(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135436
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
F28D 15/04 20060101AFI20220908BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20220908BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F28D15/04 E
F28D15/02 101J
F28D15/04 H
F28D15/02 102G
F28F13/18 A
F28F13/18 B
F28D15/02 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035233
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】原 伸英
(72)【発明者】
【氏名】勝田 理史
(72)【発明者】
【氏名】谷本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大谷 雄一
(57)【要約】
【課題】熱交換性能がさらに向上したヒートパイプを提供する。
【解決手段】ヒートパイプは、軸線方向に延びる外筒と、外筒の内側で軸線方向に延びるように設けられた内筒と、外筒と内筒との間でこれら外筒と内筒とに一体に設けられており、軸線方向に直線状に延びる微小貫通部が複数形成されたウィックと、を備える。この構成によれば、作動流体が遮られることなく軸線方向に円滑に流動することから、熱交換性能がさらに向上したヒートパイプを提供することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる外筒と、
該外筒の内側で前記軸線方向に延びるように設けられた内筒と、
前記外筒と前記内筒との間でこれら外筒と内筒とに一体に設けられており、前記軸線方向に直線状に延びる微小貫通部が複数形成されたウィックと、
を備えるヒートパイプ。
【請求項2】
前記ウィックは、三次元格子状をなすことで、互いに隣接する前記微小貫通部同士を連通させる連通部を有する請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記微小貫通部は、前記外筒と前記内筒との間で前記軸線に対する径方向に複数設けられている請求項1又は2に記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記軸線方向における前記外筒の少なくとも一方の端部を含む部分には、他の部分よりも肉厚が小さい薄肉部が形成され、
該薄肉部には、前記軸線に対する径方向に突出するとともに周方向に間隔をあけて配列された複数のフィンが設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートパイプ。
【請求項5】
前記フィンの表面粗さは、前記外筒の内周面の表面粗さよりも大きく設定されている請求項4に記載のヒートパイプ。
【請求項6】
前記外筒の内周面、及び前記内筒の外周面における前記軸線方向の一方側の端部を含む領域に設けられ、他の部分よりも相対的に高い親水性を有する親水部と、
前記外筒の内周面、及び前記内筒の外周面における前記軸線方向の他方側の端部を含む領域に設けられ、他の部分よりも相対的に高い疎水性を有する疎水部と、
をさらに有する請求項1から5のいずれか一項に記載のヒートパイプ。
【請求項7】
軸線方向に延びる外筒と、
前記外筒内で該外筒の内周面に一体に設けられ、内周側に前記軸線に沿って貫通する気体通過流路を形成するウィックと、
を備え、
前記ウィックは、前記軸線の径方向外側から内側に向かうに従って空隙率が大きくなる気液通過部を有するヒートパイプ。
【請求項8】
前記ウィックは、前記気液通過部の外周側に設けられ、前記気液通過部よりも低い空隙率を有する液通過部をさらに有する請求項7に記載のヒートパイプ。
【請求項9】
前記ウィックは、三次元格子状をなすことで、互いに隣接する前記気液通過部同士、及び互いに隣接する前記液通過部同士を連通させる連通部を有する請求項8に記載のヒートパイプ。
【請求項10】
前記外筒の内周面における前記軸線方向の一方側の端部を含む領域に設けられ、他の部分よりも相対的に高い親水性を有する親水部と、
前記外筒の内周面における前記軸線方向の他方側の端部を含む領域に設けられ、他の部分よりも相対的に高い疎水性を有する疎水部と、
をさらに有する請求項7から9のいずれか一項に記載のヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
熱を一定の方向に輸送するための装置としてヒートパイプの利用が進められている。下記特許文献1に記載されているように、一般的なヒートパイプは、筒状の外筒と、この外筒の内周側に設けられた内筒と、これら外筒と内筒との間に充填されたウィックと、を主に備えている。ウィックは、例えば微細なワイヤーを編み込むことで形成されたメッシュ状をなしている。ウィック内部に形成される微小流路で毛細管現象が生じることで、水やアルコール等の作動流体が当該流路内を液体として移動することが可能とされている。
【0003】
例えば、ヒートパイプを熱源側と低温熱源側との間に配置した場合を考える。この場合、熱源とヒートパイプ内部の作動流体との間で熱交換が生じる。この熱交換によってヒートパイプの熱源側で生じた気体(蒸気)は、放熱側に設けられた低温熱源との間で熱交換する。低温熱源と熱交換することで蒸気は凝縮し、液体の状態でウィックの微小流路を通じて再びヒートパイプ内部を熱源側に移動する。このようなサイクルが連続的に生じることで、熱源側と低温熱源側との間で熱の輸送が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにウィックをメッシュ状の部材で形成した場合、作動流体の流れ方向(つまり、熱の輸送方向)から見て微小流路の断面積がワイヤーによって阻害されてしまう。具体的には、流路を横切る方向に編み込まれたワイヤーによって当該流路の断面積が減少してしまう。その結果、毛細管力による作動流体の移送力が限定的となり、ヒートパイプの熱交換性能に影響が及ぶ虞がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、熱交換性能がさらに向上したヒートパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るヒートパイプは、軸線方向に延びる外筒と、該外筒の内側で前記軸線方向に延びるように設けられた内筒と、前記外筒と前記内筒との間でこれら外筒と内筒とに一体に設けられており、前記軸線方向に直線状に延びる微小貫通部が複数形成されたウィックと、を備える。
【0008】
本開示に係るヒートパイプは、軸線方向に延びる外筒と、前記外筒内で該外筒の内周面に一体に設けられ、内周側に前記軸線に沿って貫通する気体通過流路を形成するウィックと、を備え、前記ウィックは、前記軸線の径方向外側から内側に向かうに従って空隙率が大きくなる気液通過部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、熱交換性能がさらに向上したヒートパイプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第一実施形態に係るヒートパイプの縦断面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係るヒートパイプを軸線方向から見た断面図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係るウィックの三次元構造の一例を示す斜視図である。
【
図4】本開示の第二実施形態に係るヒートパイプの縦断面図である。
【
図6】本開示の第二実施形態に係るヒートパイプの変形例を軸線方向から見た断面図である。
【
図7】本開示の第三実施形態に係るヒートパイプの縦断面図である。
【
図8】本開示の第四実施形態に係るヒートパイプの縦断面図である。
【
図9】本開示の第四実施形態に係るヒートパイプを軸線方向から見た断面図である。
【
図10】本開示の各実施形態に係るウィックをダイキャスト用金型の冷却に用いた例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
(ヒートパイプの構成)
以下、本開示の第一実施形態に係るヒートパイプ100について、
図1から
図3を参照して説明する。ヒートパイプ100は、一定の方向に熱を輸送するための装置である。
図1に示すように、ヒートパイプ100は、外筒1と、内筒2と、ウィック3と、を備えている。
【0012】
(外筒の構成)
外筒1は、軸線Oに沿って延びる有底筒状をなしている。より具体的には外筒1は、軸線Oを中心とする円筒状の外筒本体10と、この外筒本体10の軸線O方向一方側の端部を閉塞する第一蓋体11と、軸線O方向他方側の端部を閉塞する第二蓋体12と、を有している。
【0013】
(内筒の構成)
内筒2は、外筒1の内側に設けられ、軸線Oに沿って延びる円筒状をなしている。内筒2は外筒1と同軸上に設けられることが望ましい。軸線O方向における内筒2の寸法は、外筒1の寸法よりも小さく設定されている。詳細には、内筒2の軸線O方向一方側の端部は、外筒1の軸線O方向一方側の端部よりも他方側に位置している。また、内筒2の軸線O方向他方側の端部は、外筒1の軸線O方向他方側の端部よりも一方側に位置している。これにより、内筒2の軸線O方向両端部には、軸線Oに対する径方向に広がる開口部2aが形成されている。なお、開口部2aは内筒2の周方向全域にわたって形成されていてもよいし、周方向の一部の領域のみに形成されていてもよい。
【0014】
(ウィックの構成)
ウィック3は、外筒1と内筒2との間に設けられている。より詳細には、外筒1の内周面13、及び内筒2の外周面21との間にウィック3が充填されている。これら外筒1、内筒2、及びウィック3は、例えばAM造形法(Additive Modeling造形法)を含む3D積層造形によって互いに同一の材料で一体に形成されている。なお、ウィック3のみを押し出し成型によって形成することも可能である。
【0015】
図2、及び
図3に示すように、ウィック3は全体として三次元格子状をなしている。これにより、ウィック3の内部には、軸線O方向に直線状に延びる複数の微小貫通部31と、互いに隣接する微小貫通部31同士を径方向、及び周方向に連通させる連通部32と、が形成されている。微小貫通部31は、軸線O方向から見て当該軸線O方向に遮るものを伴わずに直線状に貫通する流路である。微小貫通部31は、周方向、及び径方向に隣接して複数形成されている。連通部32は、ウィック3が格子状であることによって必然的に形成される流路である。
【0016】
つまり、ウィック3の内部では作動流体(アルコールや水)が軸線O方向、径方向、及び周方向のいずれにも移動することが可能である。これら微小貫通部31、及び連通部32の格子長さは1000μm程度であることが望ましい。これにより、微小貫通部31、及び連通部32では、作動流体に対する毛細管現象が発現する。言い換えると、毛細管力が生じる限りにおいて、微小貫通部31、及び連通部32の寸法は適宜設定されてよい。
【0017】
(作用効果)
ヒートパイプ100を動作させるに当たっては、まずヒートパイプ100内に作動流体としての水やアルコールを充填する。その後、軸線O方向一方側の端部に熱源を近接させ、他方側の端部に低温熱源(又は冷却媒体)を近接させる。
【0018】
このとき、熱源とヒートパイプ100内部の作動流体との間で熱交換が生じる。この熱交換によってヒートパイプ100の熱源側(つまり、第一蓋体11側)で生じた気体(蒸気)は、内筒2の内側を通って放熱側(つまり、第二蓋体12側)に流れる。ここで、作動流体は放熱側に設けられた低温熱源との間で熱交換する。低温熱源と熱交換することで蒸気は凝縮し、液体の状態でウィック3の微小貫通部31を通じて再びヒートパイプ100内部を熱源側に移動する。このようなサイクルが連続的に生じることで、熱源側と低温熱源側との間で熱の輸送が行われる。
【0019】
ところで、上記の構成とは異なり、ウィック3をワイヤー編み込みによるメッシュ状の部材で形成した場合、作動流体の流れ方向(つまり、熱の輸送方向)から見て微小流路の断面積がワイヤーによって阻害されてしまう。具体的には、流路を横切る方向に編み込まれたワイヤーによって当該流路の断面積が減少してしまう。その結果、毛細管力による作動流体の移送力が限定的となり、ヒートパイプ100の熱交換性能に影響が及ぶ虞がある。
【0020】
そこで、本実施形態では上述したようなウィック3の構成を採っている。上記構成によれば、微小貫通部31が軸線O方向に直線状に延びている。つまり、微小貫通部31上では作動流体を軸線O方向から遮るものがない。したがって、当該軸線O方向における作動流体の流れをより円滑に生じさせることができる。その結果、ヒートパイプ100としての熱交換性能を向上させることができる。
【0021】
また、上記構成によれば、連通部32を通じて微小貫通部31同士の間で作動流体を径方向、及び周方向にも移動させることができる。これにより、軸線Oに直交する断面における作動流体の分布を均一化することができる。言い換えると、作動流体が一部の領域のみに偏ってしまうことがない。その結果、ウィック3の断面積全体にわたって作動流体の流量を確保することができる。これにより、ヒートパイプ100の熱交換性能をさらに向上させることが可能となる。
【0022】
さらに、上記構成によれば、微小貫通部31が径方向に複数配列されている。これにより、作動流体の流路断面積をさらに大きく確保することができる。よって、単位面積当たりの作動流体の流量が増大し、ヒートパイプ100の熱交換性能をさらに向上させることが可能となる。
【0023】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第一実施形態では、ウィック3の微小貫通部31が径方向に複数配列されている例について説明した。しかしながら、ヒートパイプ100が適用されるスペースの制約や寸法条件によっては、微小貫通部31を径方向に1つのみ(1層のみ)設けることも可能である。
【0024】
<第二実施形態>
続いて、本開示の第二実施形態に係るヒートパイプ100bについて、
図4と
図5を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図4又は
図5に示すように、本実施形態に係るヒートパイプ100bは、フィン4をさらに備えている。
【0025】
具体的には、フィン4は軸線O方向他方側における端部(つまり、上記第一実施形態の説明では低温熱源が位置する側の端部)に設けられている。フィン4は、外筒1から内筒2に向かって径方向に突出するとともに、周方向に間隔をあけて複数配列されている。また、フィン4が設けられる位置は、外筒本体10の肉厚が他の部分よりも小さく設定されることで薄肉部10aとされている。具体的には、当該位置では外筒本体10の内周面に径方向外側に向かって凹む環状の溝が形成されることで薄肉部10aとされている。フィン4はこの薄肉部10aの内周面に沿って配列されている。
【0026】
上記構成によれば、薄肉部10aが形成されていることによって作動流体と外部との間の熱抵抗を他の部分よりも小さくすることができる。さらに、フィン4によって作動流体との接触面積を大きく確保することができる。これにより、ヒートパイプ100bの熱交換性能をより一層向上させることが可能となる。また、薄肉部10aを形成したことによる強度低下をフィン4によって補うこともできる。したがって、ヒートパイプ100bを長期にわたってより安定的に運用することが可能となる。
【0027】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上述したフィン4の表面粗さを、外筒1の内周面の表面粗さよりも大きく設定することも可能である。つまり、フィン4の表面に微細な凹凸を形成する構成を採ることが可能である。この構成によれば、フィン4と作動流体との間の接触面積をさらに拡大することが可能となる。その結果、ヒートパイプ100bの熱交換性能をさらに向上させることができる。
【0028】
また、上記第二実施形態では、フィン4、及び薄肉部10aが軸線O方向他方側の端部のみに設けられる例について説明した。しかしながら、フィン4の態様はこれに限定されず、
図6に示すように、軸線O方向の一方側の端部(つまり、熱源が位置する側の端部)にも同様にフィン4、及び薄肉部10aを設けることが可能である。この構成によれば、ヒートパイプ100bの熱交換性能をより一層向上させることができる。
【0029】
さらに、上記第二実施形態では、フィン4が外筒1の内周側に設けられる例について説明した。しかしながら、フィン4を外筒1の外周面に沿って周方向に配列する構成を採ることも可能である。このような構成によっても上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
<第三実施形態>
次に、本開示の第三実施形態に係るヒートパイプ100cについて、
図7を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態に係るヒートパイプ100cは、親水部5と、疎水部6と、をさらに備えている。
【0031】
親水部5は、外筒1の内周面、及び内筒2の外周面における軸線O方向の一方側の端部を含む領域に設けられている。親水部5は、例えばシランカップリング材によって形成された薄膜状の層であり、他の部分よりも相対的に高い親水性を有する。
【0032】
疎水部6は、外筒1の内周面、及び内筒2の外周面における軸線O方向の他方側の端部を含む領域に設けられている。疎水部6は、シランカップリング材によって形成された薄膜状の層であり、他の部分よりも相対的に高い疎水性を有する。
【0033】
例えばヒートパイプ100cの軸線O方向一方側に熱源を設け、他方側に低温熱源を設けた場合を考える。上記構成によれば、作動流体が蒸発する軸線O方向一方側の端部を含む領域では、親水部5が設けられていることによって、外筒1、及び内筒2の表面における沸騰限界が緩和され、作動流体をさらに蒸発させやすくすることができる。また、作動流体が凝縮する軸線O方向他方側の端部を含む領域では、疎水部6が設けられていることによって、作動流体をさらに凝縮させやすくすることができる。これにより、ヒートパイプ100cの熱交換性能をさらに向上させることが可能となる。
【0034】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第三実施形態では、シランカップリング材によって親水部5、及び疎水部6を形成する例について説明した。しかしながら、親水部5、及び疎水部6の態様はこれに限定されず、外筒1、及び内筒2の表面に直接的に機械加工を施すことによって微細な凹凸を形成し、親水部5、及び疎水部6とすることも可能である。
【0035】
<第四実施形態>
続いて、本開示の第四実施形態に係るヒートパイプ100dについて、
図8と
図9を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図8及び
図9に示すように、本実施形態に係るヒートパイプ100dは、外筒1と、ウィック7と、を備えている。外筒1は、第一実施形態で説明したものと同様に、外筒本体10、第一蓋体11、及び第二蓋体12を有している。
【0036】
ウィック7は、第一実施実施形態で説明したものと同様に、三次元格子状をなしている。ウィック7の内周側には、軸線O方向に貫通する気体通過流路8aとしての空間が形成されている。ウィック7は外筒1に対してAM造形法等に基づいて同一の材料によって一体に形成されている。
【0037】
さらに、ウィック7は、気液通過部8と、液通過部9と、を有している。具体的には、気液通過部8は内周側に位置し、液通過部9は気液通過部8の外周側に位置している。気液通過部8、及び液通過部9は、ともに軸線Oを中心とする円筒状をなしている。気液通過部8では、径方向外側から内側に向かうに従って空隙率(つまり、三次元格子の大きさ)が次第に大きくなっている。一方で、液通過部9では、空隙率が一定とされている。また、液通過部9の空隙率は気液通過部8の空隙率よりも小さい(つまり、三次元格子が小さい)。また、詳しくは図示しないが、第一実施形態と同様に、ウィック7も三次元格子状であることから、これら気液通過部8、及び液通過部9を径方向と周方向に連通させる連通部を有している。
【0038】
ヒートパイプ100dの内部では、軸線Oに直交する断面内で、内周側に向かうほど気体が多く流通し、外周側に向かうほど液体が多く流通する。気体を流通させるためには流路断面積が大きい(空隙率が大きい)ほど好ましい。一方で、毛細管力によって液体を流通させるためには流路断面積が小さい(空隙率が小さい)ほど好ましい。上記構成によれば、気液通過部8と液通過部9とで空隙率を違えることで、気体と液体の分布に応じて流路断面積を最適化することが可能となる。これにより、ヒートパイプ100dの熱交換性能をさらに向上させることができる。
【0039】
以上、本開示の第四実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第四実施形態に係るヒートパイプ100dに、第三実施形態で説明した親水部5、及び疎水部6を適用することも可能である。具体的には、外筒1の内周面にこれら親水部5、及び疎水部6を設ける構成が考えられる。このような構成によっても上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
(その他の実施形態)
図10に示すように、上述したヒートパイプ100、100b、100c、100d、又はウィック3、7を、ダイキャスト用金型300の冷却に用いることが可能である。このダイキャスト用金型300は、金型本体200と、ウィック30と、蒸気流路40と、冷却部50と、を備えている。金型本体200の内部には溶融した金属材料等(ワーク90)が充填される。金型本体200の外周側には、当該金型本体200を囲むようにして複数のウィック30が間隔をあけて複数配列されている。また、これらウィック30同士の間の空間は蒸気流路40とされている。ウィック30と蒸気流路40は冷却部50に接している。つまり、この例では、ウィック30と蒸気流路40によって上述したヒートパイプ100、100b、100c、100dが形成されている。金型本体200は熱源に相当し、冷却部50は低温熱源に相当する。このような構成を採ることによって、金型本体200をより早くかつ安定的に冷却することが可能となる。
【0041】
<付記>
各実施形態に記載のヒートパイプ100は、例えば以下のように把握される。
【0042】
(1)第1の態様に係るヒートパイプ100は、軸線O方向に延びる外筒1と、該外筒1の内側で前記軸線O方向に延びるように設けられた内筒2と、前記外筒1と前記内筒2との間でこれら外筒1と内筒2とに一体に設けられており、前記軸線O方向に直線状に延びる微小貫通部31が複数形成されたウィック3と、を備える。
【0043】
上記構成によれば、微小貫通部31が軸線O方向に直線状に延びていることから、当該軸線O方向における作動流体の流れをより円滑に生じさせることができる。
【0044】
(2)第2の態様に係るヒートパイプ100では、前記ウィック3は、三次元格子状をなすことで、互いに隣接する前記微小貫通部31同士を連通させる連通部32を有する。
【0045】
上記構成によれば、連通部32を通じて微小貫通部31同士の間で作動流体を移動させることができる。これにより、軸線Oに直交する断面における作動流体の分布を均一化することができる。その結果、作動流体の流量を確保し、熱交換性能を向上させることが可能となる。
【0046】
(3)第3の態様に係るヒートパイプ100では、前記微小貫通部31は、前記外筒1と前記内筒2との間で前記軸線Oに対する径方向に複数設けられている。
【0047】
上記構成によれば、作動流体の流路断面積をさらに大きく確保することができる。これにより、熱交換性能をさらに向上させることが可能となる。
【0048】
(4)第4の態様に係るヒートパイプ100bでは、前記軸線O方向における前記外筒の少なくとも一方の端部を含む部分には、他の部分よりも肉厚が小さい薄肉部10aが形成され、該薄肉部10aには、前記軸線Oに対する径方向に突出するとともに周方向に間隔をあけて配列された複数のフィン4が設けられている。
【0049】
上記構成によれば、薄肉部10aが形成されていることによって作動流体と外部との間の熱抵抗が小さくなる。さらに、フィン4によって作動流体との接触面積を大きく確保することができる。これにより、熱交換性能をより一層向上させることが可能となる。また、薄肉部10aを形成したことによる強度低下をフィン4によって補うこともできる。
【0050】
(5)第5の態様に係るヒートパイプ100bでは、前記フィン4の表面粗さは、前記外筒1の内周面の表面粗さよりも大きく設定されている。
【0051】
上記構成によれば、フィン4と作動流体との間の接触面積をさらに拡大することが可能となる。
【0052】
(6)第6の態様に係るヒートパイプ100cは、前記外筒1の内周面、及び前記内筒2の外周面における前記軸線O方向の一方側の端部を含む領域に設けられ、他の部分よりも相対的に高い親水性を有する親水部5と、前記外筒1の内周面、及び前記内筒2の外周面における前記軸線O方向の他方側の端部を含む領域に設けられ、他の部分よりも相対的に高い疎水性を有する疎水部6と、をさらに有する。
【0053】
例えば軸線O方向一方側に熱源を設け、他方側に低温熱源を設けた場合を考える。上記構成によれば、作動流体が蒸発する軸線O方向一方側の端部を含む領域では、親水部5が設けられていることによって、作動流体をさらに蒸発させやすくすることができる。また、作動流体が凝縮する軸線O方向他方側の端部を含む領域では、疎水部6が設けられていることによって、作動流体をさらに凝縮させやすくすることができる。これにより、熱交換性能をさらに向上させることが可能となる。
【0054】
(7)第7の態様に係るヒートパイプ100dは、軸線O方向に延びる外筒1と、前記外筒1内で該外筒1の内周面に一体に設けられ、内周側に前記軸線Oに沿って貫通する気体通過流路8aを形成するウィック7と、を備え、前記ウィック7は、前記軸線Oの径方向外側から内側に向かうに従って空隙率が大きくなる気液通過部8を有する。
【0055】
ヒートパイプ100dの内部では、軸線Oに直交する断面内で、内周側に向かうほど気体が多く流通し、外周側に向かうほど液体が多く流通する。気体を流通させるためには流路断面積が大きい(空隙率が大きい)ほど好ましい。一方で、毛細管力によって液体を流通させるためには流路断面積が小さい(空隙率が小さい)ほど好ましい。上記構成によれば、気体と液体の分布に応じて流路断面積を最適化することが可能となる。これにより、熱交換性能をさらに向上させることができる。
【0056】
(8)第8の態様に係るヒートパイプ100dでは、前記ウィック7は、前記気液通過部8の外周側に設けられ、前記気液通過部8よりも低い空隙率を有する液通過部9をさらに有する。
【0057】
上記構成によれば、液通過部9が設けられていることによって、液体としての作動流体をさらに円滑に移動させることができる。
【0058】
(9)第9の態様に係るヒートパイプ100dでは、前記ウィック7は、三次元格子状をなすことで、互いに隣接する前記気液通過部8同士、及び互いに隣接する前記液通過部9同士を連通させる連通部を有する。
【0059】
上記構成によれば、連通部を通じて軸線Oに直交する断面内で作動流体を移動させることができる。これにより、当該断面における作動流体の分布を均一化することができる。その結果、作動流体の流量を確保し、熱交換性能を向上させることが可能となる。
【0060】
(10)第10の態様に係るヒートパイプ100dは、前記外筒1の内周面における前記軸線O方向の一方側の端部を含む領域に設けられ、他の部分よりも相対的に高い親水性を有する親水部5と、前記外筒1の内周面における前記軸線O方向の他方側の端部を含む領域に設けられ、他の部分よりも相対的に高い疎水性を有する疎水部6と、をさらに有する。
【0061】
例えば軸線O方向一方側に熱源を設け、他方側に低温熱源を設けた場合を考える。上記構成によれば、作動流体が蒸発する軸線O方向一方側の端部を含む領域では、親水部5が設けられていることによって、作動流体をさらに蒸発させやすくすることができる。また、作動流体が凝縮する軸線O方向他方側の端部を含む領域では、疎水部6が設けられていることによって、作動流体をさらに凝縮させやすくすることができる。これにより、熱交換性能をさらに向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
100,100b,100c,100d ヒートパイプ
1 外筒
2 内筒
2a 開口部
3 ウィック
4 フィン
5 親水部
6 疎水部
7 ウィック
8 気液通過部
8a 気体通過流路
9 液通過部
10 外筒本体
10a 薄肉部
11 第一蓋体
12 第二蓋体
13 内周面
21 外周面
30 ウィック
31 微小貫通部
32 連通部
40 蒸気流路
50 冷却部
200 金型本体
300 ダイキャスト用金型