(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135440
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】電界強度分布算出システム、電界強度分布算出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/391 20150101AFI20220908BHJP
【FI】
H04B17/391
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035238
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】青野 耕太
(57)【要約】
【課題】周波数に応じて電磁波を選択的に透過又は遮断する部材が用いられた空間における電界強度の分布を容易に推定することができる電界強度分布算出システム、電界強度分布算出方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】対象空間を構成する構造物に関する構造物情報、前記構造物の電磁特性情報、及び対象空間に設置された給電設備に関する給電設備情報に基づいて、前記対象空間に対応する仮想空間において推定される電界強度分布を算出する推定部と、前記推定部によって算出された算出結果を出力する出力部と、を備え、前記構造物には、前記構造物に入射された電磁波の周波数に応じて当該電磁波を選択的に遮断させる部材である電磁波遮断部材が含まれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間を構成する構造物に関する構造物情報であって、前記構造物の三次元形状を示す情報と前記対象空間における前記構造物の設置位置を示す情報とを含む構造物情報を取得する構造物情報取得部と、
前記構造物に入射された電磁波の特性を示す電磁特性情報を取得する電磁特性情報取得部と、
前記対象空間に設置する給電設備に関する給電設備情報であって、前記対象空間における前記給電設備の設置位置及び前記給電設備によって給電される電磁波の特性を示す情報を含む給電設備情報を取得する給電設備情報取得部と、
前記構造物情報、前記電磁特性情報、及び前記給電設備情報に基づいて、前記対象空間に対応する仮想空間において推定される電界強度分布を算出する推定部と、
前記推定部によって算出された算出結果を出力する出力部と、
を備え、
前記構造物には、前記構造物に入射された電磁波の周波数に応じて当該電磁波を選択的に遮断させる部材である電磁波遮断部材が含まれる、
電界強度分布算出システム。
【請求項2】
対象空間を構成する構造物に関する構造物情報であって、前記構造物の三次元形状を示す情報と前記対象空間における前記構造物の設置位置を示す情報とを含む構造物情報を取得する構造物情報取得部と、
前記構造物に入射された電磁波の特性を示す電磁特性情報を取得する電磁特性情報取得部と、
前記対象空間に設置する給電設備に関する給電設備情報であって、前記対象空間における前記給電設備の設置位置及び前記給電設備によって給電される電磁波の特性を示す情報を含む給電設備情報を取得する給電設備情報取得部と、
前記構造物情報、前記電磁特性情報、及び前記給電設備情報に基づいて、前記対象空間に対応する仮想空間において推定される電界強度分布を算出する推定部と、
前記推定部によって算出された算出結果に基づいて、前記対象空間における所定の領域における電界強度が閾値より大きいか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって判定された判定結果を出力する出力部と、
を備え、
前記構造物には、前記構造物に入射された電磁波の周波数に応じて当該電磁波を選択的に遮断させる部材である電磁波遮断部材が含まれる、
電界強度分布算出システム。
【請求項3】
前記電磁特性情報取得部は、前記構造物に入射された電磁波における周波数と反射強度との関係を示す周波数特性を、前記電磁特性情報として取得する、
請求項1又は請求項2に記載の電界強度分布算出システム。
【請求項4】
前記電磁特性情報取得部は、前記周波数特性を、前記構造物に入射された電磁波の水平成分及び垂直成分ごとに示す情報を、前記電磁特性情報として取得する、
請求項3に記載の電界強度分布算出システム。
【請求項5】
前記電磁特性情報取得部は、前記周波数特性を、前記構造物に入射された電磁波の入射角度ごとに示す情報を、前記電磁特性情報として取得する、
請求項3又は請求項4に記載の電界強度分布算出システム。
【請求項6】
前記推定部は、前回算出した電界強度分布に基づいて前記仮想空間に電界強度が閾値未満となる領域が存在すると判定された場合、前記仮想空間における前記構造物の設置位置を変化させ、当該変化が反映された前記構造物情報を用いて、前記仮想空間において推定される電界強度分布を算出する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電界強度分布算出システム。
【請求項7】
前記推定部は、前回算出した電界強度分布に基づいて前記仮想空間に電界強度が閾値未満となる領域が存在しないと判定された場合であって、前記仮想空間における前記構造物の設置が反映された前記対象空間において測定された電界強度分布の測定値に基づいて前記対象空間に電界強度が閾値未満となる領域が存在すると判定された場合、前記仮想空間における前記構造物の設置位置を変化させ、当該変化が反映された前記構造物情報を用いて、前記仮想空間において推定される電界強度分布を算出する、
請求項6に記載の電界強度分布算出システム。
【請求項8】
コンピュータが行う電界強度分布算出方法であって、
構造物情報取得部が、対象空間を構成する構造物に関する構造物情報であって、前記構造物の三次元形状を示す情報と前記対象空間における前記構造物の設置位置を示す情報とを含む構造物情報を取得し、
電磁特性情報取得部が、前記構造物に入射された電磁波の特性を示す電磁特性情報を取得し、
給電設備情報取得部が、前記対象空間に設置する給電設備に関する給電設備情報であって、前記対象空間における前記給電設備の設置位置及び前記給電設備によって給電される電磁波の特性を示す情報を含む給電設備情報を取得し、
推定部が、前記構造物情報、前記電磁特性情報、及び前記給電設備情報に基づいて、前記対象空間に対応する仮想空間において推定される電界強度分布を算出し、
出力部が、前記推定部によって算出された算出結果を出力し、
前記構造物には、前記構造物に入射された電磁波の周波数に応じて当該電磁波を選択的に遮断させる部材である電磁波遮断部材が含まれる、
電界強度分布算出方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電界強度分布算出システムとして動作させるためのプログラムであって、前記コンピュータを前記電界強度分布算出システムが備える各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界強度分布算出システム、電界強度分布算出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空間における電界強度を推定する技術がある。例えば、特許文献1には、空間に設けられている壁面、床、天井、窓、パーティションなどの構造物の3次元形状と、その構造物の材料の電気的特性(誘電率、透磁率、導電率など)を用いて伝搬推定を行うことが記載されている。また、特許文献1には、推定値と測定値との誤差が小さくなるように、構造物の材料の電気的特性を修正することが記載されている。
また、無線により電力を供給(給電)する無線給電技術がある。無線給電を提供するサービスにおいては、給電される電磁波が、周囲で同じ周波数を利用している他の電波サービスに影響を及ぼさないよう、例えば、FSS(Frequency Selective Surfaces)を含む部材にて無線給電を行う空間を囲み、無線給電装置から給電される電磁波が空間の外に漏れないようにする運用が考えられる。FSSは、周波数に応じて、電磁波を選択的に透過又は遮断する部材である。このような運用がなされることにより、無線給電装置から給電される電磁波と他の電波サービスにて用いられる電磁波とを干渉させないように運用することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、FSSなどの部材は特定の周波数をもつ電磁波を選択的に遮断又は通過させるような特性を有する。このため、FSSなどの特殊な部材にて囲まれた空間では、FSSに囲まれていない空間と比較して、空間における電界強度の分布がより複雑となる。特許文献1では、構造物にFSSなどの特殊な部材を用いることは想定されていない。このため、特許文献1に記載された技術を用いて、FSSなどの特殊な部材にて囲まれた空間における電界強度分布を推定しても、推定値と測定値の誤差が大きくなることが考えられ、所望の推定値が得られるまで電気的特性の修正が繰り返されることとなり、手間がかかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に基づいてなされたものであり、周波数に応じて電磁波を選択的に透過又は遮断する部材が用いられた空間における電界強度の分布を容易に推定することができる電界強度分布算出システム、電界強度分布算出方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電界強度分布算出システムは、対象空間を構成する構造物に関する構造物情報であって、前記構造物の三次元形状を示す情報と前記対象空間における前記構造物の設置位置を示す情報とを含む構造物情報を取得する構造物情報取得部と、前記構造物に入射された電磁波の特性を示す電磁特性情報を取得する電磁特性情報取得部と、前記対象空間に設置する給電設備に関する給電設備情報であって、前記対象空間における前記給電設備の設置位置及び前記給電設備によって給電される電磁波の特性を示す情報を含む給電設備情報を取得する給電設備情報取得部と、前記構造物情報、前記電磁特性情報、及び前記給電設備情報に基づいて、前記対象空間に対応する仮想空間において推定される電界強度分布を算出する推定部と、前記推定部によって算出された算出結果を出力する出力部と、を備え、前記構造物には、前記構造物に入射された電磁波の周波数に応じて当該電磁波を選択的に遮断させる部材である電磁波遮断部材が含まれる。
【0007】
本発明の電界強度分布算出方法は、コンピュータが行う電界強度分布算出方法であって、構造物情報取得部が、対象空間を構成する構造物に関する構造物情報であって、前記構造物の三次元形状を示す情報と前記対象空間における前記構造物の設置位置を示す情報とを含む構造物情報を取得し、電磁特性情報取得部が、前記構造物に入射された電磁波の特性を示す電磁特性情報を取得し、給電設備情報取得部が、前記対象空間に設置する給電設備に関する給電設備情報であって、前記対象空間における前記給電設備の設置位置及び前記給電設備によって給電される電磁波の特性を示す情報を含む給電設備情報を取得し、推定部が、前記構造物情報、前記電磁特性情報、及び前記給電設備情報に基づいて、前記対象空間に対応する仮想空間において推定される電界強度分布を算出し、出力部が、前記推定部によって算出された算出結果を出力し、前記構造物には、前記構造物に入射された電磁波の周波数に応じて当該電磁波を選択的に遮断させる部材である電磁波遮断部材が含まれる。
【0008】
本発明のプログラムはコンピュータを、上記に記載の電界強度分布算出システムとして動作させるためのプログラムであって、前記コンピュータを前記電界強度分布算出システムが備える各部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周波数に応じて電磁波を選択的に透過又は遮断する部材が用いられた空間における電界強度の分布を容易に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の電界強度分布算出装置10の構成の例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態の構造物情報120の構成の例を示す図である。
【
図3】実施形態の電磁特性情報121の構成の例を示す図である。
【
図4】実施形態の給電設備情報122の構成の例を示す図である。
【
図5】実施形態の位置情報123の構成の例を示す図である。
【
図6】FSSを含む構成物における電磁特性を説明する図である。
【
図7】FSSを含む構成物における電磁特性を説明する図である。
【
図8】FSSを含む構成物における電磁特性を説明する図である。
【
図9】FSSを含む構成物における電磁特性を説明する図である。
【
図10】実施形態の推定部133が行う処理を説明する図である。
【
図11】実施形態の推定部133が行う処理を説明する図である。
【
図12】実施形態の推定部133が行う処理を説明する図である。
【
図13】実施形態の推定部133が行う処理を説明する図である。
【
図14】実施形態の表示部14に表示される画像の例を示す図である。
【
図15】実施形態の表示部14に表示される画像の例を示す図である。
【
図16】実施形態の表示部14に表示される画像の例を示す図である。
【
図17】実施形態の電界強度分布算出装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図18】実施形態の変形例に係る表示部14に表示される画像の例を示す図である。
【
図19】実施形態の変形例に係る表示部14に表示される画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の電界強度分布算出装置10(電界強度分布算出システムの一例)を、図面を参照しながら説明する。以下の説明では、電磁波を透過させること、電磁波を反射させること、及び電磁波を吸収する態様を総称して、「電磁波を遮断する」と記載する。
【0012】
(実施形態)
まず、実施形態について説明する。電界強度分布算出装置10は、空間における電界強度の分布を算出するコンピュータ装置。ここでの空間とは、無線給電が行われる空間(対象空間)であって、FSS(Frequency Selective Surfaces)にて囲まれた空間である。FSSは、入射された電磁波を、周波数に応じて選択的に遮断する部材である。FSSは、「電磁波遮断部材」の一例である。FSSは、表面に特殊な加工がなされることによって、特定の周波数をもつ電磁波を遮断するように形成された部材である。例えば、FSSは、金属素材と非金属素材が連続して設置されるように表面を加工することにより形成される。例えば、無線給電が行われる空間は、FSSを含む部材にて形成された電磁波制御シートにて、天井や床、及び壁面を覆うことにより形成される。
【0013】
電界強度分布算出装置10は、無線給電が行われる空間を模した仮想空間における電磁波シミュレーションを行うことによって、仮想空間において推定される電界強度の分布を算出する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の電界強度分布算出装置10の構成の例を示すブロック図である。電界強度分布算出装置10は、例えば、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。電界強度分布算出装置10は、例えばPC(Personal Computer)、サーバ装置などのコンピュータ装置である。
【0015】
なお、
図1の例では、電界強度分布算出装置10に、記憶部12、及び制御部13が備える各機能部が実装される場合を例示しているが、これに限定されることはない。電界強度分布算出装置10が備える各機能部が、複数のコンピュータ装置に実装されていてもよい。この場合、実施形態は、複数のコンピュータ装置により構成されるシステム(電界強度分布算出システム)として実現される。
【0016】
通信部11は、例えば、汎用の通信用IC(Integrated Circuit)などによって実現される、外部の装置と通信を行う機能部である。通信部11は、例えば、電界強度の分布を算出するために用いられる情報(例えば、後述する構造物情報120など)を外部の装置から受信する。通信部11は、受信した情報を、例えば制御部13を介して記憶部12に記憶させる。
【0017】
記憶部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)、或いはこれらの組合せによって実現される。記憶部12は、電界強度分布算出装置10の各構成要素を実現するためのプログラム、プログラムを実行する際に用いられる変数、及び各種の情報を記憶する。
【0018】
記憶部12は、例えば、構造物情報120と、電磁特性情報121と、給電設備情報122と、位置情報123とを記憶する。
【0019】
構造物情報120は、無線給電が行われる空間を構成する構造物、例えば、壁面、床、天井、窓、パーティションなどの建造物の形状を示す情報、及び空間における設置位置を示す情報である。構造物情報120は、例えば、仮想空間における構造物を三次元点群にて示す三次元モデル情報である(
図2参照)。
【0020】
三次元モデル情報は、例えば、無線給電が行われる空間の設計図面から生成された情報である。或いは、三次元モデル情報は、距離を測定する測定装置を用いて、空間を実際に測定(実測)することによって生成された情報であってもよい。ここで想定する測定装置としては、例えば、メジャー、レーザー測距計などが適用可能である。また、LiDER(light detection and ranging)のような三次元カメラ、ステレオカメラのような奥行も計測できるデプスカメラにより得られる情報を用いて、三次元モデル情報が生成されてもよい。また、三次元モデル情報は、単眼カメラを用いて、空間における複数の撮像位置からそれぞれ撮像された複数の画像を合成することによって得られるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)のような技術を用いて生成された情報であってもよい。
【0021】
電磁特性情報121は、構造物に入射された電磁波の特性を示す情報である。電磁特性情報121は、例えば、構造物における反射係数、透過係数、及び回析係数が、入射する電磁波の周波数ごとに示された情報である(
図3参照)。
【0022】
すでに説明した通り、本実施形態においては、無線給電が行われる空間が電磁波制御シートにて囲まれている。このため、電磁特性情報121には、例えば、壁面が電磁波制御シートに覆われている場合、その電磁波制御シートに覆われた壁面における反射係数等が示される。電磁波制御シートに覆われた壁面など、特殊な電磁特性をもつ構造物については、例えば、FDTD法(Finite-difference time-domain method)などの各種シミュレーションを用いて、その特殊な電磁特性を周波数ごとに推定し、推定した電磁特性を電磁特性情報121とする。或いは、電磁波制御シートに覆われた壁面に電磁波を入射させ、その壁面に反射した電磁波の強度、透過した電磁波の強度などを実際に測定(実測)することによって、電磁特性情報121を生成してもよい。
【0023】
給電設備情報122は、無線給電が行われる空間に設置される給電設備に関する情報である。給電設備情報122は、空間における給電設備の設置位置(給電位置)、及びその給電設備によって給電される電磁波の特性を含む情報である。給電設備によって給電される電磁波の特性とは、例えば、給電される電磁波の電力(給電電力)、指向性などを示す情報である。給電設備情報122は、例えば、給電方法や、給電モードに応じて作成される(
図4参照)。
【0024】
位置情報123は、無線給電が行われる空間における位置を示す情報である。位置情報123は、例えば、空間においてユーザが持ち込んだ受電機に充電が行われることが想定される充電エリアの位置を示す情報である。位置情報123には、例えば、充電エリアの設置位置、その充電エリアにおいて許容される電磁波強度(許容電磁波強度)の下限閾値、及び上限閾値を示す情報が含まれる(
図5参照)。
【0025】
制御部13は、電界強度分布算出装置10が備えるハードウェアとしてのCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のProcessing Unit(プロセッシングユニット)が記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、機能が実現される。
【0026】
制御部13は、例えば、構造物情報取得部130と、電磁特性情報取得部131と、給電設備情報取得部132と、推定部133と、判定部134と、装置制御部135とを備える。
【0027】
構造物情報取得部130は、記憶部12を参照して構造物情報120を取得し、取得した情報を推定部133に出力する。電磁特性情報取得部131は、記憶部12を参照して電磁特性情報121を取得し、取得した情報を推定部133に出力する。推定部133は、記憶部12を参照し、参照した情報を推定部133に出力する。
【0028】
推定部133は、構造物情報120、電磁特性情報121、及び給電設備情報122に基づいて、仮想空間において推定される電界強度の分布を算出する。推定部133は、例えば、レイトレーシング法(Raytracing method)や、FDTD法などの電磁界解析の方法を用いて、電界強度の分布を算出する。推定部133が算出する電界強度の分布は、例えば、空間における任意の位置座標に、その位置における電界強度が対応付けられた情報である。推定部133は、電界強度の分布を示す情報を、表示部14に出力し、電界強度の分布を示す画像を14に表示させる。
【0029】
推定部133は、算出した電界強度の分布が所定の試行条件を充足する場合、仮想空間における構造物の設置位置を変更し、変更後の仮想空間おいて推定される電界強度の分布を、再度、算出する。ここでの試行条件は、算出された電界強度の分布では、無線給電を行う空間として不十分であると判定される条件である。試行条件は、無線給電を行う空間に応じて任意に設定されてよいが、例えば、無線給電を行う空間、或いは、無線給電を行う空間における特定の充電エリア(以下、空間等という)において、後述するヌルポイントが存在するという条件である。空間等においてヌルポイントが存在するか否かは、判定部134によって判定される。
【0030】
推定部133は、例えば、判定部134によって今回算出した電界強度の分布において空間等にヌルポイントが存在すると判定された場合、その旨を示す情報を表示部14に出力し、電界強度の分布と共に、空間等にヌルポイントが存在する旨を示すメッセージを示す画像を表示部14に表示させるようにしてもよい。この場合、例えば、表示部14の画像を視認するユーザ等によってマウスやキーボードによる操作入力が行われることによって、仮想空間における構造物の設置位置をどのように変更するかを示す情報が、入力部15に入力される。推定部133は、入力部15に入力された情報に基づいて、仮想空間における構造物の設置位置を変更し、変更後の構造物情報120を生成する。推定部133は、変更後の構造物情報120を用いて、変更後の仮想空間において推定される電界強度の分布を算出する。
【0031】
判定部134は、推定部133により算出された電界強度の分布に基づいて、空間においてヌルポイントが存在するか否かを判定する。ここでのヌルポイントとは、電界強度が所定の下限閾値を下回る(下限閾値未満となる)領域、或いは下限閾値以下となる領域である。判定部134は、例えば、空間における位置座標ごとに、その位置における電界強度が下限閾値を下回るか否かを判定する。判定部134は、電界強度が下限閾値を下回る位置をヌルポイントとする。判定部134は、空間において電界強度が下限閾値を下回る位置が存在する場合、ヌルポイントが存在すると判定する。
【0032】
判定部134は、空間における特定のエリア(例えば、充電エリア)においてヌルポイントが存在するか否かを判定するようにしてもよい。この場合、判定部134は、例えば、空間における特定のエリアの位置座標ごとに、その位置における電界強度が下限閾値を下回るか否かを判定する。判定部134は、電界強度が下限閾値を下回る位置をヌルポイントとする。判定部134は、空間における特定のエリアにおいて電界強度が下限閾値を下回る位置が存在する場合、ヌルポイントが存在すると判定する。
【0033】
装置制御部135は、電界強度分布算出装置10を統合的に制御する。例えば、装置制御部135は、通信部11によって受信された情報や、入力部15に入力された情報を、記憶部12に記憶させたり、推定部133などに出力したりする。
【0034】
表示部14は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置を含み、制御部13にしたがった画像を表示装置に表示する。表示部14は、例えば、推定部133により算出された電界強度の分布を示す画像などを表示する。
【0035】
入力部15は、例えば、マウスやキーボードなどの入力装置を含み、入力装置に入力された情報を取得し、取得した情報を制御部13に出力する。
【0036】
図2は、実施形態の構造物情報120の構成の例を示す図である。構造物情報120は、例えば、無線給電を行う空間ごとに生成される。構造物情報120は、例えば、構造物ID、三次元モデル情報などの項目を備える。構造物IDは、空間に設置される構造物を一意に特定する情報である。三次元モデル情報は、構造物IDにて特定される構造物の三次元モデルを示す情報である。なお、この図の例では、構造物情報120が、構造物ごとの三次元モデル情報を示す情報である場合を例示したが、これに限定されることはない。構造物情報120は、少なくとも、構造物の形状、及び空間における構造物の設置位置を示す情報が含まれていればよい。
【0037】
図3は、実施形態の電磁特性情報121の構成の例を示す図である。電磁特性情報121は、例えば、無線給電を行う空間ごとに生成される。電磁特性情報121は、例えば、構造物ID、反射係数、透過係数、回析係数、適用周波数などの項目を備える。構造物IDは、空間に設置される構造物を一意に特定する情報であり、構造物情報120に示された構造物IDに相当する。反射係数は、例えば、構造物に入射された電磁波の強度に対する、その構造物に反射する電磁波の強度の比を示す情報である。透過係数は、例えば、構造物に入射された電磁波の強度に対する、その構造物を透過する電磁波の強度の比を示す情報である。回析係数は、構造物に入射された電磁波の強度に対する、その構造物によって回析する電磁波の強度の比を示す情報である。適用周波数は、構造物IDにて特定される構造物に示された反射係数等が適用される電磁波の周波数(或いは周波数帯域)を示す情報である。構造物に入射される電磁波の周波数によって反射係数等が異なる値となる場合、電磁特性情報121には、電磁波の周波数(或いは周波数帯域)ごとに、その構造物における反射係数等が示される。なお、電磁特性情報121の構成は、上記に限定されない。例えば、電磁界解析の方法や、構造物の特性(適用周波数に対する構造物の大きさや、適用周波数における構造物の電磁的振る舞いなど)によって、電磁特性情報121の項目が増減する場合や、必ずしも全ての項目が埋まらない場合もある。現象の影響が少なく、殆ど無視できる場合などは計算負荷軽減のために、電磁特性情報121に記憶された情報から、電界強度の分布を算出する際に用いる情報を調整する場合もある。
【0038】
図4は、実施形態の給電設備情報122の構成の例を示す図である。給電設備情報122は、例えば、無線給電を行う空間ごとに生成される。給電設備情報122は、例えば、設備ID、給電位置、給電モード1、給電モード2などの項目を備える。設備IDは、空間に設置される給電設備を一意に特定する情報である。給電位置は、空間において給電設備が設置される位置を示す情報である。給電位置は、例えば、給電設備における給電アンテナが設置される位置である。給電モード1、給電モード2などは、無線給電を行う態様を特定する情報であり、例えば、高速充電を行うモードなどを示す情報である。給電モード1、給電モード2には、例えば、給電電力、給電アンテナなどの項目を備える。給電モード1、給電モード2に備えられた項目は、給電設備から給電(放射)される電磁波の特性を示す情報である。給電電力は、給電設備から給電(放射)電磁波の強度を電力にて示す情報である。給電アンテナは、給電設備から電磁波が放射される場合に用いられるアンテナを示す情報である。
【0039】
図5は、実施形態の位置情報123の構成の例を示す図である。位置情報123は、例えば、無線給電を行う空間ごとに生成される。位置情報123は、例えば、エリアID、位置情報、許容電磁波強度などを示す情報である。エリアIDは、空間における特定エリアを一意に特定する情報である。特定エリアは、空間において、特に、ヌルポイントの有無を判定する領域であり、例えば、充電エリアである。設置位置は、エリアIDにて特定される領域が設置されている位置を示す情報である。許容電磁波強度は、エリアIDにて特定される領域において許容される電磁波の強度を示す情報である。許容電磁波強度として、例えば、下限閾値と上限閾値とが示される。この閾値は、充電エリアで使用される充電対象の特性に基づいて設定される。例えば、充電エリアにおける電磁波強度が下限閾値を下回ると、その充電エリアにある充電対象には充電されない。また、充電対象が、その充電対象の定格を超えた電磁界強度に晒されると破損の恐れがある。このため、充電エリアにおける電磁波強度が充電対象の定格を超えないように上限閾値を設定しても良い。
【0040】
ここで、無線給電において給電に用いられる電磁波について説明する。一般に、無線電力伝送において、給電設備から放射された電磁波を、効率よく受電機が受電(受信)するには、電磁波における偏波特性にも気を遣う必要がある。例えば、給電設備に設けられているアンテナが直線偏波を放射できるダイポールアンテナであり、これが水平方向に設置されていた場合、給電設備から放射される電磁波(無線電力)は、水平偏波となって空間に放射される。受電機側では、少なくとも、この給電設備のアンテナから放射される直線偏波を受電可能なアンテナを備得る必要がある。さらに、受電機側において効率よく受電するためには、受電機側のアンテナが、水平偏波の振動方向と同じ方向、つまり水平方向に設置されることが求められる。これにより、受電機側において、給電設備から放射された水平偏波を効率よく受電することができる。
【0041】
しかし、給電設備では、様々な方向に電力を放射することを想定して設計されている場合が多いため、例えば、受電機には、ダブルダイポールアンテナや、パッチアンテナなど、どのような向きでも受電できるようなアンテナを備えていることが多い。また、給電設備から放射される電磁波は、直線偏波である場合のみならず、位相がずれた円偏波である場合もあり、円偏波である場合には位相のずれの状況によって、右旋回円偏波となる場合もあるし、左旋回円偏波となる場合もあり得る。
【0042】
このように、給電設備から放射される電磁波における偏波の状況は様々である。このため、電磁波の水平成分及び垂直成分など、振動方向の成分ごとの電磁特性を用いることによって、電界強度の分布を、効率よく給電することが可能かという視点にて検討することが可能となる。
【0043】
ここで、
図6~
図9を用いて、FSS、或いはFSSにて覆われた構造物における電磁特性について説明する。
図6~
図9は、FSSを含む構成物における電磁特性を説明する図である。
図6~
図9の横軸は周波数、縦軸は反射強度を示す。
【0044】
図6、
図7は、FSSに対して、正対する方向(垂直方向)から入射した電磁波(平面波)の反射強度を周波数ごとに示す周波数特性である。
図6には、FSSに入射した電磁波の水平成分(
図6では「TE波」と記載する)における反射強度が示されている。
図7には、FSSに入射した電磁波の垂直成分(
図7では「TM波」と記載する)における反射強度が示されている。
【0045】
図8、
図9は、FSSに対して、正対する方向(垂直方向)となす角度が30度である方向から入射した電磁波(平面波)の反射強度を周波数ごとに示す周波数特性である。
図8には、FSSに入射した電磁波の水平成分(
図8では「TE波」と記載する)における反射強度が示されている。
図9には、FSSに入射した電磁波の垂直成分(
図9では「TM波」と記載する)における反射強度が示されている。
【0046】
図6、
図7に示すように、垂直方向から入射した電磁波においては、反射強度が最も大きくなるピーク周波数における反射強度は、水平成分及び垂直成分共にほぼ同じ強度となることが判る。一方、
図8、
図9に示すように、垂直方向となす角度が30度である方向から入射した電磁波においては、ピーク周波数における反射強度は、水平成分と垂直成分とで異なる強度となることが判る。これは、FSSにおいては、電磁波が入射する角度によって、電磁波の水平成分と垂直成分との強度が異なる強度となり、電磁波の振動方向の分布が一様でない偏波となるという特異な反射状況を示している。
【0047】
このように、FSSの設計如何によっては、受電機が効率的に電力を受電するために重要な要素の一つである偏波成分が変化する。FSSによって電磁波の偏波成分が変化した場合、結果として、受電機が十分な電力を充電することができなくなる(ヌルポイントが発生する)可能性がある。したがって、FSSの電磁的な振る舞い(電磁特性)は、一般的な金属平面と比較して複雑となる。すなわち、FSSの電磁特性が十分に考慮されない状態で無線電力伝送環境を推定しても、正確な電界強度分布を推定することが困難となる。或いは、実際に構造物が設置された実空間にて電界強度の分布を測定した場合にヌルポイントが発生する原因が分からず、ヌルポイントの解消に要する時間や工数の増大が懸念される。この対策として、本実施形態では、FSSの電磁特性を考慮したシミュレーションを行い、無線給電を行う空間における電磁波強度の分布を推定する。これにより、空間の環境を構築するための時間や工数の増大を抑制して省力化に寄与することが可能となる。
【0048】
具体的に、本実施形態では、FSSに電磁波が入射する角度に応じて反射特性が異なるという特性を鑑み、偏波の状況を考慮した電界強度の分布を算出する。より具体的に、本実施形態では、構造物に入射される電磁波の水平成分及び垂直成分によって反射係数等が異なる場合には、電磁特性情報121には、電磁波の水平成分及び垂直成分ごとに、その構造物における反射係数等が示されるようにする。
【0049】
また、構造物に入射される電磁波の入射角度によって反射係数等が異なる値となる場合には、電磁特性情報121には、入射角度ごとに、その構造物における反射係数等が示されるようにする。これにより、偏波の状況を考慮した電界強度の分布を算出することが可能となる。
【0050】
ここで、
図10~
図13を用いて、実施形態の推定部133が行う処理を説明する。図である。
図10~
図13は、実施形態の推定部133が行う処理を説明する図である。
【0051】
図10には、空間TKにおいて、給電設備KSから電磁波DHが放射された状態が模式的に示されている。また、空間TKには、構造物KBが設置されている。
図10では、給電設備KSから放射された電磁波DHが、直接、構造物KBに入射される様子が示されているが、電磁波DHが空間TKの壁面等において反射する反射波の様子は示されていない。
図10の例に示すように、空間TKにおいて、給電設備KSと構造物KBとの間に、電磁波DHを遮断する障害物等がない場合には、給電設備KSから、直接、電磁波DHが構造物KBに入射される。
【0052】
図11には、給電設備KSから、直接、充電エリアJEに入射される電磁波DH1の様子が模式的に示されている。
図12には、
図11における電磁波DH1と、電磁波DH2とが、充電エリアJEに入射される様子が模式的に示されている。電磁波DH2は、給電設備KSから、一旦、構造物KBに入射された電磁波DHが、構造物KBやその近傍に設けられた壁面に反射した後に、充電エリアJEの入射される電磁波である。
【0053】
図11、及び
図12に示すように、ある領域(充電エリアJE)に、複数の伝搬経路のそれぞれから、複数の電磁波が到来する場合がある。この場合、複数の電磁波の伝搬経路が異なることから、当該領域に入射された複数の電磁波の位相が互いに異なっている場合がある。例えば、当該領域に入射された二つの電磁波の位相差が180°である場合には、その二つの電磁波が干渉し、当該領域における電界強度が低下する。その結果、当該領域がヌルポイントとなる。
【0054】
本実施形態では、空間においてヌルポイントが存在する場合、構造物の設置位置を変更する。ここで設置位置を変更する構造物は、例えば、ヌルポイントに、間接的に入射される電磁波の伝搬経路に存在する構造物である。例えば、
図12の例では、充電エリアJEに、間接的に入射される電磁波DH2の伝搬経路に存在する構造物KBの設置位置を変更する。
【0055】
図13には、構造物の設置位置を変化させた場合における変化後の電磁波の伝搬経路の例が模式的に示されている。
図13の例では、構造物KBの設置位置を矢印CDの方向に変更した構造物KB#が示されている。構造物KB#に入射された電磁波は、近傍の壁面に反射して天井に入射する電磁波DH2#となり、充電エリアJEには入射されない電磁波となった。この結果、充電エリアJEに入射される電磁波は、給電設備KSから直接入射される電磁波DH1のみとなり、電磁波が干渉することなく、当該領域における電界強度が低下することがない。その結果、ヌルポイントが解消される。
【0056】
ここで、
図14~
図16を用いて、表示部14に表示される画像(電界強度の分布或いはヌルポイントの有無を示す画像)の例を説明する。
図14~
図16は、実施形態の表示部14に表示される画像の例を示す図である。
【0057】
図14に示すように、表示部14には、例えば、給電設備KSから放射された電磁波の伝搬経路が模式的に示される。この場合、推定部133は、例えば、給電設備KSから放射された電磁波についてその伝搬経路を推定し、推定結果を示す情報を、表示部14に出力する。
【0058】
或いは、
図15に示すように、表示部14には、例えば、空間TKにおける電界強度の分布が、所謂ヒートマップとして、強度ごとに色やパターン別に表示されるようにしてもよい。この場合、推定部133は、例えば、空間TKにおける位置座標ごとの電界強度を推定し、推定結果を示す情報を、表示部14に出力する。
【0059】
ユーザは、
図15に示す画像を視認し、例えば、充電エリアJEにおける電界強度が小さく、ヌルポイントが発生していることを認識する。そして、ユーザは、例えば、
図14に示す画像を視認し、充電エリアJEに入射される間接波の伝搬経路を確認し、伝搬経路に存在する構造物KBを抽出し、抽出した構造物KBの設置位置を変更することを検討する。構造物KBの設置位置を変更することによって充電エリアJEにおける電界強度を変化させヌルポイントを解消させることができるか検討する。ユーザは、例えば、電界強度分布算出装置10の入力部15を介して、構造物KBの設置位置を変更し、変更後における空間TKの電界強度分布を算出するように指示する。
【0060】
或いは、
図16に示すように、表示部14には、例えば、空間TKにおける充電エリアJEを表示し、充電エリアJEにヌルポイントが発生しているか否かを表示するようにしてもよい。この場合、推定部133は、例えば、空間TKにおける所定の領域(ここでは、充電エリアJE)について位置座標ごとに電界強度が閾値を下回っているか否かを推定し、電界強度が閾値を下回っている場合にはその位置座標を示す情報を、表示部14に出力する。
【0061】
ここで、電界強度分布算出装置10が行う処理の流れを、
図17を用いて説明する。
図17は、実施形態の電界強度分布算出装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0062】
電界強度分布算出装置10は、電界強度の分布を算出する対象とする空間(対象空間)における構造物情報120、電磁特性情報121、及び給電設備情報122を取得する(ステップS1~S3)。電界強度分布算出装置10は、取得した構造物情報120、電磁特性情報121、及び給電設備情報122を用いて、対象空間に対応する仮想空間について、電界強度の分布を推定する(ステップS4)。電界強度分布算出装置10は、推定結果を、表示部14に表示する(ステップS5)。電界強度分布算出装置10は、仮想空間にヌルポイントが存在するか否かを判定する(ステップS6)。電界強度分布算出装置10は、仮想空間において電界強度が閾値を下回る領域が存在する場合に、ヌルポイントが存在すると判定する。
【0063】
電界強度分布算出装置10は、仮想空間にヌルポイントが存在すると判定した場合、仮想空間に設置された構造物の設置位置を変更した後の構造物情報120を取得する(ステップS7)。仮想空間に設置された何れの構造物を、何れの方向に、その設置位置を変更するかは、例えば、ユーザ等の操作入力によって指定されたり、自動で変更したり調整したりする。例えば、電界強度分布算出装置10は、構造物の設置位置を変更する場合における変更の方向や変更量を、例えば、x方向に10mmずつ最大150mmまで等と、変予め設定しておく。例えば、電界強度分布算出装置10は、仮想空間におけるヌルポイントが存在する場合、予め設定された方向や変更量に応じて、構造物の設置位置を変更する。或いは、電界強度分布算出装置10は、ヌルポイントと判定された電磁界強度の度合いによって、変更する方向や変更量を自動で調整する。例えば、電界強度分布算出装置10は、ヌルポイントにおける電界強度が下限閾値を大幅に下回っている場合、予め設定された値より変更量を大きくする。一方、電界強度分布算出装置10は、ヌルポイントにおける電界強度が下限閾値を大幅に下回っていない場合、予め設定された値と同じ変更量とする。電界強度分布算出装置10は、何れの構造物を、何れの方向に、設置位置を変更するかを示す情報を取得し、取得した変更の内容を反映した構造物情報120を生成する。電界強度分布算出装置10は、ステップS4に戻り、構造物の設置位置を変更した後における電界強度の分布を推定する。
【0064】
一方、電界強度分布算出装置10は、仮想空間にヌルポイントが存在しないと判定した場合、仮想空間と同様に構造物が設置された実空間において測定された電界強度の分布を取得する(ステップS8)。電界強度分布算出装置10は、実空間においてヌルポイントが存在するか否かを判定する(ステップS9)。電界強度が閾値を下回る領域が存在する場合に、ヌルポイントが存在すると判定する。
【0065】
電界強度分布算出装置10は、実空間にヌルポイントが存在しないと判定した場合、処理を終了させる。一方、電界強度分布算出装置10は、実空間にヌルポイントが存在しないと判定した場合、ステップS7に戻り、構造物の設置位置を変更する。
【0066】
以上、説明した通り、実施形態の電界強度分布算出装置10(電界強度分布算出システムの一例)は、構造物情報取得部130と、電磁特性情報取得部131と、給電設備情報取得部132と、推定部133と、表示部14(出力部の一例)を備える。構造物情報取得部130は、構造物情報120を取得する。構造物情報120は、対象空間を構成する構造物に関する構造物情報であって、構造物の三次元形状を示す情報と前記対象空間における前記構造物の設置位置を示す情報とを含む情報である。電磁特性情報取得部131は、電磁特性情報121を取得する。電磁特性情報121は、構造物に入射された電磁波の特性を示す情報である。給電設備情報取得部132は、給電設備情報122を取得する。給電設備情報122は、対象空間に設置する給電設備に関する給電設備情報であって、対象空間における給電設備の設置位置及び給電設備によって給電される電磁波の特性を示す情報を含む情報である。推定部133は、構造物情報120、電磁特性情報121、給電設備情報122を用いて、対象空間に対応する仮想空間において推定される電界強度分布を算出する。表示部14は、推定部133によって算出された算出結果を表示する。構造物には、FSSが含まれる。FSSは、構造物に入射された電磁波の周波数に応じて当該電磁波を選択的に遮断させる部材(電磁波遮断部材)である。
【0067】
これにより、実施形態の電界強度分布算出装置10では、構造物に含まれるFSSの電磁特性を用いて、電界強度の分布を算出することができる。このため、FSS(周波数に応じて電磁波を選択的に遮断する部材)が用いられた空間における電界強度の分布を容易に推定することができる。
【0068】
また、実施形態の電界強度分布算出装置10は、構造物情報取得部130と、電磁特性情報取得部131と、給電設備情報取得部132と、推定部133と、判定部134と、表示部14を備える。判定部134は、推定部133によって算出された算出結果に基づいて、充電エリア(対象空間における所定の領域)における電界強度が閾値より大きいか否かを判定する。表示部14は、判定部134によって判定された判定結果を表示する。
【0069】
これにより、実施形態の電界強度分布算出装置10では、構造物に含まれるFSSの電磁特性を用いて、空間にヌルポイントが存在するか否かを判定することができる。このため、FSSを含む構造物が設置された空間であってもヌルポイントの有無を容易に推定することができる。
【0070】
また、実施形態の電界強度分布算出装置10は、構造物情報取得部130と、電磁特性情報取得部131と、給電設備情報取得部132と、推定部133と、判定部134と、表示部14を備える。判定部134は、推定部133によって算出された算出結果に基づいて、充電エリア(対象空間における所定の領域)における電界強度が閾値より大きいか否かを判定する。表示部14は、判定部134によって判定された判定結果を表示する。
【0071】
また、実施形態の電界強度分布算出装置10では、構造物情報120には、構造物に入射された電磁波における周波数と反射強度との関係を示す周波数特性が含まれてよい。また、構造物情報120には、構造物に入射された電磁波の水平成分及び垂直成分ごとに示す情報が含まれてよい。また、構造物情報120には、構造物に入射された電磁波の入射角度ごとに示す情報が含まれてよい。これにより、実施形態の電界強度分布算出装置10では、電磁波の周波数に応じた電界強度分布を算出することができ、FSSが周波数に応じて選択的に電磁波を遮断する場合であっても、精度よく、電界強度の分布或いはヌルポイントの有無を推定することができる。また、FSSが電磁波の水平成分と垂直成分とで異なる反射特性を有する場合であっても、精度よく、電界強度の分布或いはヌルポイントの有無を推定することができる。また、FSSが電磁波の入射角度に応じて異なる反射特性を有する場合であっても、精度よく、電界強度の分布或いはヌルポイントの有無を推定することができる。
【0072】
(実施形態の変形例)
ここで、実施形態の変形例について説明する。本変形例では、表示部14が、空間の断面における電界強度の分布を表示する点において、上述した実施形態と相違する。
【0073】
図18、
図19は、実施形態の変形例に係る表示部14に表示される画像の例を示す図である。
図18には、
図15と同様の、空間TKにおける電界強度の分布がヒートマップにて示され、さらに、給電設備KSのやや手前に、垂直方向に沿った断面DMが示されている。
図19には、
図18に示された断面DMにおける電界強度の分布がヒートマップにて示されている。このように、断面DMにおける電界強度の分布が示されてもよい。電界強度の分布を断面にて示すことによって、給電設備KSからの距離に応じて、電界強度が減少する傾向が判る。また、テーブルや椅子などの構造物に遮られる領域において電界強度が減少する傾向が判る。
【0074】
なお、上述した実施形態では、判定部134がヌルポイントの有無を判定する場合を例示して説明したが、これに限定されることはない。例えば、判定部134は、強電ポイントが存在するか否かを判定するようにしてもよい。ここでの強電ポイントとは、電界強度が所定の上限閾値を上回る領域、或いは上限閾値以上となる領域である。判定部134は、例えば、推定部133により算出された電界強度の分布に基づいて、空間における位置座標ごとに、その位置における電界強度が上限閾値を上回るか否かを判定する。判定部134は、電界強度が上限閾値を上回る位置を強電ポイントとする。判定部134は、空間において電界強度が上限閾値を上回る位置が存在する場合、強電ポイントが存在すると判定する。
【0075】
上述した実施形態における電界強度分布算出装置10の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0076】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10…電界強度分布算出装置(電界強度分布算出システム)
130…構造物情報取得部
131…電磁特性情報取得部
132…給電設備情報取得部
133…推定部
134…判定部