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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135375
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】暖房装置操作システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/00 20220101AFI20220908BHJP
【FI】
F24H3/02 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035137
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】萩原 伸一
(72)【発明者】
【氏名】石木 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 開斗
【テーマコード(参考)】
3L028
【Fターム(参考)】
3L028EA01
3L028EB01
3L028EC04
3L028ED04
(57)【要約】
【課題】外部通信端末を用いて遠隔操作することが可能でありながら、温風吹き出し口の近傍に置かれている物体を加熱させることなく、暖房運転を良好に行うことが可能な暖房装置操作システムを提供する。
【解決手段】加熱手段にて加熱された空気を暖房対象に向けて吹き出す温風吹き出し部17Bと、外部通信端末との間で各種情報を通信可能な装置側通信手段と、加熱手段の作動を制御する作動制御手段と、が備えられ、温風吹き出し部17Bに、温風の吹き出し方向を上下方向に角度変更可能な風向変更手段14が備えられ、作動制御手段は、外部通信端末より暖房装置の運転開始を指令する運転開始情報を受信すると、暖房運転を開始し、かつ、温風の吹き出し方向が水平方向よりも上向きの方向となるように、風向変更手段14の作動を制御する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房装置と、前記暖房装置を遠隔操作可能な外部通信端末とが備えられ、
前記暖房装置に、暖房対象を加熱する加熱手段と、前記加熱手段に向けて空気を流動させる送風手段と、前記加熱手段にて加熱された空気を前記暖房対象に向けて吹き出す温風吹き出し部と、前記外部通信端末との間で各種情報を通信可能な装置側通信手段と、前記加熱手段の作動を制御する作動制御手段と、が備えられている暖房装置操作システムであって、
前記温風吹き出し部に、前記暖房対象に向けて吹き出される温風の吹き出し方向の角度を変更可能な風向変更手段が備えられ、
前記作動制御手段は、
前記外部通信端末より前記暖房装置の運転開始を指令する運転開始情報を受信すると、暖房運転を開始するように、前記加熱手段及び前記送風手段の作動を制御し、かつ、前記温風の吹き出し方向が水平方向よりも上向きの方向となるように、前記風向変更手段の作動を制御する暖房装置操作システム。
【請求項2】
前記作動制御手段は、
前記運転開始情報に基づく暖房運転を開始するときは、前記加熱手段による加熱量を最大加熱量よりも少ない加熱量に制御する請求項1に記載の暖房装置操作システム。
【請求項3】
前記暖房対象の温度を検出する温度検出手段が備えられ、
前記作動制御手段は、
前記運転開始情報に基づく暖房運転において、前記温度検出手段にて検出される前記暖房対象の温度が目標温度になるように、前記加熱手段による加熱量を調整する温度調整制御を実行するように構成され、かつ、
前記温度調整制御を実行しているときに、前記加熱手段による加熱量が最大加熱量であれば、前記温風の吹き出し方向が上下調整範囲の最大上向き位置となり、
前記加熱量が前記最大加熱量よりも小さい加熱量であれば、前記温風の吹き出し方向が最大上向き位置よりも下側となるように、前記風向変更手段の作動を制御する請求項1又は2に記載の暖房装置操作システム。
【請求項4】
前記作動制御手段は、
前記運転開始情報に基づく暖房運転を開始してから設定時間が経過したのちに、暖房運転を停止させるように構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の暖房装置操作システム。
【請求項5】
前記作動制御手段は、
前記運転開始情報に基づく暖房運転を実行しているとき、前記外部通信端末より前記暖房装置の運転停止を指令する運転停止情報を受信すると、前記運転開始情報に基づく暖房運転を停止するように構成され、かつ、前記外部通信端末からは前記運転停止情報以外の情報は受け付けないように構成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の暖房装置操作システム。
【請求項6】
前記暖房装置に、使用者による直接的な操作が可能な運転操作部が備えられ、
前記作動制御手段は、
前記運転開始情報に基づく暖房運転を実行しているときに、使用者による前記運転操作部に対する所定の操作が行われると、前記運転開始情報に基づく暖房運転を停止し、かつ、前記運転操作部の操作に基づく暖房運転に切り替わるように構成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の暖房装置操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房装置と、前記暖房装置を遠隔操作可能な外部通信端末と、が備えられている暖房装置操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記暖房装置操作システムは、例えば、スマートフォン等の外部通信端末を用いて、ガスファンヒータ等の暖房装置の遠隔操作が可能なように構成したものであり、このような外部通信端末を用いて暖房装置から離れた箇所から遠隔操作することができる。
【0003】
このようなシステムにおいて、従来では、暖房装置に対して外部通信端末から運転開始を指令する運転開始情報が通信されると、暖房装置側の状況の違いにかかわらず、ガスバーナ等の暖房用の加熱手段による加熱作動を開始して暖房運転を行うように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-44997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
暖房対象である住居内の部屋においては、暖房装置の温風吹き出し口の前方に、衣服、本、あるいは、密封された缶の内部に気体が封入されているスプレー缶等、加熱されることは避けたほうがよい物体が置かれている場合がある。
【0006】
上記従来構成では、外部通信端末から運転開始が指令されたときに、外部通信端末の使用者は、暖房対象である住居内の部屋の状況が分からない場合があり、運転開始を指令したときに、暖房装置の温風吹き出し口の近傍に上述したような物体が存在している場合がある。このような状況であれば、物体に温風が当たり続けて物品が過度に加熱されて高温になり、例えば、物体が焼損したり、破損したりする等のおそれがある。
【0007】
このような問題を解消するために、暖房装置における温風吹き出し部の前方に物体が存在しているか否かを検知する物体検知センサを設けて、物体の存在を検知すると暖房運転を実行しないように運転制御を行う構成、あるいは、暖房装置の前方の状況を撮影可能な撮像手段を備えて、画像情報を解析して上記したような物体の存否を判別する構成等が考えられるが、このような構成では正確な判別は難しく、例えば、温風が当たっても問題の無い物体が存在している場合であっても、暖房運転を行うことができない等、利便性が低下する不利がある。
【0008】
本発明は、外部通信端末を用いて暖房装置から離れた箇所から遠隔操作することが可能でありながら、温風吹き出し口の近傍に置かれている物体を過度に加熱させることなく、暖房運転を良好に行うことが可能な暖房装置操作システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る暖房装置操作システムの特徴構成は、
暖房装置と、前記暖房装置を遠隔操作可能な外部通信端末と、が備えられ、
前記暖房装置に、暖房対象を加熱する加熱手段と、前記加熱手段に向けて空気を流動させる送風手段と、前記加熱手段にて加熱された空気を前記暖房対象に向けて吹き出す温風吹き出し部と、前記外部通信端末との間で各種情報を通信可能な装置側通信手段と、前記加熱手段の作動を制御する作動制御手段と、が備えられている暖房装置操作システムであって、
前記温風吹き出し部に、前記暖房対象に向けて吹き出される温風の吹き出し方向の角度を変更可能な風向変更手段が備えられ、
前記作動制御手段は、
前記外部通信端末より前記暖房装置の運転開始を指令する運転開始情報を受信すると、暖房運転を開始するように、前記加熱手段及び前記送風手段の作動を制御し、かつ、前記温風の吹き出し方向が水平方向よりも上向きの方向となるように、前記風向変更手段の作動を制御する点にある。
【0010】
本構成によれば、外部通信端末より暖房装置の運転開始が指令されると、暖房装置が暖房運転を開始する。そのとき、風向変更手段は、温風の吹き出し方向が水平方向よりも上向きの方向となる状態で暖房対象に向けて温風を吹き出す。
【0011】
その結果、例えば、温風吹き出し口の前方に、加熱されることは避けたほうがよい物体が置かれている場合であっても、温風吹き出し部から吹き出される温風が水平方向よりも上向きの方向に向かうので、温風が上記したような物体に直接に吹き付けることがなく、物体が過度に加熱されることを回避することができる。
【0012】
一方、暖房対象である室内空間に対しては、上向きに温風が吹き出されるので、暖房運転は適切に行うことができる。
【0013】
従って、外部通信端末を用いて暖房装置から離れた箇所から遠隔操作することが可能でありながら、温風吹き出し口の近傍に置かれている物体を過度に加熱させることなく、暖房運転を良好に行うことが可能な暖房装置操作システムを提供できるに至った。
【0014】
本発明に係る暖房装置操作システムの更に別の特徴構成は、
前記作動制御手段は、前記運転開始情報に基づく暖房運転を開始するときは、前記加熱手段による加熱量を最大加熱量よりも少ない加熱量に制御する点にある。
【0015】
本構成によれば、外部通信端末より暖房装置の運転開始が指令されて、暖房運転を開始するときには、温風の温度が最大加熱量で加熱される場合よりも低い温度になるので、上記したような物体に対する過度の加熱のおそれをより一層少なくすることができる。
【0016】
本発明に係る暖房装置操作システムの別の特徴構成は、
前記暖房対象の温度を検出する温度検出手段が備えられ、
前記作動制御手段は、前記運転開始情報に基づく暖房運転において、前記温度検出手段にて検出される前記暖房対象の温度が目標温度になるように、前記加熱手段による加熱量を調整する温度調整制御を実行するように構成され、かつ、前記温度調整制御を実行しているときに、前記加熱手段による加熱量が最大加熱量であれば、前記温風の吹き出し方向が上下調整範囲の最大上向き位置となり、前記加熱量が前記最大加熱量よりも小さい加熱量であれば、前記温風の吹き出し方向が最大上向き位置よりも下側となるように、前記風向変更手段の作動を制御する点にある。
【0017】
本構成によれば、加熱手段による加熱量が最大加熱量であれば、温風吹き出し部から吹き出される温風が高温になっているが、このような高温の温風であっても、温風の吹き出し方向が最大上向き位置となっているから、温風吹き出し口の前方に、加熱されることは避けたほうがよい物体が置かれている場合であっても、その物体に温風が吹き付けられることを回避できるので、加熱による不具合は生じにくい。そして、このような高温の温風を吹き出すことにより、暖房対象の暖房を良好に行うことができる。
【0018】
暖房を行う場合、暖房対象である室内空間を効率よく暖房するためには、低い位置に向けて温風を吹き出す方が空間全体を温め易い。そこで、例えば、最大加熱量で加熱した温風により暖房対象の温度が上昇したのち等において、加熱量を最大加熱量よりも小さい加熱量に調節しているときには、上記したような物体に対する過度の加熱のおそれは少なくので、温風の吹き出し方向を下側に変更させることにより、暖房効率の低下を回避することができる。
【0019】
本発明に係る暖房装置操作システムの更に別の特徴構成は、
前記作動制御手段は、前記運転開始情報に基づく暖房運転を開始してから設定時間が経過したのちに、暖房運転を停止させるように構成されている点にある。
【0020】
本構成によれば、外部通信端末により遠隔操作にて暖房運転の開始が指令された場合に、暖房運転を開始してから使用者が暖房対象となる室内空間に戻らないことがある。この場合には、暖房運転が無駄になる。そこで、暖房運転を開始してから設定時間が経過したのちに暖房運転を停止させることにより、長い間、無駄な暖房運転が継続することを防止することができる。尚、暖房対象である空間に使用者がいれば、再度、運転開始を指示することができるので問題はない。
【0021】
本発明に係る暖房装置操作システムの更に別の特徴構成は、
前記作動制御手段は、前記運転開始情報に基づく暖房運転を実行しているとき、前記外部通信端末より前記暖房装置の運転停止を指令する運転停止情報を受信すると、前記運転開始情報に基づく暖房運転を停止するように構成され、かつ、前記外部通信端末からは前記運転停止情報以外の情報は受け付けないように構成されている点にある。
【0022】
本構成によれば、外部通信端末により遠隔操作にて暖房運転の開始が指令された場合には、その後、外部通信端末からは暖房装置の運転停止を指令することができるが、それ以外の操作は受け付けない。その結果、温風吹き出し口の前方に、加熱されることは避けたほうがよい物体が置かれている場合に、誤って、温風の吹き出し方向の変更が指令される等のおそれを回避できる。
【0023】
本発明に係る暖房装置操作システムの更に別の特徴構成は、
前記暖房装置に、使用者による直接的な操作が可能な運転操作部が備えられ、
前記作動制御手段は、前記運転開始情報に基づく暖房運転を実行しているときに、使用者による前記運転操作部に対する所定の操作が行われると、前記運転開始情報に基づく暖房運転を停止し、かつ、前記運転操作部の操作に基づく暖房運転に切り替わるように構成されている点にある。
【0024】
本構成によれば、外部通信端末からの指令により暖房運転を実行しているときであっても、運転操作部に対する所定の操作が行われた場合には、その指令内容を優先して、運転操作部の操作に基づく暖房運転を実行する。これにより、暖房装置の近くにいる使用者が希望する運転動作を実行することができ、使い勝手がよいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】暖房装置操作システムの全体構成図である。
図2】暖房装置操作システムの制御構成を示すブロック図である。
図3】ガスファンヒータの正面図である。
図4】ガスファンヒータの縦断右側面図である。
図5】ガスファンヒータの運転操作部を示す平面図である。
図6】ガスファンヒータの制御動作のフローチャートを示す図である。
図7】ガスファンヒータの制御動作のフローチャートを示す図である。
図8】遠隔運転状態におけるガスファンヒータの縦断右側面図である。
図9】通常運転状態におけるガスファンヒータの縦断右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態で例示する暖房装置操作システムは、ガスファンヒータ(暖房装置の一例)1と、ガスファンヒータ1を遠隔操作可能なスマートフォン(外部通信端末の一例)2と、を備えている。
【0027】
〔ガスファンヒータについて〕
図2図4に示すように、ガスファンヒータ1は、使用者による直接的な運転操作を可能にする運転操作部11、燃料(天然ガス)を燃焼させて暖房対象の流動空気を加熱するガスバーナ(加熱手段の一例)12、ガスバーナ12に向けて空気を流動させる送風手段としての送風ファン13、温風吹き出し部17Bから吹き出される温風の吹き出し方向を上下方向に角度変更可能な風向変更手段としてのオートルーバ14、スマートフォン2との無線通信を可能にする装置側通信手段15、ガスバーナ12や送風ファン13等の作動を制御する作動制御手段としての装置側制御手段16等を備えて構成されている。
【0028】
運転操作部11は、筐体17の上部に配備されている。図2及び図5に示すように、運転操作部11は、使用者により操作されるスイッチ類として、ガスファンヒータ1の運転開始操作と運転停止操作とを可能にする運転スイッチ11A、おはようタイマー機能の選択を可能にするおはようタイマースイッチ11B、おやすみタイマー機能の選択を可能にするおやすみタイマースイッチ11C、使用者によるエコ運転機能の選択を可能にするエコ運転スイッチ11D、使用者によるスマートフォン2との無線通信の接続設定を可能にする接続設定スイッチ11E、及び、使用者による設定温度と設定時間の変更を可能にする設定スイッチ11F、オートルーバ14の吹き出し方向を変更設定するルーバスイッチ11G、スマートフォン2からの指令に基づく暖房運転(以下、遠隔運転という場合がある)を解除する解除スイッチ11H、を備えている。
【0029】
運転操作部11は、ガスファンヒータ1の状態を知らせる報知器類として、ガスファンヒータ1の運転開始に伴って点灯する運転ランプ11a、おはようタイマー機能の選択に伴って点灯するおはようタイマーランプ11b、おやすみタイマー機能の選択に伴って点灯するおやすみタイマーランプ11c、エコ運転機能の選択に伴って点灯するエコ運転ランプ11d、スマートフォン2との通信接続に伴って点灯する通信ランプ11e、及び、設定温度と現在室温又はタイマー設定時間などを文字表示又は記号表示する表示部11f、遠隔運転を実行中であることを示す遠隔運転表示ランプ11g、を備えている。
【0030】
図2図4に示すように、ガスバーナ12は、燃料ガスと燃焼用空気との混合気を燃焼させる燃焼器12A、燃焼器12Aに向けて燃料ガスを噴射することで燃料ガスと燃焼用空気とを混合させる噴射ノズル12B、噴射ノズル12Bに燃料ガスを案内するガス管12C、ガス管12Cを開閉する第1電磁弁12Dと第2電磁弁12E、及び、燃料ガスの流量調節を可能にする比例弁12Fを備えている。燃焼器12Aは、その燃焼室12aに案内された燃料に点火する点火器12b、及び、着火による火炎を検出して火炎の立ち消え検知を可能にする火炎センサ12cを備えている。
【0031】
図4に示すように、ガスファンヒータ1の筐体17は、その背面に吸込口17Aが形成され、前面に温風吹き出し部17Bが形成されている。筐体17の背部には、吸込口17Aから吸い込まれる空気から塵埃を取り除く塵埃捕捉用のエアフィルタ18、及び、吸込口17Aから吸い込まれる空気の温度を現在室温として検出する温度検出手段としての温度センサ19が配備されている。
【0032】
送風ファン13は、ファンモータ13Bの作動でクロスフローファン13Aが回転することにより、筐体17の吸込口17Aから外気を吸い込む。吸い込まれた空気の一部は、燃焼用空気として燃料ガスと混合されて燃焼室12aに供給される。残りの空気は、燃焼器12Aを迂回し、燃焼室12aからの燃焼排ガスと混合されて昇温した後、温風吹き出し部17Bから吹き出される。昇温した流動空気が温風吹き出し部17Bから吹き出させることで、暖房対象の室内を温める。
【0033】
オートルーバ14は、温風吹き出し部17Bにおける温風が通過する箇所に上下方向に間隔をあけて設けられた複数の羽板14Aと、各羽板14Aの左右両側において幅方向中央部を回動可能に支持する支点部材14Bと、複数の羽板14Aの姿勢を変更操作可能な駆動モータ(以下、ルーバモータという)14Cと、ルーバモータ14Cが駆動することによって上下に移動操作される操作部材14D、とを備えている。
【0034】
オートルーバ14は、運転操作部11に備えられたルーバスイッチ11Gのうち、上向き用スイッチが操作されると温風の吹き出し方向が上向きに変更され、下向き用スイッチが操作されると温風の吹き出し方向が下向きに変更されるように、ルーバモータ14Cが作動する。
【0035】
複数の羽板14Aは、横方向に沿って延びる帯板状に形成され、各羽板14Aは左右両側において幅方向中央部が支点部材14Bにより回動可能に支持されている。各羽板14Aの装置内方側端部に操作部材14Dが枢支連結されている。ルーバモータ14Cが作動することにより、複数の羽板14Aが一体的に向きを変更して、温風の吹き出し方向を上下に変更させることができる。例えば、吹き出し方向が水平となる状態から吹き出し方向が水平に対して約50度上向きとなる状態の範囲で変更可能である。
【0036】
装置側通信手段15は、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))による無線通信を可能にするブルートゥースモジュール(以下、BTモジュールと称する)15Aを備えている。
【0037】
装置側制御手段16は、演算処理機能及び情報記憶機能等を有するマイクロコンピュータ等から構成されている。装置側制御手段16は、運転操作部11の操作に基づいて、ガスバーナ12、送風ファン13、及び、装置側通信手段15の作動を制御するように構成されている。
【0038】
装置側制御手段16は、ガスファンヒータ1の運転停止中に、運転スイッチ11Aの操作により、又は、後述するようなスマートフォン2の操作により、運転開始が指令されると、ガスファンヒータ1の運転を開始させる運転開始処理を実行する。この運転開始処理では、装置側制御手段16は、ガスバーナ12を燃焼させて流動空気の加熱を開始する。
【0039】
装置側制御手段16は、運転開始処理を実行したのち、温度センサ19にて検出される暖房対象の温度が目標温度になるように、ガスバーナ12による加熱量を調整する温度調整制御を実行するように構成され、かつ、温度調整制御を実行しているときに、ガスバーナ12による加熱量が最大加熱量であれば、温風の吹き出し方向が上下調整範囲の最大上向き位置となり、加熱量が最大加熱量よりも小さい加熱量であれば、温風の吹き出し方向が最大上向き位置よりも下側となるように、オートルーバ14の作動を制御するように構成されている。
【0040】
装置側制御手段16は、ガスファンヒータ1の運転中に、運転スイッチ11Aにて運転停止操作が行われると、ガスファンヒータ1の運転を停止させる停止処理を実行する。この停止処理では、装置側制御手段16は、第1電磁弁12D及び第2電磁弁12Eを閉弁させて、ガスバーナ12の燃焼作動を停止し、かつ、運転ランプ11aを消灯させた後、送風ファン13を設定時間だけ作動させてガスバーナ12を冷却させる。
【0041】
装置側制御手段16は、おはようタイマースイッチ11Bが操作されると、おはようタイマー機能によって、予め設定された運転開始予定時刻になると運転開始処理を実行する。又、おやすみタイマースイッチ11Cが操作されると、装置側制御手段16は、おやすみタイマー機能によって、設定時間の経過後に停止処理を実行する。エコ運転機能では、通常運転モードの設定温度から1℃下げた温度を制御目標温度とするエコ運転モードでガスバーナ12を作動させる。
【0042】
〔スマートフォンについて〕
図2に示すように、スマートフォン2は、使用者による入力操作を可能にする入力部21、音声を出力する音声出力部22、種々の画像や情報などを表示する表示部23、他の通話機との通話などを可能にする通話機能部24、無線通信を可能にする端末側通信手段25、スマートフォン2の作動を制御する端末側制御手段26などを備えている。入力部21及び通話機能部24は、通常の電話としての機能を有する。
【0043】
端末側通信手段25は、外部のネットワークとのデータ通信や公衆無線回線網を介しての通話機との通信などを可能にする移動通信モジュール25A、及び、ブルートゥースによる無線通信を可能にするブルートゥースモジュール(以下、BTモジュールと称する)25B、を備えている。端末側制御手段26は、演算処理機能及び情報記憶機能などを有するマイクロプロセッサなどから構成されている。
【0044】
ガスファンヒータ1及びスマートフォン2は、それぞれBTモジュール15A,25Bを備えることから、使用者は、ブルートゥースを使用したスマートフォン2によるガスファンヒータ1の無線遠隔操作を可能にする専用のリモコン用アプリケーションをダウンロードしてインストールする。そして、ガスファンヒータ1とスマートフォン2とのペアリング(接続設定)を行うことにより、ブルートゥースを使用したスマートフォン2によるガスファンヒータ1の無線遠隔操作を可能にすることができる。
【0045】
尚、ブルートゥースを使用してガスファンヒータ1とスマートフォン2とを通信接続可能な状態に設定する手順(ペアリング)については、周知の技術であるから、ここでは説明は省略する。
【0046】
ペアリングの完了後は、ガスファンヒータ1の装置側制御手段16に通電されている状態において、スマートフォン2のリモコン用アプリケーションを起動させると、ガスファンヒータ1のBTモジュール15Aとスマートフォン2のBTモジュール25Bとが自動的にブルートゥースを介して通信可能に接続される。
【0047】
スマートフォン2は、ガスファンヒータ1を無線遠隔操作するためのアプリケーションプログラム(以下、遠隔操作アプリと称する)を、インターネット回線を介して外部サーバ27からダウンロード可能に構成されている。ちなみに、この遠隔操作アプリは、ガスファンヒータ1の製造事業者等から提供される。外部サーバ27はガスファンヒータ1の製造事業者等によって管理されている。
【0048】
〔遠隔制御動作〕
スマートフォン2によりガスファンヒータ1を遠隔操作する場合における装置側制御手段16の制御動作について説明する。
【0049】
スマートフォン2における端末側制御手段26は、ガスファンヒータ1の運転を開始するための運転開始情報としての運転開始信号を端末側通信手段25から、ガスファンヒータ1の装置側通信手段15に送信させるように構成されている。
【0050】
スマートフォン2によりガスファンヒータ1を遠隔操作するときは、予めインストールされている遠隔操作アプリを起動させておく必要がある。図示はしていないが、スマートフォン2の端末側制御手段26は、遠隔操作アプリが起動されている状態で使用者により暖房運転開始が指令されると、端末側通信手段25からブルートゥースを介して、ガスファンヒータ1の装置側通信手段15に運転開始信号(運転開始情報)を送信する。
【0051】
次に、装置側制御手段16の制御動作を、図6及び図7に示すフローチャートに基づいて説明する。先ず、図6を参照しながら、スマートフォン2からの運転開始情報に基づく暖房運転における一連の処理について説明する。
【0052】
運転スイッチ11Aにより運転入り指令、すなわち、運転開始操作が行われていない状態で(ステップ♯1)、スマートフォン2の端末側通信手段25から送信される運転開始信号を受信すると(ステップ♯2)、遠隔運転表示ランプ11gを点灯させて、以下のような遠隔運転が行われていることを表示する(ステップ♯3)。そして、温風の吹き出し方向が水平方向よりも上向きの方向となるようにオートルーバ14の作動を制御する。具体的には、温風の吹き出し方向が上下調整範囲の最上向き角度となるようにルーバモータ14Cの作動を制御する(ステップ♯4)。このように風向きを上向きにすることで、例えば、図8に示すように、温風吹き出し部17Bの前方に、密封された缶の内部に気体が封入されているスプレー缶等、加熱されることは避けたほうがよい物体が置かれている場合であっても、温風が吹き付けられて物体が加熱されることを避けることができる。
【0053】
運転開始信号を受信すると、ステップ♯4の処理に加えて、運転開始処理を実行する(ステップ♯5)。すなわち、ガスバーナ12及び送風ファン13を始動させてガスバーナ12による流動空気の加熱を開始させ、運転ランプ11aを点灯させる。ガスバーナ12は、運転開始処理を実行されると、第1電磁弁12D及び第2電磁弁12Eが開弁され、点火器12bが点火作動することで燃焼作動を開始する。
【0054】
運転開始処理の実行後は、使用者により設定された設定温度を制御目標温度に設定して、温度センサ19で検出される現在室温を制御目標温度に維持するようにガスバーナ12を作動させる燃焼制御を実行する(ステップ♯6)。この燃焼制御においては、比例弁12Fによりガスバーナ12への燃料ガスの流量を調節することにより、ガスバーナ12の加熱量としての燃焼量を変更調整する。その調整は現在室温と制御目標温度との偏差に応じて行われる。
【0055】
例えば暖房運転開始時において、現在室温と制御目標温度との温度差が大きいときは、素早く温度が上昇するように最大燃料量又はそれに近い大燃焼量に調整する。一方、暖房が行われて温度差が小さくなると、最小燃焼量あるいはそれに近い小燃焼量に調整する。温度差が大きい状態から小さい状態になるまでの温度上昇の途中においては、大燃焼量より少なくかつ小燃焼量より多い中間燃焼量に調整する。
【0056】
燃焼量が大燃焼量であれば、温風の吹き出し方向が上下調整範囲の最上向き角度となるようにルーバモータ14Cの作動を制御する(ステップ♯7,8)。燃焼量が中燃焼量であれば、温風の吹き出し方向が上下調整範囲の中間位置となるようにルーバモータ14Cの作動を制御する(ステップ♯9)。燃焼量が小燃焼量であれば、温風の吹き出し方向が上下調整範囲の最下向き角度となるようにルーバモータ14Cの作動を制御する(ステップ♯10)。但し、スマートフォン2からの運転開始情報に基づく暖房運転においては、最下向き角度は、水平ではなく水平よりも少し上側に位置する角度である。温風の吹き出し方向の上下調整範囲としては、上記したような最下向き角度から水平より約50度上向きの角度までの範囲である。
【0057】
スマートフォン2からの運転開始指令に基づいて暖房運転を開始してから設定時間以上経過していない状態で(ステップ♯11)、スマートフォン2の端末側通信手段25から運転停止信号が送信されず(ステップ♯12)、かつ、解除スイッチ11Hが操作されなければ(ステップ♯13)、ステップ♯6からステップ♯13の処理を繰り返し実行する。
【0058】
解除スイッチ11Hが操作されると、遠隔運転表示ランプ11gを消灯させて(ステップ♯14)、遠隔運転を停止し、運転操作部11の操作に基づく暖房運転(通常運転)に切り替わり、通常運転に対応した通常制御を実行する(ステップ♯16)。
【0059】
スマートフォン2からの運転開始指令に基づいて暖房運転を開始してから設定時間以上経過した場合、及び、スマートフォン2の端末側通信手段25から運転停止信号が送信された場合には、暖房運転を停止する(ステップ♯15)。すなわち、ガスバーナ12への燃料供給を停止して燃焼作動を停止させ、かつ、送風ファン13による送風を停止させる。そして、スマートフォン2からの運転開始指令に基づいて暖房運転を実行しているときには、スマートフォン2からは運転停止信号以外の情報は受けつけない。
【0060】
次に、図7を参照しながら、運転操作部11の操作により行われる通常運転における一連の処理について説明する。
【0061】
通常制御では、上記したような運転開始処理と同様な運転開始処理を実行したのち(ステップ♯17)、温風の吹き出し方向が上下調整範囲の最下向き角度(水平方向)となるようにルーバモータ14Cの作動を制御し(ステップ♯18)、上記燃焼制御と同様な制御を実行する(ステップ♯19)。尚、温風の吹き出し方向としては、常に最下向き角度(水平方向)に設定するのではなく、ルーバースイッチ11Gの操作によって変更操作されている場合には、その設定された吹き出し方向に制御するようにしてもよい。
【0062】
この燃焼制御を実行しているときに、運転操作部11において使用者による直接的な手動操作が行われると(ステップ♯20)、対応する設定操作を実行する(ステップ♯21)。例えば、エコ運転スイッチ11Dが操作されると、エコ運転モードに切り替わり、ルーバスイッチ11Gが操作されると、指令された方向に温風吹き出し方向を変更する。また、設定スイッチ11Fにより設定温度やタイマー設定時間が変更されると、それらを変更設定する。
【0063】
運転スイッチ11Aにて運転切り操作が行われると(ステップ♯22)、暖房運転を停止する(ステップ♯23)。すなわち、ガスバーナ12への燃料供給を停止して燃焼作動を停止させ、かつ、送風ファン13による送風を停止させる。
【0064】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、スマートフォン2からの運転開始情報に基づく暖房運転において、ガスバーナ12の燃焼量(加熱量)が大燃焼量であれば最上向き角度となり、燃焼量が中燃焼量であれば中間位置となり、燃焼量が小燃焼量であれば、最下向き角度となるようにルーバモータ14Cの作動を制御するようにしたが、この構成に代えて、次のように構成してもよい。
例えば、燃焼量が変更調整範囲の中央値よりも大であれば最上向き角度となり、燃焼量が変更調整範囲の中央値よりも小であれば最下向き角度となるように、ルーバモータ14Cの作動を制御してもよく、要するに、大燃焼量であれば最上向き角度となり、大燃焼量よりも少ない燃焼量であれば最上向き角度よりも下向きの角度に調整するものであればよい。又、ガスバーナ12の燃焼量ではなく、運転開始からの時間経過によってルーバモータ14Cの作動を制御してもよい。例えば、運転開始すると、最上向き角度に調節し、運転開始してから短めの時間(例えば、2分)が経過すると中間位置となり、その後、長めの時間(例えば、5分)が経過すると最下向き角度となるようにルーバモータ14Cの作動を制御するようにしてもよい。
【0065】
(2)上記実施形態では、スマートフォン2からの運転開始情報に基づく暖房運転を開始するとき(暖房対象が低温であるとき)、ガスバーナ12(加熱手段)による加熱量が最大加熱量であり、温風の吹き出し方向が上下調整範囲の最大上向き位置となるようにしたが、この構成に代えて、運転開始情報に基づく暖房運転を開始するときは、ガスバーナ12(加熱手段)による加熱量を最大加熱量よりも少ない加熱量に制御する構成としてもよい。このとき、送風量は最大加熱量に対応する送風量から下げずにそのままであってもよく、送風量も加熱量に合わせて下げるようにしてもよい。
【0066】
(3)上記実施形態では、スマートフォン2からの運転開始情報に基づく暖房運転を開始してから運転を停止するまでの設定時間として一定の時間が設定される構成としたが、この構成に代えて、上記設定時間をガスバーナ12の燃焼量の違いに応じて適宜変更してもよい。例えば、ガスバーナ12の燃焼量が最大燃焼量であれば短めの時間(例えば、30分)に設定し、燃焼量が中燃焼量であれば、中間の時間(例えば、60分)に設定し、燃焼量が小燃焼量であれば、長めの時間(例えば、120分)に設定してもよい。さらには、このような設定時間を設けずに、暖房運転を停止させない構成としてもよい。この場合、暖房運転時間をスマートフォン2に表示するようにしてもよく、設定時間経過すると、スマートフォン2に警告表示を行うようにしてもよい。
【0067】
(4)上記実施形態では、スマートフォン2より運転開始が指令されて暖房運転を行っているとき、解除スイッチ11Hが操作されると、運転操作部11の操作に基づく暖房運転に切り替わるようにしたが、この構成に代えて、例えば、設定スイッチ11F、エコ運転スイッチ11D、ルーバスイッチ11G等、解除スイッチ11Hとは異なる操作スイッチが操作されると、運転操作部11の操作に基づく暖房運転に切り替わるようにしてもよい。
【0068】
(5)上記実施形態では、端末側通信手段25と装置側通信手段15とがブルートゥースによる無線通信により通信可能な構成としたが、この構成に代えて、装置側通信手段15がルータを介してインターネット回線と接続され、スマートフォン2からインターネット回線を経由して運転開始が指令される構成としてもよい。
【0069】
(6)上記実施形態では、暖房装置としてガスファンヒータ1を例示したが、石油ファンヒータ等の他の暖房装置であってもよい。
【0070】
(7)上記実施形態では、外部通信端末としてスマートフォン2を用いるようにしたが、これに代えて、従来の携帯電話機やタブレット端末等でもよく、据え置き型のパーソナルコンピュータ等であってもよい。又、赤外線を用いた専用のリモコン装置を用いてもよい。
【0071】
尚、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、又、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、ガスファンヒータなどの暖房装置と、スマートフォンなどの外部通信端末とが、無線通信可能に接続設定された暖房装置操作システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 ガスファンヒータ(暖房装置)
2 スマートフォン(外部通信端末)
11 運転操作部
12 ガスバーナ(加熱手段)
13 送風ファン(送風手段)
14 オートルーバ(風向変更手段)
15 装置側通信手段
16 作動制御手段
17B 温風吹き出し部
19 温度センサ(温度検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9