(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135452
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】霧化溶剤噴霧装置
(51)【国際特許分類】
B05B 17/06 20060101AFI20220908BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B05B17/06
A61L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035254
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】312001029
【氏名又は名称】フィトンチッドジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 達也
【テーマコード(参考)】
4C180
4D074
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CB01
4C180EC01
4C180GG08
4C180HH05
4C180HH13
4D074AA05
4D074BB06
4D074DD02
4D074DD12
4D074DD17
4D074DD34
4D074DD55
(57)【要約】
【課題】従来の1μm以下の超極微粒子の溶剤を噴霧する装置では、極超微粒子を噴霧するだけに使用を確認することが困難な点を改善する。
【解決手段】本発明の霧化溶剤噴霧装置1は、霧化した溶剤が充満する溶剤霧化槽2B内部を覗く窓部2Dと、霧化した溶剤のうち粒径の大きい霧化溶剤の上昇を抑制し、かつ粒径の小さい霧化溶剤を該噴霧口へ導くための霧化溶剤分別部材7と、超音波振動子(発振部5)を囲うように設けて均質な霧化状態とするための整霧部材6とを備えている。
【効果】窓部を設けているから溶剤霧化槽の内部を覗いて稼働状態であるか否かを目視把握することができる。整霧部材を設けていることで霧化溶剤を均質な状態とすることができ、また、霧化溶剤分別部材を設けていることで均質な霧化溶剤の上昇を一定の高さで抑制して、霧化溶剤の上面を雲海のように演出することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部下方に貯留された溶剤を超音波振動子で霧化し、この霧化状態の溶剤を粒径の大小で分別し、粒径の小さいものは噴霧し、粒径の大きいものは貯留側に戻す霧化溶剤無噴霧装置において、前記超音波振動子が底部に設けられて該超音波振動子により霧化した溶剤が充満して貯留される溶剤霧化槽内部を覗く窓部と、前記溶剤霧化槽の上方で噴霧口に設けられ、前記霧化した溶剤のうち粒径の大きい霧化溶剤の上昇を抑制し、かつ粒径の小さい霧化溶剤を該噴霧口へ導くための霧化溶剤分別部材と、前記超音波振動子を囲うように設けて均質な霧化状態とするための整霧部材と、を備えた霧化溶剤噴霧装置。
【請求項2】
前記窓部近傍に、色変更可能な照明手段を設けた請求項1記載の霧化溶剤噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1μm以下の超極微粒子の溶剤を噴霧する装置の使用を容易に確認することができる霧化溶剤噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィトンチッドと称される化学物質は、植物が傷つけられた際に該植物や樹木から発散・放出されるもので、微生物の活動を抑制する作用をもつ他、殺菌力を有している。昨今では、疑似的な癒しや安らぎの森林浴効果を得るために、自然界成分の分析のうえ得た人工的フィトンチッド溶剤の希釈液を例えば霧化あるいは噴霧するようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、消臭剤水溶液を超音波発振にてミストに霧化し、超音波発振による霧化ミストを乗せた空気流を下方に向けて配置された超微粒子選択プレートに当て、3ミクロンを超える粗粒子ミストを自重にて落下させて空気流から除去することで、霧化ミストから3ミクロン以下の超微粒子ミストを選択して空気流と共に消臭すべき雰囲気中に吹き込むようにした消臭方法が示されている。
【0004】
また、特許文献1には、上方部分に空気吹出口を有するハウジングと、ハウジング内に収納され、消臭剤水溶液を貯留し、下端に消臭剤水溶液の供給口を有する密閉構造の貯槽と、ハウジング内下方に収納され、貯槽の供給口が所定液面高さに配置されて貯槽から消臭剤水溶液が所定液面まで自然供給され、供給された消臭剤水溶液を超音波発振によって霧化する霧化槽と、ハウジング内の空気吹出口の背後に設けられ、空気吹出口に向けて空気を送給するファンと、ハウジング内に上下方向に延びて設けられ、霧化槽の主要液面と空気吹出口とに連通し、周壁が上方に向けて横断面積を減少させるように傾斜されて霧化槽の液面から飛散する飛沫を当てて自重にて落下させる一方、霧化槽から霧化飛散するミストをファンの空気流にて吸引させて実質的に凝集させることなく、1μm以下の極超微粒子ミストを空気流に乗せるガイド槽と、超音波発振器及びファンを作動させる制御装置とを備えた消臭装置が示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような装置では、1μm以下の極超微粒子だけを吐出
しようとすると、ガイド槽を設けてなおかつ超音波発振器を設けた位置から吹出口に向けて大きな空間が必要となり、体積比率で貯槽に対して霧化及び吹き出しに要する構造が約2倍必要となっていて、小型化の妨げとなっていた。また、ファンから送風する流路と、微粒子の吹き出し流路とを別々に設けて、ルーバーを設けた吹出口で極超微粒子と送風とを合流させる構成であった点も小型化の妨げとなっていた。
【0006】
一方、小型化に際する問題点としては、単純に特許文献1の構成の全ての部材のスケールを小さく、例えば溶剤の貯槽を小さくすればよいと言うものではなく、ある一定の溶剤の量は保証、つまり例えば溶剤が充填された貯槽やボトルは一定で、装置そのものだけを小型化し、かつ溶剤の使用期間はほぼ今までどおりであることが望まれていた。
【0007】
そこで、上記の問題を解決した特許文献2では、霧化槽を構成するカバーの天面に設けられる吹出キャップに、側面部に形成された吹出口と、裏面に形成された2枚の壁面とを有し、一方、カバーには、側面高さ方向に形成され、霧化槽内部と区画されると共に送出部と連通した送風路と、該カバーの天面に形成された突部と吹出キャップの壁面とが嵌合して形成され、送風路と連通したミスト送風路と、このミスト送風路の流路途中の幅方向中央に形成され、風流を調整する整流凸部と、この整流凸部の流路直前に形成され、霧化槽内部へ風を流入させる空気流入孔と、該カバーの天面で前記ミスト送風路の送風路と連通した側と反対側の端部に形成され、該霧化槽内と連通したミスト排出孔と、を有した霧化溶剤吐出装置が提案されている。
【0008】
こうすることで、確かに装置の小型化は達成され、かつ溶剤の使用期間はほぼ今までどおり、むしろ、1μm以下の超極微粒子が噴霧され、それより大きな粒径の溶剤については霧化槽に戻されるから、使用期間は長期化の達成ができた。
【0009】
しかしながら、1μm以下の超極微粒子となれば目視することができず、実際に溶剤が噴霧されているかといった使用の確認をすることができず、では、霧化槽内が見えるようにして1μm以下の超極微粒子とそれ以上の粒子とに分別される前の霧化状態を見せるようにしたところで、単に白霧が充満した内部が見えるだけであって分別状態を確認するには至らないといった不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3067089号公報
【特許文献2】特開2016-34610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする問題は、従来の1μm以下の超極微粒子の溶剤を噴霧する装置では、極超微粒子を噴霧するだけに使用を確認することが困難な点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、筐体内部下方に貯留された溶剤を超音波振動子で霧化し、この霧化状態の溶剤を粒径の大小で分別し、粒径の小さいものは噴霧し、粒径の大きいものは貯留側に戻す霧化溶剤無噴霧装置において、前記超音波振動子が底部に設けられて該超音波振動子により霧化した溶剤が充満して貯留される溶剤霧化槽の内部を覗く窓部と、前記溶剤霧化槽の上方で噴霧口に設けられ、前記霧化した溶剤のうち粒径の大きい霧化溶剤の上昇を抑制し、かつ粒径の小さい霧化溶剤を該噴霧口へ導くための霧化溶剤分別部材と、前記超音波振動子を囲うように設けて均質な霧化状態とするための整霧部材と、を備えた霧化溶剤噴霧装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、窓部を設けているから溶剤霧化槽の内部を覗いて稼働状態であるか否かを目視把握することができる。このとき、本発明は、窓部から覗くことができる溶剤霧化槽の内部において超音波振動子によって溶剤が霧化状態となるが、整霧部材を設けていることで霧化溶剤を均質な状態とすることができ、また、霧化溶剤分別部材を設けていることで、均質な霧化溶剤の上昇を一定の高さで抑制して、窓部から覗く一面が霧化溶剤だけとならないようにできると共に霧化溶剤の上面を雲海のように演出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の霧化溶剤噴霧装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の霧化溶剤噴霧装置の構成と動作を説明するための
図1のA-A線部分断面図である。
【
図3】本発明の霧化溶剤噴霧装置における溶剤噴霧部を示す部分斜視図である。
【
図4】(a)(b)は本発明の霧化溶剤噴霧装置における貯留部と整霧部材を示す図である。
【
図5】本発明の霧化溶剤噴霧装置における霧化溶剤分別部材を示す図である。
【
図6】本発明の霧化溶剤噴霧装置における霧化溶剤分別部材を示す図である。
【
図7】本発明の霧化溶剤噴霧装置における霧化溶剤分別部材を示す図である。
【
図8】本発明の霧化溶剤噴霧装置における霧化溶剤分別部材を示す図である。
【
図9】本発明の霧化溶剤噴霧装置における霧化溶剤分別部材を示す図である。
【
図10】(a)(b)は本発明の霧化溶剤噴霧装置における整霧部材を示す図である。
【
図11】(a)(b)は、本発明の霧化溶剤噴霧装置における整霧部材の構成の相違による作用の差を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、1μm以下の超極微粒子の溶剤を噴霧する装置では、極超微粒子を噴霧するだけに使用を確認するという目的を、超音波振動子が底部に設けられて該超音波振動子により霧化した溶剤が充満して貯留される溶剤霧化槽内部を覗く窓部と、溶剤霧化槽の上方で噴霧口に設けられ、霧化した溶剤のうち粒径の大きい霧化溶剤の上昇を抑制し、かつ粒径の小さい霧化溶剤を該噴霧口へ導くための霧化溶剤分別部材と、超音波振動子を囲うように設けて均質な霧化状態とするための整霧部材とを備えることで達成した。
【0016】
本発明は、以下の経緯で発明されたものである。例えば、従来の、例えば特許文献1,2の構成において溶剤の霧化状態を目視にて把握するために窓部を設けたところ、溶剤霧化槽に相当する部分内で真っ白くなった霧化溶剤が充満している状況しか見えず、超音波振動子によって溶剤が霧化されていることだけが把握でき、霧化された溶剤の粒径の大小の分別状況は把握することができなかった。
【0017】
また、例えば特許文献1,2の構成では、窓部から覗く霧化された溶剤は、溶剤霧化槽に相当する部分に充満するが、ときどき部分的に霧化溶剤が無くなったり、中央だけが高さが低かったりと、発生した霧化の状態が不安定で、超音波振動子にトラブルが発生しているのかと勘違いすることがあった。
【0018】
上記を踏まえて、本発明者等は、窓部を設けて稼働状況を確認できることに付随して、粒径の分別が適切にできていること、窓部から覗く霧化状態を安定させること、そのうえで窓部から覗く霧化溶剤の見栄えを良くすること、を主題として開発した結果、霧化溶剤分別部材と、整霧部材とを設けることとした。
【0019】
すなわち、整霧部材を設けることで、超音波振動子の周囲における発泡を阻止することで溶剤を均質に霧化すると共に単位時間当たりの霧化量(消費量)を安定させることができる。また、霧化溶剤分別部材を設けることで、粒径1μm以下の不可視粒子だけを噴霧し、かつそれより大きな可視粒子の溶剤霧化槽内での上昇を抑制するから、分別状況を目視で把握することができる。これらを設けることで、窓部から覗く霧化溶剤は、該窓部の高さ方向の中央部分で、雲海状に浮遊した見栄えの良いものとすることができる。
【0020】
また、本発明は、上記構成において、前記窓部近傍に、色変更可能な照明手段を設ける構成としてもよい。こうすることで、窓部から覗く霧化溶剤をさらに見栄え良く演出することができ、様々な好みの演出効果が可能であることはもちろん、例えばエラーやトラブルを色で報知するといった効果や、例えば時間によって眺めるとリラックスするといったような心理的効果を得ることもできる。
【実施例0021】
以下、
図1~
図11を参照して本発明の一実施例を説明する。
図1は、本発明の霧化溶剤噴霧装置1(以下、噴霧装置1という)の概略構成を示し、本例において、噴霧装置1は次の構成となっている。なお、本実施例における噴霧装置1は、フィトンチッド溶剤(以下、溶剤という)を霧化吐出するに最適な構成とされている。以下、この溶剤を霧化した状態をミストと言う。
【0022】
2は、後述する制御部や、各部を収容した筐体である。筐体2には、大きく分けて、溶剤を収容する溶剤収容部2Aと、溶剤をミスト化する溶剤霧化槽2Bと、溶剤を噴霧する溶剤噴霧部2Cとから構成されている。この筐体2における長辺でなる側面のうち正面とする片面には、前記溶剤霧化槽2Bの内部を除く窓部2Dが設けられている。
【0023】
ここで、本発明の噴霧装置1の基本動作について説明する。本発明の噴霧装置1は、
図1及び
図2に示すように、溶剤収容部2Aに収容された溶剤が、溶剤霧化槽2Bへ供給され、ここでミスト化され、ミストが溶剤噴霧部2Cから噴霧される。
【0024】
溶剤噴霧部2Cは、不可視粒径(1μm以下)のミストは噴霧され、可視粒径(前記より大きい粒径)のミストと前記不可視粒径のミストの噴霧のために送風する空気の一部を溶剤霧化槽2Bへ戻す。
【0025】
この溶剤霧化槽2Bへ戻る気流によって、該溶剤霧化槽2Bにおいて可視粒径が窓部2Dの高さ方向の約半分程度の高さまでの上昇で抑制され、浮遊する。この様子が窓部2Dから覗くと雲海のように滑らかでゆっくりと波打つように見え、雲海状のミストが見える限りは正常動作していることが把握できるようになっている。一方、溶剤霧化槽2Bに充満するミストのうち、粒径の小さいものだけが前記戻される気流に抗して溶剤噴霧部2Cへ上昇する。
【0026】
上記動作を実現するために、以下、構成の説明に戻る。
図1に示す3は、本例では特に溶剤を収納したタンクである。このタンク3は、ボトルのキャップを外してこのキャップ側を下方に向けて筐体2の溶剤収容部2Aに収容するようになっている。
【0027】
4は、筐体2の溶剤霧化槽2Bの内底部に設けられた貯留部である。この貯留部4は、具体的には、下方に向けられたタンク3のキャップ側の吐出口と接続した供給路2aを介して該タンク3から流れ出た溶剤を貯留する。供給路2aは、溶剤収容部2A側から溶剤霧化槽2Bに向けて、該溶剤霧化槽2B側を下としたゆるやかな傾斜が設けられ、貯留部4から溶剤が消費される毎にタンク3から一定量だけ供給されるようになっている。
【0028】
貯留部4は、
図4等に示すように、平面視円形の窪みであり、一部の周縁部が供給路2aと連通した上段部4aと、この上段部4aと同軸円形状でから所定高さ分だけ低く(深く)された下段部4bが形成されており、この下段部4bの中央に後述の超音波発振部5が設けられている。
【0029】
5は、貯留部4の下段部4bにおいて中央に設けられたさらに窪んだ部分に設けられ、該貯留部4に貯留された溶剤を超音波発振子によりミスト化する超音波発振部(以下、発振部5と記す)である。この発振部5は、振動子を例えば約2.5MHzで振動させることで、フィトンチッド溶剤をミスト化する。
【0030】
6は、貯留部4において、発振部5を囲うように設けた整霧部材である。整霧部材6は、
図4及び
図10等に示すように、円筒とされ、軸方向の一端にはフランジ部6aが、他端には例えば本例では約60度間隔で複数の切り欠き部6bが、各々形成されている。
【0031】
また、整霧部材6は、発振部5の上方に流入しようとする溶剤を阻止して該発振部5の直上へミストだけを噴霧させるための区画部6cを有している。この区画部6cは、内径が発振部5の外径と同じ円筒状とされ、整霧部材6と同軸で例えば120度の等角度で3本設けられた支持部6dによって支持され、貯留部4に載置した状態で外径(厚み)が発振部5側の端縁部に向かってしだいに小さくされたエッジ部6eが形成されている。
【0032】
整霧部材6は、本例では、外筒部分が全体として例えば40mmの高さ(軸長)とされ、この内筒となる区画部6cは25mmの高さ(軸長さ)とされている。そして、区画部6c(エッジ部6e)は、その先端が発振部5から10mm離間した状態とされ、また、その先端部が外筒部分の切り欠き部6bが形成された側の端部に対して8mm突出した状態とされている。
【0033】
このように整霧部材6を形成することで、本例では例えば、貯留部4の内底面から60~80mmの高さ(窓部2Dの高さ方向約中央部位に相当)で安定した可視粒径によるミストを雲海状に浮遊させることが形成でき、1リットルの溶剤の消費を8時間/日の使用で約1カ月(32日)維持することができる。
【0034】
整霧部材6は、次のように作用する。フランジ部6aは、貯留部4において貯留された溶剤と該貯留部4に供給された際等に泡化した溶剤の区画部6c内への侵入を阻止する。すなわち整霧部材6は、発振部5から区画部6c先端までの距離と、外筒部分に対する区画部6cの突出量と、エッジ部6eの有無が重要となる。
【0035】
整霧部材6の区画部6cの先端と発振部5との距離は、5~10mmとする。整霧部材6の区画部6cの先端と発振部5との距離が、5mmより近いと区画部6c内の発振部5に流入する溶剤の量が少なく、発振部5の振動で溶剤がミストでは泡立つ可能性があり、目標とする所定高さより低い位置における雲海状のミストが発生する、一方、10mmより長いと、前記とは逆で、区画部6c内の発振部5に流入する溶剤の量が多くなり、溶剤が必要以上に多く消費されてしまう可能性があると共に、目標とする所定高さより高い位置における雲海状のミストが発生する。
【0036】
整霧部材6の外筒部分に対する区画部6cの突出量は、5~10mmとする。整霧部材6の外筒部分に対する区画部6cの突出量が、5mmより短いと、外筒部分の最下端と貯留部4の上段部4aとの距離が小さいので、外筒部分内部に流入する溶剤が少なくなり、目標とする所定高さより低い位置における雲海状のミストが発生する、一方、10mmより長いと、外筒部分の最下端と貯留部4の上段部4aとの距離が大きくなるので、外筒部分内部に流入する溶剤が多くなり、溶剤が必要以上に多く消費されてしまう可能性があると共に、目標とする所定高さより高い位置における雲海状のミストが発生する。
【0037】
整霧部材6の区画部6cにおけるエッジ部6eは、存在しない場合は、
図11(a)に示すように、発振部5によって生じたミストのうち該発振部5の直上以外に向かうミストが、区画部6cの下端面に衝突してここで乱流が発生して上手く直上に向かわないというロスが生じる。一方、エッジ部6eを設けている場合は、
図11(b)に示すように、発振部5によって生じたミストのうち該発振部5の直上以外に向かうミストが、乱流を発生させずに区画部6c外に向かうから前記ロスが生じない。
【0038】
整霧部材6は、上記のとおり、整霧部材6の区画部6cの先端と発振部5との距離と、整霧部材6の外筒部分に対する区画部6cの突出量と、を上記範囲で調整することで、溶剤の消費量をコントロールすることができる。
【0039】
7は、溶剤霧化槽2Bの上部に位置する溶剤噴霧部2Cに設けられた霧化溶剤分別部材(以下、分別部材7と記す)である。この分別部材7は、
図3及び
図5~
図9等に示すように、溶剤霧化槽2B内に充満した霧化溶剤のうち、1μm以下の極めて小さくかつ軽い粒径の霧化溶剤だけを噴霧し、それ以外を溶剤霧化槽2Bに戻すと共に、溶剤噴霧部2C内に適度な圧力を付与する。
【0040】
分別部材7は、単に霧化溶剤の粒径の小さいものだけを噴霧させるべく分別するだけでなく、溶剤霧化槽2Bに向けた適度な圧力を付与することで、上記したように可視粒径を溶剤霧化槽2Bの内部高さ(窓部2Dの高さ9)の約半分の高さの位置で浮遊させ、不可視粒径だけを溶剤噴霧部2Cに向けて上昇させることができる。
【0041】
溶剤噴霧部2Cは、
図1~
図3に示すように、筐体2の上部で幅方向中央部における窓部2Dを設けた側と反対側の部位にファン7Aと、このファン7Aの直前を最下部として窓部2Dを設けた側に向けて上方に傾斜した傾斜部7Bと、この傾斜部7Bの前記最下部位置に形成された溶剤霧化槽2Bと連通した連通孔7Cと、からなる。なお、本例では、溶剤噴霧部2Cには、傾斜部7Bの全域を覆うための開閉自在のカバー7Dが設けられている。
【0042】
分別部材7は、傾斜部7Bと同じ傾斜面となるように連通孔7Cに嵌るようになっている。つまり、分別部材7は、前記連通孔7Cに上方から嵌る大きさで、かつ全体が連通孔7Cに落ち込まないように、傾斜部7Bと同じ傾斜面とされた上面の斜面7aの例えば平面視の四隅に係合部7bが形成されている。
【0043】
また、分別部材7は、斜面7aにおいて中央で分割した幅方向(筐体2における窓部2Dを中央とした水平方向)の両側に、それぞれ吸引孔7cが形成されている。この吸引孔7cは、エジェクタとして機能し、ファン7Aにより斜面7aに沿った気流によって溶剤霧化槽2B内のミストを吸引するためのものである。
【0044】
さらに、分別部材7は、それぞれの吸引孔7cにおける斜面7aとは反対側の端面(これを下面と言う)には、各々の該吸引孔7cの幅全域に下面から突出した壁面7dと、この壁面7dの下端が直交状に屈曲して、底面視で該吸引孔7cの孔全域を覆う分別部7eが形成されている。壁面7d及び分別部7eによって吸引孔7cから吸引されて斜面7aに至るまでの経路が屈曲経路とされることで、吸引孔7cに吸引される溶剤霧化槽2Bにおいて充満したミストのうち、より粒径の小さい(表面張力の小さい)ミストだけを分別することができる。
【0045】
また、分別部材7は、斜面7aの中央において突出した衝突部7fが形成され、この衝突部7fの下部には溶剤霧化槽2Bに連通した連通孔7gが形成されている。この衝突部7fは、例えば、本例では三角柱状とされ、該斜面7a上方向に一角を位置させ、斜面7a下方向に一辺が位置するように設けている。この衝突部7fは前記一辺の面にファン7Aから送られた空気を衝突させ、連通孔7gは衝突した空気を溶剤霧化槽2Bへ流入させる。
【0046】
さらに、分別部材7は、連通孔7gにおける下面には、該連通孔7gの幅全域に下面から突出した壁面7hと、この壁面7hの下端が直交状に屈曲して、底面視で該連通孔7gの孔全域を覆う方向変換部7iが形成されている。これら空気を溶剤霧化槽2Bへ流入させるための壁面7hと方向変換部7iは、上記溶剤霧化槽2Bからミストを吸引するための壁面7dと分別部7eに対して、次の点で異なっている。
【0047】
すなわち、壁面7dは連通孔7cの窓部2D側と反対側から下方に突出しているのに対し、壁面7hは連通孔7gの窓部2D側から下方に突出している。また、分別部7eは壁面7dから窓部2D側に直交状に屈曲しているのに対し、方向変換部7iは窓部2Dと反対側に直交状に屈曲している。
【0048】
衝突部7f、連通孔7g、壁面7h、方向変換部7iにより上記ミストを吸引する方向とは異なる方向から空気を溶剤霧化槽2Bへ流入させることにより、該溶剤霧化槽2B内において乱流が発生して、吸引孔7c、壁面7d、分別部7eを介した溶剤霧化槽2Bからのミストの吸引はより粒径の小さく軽いものだけが分別されることとなる一方、該溶剤霧化槽2B内に充満するミストにおいて可視粒径のものを適度に貯留部4側へ押し戻すこととなる。
【0049】
すなわち、本発明の噴霧装置1は、整霧部材6と分別部材7の以上の相乗作用により、窓部2Dから覗く溶剤霧化槽2Bでは、その高さ方向の略中央部位を上端とする可視粒径のミストが雲海状に浮遊した演出効果が可能となり、これにより正常稼働していることが確実に目視にて把握できる。
【0050】
8は、窓部2Dの下縁部の近傍に設けた照明手段としての発光部である。この発光部8は、不図示の制御部によりスイッチ、あるいは所定のプログラムで色変更可能に発光する。この発光部8を設けることで、噴霧装置1の稼働状況の把握と同時に、溶剤霧化槽2B内で雲海状に浮遊するミストを効果的に演出することができる。
【0051】
この発光部8からの発光色を例えば、赤色とすることで、可視粒径のミストに反射してされ、焚き木の炎が揺れ動いているような演出も可能であり、これを眺めることで、リラックス効果を得ることもできる。