前記光触媒付送風機から取り外し・取り付けが可能である、
請求項1に記載の光触媒付送風機。
【請求項3】
前記光触媒フィルター付ユニットは、前記取り外し・取り付けのためのボタンを備える
請求項2に記載の光触媒付送風機。
【請求項4】
前記光源は、前記光触媒フィルターより風向き調整ベースに近い位置に設けられた、
請求項1に記載の光触媒付送風機。
【請求項5】
前記光触媒付送風機は、下通風口及び横通風口を備え、
前記下通風口から下向きの風を送風する下向き送風モードと、前記横通風口から横向きの風を送風する横向き送風モードを切り替え可能である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の光触媒付送風機。
【請求項6】
前記光触媒付送風機は、下向きの送風と横向きの送風を、プログラムされたスケジュールに応じて切り替えることが可能な、
請求項5に記載の光触媒付送風機。
【請求項7】
前記光触媒付送風機は、前記風向き調整ベースの横に横通風口を備え、
前記光触媒フィルターと前記横通風口の間に、気流を整流するためのフィンが設けられた、
請求項1から5のいずれか一項に記載の光触媒付送風機。
【請求項8】
前記送風の風量が大のときに前記光源を停止し、
前記送風の風量が大より小さいときに前記光源を駆動する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の光触媒付送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄機能を備えた光触媒付送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
天井等に送風機を設置し、室内の温度分布を均一化する技術がある。その際、送風機と脱臭器を組み合わせて、室内の脱臭を図る技術も知られている。
【0003】
特許文献1に記載の脱臭剤を備えた天井設置型送風機では、上端外周に開設された吸入口と、その前方中央部に設けられたファンと、ファンの前方にファンを囲むように設けられた消臭剤ユニットを備え、ファンが回転すると、空気が吸入口から吸入され、ファンの外側に設けられた消臭剤ユニットを通り、消臭剤ユニットの内側に設けられた内側導出通路より下方に送風される。
【0004】
また、正方向である下方吹き出しと逆方向である上方吹き出しが可能な送風機が特許文献2に記載されている。送風機から上方に送出された空気は天井面に沿って流通し、気流は側壁に沿って下方に移動して床面上を流通し、部屋の中央部を上昇して送風機の開口部に導かれ、これにより、天井面の空気を効率良く拡散することができる、とされている。
【0005】
また、光触媒型の空気清浄機が知られている。特許文献3に記載の空気清浄機では、光源が光触媒部材を照射し、光の向きと略直交する方向に風を送っている。光源からの光が透明板を介して光触媒部材に照射し、光触媒部材から離れたところにあるファンによって光触媒部材の中を気流が通る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3152178号公報
【特許文献2】特許第6496873号公報
【特許文献3】特開2019-130476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、天井設置型の送風機に光触媒方式を組み合わせることにより、従来の天井設置型送風機の使用場面に加え、空気洗浄効果を生かした使用も可能な光触媒付送風機を実現しようと考えた。その際、特許文献1や2に示された送風機は天井設置型であって、軸対称の基本構造を有しているのに対し、特許文献3に示された空気清浄機は床置き型であって、平面的な構造をしているため、単純に組み合わせることができないという問題があった。そこで、本発明の課題は、使用場面を考慮した、天井等の高所設置可能な光触媒付送風機を実現することである。
【0008】
このような天井設置型かつ光触媒方式の送風機においては、床置き型光触媒式空気清浄機に比べて光触媒フィルターの交換や清掃が難しくなる。そこで、本発明の次の課題は、天井等の高所に設置しても比較的簡便に光触媒フィルターの交換や清掃などのメンテナンスを行うことができる光触媒付送風機を実現することである。
【0009】
本発明のさらなる課題は、単なる送風機とは異なり光触媒付送風機の機能を生かすことにより、使用する時間帯に応じて室内下方及び天井面の清浄化を行う動作を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下向き又は上向きの送風を行うファンと、前記ファンの上側に設けられた風向き調整ベースと、前記風向き調整ベースの横に設けられ、気流を通す光触媒フィルターと、前記光触媒フィルターを励起する光源と、を備え、前記風向き調整ベースは、気流が前記ファンと前記光触媒フィルターとを通るように側面が傾斜している光触媒付送風機である。
【0011】
本発明において、光触媒フィルター付ユニットは前記光触媒フィルターを複数備え、前記光触媒フィルター付ユニットは、一体として前記光触媒付送風機から取り外し・取り付けが可能であってもよい。
【0012】
本発明において、前記光触媒フィルター付ユニットは、前記取り外し・取り付けのためのボタンを備えてもよい。
【0013】
本発明において、前記光源は、前記光触媒フィルターより風向き調整ベースに近い位置に設けられていてもよい。
【0014】
本発明において、前記光触媒付送風機は、下通風口及び横通風口を備え、前記下通風口から下向きの風を送風する下向き送風モードと、前記横通風口から横向きの風を送風する横向き送風モードを切り替え可能であってもよい。
【0015】
本発明において、前記光触媒付送風機は、下向きの送風と横向きの送風を、プログラムされたスケジュールに応じて切り替えることが可能であってもよい。
【0016】
本発明において、前記光触媒付送風機は、前記風向き調整ベースの横に横通風口を備え、前記光触媒フィルターと前記横通風口の間に、気流を整流するためのフィンが設けられていてもよい。
【0017】
本発明において、前記送風の風量が大のときに前記光源を停止し、前記送風の風量が大より小さいときに前記光源を駆動してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の、天井設置型の送風機に光触媒方式を組み合わせる構成により、従来の天井設置型送風機の使用場面に加え、空気洗浄効果を生かした使用も可能な光触媒付送風機を実現できる。
【0019】
本発明では、天井等の高所に設置しても比較的簡便に光触媒フィルターの交換や清掃などのメンテナンスを行うことができる光触媒付送風機を実現することができる。
【0020】
本発明では、光触媒付送風機の機能を生かすことにより、使用する時間帯に応じて室内下方及び天井面の清浄化を行う動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1の光触媒付送風機の正面模式断面図
図2】実施形態1の光触媒付送風機の平面模式断面図
図3】実施形態1の光触媒フィルターの模式図
図4】実施形態1の脱着機構の説明図
図5】実施形態1の光触媒付送風機を用いた室内の送風状態を説明するための説明図
図6】実施形態1の光触媒付送風機を用いた室内天井側への送風状態を説明するための説明図
図7】実施形態1の光触媒付送風機の運転モード切替例の説明図
図8】実施形態2の光触媒付送風機の断面模式図
図9】実施形態2の光触媒付送風機を用いた室内下向きの送風状態を説明するための説明図
図10】実施形態2の光触媒付送風機の運転モード切替例の説明図
図11】実施形態3の光触媒付送風機の断面模式図
図12】実施形態3の光触媒付送風機の説明用斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
<構成>
本実施形態の光触媒付送風機100は、天井直付あるいは天井半埋込設置が可能なものであり、天井面(天井の下面)に沿って横向きに送風する機能と、下向きに送風する機能を切り替え可能なものである。
【0023】
図1は光触媒付送風機100の図2におけるB-B‘線に沿った正面模式断面図、図2図1におけるC-C‘線に沿った平面模式断面図である。特徴部分の説明を行うため、図を煩雑にする機構部品を適宜省略して示している。以下の説明では図1におけるファンの軸Aを基準に上・下という用語を用い、上下に対して直交する方向を横、特に横の左右を特定する場合に左、右とするが、この定義では「上・下」は必ずしも重力に基づいた上下方向とは一致しない。
【0024】
光触媒付送風機100は、下通風口110、下カバー112、羽121を有するファン120、風向き調整ベース130、背面プレート135、LED基板140、光触媒フィルター150、上カバー160、ボタン部品171と係止部品175を有する脱着機構170、横通風口180、フィン182を備える。上カバー160と背面プレート135の間には、電源162が備えられる。光触媒付送風機100が天井190に埋込の場合、背面プレート135より上部は、天井190に設けられた円形の穴に固定設置される。光触媒付送風機100が天井直付けの場合、上カバー160の上面が天井190に直付けされる。
【0025】
背面プレート135の下側において、中心軸Aを取り囲むように、横通風口180が設けられている。
【0026】
<風向き調整ベース>
風向き調整ベース130は、軸Aに対して軸対称の部材であり、側面部130Sが下側になるに従って中心軸Aに近くなるよう傾斜する断面形状を有している。これにより、横通風口から吸入した気流H1を下向きに変えて下通風口110から気流V1として放出する、または下通風口110から吸入した気流V2を横向きに変えて横通風口から気流H2として放出する作用を有する。
【0027】
<光触媒フィルター>
本実施形態においては、ファンの上側に「風向き調整ベース130」を設けてファンによる上下方向の風を横向きの風に変換するとともに、「光触媒フィルター150」を「風向き調整ベース130」を囲むように設け、横向きの風が光触媒フィルターを通るようにしている。
【0028】
光触媒フィルター150の模式図を図3に示す。光触媒フィルター150は、酸化チタンを主成分とし、例えば横幅W=90mm、高さH=30mm、厚さT=10mmの直方体で、気流を通すための5mm程の四角い穴150Hが多数(例えば100個)あいたものを4個用いている。
【0029】
<光触媒フィルター付ユニットなどの脱着機構>
光触媒フィルター150には、使用につれてホコリがたまるため、取り外してメンテナンスが可能なことが好ましい。しかし、本実施形態では、光触媒フィルター150が取り外しにくい光触媒付送風機100の上側に設置されている。さらに光触媒フィルター150が複数(ここでは4個)あるため、単純に考えると、下カバー112を取り外したのち、さらに4つの光触媒フィルター150をそれぞれ取り外し、メンテナンスの上、4個の光触媒フィルター150の取り付け、下カバー112の取付を行うこととなり、作業が煩雑である。
【0030】
そこで、図2のD-D‘線に沿った脱着機構の左半分の断面図である図4(a)及びその部品斜視図である図4(b)に示すように、4個の光触媒フィルター150が、ファン120の外側に設けられた下カバー112の上面に固定され、ボタン部品171を含む全体として光触媒フィルター付ユニット150Gとして一体化されている。脱着機構170により光触媒フィルター付ユニット150Gが一体的に取り外し・取り付けできる構造となっている。光触媒フィルター付ユニット150Gにフィン182が含まれてもよい。なお、係止部品175は一体的に取り外されない部材なので、光触媒フィルター付ユニット150Gには含まれない。
【0031】
脱着機構170は、ボタン部品171、係止部品175及びこれらの部品を支持するその他の部品よりなる。図4(b)に示すように、ボタン部品171は、ボタン171B、スプリング部171S、穴部171H及び支持部171Kを備える。係止部品175は、先端が斜めになった先端部175Tとバネ部175Sを備える。
【0032】
ボタン171Bは、下カバー112の側面における対角線上に2つ設けられている。両手で下カバー112を支え、指で2つのボタン171Bを内側に押すと、ボタン部品171全体が内側に動き、支持部171Kと先端部175Tとの係止が外れるため、光触媒フィルター付ユニット150G全体を下げて他の部分から取り外すことができる。
【0033】
光触媒フィルター150のメンテナンスの後で、光触媒フィルター付ユニット150Gを下から押し当てると、先端部175Kと支持部171Kが当たるが、バネ部175Sの先端部175Kが斜めになっているため、弾力で先端部175Kが穴部171Hを通過し、光触媒フィルター付ユニット150Gが取り付けられる。
【0034】
さらに、落下防止のため、光触媒フィルター付ユニット150Gの下カバー112は、ファン120と、図1に示す落下防止ワイヤー113により締結されている。そのため、下カバー112の脱着時に誤って手を放しても、光触媒フィルター付ユニット150Gが床に落下することはない。落下防止ワイヤー113をファン120に接続している連結フック123から取り外すことにより、光触媒フィルター付ユニット150Gを取り外すことができる。
【0035】
<フィン>
図1に示すフィン182は、気流を整流する作用を有し、特に天井側に送風するモードにおいて、天井に沿って送風する際に有用であり、後述する図6において、風速毎秒1m以上となる半径rを大きくする効果がある。フィン182の向きは固定としてもよく、外側に行くにつれて斜め上向きあるいは下向きになるように可変としてもよい。
【0036】
<LED基板と光源>
光触媒照射用の光源141を配置したLED基板140を、「風向き調整ベース130」側に設けて、励起光を光触媒フィルター150に照射する。LED基板140は、図2に示す柱145により保持されている。光源141を中心軸A側に設けているため、電源162から光源141への配線を短くすることができる。光源141としては、例えば表面実装型の、波長405nmのGaN(窒化ガリウム)系LEDを用いることができる。
【0037】
「LED基板140」の上下の幅を横通風口180の上下の幅の例えば1/4程度とすることにより、気流の障害になりにくくするとともに、気流がLED基板140を冷却し、光源141の発光効率を向上させることができる。
【0038】
<電源>
背面プレート135の上には、ファン120用及び光源141駆動用の2つの出力の電源162と、電源162が有するスロットに着脱可能に装着される無線通信モジュール163を備え、電源162とは制御装置195からの無線制御信号に応じて2出力を独立に制御可能である。なおファン120用の出力は、ファンの正転・反転を制御できるよう極性を反転可能である
ファン120は回転方向を正・逆切り替え可能なDCモーターである。そのような運転切り替えは制御装置195による制御で電源162の出力を反転させることにより行われる。また、風量を例えば強弱2段階、あるいはより細かい段階の制御をすることができる。
【0039】
<使用>
<動作モード>
光触媒付送風機100は、風量は弱、中、強の3段階、光触媒はOFF、ONの2通り、風向きは下向き、横向きの2通り、すべての組み合わせとして12通りの動作が可能である。
【0040】
しかし、12通りもあると使用時にどのモードを選択すべきか使用者が悩むので、通常の使用時は以下のようにモードを限定している。
【0041】
風量弱:光触媒はON。風向きは横向きと下向きが可能
風量中・強:光触媒はOFF。風向きは横向きと下向きが可能。
【0042】
光触媒ONを風量弱の場合に限定しているのは、光触媒効果を有する気流が強風時に薄まってしまうからだが、光触媒フィルター・励起光源の今後の改善により、風量強かつ光触媒ONのモードを実用的なものとすることも考えられる。
【0043】
このような複雑な制御動作を、無線制御する事により、有線信号線施工の必要性がなく、施工日程及び施工費を軽減することが可能である。
【0044】
合わせて、複数の送風機の動作の制御を可能とし、施工後の運転モードやスケジュール運転の変更も可能とした。
【0045】
<下向きの送風>
図5は光触媒付送風機100を用いた設置場所である室内での送風状態を説明するための説明図である。設置場所の例としては、冷蔵・冷凍装置を設置したスーパーマーケットを想定している。
【0046】
通常の家やオフィスでも床面近くに冷気がたまる傾向があるが、冷蔵・冷凍装置197、198を設置したスーパーマーケットではその傾向がより顕著になり、通路床面196に冷気Cがたまる。そこで、スーパーマーケットの営業時間など、人が滞在する時間中に、天井190に設置された光触媒付送風機100を下向き送風モードとし、天井付近の暖かい風Wを室内下方に送風することにより、室内の温度の均一化を図り、冷暖房効率の向上及び快適性の向上を図ることができる。
【0047】
<天井側への送風>
図6は光触媒付送風機100を用いた室内天井側への送風状態を説明するための説明図である。光触媒付送風機100を横向き送風モードとし、天井190に沿って気流H2を流すことにより、天井面の結露を防止し、防カビ効果を得ることができる。
【0048】
光触媒付送風機100は、下通風口110から気流を吸入し、内部で光触媒フィルター150を通過した気流が、横通風口180より全周方向に気流H2として吹き出され、天井190に沿って流れる。半径rが2m以内の範囲で風速が毎秒1m以上となり、半径2mの範囲内で防カビ効果が得られる。
【0049】
このような光触媒付送風機100を例えば4m間隔で設置することにより、天井面全体に風を送ることができる。
【0050】
<防カビ効果>
天井面あるいは下向きに送風するだけでも結露防止などの作用により防カビ効果が得られることが知られているが、単なる送風に比べ、光触媒フィルターを用いた本装置の送風により防カビ効果が増しているのかを、以下のようにして調べた。
【0051】
2台の光触媒付送風機100を、それぞれ上下逆向きに机の上に設置した。
【0052】
1台の光触媒付送風機100は光源を点灯し、もう1台は光源を点灯せず、2m先にパンを置いて送風し、パンにカビが生えるまでの日数を調べた。
【0053】
2020年10月の実験(一測定例では室温25℃湿度50%程度の環境下だが、の温度・湿度で一定に制御しているわけではない)では、光触媒フィルターへの光照射なしで8日、光触媒フィルターへの光照射ありで10日目にカビ発生、という結果が得られた。
【0054】
以上の簡易的な実験により、ある程度の防カビ効果があることが確かめられた。実際にはカビの胞子は重いため、この実験では光触媒付送風機100から送風によってカビの胞子が運ばれるだけでなく、上からも落下してくると考えられる。天井設置の場合では、カビの胞子の上からの落下がないため、より防カビ効果が高いと想定される。
【0055】
<抗ウイルス効果>
光触媒付送風機100と類似の構成を有する、酸化チタンを用いた光触媒フィルターと波長405nmの光源を用いた空気清浄機で、120リットルの密閉型チャンバー内にエアロゾル化したウイルス(SARS-CoV-2)を噴霧して20分動作させ、ウイルス感染価が検出限界以下になったとのことである。実際には装置の違いの他、室内の空気の体積が120リットルよりかなり大きいこともあり、断定的なことは言えないが、原理的には光触媒が抗ウイルス効果を有すると考えられ、例えば人にスポット的に清浄化した空気を送ることにより、ウイルス感染防止に役立つ可能性があると考えられる。
【0056】
<その他の効果>
光触媒フィルターメーカ―の記載によれば、ウイルスの失活の他に、有機物質の分解による脱臭、殺菌(除菌)作用などの効果があるとされている。
【0057】
<運転制御>
下向きの送風モードと天井面への横向きの送風モードは、人の滞在する時間、人の滞在しない時間に応じて切り替えるとよい。
【0058】
例えば図7(a)及び(b)に示す、本光触媒付送風機をスーパーマーケットに設置する例では、夏の営業日の開店中は図7(a)のように「下向き送風(風量強)」モード、冬の営業日の開店は図7(b)のように「横向き送風(風量強)」モード、夏・冬とも閉店中及び非営業日は「横向き送風(風量弱)・光触媒」モードとするスケジュールをスマートホンなどの制御装置にプログラムすることにより、開店中は強風による室内の還流効果により冷暖房効率を保つことができ、閉店中及び非営業日は光触媒効果により天井面の防カビ効果を得ることができる。なお、冬の開店中は天井面の結露防止を重視し、横向き送風(風量強)としているが、夏の開店中は床近傍の冷え過ぎを防止するため、下向き送風(風量強)としている。このように、運転モードは、気温・開店/閉店などの状況に応じ、適宜調整するとよい。
【0059】
通常のオフィスでも、執務時間中は下向きの風を送り、執務時間外は天井面に沿って風を送ることにより、室内温度を均一化することによる執務者の快適性向上・省エネルギー化と、天井面の防カビを図ることができる。
【0060】
このような運転の切り替えは、制御装置195(図示せず)を別途設置し、制御装置195から発した無線、光または有線の制御信号を各光触媒付送風機100に伝送することにより行うことができる。制御装置195は、スケジュールされたプログラムにより、時間帯による運転制御の他、休日は終日「人の滞在しない時間の動作」を行うように制御することができる。
【0061】
制御装置としては、パソコン、タブレット、スマートホン、専用端末などを用いることができる。
【0062】
<実施形態2>
<構成>
本実施形態に係る光触媒付送風機200は、照明用の配線ダクト292に接続するタイプであり、配線ダクトに沿って設置位置を自由に変更することができるため、任意の場所を送風することができる。また、風向きを真下だけでなく斜めに変えることもできるので、特に除菌効果を有する風を特定の個所に送風する用途に好適である。図8は本実施形態に係る光触媒付送風機200の断面模式図である。
【0063】
光触媒付送風機200は、下通風口210、下カバー212、ファン220、側面部230Sを備える風向き調整ベース230、背面プレート235、LED基板240、光触媒フィルター250、上カバー260、アーム275、横通風口280、フィン282を備える。上カバー260と背面プレート235の間には、電源262が備えられ、アーム275とつながる横ジョイント部276が上カバー260の側面に設けられ、アーム275の上に設けられた上ジョイント部277が天井290に設けられた配線ダクト292に取り付けられる。
【0064】
光触媒付送風機200が配線ダクト292に取り付けられて固定設置されるとともに、配線ダクト292から配線278によって電源262に給電される。横ジョイント部276により光触媒付送風機200の向きが変えられる。
【0065】
図8において、フィン282を外側において上向きにしているのは、LED241から外部に漏れる光を防ぐ効果を兼ねさせているためだが、フィン282とは別に光遮蔽板を設置してもよい。
【0066】
電源262は、ファン220用及び光源241駆動用の2つの出力を有する。電源262にはスロットがあり、スロットに着脱可能に装着される無線通信モジュール263を備え、無線通信モジュール263は外部からの制御信号を元に電源262の2つの出力を制御する。
【0067】
中心軸Aを取り囲むように、横通風口280が設けられている。横通風口280から吸気された気流Hは光触媒フィルター250を通過し、風向き調整ベース230で下向きの気流になり、ファン220を経て下通風口210より下向きの気流Vとして送風される。
【0068】
なお、光源241が外側(中心軸Aから外方向)に光を出射し、光触媒フィルター250より外側に向かう光があり、この光触媒付送風機200の向きが変えられ光が人に届く場合があるため、光遮蔽板を設けてもよい。
【0069】
<使用>
<斜め下向きの送風>
図9は光触媒付送風機200を用いた室内下向きの送風状態を説明するための説明図である。光触媒付送風機200の向きは可変であり、風を当てたい場所に送風することができる。本送風機を使用する場所の例としては、冷蔵・冷凍装置を設置したスーパーマーケットのうち、特に人が密になる場所、例えばレジの行列の上における除菌・抗ウイルス目的を想定している。また、果物などカビの生えやすい生鮮食品に直接送風し、防カビを行う用途も想定している。暖気のたまる上側から冷気のたまる下側への送風なので、室内の温度均一化による省エネルギー効果及び快適性の向上も得られる。
【0070】
<運転制御>
下向きの送風は、人の滞在する時間に行い、人の滞在しない時間に停止するか、弱めるとよい。
【0071】
例えばスーパーマーケットでは、閉店中はオフ、開店中は風量「弱」・光触媒オンとすることにより、開店中は冷暖房効率を保ちつつ滞在者周辺の抗ウイルス効果を得ることができる。このような運転例を図10に示す。
【0072】
このような運転の切り替えは、スケジュールがプログラムされた制御装置295(図示せず)を別途設置し、制御装置295から発した無線、光または有線の制御信号を各光触媒付送風機200に伝送することにより行うことができる。制御装置295は、時間帯による運転制御の他、例えば「閉店時も常時又は時々ON」として室内清浄化や防カビ目的の送風を行ったり、休日は終日「人の滞在しない時間の動作」を行うように制御することができる。
<実施形態3>
<構成>
本実施形態に係る光触媒付送風機300は、天井に埋め込むタイプであり、下向きの送風のみを行う用途を想定している。
【0073】
図11は本実施形態に係る光触媒付送風機300の断面模式図、図12は説明のため天井を切断した斜視図である。
【0074】
光触媒付送風機300は、下通風口310、下カバー312、羽321を有するファン320、側面部330Sを備える風向き調整ベース330、背面プレート335、LED基板340、光触媒フィルター350、上カバー360、外カバー365、内部横通風口380、気道385、第2下通風口386、取付枠387、バネ388を備える。LED基板340に光源341が搭載され、上カバー360と背面プレート335の間には、ファン320用及び光源341駆動用の2つの出力の電源362が備えられている。取付枠387及びバネ388により、天井390に設けられた円形の穴に固定設置される。
【0075】
電源362は、ファン320用及び光源341駆動用の2つの出力を有する。電源362にはスロットがあり、スロットに着脱可能に装着される無線通信モジュール363を備え、無線通信モジュール363はスマートホンなどの制御装置395(図示省略)からの制御信号を元に電源362の2つの出力を制御する。
【0076】
<吸排気機構>
光触媒付送風機300においては、気流Vの送風口である下通風口310も、気流Uの吸気口である第2下通風口386も、下面に設けられており、下面図において第2下通風口386は下通風口310を取り囲むように設けられている。内部横通風口380とつながる第2下通風口386を下面に設けるため、2つの円筒の間の隙間として気道385を備えている。
【0077】
<使用方法>
光触媒付送風機300は、天井面に沿った送風はできないので、下向きの送風専用となり、適宜光触媒をONにして除菌・抗ウイルス効果を有する正常な空気を室内に循環させ、冷暖房効率を上げることができる。天井面をすっきりさせたい場合に、天井面から突出しないため好適に用いることができる。
【0078】
<変形例>
以上、本発明に係る光触媒付送風機の実施形態を説明したが、例示した光触媒付送風機を例えば以下のように変形することも可能であり、本発明が上述の実施形態で示した通りの光触媒付送風機に限られないことは勿論である。
【0079】
(1)本明細書において、通風口は「吸気口、排気口、または吸排気口」を含む。つまり、「通風口」は構造上の開口であって、組み合わせて用いるファンが正逆回転可能でない場合には、「吸気口」「排気口」の一方の機能しか有しないものを含む。
【0080】
(2)実施形態3のように、内部横通風口からさらに気道によって外部に通じる別の通風口に導かれる構造であっても「横通風口」がある構造である。同様に下通風口からさらに気道によって外部に通じる別の通風口に導かれてもよい。
【0081】
(3)光触媒フィルターの主材料としては、酸化チタンの他に、酸化亜鉛、三酸化タングステンなどであってもよい。主材料に適宜添加物を加えることにより、光吸収波長を変えるなど光触媒としての性質を制御することができる。
【0082】
(4)光触媒フィルターとしては、図2に示すように4つの長方形状の光触媒フィルターを組み合わせているが、実施形態1などでは、本来であれば横通風口の形状に合わせて円周状とすることが望ましい。ただそのような形状の光触媒フィルターは製造が難しいため、分割した長方形状の光触媒フィルターを組み合わせるのが実際的である。その個数としては、3個、6個、8個など特に限定されない。
【0083】
(5)光触媒フィルター内に設けられる穴は、表面が四角形の穴としたが、六角形など他の形状であってもよい。
【0084】
(6)光源としては、GaN系LEDを用い、例えば波長405nmのものとしているが、光触媒の波長感度に応じて光源の波長を選ぶことが好ましく、例えば波長254nmから波長460nmの光源を用いることが好ましい。中でも近紫外領域、例えば波長360nm~420nmのGaN系紫外線・紫色LEDは、比較的発光効率(光のmW/投入電力のmW)が高いとともに、一般的な酸化チタン系光触媒の作用効率が高い波長であるため好ましい。
【0085】
(7)光源の設置位置としては、光触媒フィルターと風向き調整ベースの間に設けた例を示したが、例えば背面プレート側に設置し、光を斜め下向きに照射して光触媒フィルターを活性化してもよい。その場合、風の流路に光源を設置しないため、気流に対する流路抵抗が小さくなる。
【0086】
(8)下通風口、横通風口は、気流の入口・出口であるが、実施形態3における「内部横通風口」など、直接外部と接していない通風口も、通風口と呼ぶこととする。
【0087】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0088】
100、200、300 光触媒付送風機
110、210、310 下通風口
112、212、312 下カバー
120、220、320 ファン
130、230、330 風向き調整ベース
130S、330S 側面部
140、240、340 LED基板
141、241、341 光源
150、250、350 光触媒フィルター
150G 光触媒フィルター付ユニット
150H 穴
162、262、362 電源
163、263、363 無線通信モジュール
180、280 横通風口
182、282 フィン
190、290、390 天井
195、195、395 制御装置
196 通路床面
197、198 冷蔵・冷凍装置
275 アーム
276 横ジョイント部
277 上ジョイント部
278 配線
292 配線ダクト
380 内部横通風口
385 気道
386 第2下通風口
387 取付枠
388 バネ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12