(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013539
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/355 20220101AFI20220111BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20220111BHJP
F23N 5/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F24H1/10 301C
F23N5/00 C
F23N5/00 Q
F23N5/02 350F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146131
(22)【出願日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2020113016
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 賢祐
【テーマコード(参考)】
3K003
3K005
【Fターム(参考)】
3K003EA02
3K003FA01
3K003FB02
3K003FB05
3K003GA03
3K003HA03
3K005AA10
3K005AB13
3K005AB14
3K005AC05
3K005BA02
3K005BA05
3K005CA06
3K005DA02
3K005DA03
3K005DA04
3K005EB02
3K005EB03
(57)【要約】
【課題】制限動作を安定的に行い得る給湯装置を提供する。
【解決手段】給湯装置1は、入水流量と、入水温度と、設定温度と、出湯温度と、に基づいてガスバーナの燃焼量を制御するための制御量を算出するコントローラ28を備えている。コントローラ28は、算出結果に基づいて第1ガスバーナ2において燃料が供給される燃焼範囲を複数の範囲に切り替える。コントローラ28は、制限条件が成立した場合に、燃焼範囲の切り替えの禁止を含む制限動作を行う。制限条件は、算出結果が所定条件を満たす場合において、燃焼範囲を複数の範囲において所定の順序で切り替える条件が成立した場合である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの燃焼範囲として複数の範囲が定められたガスバーナを有する給湯装置であって、
前記給湯装置の外部から水が流れ込む管である入水管と、
前記給湯装置の外部に湯を流す管である出湯管と、
前記入水管を流れる水の流量である入水流量を検出する流量検出部と、
前記入水管を流れる水の温度である入水温度を検出する入水温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度である出湯温度を検出する出湯温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度を設定する出湯温度設定部と、
前記入水流量と、前記入水温度と、前記出湯温度設定部によって設定される設定温度と、前記出湯温度と、に基づいて前記ガスバーナの燃焼量を定めるための制御量を算出する制御部と、
前記制御部による算出結果に基づいて、前記ガスバーナにおけるガスの燃焼範囲を前記複数の範囲のいずれかに切り替える切替部と、
を備え、
前記切替部は、予め定められた制限条件が成立した場合に、ガスの燃焼範囲の切り替えの禁止を含む制限動作を行い、
前記制限条件は、前記制御部による前記制御量の算出において所定条件を満たす場合であって、前記燃焼範囲を前記複数の範囲において所定の順序で切り替える条件が成立した場合である
給湯装置。
【請求項2】
前記複数の範囲は、少なくとも第1範囲と前記第1範囲よりも範囲の広い第2範囲とを含み、
前記制限条件は、前記算出結果が前記所定条件を満たす場合において、前記ガスバーナにおけるガスの燃焼範囲を前記第1範囲、前記第2範囲、前記第1範囲の順に切り替える条件が成立した場合、又は、前記第2範囲、前記第1範囲、前記第2範囲の順に切り替える条件が成立した場合を条件として含み、
前記切替部は、前記制限条件が成立した場合に、前記第1範囲及び前記第2範囲の一方から他方への切り替えを禁止するように前記制限動作を行う
請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記入水流量と前記入水温度と前記設定温度とに基づいてフィードフォワード制御量を算出し、前記設定温度と前記出湯温度とに基づいてフィードバック制御量を算出し、前記フィードフォワード制御量と前記フィードバック制御量との和に基づいて前記制御量を算出し、
前記制限条件が成立した場合、前記制御量が所定の上限値を超える場合に前記燃焼量を前記上限値とするように、又は前記制御量が所定の下限値を下回る場合に前記燃焼量を前記下限値とするように、前記燃焼量を制限する
請求項1又は請求項2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記制御量の算出を繰り返し行い、前記制御量を算出する毎に前記燃焼量を決定し、
前記制限条件が成立した場合において今回の前記制御量を算出する際に、所定のフィードバック演算方式に従い、前記設定温度と前記出湯温度との差に基づいて前記出湯温度を前記設定温度に近づけるための増減値を算出し、前回の前記燃焼量の決定において前記燃焼量の制限があった場合でも、前回の前記フィードバック制御量に基づく基準制御量と、前記増減値と、を加算した値に基づいて今回の前記フィードバック制御量を算出する
請求項3に記載の給湯装置。
【請求項5】
ガスの燃焼範囲として複数の範囲が定められたガスバーナを有する給湯装置であって、
前記給湯装置の外部から水が流れ込む管である入水管と、
前記給湯装置の外部に湯を流す管である出湯管と、
前記入水管を流れる水の流量である入水流量を検出する流量検出部と、
前記入水管を流れる水の温度である入水温度を検出する入水温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度である出湯温度を検出する出湯温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度を設定する出湯温度設定部と、
前記入水流量と前記入水温度と前記出湯温度設定部によって設定される設定温度とに基づいてフィードフォワード制御量を算出し、所定のフィードバック演算方式に従ってフィードバック制御量を算出し、前記フィードフォワード制御量と前記フィードバック制御量との和に基づいて前記ガスバーナでの燃焼量を定めるための制御量を算出する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記制御量の算出を繰り返し行い、前記制御量を算出する毎に前記燃焼量を決定し、
予め定められた制限条件が成立した場合、前記制御量が所定の上限値を超える場合に前記燃焼量を前記上限値とするように、又は前記制御量が所定の下限値を下回る場合に前記燃焼量を前記下限値とするように、前記燃焼量を制限し、
前記制限条件が成立した場合において今回の前記制御量を算出する際に、前記設定温度と、前記出湯温度と、に基づき、前記出湯温度を前記設定温度に近づけるための増減値を前記フィードバック演算方式に従って算出し、前回の前記燃焼量の決定において前記燃焼量の制限があった場合でも、前回の前記フィードバック制御量に基づく基準制御量と、前記増減値と、を加算した値に基づいて今回の前記フィードバック制御量を算出する
給湯装置。
【請求項6】
前記制限条件が成立した場合、前記制御量が前記上限値よりも大きい第2上限値を超える場合に前記制御量を前記第2上限値以下とするように前記フィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理、又は、前記制御量が前記下限値よりも小さい第2下限値を下回る場合に前記制御量を前記第2下限値以上とするように前記フィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理を行い、
前回の前記燃焼量の算出の際に前記補正値が算出された場合、今回の前記制御量の算出の際に、前回の前記フィードバック制御量に代えて前記補正値に基づいて前記基準制御量を決定し、
前回の前記燃焼量の算出の際に前記制御量が前記上限値よりも大きく前記第2上限値よりも小さい場合、又は、前記制御量が前記下限値よりも小さく前記第2下限値よりも大きい場合、今回の前記制御量の算出の際に、前回の前記フィードバック制御量に基づいて前記基準制御量を決定する
請求項4又は請求項5に記載の給湯装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記入水流量と前記入水温度と前記設定温度とに基づいて前記ガスバーナでの燃焼量のフィードフォワード制御量を算出し、
前記制限条件は、前記フィードフォワード制御量が所定の安定条件を満たす場合を条件として含む
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の給湯装置。
【請求項8】
前記所定の安定条件は、前記制御部が前記フィードフォワード制御量を複数回算出した場合の最大値と最小値との差の絶対値が制限範囲内に収まる場合である
請求項6に記載の給湯装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記設定温度と前記出湯温度とに基づいて前記ガスバーナでの燃焼量のフィードバック制御量を算出し、
前記所定の安定条件は、前記フィードフォワード制御量と前記フィードバック制御量との和が所定範囲内となる場合を条件として含む
請求項7又は請求項8に記載の給湯装置。
【請求項10】
前記切替部は、前記制限条件の成立に応じて前記制限動作を開始した後、終了条件が成立した場合に前記制限動作の実行を解除する
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バーナ群の燃焼量範囲を制御する給湯装置が知られている。例えば、特許文献1の給湯装置は、バーナ群と、燃焼量調整手段と、燃焼量範囲切替手段と、を備える。燃焼量調整手段は、バーナ群への燃料供給量を調整する。燃焼量範囲切替手段は、燃料が供給されるバーナの個数を切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の給湯装置は、バーナ群の燃焼開始からの経過時間が所定時間を超えると、要求加熱量が上側切替燃焼量より高い状態になっても、その状態が所定時間にわたって継続するまでは、バーナ群の燃焼範囲を切り替えることなく現在の燃焼範囲での動作を維持するように動作する。特許文献1の給湯装置は、このような動作によってハンチングの発生を抑えようとするものであるが、かえってハンチングを十分に抑制できない虞がある。また、この例に限らず、燃焼制御の際に何らかの制限動作を行うような給湯装置では、制限動作が適切になされないと、安定的な給湯動作を維持できない虞がある。
【0005】
そこで、本開示では、上述した課題の少なくとも1つを解決するために、安定的な給湯動作を維持しやすい制限動作を行い得る給湯装置を提供する。
【0006】
本開示の一つである給湯装置は、
ガスの燃焼範囲として複数の範囲が定められたガスバーナを有する給湯装置であって、
前記給湯装置の外部から水が流れ込む管である入水管と、
前記給湯装置の外部に湯を流す管である出湯管と、
前記入水管を流れる水の流量である入水流量を検出する流量検出部と、
前記入水管を流れる水の温度である入水温度を検出する入水温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度である出湯温度を検出する出湯温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度を設定する出湯温度設定部と、
前記入水流量と、前記入水温度と、前記出湯温度設定部によって設定される設定温度と、前記出湯温度と、に基づいて前記ガスバーナの燃焼量を定めるための制御量を算出する制御部と、
前記制御部による算出結果に基づいて、前記ガスバーナにおけるガスの燃焼範囲を前記複数の範囲のいずれかに切り替える切替部と、
を備え、
前記切替部は、予め定められた制限条件が成立した場合に、ガスの燃焼範囲の切り替えの禁止を含む制限動作を行い、
前記制限条件は、前記制御部による前記制御量の算出において所定条件を満たす場合であって、前記燃焼範囲を前記複数の範囲において所定の順序で切り替える条件が成立した場合である。
【0007】
本開示の一つである給湯装置は、
ガスの燃焼範囲として複数の範囲が定められたガスバーナを有する給湯装置であって、
前記給湯装置の外部から水が流れ込む管である入水管と、
前記給湯装置の外部に湯を流す管である出湯管と、
前記入水管を流れる水の流量である入水流量を検出する流量検出部と、
前記入水管を流れる水の温度である入水温度を検出する入水温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度である出湯温度を検出する出湯温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度を設定する出湯温度設定部と、
前記入水流量と前記入水温度と前記出湯温度設定部によって設定される設定温度とに基づいてフィードフォワード制御量を算出し、所定のフィードバック演算方式に従ってフィードバック制御量を算出し、前記フィードフォワード制御量と前記フィードバック制御量との和に基づいて前記ガスバーナでの燃焼量を定めるための制御量を算出する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記制御量の算出を繰り返し行い、前記制御量を算出する毎に前記燃焼量を決定し、
予め定められた制限条件が成立した場合、前記制御量が所定の上限値を超える場合に前記燃焼量を前記上限値とするように、又は前記制御量が所定の下限値を下回る場合に前記燃焼量を前記下限値とするように、前記燃焼量を制限し、
前記制限条件が成立した場合において今回の前記制御量を算出する際に、前記設定温度と、前記出湯温度と、に基づき、前記出湯温度を前記設定温度に近づけるための増減値を前記フィードバック演算方式に従って算出し、前回の前記燃焼量の決定において前記燃焼量の制限があった場合でも、前回の前記フィードバック制御量に基づく基準制御量と、前記増減値と、を加算した値に基づいて今回の前記フィードバック制御量を算出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の給湯装置は、安定的な給湯動作を維持しやすい制限動作を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の給湯装置の構成を概念的に例示する説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の給湯装置における第1ガスバーナの燃焼量とファンの回転数の関係を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の給湯装置で行われる燃焼制御の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態の給湯装置で行われる燃焼制御の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、別例の給湯装置のシミュレーション結果を例示するグラフである。
【
図6】
図6は、第1実施形態の給湯装置のシミュレーション結果を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔10〕の特徴は、矛盾しない範囲でどのように組み合わされてもよい。
【0011】
〔1〕ガスの燃焼範囲として複数の範囲が定められたガスバーナを有する給湯装置であって、
前記給湯装置の外部から水が流れ込む管である入水管と、
前記給湯装置の外部に湯を流す管である出湯管と、
前記入水管を流れる水の流量である入水流量を検出する流量検出部と、
前記入水管を流れる水の温度である入水温度を検出する入水温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度である出湯温度を検出する出湯温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度を設定する出湯温度設定部と、
前記入水流量と、前記入水温度と、前記出湯温度設定部によって設定される設定温度と、前記出湯温度と、に基づいて前記ガスバーナの燃焼量を定めるための制御量を算出する制御部と、
前記制御部による算出結果に基づいて、前記ガスバーナにおけるガスの燃焼範囲を前記複数の範囲のいずれかに切り替える切替部と、
を備え、
前記切替部は、予め定められた制限条件が成立した場合に、ガスの燃焼範囲の切り替えの禁止を含む制限動作を行い、
前記制限条件は、前記制御部による前記制御量の算出において所定条件を満たす場合であって、前記燃焼範囲を前記複数の範囲において所定の順序で切り替える条件が成立した場合である
給湯装置。
【0012】
〔1〕の給湯装置は、ガスバーナの燃焼量を定めるための制御量の算出において所定条件を満たし、燃焼範囲を複数の範囲において所定の順序で切り替える条件が成立した場合に、ガスの燃焼範囲の切り替えの禁止を含む制限動作を行うことができる。つまり、給湯装置は、ガスの燃焼範囲の切り替えを禁止するか否かを、制御量の算出状況と、燃焼範囲の切り替わり状況とに基づいて判断することができる。よって、この給湯装置は、制御量の算出状況から大きく逸脱した切替制限がなされたり、燃焼範囲の切り替わり状況から大きく逸脱した切替制限がなされたりすることを、より確実に抑えることができる。よって、この給湯装置は、不安定な状況下でハンチングがなされることによる給湯動作の不安定化を防ぎやすく、安定的な給湯動作を維持しやすい制限動作を行い得る。
【0013】
〔2〕〔1〕に記載の給湯装置において、上記複数の範囲は、少なくとも第1範囲と上記第1範囲よりも範囲の広い第2範囲とを含む。上記制限条件は、上記算出結果が上記所定条件を満たす場合において、上記ガスバーナにおけるガスの燃焼範囲を上記第1範囲、上記第2範囲、上記第1範囲の順に切り替える条件が成立した場合、又は、上記第2範囲、上記第1範囲、上記第2範囲の順に切り替える条件が成立した場合を条件として含む。上記切替部は、上記制限条件が成立した場合に、上記第1範囲及び上記第2範囲の一方から他方への切り替えを禁止するように上記制限動作を行う。
【0014】
〔2〕の給湯装置は、少なくとも第1範囲と第1範囲よりも燃焼量の大きい第2範囲との間において、ハンチングの発生を推測し得る状態を把握して、ハンチングの発生をより確実に抑制することができる。
【0015】
〔3〕〔1〕又は〔2〕に記載の給湯装置において、上記制御部は、上記入水流量と上記入水温度と上記設定温度とに基づいてフィードフォワード制御量を算出し、上記設定温度と上記出湯温度とに基づいてフィードバック制御量を算出し、上記フィードフォワード制御量と上記フィードバック制御量との和に基づいて上記制御量を算出する。更に、上記制御部は、上記制限条件が成立した場合、上記制御量が所定の上限値を超える場合に上記燃焼量を上記上限値とするように、又は上記制御量が所定の下限値を下回る場合に上記燃焼量を上記下限値とするように、上記燃焼量を制限する。
【0016】
〔3〕の給湯装置は、フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和に基づいて制御量を算出し、この制御量に基づいて燃焼量を決定するような制御を前提とし、制限条件が成立した場合には、燃焼量が上限値を超えること又は下限値を下回ることを抑えるように制限することができる。
【0017】
〔4〕〔3〕に記載の給湯装置において、上記制御部は、上記制御量の算出を繰り返し行い、上記制御量を算出する毎に上記燃焼量を決定する。更に、上記制御部は、上記制限条件が成立した場合において今回の上記制御量を算出する際に、所定のフィードバック演算方式に従い、上記設定温度と上記出湯温度との差に基づいて上記出湯温度を上記設定温度に近づけるための増減値を算出し、前回の上記燃焼量の決定において上記燃焼量の制限があった場合でも、前回の上記フィードバック制御量に基づく基準制御量と、上記増減値と、を加算した値に基づいて今回の上記フィードバック制御量を算出する。
【0018】
〔4〕の給湯装置は、繰り返し行われる制御量の算出では、今回の制御量を算出する際に、設定温度と、出湯温度と、に基づき、出湯温度を設定温度に近づけるための増減値をフィードバック演算方式に従って算出し、前回のフィードバック制御量に基づく基準制御量と、増減値と、を加算した値に基づいて今回のフィードバック制御量を算出することができる。よって、前回のフィードバック制御量を反映した基準制御量を用いつつ、この基準制御量を、出湯温度に基づく増減値によって増減することで、今回のフィードバック制御量をより適切に算出することができる。しかも、前回の燃焼量の決定において燃焼量の制限があった場合でも、前回のフィードバック制御量を用いて今回のフィードバック制御量を算出することができるため、燃焼量の制限によって前回のフィードバック制御量が過度に制限されることを抑えつつ今回のフィードバック制御量をより適切に算出することができる。
【0019】
〔5〕ガスの燃焼範囲として複数の範囲が定められたガスバーナを有する給湯装置であって、
前記給湯装置の外部から水が流れ込む管である入水管と、
前記給湯装置の外部に湯を流す管である出湯管と、
前記入水管を流れる水の流量である入水流量を検出する流量検出部と、
前記入水管を流れる水の温度である入水温度を検出する入水温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度である出湯温度を検出する出湯温度検出部と、
前記出湯管を流れる湯の温度を設定する出湯温度設定部と、
前記入水流量と前記入水温度と前記出湯温度設定部によって設定される設定温度とに基づいてフィードフォワード制御量を算出し、所定のフィードバック演算方式に従ってフィードバック制御量を算出し、前記フィードフォワード制御量と前記フィードバック制御量との和に基づいて前記ガスバーナでの燃焼量を定めるための制御量を算出する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記制御量の算出を繰り返し行い、前記制御量を算出する毎に前記燃焼量を決定し、
予め定められた制限条件が成立した場合、前記制御量が所定の上限値を超える場合に前記燃焼量を前記上限値とするように、又は前記制御量が所定の下限値を下回る場合に前記燃焼量を前記下限値とするように、前記燃焼量を制限し、
前記制限条件が成立した場合において今回の前記制御量を算出する際に、前記設定温度と、前記出湯温度と、に基づき、前記出湯温度を前記設定温度に近づけるための増減値を前記フィードバック演算方式に従って算出し、前回の前記燃焼量の決定において前記燃焼量の制限があった場合でも、前回の前記フィードバック制御量に基づく基準制御量と、前記増減値と、を加算した値に基づいて今回の前記フィードバック制御量を算出する
給湯装置。
【0020】
〔5〕の給湯装置は、フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和に基づいて制御量を算出し、この制御量に基づいて燃焼量を決定するような制御を前提とし、制限条件が成立した場合には、燃焼量が上限値を超えること又は下限値を下回ることを抑えるように制限することができる。更に、繰り返し行われる制御量の算出では、今回の制御量を算出する際に、設定温度と、出湯温度と、に基づき、出湯温度を設定温度に近づけるための増減値をフィードバック演算方式に従って算出し、前回のフィードバック制御量に基づく基準制御量と、増減値と、を加算した値に基づいて今回のフィードバック制御量を算出することができる。よって、前回のフィードバック制御量を反映した基準制御量を用いつつ、この基準制御量を、出湯温度に基づく増減値によって増減することで、今回のフィードバック制御量をより適切に算出することができる。しかも、前回の燃焼量の決定において燃焼量の制限があった場合でも、前回のフィードバック制御量を用いて今回のフィードバック制御量を算出することができるため、燃焼量の制限によって前回のフィードバック制御量が過度に制限されることを抑えつつ今回のフィードバック制御量をより適切に算出することができる。
【0021】
〔6〕〔4〕又は〔5〕に記載の給湯装置において、上記制御部は、上記制限条件が成立した場合、上記制御量が上記上限値よりも大きい第2上限値を超える場合に上記制御量を上記第2上限値以下とするように上記フィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理、又は、上記制御量が上記下限値よりも小さい第2下限値を下回る場合に上記制御量を上記第2下限値以上とするように上記フィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理を行う。更に、上記制御部は、前回の上記燃焼量の算出の際に上記補正値が算出された場合、今回の上記制御量の算出の際に、前回の上記フィードバック制御量に代えて上記補正値に基づいて上記基準制御量を決定し、前回の上記燃焼量の算出の際に上記制御量が上記上限値よりも大きく上記第2上限値よりも小さい場合、又は、上記制御量が上記下限値よりも小さく上記第2下限値よりも大きい場合、今回の上記制御量の算出の際に、前回の上記フィードバック制御量に基づいて上記基準制御量を決定する。
【0022】
〔6〕の給湯装置は、前回の燃焼量の算出の際に補正値が算出された場合(即ち、前回の制御量が上限値よりも大きい第2上限値又は下限値よりも小さい第2下限値を逸脱する場合)には、今回の制御量の算出の際に、前回のフィードバック制御量に代えて補正値に基づいて基準制御量を決定することができる。つまり、演算によって得られた前回のフィードバック制御量が、上限値及び下限値よりも大きく逸脱するように燃焼量を決定する値である場合、今回の燃焼量の算出において今回のフィードバック制御量を算出する際には、前回のフィードバック制御量をそのまま用いるのではなく、これに代えて補正値を用いて今回のフィードバック制御量を算出することができる。しかも、補正値は、「制御量が上限値よりも大きい第2上限値を超える場合に制御量を第2上限値以下とするようにフィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理、又は、制御量が下限値よりも小さい第2下限値を下回る場合に制御量を第2下限値以上とするようにフィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理」によって得られる値であるため、制限が過剰すぎる値になることを抑えることができる。一方で、前回の燃焼量の算出の際に制御量が上限値よりも大きく第2上限値よりも小さい場合、又は、制御量が下限値よりも小さく第2下限値よりも大きい場合には、今回の制御量の算出の際に、前回の上記フィードバック制御量に基づいて基準制御量を決定することができる。つまり、前回の燃焼量の算出の際に、燃焼量が上限値又は下限値に基づいて制限されるような場合であっても、第2上限値又は第2下限値に到達していなければ、今回の制御量の算出では、補正値のように制限された値ではなく、前回のフィードバック制御量(制限されていない値)を用いて基準制御量を決定し、今回のフィードバック制御量を算出することができる。よって、燃焼量を繰り返し算出する際に、「前回のフィードバック制御量」が制限された形でのフィードバック演算が繰り返されることに起因する追従性又は応答性の低下を抑えることができる。
【0023】
〔7〕〔1〕から〔6〕のいずれか一つに記載の給湯装置において、上記制御部は、上記入水流量と上記入水温度と上記設定温度とに基づいて上記ガスバーナでの燃焼量のフィードフォワード制御量を算出し、上記制限条件は、上記フィードフォワード制御量が所定の安定条件を満たす場合を条件として含む。
【0024】
〔7〕の給湯装置は、フィードフォワード制御量が安定しているときに制限動作を行うことができるため、フィードフォワード制御が不安定になされる状況で制限動作を行うことを回避しやすい。
【0025】
〔8〕〔7〕に記載の給湯装置において、上記所定の安定条件は、上記制御部が上記フィードフォワード制御量を複数回算出した場合の最大値と最小値との差の絶対値が制限範囲内に収まる場合である。
【0026】
〔8〕の給湯装置は、フィードフォワード制御量が安定しているか否かをより適切に評価することができ、フィードフォワード制御が不安定になされる状況で制限動作を行うことをより確実に回避しやすい。
【0027】
〔9〕〔7〕又は〔8〕に記載の給湯装置において、上記制御部は、上記設定温度と上記出湯温度とに基づいて上記ガスバーナでの燃焼量のフィードバック制御量を算出し、上記所定の安定条件は、上記フィードフォワード制御量と上記フィードバック制御量との和が所定範囲内となる場合を条件として含む。
【0028】
〔9〕の給湯装置は、フィードフォワード制御量とフィードバック制御量が安定しているときに制限動作を行うことができるため、制御量が不安定な状況で制限動作を行うことを、より確実に回避しやすい。
【0029】
〔10〕〔1〕から〔9〕のいずれか一つに記載の給湯装置において、上記切替部は、上記制限条件の成立に応じて上記制限動作を開始した後、終了条件が成立した場合に上記制限動作の実行を解除する。
【0030】
〔10〕の給湯装置は、制限動作を開始した後、その制限動作を終了条件が成立するまで継続することができ、終了条件が成立した場合に制限動作を解除することができる。
【0031】
<第1実施形態>
第1実施形態は、
図1~
図3を参照して以下で説明する。
(給湯装置1の構成)
図1に示される給湯装置1は、外部から供給された水道水を加熱して出湯させる機能を有する。給湯装置1は、第1ガスバーナ2、入水管4、出湯管6、熱交換器8、第1連結管15、ファン31などを備えている。第1ガスバーナ2は、複数のバーナを有するバーナ群として構成されている。入水管4は、給湯装置1の外部(水入口16)から水が流れ込む管として構成され、出湯管6は、出湯口18を介して外部に湯を流す管として構成されている。熱交換器8は、入水管4と出湯管6との間に介在する給湯側伝熱管部11を備えており、給湯側伝熱管部11の内部を通る水に対して第1ガスバーナ2での燃焼によって生じた熱を伝えるように機能する部分である。ファン31は、第1ガスバーナ2に燃焼用空気を供給する。
【0032】
第1ガスバーナ2は、第1バーナ群30A、第2バーナ群30B、および第3バーナ群30Cを備えている。各バーナ群30A~30Cには、ガス供給管32により燃料ガスが供給される。ガス供給管32には、上流側から順に、元ガス電磁弁33、ガス比例弁34、切換ガス電磁弁35A,35B,35Cが設けられている。元ガス電磁弁33が開弁すると、各バーナ群30A~30Cに燃料ガスが供給され、元ガス電磁弁33が閉弁すると、各バーナ群30A~30Cへの燃料ガスの供給が遮断される。ガス比例弁34は、各バーナ群30A~30Cへの燃料ガスの供給量を調整する。切換ガス電磁弁35A,35B,35Cは、それぞれ第1バーナ群30A、第2バーナ群30B、および第3バーナ群30Cに対応して設けられている。切換ガス電磁弁35A,35B,35Cは、第1ガスバーナ2への燃料供給量を調整することで第1ガスバーナ2の燃焼量を調整するように機能する。切換ガス電磁弁35A,35B,35Cが開弁すると、対応する第1バーナ群30A、第2バーナ群30B、および第3バーナ群30Cに燃料ガスが供給される。切換ガス電磁弁35A,35B,35Cが閉弁すると、対応する第1バーナ群30A、第2バーナ群30B、および第3バーナ群30Cへの燃料ガスの供給が遮断される。切換ガス電磁弁35A,35B,35Cのそれぞれの開弁または閉弁を切り換えることで、第1バーナ群30A、第2バーナ群30B、および第3バーナ群30Cの燃焼範囲を切り換えることができる。
【0033】
給湯装置1は、第1ガスバーナ2での燃焼範囲を3段階に切換可能である。最も燃焼量が低い(最も燃焼範囲が小さい)第1範囲R1は、第1バーナ群30Aを燃焼させ、第2バーナ群30B、第3バーナ群30Cを燃焼させない燃焼範囲である。第1範囲R1よりも燃焼量が高い(第1範囲R1よりも燃焼範囲が大きい)第2範囲R2は、第1バーナ群30Aと第2バーナ群30Bを燃焼させ、第3バーナ群30Cを燃焼させない燃焼範囲である。第2範囲R2よりも燃焼量が高い(第2範囲R2よりも燃焼範囲が大きい)第3範囲R3は、最も燃焼量が高く(最も燃焼範囲が大きく)、第1バーナ群30A、第2バーナ群30B、第3バーナ群30Cを全て燃焼させる燃焼範囲である。
【0034】
図2のように、第1範囲R1における最大燃焼量Q1max(第1範囲R1の上限値)は、第2範囲R2における最小燃焼量Q2min(第2範囲R2の下限値)より高い。第2範囲R2における最大燃焼量Q2max(第2範囲R2の上限値)は、第3範囲R3における最小燃焼量Q3min(第3範囲R3の下限値)より高い。
図2のように、燃焼範囲と、その燃焼範囲内での燃焼量に応じてファン31の回転数が予め設定されている。コントローラ28は、燃焼範囲と燃焼量とに基づいて、設定された回転数でファン31を回転する。燃焼量の単位は、例えば、kcal/hである。
【0035】
図1のように、給湯装置1は、第1ガスバーナ2の近傍に、第1ガスバーナ2に点火するための点火プラグ36が設けられている。給湯装置1は、点火プラグ36に高電圧を印加して火花放電を生じさせるイグナイタ(図示略)が設けられている。
【0036】
図1に示すように、給湯装置1は、入水温度センサ41、流量センサ42、水量調整弁43、および出湯温度センサ44が設けられている。入水温度センサ41は、入水管4を流れる水の温度(入水温度)を検出する。入水温度センサ41は、入水温度検出部の一例に相当する。流量センサ42は、入水管4を流れる水の流量(入水流量)を検出する。流量センサ42は、流量検出部の一例に相当する。給湯装置1において浴槽20に向けて湯水が供給されていない場合(出湯管6から浴槽20に向かう経路での電磁弁が遮断されている場合)、入水流量は、出湯管6からの出湯流量に相当する。水量調整弁43は、入水管4に供給される水の流量を調節する。出湯温度センサ44は、出湯管6から供給される湯の温度(出湯温度)を検知する。出湯温度センサ44は、出湯温度検出部の一例に相当する。
【0037】
熱交換器8は、第1ガスバーナ2でのガスの燃焼によって生じた燃焼排気の熱を、熱交換器8内を通る水に伝達する。熱交換器8は、一次熱交換器9及び二次熱交換器10を備えており、一次熱交換器9は、第1ガスバーナ2の燃焼排気経路の上流側に配置され、二次熱交換器10は、燃焼排気経路の下流側に配置されている。給湯側伝熱管部11は、第1伝熱管部12及び第3伝熱管部13を備えており、第1伝熱管部12は二次熱交換器10に備えられており、第3伝熱管部13は一次熱交換器9に備えられている。入水管4の下流側には、二次熱交換器10の第1伝熱管部12が接続されており、第1伝熱管部12の下流側には、第1連結管15が接続されている。第1連結管15の下流側には、一次熱交換器9の第3伝熱管部13が接続されており、第3伝熱管部13の下流側には、出湯管6が接続されている。
【0038】
熱交換器8は、一次熱交換器9によって燃焼排気の顕熱を回収した後、二次熱交換器10によって潜熱を回収するように機能する。具体的には、一次熱交換器9は、第3伝熱管部13内を通る水に対して第1ガスバーナ2で発生した燃焼排気に含まれる燃焼熱を伝熱し、顕熱の熱エネルギーを通水に伝達する形で熱交換する。また、二次熱交換器10は、第1伝熱管部12内を通る水に対し、第1ガスバーナ2で発生した燃焼排気が一次熱交換器9を通過した後の燃焼熱を伝熱し、潜熱の熱エネルギーを通水に伝達するように熱交換する。
【0039】
また、給湯装置1は、第2ガスバーナ102、往き配管104、戻り配管106、第2連結管115などを備えており、上述した熱交換器8を利用して風呂の追い炊き等を行う機能を有する。第2ガスバーナ102(風呂バーナ)は、燃焼ガスを燃焼させて燃焼排気(排気ガス)を発生させる部分である。往き配管104は、入口116を介して浴槽20側からの水を熱交換器8へと導く経路である。戻り配管106は、熱交換器8からの水を、出口118を介して浴槽20側へと導く経路である。上述した熱交換器8は、往き配管104と戻り配管106との間に介在する風呂側伝熱管部111を備えており、風呂側伝熱管部111の内部を通る水に対して第2ガスバーナ102での燃焼によって生じた熱を伝えるように機能する。
【0040】
風呂側伝熱管部111は、第2伝熱管部112及び第4伝熱管部113を備えており、第2伝熱管部112は二次熱交換器10に備えられており、第4伝熱管部113は一次熱交換器9に備えられている。往き配管104の下流側には、二次熱交換器10の第2伝熱管部112が接続されており、第2伝熱管部112の下流側には、第2連結管115が接続されている。第2連結管115の下流側には、一次熱交換器9の第4伝熱管部113が接続されており、この伝熱管部の下流側には、戻り配管106が接続されている。
【0041】
上述した一次熱交換器9は、第4伝熱管部113内を通る水に対して第2ガスバーナ102で発生した燃焼排気に含まれる燃焼熱を伝熱し、顕熱の熱エネルギーを通水に伝達する形で熱交換する。また、二次熱交換器10は、第2伝熱管部112内を通る水に対し、第2ガスバーナ102で発生した燃焼排気が一次熱交換器9を通過した後の燃焼熱を伝熱し、潜熱の熱エネルギーを通水に伝達するように熱交換する。
【0042】
また、給湯装置1は、ドレン配管22及び中和器24を備える。ドレン配管22は、上流側が二次熱交換器10のドレン継手26(
図3参照)に接続されており、下流側が中和器24に接続されている。二次熱交換器10において潜熱の回収によって生じたドレンは、ドレン継手26を介して二次熱交換器10の外部に排出され、ドレン配管22を通じて中和器24に送られる。
【0043】
また、給湯装置1は、制御装置としてのコントローラ28を備える。コントローラ28は、例えば、公知のマイクロコンピュータ等として構成されており、給湯装置1に設けられた様々なセンサからの信号を取得可能に構成されており、給湯装置1に設けられた様々なアクチュエータを制御し得る構成となっている。例えば、給湯装置1は、図示しない通水センサによって入水管4内の通水を検知した場合に、第1ガスバーナ2を動作させて湯を生成することを行う。別の例として、給湯装置1は、図示しない通水センサによって往き配管104内の通水を検知した場合に、第2ガスバーナ102を動作させて風呂の追い炊き等を行う。給湯装置1は、図示しない給湯リモコン(リモートコントローラ)を備えている。コントローラ28は、「出湯温度設定部」の一例に相当し、給湯リモコンなどの操作部に対するユーザの操作(例えば、所望の出湯温度を入力する操作等)に基づいて、出湯管6を流れる湯の温度(設定温度、目標温度)を設定するように機能する。コントローラ28(出湯温度設定部)は、操作部による入力やその他の情報入力によって設定温度が入力された場合に、設定された出湯温度を記憶しておく機能を有する。
【0044】
コントローラ28は、「制御部」の一例に相当し、入水流量(以下、入水量ともいう)Wと、入水温度Tiと、設定温度Tsと、出湯温度Toと、に基づいて第1ガスバーナ2の燃焼量を制御するための制御量を算出するように機能する。入水流量(入水量)Wの単位は、例えば、l/minである。入水温度Tiの単位は、例えば℃である。設定温度Tsの単位は、例えば℃である。出湯温度Toの単位は、例えば℃である。制御量の単位は、例えば、kcal/hである。n回目の演算で算出される制御量をFn(kcal/h)とした場合、制御量Fnは、Fn=FF+FBnによって決定することができる。なお、FFは、フィードフォワード制御量であり、FBnは、n回目の演算で算出されるフィードバック制御量である。フィードフォワード制御量の単位は、例えば、kcal/hである。フィードバック制御量の単位は、例えば、kcal/hである。本実施形態では、コントローラ28(制御部)は、制御量の算出を繰り返し行い、制御量を算出する毎に制御量に基づいて燃焼量を決定する。例えば、n回目の演算で制御量Fnを算出した場合、制御量Fnに基づいてn回目の演算に基づく燃焼量Qnを決定する。
【0045】
コントローラ28は、「切替部」の一例に相当し、制御量の算出結果に基づいて燃焼量を決定し、決定された燃焼量に基づいて第1ガスバーナ2において燃料が供給される燃焼範囲を複数の範囲において切り替えるように機能する。なお、制御量に基づいて燃焼量を決定する方法は後に詳述される。具体的には、コントローラ28は、切換ガス電磁弁35A,35B,35Cを制御し、各バーナ群30A~30Cのうち、燃料が供給されるバーナ群を切り替えることによって第1ガスバーナ2の燃焼範囲を、第1範囲R1、第2範囲R2、第3範囲R3のいずれかに切り替える。例えば、コントローラ28は、切換ガス電磁弁35A,35B,35Cを制御することで、第1ガスバーナ2の燃焼範囲を第1範囲R1及び第2範囲R2の一方から他方に切り替えることができ、第1ガスバーナ2の燃焼範囲を第2範囲R2及び第3範囲R3の一方から他方に切り替えることができる。
【0046】
コントローラ28は、第1ガスバーナ2が第1範囲R1で燃焼を継続している間、周期的に繰り返し算出される燃焼量が最大燃焼量Q1max(第1範囲R1の上限値)以下で継続する場合、第1ガスバーナ2の燃焼範囲を第1範囲R1で維持しつつ、算出される燃焼量で第1ガスバーナ2を燃焼させるように制御する。コントローラ28は、第1ガスバーナ2が第1範囲R1で燃焼を継続しているときに、算出される燃焼量が最大燃焼量Q1max(第1範囲R1の上限値)を超えた場合、予め定められた制限条件が成立していなければ、燃焼範囲を第1範囲R1から第2範囲R2に切り替える。
【0047】
コントローラ28は、第1ガスバーナ2が第2範囲R2で燃焼を継続している間、周期的に繰り返し算出される燃焼量が最大燃焼量Q2max(第2範囲R2の上限値)以下であり最小燃焼量Q2min(第2範囲R2の下限値)以上である場合、第1ガスバーナ2の燃焼範囲を第2範囲R2で維持しつつ、算出される燃焼量で第1ガスバーナ2を燃焼させるように制御する。コントローラ28は、第1ガスバーナ2が第2範囲R2で燃焼を継続しているときに算出される燃焼量が最大燃焼量Q2max(第2範囲R2の上限値)を超えた場合、予め定められた制限条件が成立していなければ、燃焼範囲を第2範囲R2から第3範囲R3に切り替える。コントローラ28は、第1ガスバーナ2が第2範囲R2で燃焼を継続しているときに算出される燃焼量が最小燃焼量Q2min(第2範囲R2の下限値)を下回った場合、予め定められた制限条件が成立していなければ、燃焼範囲を第2範囲R2から第1範囲R1に切り替える。
【0048】
コントローラ28は、第1ガスバーナ2が第3範囲R3で燃焼を継続している間、繰り返し算出される燃焼量が最小燃焼量Q3min(第3範囲R3の下限値)以上である場合、第1ガスバーナ2の燃焼範囲を第3範囲R3で維持しつつ、算出される燃焼量で第1ガスバーナ2を燃焼させるように制御する。コントローラ28は、第1ガスバーナ2が第3範囲R3で燃焼を継続しているときに算出される燃焼量が最小燃焼量Q3min(第3範囲R3の下限値)を下回った場合、予め定められた制限条件が成立していなければ、燃焼範囲を第3範囲R3から第2範囲R2に切り替える。
【0049】
このように、コントローラ28は、第1ガスバーナ2を所定の燃焼範囲で燃焼させているときに、周期的に繰り返し算出される燃焼量が当該燃焼範囲の上限値以下であり下限値以上である場合、第1ガスバーナ2の燃焼範囲を当該燃焼範囲で維持しつつ、算出される燃焼量で第1ガスバーナ2を燃焼させるように制御する。コントローラ28は、第1ガスバーナ2が当該燃焼範囲で燃焼を継続しているときに算出される燃焼量が当該燃焼範囲の上限値を超えた場合、予め定められた制限条件が成立していなければ、ガスの燃焼の範囲を当該燃焼範囲から当該燃焼範囲よりも1段階大きい燃焼範囲に切り替える。コントローラ28は、第1ガスバーナ2が当該燃焼範囲で燃焼を継続しているときに算出される燃焼量が当該燃焼範囲の下限値を下回った場合、予め定められた制限条件が成立していなければ、ガスの燃焼の範囲を当該燃焼範囲から当該燃焼範囲よりも1段階小さい燃焼範囲に切り替える。なお、いずれかの燃焼範囲(例えば第1範囲R1)に下限値が設定されていなくてもよく、この場合、この燃焼範囲(例えば第1範囲R1)での燃焼中には、常に下限値以上であるとすればよい。また、いずれかの燃焼範囲(例えば第3範囲R3)に上限値が設定されていなくてもよく、この場合、この燃焼範囲(例えば第3範囲R3)での燃焼中には、常に上限値以下であるとすればよい。
【0050】
コントローラ28は、「フィードフォワード制御部」の一例に相当する。コントローラ28は、入水流量(入水量)Wと、入水温度Tiと、設定温度Tsと、に基づいて、フィードフォワード制御量FFを算出するように機能する。フィードフォワード制御量FFを求めるためのフィードフォワード演算は、特開平9-113031号公報などに開示される公知の方法に基づいて行うこともでき、後述の数1の式によって算出してもよい。なお、以下で説明される代表例では、数1の式によってフィードフォワード制御量FFが算出される。
【0051】
【0052】
数1において、FFは、フィードフォワード制御量である。Tsは、設定温度であり、Tiは、入水温度であり、Wは入水量である。ηは熱効率であり、予め定められた既知の値である。熱効率の単位は、例えば、(%)である。数1において「60」の数値は、係数であり、他の固定値Aに置き換えてられてもよい。
【0053】
コントローラ28は、「フィードバック制御部」の一例に相当し、設定温度Tsと、出湯温度センサ44によって検出される出湯温度Toと、に基づいてフィードバック制御量FBnを算出する。具体的には、設定温度Tsと出湯温度Toとの偏差(Ts-To)に基づいて、その偏差(Ts-To)を小さくするようにフィードバック制御量を算出する。フィードバック制御量を求めるためのフィードバック演算は、公知のPI方式の演算であってもよく、PD方式の演算であってもよく、PID方式の演算であってもよい。例えば、フィードバック演算は、特開平8-14540号公報などに開示される公知の方法によって行うこともでき、後述の数2、数3の式によって算出してもよい。以下で説明される代表例では、n回目の演算でのフィードバック制御量FBnが数2、数3の式によって算出される。
【0054】
【0055】
【0056】
数2において、FBnは、n回目の演算においてフィードバック演算で算出されるフィードバック制御量である。FBn-1は、n-1回目の演算においてフィードバック演算で算出されるフィードバック制御量である。n-1回目の演算において所定の補正条件が成立していない場合(後述の補正値αn-1が算出されていない場合)には、FBn-1は、n-1回目の演算においてフィードバック演算で算出されるフィードバック制御量である。n-1回目の演算において所定の補正条件が成立している場合(後述の補正値αn-1が算出されている場合)には、FBn-1は、数4の式のように補正値αn-1に置き換えられる。補正条件及び補正値の算出方法については後述される。Wperは、n-1回目の演算時の入水量と、n回目の演算時の入水量とを比較したときの水量変化率(%)であり、n-1回目の演算時の入水量に対するn回目の演算時の入水量の割合を示す値である。FBn-1×Wperの値は、基準制御量の一例に相当する。Kpは比例ゲインであり、Kdは、微分ゲインであり、Kiは、積分ゲインである。ΔFBは、Ts-Toを偏差とするPID演算によって算出されるPID演算値であり、増減値の一例に相当する。Ts-Toを偏差とするPID演算は、公知の方法を用いることができる。コントローラ28(制御部)は、n回目の演算において今回の制御量Fnを算出する際に、所定のフィードバック演算方式(例えば数3を用いたフィードバック演算方式)に従い、設定温度Tsと出湯温度Toとの差に基づいて出湯温度Toを設定温度Tsに近づけるための増減値ΔFBを算出する。そして、コントローラ28(制御部)は、上記の数2の式により、前回のフィードバック制御量FBn-1に基づく基準制御量(FBn-1×Wper)と、増減値ΔFBと、を加算した値に基づいて今回のフィードバック制御量FBnを算出する。なお、以下の説明の代表例では、基準制御量(FBn-1×Wper)と増減値ΔFBとを加算した加算値が今回のフィードバック制御量FBnとされるが、加算値に対して所定の係数を乗じたり、他の加算値を加えたりして補正して今回のフィードバック制御量FBnを決定してもよい。
【0057】
(給湯装置の燃焼制御)
以下の説明は、給湯装置1による燃焼制御に関する。
図3の制御は、給湯装置1においてコントローラ28によって実行される制御である。給湯装置1は、点火操作がなされた場合に第1ガスバーナ2を点火させて燃焼を開始することで、
図2、
図3で説明される燃焼制御を開始する。
【0058】
コントローラ28は、予め定められた制限条件が成立した場合に、燃焼範囲の切り替えの禁止を含む制限動作を行う。制限動作には、燃焼範囲の切り替えの禁止の他の制御が含まれていてもよい。例えば、制限動作には、設定温度の変更の禁止などの制御が含まれていてもよく、現在の燃焼範囲で定められた上限値を超える燃焼量での燃焼を禁止する制御や、現在の燃焼範囲で定められた下限値を下回る燃焼量での燃焼を禁止する制御などが含まれていてもよい。
【0059】
予め定められた制限条件が成立した場合とは、例えば、「制御量の算出結果が所定条件を満たす場合において、燃焼範囲を複数の範囲において所定の順序で切り替える条件が成立した場合」である。所定条件を満たす場合とは、例えば、「フィードフォワード制御量が所定の安定条件を満たす場合」である。例えば、制限条件が成立した場合とは、制御量(フィードフォワード制御量)の算出結果が所定条件を満たす場合において、第1ガスバーナ2での燃焼範囲を第1範囲R1、第2範囲R2、第1範囲R1の順に切り替える条件が成立した場合、又は、第2範囲R2、第1範囲R1、第2範囲R2の順に切り替える条件が成立した場合である。或いは、制限条件が成立した場合とは、制御量(フィードフォワード制御量)の算出結果が所定条件を満たす場合において、第1ガスバーナ2での燃焼範囲を第2範囲R2、第3範囲R3、第2範囲R2の順に切り替える条件が成立した場合、又は、第3範囲R3、第2範囲R2、第3範囲R3の順に切り替える条件が成立した場合であってもよい。
【0060】
図3の制御では、まず、コントローラ28は、ステップS11において、フィードフォワード制御量が安定状態であるか否か判断する。すなわち、コントローラ28は、算出したフィードフォワード制御量FFが安定条件を満たすか否か判断する。安定条件の成立とは、フィードフォワード制御量FFを複数回サンプリングした場合の最大値及び最小値が、直近の複数回のサンプリングの平均値に基づいて定められる制限範囲内となる場合である。安定条件は、例えば、下記(1)式を満たす場合に成立する。コントローラ28は、上述のように、各周期において、入水流量(入水量)Wと入水温度Tiと設定温度Tsとに基づき、第1ガスバーナ2での燃焼量を決定するための要素となるフィードフォワード制御量FFを算出する。具体的には、コントローラ28は、所定周期(例えば100ミリ秒の周期)でフィードフォワード制御量FFを算出(サンプリング)し、更に、フィードフォワード制御量FFを算出する毎に、直近の所定回数(例えば、直近の10回)のフィードフォワード制御量(FFdate)を特定し、これら所定回数のフィードフォワード制御量(FFdate)の中から最大値(FFdateの最大値)および最小値(FFdateの最小値)を特定し、上記所定回数のフィードフォワード制御量(FFdate)の中から上記最大値および上記最小値を除いた残りのフィードフォワード制御量の平均値を、FFdateの平均値(第1データ)として算出する。そして、コントローラ28は、直近の所定回数のフィードフォワード制御量(FFdate)について、下記(1)式が成立しているか否か判断する。
|FFdateの最大値-FFdateの最小値|<FFdateの平均値×10% …(1)式
【0061】
すなわち、コントローラ28は、直近の所定回数のフィードフォワード制御量(例えば、過去10回分算出したフィードフォワード制御量FF)のうち最大値(FFdateの最大値)と最小値(FFdateの最小値)の差分の絶対値が、上記FFdateの平均値に対する10%の値よりも小さい場合に、安定条件を満たすと判断し、そうでない場合に、安定条件を満たさないと判断する。安定条件を満たす場合は、制御量の算出結果が所定条件を満たす場合の一例に相当し、安定条件を満たさない場合は、制御量の算出結果が所定条件を満たさない場合の一例に相当する。コントローラ28は、(1)式が成立していない場合(ステップS11でNo)、(1)式が成立していると判断するまで、ステップS11の処理を繰り返し行う。一方で、コントローラ28は、(1)式が成立していると判断する場合(ステップS11でYes)、ステップS12に進む。
【0062】
上述の代表例では、(1)式が成立している場合が安定条件を満たす場合の一例に相当し、(1)式が成立していない場合が安定条件を満たさない場合の一例に相当したが、この例に限定されない。例えば、|FFdateの最大値-FFdateの最小値|が所定値以下である場合が安定条件を満たし、そうでない場合が安定条件を満たさないとしてもよい。或いは、上記所定回数のフィードフォワード制御量の分散又は標準偏差が所定の数値条件を満たす場合に、安定条件を満たし、そうでない場合が安定条件を満たさないとしてもよい。
【0063】
コントローラ28は、ステップS12で、第1ガスバーナ2の燃焼範囲が特定の燃焼範囲間で変化するか否か判断する。以下の説明では、「特定の燃焼範囲間での変化」は、例えば、第1ガスバーナ2の燃焼範囲が第1範囲R1、第2範囲R2、第1範囲R1の順、又は第2範囲R2、第1範囲R1、第2範囲R2の順に切り替わることである。但し、この例に限定されるわけではなく、第1ガスバーナ2の燃焼範囲が第2範囲R2、第3範囲R3、第2範囲R2の順、又は第3範囲R3、第2範囲R2、第3範囲R3の順に切り替わることであってもよい。或いは、第1ガスバーナ2の燃焼範囲が第1範囲R1、第2範囲R2、第1範囲R1、第2範囲R2の順、又は第2範囲R2、第1範囲R1、第2範囲R2、第1範囲R1の順に切り替わることであってもよい。なお、第1ガスバーナ2の燃焼範囲が特定の燃焼範囲間で変化したか否かの判断は、所定時間内に特定の燃焼範囲間で変化したか否かを判断してもよい。
【0064】
コントローラ28は、第1ガスバーナ2の燃焼範囲が特定の燃焼範囲間で変化していないと判断する場合(ステップS12でNo)、再びステップS11の処理を行う。一方で、コントローラ28は、第1ガスバーナ2の燃焼範囲が特定の燃焼範囲間で変化したと判断する場合(ステップS12でYes)、ステップS13に進む。
【0065】
コントローラ28は、ステップS13で、最新のフィードフォワード制御量FF(最後に算出した今回のフィードフォワード制御量(現在のフィードフォワード制御量)FF)、および直近の所定回数のフィードフォワード制御量(例えば、今回のフィードフォワード制御量を含む過去10回分のフィードフォワード制御量(FFdate)を記録する。
【0066】
コントローラ28は、続くステップS14で、第1ガスバーナ2の燃焼範囲が特定の燃焼範囲間で切り替わることを禁止する。具体的には、コントローラ28は、現在の燃焼範囲が第1範囲R1又は第2範囲R2のいずれかである場合、制限条件が成立した場合には、第1ガスバーナ2における燃焼の範囲を第1範囲R1及び第2範囲R2の一方から他方へ切り替えることを禁止するように制限動作を行う。このような制限動作は、通常時に第1範囲R1及び第2範囲R2の一方から他方へ切り替わる条件が成立した場合でも行われ、例えば、第1範囲R1での燃焼中に、算出された燃焼量が第1範囲R1の上限値以上となった場合でも、第2範囲R2への切り替えを禁止する。同様に、第2範囲R2での燃焼中に、算出された燃焼量が第2範囲R2の下限値以下となった場合でも、第2範囲R2への切り替えを禁止する。これにより、給湯装置1は、燃焼範囲の切り替えのハンチングが発生することを防ぐことができる。コントローラ28は、ステップS14の処理を行う場合、次に終了条件が成立するまで、燃焼範囲の切り替えの禁止する制御を継続する。
【0067】
コントローラ28は、ステップS14において、燃焼範囲の切り替えの禁止する制御に加えて、燃焼量を制限する制御を開始する。コントローラ28は、ステップS14の処理において、燃焼量を制限する制御を開始した場合、次に終了条件が成立するまでの間、燃焼量を制限する制御を継続する。
【0068】
コントローラ28(制御部)は、少なくとも給湯動作がなされている間、制御量Fnの算出を繰り返し行い、制御量Fnを算出する毎に燃焼量Qnを決定する。具体的には、コントローラ28(制御部)は、各周期において制御量Fnを算出し、予め定められた制限条件(燃焼量の制限条件)が成立している周期では、当該周期で算出された制御量Fnをそのまま燃焼量とするのではなく、当該周期で算出された制御量Fnを所定の制限方式で制限した値を燃焼量とする。
【0069】
コントローラ28は、予め定められた上記制限条件が成立している周期では、フィードフォワード制御量FFとフィードバック制御量FBnの和を制御量Fnとし、この制御量Fnを燃焼量Qnとする。一方、コントローラ28は、予め定められた上記制限条件が成立している周期では、演算によって得られた制御量Fnが所定の上限値(現在の燃焼範囲の上限値)を超える場合、燃焼量Qnを上記上限値(現在の燃焼範囲の上限値)とするように制限した形で燃焼量Qnを決定する。同様に、コントローラ28は、予め定められた制限条件が成立している周期では、演算によって得られた制御量Fnが所定の下限値(現在の燃焼範囲の下限値)を下回る場合、燃焼量Qnを上記下限値(現在の燃焼範囲の下限値)とするように制限した形で燃焼量Qnを決定する。換言すれば、コントローラ28は、予め定められた上記制限条件が成立している周期では、当該周期に算出されたフィードフォワード制御量FFとフィードバック制御量FBnの和が所定の上限値以下となるように又は所定の下限値以上となるようにフィードバック制御量を修正した形で燃焼量を決定する。このような制御を行うことで、上記制限条件(燃焼量の制限条件)が成立している周期では、燃焼量が上限値以下又は下限値以下に制限される。一方で、コントローラ28(制御部)は、上記制限条件(燃焼量の制限条件)が成立していない周期では、当該周期で算出された制御量Fnをそのまま燃焼量Qnとして用いることができる。
【0070】
更に、本実施形態では、上記制限条件(燃焼量の制限条件)が成立している周期では、算出された制御量が上限値(現在の燃焼範囲の上限値)よりも大きい第2上限値(現在の燃焼範囲の上限値よりも大きい第2上限値)を超える場合に制御量を第2上限値以下とするようにフィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理を行う。この場合の補正値は、算出された前回のフィードフォワード制御量を第2上限値(現在の燃焼範囲の上限値よりも大きい第2上限値)から減じた値である。前回の演算で算出される制御量がFn-1であり、上限値がMa1であり、第2上限値がMb1である場合、Mb1>Ma1、Fn-1>Mb1である場合に得られる補正値αn-1は、Mb1-FFn-1=αn-1とすることができる。FFn-1は、前回の制御量Fn-1の算出の際に算出されるフィードフォワード制御量FFである。
【0071】
同様に、上記制限条件(燃焼量の制限条件)が成立している周期では、算出された制御量が下限値(現在の燃焼範囲の下限値)よりも小さい第2下限値(現在の燃焼範囲の下限値よりも小さい第2下限値)を下回る場合に、制御量を第2下限値以上とするようにフィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理を行う。この場合の補正値は、第2下限値(現在の燃焼範囲の下限値よりも小さい第2下限値)から、算出された前回のフィードフォワード制御量を減じた値である。前回の演算で算出される制御量がFn-1であり、下限値がMc1であり、第2下限値がMd1である場合、Md1<Mc1、Fn-1<Md1である場合に得られる補正値αn-1は、Md1-FFn-1=αn-1とすることができる。FFn-1は、前回の制御量Fn-1の算出の際に算出されるフィードフォワード制御量FFである。
【0072】
いずれの場合でも、前回の燃焼量Qn-1の算出の際にこのような補正値αn-1が算出された場合、今回の制御量Fn(FF+FBn)の算出の際に、数3における前回のフィードバック制御量FBn-1に代えて補正値αn-1を用い、この補正値αn-1に基づいて基準制御量(αn-1×Wper)を決定する。例えば、前回のフィードバック制御量FBn-1を補正した形で上述のように得られる補正値がαn-1である場合、以下の数4の式に基づいて今回のフィードバック制御量FBnを算出する。
【0073】
【0074】
例えば、コントローラ28は、第1ガスバーナ2での燃焼範囲が第1範囲R1である場合において、上記制限条件が成立している場合には、燃焼範囲を第1範囲R1から第2範囲R2へ切り替える制御を禁止する。それとともに、コントローラ28は、制御量(フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和)が、第1範囲R1での燃焼量の最大値(最大燃焼量Q1max)の100%の値(第1範囲R1での上限値)以下となるように、フィードバック制御量を減少させて燃焼量を決定する。つまり、この場合、制御量が第1範囲R1での上限値未満である場合には、制御量を燃焼量とし、制御量が第1範囲R1での上限値以上である場合には、第1範囲R1での上限値(第1範囲R1での燃焼量の最大値)を燃焼量とする。この場合、給湯装置1は、第1ガスバーナ2での燃焼範囲が第1範囲R1であるときに、燃焼範囲を第1範囲R1から第2範囲R2へ切り替えることを禁止することができ、更に、算出された制御量が、第1範囲R1での上限値を超える場合には、燃焼量を第1範囲R1での上限値とするように制限することができる。更に、コントローラ28は、制御量(フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和)が、第1範囲R1での第2上限値(例えば、第1範囲R1での燃焼量の最大値(最大燃焼量Q1max)の110%の値)を超える場合、この値(第1範囲R1での第2上限値)に基づいて補正値を決定し、この補正値を、次回の燃焼量の算出の際に、FBn-1の代わりのαn-1として用いることができる。
【0075】
また、例えば、コントローラ28は、第1ガスバーナ2での燃焼範囲が第2範囲R2である場合において、上記制限条件が成立している場合には、燃焼範囲を第2範囲R2から第1範囲R1へ切り替える制御を禁止する。それとともに、コントローラ28は、制御量(フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和)が、第2範囲R2での燃焼量の最小値(最小燃焼量Q2min)の100%の値(第2範囲R2での下限値)よりも小さい場合には、この最小値以上に大きくなるように、フィードバック制御量を増加させて燃焼量を決定する。つまり、この場合、制御量が第2範囲R2での下限値以下である場合には、第2範囲R2での下限値(第2範囲R2での燃焼量の最小値)を燃焼量とする。この場合、給湯装置1は、第1ガスバーナ2での燃焼範囲を第2範囲R2から第1範囲R1へ切り替えることを禁止することができ、算出された制御量が、第2範囲R2での下現値を下回る場合には、燃焼量を第2範囲R2での下限値に制限することができる。更に、コントローラ28は、制御量(フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和)が、第2範囲R2での第2下限値(第2範囲R2での燃焼量の最小値(最小燃焼量Q2min)の90%の値)を下回る場合、この値(第2範囲R2での第2下限値)に基づいて補正値を決定し、この補正値を、次回の燃焼量の算出の際に、FBn-1の代わりのαn-1として用いることができる。
【0076】
このように、制限条件が成立し、燃焼範囲の切り替えの禁止を含む制限動作が行われる場合、燃焼範囲の切り替えが生じるような制御量が不要となる。そこで、給湯装置1は、フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和が所定の上限値未満となるように又は所定の下限値を超えるようにフィードバック制御量を制限する。これにより、燃焼範囲の切り替えに伴う燃焼量の大きな変化を生じさせるような制御を抑制することができる。
【0077】
更に、前回の燃焼量の算出の際に補正値αn-1が算出された場合には、今回の制御量の算出の際に、前回のフィードバック制御量FBn-1に代えて補正値αn-1に基づいて基準制御量を決定することができるため、演算によって得られた前回のフィードバック制御量FBn-1が、上限値及び下限値を大きく逸脱するように決定する値である場合、今回の燃焼量の算出において今回のフィードバック制御量FBnを算出する際には、前回のフィードバック制御量FBn-1をそのまま用いるのではなく、これに代えて補正値αn-1を用いて今回のフィードバック制御量FBnを算出することができる。しかも、補正値αn-1は、「制御量が上限値よりも大きい第2上限値を超える場合に制御量を第2上限値以下とするようにフィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理、又は、制御量が下限値よりも小さい第2下限値を下回る場合に制御量を第2下限値以上とするようにフィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理」によって得られる値であるため、上記上限値又は上記下限値に基づいて制限する場合よりも余裕を持たせることができ、過剰すぎる制限値になることを抑えることができる。
【0078】
コントローラ28は、ステップS14の後、続くステップS15で、出湯温度センサ44によって検知される出湯温度(出湯管6から供給される湯の温度)が安定状態にあるか否か判断する。例えば、コントローラ28は、出湯温度が±0.5℃以上変化しない状態で30秒間維持されているか否か判断する。コントローラ28は、出湯温度が安定状態にあると判断する場合(ステップS15でYes)、ステップS16に進む。一方で、コントローラ28は、出湯温度が安定状態にないと判断する場合(ステップS15でNo)、後述するステップS18に進む。
【0079】
コントローラ28は、ステップS16で、下記(2)式を満たすか否か判断する。
|出湯温度-設定温度|>許容温度差 …(2)式
【0080】
すなわち、コントローラ28は、出湯温度センサ44によって検出される出湯温度と、設定された出湯温度と、の差分の絶対値が、所定の許容温度差よりも大きいか否か判断する。許容温度差は、予め定められた固定値であり、例えば3℃などである。コントローラ28は、上記(2)式を満たすと判断する場合、第1ガスバーナ2の燃焼範囲を特定の燃焼範囲に切り替える。例えば、コントローラ28は、出湯温度が設定温度よりも3℃以上低いと判断する場合、第1ガスバーナ2の燃焼範囲を第1範囲R1から第2範囲R2に切り替える。例えば、コントローラ28は、出湯温度が設定温度よりも3℃以上高いと判断する場合、第1ガスバーナ2の燃焼範囲を第2範囲R2から第1範囲R1に切り替える。コントローラ28は、ステップS16の後、再びステップS14を行う。一方で、コントローラ28は、上記(2)式を満たさないと判断する場合、後述するステップS18に進む。例えば、コントローラ28は、出湯温度と設定温度の差分が3℃よりも小さいと判断する場合、ステップS18に進む。
【0081】
コントローラ28は、制限条件の成立に応じて制限動作を開始した後(ステップS14の後)、終了条件(下記(3)式)が成立した場合に制限動作の実行を解除する。まず、コントローラ28は、ステップS18で、下記(3)式を満たすか否か判断する。
|最新のフィードフォワード制御量-FFdate|>許容FF値変化量 …(3)式
【0082】
すなわち、コントローラ28は、算出した最新のフィードフォワード制御量(所定のフィードフォワード制御値)と、ステップS13で記録したFFdate(「第2データ」に相当)と、の差分の絶対値が、所定の許容FF値変化量(許容規定変化量)よりも大きいか否か判断する。FF値変化量は、例えば、過去10回分算出したFFdate(ステップS11で算出したFFdate)の平均値である。コントローラ28は、上記(3)式を満たさないと判断する場合、再びステップS15を行う。一方で、コントローラ28は、上記(3)式を満たすと判断する場合、ステップS19を行う。
【0083】
コントローラ28は、ステップS19で、ステップS14で設定した第1ガスバーナ2の燃焼範囲の切り替え禁止状態を解除する。すなわち、コントローラ28は、例えば、第1ガスバーナ2の燃焼範囲が第1範囲R1から第2範囲R2に切り替わること、および第2範囲R2から第1範囲R1に切り替わることを許可する。コントローラ28は、ステップS19の後、再びステップS11を行う。なお、
図3で示す制御は、例えば第1ガスバーナ2が消火されるまで継続して行われる。
【0084】
(本構成の効果)
上記の給湯装置1では、燃燃焼範囲の切り替えの禁止を含む制限動作を行うための条件として、コントローラ28によって算出される第1ガスバーナ2の燃焼量を制御するための制御量が所定条件を満たすことが必要な構成である。そのため、給湯装置1は、第1ガスバーナ2の燃焼量を制御するための制御量に基づいて制限動作を行なうか否かを判断することができる。また、給湯装置1は、制限動作を行うための条件として、燃焼範囲が複数の範囲において所定の順序で切り替わることが必要な構成である。そのため、給湯装置1は、燃焼範囲を予め定めた所定の順序で切り替える場合に、制限動作を行なうようにすることができる。このように、給湯装置1は、ハンチングの発生を推測し得る状態を把握して、実際に行われる制御に基づいて制限動作を行うか否か判断することができる。したがって、給湯装置1は、ハンチングの発生をより確実に抑制することができる。
【0085】
上記の給湯装置1において、制限条件は、算出結果が所定条件を満たす場合において、燃焼範囲を第1範囲R1、第2範囲R2、第1範囲R1の順に切り替える条件が成立した場合、又は、第2範囲R2、第1範囲R1、第2範囲R2の順に切り替える条件が成立した場合である。コントローラ28は、制限条件が成立した場合に、第1範囲R1及び第2範囲R2の一方から他方への切り替えを禁止するように制限動作を行う。これにより、少なくとも第1範囲R1と第1範囲R1よりも燃焼量の大きい第2範囲R2との間において、ハンチングの発生を推測し得る状態を把握して、ハンチングの発生をより確実に抑制することができる。
【0086】
上記の給湯装置1において、制限条件は、フィードフォワード制御量が所定の安定条件を満たす場合において、燃焼範囲を所定の順序で切り替える条件が成立した場合である。これにより、フィードフォワード制御量が所望の値となるときに所定の安定条件を満たすように設定することで、入水温度の急激な変化などの外的要因が少ない状態で燃焼範囲の切り替えを禁止することができる。
【0087】
上記の給湯装置1において、所定の安定条件は、フィードフォワード制御量を複数回サンプリングした場合の最大値及び最小値が、複数回のサンプリングの平均値に基づいて定められる制限範囲内となる場合である。これにより、所定の安定条件の成否を、フィードフォワード制御量の複数回サンプリングの値に基づいて判断することができる。そのため、給湯装置1は、フィードフォワード制御量が安定しているか否かをより精度良く把握することができる。
【0088】
上記の給湯装置1において、所定の安定条件は、フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和が所定範囲内となる場合である。これにより、燃焼量のフィードバック制御量にも基づいて、所定の安定条件の成否の判断を行うことができる。そのため、給湯装置1は、燃焼量のフィードバック制御を用いる構成において、制限条件の成否を、より精度良く判断することができる。
【0089】
上記の給湯装置1において、コントローラ28は、制限条件の成立に応じて制限動作を開始した後、終了条件が成立した場合に制限動作の実行を解除する。これにより、制限動作を開始した後、制限動作の実行が不要である場合に、制限動作の実行を解除することができる。すなわち、燃焼範囲の切り替えが必要な状況(設定温度の変更に応じて燃焼範囲が切り替えられる場合など)において、燃焼範囲を適切に切り替えることができる。
【0090】
上述のように、給湯装置1においてコントローラ28(制御部)は、制御量Fnの算出を所定周期で周期的に繰り返し行い、制御量Fnを算出する毎に上記燃焼量を決定する。具体的には、コントローラ28(制御部)は、フィードフォワード制御量FFとフィードバック制御量FBnとの和に基づいて制御量Fnを算出し、この制御量Fnに基づいて燃焼量を決定するような制御を行う。コントローラ28(制御部)は、制限条件が成立していない場合、制御量Fnを燃焼量とする。一方で、コントローラ28(制御部)は、制限条件が成立した場合、燃焼量が上限値を超えること又は下限値を下回ることを抑えるように制限する。即ち、コントローラ28(制御部)は、制御量Fnが上限値を超える場合には、上限値を燃焼量とし、制御量Fnが下限値を下回る場合には、下限値を燃焼量とする。より具体的には、コントローラ28(制御部)は、繰り返し行われる制御量Fnの算出では、今回の制御量Fnを算出する際に、設定温度Tsと、出湯温度Toと、に基づき、出湯温度Toを設定温度Tsに近づけるための増減値ΔFBをフィードバック演算方式に従って算出し、前回のフィードバック制御量FBn-1に基づく基準制御量(FBn-1×Wper)と、増減値ΔFBと、を加算した値(ΔFB+FBn-1×Wper)に基づいて今回のフィードバック制御量FBnを算出する。よって、前回のフィードバック制御量FBn-1を反映した基準制御量(FBn-1×Wper)を用いつつ、この基準制御量(FBn-1×Wper)を、出湯温度Toに基づく増減値ΔFBによって増減することで、今回のフィードバック制御量Fnをより適切に算出することができる。しかも、前回の燃焼量の決定において燃焼量の制限があった場合でも、前回の制御量Fn-1が上限値又は下限値を大きく逸脱しない限り、前回のフィードバック制御量FBn-1を用いて今回のフィードバック制御量FBnを算出することができるため、燃焼量の制限によって前回のフィードバック制御量FBn-1が過度に制限されることを抑えつつ今回のフィードバック制御量FBnをより適切に算出することができる。
【0091】
一方で、コントローラ28(制御部)は、前回の燃焼量の算出の際に補正値αn-1が算出された場合(即ち、前回の制御量Fn-1が上限値よりも大きい第2上限値又は下限値よりも小さい第2下限値を逸脱する場合)には、今回の制御量の算出の際に、前回のフィードバック制御量FBn-1に代えて補正値αn-1に基づいて基準制御量を決定することができる。つまり、演算によって得られた前回のフィードバック制御量FBn-1が、上限値及び下限値よりも大きく逸脱するように燃焼量を決定する値である場合、今回の燃焼量の算出において今回のフィードバック制御量FBnを算出する際には、前回のフィードバック制御量FBn-1をそのまま用いるのではなく、これに代えて補正値αn-1を用いて今回のフィードバック制御量FBnを算出することができる。しかも、補正値αn-1は、「制御量が上限値よりも大きい第2上限値を超える場合に制御量を第2上限値以下とするようにフィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理、又は、制御量が下限値よりも小さい第2下限値を下回る場合に制御量を第2下限値以上とするようにフィードバック制御量を補正した補正値を算出する処理」によって得られる値であるため、制限が過剰すぎる値になることを抑えることができる。一方で、前回の燃焼量の算出の際に制御量が上限値よりも大きく第2上限値よりも小さい場合、又は、制御量が下限値よりも小さく第2下限値よりも大きい場合には、今回の制御量の算出の際に、前回の上記フィードバック制御量に基づいて基準制御量を決定することができる。つまり、前回の燃焼量の算出の際に、燃焼量が上限値又は下限値に基づいて制限されるような場合であっても、第2上限値又は第2下限値に到達していなければ、今回の制御量の算出では、補正値のように制限された値ではなく、前回のフィードバック制御量(制限されていない値)を用いて基準制御量を決定し、今回のフィードバック制御量を算出することができる。よって、燃焼量を繰り返し算出する際に、「前回のフィードバック制御量」が制限された形でのフィードバック演算が繰り返されることに起因する追従性又は応答性の低下を抑えることができる。
【0092】
図5は、数4の式によって補正値を算出せず、制御量が上限値を上回るように逸脱する場合には、フィードバック制御量を減少させて制御量を上限値とするように修正し、その修正後の制御量を燃焼量とする例であり、このようにフィードバック制御量を修正した場合に、修正したフィードバック制御量を、次回の制御量の算出の際に「前回のフィードバック制御量」として用いる場合のシミュレーション結果を示すものである。一方、
図6は、上述した第1実施形態に関するシミュレーション結果を示すものである。
図5の例では、入水量の変化に応じて出湯温度の減少が生じた場合に、
図5の時間Ta、Tb、Tcのように、制御量が過度に抑えられるようにフィードバック演算がなされてしまうため、時間T11、T12、T13のように出湯温度の減少を修正するために時間がかかってしまう。これに対し、第1実施形態に関する
図6の例では、入水量の変化に応じて出湯温度の減少が生じた場合、時間Tx、Ty、Tzのように制御量が変動するが、制御量が上限値を大きく逸脱しない限り、前回のフィードバック演算値がそのまま用いられるように今回の制御量が決定する。また、制御量が上限値を過度に逸脱した場合でも、上限値からある程度の余裕をもって補正値α
n-1が決定するため、今回の制御量の算出の際に制御量が過度に抑えられることを防ぐことができ、具体的には、
図6のように時間ta以降には、上限値と燃焼量とが一致している。これにより、時間T21、T22、T23のように出湯温度の減少を修正するための時間を抑えることができる。
【0093】
<第2実施形態>
以下の説明は、第2実施形態の給湯装置1に関する。2実施形態の給湯装置1は、第1ガスバーナ2の燃焼範囲切り替えを禁止するための条件が第1実施形態と異なり、それ以外の構成等は、第1実施形態と同様である。そのため、以下の説明は、第1実施形態の同様の構成を、同一の符号を用いて説明しつつ詳しい説明を省略する。
【0094】
(給湯装置の燃焼制御)
以下の説明は、給湯装置1による燃焼制御に関する。第2実施形態の燃焼制御は、
図4に示すように、ステップS21がステップS12とステップS13の間に追加されている点が第1実施形態の燃焼制御と異なっている。
図4で示す制御は、給湯装置1においてコントローラ28によって実行される制御である。給湯装置1は、第1ガスバーナ2を点火させて燃焼を開始することで、
図4で示す燃焼制御が開始される。
【0095】
ステップS11,S12は、第1実施形態と同様に行われる。ステップS12に続いて、ステップS21が行われる。コントローラ28は、設定温度と出湯温度とに基づいて第1ガスバーナ2での燃焼量のフィードバック制御量を算出する。安定条件は、フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和が所定範囲内となる場合である。コントローラ28は、ステップS21で、下記(4)式を満たすか否か判断する。
下限値<フィードフォワード制御量+フィードバック制御量<上限値 …(4)式
すなわち、フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和が、所定の下限値よりも大きく、かつ所定の上限値よりも小さいか否か判断する。ここで、下限値は、第2範囲R2の最小値(最小燃焼量Q2min)よりも小さい所定の値(例えば、Q2min×90%)である。上限値は、第1範囲R1の最大値(最大燃焼量Q1max)よりも大きい所定の値(例えば、Q2max×110%)である。コントローラ28は、ステップS21の後、第1実施形態と同様に、ステップS13~S19を行う。
【0096】
上記の給湯装置1において、所定の安定条件は、フィードフォワード制御量とフィードバック制御量との和が所定範囲内となる場合である。これにより、燃焼量のフィードバック制御量にも基づいて、所定の安定条件の成否の判断を行うことができる。そのため、給湯装置1は、燃焼量のフィードバック制御を用いる構成において、制限条件の成否を、より精度良く判断することができる。特に、追加条件として、燃焼量が、第2範囲R2の最小値(最小燃焼量Q2min)よりも小さい所定の下限値よりも大きく、かつ第1範囲R1の最大値(最大燃焼量Q1max)よりも大きい所定の上限値よりも小さいことが必要である。このように、給湯装置1は、第2範囲R2の最小値(最小燃焼量Q2min)よりも小さい所定の下限値と、第1範囲R1の最大値(最大燃焼量Q1max)よりも大きい所定の上限値と、の間の範囲に燃焼量を限定する。これにより、給湯装置1は、第1範囲R1と第2範囲R2との間での燃焼範囲の変化に絞った制御を行うことができる。
【0097】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更してもよい。
【0098】
上述した第1実施形態の燃焼制御において、コントローラ28は、第1範囲R1と第2範囲R2との間のハンチングを防止するために、第1範囲R1と第2範囲R2との間の切り替えに関する制御を行った。しかしながら、コントローラ28は、第2範囲R2と第3範囲R3との間のハンチングを防止するために、第2範囲R2と第3範囲R3との間の切り替えに関する制御を行ってもよい。また、このような構成は、給湯装置1の第1ガスバーナ2の燃焼範囲が2つや、4つ以上設けられる構成であっても、任意の燃焼範囲間の切り替えで適用できる。
【0099】
上述した第1実施形態の説明は、「制御部による制御量の算出において所定条件を満たす場合」として、燃焼制御のステップS11においてフィードフォワード制御量が所定の安定条件を満たす場合を例示した。しかしながら、「制御部による制御量の算出において所定条件を満たす場合」は、これに限定されない。例えば、「制御部による制御量の算出において所定条件を満たす場合」は、フィードフォワード制御量以外の燃焼量を制御するための制御量(フィードバック制御量など)が所定の値となることであってもよい。或いは、「制御部による制御量の算出において所定条件を満たす場合」は、ステップS11において直近の複数回の制御量が全て所定範囲内となることであってもよく、ステップS11において直近の複数回の制御量の最大値と最小値の差の絶対値が全て所定範囲内となることであってもよく、ステップS11において、直近の所定時間内において入水量の変化が一定範囲内に収まっていることであってもよい。
【0100】
上述した第1実施形態の説明は、燃焼制御のステップS11で、安定条件として、(1)式を例示した。しかしながら、安定条件は、これに限定されない。例えば、安定条件は、最新のフィードフォワード制御量が所定の範囲内の値となること(例えば、最新のフィードフォワード制御量と、その前に得られた過去の複数回のフィードフォワード制御量の平均値との差が、一定値未満であること)であってもよい。
【0101】
上述した第1実施形態の燃焼制御の説明は、ステップS18で、燃焼範囲の切り替え禁止状態の解除条件を例示した。しかしながら、燃焼範囲の切り替え禁止状態の解除条件は、その他の条件であってもよい。例えば、燃焼範囲の切り替え禁止状態の解除条件は、第1ガスバーナ2が消火されたことであってもよく、給湯リモコンで設定温度が変更されたことであってもよい。
また、燃焼範囲の切り替え禁止状態の解除条件は、流量センサ42によって検出される水の流量が所定の流量条件を満たすこと(具体的には以下の(5)式を満たすこと)であってもよい。
Wst-D<水の流量<Wst+D…(5)式
ここで、Wstは、例えばステップS14の実行時点における水の流量である。Dは、Wst×20%と1L/minのうちいずれか大きい方である。
また、燃焼範囲の切り替え禁止状態の解除条件は、以下の(6)式を満たすことであってもよい。
|出湯温度-設定温度|>10℃ …(6)式
【0102】
上述した第1実施形態の燃焼制御において、ステップS15で、コントローラ28は、出湯温度が±0.5℃以上変化しない状態で30秒間維持されている場合に、出湯温度が安定状態にあると判断した。しかしながら、コントローラ28は、ステップS14の実行時点から120秒を経過した場合に、出湯温度が安定状態にあると判断してもよい。
【0103】
上述の実施形態では、前回の燃焼量の算出の際に補正値αn-1が算出された場合、今回の制御量Fnの算出の際に、前回のフィードバック制御量FBn-1に代えて補正値αn-1に基づいて基準制御量を決定したが、このように決定しなくてもよい。具体的には、例えば、上記補正値αn-1を算出せず、今回の制御量Fnの算出の際に、常に前回のフィードバック制御量FBn-1を用いるようにしてもよい。或いは、制御量が所定の上限値を超える場合に燃焼量を上限値とするように又は制御量が所定の下限値を下回る場合に燃焼量を下限値とするように燃焼量を制限する場合、フィードバック演算方式で算出されたフィードバック制御量を増減してこのような燃焼量の制限を行ってもよい。このやり方では、前回の燃焼量の算出の際にこのような燃焼量の制限を行う場合、今回の制御量の算出の際には、前回のフィードバック演算で算出されたフィードバック制御量に代えて、前回の燃焼量の算出の際に増減されたフィードバック制御量を用いてもよい。
【0104】
上述の実施形態では、入水温度センサ41が入水温度検出部の一例に相当し、入水温度センサ41によって直接的に入水温度を検出したが、入水温度を把握できる構成であれば、その他の構成であってもよい。例えば、出湯温度センサ44が検出する出湯温度と、流量センサ42が検出する入水量と、第1ガスバーナ2の燃焼量とに基づいて、コントローラ28が入水温度を算出してもよい。この場合、出湯温度センサ44及びコントローラ28が入水温度検出部の一例に相当する。コントローラ28は、上記入水量と上記燃焼量とが把握できれば、熱交換器8を通る水の流量と、この水に対して与える伝熱量を推測し、熱交換器8を通過する際の水の上昇温度を算出することができる。従って、この上昇温度と出湯温度とに基づいて入水温度を算出することができる。なお、入水温度を算出しうる構成であれば、その他の様々な公知方法を用いてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…給湯装置
2…第1ガスバーナ(ガスバーナ)
4…入水管
6…出湯管
28…コントローラ(切替部、制御部、出湯温度設定部)
30A…第1バーナ群
30B…第2バーナ群
30C…第3バーナ群
35A,35B,35C…切換ガス電磁弁(燃焼量調整部)
41…入水温度センサ(入水温度検出部)
42…流量センサ(流量検出部)
44…出湯温度センサ(出湯温度検出部)