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特開2022-135385結球野菜の茎芯除去装置、および茎芯除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135385
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】結球野菜の茎芯除去装置、および茎芯除去方法
(51)【国際特許分類】
   A23N 15/00 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A23N15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035155
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】392035019
【氏名又は名称】吉泉産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓輔
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA01
4B061AA02
4B061AB04
4B061AB06
4B061AB08
4B061BA03
4B061BB13
4B061CB05
4B061CB13
4B061CB16
(57)【要約】
【課題】結球野菜の茎芯の中心位置を正確に検出し、茎芯の部分だけを除去することのできる結球野菜の茎芯除去装置および方法を提供する
【解決手段】結球野菜の茎芯除去装置(100)は、無端索体(10)と、無端索体の中流の側方に設置され、バケットに載置された結球野菜の茎芯の写真を撮影するカメラ(20)と、多層ニューラルネットワークで構成され、茎芯の写真データを入力して茎芯の中心位置と茎芯の大きさとを検出する茎芯検出装置(25)と、無端索体の下流端の側方に設置された円筒カッター(31)と、円筒カッターの回転装置(33)と、円筒カッターの近接離間装置(34)と、円筒カッターの昇降装置(60)と、円筒カッターの上方向に設置された切断刃(50)と、を備え、円筒カッターの中心位置を茎芯の中心位置と一致させてから、円筒カッターで茎芯を切断する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のバケットを取り付けた無端索体と、
前記無端索体の側方に設置され、前記バケットに載置された結球野菜の茎芯の写真を撮影するカメラと、
多層ニューラルネットワークで構成され、前記茎芯の写真データを入力して前記茎芯の中心位置と前記茎芯の大きさとを検出する茎芯検出装置と、
前記無端索体の側方に設置されたカッターと、
前記カッターの昇降装置と、を備える結球野菜の茎芯除去装置であって、
前記茎芯検出装置で検出した前記茎芯の中心位置のデータにもとづき、前記無端索体の走行と、前記カッターの前記昇降装置の昇降とを制御することにより、前記カッターの中心位置を前記結球野菜の前記茎芯の中心位置と一致させ、前記カッターで前記結球野菜の前記茎芯を切断する、結球野菜の茎芯除去装置。
【請求項2】
前記カッターは円筒カッターであって、
前記カメラは前記無端索体の搬送方向中流に設置され、
前記カッターは前記無端索体の下流端に設置され、
前記無端索体の前記下流端の他の側方に設置された押え具と、
前記円筒カッターの回転装置と、
前記円筒カッターの近接離間装置と、
前記円筒カッターの上方向に設置された切断刃と、
前記円筒カッターの外周に設置された鍔と、をさらに備え、
前記昇降装置は、前記円筒カッターを昇降させる、請求項1に記載の結球野菜の茎芯除去装置。
【請求項3】
前記多層ニューラルネットワークはYOLOシステム(you only look once)であって、
前記YOLOシステムの教師データのバウンディングボックスは、前記茎芯の中心位置と前記バウンディングボックスの中心位置とが一致し、前記茎芯と葉球との境界に前記バウンディングボックスが接するように設定され、
前記茎芯検出装置は、検出された前記バウンディングボックスの中心位置を前記茎芯の中心位置とし、前記バウンディングボックスに接する円または楕円を前記茎芯と前記葉球との境界とする、請求項1または2に記載の結球野菜の茎芯除去装置。
【請求項4】
前記結球野菜の前記茎芯の位置に移動させた円筒カッターを前記結球野菜に押し込んで前記茎芯を切断し、
前記円筒カッターの外周に設置された鍔で前記結球野菜の前記葉球を圧縮し、
前記円筒カッターを少し上に移動してから回転して遠心力作用で前記葉球を分離し、
前記円筒カッターを後退させた後、前記昇降装置により前記茎芯および内葉を保持した前記円筒カッターを前記切断刃の方向に移動して前記内葉を前記茎芯から切断し、
前記円筒カッターをさらに後退させて、前記茎芯を排出する、請求項3に記載の結球野菜の茎芯除去装置。
【請求項5】
前記茎芯検出装置で検出した前記茎芯の大きさに合わせて、前記円筒カッターの後退距離を変更し、切断、除去される前記茎芯の長さを調整する、請求項4に記載の結球野菜の茎芯除去装置。
【請求項6】
前記YOLOシステムの教師データは前記結球野菜の品種、および/または産地ごとに複数種類、別々の教師データとして用意され、
前記茎芯検出装置は前記結球野菜の品種、および/または産地を判別し、前記結球野菜の品種、および/または産地に合わせて前記円筒カッターの後退距離を変更し、切断、除去される前記茎芯の長さを調整する、請求項4または5に記載の結球野菜の茎芯除去装置。
【請求項7】
カメラで結球野菜の茎芯の写真を撮影する撮影工程と、
前記写真のデータを多層ニューラルネットワークに入力し、前記結球野菜の前記茎芯の中心位置を検出する検出工程と、
前記結球野菜の前記茎芯の中心位置とカッターの中心位置とを一致させる位置制御工程と、
前記結球野菜の茎周縁から葉球中央に向けて前記カッターを挿し込み、前記茎芯を一周する切り込みを施し、前記茎芯と葉球との繋がりを切断する第1切断工程と、
前記カッターを回転することにより、前記結球野菜を前記茎芯を中心に回転させて、前記茎芯と前記葉球との前記繋がりおよび葉同士の絡みを遠心力によって分離する分離工程と、
前記茎芯と内葉とを切断する第2切断工程と、を含む結球野菜の茎芯除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白菜、レタス等の結球野菜から茎芯を除去する装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結球野菜の葉は葉球を形成し、葉の基端部は茎芯に繋がっている。結球野菜から茎芯を除去する装置および方法に関して、以下の発明が出願されている。
特許文献1(特開2013-123391号公報)には、結球野菜の葉をバラバラに解き、茎芯を除去する方法が開示されている。
特許文献1に記載の茎芯を除去する方法では、結球野菜の茎周縁から葉球中央に向けてカッターを挿し込み、茎を一周する切り込みを施し、茎と葉の繋がりを切断すると共に、結球野菜を茎を中心に回転させて、茎側面と葉球との繋がり及び葉同士の絡みを遠心力によって分離し、結球野菜の茎芯を除去する。
【0003】
また、特許文献2(特開2014-068640号公報)には、茎芯を除去しようとする結球野菜の大きさと茎芯の位置を計測し、この計測値に基づいて的確に茎芯を除去することのできる結球野菜の芯取り方法と、その方法を実施するための芯取装置が開示されている。
特許文献2に記載の結球野菜の芯取り方法では、結球野菜を搭載するための受け皿を有するコンベアベルトで、芯取りしようとする結球野菜を搬送するに際し、搬送の途中において、結球野菜の芯の位置と、野菜自体の大きさとを、赤外線センサを使用してそれぞれ個別に測定するとともに、得られた個別のデータは、演算されて芯取りを行う芯取装置に供給され、供給されたデータに基づいて、結球野菜の芯を除去する。
【0004】
レタスの位置検出に関しては、非特許文献1(YOLOv3を用いた圃場におけるレタスの位置検出と精度評価)にその方法が開示されている。
非特許文献1は、収穫作業中に撮影した画像からレタス結球部を自動検出する方法について記載されており、 高速かつ高精度なことで知られる物体検出手法YOLOv3を用い、結球部のみを切り出して学習させることにより,精度よくレタス結球部を検出できたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-123391号公報
【特許文献2】特開2014-068640号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】信州大学工学部 松浦良 他著、「YOLOv3を用いた圃場におけるレタスの位置検出と精度評価」(http://ais.shinshu-u.ac.jp/~aislab/papers/201809_SICE_chubushibu_matsuura.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
白菜などの結球野菜の茎芯を円筒カッターなどで切断して除去する場合、円筒カッターの位置と茎芯の位置とがずれていると、円筒カッターが茎芯の内部を切断し、その結果、茎芯の一部が葉球とつながった状態で排出されてしまう。円筒カッターの径を大きくすれば、円筒カッターが茎芯の内部を切断することは避けられるが、今度は葉球の一部が茎芯として排出され、廃棄されてしまう。
したがって、白菜などの結球野菜の茎芯を円筒カッターなどで切断して除去する場合、円筒カッターの中心位置を茎芯の中心位置と一致させてから茎芯の切断を行う必要がある。
【0008】
特許文献1に記載の発明においても、カメラを設置し、作業者がモニターを見ながら結球野菜の底面位置を調節し、茎芯が開口の中央に一致するように、結球野菜を正しく置くことが記載されているが、この場合は、結球野菜1個ごとに位置調整をする必要があり、作業効率が課題となる。
【0009】
特許文献2に記載の発明では、受け皿上の結球野菜に、上方から測定部材を当接させ、測定部材に付設した赤外線センサによって結球野菜の芯の位置の測定を行なうことが記載されている。しかし、白菜は品種、あるいは生産地などによって色などの外観が異なり、芯の位置を正確に測定するためには、外観の異なるロットごとに位置測定のためのパラメータを調整することが必要になる。
【0010】
非特許文献1に記載の技術では、物体検出手法YOLOv3を用いることで、外観の異なるレタスに対しても結球部全体の位置を検出することができると思われる。しかし、YOLOは物体のクラスとバウンディングボックスを予測するが、結球野菜の茎芯の中心位置を正確に予測するものではない。したがって、非特許文献1に記載の技術のままでは、茎芯除去装置の茎芯位置検出に用いることはできない。
【0011】
本発明の主な目的は、白菜などの結球野菜の茎芯を除去するにあたって、茎芯の中心位置を正確に検出し、検出した茎芯の中心位置にカッターの中心位置を一致させることによって、結球野菜の茎芯の部分だけを除去することのできる結球野菜の茎芯除去装置および方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、白菜などの結球野菜の茎芯の大きさ、および/または、結球野菜の品種、産地などの違いに合わせて、除去する茎芯の長さ等を自動的に調整することのできる結球野菜の茎芯除去装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)
一局面に従う結球野菜の茎芯除去装置は、複数個のバケットを取り付けた無端索体と、無端索体の側方に設置され、バケットに載置された結球野菜の茎芯の写真を撮影するカメラと、多層ニューラルネットワークで構成され、茎芯の写真データを入力して茎芯の中心位置と茎芯の大きさとを検出する茎芯検出装置と、無端索体の側方に設置されたカッターと、カッターの昇降装置と、を備える結球野菜の茎芯除去装置であって、茎芯検出装置で検出した茎芯の中心位置のデータにもとづき、無端索体の走行と、カッターの昇降装置の昇降とを制御することにより、カッターの中心位置を結球野菜の茎芯の中心位置と一致させ、カッターで結球野菜の前記茎芯を切断するものである。
【0013】
この場合、作業者は無端索体のバケットに結球野菜を置くだけで、茎芯除去装置が、茎芯の写真を撮影し、写真データから茎芯の中心位置を検出し、カッターの中心位置を茎芯の中心位置に合わせ、茎芯を切断し、茎芯だけを正確に除去することができる。
また、茎芯の検出に多層ニューラルネットワークを用いることで、色の濃い薄いなど外観の異なる結球野菜に対しても正確に茎芯の中心位置を検出することができる。
収穫時期、産地、熟し具合、個体差などがあっても正確に茎芯の中心位置を検出することができるため、従来より小型のカッターを用いることができる。したがって、食品のロスが少ない茎芯除去装置とすることができる。
なお、カッターとしては、円筒カッター、ドリル型カッター、ナイフ形カッターなどを用いいることができる。結球野菜が白菜の場合は、円筒カッターが、キャベツの場合はドリル型カッターが用いられることが多い。
【0014】
(2)
第2の発明にかかる結球野菜の茎芯除去装置は、一局面に従う茎芯除去装置において、カッターは円筒カッターであって、カメラは無端索体の搬送方向中流に設置され、カッターは無端索体の下流端に設置され、無端索体の下流端の他の側方に設置された押え具と、円筒カッターの回転装置と、円筒カッターの近接離間装置と、円筒カッターの上方向に設置された切断刃と、円筒カッターの外周に設置された鍔と、をさらに備え、昇降装置は、円筒カッターを昇降させてもよい。
【0015】
この場合、作業者は無端索体のバケットに結球野菜を置くだけで、茎芯除去装置が、茎芯の写真を撮影し、写真データから茎芯の中心位置を検出し、円筒カッターの中心位置を茎芯の中心位置に合わせて茎芯を切断し、茎芯だけを正確に除去することができる。
【0016】
また、抑え具により結球野菜が固定されるため茎芯を確実に切断することができる。そして回転装置と鍔とにより葉球が分離され、回転装置と切断刃とにより、茎芯および内葉を分離することができる。このように、多層ニューラルネットワークで高速かつ正確に検出された結球野菜の茎芯を、一連の動作により効率よく切断分離加工することができる。
また、第2の発明にかかる茎芯除去装置では切断刃を固定し、昇降装置を葉球分離と茎芯と内葉(茎芯の先につながる葉)との切断とに用いることで、装置の機構を単純化するとともに、茎芯除去動作の高速化を実現している。
【0017】
(3)
第3の発明にかかる結球野菜の茎芯除去装置は、第1または第2の発明に従う茎芯除去装置において、多層ニューラルネットワークはYOLO (you only look once)システムであって、YOLOシステムの教師データのバウンディングボックスは、茎芯の中心位置とバウンディングボックスの中心位置とが一致し、茎芯と葉球との境界にバウンディングボックスが接するように設定され、茎芯検出装置は、検出されたバウンディングボックスの中心位置を茎芯の中心位置とし、バウンディングボックスに接する円または楕円を茎芯と葉球との境界としてもよい。
【0018】
この場合、YOLOを用いることで、形状や色の濃い薄いなど外観の異なる結球野菜に対しても正確に茎芯の領域を示すバウンディングボックスを検出することができる。
しかし、YOLOのバウンディングボックスは、一般には、茎芯の領域を示すだけで茎芯の中心位置をピンポイントで示すものではない。これに対して、第2の発明にかかる茎芯除去装置では、以下のようにして茎芯の中心位置を決定している。
まず、YOLOの教師データのバウンディングボックスの設定において、結球野菜の茎芯の中心位置を決定し、この中心位置がバウンディングボックスの中心位置となり、茎芯と葉球との境界にバウンディングボックスが接するようにバウンディングボックスを設定する。
次に、茎芯除去時の結球野菜の茎芯の中心位置の決定にあたっては、YOLOが検出したバウンディングボックスの中心を茎芯の中心位置と決定する。
上記方法により、茎芯の領域を示すバウンディングボックスを用いて茎芯の中心位置をより正確に決定することができる。
【0019】
茎芯の中心位置と円筒カッターの中心位置とのずれが大きい場合、茎芯の一部が葉球とつながった状態で排出されることを避けるため、円筒カッターの径を大きくする必要がある。しかし、円筒カッターの径を大きくすると、葉球の一部が茎芯として廃棄されてしまうため、茎芯除去後の出荷できる結球野菜の収量が減少し、収率が低下する。
本発明では、茎芯の中心位置をより正確に決定することにより、収率を向上させることができる。
【0020】
YOLOの教師データには、レンズの汚れなどにより茎芯がぼやけている画像、血球野菜が乱雑に載置されて茎芯がぼやけている画像、茎芯の一部が葉または汚れで隠されている画像など、いろいろな結球野菜の写真を含めることが望ましい。こうすることにより、多種多様な結球野菜に対して正確に茎芯の位置を検出することができ、また、カメラのレンズなどのメンテナンスの頻度を下げることができる。
また、載置が正確でなかったり異物が混入した野菜が含まれていた場合でも茎芯除去を問題なく続けることができる。したがって、人手によって野菜を載置したりチェックしたりする必要がないため、野菜の加工工程全体を一つの搬送手段で自動化することができる。
【0021】
(4)
第4の発明にかかる結球野菜の茎芯除去装置は、第3の発明にかかる茎芯除去装置において、結球野菜の茎芯の位置に移動させた円筒カッターを結球野菜に押し込んで茎芯を切断し、円筒カッターの外周に設置された鍔で結球野菜の葉球を圧縮し、円筒カッターを少し上に移動してから回転して遠心力作用で葉球を分離し、円筒カッターを後退させた後、昇降装置により茎芯および内葉を保持した円筒カッターを切断刃の方向に移動して内葉を茎芯から切断し、円筒カッターをさらに後退させて、茎芯を排出させてもよい。
【0022】
この場合、結球野菜の茎芯と葉基端部との繋がりを切断した後、鍔で結球野菜の葉球を圧縮し、さらに結球野菜を回転させることによって、遠心力で葉をバラバラにし、または葉の絡みを解して剥離を容易にすることができる。
また、茎芯上部と葉球の内葉との繋がりを切断して、結球野菜の茎芯を除くことができる。
【0023】
(5)
第5の発明にかかる結球野菜の茎芯除去装置は、第4の発明にかかる茎芯除去装置において、茎芯検出装置で検出した茎芯の大きさに合わせて、円筒カッターの後退距離を変更し、切断、除去される茎芯の長さを調整してもよい。
【0024】
同一種類の白菜の場合、茎芯の大きさが大きい方が除去すべき茎芯の長さも長い。
第4の発明にかかる茎芯除去装置では、茎芯の大きさが大きい結球野菜は、葉球を分離した後の円筒カッターの後退距離を大きく設定することによって、除去される茎芯の長さが長くなるようにしている。
【0025】
(6)
第6の発明にかかる結球野菜の茎芯除去装置は、第4または第5の発明にかかる茎芯除去装置において、YOLOシステムの教師データは結球野菜の品種、および/または産地ごとに複数種類、別々の教師データとして用意され、茎芯検出装置は結球野菜の品種、および/または産地を判別し、結球野菜の品種、および/または産地に合わせて円筒カッターの後退距離を変更し、切断、除去される茎芯の長さを調整してもよい。
【0026】
結球野菜の除去するべき茎芯の長さは、茎芯の大きさが同じであっても、結球野菜の品種、および/または産地ごとに異なる場合がある。このような場合には、茎芯検出装置によって結球野菜の種類を判別し、結球野菜の品種、産地などの種類(および茎芯の大きさ)によって、除去するべき茎芯の長さを調整することが望ましい。
YOLOでは、結球野菜の品種、および/または産地ごとに複数種類、別の教師データを用意し、学習させることで、結球野菜の品種、産地などの種類を判別することができるので、結球野菜の品種、産地などの種類(および茎芯の大きさ)毎に、除去するべき茎芯の長さ等を調整することができる。
【0027】
(7)
他の局面に従う結球野菜の茎芯除去方法は、カメラで結球野菜の茎芯の写真を撮影する撮影工程と、写真のデータを多層ニューラルネットワークに入力し、結球野菜の茎芯の中心位置を検出する検出工程と、結球野菜の茎芯の中心位置とカッターの中心位置とを一致させる位置制御工程と、結球野菜の茎周縁から葉球中央に向けてカッターを挿し込み、茎芯を一周する切り込みを施し、茎芯と葉球との繋がりを切断する第1切断工程と、カッターを回転することにより、結球野菜を茎芯を中心に回転させて、茎芯と葉球との繋がり、および葉同士の絡みを遠心力によって分離する分離工程と、茎芯と内葉とを切断する第2切断工程と、を含む。
【0028】
この場合、多層ニューラルネットワークで結球野菜の茎芯の中心位置を検出し、結球野菜の茎芯の中心位置とカッターの中心位置とを一致させることにより、茎芯を正確に切断、除去できる。
また、結球野菜の茎芯と葉基端の繋がりをカッターで切断することにより、茎芯は葉球から分離され、カッターが葉球を突き刺したまま一体化して回転することにより、葉は遠心力で振り回されて、茎芯から離れ、バラバラになって飛び散る。葉球は分割する必要がなく、葉は1枚の大きさのまま茎芯から分離できるから、葉を細断する際、屑の発生は少ない。
【0029】
(a)
さらに他の局面に従う結球野菜の茎芯除去装置は、複数個のバケットを取り付けた無端索体と、無端索体の下流端の側方に設置された押え具と、無端索体の下流端の他の側方に設置された円筒カッターと、円筒カッターの回転装置と、円筒カッターの近接離間装置と、円筒カッターの外周に設置された鍔および鍔の駆動装置と、円筒カッターの昇降装置と、円筒カッターの上方向に設置された切断刃と、を含み、
まず、結球野菜の茎芯の位置に移動させた円筒カッターを結球野菜に押し込んで茎芯を切断し、次に、円筒カッターの外周に設置された鍔で結球野菜の葉球を圧縮し、円筒カッターを少し上に移動してから回転して遠心力作用で葉球を分離し、円筒カッターを後退させた後、茎芯および内葉を保持した円筒カッターを切断刃の方向に移動して内葉を茎芯から切断し、円筒カッターをさらに後退させて、茎芯を排出させる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】茎芯除去装置を無端索体の進行方向に直角な方向から見た模式図である。
図2】茎芯除去装置を上面から見た模式図である。
図3】茎芯除去装置を無端索体の進行方向終端側から見た模式図である。
図4】茎芯除去装置の円筒カッター、および鍔を無端索体側から見た模式図である。
図5】茎芯除去装置の切断装置の駆動系の機構を示す模式図である。
図6】茎芯除去装置の制御系の構成を示す模式図である。
図7】茎芯除去装置の茎芯除去の動作を示す説明図である。
図8】結球野菜および結球野菜の茎芯の写真と、YOLOを用いて検出した茎芯の中心位置およびバウンダリーボックスの検出結果を示す図である。
図9】YOLOの教師データとして用いた、バウンダリーボックスが指定された結球野菜の写真の例を示す図である。
図10】YOLOで茎芯を検出した場合と従来の画像処理で茎芯を検出した場合との茎芯除去の歩留まりを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0032】
[第1の実施形態]
(茎芯除去装置100)
図1は茎芯除去装置100を無端索体10の進行方向に直角な方向から見た模式図であり、図2は茎芯除去装置100を上面から見た模式図であり、図3は茎芯除去装置100を無端索体10の進行方向終端側側面から見た模式図であり、図4は円筒カッター31、鍔32、および支持台36を無端索体10側から見た模式図であり、図5は切断装置30の駆動系の機構を側面から見た模式図であり、図6は茎芯除去装置100の制御系の構成を示す模式図である。
茎芯除去装置100は、ベルトコンベアなどの無端索体10、無端索体10上に載置された結球野菜90を位置決めするための複数個のバケット11、カメラ20、切断装置30、押え具40を含む。
【0033】
カメラ20は無端索体10の搬送方向中流の側方に設置され、押え具40は無端索体10の下流端の他の側方に、切断装置30は無端索体10の下流端の押え具40と対向する側方に設置されている。
図2に示されているように、切断装置30は、回転可能で、無端索体10に対して近接離間可能に配設された円筒カッター31、円筒カッター31の外周で、無端索体10に対して近接離間可能に配設された鍔32、および円筒カッター31の内部に固定された支持台36を備えている。
【0034】
切断装置30は、他端を押え具40で押えた状態で結球野菜90の茎周縁から葉球91の中央に向けて円筒カッター31を挿し込むことにより、茎芯93を一周する切り込みを施し、茎芯93と葉球91との繋がりを切断することができる。また、切断装置30は、円筒カッター31を回転させることにより遠心力作用で葉球91を茎芯93から分離することができる。ここで、葉球91とは、結球野菜90のうち茎芯93から周囲へ広がっている葉をいう。
鍔32は、後述するように、円筒カッター31で茎芯93と葉球91との繋がりを切断した後、葉球91を結球野菜90の先端方向に押しつけることによって、茎芯93と葉球91とを分離しやすくする役割を備えている。
また、支持台36は、円筒カッター31を後退させて切断された茎芯93を排出する際、茎芯93が円筒カッター31の後退に合わせて後退するのを阻止して排出されるよう茎芯93を支えるものである。
また、カメラ20は、カメラ本体21およびリング状の照明装置22を備えている。カメラ20で結球野菜90を撮影する場合、リング状の照明装置22で茎芯93の付近を照らすことにより、より鮮明な写真を撮影することができる。
【0035】
また、図3に示されるように、切断装置30の上方向には、茎芯93を切断するための切断刃50が設置されている。切断装置30は、上下方向に昇降可能であり、円筒カッター31による茎芯93切断開始前に、茎芯93の中心位置94と円筒カッター31の中心との高さを一致させることができる。また、切断装置30は、茎芯93を切断し、葉球91を分離した後、茎芯93および内葉92を保持した状態で切断刃50に向かって上昇し、茎芯93と内葉92との間を切断することができる。
また、図4に示されるように、円筒カッター31の外周には鍔32が、円筒カッター31の内部(円筒カッター31の円の中心)には支持台36が設置されている。
【0036】
図5は、茎芯除去装置100の切断装置30の駆動系の機構を示す模式図である。円筒カッター31は軸受37に回転可能に支持され、回転装置33のモーターMで回転させることができる。さらに円筒カッター31と軸受37と回転装置33とは、近接離間装置34のモーターMにより水平方向(図5の左右方向)に駆動可能である。一方、支持台36は、円筒カッター31と軸受37とを貫通し、切断装置30に固定されている。したがって、支持台36の先端(図5の左側)の位置は円筒カッター31の水平方向の位置によらず一定である。
鍔32は鍔駆動装置35のモーターMにより水平方向に駆動可能である。なお、鍔32は図4に示すように円筒カッター31の外周に配置されているため、円筒カッター31の先端は図5の鍔32よりも図5の左方向に移動することができる。
【0037】
なお、結球野菜のうち、白菜についてはカッターとして円筒カッター31を用いることが好適であるが、例えばキャベツの場合は、円筒カッター31ではなくドリル型カッターの方が好適である。また、ナイフ型カッターを用いる場合もある。
本発明の茎芯除去装置100は、カッターとして、円筒カッター31だけでなく、ドリル型カッター、ナイフ型カッターを用いることもできる。
【0038】
図6は、茎芯除去装置100の制御系の構成を示す説明図である。
図6において、カメラ20の前に移送された結球野菜90の写真が撮影される。撮影された写真データは茎芯検出装置25に送られ、図8に示すように、茎芯93の中心位置94と茎芯93の大きさ(外径)とが検出される。検出された茎芯93の中心位置94と大きさとは制御装置26に送られ、制御装置26が無端索体10の駆動系と昇降装置60とを制御して、円筒カッター31の中心位置を茎芯93の中心位置94に合わせる。
その後の制御装置26の制御による、茎芯除去の動作は次の段落において図7を用いて説明する。
【0039】
図7は、茎芯除去装置100の茎芯除去の動作を示す説明図である。
図7(a)において、まず無端索体10の走行および昇降装置60の昇降を制御して、円筒カッター31の中心位置を茎芯93の中心位置94と一致させる。次に、近接離間装置34で円筒カッター31を押し出し、結球野菜90の茎周縁から葉球91の中央に向けて円筒カッター31を挿し込み、茎芯93を一周する切り込みを施し、茎芯93と葉球91との繋がりを切断する(ステップS1)。
【0040】
次に図7(b)に示すように、鍔32を押し出し、葉球91を結球野菜90の先端方向に押しつけ、茎芯93と葉球91とをほぐして分離しやすくする(ステップS2)。その後、図7(c)に示すように、鍔32をもとの位置まで後退させる(ステップS3)。
次に図7(d)に示すように、昇降装置60を制御して円筒カッター31を少し上に移動し(ステップS4)、結球野菜90と無端索体10との間の距離をとった後、円筒カッター31を回転して遠心力作用で葉球91を茎芯93から分離する(ステップS5)。
次に図7(e)に示すように、円筒カッター31の回転を停止させた状態で円筒カッター31を後退させる(ステップS6)。茎芯93の長さは、この、円筒カッター31の後退距離によって決定される。
次に、茎芯93および内葉92(結球野菜の内部にあって茎芯93に繋がった葉)を円筒カッター31に保持したままで、切断装置30を昇降装置60により上昇させ、切断刃50によって、茎芯93と内葉92とを切断、分離する(ステップS7)。
次に、図7(f)において、切断装置30を昇降装置60により下降させた後(ステップS8)、円筒カッター31をさらに後退させて(ステップS9)、茎芯93を押し出す(ステップS10)。支持台36は、円筒カッター31を後退させて切断された茎芯93を排出する際、茎芯93を支えることにより、茎芯93が円筒カッター31の後退に合わせて後退することを防ぐ。これにより、茎芯93は、切断刃50と支持台36との間から落下するため(図7(e))、この位置に茎芯93を排出するための経路(図示しない)を別途設けることで、通常食用とならない茎芯93を他の部位から分離して排出することができる。
その後、円筒カッター31の位置および切断装置30の高さを初期状態に戻す。
なお、葉球91は、ステップS5において茎芯93から分離されて無端索体10の上に落下し、また、内葉92は、ステップS7において茎芯93と切断されて無端索体10の上に落下する。したがって、葉球91と内葉92とは無端索体10に落下するタイミングが異なるため、これによって葉球91と内葉92とは分離して排出することができる。
【0041】
白菜などの結球野菜90の茎芯93を円筒カッター31で切断して除去する場合、円筒カッター31の位置と茎芯93の位置とがずれていると、円筒カッター31が茎芯93の内部を切断し、その結果、茎芯93の一部が葉球91とつながった状態で排出されてしまう。円筒カッター31の径を茎芯93の外径に比して大きくすれば、円筒カッター31が茎芯93の内部を切断することは避けられるが、今度は葉球91の一部が茎芯93と誤って排出され、廃棄されてしまう。
したがって、白菜などの結球野菜90の茎芯93を円筒カッター31で切断して除去する場合、円筒カッター31の中心位置を茎芯93の中心位置94と一致させた後、茎芯93の切断を行う必要がある。
【0042】
円筒カッター31の中心位置を茎芯93の中心位置94と一致させることに関して、特許文献1に記載の発明においては、カメラを設置し、作業者がモニターを見ながら結球野菜の底面位置を調節し、茎芯が円筒カッターの開口の中央に一致するように、結球野菜を正しく置くことが記載されているが、この場合は、結球野菜1個ごとに位置調整をする必要があり、作業効率が課題となる。
また、特許文献2には、受け皿上の結球野菜に、上方から測定部材を当接させ、測定部材に付設した赤外線センサによって結球野菜90の茎芯93の位置の測定を行なうことが記載されている。しかし、白菜は品種、あるいは生産地などによって色などの外観が異なり、芯の位置を正確に測定するためには、外観の異なるロットごとに位置測定のためのパラメータを調整することが必要になる。例えば、茎芯93付近の明るさ等によって、茎芯93と葉球91との境界に相当するしきい値を変更するなどの細かな調整が必要になる。
【0043】
このような多様な物体の画像に対して、物体の座標と大きさを直接推定するシステムとして、多層ニューラルネットワークで構成された、YOLOがある。YOLOについては、例えば、Joseph Redmon他著 “You Only Look Once: Unified, Real-Time Object Detection”(https://arxiv.org/pdf/1506.02640v5.pdf) に記載されている。ただし、YOLOの、物体の座標と大きさの検出はバウンダリーボックスが出力されるだけであって、茎芯93の中心位置94など、位置を直接推定するものではない。
レタスなどの結球野菜の位置検出へのYOLOの応用については、例えば非特許文献1に記載されている。非特許文献1では、収穫装置に取り付けたカメラで撮影した画像を用いて、レタス結球部と全体、それぞれから結球部の中心位置検出を行っている。しかし、非特許文献1のYOLOの出力は、レタス結球部全体を囲むバウンダリーボックスであり、本発明のように茎芯93の中心位置94を直接検出するものではない。
【0044】
図8に、結球野菜90(白菜)および結球野菜90の茎芯93の写真と、YOLOを用いて検出した茎芯93の中心位置94およびバウンディングボックス95の検出結果を示す。
本発明では、まず教師データとする結球野菜90の写真において、茎芯93の中心位置94を指定し、指定した中心位置94に対して上下および左右対称で、かつ、茎芯93と葉球91との境界に相当する位置にバウンディングボックス95を設定する。そして、これらの教師データを複数の品種、および産地に亘って多数準備し、準備した教師データを用いてYOLOシステムに学習させる。
【0045】
教師データの数としては、最低10個以上必要であり、望ましくは100個以上である。
茎芯除去装置100での茎芯93の中心位置94と茎芯93の大きさとの検出にあたっては、学習の終わったYOLOシステムにカメラ20で撮影した写真を入力し、YOLOシステムから出力されたバウンディングボックス95の座標から、茎芯93の中心位置94を決定する。そして、決定された茎芯93の中心位置94に基づいて、無端索体10と昇降装置60とを制御し、茎芯93の中心位置94と円筒カッター31の中心位置とを一致させる。
【0046】
除去すべき茎芯93の長さについては、結球野菜90の品種、および産地によって最適値が異なるので、それぞれの結球野菜90の品種、および産地に合わせて適切な長さに設定する。ただし、除去すべき茎芯93の長さは、同じ種類の結球野菜90であっても、茎芯93の大きさによっても異なるので、YOLOシステムから出力されるバウンディングボックス95の大きさに合わせて除去すべき茎芯93の長さを調整することが望ましい。
【0047】
(YOLOシステムによる茎芯93検出の実施例)
図9に、YOLOシステムによる茎芯93検出における、教師データの例を示す。図9(a)は茎芯93が白く映った画像、図9(b)は白菜の産地および収穫時期の違いから茎芯93が黒く映った画像、図9(c)は葉っぱの一部がイレギュラーに映りこんだ画像の例である。そのほかにも、異物が混入した野菜の画像、バケットへ乱雑に載置された野菜の画像、異物等がカメラ21のレンズに付着した画像など、多種多様な画像を教師データとして用いる。
本発明の茎芯除去装置100では、このような画像も教師データとして用いることによって、多種多様な結球野菜に対して正確に茎芯93の位置を検出することができ、また、カメラのレンズなどのメンテナンスの頻度を下げることができる。また、載置が正確でなかったり異物が混入した野菜が含まれていた場合でも茎芯除去を問題なく続けることができ、人手によって野菜を載置したりチェックしたりする必要がない。したがって、例えば洗浄して茎芯除去して梱包するなど、野菜の加工工程全体を一つの搬送手段で自動化することができる。
YOLOシステムによる茎芯93検出では、それらの多種多様な画像に対して、まず、茎芯93の中心位置94を指定し、指定した中心位置94に対して上下および左右対称で、かつ、茎芯93と葉球91との境界に相当する位置にバウンディングボックス95を設定する。その後、それぞれの画像と画像に対応するバウンディングボックス95を用いて、YOLOシステムに学習させ、学習の終わったYOLOシステムに、茎芯93を除去する結球野菜90の画像を入力し、検出されたバウンディングボックス95の中心位置を、結球野菜90の茎芯93の中心位置94とする。
【0048】
図10は、YOLOシステムで茎芯93を検出した場合と従来の画像処理で茎芯93を検出した場合との茎芯除去の歩留まりを比較したグラフである。この場合の歩留まりとは、茎芯93を除去した結球野菜90のうち、葉球91側に茎芯93の一部が含まれているものを不良品、含まれていないものを良品として、良品の割合をいう。したがって、円筒カッター31の直径を大きくすれば、当然歩留まりは向上する。しかし、その分、本来葉球91として出荷できるものが、茎芯93に含まれて廃棄されることになり、出荷できる結球野菜90の量、すなわち収率が低下することになる。
図10において、従来の画像処理で茎芯93を検出した場合、歩留まりは、円筒カッター31の直径が77mmで72~90%(画像処理の設定条件によって異なる)、また85mmでは90~93%であった。これに対して、本発明のYOLOシステムを用いて茎芯93を検出した場合には、円筒カッター31の直径が77mmで90~100%(平均98%)、また85mmでは100%であった。
したがって、本発明のYOLOシステムを用いることによって、直径77mmの円筒カッター31で、従来の画像処理での直径85mm以上の歩留まりを得ることができ、その分、収率が向上し、出荷できる結球野菜の量を増加させることができる。また、従来より小型のカッターを用いても葉球91を高い歩留まりで得ることができるため、廃棄する茎芯93の大きさを最小限に設定することができ、従来茎芯93とともに廃棄されていた食品のロスを大幅に低減することができる。
【0049】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の茎芯除去装置100のハードウエア構成は第1の実施形態の茎芯除去装置100と同一であり、したがって、図1から図8は第2の実施形態にも当てはまる。
第2の実施形態では、YOLOの教師データを結球野菜90の品種、および/または産地ごとに複数種類、別々の教師データとして用意する。そして、茎芯除去装置100の茎芯検出装置25は、茎芯93の中心位置94と大きさ(YOLOのバウンダリーボックスの大きさ)だけではなく、結球野菜90の種類も検出する。
【0050】
第2の実施形態の茎芯除去装置100では、茎芯93の大きさだけではなく、結球野菜90の種類によっても、円筒カッター31の後退距離を変更し、除去する茎芯93の長さを調整することができる(図7のステップS6)。
その他、図7(a)のステップS1に相当する円筒カッター31の押し出し距離等を結球野菜90の種類に合わせて変更してもよい。
上記の無端索体10としては、公知の無端ベルトを使用することができる。また、バケット11としては、ベルトの表面に搬送方向と直交する方向に長い突条で形成してもよい。
【0051】
本発明において、バケット11が『バケット』に相当し、無端索体10が『無端索体』に相当し、結球野菜90が『結球野菜』に相当し、茎芯93が『茎芯』に相当し、カメラ20が『カメラ』に相当し、茎芯検出装置25が『茎芯検出装置』に相当し、押え具40が『押え具』に相当し、円筒カッター31が『カッター』または『円筒カッター』に相当し、鍔32が『鍔』に相当し、回転装置33が『回転装置』に相当し、近接離間装置34が『近接離間装置』に相当し、昇降装置60が『昇降装置』に相当し、切断刃50が『切断刃』に相当し、茎芯の中心位置94が『茎芯の中心位置』に相当し、茎芯除去装置100が『茎芯除去装置』に相当し、葉球91が『葉球』に相当し、バウンディングボックス95が『バウンディングボックス』に相当し、内葉92が『内葉』に相当する。
【0052】
本発明の好ましい一実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0053】
10 無端索体
11 バケット
20 カメラ
25 茎芯検出装置
30 切断装置
31 円筒カッター
32 鍔
33 回転装置
34 近接離間装置
35 鍔駆動装置
40 押え具
50 切断刃
60 昇降装置
90 結球野菜
91 葉球
92 内葉
93 茎芯
94 茎芯の中心位置
95 バウンディングボックス
100 茎芯除去装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10