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特開2022-135399天然ガスエンジンおよび天然ガスエンジンシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135399
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】天然ガスエンジンおよび天然ガスエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/02 20060101AFI20220908BHJP
   F02B 23/10 20060101ALI20220908BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20220908BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F02D19/02 D
F02B23/10 310E
F02B43/00 A
F02M21/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035181
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 公威
(72)【発明者】
【氏名】長島 義文
【テーマコード(参考)】
3G023
3G092
【Fターム(参考)】
3G023AA02
3G023AC07
3G023AD06
3G092AA10
3G092AB08
3G092DC06
3G092FA24
(57)【要約】
【課題】燃費を向上させることが可能な天然ガスエンジンおよび天然ガスエンジンシステムを提供する。
【解決手段】天然ガスエンジンは、気筒と気筒に接続された複数の吸気ポートと、を備え、天然ガスと吸入空気との混合気が前記複数の吸気ポートを通って前記気筒内に導入され、前記気筒内で燃焼される天然ガスエンジンにおいて、運転条件に応じて、前記複数の吸気ポートの中のスワールポートを遮蔽する遮蔽部材を備える。例えば、遮蔽部材は、スワールポートを遮蔽した場合、スワールポートと気筒とを連通する連通部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒と
前記気筒に接続された複数の吸気ポートと、
を備え、
天然ガスと吸入空気との混合気が前記複数の吸気ポートを通って前記気筒内に導入され、前記気筒内で燃焼される天然ガスエンジンにおいて、
運転条件に応じて、前記複数の吸気ポートの中のスワールポートを遮蔽する遮蔽部材を備える、
天然ガスエンジン。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記スワールポートを遮蔽した場合、前記スワールポートと前記気筒とを連通する連通部を有する、
請求項1に記載の天然ガスエンジン。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、板状の本体部を有し、
前記本体部は、前記スワールポートの横断面形状に応じて形成された外周縁を有し、
前記連通部は、前記外周縁から前記本体部の中央部側へ凹入する切り欠き部を有する、
請求項2に記載の天然ガスエンジン。
【請求項4】
前記切り欠き部は、前記混合気の混合気通路内における平均流速よりも流速が遅い場所に配置される、
請求項3に記載の天然ガスエンジン。
【請求項5】
前記本体部は、軸回りに回転することにより、前記スワールポートを開閉するように構成され、
前記本体部が前記軸を境にして二つの領域に区分される場合、前記二つの領域のそれぞれの面積は互いに等しい、
請求項3または4に記載の天然ガスエンジン。
【請求項6】
前記切り欠き部は、前記二つの領域の少なくとも一方に配置される、
請求項5に記載の天然ガスエンジン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の天然ガスエンジンと、
前記遮蔽部材を駆動するアクチュエータと、
前記天然ガスエンジンの回転速度が所定値以下である場合、前記遮蔽部材が前記スワールポートを遮蔽するように、前記天然ガスエンジンの回転速度が所定値を超える場合、前記遮蔽部材が前記スワールポートを開くよう前記アクチュエータを制御する制御部と、
を備える、天然ガスエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天然ガスエンジンおよび天然ガスエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両等に搭載される内燃機関として、CNG(Compressed Natural Gas:圧縮天然ガス)を燃料とする天然ガスエンジンが知られている。一般に、天然ガスエンジンは、CNGを減圧したガスと吸入空気との混合気を吸気ポートからシリンダ内へ導入し、導入された混合気に点火プラグの火花で点火して燃焼させる点火火花方式が用いられる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-124710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの燃料効率を向上させるためには、シリンダ内へ導入される混合気の流動を強化する必要がある。シリンダ内の混合気の流動には、シリンダ軸まわりの旋回流であるスワール流と、シリンダ軸と直交する軸まわりの旋回流であるタンブル流とがある。
【0005】
しかし、エンジンの運転条件によっては、スワール流とタンブル流の大きさが異なるため、スワール流がタンブル流を阻害し、燃焼が促進されない。これにより、燃費が低下するという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、燃費を向上させることが可能な天然ガスエンジンおよび天然ガスエンジンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示における天然ガスエンジンは、
気筒と
前記気筒に接続された複数の吸気ポートと、
を備え、
天然ガスと吸入空気との混合気が前記複数の吸気ポートを通って前記気筒内に導入され、前記気筒内で燃焼される天然ガスエンジンにおいて、
運転条件に応じて、前記複数の吸気ポートの中のスワールポートを遮蔽する遮蔽部材を備える。
【0008】
本開示における天然ガスエンジンシステムは、
上記の天然ガスエンジンと、
前記遮蔽部材を駆動するアクチュエータと、
前記天然ガスエンジンの回転速度が所定値以下である場合、前記遮蔽部材が前記スワールポートを遮蔽するように、前記天然ガスエンジンの回転速度が所定値を超える場合、前記遮蔽部材が前記スワールポートを開くよう前記アクチュエータを制御する制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る天然ガスエンジンシステムを示す図である。
図2図2は、4気筒エンジンのインテークマニホルドを示す図である。
図3図3は、本実施の形態に係る天然ガスエンジンを模式的に示す図である。
図4図4は、混合気の流れ方向から見た場合のコントロールバルブの部分断面図である。
図5図5は、図4のA-A線断面図である。
図6図6は、制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本開示はこの実施形態により限定されるものではない。
【0012】
図1を参照して、本開示の実施の形態に係る天然ガスエンジンシステム1について説明する。図1は、本開示の実施の形態に係る天然ガスエンジンシステム1を示す図である。天然ガスエンジンシステム1(以下、エンジンシステム)は、天然ガスエンジン10(以下、エンジン)と、その燃料供給系および吸排気系とを含む。
【0013】
エンジン10のシリンダブロック11には、複数の気筒12が設けられている。なお、図1では、ひとつの気筒12のみが示されている。気筒12には、ピストン13が設けられている。ピストン13は、クランク軸にコンロッドを介して連結されており、クランク軸の回転に応じて気筒12内を上下動する。シリンダブロック11の上部を覆うシリンダヘッド14には、気筒12ごとに、スパークプラグ15、吸気弁16および排気弁17が設けられている。
【0014】
スパークプラグ15は、電気的に火花を発生する方式の点火装置であり、気筒12内で点火する。スパークプラグ15での点火は、制御部70によって制御される。
【0015】
吸気弁16は、可変バルブタイミング機構を備えている。吸気弁16の開弁タイミングおよび閉弁タイミングは、制御部70によって制御される。排気弁17は、可変バルブタイミング機構を備えている。排気弁17の開弁タイミングおよび閉弁タイミングは、制御部70によって制御される。気筒12の内壁18、ピストン13およびシリンダヘッド14に囲まれた空間により、燃焼室19が形成される。
【0016】
エンジン10に供給される空気は、エアクリーナ(不図示)を通り、インテークマニホルド20内においてCNGと混合されて混合気を形成する。インテークマニホルド20は、複数の吸気ポート22を有する。1つの気筒12に対して2つの吸気ポート22が配置される。2つの吸気ポート22の中の一つは、気筒12内にシリンダ軸まわりの旋回流であるスワール流を生じさせるスワールポート24である。2つの吸気ポート22の中の他の一つは、気筒12内にシリンダ軸と直交する軸まわりの旋回流であるタンブル流を生じさせるタンジェンシャルポート26(図2を参照)である。混合気は、これらの吸気ポート22および吸気弁16を介して気筒12内に導入される。気筒12内に導入された混合気は、気筒12内において圧縮される。この状態でスパークプラグ15による点火が行われると、発生した火花が点火元となり、CNGが燃焼する。エンジン10からの排気は、排気弁17を介してエキゾーストマニホルド30に排出され、排気浄化装置、消音装置等(不図示)を通って外部に排出される。
【0017】
CNGは、タンク40から供給経路50を通ってインテークマニホルド20内に供給される。供給経路50は、配管51、レギュレータ52、配管53、および、インジェクタ54を含む。配管51は、タンク40とレギュレータ52とを接続する。配管51の第一端は、タンク40に接続されている。配管51の第二端は、レギュレータ52に接続されている。タンク40に貯留されたCNGは、配管51内を通ってレギュレータ52に供給される。
【0018】
レギュレータ52は、タンク40から供給されたCNGの圧力を所定の圧力に減少させる。配管53は、レギュレータ52とインジェクタ54とを接続する。配管53の第一端は、レギュレータ52に接続されている。配管53の第二端は、インジェクタ54に接続されている。レギュレータ52で所定の圧力に減圧されたCNGは、配管53内を通ってインジェクタ54に供給される。
【0019】
インジェクタ54は、レギュレータ52から供給されたCNGを、インテークマニホルド20内に噴射する。インジェクタ54からのCNGの噴射は、制御部70によって制御される。なお、インジェクタ54は、CNGをインテークマニホルド20内に噴射するものであるが、インテークマニホルド20は燃焼室19と接続されているため、インテークマニホルド20内に噴射されたCNGは燃焼室19に供給される。すなわち、インジェクタ54は、CNGを燃焼室19に供給している。
【0020】
エンジンシステム1は、制御部70を備える。制御部70は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する。以下において説明する制御部70の各機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAM上で実行することにより実現される。
【0021】
制御部70は、クランク角センサ(不図示)からのクランク角信号に基づいてエンジン10の回転速度(回転数)を算出する。また、制御部70は、アクセル開度センサ(不図示)からのアクセル開度信号に基づいてエンジン10の負荷を算出する。
【0022】
また、制御部70は、スパークプラグ15による点火、吸気弁16の開閉、排気弁17の開閉、および、インジェクタ54からのCNGの噴射を制御する。
【0023】
スパークプラグ15、吸気弁16、排気弁17、およびインジェクタ54は、エンジン10の回転速度および負荷に基づいて、制御部70が有する記憶部に予め記憶された制御マップに従って制御される。
【0024】
図2は、シリンダが1列に4本配置される4気筒エンジンのインテークマニホルド20を示す図である。前述するように、インテークマニホルド20は、気筒12内にスワール流を生じさせるスワールポート24および気筒内にタンブル流を生じさせるタンジェンシャルポート26を有する。エンジン10の回転速度が所定値以下である場合(例えば、中速や低速である場合)、気筒12内のスワール流が強すぎて、スワール流がタンブル流を阻害し、気筒12内で燃焼が促進されないため、燃費が低下する場合がある。一方、エンジン10の回転速度が所定値を超える場合(例えば、高速である場合)、スワール流を強めにして、所定の出力を得る必要がある。そこで、本実施の形態では、エンジン10の回転速度に応じて、スワール流を制御する。これにより、所定の出力が得られる上に、燃費を向上させることが可能となる。
【0025】
図3は、本実施の形態に係るエンジン10を模式的に示す図である。図3では、エンジン10の構成部品のそれぞれの配置をわかり易くするため、構成部品のそれぞれの形状は簡略化され、場合により構成部品間が離間して描かれている。図3に示すように、エンジン10は、コントロールバルブ60を備える。コントロールバルブ60はインテークマニホルド20とシリンダヘッド14との間に配置される。コントロールバルブ60はブラケット69を介してシリンダブロック11に支持されている。コントロールバルブ60は、スワールポート24から気筒12へ導入される混合気の流れを制御する。
【0026】
本実施の形態に係るエンジン10は、4気筒エンジンであるため、コントロールバルブ60は、4つのスワールポート24のそれぞれから4つの気筒12のそれぞれへ導入される混合気の流れを制御するものである。なお、4つの気筒12のそれぞれへ導入される混合気の制御は、気筒12間で異ならないため、ここでは、1つの気筒12へ導入される混合気を制御するコントロールバルブ60について説明する。図4は、混合気の流れ方向から見た場合のコントロールバルブ60の部分断面図である。図5は、図4のA-A線断面図である。図4に軸方向Bを示す。また、図5にスワールポート24側から気筒12側へ流れる混合気の流れ方向Cを示す。図4および図5に示すように、コントロールバルブ60は、混合気通路62と、遮蔽部材63とを有している。混合気通路62おより遮蔽部材63のそれぞれは、1つの気筒12に対応して配置される。
【0027】
混合気通路62は、スワールポート24と気筒12との間に配置され、混合気が流れる通路である。混合気通路62は、スワールポート24の横断面形状と同じ横断面形状を有している。
【0028】
遮蔽部材63は、スワールポート24を遮蔽する板状の本体部65を有している。ここでは、遮蔽部材63が混合気通路62を閉じることは、遮蔽部材63がスワールポート24を遮蔽することを意味する。本体部65は、混合気通路62の横断面形状(スワールポート24の横断面形状)に応じて形成された外周縁66を有している。また、本体部65は、スワールポート24を遮蔽した場合、スワールポート24と気筒12とを連通する連通部67を有している。連通部67は、外周縁66から本体部65の中央部側へ凹入する切り欠き部68を有する。本体部65の軸方向Bの全幅W1に対する切り欠き部68の幅W2は、約1/4である。また、本体部65の高さ方向(軸方向Bと直交する方向)の全高H1に対する切り欠き部68の高さH2は、約1/4である。なお、切り欠き部68の幅W2や、高さH2は、スワール流を抑えることにより、燃費に一定の効果を奏するという観点から、実験やシミュレーションにより求められる。切り欠き部68は、混合気通路62内を流れる混合気の流速が混合気通路62内における平均流速よりも遅い場所に配置されている。なお、混合気通路62内を流れる混合気の流速は、実験やシミュレーションにより求めることが可能である。
【0029】
本体部65は回転軸64に一体的に固定(ネジ止め)される。これにより、本体部65は、回転軸64回りに回転可能に支持される。本体部65は、付勢部材(不図示)により図5において時計回りの方向に付勢され、かつ、ストッパ(不図示)により時計回り方向の回転を制限される。これにより、本体部65は、スワールポート24を閉じた状態に維持される。
【0030】
コントロールバルブ60は、本体部65を付勢部材の付勢力に抗して、図5において反時計回りの方向に回動させるアクチュエータ61(図1を参照)を有している。アクチュエータ61の駆動力により、本体部65は図5においてスワールポート24を開いた状態(図5に一点鎖線で示す状態)に回動する。具体的には、アクチュエータ61は、回転軸64を回動させることで、本体部65を回動させる。さらに、具体的には、アクチュエータ61は、1本の回転軸64を回動させることで、4つの本体部65(4つの気筒12のそれぞれに対応配置された遮蔽部材63の本体部65)のそれぞれを回動させる。
【0031】
本体部65は、回転軸64を境にして2つの領域65A,65Bに分かれる。領域65A,65Bのそれぞれの面積は、領域65A,65Bのそれぞれが受ける混合気の風圧間の差が小さくなるように設定される。例えば、領域65A,65Bのそれぞれの面積は、領域65A,65Bのそれぞれが受ける混合気の風圧が互いに等しくなるように、設定される、例えば、両方の面積が等しくなるように設定される。
【0032】
図6を参照して、制御部70の動作について説明する。図6は、制御部70の動作を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、所定の周期で繰り返し実行される。
【0033】
ステップS100で、制御部70は、クランク角センサ(不図示)から入力されたクランク角信号に基づいて、エンジン10の回転速度を算出する。
【0034】
次に、ステップS110で、制御部70は、回転速度が所定値以下であるか否かを判定する。なお、所定値は、実験や、シミュレーション等により予め求められ、制御部70が有する記憶部に記憶されている。回転速度が所定値以下であると判定された場合(ステップS110:YES)、処理はステップS120に進む。回転速度が所定値を超えると判定された場合(ステップS110:NO)、処理はステップS130に進む。
【0035】
ステップS120において、制御部70は、遮蔽部材63がスワールポート24を閉じるようにアクチュエータ61を制御する。その後、図6に示す処理は終了する。
【0036】
ステップS130において、制御部70は、遮蔽部材63がスワールポート24を開くようにアクチュエータ61を制御する。その後、図6に示す処理は終了する。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態に係る天然ガスエンジン10は、気筒12と、気筒12に接続された複数の吸気ポート22と、を備え、天然ガスと吸入空気との混合気が複数の吸気ポート22を通って気筒12内に導入され、気筒12内で燃焼される天然ガスエンジンにおいて、運転条件に応じて、複数の吸気ポート22の中のスワールポート24を遮蔽する遮蔽部材63を備える。
【0038】
これにより、気筒12内で生じるスワール流を制御することができる。その結果、スワール流を弱くして、スワール流がタンブル流を阻害しないようにできるため、気筒12内で燃焼が促進される。これにより、燃費を向上させることが可能となる。また、スワール流を強化することができるため、所定の出力を得ることが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態では、遮蔽部材63は、スワールポート24を遮蔽した場合、スワールポート24と気筒12とを連通する連通部67を有する。これにより、スワールポート24が遮蔽された場合でも、混合気の適量がスワールポート24から連通部67を介して気筒12に導入されるため、気筒12内でスワール流が生じる。スワールポート24が閉じた状態から開いた場合に、気筒12内にスワール流が急激に導入されないため、エンジンの出力を円滑に上昇させることが可能となる。また、気筒12内で燃焼が促進される状態が維持されるため、排気が悪化するのを抑えることが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態では、遮蔽部材63は、板状の本体部65を有し、本体部65は、スワールポート24の横断面形状に応じて形成された外周縁66を有し、連通部67は、外周縁66から本体部65の中央部側へ凹入する切り欠き部68を有する。これにより、混合気の適量をスワールポート24から切り欠き部68を介して気筒12に導入させることが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態では、切り欠き部68は、混合気の流速が遅い場所に配置される。これにより、流速が遅い混合気のみが気筒12に導入され、気筒12内にスワール流を生じさせる。その結果、タンブル流を阻害することなく、気筒12内で燃焼が促進されるため、燃費を向上させることが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態では、本体部65は、軸回りに回転することにより、スワールポート24を開閉するように構成され、本体部65が軸を境にして二つの領域65A,65Bに区分される場合、二つの領域65A,65Bのそれぞれの面積は互いに等しい。これにより、二つの領域65A,65Bの一方の領域が混合気から受ける風圧がアシスト力となり、他方の領域が混合気から受ける風圧が抵抗力となり、アシスト力と抵抗力との間の差が小さく、又は等しくなるため、本体部65を回転させる際に風圧の影響が小さく、又は、風圧の影響がない。その結果、風圧に抗して、本体部65を回動させる必要がないため、最小限の動力により本体部65を回動させることが可能となる。
【0043】
また、本実施の形態では、切り欠き部68は領域65Bに配置される。これにより、流速が遅い混合気は切り欠き部68を通して気筒12へ導入するようにし、また、流速が速い混合気は領域65Aで防いで、気筒12へ導入されないようにするため、流速が遅い混合気のみが気筒12に導入され、気筒12内にスワール流を生じさせる。その結果、タンブル流を阻害することなく、気筒12内で燃焼が促進されるため、燃費を向上させることが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態に係る天然ガスエンジンシステム1は、天然ガスエンジン10と、遮蔽部材63を駆動するアクチュエータ61と、天然ガスエンジン10の回転速度が所定値以下である場合、遮蔽部材63がスワールポート24を遮蔽するように、天然ガスエンジン10の回転速度が所定値を超える場合、遮蔽部材63がスワールポート24を開くようアクチュエータ61を制御する制御部70と、を備える。これにより、天然ガスエンジン10の回転速度が所定値を超える場合、例えば、高速である場合、スワールポート24を開くことにより、スワール流を強化することができるため、所定の出力を得ることが可能となる。一方、天然ガスエンジン10の回転速度が所定値以下である場合、例えば、中速や低速である場合、スワールポート24を閉じることにより、スワール流を弱くして、スワール流がタンブル流を阻害しないようにできるため、気筒12内で燃焼が促進される。これにより、燃費を向上させることが可能となる。
【0045】
なお、上記の実施の形態では、連通部67が切り欠き部68を有するが、本開示はこれに限らない。連通部67の数や、配置や、形状や、大きさは、混合気の適量が通過するように設定され、実験やシミュレーションにより求めることが可能である。例えば、連通部67は、混合気が通過する貫通穴でもよく、また、回転軸64から外周縁66までの距離を回転軸64から混合気通路62の壁面までの距離よりも短くすることで、外周縁66と混合気通路62の壁面との間に生じる隙間であってもよい。
【0046】
また、上記の実施の形態では、切り欠き部68は、領域65Bに配置されるが、領域65Aに配置されてもよく、領域65A,65Bのそれぞれに配置されてもよい。また、切り欠き部68の位置や、大きさや、形状は、混合気の適量が通過するように設定され、実験やシミュレーションにより求めることが可能である。
【0047】
また、上記の実施の形態では、圧縮天然ガス(CNG)を燃料とするエンジンに適用したものについて説明したが、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas:LNG)や、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas:LPG)を燃料とするエンジンに適用したものでもよい。
【0048】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示の天然ガスエンジンシステムによれば、燃費を向上させることが要求される天然ガスエンジンを備えた車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0050】
1 天然ガスエンジンシステム
10 天然ガスエンジン
11 シリンダブロック
12 気筒
13 ピストン
14 シリンダヘッド
15 スパークプラグ
16 吸気弁
17 排気弁
18 内壁
19 燃焼室
20 インテークマニホルド
30 エキゾーストマニホルド
40 タンク
50 供給経路
51 配管
52 レギュレータ
54 インジェクタ
60 コントロールバルブ
61 アクチュエータ
62 混合気通路
63 遮蔽部材
64 回転軸
65 本体部
65A,65B 領域
66 外周縁
67 連通部
68 切り欠き部
70 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6