(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135427
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20220908BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20220908BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20220908BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G03F7/027 514
G03F7/027 502
G03F7/031
C08F290/14
H01L23/12 501P
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035222
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中島 数矢
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】川崎 律也
【テーマコード(参考)】
2H225
4J127
【Fターム(参考)】
2H225AC32
2H225AC34
2H225AC36
2H225AC63
2H225AC70
2H225AC79
2H225AD06
2H225AD26
2H225AN39P
2H225AN54P
2H225BA01P
2H225BA32P
2H225CA12
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J127AA03
4J127BA031
4J127BA081
4J127BB041
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD261
4J127BE511
4J127BF441
4J127BF44X
4J127BF531
4J127BF53X
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG081
4J127BG08X
4J127BG171
4J127BG17X
4J127CA02
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4J127CB372
4J127CC021
4J127CC031
4J127CC092
4J127CC112
4J127CC121
4J127EA04
4J127EA11
4J127FA30
4J127FA37
(57)【要約】
【課題】伸び等の機械強度に優れるとともに、耐薬品性に優れたフィルム等の硬化物を得ることができるネガ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)側鎖に二重結合を備えるポリイミドと、(B)フルオレン骨格を備える(メタ)アクリレート化合物を含む架橋剤と、(C)重合開始剤と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)側鎖に二重結合を備えるポリイミドと、
(B)フルオレン骨格を備える(メタ)アクリレート化合物を含む架橋剤と、
(C)重合開始剤と、
を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
フルオレン骨格を備える前記(メタ)アクリレート化合物は、下記一般式(A)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(A)中、環Aはベンゼン環又は縮合多環式芳香族炭化水素環を示し、R
1はハロゲン原子、またはアルキル基を示し、R
2はハロゲン原子、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、またはアラルキルオキシ基を示し、R
3は水素原子、またはメチル基を示し、mは0~4の整数、nは0または1以上の整数、pは1以上の整数である。
Xは以下の一般式(a)または一般式(b)で表される基である。
【化2】
(一般式(a)中、qは1~15の整数を示し、一般式(b)中、R
4はアルキレン基を示し、rは0または1以上の整数を示す。*は結合手を示す。))
【請求項3】
ポリイミド(A)は下記一般式(1-1)で表される構造単位(a)を有する化合物を含む、請求項1または2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化3】
(一般式(1-1)中、Yは2価の有機基を示す。)
【請求項4】
ポリイミド(A)は、前記一般式(1-1)で表される構造単位(a)と下記一般式(1-2)で表される構造単位(b)とを有する化合物を含む、請求項3に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化4】
(一般式(1-2)中、Qは、2価~4価の炭素数1~10の有機基を示し、複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。
Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
m1およびm2は、それぞれ独立して1~3の整数を示す。
Xは単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、または炭素数1~5の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記一般式(1-1)におけるYの2価の有機基は、下記一般式(1a)、下記一般式(1b)および下記一般式(1c)で表される基から選択される、請求項3または4に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化5】
(一般式(1a)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR
1同士、複数存在するR
2同士は同一でも異なっていてもよい。R
3は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR
3同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。
一般式(1b)中、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR
4同士、複数存在するR
5同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。
一般式(1c)中、Zは炭素数1~5のアルキレン基、2価の芳香族基を示す。
*は結合手を示す。)
【請求項6】
架橋剤(B)は、さらに多官能(メタ)アクリレート化合物(フルオレン骨格を備える前記(メタ)アクリレート化合物を除く)を含む、請求項1~5のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
重合開始剤(C)が、オキシムエステル型重合開始剤である、請求項1~6のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
ポリイミド(A)100質量部に対する、架橋剤(B)の量は10質量部以上80質量部以下である、請求項1~7のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
ポリイミド(A)は下記一般式(1)で表される構造単位を有する化合物を含む、請求項1~8のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化6】
(一般式(1)中、Yは一般式(1-1)と同義であり、Q、R、m1、m2、およびXは一般式(1-2)と同義である。)
【請求項10】
170℃で4時間硬化させて得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)が200℃以上である、請求項1~9のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項11】
170℃で4時間硬化させて得られた硬化物の200℃における貯蔵弾性率E’が0.5GPa以上である、請求項1~10のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項12】
再配線層の形成に用いられる、請求項1~11のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化物からなる硬化膜。
【請求項15】
請求項13に記載の硬化物を含む樹脂膜を備える半導体装置。
【請求項16】
層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に設けられた、請求項13に記載の硬化物を含む樹脂膜と、
前記樹脂膜中に埋設された再配線と、
を備えることを特徴とする、請求項15に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、高い機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性を有しているため、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料、カラーフィルタ等の電子材料用薄膜として広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、酸二無水物、ジアミン、及び1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンを含むポリイミド前駆体が開示されている。
特許文献2~4には、所定の構造を備えるポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献5には、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートと、重合開始剤とを含む硬化性組成物が開示されている。
特許文献6には、(A)炭素-炭素不飽和結合を有する化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)光開始剤、および(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマーを少なくとも含む感光性接着剤組成物が開示されている。当該文献には、(A)成分として、フルオレン骨格を含む樹脂が例示され、(D)成分としてポリイミド樹脂が例示されている。
特許文献7には、所定の構造を有するポリイミド樹脂を含有する樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-241607号公報
【特許文献2】特開2013-95894号公報
【特許文献3】特開2014-172994号公報
【特許文献4】国際公開第2010/110335号
【特許文献5】特開2012-206968号公報
【特許文献6】特開2012-162676号公報
【特許文献7】特開2018-070829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~7に記載の従来の技術においては、樹脂組成物から得られたポリイミドを含むフィルム等において、伸び等の機械強度や耐薬品性に改善の余地があった。フィルム等の硬化膜において伸びを改善するために樹脂の種類や添加量を調整すると、その一方で耐薬品性が低下する傾向があり、これらはトレードオフの関係にあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、所定のポリイミドと、特定の構造を備える(メタ)アクリレート化合物とを組み合わせることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0008】
本発明によれば、
(A)側鎖に二重結合を備えるポリイミドと、
(B)フルオレン骨格を備える(メタ)アクリレート化合物を含む架橋剤と、
(C)重合開始剤と、
を含む、ネガ型感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0009】
本発明によれば、
前記ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を提供することができる。
【0010】
本発明によれば、
前記硬化物からなる硬化膜を提供することができる。
【0011】
本発明によれば、
前記硬化物を含む樹脂膜を備える半導体装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、伸び等の機械強度に優れるとともに、耐薬品性に優れたフィルム等の硬化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0015】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)側鎖に二重結合を備えるポリイミドと、(B)フルオレン骨格を備える(メタ)アクリレート化合物を含む架橋剤と、(C)重合開始剤と、を含む。
本実施形態においては、側鎖に二重結合を備えるポリイミド(A)とフルオレン骨格を備える(メタ)アクリレート化合物を含む架橋剤(B)とを組み合わせて用いることにより、伸び等の機械強度に優れるとともに、耐薬品性に優れたフィルム等の硬化物を得ることができる。
以下、各成分について説明する。
【0016】
[側鎖に二重結合を備えるポリイミド(A)]
側鎖に二重結合を備えるポリイミド(A)(以下、単にポリイミド(A)とも称呼する。)は、本発明の効果を奏する範囲で、側鎖に二重結合を備える公知のポリイミドを用いることができる。
本実施形態において、ポリイミド(A)は、下記一般式(1-1)で表される構造単位(a)を有し、側鎖に二重結合を備える化合物を含むことが好ましい。
【0017】
【0018】
一般式(1-1)中、Yは2価の有機基を示す。
2価の有機基としては、特に限定されないが、下記一般式(1a)、下記一般式(1b)または下記一般式(1c)で表される基を挙げることができる。
【0019】
【0020】
一般式(1a)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR1同士、複数存在するR2同士は同一でも異なっていてもよい。
R1およびR2は、本発明の効果の観点から、好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましく水素原子である。
【0021】
R3は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR3同士は同一でも異なっていてもよい。
R3は、本発明の効果の観点から、好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましく水素原子である。
*は結合手を示す。
【0022】
一般式(1b)中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR4同士、複数存在するR5同士は同一でも異なっていてもよい。
【0023】
R4およびR5は、本発明の効果の観点から、好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはR4の少なくとも1つおよびR5の少なくとも1つは炭素数1~3のアルキル基であり、さらに好ましくは3つのR4が炭素数1~3のアルキル基であり1つのR4が水素原子であり、かつ3つのR5が炭素数1~3のアルキル基であり1つのR5が水素原子であり、特に好ましくは3つのR4がメチル基であり1つのR4が水素原子であり、かつ3つのR5がメチル基であり1つのR5が水素原子である。
*は結合手を示す。
【0024】
一般式(1c)中、Zは炭素数1~5のアルキレン基、2価の芳香族基を示す。
*は結合手を示す。
【0025】
本実施形態のポリイミド(A)が、Yに前記一般式(1a)、前記一般式(1b)および前記一般式(1c)で表される基を主鎖に備える化合物(ポリマー)を含むことにより、ポリマー主鎖が変形に耐えることができ、さらにポリマー鎖間の滑りが改善されることから、伸びが顕著に改善され、機械的強度に優れるとともに、硬化収縮が抑制されており寸法安定性に優れたフィルム等の硬化物を得ることができる。
【0026】
このような効果が得られる理由は明らかでないが、ポリマー鎖間の強いパッキングにより、ポリマー鎖の滑りぬけによる破断が抑えられ、伸びが向上し、可とう性に優れるためと推察される。
【0027】
本実施形態のポリイミド(A)は、側鎖に二重結合(二重結合を有する基)を備える。
ポリイミド(A)は、側鎖に二重結合を有することにより、露光工程において、これらの基と架橋剤(B)とが重合し溶剤に不溶となり、その後の硬化の際に閉環することがないので、硬化収縮が抑制されており寸法安定性に優れたフィルム等の硬化物を得ることができる。
【0028】
二重結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などのアルケニル基;アリルカーボネート基などのアルケニルカーボネート基;ビニルフェニル基などのビニル芳香族基;(メタ)アクリロイル基;などを挙げることができ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0029】
ポリイミド(A)は、前記一般式(1-1)で表される構造単位(a)と、さらに下記一般式(1-2)で表される構造単位(b)と、を有する化合物を含むことが好ましい。
【0030】
【0031】
一般式(1-2)中、Qは、2価~4価の炭素数1~10の有機基を示し、複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。
【0032】
2価~4価の炭素数1~10の有機基としては、エステル基、2価~4価の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、2価~4価の炭素数3~10の脂環式炭化水素基等が挙げられ、これらの炭化水素基は、酸素、窒素、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよく、エステル結合、チオエステル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合等を構造中に有していてもよい。
【0033】
Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。Rとしては、水素原子、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
m1およびm2は、それぞれ独立して1~3の整数を示す。
【0034】
Xは単結合、-SO2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、または炭素数1~5の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。
Xは、本発明の効果の観点から、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、または炭素数1~5の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基であることが好ましい。
構造単位(a)と構造単位(b)とのモル比(b/a)は、本発明の効果の観点から、0.01/1以上、1/1以下、好ましくは0.20/1以上、0.90/1以下である。
【0035】
本実施形態のポリイミド(A)は、一般式(1-1)で表される構造単位(a)と、下記一般式(1-2)で表される構造単位(b)とともに、さらに下記一般式(1-3)で表される構造単位(c)を有する化合物を含むことができる。
【0036】
【0037】
一般式(1-3)中、Z1およびZ2はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基を示し、好ましくは炭素数1~3のフルオロアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~3のフルオロアルキル基である。
【0038】
本実施形態において、ポリイミド(A)は下記一般式(1)で表される構造単位を有する化合物を含むことが好ましい。
【0039】
【0040】
一般式(1)中、Q、R、m1、m2、およびXは一般式(1-2)と同義であり、Yは一般式(1-1)と同義である。
【0041】
本実施形態のポリイミド(A)は、前記構造単位を有する化合物を含み、当該化合物はさらに一部に以下の構造単位を有する化合物を含んでいてもよい。
【0042】
【0043】
本実施形態のポリイミド(A)の重量平均分子量は、10,000~300,000であり、好ましくは15,000~200,000である。
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、本発明の効果の観点から、後述の溶剤を除く不揮発成分100質量部中に、ポリイミド(A)を20質量部以上90質量部以下、より好ましくは30質量部以上80質量部以下、より好ましくは40質量部以上75質量部以下の量で含むことができる。
【0044】
また、本実施形態のポリイミド(A)は、溶剤への溶解性に優れており前駆体の状態でワニスとする必要がないことから、ポリイミド(A)を含むワニスを調製することができ、当該ワニスから寸法安定性に優れたフィルム等の硬化物を得ることができる。
【0045】
<ポリイミド(A)の製造方法>
本実施形態のポリイミド(A)(ネガ型感光性ポリマー)の製造方法を、一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドを例に説明する。
【0046】
ポリイミド(A)の製造方法は、
下記一般式(a)で表されるビスアミノフェノール(a)と、下記一般式(b)で表される酸無水物(b)とを、100℃以上250℃以下の温度下でイミド化する工程aと、
工程aで得られたポリヒドロキシイミドの水酸基に(メタ)アクリレート基を備える化合物を反応させて、(メタ)アクリレート基を含む基を導入する工程bと、
を含む。
本実施形態によれば、有機溶剤に対する溶解性に優れたポリイミド(A)を簡便な方法で合成することができる。
【0047】
【0048】
一般式(a)中、Xは一般式(1)と同義である。
【0049】
【0050】
一般式(b)中、Yは2価の有機基を示す。
2価の有機基としては、特に限定されないが、下記一般式(1a)、(1b)または(1c)で表される基から選択することができる。
【0051】
【0052】
一般式(1a)中、R1、R2およびR3は、一般式(1)のYにおける一般式(1a)のR1、R2およびR3と同義であり、一般式(1b)中、R4およびR5は、一般式(1)のYにおける一般式(1b)のR4およびR5と同義であり、一般式(1c)中、Zは、一般式(1)のYにおける一般式(1c)のZと同義である。*は結合手を示す。
【0053】
得られるポリヒドロキシイミドの分子量を制御するために、エンドキャップ剤として少量の酸無水物(b)や芳香族アミンを添加して反応を行うことも可能である。
【0054】
エンドキャップ剤である酸無水物(b)としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸等が、芳香族アミンとしては、p-メチルアニリン、p-メトキシアニリン、p-フェノキシアニリン等が挙げられる。これらエンドキャップ剤である酸無水物(b)、又は芳香族アミンの添加量は5モル%以下であることが好ましい。5モル%を越えると、得られるポリヒドロキシイミドの分子量が著しく低下し、耐熱性や機械的特性に問題を生じる。
【0055】
工程aのイミド化反応における酸無水物(b)とビスアミノフェノール(a)の当量比は、得られるポリヒドロキシイミドの分子量を決定する重要な因子である。一般に、ポリマーの分子量と機械的性質の間に相関があることは良く知られており、分子量が大きいほど機械的性質が優れている。従って、実用的に優れた強度のポリヒドロキシイミドを得るためには、ある程度高分子量であることが必要である。本発明では、使用する酸無水物(b)とビスアミノフェノール(a)の当量比を特に制限はしないが、ビスアミノフェノール(a)に対する酸無水物(b)の当量比が0.90~1.06の範囲にあることが好ましい。0.90未満では、分子量が低くて脆くなるため機械的強度が弱くなる。また、1.06を越えると、未反応のカルボン酸が加熱時に脱炭酸してガス発生、発泡の原因となり好ましくないことがある。すなわち、当該当量比が上記範囲にあれば、機械的強度に優れ、製造安定性に優れる。
【0056】
なお、機械特性を改善する観点からは、ビスアミノフェノール(a)に対する酸無水物(b)の当量比が上記範囲を外れる場合であっても、樹脂を側鎖架橋させることで見かけの分子量を上げることもできる。
【0057】
工程aにおいては、ビスアミノフェノール(a)と、酸無水物(b)とともに、さらに下記一般式(c)で表されるジアミノビフェニル(c)を反応させてイミド化することもできる。
【0058】
【0059】
一般式(c)中、Z1およびZ2は一般式(1-3)と同義である。
【0060】
工程a(イミド化反応工程)は、有機溶媒中で、公知の方法で行うことができる。
有機溶媒としては、γ-ブチルラクトン(GBL)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒類が挙げられ、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても良い。非極性溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類やシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。混合溶媒における非極性溶媒の割合については、溶媒の溶解度が低下し、反応して得られるポリアミド酸樹脂が析出しない範囲であれば、攪拌装置能力や溶液粘度等の樹脂性状に応じて任意に設定することができる。
【0061】
反応温度は、0℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上80℃以下で30分~2時間程度反応させた後、100℃以上250℃以下、好ましくは120℃以上200℃以下で1~5時間程度反応させる。
【0062】
工程aにより、以下の構成単位を含むポリヒドロキシイミドを得ることができる。なお、工程aにおいては、ポリヒドロキシイミドを公知の方法で精製することができるが、重合での脱水効率を向上させ、得られたポリヒドロキシイミドを精製することなく工程aおよび工程bを連続的に行うことができる。
【0063】
【0064】
工程bは、工程aで得られたポリヒドロキシイミドの水酸基に(メタ)アクリレート基を備える化合物を反応させて、(メタ)アクリレート基を含む架橋基を導入する。
ポリイミド(A)に導入された架橋基が、露光工程において後述する架橋剤(B)と反応し、露光部が有機溶媒に不溶となる。
【0065】
(メタ)アクリレート基を備える化合物としては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、メタクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0066】
ポリヒドロキシイミドに(メタ)アクリレート基を含む架橋基を導入するには、有機溶媒中に、ポリヒドロキシイミドと、(メタ)アクリレート基を備える化合物とを混合しながら、60℃~150℃で2~10時間程度反応させる。反応は、特に限定されないが常圧で行うことができる。
【0067】
(メタ)アクリレート基を備える化合物は、ポリヒドロキシイミドに対する架橋基の導入量に合わせて適宜選択することができるが、例えば、ポリヒドロキシイミドの水酸基モル量に対して0.8~3.0モル倍となるように添加することができ、等モルであることが好ましい。なお、ポリヒドロキシイミドが架橋基を導入することができる基を有している場合には、その基をモル量に加えることができる。
【0068】
有機溶媒としては、γ-ブチルラクトン(GBL)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒類が挙げられ、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても良い。非極性溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。
反応に際しては、トリエチルアミン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなどの塩基を加えることもできる。
【0069】
工程bにおいては、工程aで得られたポリヒドロキシイミドを含む反応溶液を、再沈殿等により精製し、得られたポリヒドロキシイミドを用いることもできるが、工程aの反応溶液をそのまま工程bに用いることができる。
【0070】
[架橋剤(B)]
架橋剤(B)は、フルオレン骨格を備える(メタ)アクリレート化合物(b1)を含むことができる。化合物(b1)は、フルオレン骨格を備えることにより耐薬品性により優れる。
(メタ)アクリレート化合物(b1)は、下記一般式(A)で表される化合物から選択される少なくとも1種である。
【0071】
【0072】
一般式(A)中、環Aはベンゼン環又は縮合多環式芳香族炭化水素環を示す。
【0073】
前記縮合多環式芳香族炭化水素環としては、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン、ナフタレン環などのC8-20縮合二環式炭化水素環など)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などが例示できる。好ましい環Aは、屈折率、耐熱性などの点から、ナフタレン環などの縮合二環式炭化水素環である。なお、フルオレンの9-位に置換する2つの環Aの種類は、異なっていてもよいが、通常、同一である。また、フルオレンの9-位に置換する環Aの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9-位に置換するナフチル基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基などであってもよく、特に2-ナフチル基であるのが好ましい。
【0074】
R1はハロゲン原子、またはアルキル基を示す。複数存在するR1同士は同一でも異なっていてもよい。
【0075】
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子などを挙げることができる。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などの炭素数1~6のアルキル基を挙げることができる。なお、フルオレンを構成するベンゼン環に対するR1の置換位置は、特に限定されない。
R1の結合数を示すmは0~4の整数であり、好ましくは0または1、さらに好ましくは0である。複数存在するmは同一でも異なっていてもよい。
【0076】
R2は、ハロゲン原子、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、またはアラルキルオキシ基を示す。複数存在するR2同士は同一でも異なっていてもよい。
【0077】
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子などを挙げることができる。
前記炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などの炭素数1~6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基などの炭素数5~10のシクロアルキル基;フェニル基、アルキルフェニル(メチルフェニル基、ジメチルフェニル基等)、ナフチル基などの炭素数6~10のアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;等を例示できる。
【0078】
前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などの炭素数1~6のアルコキシ基を挙げることができ、シクロアルコキシ基としては、シクロへキシルオキシ基などの炭素数5~10のシクロアルキルオキシ基を挙げることができ、アリールオキシ基としては、フェノキシ基などの炭素数6~10のアリールオキシ基などが例示でき、アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基などを挙げることができる。
【0079】
R2の結合数を示すnは、0または1以上の整数であり、好ましくは0または1~6の整数であり、より好ましくは0である。複数存在するn同士は同一でも異なっていてもよい。
【0080】
R3は水素原子、またはメチル基を示す。複数存在するR3同士は同一でも異なっていてもよい。
【0081】
pは1以上の整数であり、好ましくは1~4の整数であり、さらに好ましくは1である。複数存在するp同士は同一でも異なっていてもよい。
【0082】
Xは、以下の一般式(a)または一般式(b)で表される基である。複数存在するX同士は同一でも異なっていてもよい。伸び等の機械強度に優れたフィルム等の硬化物を得る観点からは、当該基の直鎖が長いことがより好ましい。
【0083】
【0084】
一般式(a)中、qは1~15の整数を示し、好ましくは1~12の整数、より好ましくは1~10の整数である。
一般式(b)中、R4はアルキレン基を示し、好ましくは炭素数1~5のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~3のアルキレン基である。
rは0または1以上の整数を示し、好ましくは0または1~5の整数であり、より好ましくは0または1~3の整数である。
*は結合手を示す。
【0085】
前記一般式(A)で表される、フルオレン骨格を備える(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式(A1)または下記一般式(A2)で表される(メタ)アクリレート化合物を好ましくも用いることができ、これらから選択される1種または2種以上を混合して用いることができる。本発明の効果の観点から、下記一般式(A1)で表される(メタ)アクリレート化合物と下記一般式(A2)で表される(メタ)アクリレート化合物とを組み合わせて用いることも好ましい。
【0086】
【0087】
一般式(A1)中、R1、R2、R3、X、m、pは一般式(A)と同義である。n1は0~4の整数であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。複数存在するn1同士は同一でも異なっていてもよい。Xは、前記一般式(a)で表される基であることが好ましい。
【0088】
前記一般式(A1)で表される化合物としては、具体的に、下記一般式で表される化合物等を挙げることができる。
【0089】
【0090】
上記一般式において、qは1~15の整数を示し、好ましくは1~12の整数、より好ましくは1~10の整数である。
【0091】
【0092】
一般式(A2)中、R1、R2、R3、X、m、pは一般式(A)と同義である。n2は0~3の整数であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。複数存在するn2同士は同一でも異なっていてもよい。n3は0~3の整数であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。複数存在するn3同士は同一でも異なっていてもよい。Xは、前記一般式(b)で表される基であることが好ましい。
【0093】
架橋剤(B)は、さらに、フルオレン骨格を備える前記(メタ)アクリレート化合物(b1)とともに、当該化合物(b1)以外の多官能(メタ)アクリレート化合物(b2)を含むことができる。
【0094】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(b2)は、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、本発明の効果を発揮することができれば、従来公知の化合物を用いることができる。
【0095】
前記多官能(メタ)アクリル化合物(b2)としては、例えば、以下の一般式(1b-p)で表される化合物、一般式(1c-p)で表される化合物、および一般式(1d-p)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
【0097】
一般式(1b-p)中、
kは2または3であり、
Rは水素原子またはメチル基であり、複数のRは同じでも異なっていてもよく、
X1は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)であり、複数存在するX1は同一であっても異なっていてもよく、
X1'は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-X'-Z'-で表される基(X'は炭素数1~6のアルキレン基であり、Z'は-O-または-COO-である)であり、
X2は炭素数1~12のk+1価の有機基である。
Rは、感度の一層の向上(重合のしやすさ)などから、水素原子が好ましい。
kは、2でも3でもよいが、原料の入手容易性や感度の一層の向上の点からは、好ましくは3である。
【0098】
【0099】
一般式(1c-p)中、k、R、Y,X1およびX2は、それぞれ、上記の一般式(1b-p)と同義であり、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のX1は互いに同一であっても異なっていてもよく、
X3は、炭素数1~6の2価の有機基であり、
X4およびX5は、それぞれ独立に、単結合または炭素数1~6の2価の有機基であり、
X6は、炭素数1~6の2価の有機基である。
Yは、水素原子または(メタ)アクリロイル基である。
【0100】
【0101】
一般式(1d-p)中、Yは、水素原子または(メタ)アクリロイル基である。
nは、1~5の整数である。
【0102】
一般式(1b-p)で表される多官能(メタ)アクリル化合物の具体例としては、以下の構造の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。なお以下の化合物において、Yは水素原子、または(メタ)アクリロイル基、あるいはそれらの組み合せを表す。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
一般式(1c-p)で表される多官能(メタ)アクリル化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
ポリイミド(A)100質量部に対する、架橋剤(B)の量は、本発明の効果の観点から、10質量部以上80質量部以下、好ましくは20質量部以上70質量部以下、好ましくは30質量部以上60質量部以下とすることができる。当該範囲であることにより、伸びがより改善される。
【0111】
架橋剤(B)100質量部における、フルオレン骨格を備える前記(メタ)アクリレート化合物(b1)の量は、本発明の効果の観点から、5質量部以上100質量部以下、好ましくは10質量部以上100質量部以下、さらに好ましくは15質量部以上100質量部以下とすることができる。
【0112】
架橋剤(B)100質量部における、多官能(メタ)アクリレート化合物(b2)の量は、本発明の効果の観点から、0質量部以上95質量部以下、好ましくは0質量部以上90質量部以下、さらに好ましくは0質量部以上85質量部以下とすることができる。
【0113】
[重合開始剤(C)]
重合開始剤(C)としては、本発明の効果を発揮し得る範囲で従来公知の重合開始剤を用いることができ、熱ラジカル発生剤と光ラジカル発生剤を挙げることができる。
【0114】
前記熱ラジカル発生剤としては、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジーメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、α、α'-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイドおよび過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;や、アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾジ-t-オクタン、アゾジ-t-ブタンおよび2,2’-アゾビス[N-(2-プロぺニル)-2-メチルプロピオンアミド]等のアゾ化合物;などが挙げられる。また、有機過酸化物は、還元剤と組み合わせることにより、レドックス反応とすることも可能である。
【0115】
前記光ラジカル発生剤としては、アルキルフェノン型の開始剤、オキシムエステル型の開始剤、アシルフォスフィンオキサイド型の開始剤等が挙げられる。例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム))、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-(4-モルホリノ)フェニル)-2-(フェニルメチル)-1-ブタノン、Irgacure Oxe01(BASFジャパン株式会社)、Irgacure Oxe02(BASFジャパン株式会社)、Irgacure Oxe03(BASFジャパン株式会社)、Irgacure Oxe04(BASFジャパン株式会社)、N-1919T(株式会社ADEKA)、NCI-730(株式会社ADEKA)、NCI-831E(株式会社ADEKA)、NCI-930(株式会社ADEKA)等を挙げることができる。これらのうちいずれか1種以上を使用できる。
これらの中でも、本発明の効果の観点、さらにより露光感度の優れた感光性樹脂組成物で構成される樹脂膜を作製する観点から、オキシムエステル型の開始剤が好ましい。
【0116】
重合開始剤(C)の添加量は、特に限定されないが、ネガ型感光性樹脂組成物の溶剤を除く不揮発成分100質量%の0.3~10質量%程度であるのが好ましく、0.5~7.5質量%程度であるのがより好ましく、1~5質量%程度であるのがさらに好ましい。重合開始剤(C)の添加量を前記範囲内に設定することにより、ネガ型感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層のパターニング性を高めるとともに、ネガ型感光性樹脂組成物の長期保管性を向上させることができる。
【0117】
[その他の成分]
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、その他の成分として、溶媒、界面活性剤、密着助剤、酸化防止剤等を含むことができる。
【0118】
(溶媒)
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。これにより、各種の基板表面に均一な感光性樹脂膜を形成することができる。
【0119】
溶剤としては有機溶剤が好ましく用いられる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤などのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0120】
溶剤の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチルピロリドン(NMP)、メチル-n-アミルケトン(MAK)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、又は、これらの混合物を挙げることができる。
溶剤の使用量は特に限定されない。例えば、不揮発成分の濃度が例えば10~70質量%、好ましくは15~60質量%となるような量で使用される。
【0121】
(界面活性剤)
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0122】
界面活性剤としては、限定されず、具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤;エフトップEF301、エフトップEF303、エフトップEF352(新秋田化成社製)、メガファックF171、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF177、メガファックF444、メガファックF470、メガファックF471、メガファックF475、メガファックF482、メガファックF477(DIC社製)、フロラードFC-430、フロラードFC-431、ノベックFC4430、ノベックFC4432(スリーエムジャパン社製)、サーフロンS-381、サーフロンS-382、サーフロンS-383、サーフロンS-393、サーフロンSC-101、サーフロンSC-102、サーフロンSC-103、サーフロンSC-104、サーフロンSC-105、サーフロンSC-106、(AGCセイミケミカル社製)などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤;オルガノシロキサン共重合体KP341(信越化学工業社製);(メタ)アクリル酸系共重合体ポリフローNo.57、95(共栄社化学社製)などが挙げられる。
【0123】
これらのなかでも、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤としては、上記具体例のうち、メガファックF171、メガファックF173、メガファックF444、メガファックF470、メガファックF471、メガファックF475、メガファックF482、メガファックF477(DIC社製)、サーフロンS-381、サーフロンS-383、サーフロンS-393(AGCセイミケミカル社製)、ノベックFC4430及びノベックFC4432(スリーエムジャパン社製)から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0124】
また、界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤(例えばポリエーテル変性ジメチルシロキサンなど)も好ましく用いることができる。シリコーン系界面活性剤として具体的には、東レダウコーニング社のSHシリーズ、SDシリーズおよびSTシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越化学工業株式会社のKPシリーズ、日油株式会社のディスフォーム(登録商標)シリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどを挙げることができる。
【0125】
ネガ型感光性樹脂組成物中の界面活性剤の含有量の上限値は、ネガ型感光性樹脂組成物の全体(溶媒を含む)に対して1質量%(10000ppm)以下であることが好ましく、0.5質量%(5000ppm)以下であることであることがより好ましく、0.1質量%(1000ppm)以下であることが更に好ましい。
【0126】
また、ネガ型感光性樹脂組成物中の界面活性剤の含有量の下限値は、特には無いが、界面活性剤による効果を十分に得る観点からは、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物の全体(溶媒を含む)に対して0.001質量%(10ppm)以上である。
界面活性剤の量を適当に調整することで、他の性能を維持しつつ、塗布性や塗膜の均一性などを向上させることができる。
【0127】
(密着助剤)
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、密着助剤をさらに含んでもよい。
密着助剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、ウレイドシラン、酸無水物官能型シラン、スルフィドシラン等のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エポキシシラン(すなわち、1分子中に、エポキシ部位と、加水分解によりシラノール基を発生する基の両方を含む化合物)または酸無水物官能型シラン(すなわち、1分子中に、酸無水物基と、加水分解によりシラノール基を発生する基の両方を含む化合物)が好ましい。
【0128】
アミノシランとしては、例えば、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、またはN-フェニル-γ-アミノ-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0129】
エポキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、またはβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0130】
アクリルシランとしては、例えば、γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、またはγ-(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプトシランとしては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0131】
ビニルシランとしては、例えば、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、またはビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ウレイドシランとしては、例えば、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0132】
酸無水物官能型シランをとしては、例えば、信越化学工業社製の、商品名X-12-967C(化合物名:3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物)等が挙げられる。
【0133】
スルフィドシランとしては、例えば、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、またはビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。
密着助剤の添加量は、特に限定されないが、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分全体の0.1~5質量%、好ましくは0.5~3質量%である。
【0134】
(酸化防止剤)
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、酸化防止剤をさらに含んでもよい。酸化防止剤としては、フェノ-ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびチオエ-テル系酸化防止剤から選択される1種以上を使用できる。酸化防止剤は、ネガ型感光性樹脂組成物により形成される樹脂膜の酸化を抑制できる。
【0135】
フェノ-ル系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル}2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチル-6-ブチルフェノール)、2,-2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4'-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-エチリデンビス(4-s-ブチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4-8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-ビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコ-ルビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、1,1'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(6-(1-メチルシクロヘキシル)-4-メチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス(2-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルプロピオニロキシ)1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)サルファイド、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-2-メチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルシクロヘキシル、スチレネイティッドフェノール、2,4-ビス((オクチルチオ)メチル)-5-メチルフェノール、などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルホスファイト)、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイト、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、ビス-(2,6-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ミックスドモノandジ-ノニルフェニルホスファイト)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシカルボニルエチル-フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-オクタデシルオキシカルボニルエチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0136】
チオエ-テル系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ビス(2-メチル-4-(3-n-ドデシル)チオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル)スルフィド、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリル)チオプロピオネートなどが挙げられる。
【0137】
(ネガ型感光性樹脂組成物の調製)
本実施形態におけるネガ型感光性樹脂組成物を調製する方法は限定されず、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれる成分に応じて、公知の方法を用いることができる。
例えば、上記各成分を、溶媒に混合して溶解することにより調製することができる。
【0138】
(ネガ型感光性樹脂組成物)
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、該ネガ型感光性樹脂組成物をAl、Cuといった金属を備える面に対して塗工し、次いで、プリベークすることで乾燥させ樹脂膜を形成し、次いで、露光及び現像することで所望の形状に樹脂膜をパターニングし、次いで、樹脂膜をポストベークすることで硬化させ硬化膜を形成することで使用される。
【0139】
なお、上記永久膜を作製する場合、プリベークの条件としては、例えば、温度90℃以上130℃以下で、30秒間以上1時間以下の熱処理とすることができる。また、ポストベークの条件としては、例えば、温度150℃以上250℃以下で、30分間以上10時間以下の熱処理とすることができ、好ましくは170℃程度で1~6時間熱処理することができる。
【0140】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は低温硬化性に優れる。
例えば、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を170℃で4時間硬化させて得られた硬化物は、ガラス転移温度(Tg)が200℃以上、好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上とすることができる。
【0141】
さらに、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を170℃で4時間硬化させて得られた硬化物は、200℃における貯蔵弾性率E’が0.5GPa以上、好ましくは0.7GPa以上、さらに好ましくは0.8GPa以上とすることができる。
【0142】
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物の粘度は、所望の樹脂膜の厚みに応じて適宜設定することができる。ネガ型感光性樹脂組成物の粘度の調整は、溶媒を添加することでできる。
【0143】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物から得られるフィルムは、テンシロン試験機による引張試験により測定された伸び率が、最大値15~200%、好ましくは20~150%であり、平均値10~150%、好ましくは15~120%である。
【0144】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物から得られるフィルム等の硬化物は耐薬品性に優れる。
具体的には、フィルムをジメチルスルホキシド99質量%未満と水酸化テトラメチルアンモニウム2質量%未満との溶液に40℃で10分間浸漬し、その後イソプロピルアルコールで十分洗浄後風乾し、処理後の膜厚を測定する。処理後の膜厚と処理前の膜厚の膜厚変化率を下記式より算出し、フィルムの減少率として評価する。
式:フィルムの減少率(%){(浸漬後の膜厚-浸漬前の膜厚)/浸漬前の膜厚×100(%)}
【0145】
膜厚変化率は、40%以下であるのが好ましく、30%以下であるのがより好ましい。これにより、硬化膜がジメチルスルホキシドに浸される工程に供された場合でも、膜厚がほとんど減少しない。このため、かかる工程に供された後でも機能を維持し得る硬化膜が得られる。
【0146】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は硬化収縮が抑制されており、シリコンウェハ表面に乾燥後の膜厚が10μmになるようにスピンコートし、120℃3分間のプリベーク後、高圧水銀灯にて600mJ/cm2の露光を行い、その後、窒素雰囲気下で170℃120分間ポストベークを行ってフィルムを調製した場合において、前記プリベーク後のフィルム膜厚を膜厚A、前記ポストベーク後のフィルム膜厚を膜厚Bとし、下記式から算出される硬化収縮率を好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下とすることができる。
式:硬化収縮率[%]={(膜厚A-膜厚B)/膜厚A}x100
【0147】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は耐熱性が高く、得られるフィルムは、熱重量示差熱同時測定により測定した重量減少温度(Td5)が、200℃以上、好ましくは300℃以上とすることができる。
【0148】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物からなるフィルムは、硬化収縮が抑制されており、線熱膨張率(CTE)は200ppm以下、好ましくは100ppm以下とすることができる。
【0149】
(用途)
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、永久膜、レジストなどの半導体装置用の樹脂膜を形成するために用いられる。これらの中でも、プリベーク後のネガ型感光性樹脂組成物及びAlパッドの密着性向上と、現像時のネガ型感光性樹脂組成物の残渣の発生の抑制とをバランスよく発現する観点、ポストベーク後のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜と、金属との密着性を向上する観点、加えて、ポストベーク後のネガ型感光性樹脂組成物の耐薬品性を向上する観点から、永久膜を用いる用途に用いられることが好ましい。
【0150】
なお、本実施形態において、樹脂膜は、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を含む。すなわち、本実施形態にかかる樹脂膜とは、ネガ型感光性樹脂組成物を硬化させてなるものである。
【0151】
上記永久膜は、ネガ型感光性樹脂組成物に対してプリベーク、露光及び現像を行い、所望の形状にパターニングした後、ポストベークすることによって硬化させることにより得られた樹脂膜で構成される。永久膜は、半導体装置の保護膜、層間膜、ダム材などに用いることができる。
【0152】
上記レジストは、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の方法で、レジストにとってマスクされる対象に塗工し、ネガ型感光性樹脂組成物から溶媒を除去することにより得られた樹脂膜で構成される。
【0153】
本実施形態に係る半導体装置の一例を
図1に示す。
本実施形態に係る半導体装置100は、上記樹脂膜を備える半導体装置とすることができる。具体的には、半導体装置100のうち、パッシベーション膜32、絶縁層42および絶縁層44からなる群の1つ以上を、本実施形態の硬化物を含む樹脂膜とすることができる。ここで、樹脂膜は、上述した永久膜であることが好ましい。
【0154】
半導体装置100は、たとえば半導体チップである。この場合、たとえば半導体装置100を、バンプ52を介して配線基板上に搭載することにより半導体パッケージが得られる。
【0155】
半導体装置100は、トランジスタ等の半導体素子が設けられた半導体基板と、半導体基板上に設けられた多層配線層(図示せず。)と、を備えている。多層配線層のうち最上層には、層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられた最上層配線34が設けられている。最上層配線34は、たとえば、アルミニウムAlにより構成される。また、層間絶縁膜30上および最上層配線34上には、パッシベーション膜32が設けられている。パッシベーション膜32の一部には、最上層配線34が露出する開口が設けられている。
【0156】
パッシベーション膜32上には、再配線層40が設けられている。再配線層40は、パッシベーション膜32上に設けられた絶縁層42と、絶縁層42上に設けられた再配線46と、絶縁層42上および再配線46上に設けられた絶縁層44と、を有する。絶縁層42には、最上層配線34に接続する開口が形成されている。再配線46は、絶縁層42上および絶縁層42に設けられた開口内に形成され、最上層配線34に接続されている。絶縁層44には、再配線46に接続する開口が設けられている。
【0157】
絶縁層44に設けられた開口内には、たとえばUBM(Under Bump Metallurgy)層50を介してバンプ52が形成される。半導体装置100は、たとえばバンプ52を介して配線基板等に接続される。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0158】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
合成例1においては以下の化合物を用いた。
【0159】
下記式で示される、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、BAFAとも示す)
【0160】
【0161】
下記式で示される、4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(以下、TFMBとも示す)
【0162】
【0163】
下記式で示される、4-[4-(1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-イルカルボニロキシ)-2,3,5-トリメチルフェニル]-2,3,6-トリメチルフェニル 1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-カルボキシレート(以下、TMPBP-TMEとも示す)
【0164】
【0165】
[合成例1]
はじめに、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、BAFA37.62g(102.7mmol)と、TFMB32.89g(102.7mmol)と、TMPBP-TME151.29g(244.6mmol)とを入れた。その後、反応容器に、さらにGBL598.86gを加えた。
窒素を10分間通気した後、撹拌しつつ温度60℃まで上げ、1.5時間反応させた。その後、さらに180℃で3時間反応させることで、ビスアミノフェノールと酸無水物を重合させ、重合溶液を作製した。
得られた重合溶液を、アセトンで希釈して希釈液を作製し、次いで、希釈液を水/メタノール=3/1の混合溶液に滴下することで、白色固体を析出させた。得られた白色固体を回収し、温度120℃で真空乾燥することにより、ポリマー205.55gを得た。
ポリマーをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは18200、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.82であった。
ポリマーについて、IR測定を行ったところ、1480、1550、1670cm-1付近のアミド基由来のピークが消失しており、イミド化が完結していることを確認した。
また、1H-NMR測定を行ったところ、芳香族領域(6.9ppm~8.9ppm)にプロトン数に対応した面積比でピークを確認した。
次いで、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、得られたポリイミド197.16g(水酸基換算182.6mmol)と、2-イソシアナトエチルアクリレート(以下AOIとも示す、昭和電工社製)51.54g(365.22mmol)と、γ-ブチルラクトン(GBL)737.08gを入れた。その後、撹拌しつつ温度120℃まで上げ、6時間反応させた。
得られた反応溶液を、アセトンで希釈して希釈液を作製し、次いで、希釈液を水/メタノール=2/1の混合溶液に滴下することで、白色固体を析出させた。得られた白色固体を回収し、温度40℃で真空乾燥することにより、ポリマー183.99gを得た。
ポリマーをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは20,400、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.80であった。
1H-NMR測定結果から、ポリマーに架橋基が導入されたことを確認した。架橋基が導入されたポリマーは、その一部に以下の繰り返し単位が含まれていた。
また、ガスクロマトグラフィーの測定結果から、架橋基の導入率は60%であった。
【0166】
【0167】
実施例においては以下の成分を用いた。
[架橋剤]
・アクリレート化合物1:下記化学式で表される多官能アクリレート化合物(新中村化学工業社製、A-DPH)
【化30】
【0168】
・アクリレート化合物2:フルオレン骨格を備える2官能アクリレート化合物(大阪ガスケミカル社製、GA-5060P)
・アクリレート化合物3:フルオレン骨格を備える2官能アクリレート化合物(大阪ガスケミカル社製、GA-2800)
【0169】
・アクリレート化合物4:下記化学式(q=1)で表される2官能アクリレート化合物(新中村化学社製、A-BPEF-2)
【化31】
【0170】
[合成例2]
(アクリレート化合物5の合成)
5リットルの4つ口フラスコに、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-フルオレン(JEFケミカル社製)1molに対し、エチレンオキシド10molを付加した9,9-ビス(4-ヒドロキシペンタエトキシフェニル)-フルオレン180g、トルエン320g、アクリル酸75g、ハイドロキノン0.1gおよび硫酸6gを入れ、120℃で撹拌を行いながら副生した水をトルエンで共沸除去し4時間反応させた。反応後トルエンを130g加え、アルカリ水で洗浄し、トルエンを減圧留去して、アクリレート化合物4の化学式においてq=5で表されるアクリレート化合物5を得た。1H-NMR、MS測定により構造が同定された。
【0171】
[合成例3]
(アクリレート化合物6の合成)
5リットルの4つ口フラスコに、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-フルオレン(JEFケミカル社製)1molに対し、エチレンオキシド20molを付加した9,9-ビス(4-ヒドロキシデカエトキシフェニル)-フルオレン281g、トルエン400g、アクリル酸75g、ハイドロキノン0.1gおよび硫酸6gを入れ、120℃で撹拌を行いながら副生した水をトルエンで共沸除去し4時間反応させた。反応後トルエンを300g加え、アルカリ水で洗浄し、トルエンを減圧留去して、アクリレート化合物4の化学式においてq=10で表されるアクリレート化合物6を得た。1H-NMR、MS測定により構造が同定された。
【0172】
・アクリレート化合物7:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(ビスコート230、大阪有機化学工業社製)
【0173】
[重合開始剤]
・重合開始剤1:O-アシルオキシム化合物(NCI-730、ADEKA社製)
・重合開始剤2:ジクミルパーオキサイド(パーカドックスBC、過酸化物、化薬アクゾ社製)
【0174】
[密着助剤]
・密着助剤1:3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(X-12-967C(信越化学工業社製)
【0175】
[界面活性剤]
・界面活性剤1:フルオロカーボン鎖を有する界面活性剤(FC-4432,住友スリーエム社製)
【0176】
[溶剤]
・溶剤1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
・溶剤2:γ-ブチルラクトン(GBL)
【0177】
[実施例1~16、比較例1~2]
合成例1で得られた架橋基を導入したポリヒドロキシイミドと、表1に記載の成分とを溶剤中で混合し、ネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
得られたネガ型感光性樹脂組成物を、シリコンウェハ表面に乾燥後の膜厚が10μmになるようにスピンコートし、120℃3分間のプリベーク後、高圧水銀灯にて600mJ/cm2の露光を行い、その後、窒素雰囲気下で170℃120分間ポストベークを行ってフィルムを調製した。
得られたフィルムについて、下記測定法にて、硬化収縮率、貯蔵弾性率E’、ガラス転移温度(Tg)、線熱膨張率(CTE)、5%重量減少温度(Td5)、伸び率、耐薬品性、を測定した。
【0178】
(硬化収縮率)
実施例および比較例で得られたフィルムのプリベーク後の膜厚を膜厚A、ポストベーク後の膜厚を膜厚Bとし、膜厚Aと膜厚Bを下記式に代入して、硬化収縮率を算出した。結果を表1に示す。
硬化収縮率[%]={(膜厚A-膜厚B)/膜厚A}x100
【0179】
(ガラス転移温度、貯蔵弾性率E’)
実施例および比較例で得られたフィルムから8mm×40mmの試験片を切り出し、その試験片に対し、動的粘弾性測定(DMA装置、TAインスツルメント社製、Q800)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hzで動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率E’を算出した。また、ガラス転移温度は、損失正接tanδが最大値を示す温度とした。
【0180】
(線熱膨張率(CTE))
実施例および比較例で得られたフィルムから長さ13mm×幅5mmの短冊状試験片を切出した。チャック間距離10mmにて引張モードの熱機械測定を行い、熱膨張曲線から平均線熱膨張率(CTE、50℃~100℃)を求めた。結果を表1に示す。
【0181】
(5%重量減少温度(Td5))
実施例および比較例で得られたフィルムを熱重量示差熱同時測定により測定した。測定条件は、30ml/分の窒素気流下、昇温速度10℃/分とした。初期から5%の重量が減少した温度を測定し、5%重量減少温度(Td5)とした。結果を表1に示す。
【0182】
(伸び率)
実施例および比較例で得られたフィルムから切り出した試験片(6.5mm×60mm×10μm厚)に対して引張試験(延伸速度:5mm/分)を23℃雰囲気中で実施した。引張試験は、オリエンテック社製引張試験機(テンシロンRTC-1210A)を用いて行った。試験片5本を測定し、破断点の応力を平均化したものを強度とした。破断した距離と初期距離から引張伸び率を算出し、伸び率の最大値を求めた。結果を表1に示す。
【0183】
(耐薬品性)
実施例および比較例で得られたフィルムをジメチルスルホキシド99質量%未満と水酸化テトラメチルアンモニウム2質量%未満との溶液に40℃で10分間浸漬し、その後イソプロピルアルコールで十分洗浄後風乾し、処理後の膜厚を測定した。処理後の膜厚と処理前の膜厚の膜厚変化率を下記式より算出し、硬化物の減少率とした。
式:硬化物の減少率(%){(浸漬後の膜厚-浸漬前の膜厚)/浸漬前の膜厚×100(%)}
【0184】
【0185】
表1に示すように、本発明に係る実施例のネガ型感光性樹脂組成物は、伸びおよび耐薬品性のいずれにもバランスよく優れ、さらに他の物性も優れていた。