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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135467
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】パネル昇降装置
(51)【国際特許分類】
   A47F 9/00 20060101AFI20220908BHJP
   E05F 1/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A47F9/00 Z
E05F1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035285
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000250672
【氏名又は名称】立川ブラインド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 武信
(57)【要約】
【課題】パネルを容易且つ安全に昇降可能なパネル昇降装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、昇降コードと、パネルと、操作部と、減速機構とを備え、前記パネルは、前記昇降コードに接続され、前記操作部を操作し前記昇降コードを移動させることにより昇降され、前記パネルは、自重により降下可能であり、前記減速機構は、前記パネルの自重降下速度を低減させるように構成される、パネル昇降装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル昇降装置であって、
昇降コードと、パネルと、操作部と、減速機構とを備え、
前記パネルは、前記昇降コードに接続され、前記操作部を操作し前記昇降コードを移動させることにより昇降され、
前記パネルは、自重により降下可能であり、
前記減速機構は、前記パネルの自重降下速度を低減させるように構成される、パネル昇降装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパネル昇降装置であって、
前記パネルは、透明パネルである、パネル昇降装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のパネル昇降装置であって、
前記パネルの鉛直方向における上限位置を決定するための上限位置決定手段をさらに備える、パネル昇降装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパネル昇降装置であって、
ヘッドボックスをさらに備え、
前記昇降コードは、その一端が前記ヘッドボックスから垂下されて前記パネルに接続され、
前記上限位置決定手段は、前記昇降コード上であって前記ヘッドボックスと前記一端との間に設けられたストッパであり、
前記ストッパは、前記パネルが前記上限位置まで上昇すると前記ヘッドボックスに当接するように構成される、パネル昇降装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1つに記載のパネル昇降装置であって、
前記昇降コードは、一端が前記パネルに接続され、前記一端を含む下側昇降コードと、前記下側昇降コードよりも上側に配置された上側昇降コードとを備え、
前記下側昇降コードと前記上側昇降コードとは、分離可能に接続される、パネル昇降装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1つに記載のパネル昇降装置であって、
前記パネルの鉛直方向における下限位置を決定するための下限位置決定手段をさらに備える、パネル昇降装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1つに記載のパネル昇降装置であって、
前記昇降コードは、前記パネルの鉛直方向における下限位置を調整するための下限位置調整手段を備える、パネル昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対面で接客が行われる小売店のレジカウンターや銀行等の窓口においては、感染症対策の一環として飛沫感染防止のために店員等と顧客との間を物理的に遮蔽するパネルやフィルムが設置される場合がある。特許文献1には、吊り下げ用ワイヤにより天井等から透明フィルムを吊り下げた飛沫感染防止用フィルム装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3227065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
店員等と顧客との間に設置されたパネル越しに商品等の受け渡しが行われる場合、パネルを一時的に移動して受け渡しを行い、受け渡しが完了した後パネルを元の位置に戻す必要がある。パネルが昇降可能であれば、パネルを上昇させて下方に店員側及び顧客側の空間を連通させる隙間を作り、当該隙間から商品を受け渡し、受け渡しの完了後にパネルを下降させることで、商品の受け渡しが頻繁に行われる場合でも必要最小限の大きさの隙間を必要最小限の時間だけ容易に確保することができる。
【0005】
一方、当該パネルは、人と人との間で且つ人と近接した位置において設置されるものであり、また昇降の頻度が高い使用状況が想定されるため、昇降時、特にパネルの下降時の安全に注意を払う必要がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、パネルを容易且つ安全に昇降可能なパネル昇降装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、パネル昇降装置であって、昇降コードと、パネルと、操作部と、減速機構とを備え、前記パネルは、前記昇降コードに接続され、前記操作部を操作し前記昇降コードを移動させることにより昇降され、前記パネルは、自重により降下可能であり、前記減速機構は、前記パネルの自重降下速度を低減させるように構成される、パネル昇降装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るパネル昇降装置は、昇降コードに接続されたパネルを操作部の操作により昇降可能であり、さらにパネルの自重降下速度を減速機構により低減可能である。このような構成により、パネルを容易に昇降可能としつつ、パネルが比較的ゆっくり降下するため安全にパネルを昇降させることができる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記パネルは、透明パネルである。
好ましくは、前記パネル昇降装置は、前記パネルの鉛直方向における上限位置を決定するための上限位置決定手段をさらに備える。
好ましくは、前記パネル昇降装置は、ヘッドボックスをさらに備え、前記昇降コードは、その一端が前記ヘッドボックスから垂下されて前記パネルに接続され、前記上限位置決定手段は、前記昇降コード上であって前記ヘッドボックスと前記一端との間に設けられたストッパであり、前記ストッパは、前記パネルが前記上限位置まで上昇すると前記ヘッドボックスに当接するように構成される。
好ましくは、前記昇降コードは、一端が前記パネルに接続され、前記一端を含む下側昇降コードと、前記下側昇降コードよりも上側に配置された上側昇降コードとを備え、前記下側昇降コードと前記上側昇降コードとは、分離可能に接続される。
好ましくは、前記パネル昇降装置は、前記パネルの鉛直方向における下限位置を決定するための下限位置決定手段をさらに備える。
好ましくは、前記昇降コードは、前記パネルの鉛直方向における下限位置を調整するための下限位置調整手段を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るパネル昇降装置1を示す正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るパネル昇降装置1を示す側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るパネル昇降装置1において、パネル4を上昇させた状態を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る減速機構100の前方斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る減速機構100の後方斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る減速機構100の左側面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る減速機構100の分解斜視図であり、前方上側から見た図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る減速機構100の分解斜視図であり、後方下側から見た図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る減速機構100からケース10を除いた状態の前方斜視図である。
図10図9からさらにスライダー220を除いた状態の前方斜視図である。
図11】本発明の第1実施形態に係るケース10を表す前方斜視図である。
図12】本発明の第1実施形態に係るスライダー220の前方斜視図である。
図13図6のA-A線における断面図である。
図14】本発明の第1実施形態に係る減速機構100の左右方向における断面図である。
図15】本発明の第1実施形態に係るケース10の鍔部13よりも上側の部分と、スライダー220と、コイルスプリングSPを裏側から見た分解斜視図である。
図16図16A及び図16Bは、パネル降下時の昇降コードに加わる力の関係を説明するための概念図である。
図17】本発明の第1実施形態に係る下限位置調整手段20の平面図である。
図18図17のB-B線における断面図である。
図19図19A図19Dは、下限位置調整手段20による昇降コードの長さの調整の手順の説明図である。
図20】本発明の第2実施形態に係るパネル昇降装置1を示す正面図である。
図21】本発明の第2実施形態に係るパネル4が上限位置に到達した状態を示す図である。
図22図22Aは、下側昇降コード3a及び上側昇降コード3bが分離した状態を示す図である。図22Bは、下側昇降コード3a及び上側昇降コード3bが接続された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.第1実施形態
1.1.全体構成
第1実施形態に係るパネル昇降装置1は、図1に示すように、小売店のレジカウンター等で接客に用いられる台6の上方に設置される。パネル昇降装置1は、ヘッドボックス2と、昇降コード3と、パネル4と、操作部8とを備え、ヘッドボックス2から垂下された昇降コード3が支持するパネル4を操作部8の操作により昇降可能に構成されている。以下の説明において図1を参照する場合、図1の左右方向を幅方向と称する。
【0013】
図1及び図2に示すように、ヘッドボックス2からは昇降コード3が垂下されており、各昇降コード3の一端はパネル4に接続される。各昇降コード3は、ヘッドボックス2内に複数個配設された支持部材5によりヘッドボックス2の幅方向に案内され、ヘッドボックス2内に取り付けられたロック部9及び減速機構100を経て他端がヘッドボックス2の端部から引き出される。引き出された各昇降コード3の他端は、コードイコライザ7に接続される。昇降コード3の数はパネル4のサイズや重さ等に応じて任意に設定可能であり、パネル4を安定して支持するうえで複数本の昇降コード3を用いることが好ましい。本実施形態では、2本の昇降コード3を用いる。
【0014】
コードイコライザ7には、操作コード81及び操作用イコライザ82を備える操作部8が接続されている。操作コード81は、コードイコライザ7から垂下し、その下端に操作用イコライザ82が接続されている。操作部8を下方へ引くと、図3に示すように各昇降コード3がその長手方向に移動しヘッドボックス2から引き出され、昇降コード3の移動に伴いパネル4が上昇する。
【0015】
ロック部9は、パネル4の自重降下を制止するために昇降コード3をロック可能に構成され、本実施形態では、公知のハートカムストッパが用いられる。ロック部9は、ロック状態から操作部8を一度下方へ引いて手を離すと昇降コード3のロックが解除されて長手方向に移動可能となり、その結果、パネル4が自重により降下可能となる。この状態で操作部8をもう一度下方へ引いて手を放すと、パネル4がわずかに自重降下した直後に昇降コード3がロックされ、それ以上の自重降下が制止されるよう構成されている。
【0016】
減速機構100は、ヘッドボックス2内に取り付けられ、昇降コード3の移動を制動してパネル4の自重降下速度を低減させるものである。減速機構100の詳細は、後述する。
【0017】
平板状のパネル4は、店員等と顧客との間を遮蔽するためのものであり、パネル4の両側からの視認性を確保するために透明又は半透明のものを用いるのが好ましい。透明パネルとして、例えば、ポリカーボネート又はアクリル製のパネルを用いることができる。パネル4の寸法は、設置場所等の条件に応じて適宜設定可能であり、例えば、幅0.30~2m、高さ0.3~1.5m、厚み1~7mmであるが、これに限定されるものではない。
【0018】
図1及び図2に示すように、パネル4の上縁付近には直径3mm~5cmの挿通孔4aが形成されている。挿通孔4aに昇降コード3の一端を挿通して結束することにより、パネル4が昇降コード3に接続され支持される。挿通孔4aの数と幅方向の位置は、昇降コード3の本数やパネル4の大きさ等の条件に応じて適宜設定可能であり、本実施形態においては2個の挿通孔4aがパネル4の左端から幅方向の長さのおよそ3分の1及び3分の2の位置に形成されている。
【0019】
1.2.減速機構100
減速機構100は、パネル4の自重降下時に昇降コード3の長手方向の移動に対して抵抗を付与するように構成されている。これにより、パネル4の降下速度が低減され、パネル4をゆっくりと安全に降下させることが可能となる。抵抗を付与するために、例えば、回転軸の回転に伴い発生する遠心力を利用した遠心ガバナ、又は粘性流体内での部材の移動時に生じる抵抗力を利用するオイルダンパを用いることができる。本実施形態に係る減速機構100は、遠心ガバナにより、パネル4の自重降下時の昇降コード3の移動に対して抵抗を与えるように構成されている。
【0020】
図4図8に示すように、本実施形態に係る減速機構100は、運動変換部DT及び抵抗付与部RAが略鉛直方向に連結して構成される。運動変換部DTは、昇降コード3の移動を回転運動に変換するためのものであり、スライダー220、コイルスプリングSP、軸芯31及びローレット240からなる張力伝達ローラ30、軸芯41及びローラ部42からなるアイドルローラ40、内歯付キャリア260、及びケース10の一部により構成される。抵抗付与部RAは、当該回転運動に対し抵抗を付与するためのものであり、ウェイト340、太陽歯車付ウェイトホルダ320、ワッシャー241、ベース70、及びケース10の一部により構成される。なお、以下の説明において、減速機構100の前後、左右、及び上下方向を、図4に示すように定める。図1のパネル昇降装置1において、減速機構100は、前側がヘッドボックス2の幅方向の左側を、後側がヘッドボックス2の幅方向の右側を向くように配置されている。
【0021】
<整列部材200>
図4及び図5に示されるように、整列部材200は、その前後方向に沿って昇降コード3を配置又は挿通して昇降コード3の向きを整えるものである。整列部材200は、例えば、プラスチック等の樹脂で形成することができる。本実施形態においては、整列部材200の上方に1本の昇降コード3を前後方向に配置し、整列部材200の内部に2本の昇降コード3を前後方向に挿通させて、最大3本の昇降コード3の向きを整えることができる。なお、図4及び図5においては昇降コード3を配置する位置を説明するために3本の昇降コード3が示されているが、本実施形態で用いられる昇降コード3は実際には2本である。昇降コード3が2本の場合、図4及び図5に示された3箇所の昇降コード3の配置位置のうち任意の2箇所に昇降コード3を配置することができる。
【0022】
整列部材200の左右の側壁の内面には爪部(不図示)が設けられ、減速機構100の組み立て時に爪部とケース10の左右に設けられた係合孔19(図11参照)とが係合することにより、整列部材200がケース10に固定される。
【0023】
<ケース10>
図4図6、及び図11に示すように、ケース10は、ベース70と共に筐体を構成し、その内部にスライダー220、コイルスプリングSP、軸芯41及びローラ部42からなるアイドルローラ40、ローレット240、ピニオンギア50、軸芯31、ワッシャー241、内歯付キャリア260、遊星歯車280、プレート300、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340を保持する。
【0024】
図11及び図15に示されるように、ケース10は、天壁部11と、前側壁部12fと、右側壁部12r及び左側壁部12lと、後側壁部12bと、前側壁部12f、後側壁部12b、前側壁部12f及び左側壁部12lから径方向側に向かって延在する鍔部13と、鍔部13に連結される円筒部13Cと、円筒部13Cに連結されるカバー部112とを主な構成として有する。
【0025】
前側壁部12f及び後側壁部12bには、前後方向において相互に対向するガイド溝113が形成されている。ガイド溝113には、昇降コード3が前後方向に挿通される。
【0026】
右側壁部12r及び左側壁部12lには、整列部材200の爪部と係合可能に構成された係合孔19が設けられる。左右の係合孔19の上方には支持溝114が設けられる。支持溝114は、図4及び図5に示されるように、ケース10がスライダー220を内部に保持するにあたり、スライダー220に設けられる突起230を支持するものである。これにより、スライダー220をその底部を浮かせた状態で支持することができる。
【0027】
天壁部11には、第1天壁溝16と第2天壁溝17とが形成されている。第1天壁溝16及び第2天壁溝17は、それぞれ昇降コード3の長手方向すなわち前後方向に対して斜めに形成されており、昇降コード3の一方の長手方向である前方に向かうにつれて、第1天壁溝16と第2天壁溝17との距離が小さくなるよう構成されている。また、第1天壁溝16は円弧状に形成されており、第1天壁溝16の円弧は、図10に示される内歯付キャリア260の内周面と平面視において同心円上となるように形成される。一方、第2天壁溝17は、前方側が略直線状の形状とされ、後方に向かうにつれて、第1天壁溝16から離れる向きに湾曲している。
【0028】
第1天壁溝16におけるケース10の外側の縁には、第1天壁溝16から上方に突出する第1ガイド壁16aが設けられる。第1ガイド壁16aは、第1天壁溝16に沿って移動する軸芯31との接触面積を増大させ、軸芯31の面圧を下げるために設けられている。また、第2天壁溝17におけるケース10の外側の縁には、第2天壁溝17から上方に突出する第2ガイド壁17aが設けられる。第2ガイド壁17aは、第2天壁溝17に沿って移動する軸芯41との接触面積を増大させ、軸芯41の面圧を下げるために設けられている。このような構成により、第1天壁溝16及び第2天壁溝17の内面が削れることを防止することが可能となる。
【0029】
カバー部112には、左右の側面にそれぞれ2つの第1係合溝111aが、前端部に2つの第2係合溝111bが、後端部の略中央に1つの第2係合溝111bが設けられる。第1係合溝111aは、図9に示されるベース70の第1係合板部701aと係合し、第2係合溝111bは、ベース70の第2係合板部701bと係合する。これにより、ケース10とベース70が係合され、筐体を形成する。
【0030】
ケース10の内部には、図13に示されるように、遊星歯車280と歯合するリング状の内周ギア115が形成される。また、ケース10の左右の内側面には、図15に示すように、4つの溝118が形成される。溝118は、減速機構100を組み立てる又は分解する際に、スライダー220の突起230を通すためのものである。
【0031】
<スライダー220>
スライダー220は、アイドルローラ40及びローレット240を内部に保持し且つアイドルローラ40及びローレット240と共に移動する保持部材に相当する。図12及び図15に示すように、スライダー220は、天壁部221と、後側壁部222と、前側壁部224と、底壁部223とを有する。
【0032】
天壁部221には、左右方向に沿って延びる直線状の第1天壁溝226及び第2天壁溝227が形成される。また、底壁部223には、左右方向に沿って延びる直線状の第1底壁溝228及び第2底壁溝229が形成される。第1底壁溝228は第1天壁溝226と上下方向に対向し、第2底壁溝229は第2天壁溝227と上下方向に対向する。第1天壁溝226及び第1底壁溝228の幅は、軸芯31の直径が収まる程度の大きさであり、第2天壁溝227及び第2底壁溝229の幅は、軸芯41が収まる程度の大きさである。
【0033】
また、天壁部221の四隅には、突起230が設けられる。上述のように、突起230は、ケース10の支持溝114に収められ、これによりケース10の内部にスライダー220が浮き状態で支持される。これにより、スライダー220が、下方に位置する内歯付キャリア260と非接触状態で保持される。
【0034】
前側壁部224及び後側壁部222には、貫通孔225がそれぞれ形成されている。孔の形状は任意であるが、好ましくは、複数本の昇降コード3が縦方向に整列した状態で挿通可能な形状である。
【0035】
また、後側壁部222の貫通孔225の両脇には、凹部231が形成されている。左右の凹部231には、その一方又は両方にコイルスプリングSPを配置可能であり、本実施形態においては左側の凹部231にコイルスプリングSPが配置されている。凹部231に配置されたコイルスプリングSPの一端は凹部231から突出してケース10の後方の内壁15dと当接し、スライダー220を前方に付勢する。
【0036】
このような形状のスライダー220の左右方向の大きさ(W1)は、スライダー220がケース10に対して嵌合可能となる程度のクリアランスを設けたうえで、ケース10の左右方向の内壁間の距離(W2)と概ね同じに設定されている。一方、スライダー220の前後方向の大きさ(D1)は、ケース10の前後方向の内壁間の距離(D2)よりも小さくされる。従って、スライダー220がケース10の空間内に配置されると、スライダー220の天壁部221及び底壁部223の側面がケース10の左右方向において内壁面12aに当接して、スライダー220はケース10に対して左右方向に動きが規制される。この状態において、ケース10のガイド溝113とスライダー220の貫通孔225とが互いに前後方向に並び、これらを介して昇降コード3をスライダー220内に挿通することができる。一方、スライダー220とケース10の内壁面との間には、前後方向に隙間が生じ、スライダー220はケース10に対して前後方向に動くことができる。また、スライダー220がケース10の空間内に配置された状態で、スライダー220の後側壁部222の凹部231から突出するコイルスプリングSPがケース10の後方の内壁15dを押圧する。従って、スライダー220がケース10の空間内に配置された状態で、スライダー220はケース10の前方に位置する。
【0037】
<張力伝達ローラ30、アイドルローラ40、及びピニオンギア50>
図7に示すように、張力伝達ローラ30は、軸芯31と、軸芯31の外周面を覆うローレット240とを有する。軸芯31の他端には、ピニオンギア50が挿入されている。アイドルローラ40は、張力伝達ローラ30の軸芯31と平行な軸芯41と、軸芯41の外周面を覆うローラ部42とを有する。従って、張力伝達ローラ30の回転軸とアイドルローラ40の回転軸とは互いに平行とされる。軸芯41の両端部は、ローラ部42から露出している。ローレット240及びローラ部42はスライダー220の内部に保持される。また、ピニオンギア50は、スライダー220の外部に保持される。
【0038】
<内歯付キャリア260及び遊星歯車280>
内歯付キャリア260は、図7図8、及び図13に示すように平面視において環状の部材であり、円柱部264及びフランジ262を備える。円柱部264の内側の内周面には、ピニオンギア50と歯合する内歯車261が形成される。フランジ262には、鉛直方向において下向きに突出する支持軸263が形成される。本実施形態では、一例として支持軸263が4つ設けられた構成としている。
【0039】
支持軸263にはそれぞれ、遊星歯車280が回転可能に支持されている。遊星歯車280は、後述する太陽歯車323と、ケース10の内部に設けられた内周ギア115と互いに歯合する。そして、内歯車261の中心部を中心として公転することが可能である。従って、ピニオンギア50の回転が内歯車261に伝達されることにより内歯付キャリア260が回転し、それにともない内歯付キャリア260のフランジ262に設けられた支持軸263に回転可能に支持された遊星歯車280が回転することで、ピニオンギア50に起因する回転を増速させることが可能となる。
【0040】
<太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340>
図7図8、及び図13に示すように、太陽歯車付ウェイトホルダ320は、リング状のリング部324の外方に向かって、凸部321及び凹部322が交互に並んで形成される。リング部324の外側の外周面には、遊星歯車280と歯合する太陽歯車323が、回転軸が凸部321の延在方向と略垂直方向を向くように設けられる。そして、凹部322には、ウェイト340が配置される。なお、ウェイト340の数は任意であるが、回転時におけるバランスの観点から等間隔であることが好ましい。本実施形態では、一例として8つのウェイト340を用いている。
【0041】
ウェイト340は、ピニオンギア50に起因する回転時において、遠心力により内歯車261の中心から遠ざかる方向に移動し、ケース10の内周壁と当接することにより、回転に対して遠心ブレーキとして抵抗力を付与するものである。図14に示すように、各ウェイト340には、ベース70側に突起341が設けられる。突起341により、ベース70と当接する際における抵抗を低減することが可能となる。
【0042】
<ベース70>
図7及び図8に示すように、ベース70の略中央には円柱部708が設けられる。円柱部708の上面には、第1天壁溝16及び第2天壁溝17と対向する位置に、第1ベース溝706及び第2ベース溝707が各々設けられる。第1ベース溝706及び第2ベース溝707の形状は、第1天壁溝16及び第2天壁溝17の形状に各々対応する。軸芯31の下端及び軸芯41の下端は、第1ベース溝706及び第2ベース溝707に各々挿通される。
【0043】
また、図4及び図5に示すように、ベース70には、左右の側面にそれぞれ2つの第1係合板部701aが、前方の側面に2つの第2係合板部701bが、後方の側面の略中央に1つの第2係合板部701bが設けられる。上述のように、これらはケース10の第1係合溝111a及び第2係合溝111bと係合する。
【0044】
図6及び図14に示すように、ベース70の底面には取付筒702が設けられる。ヘッドボックス2内に減速機構100を配置する際、ヘッドボックス2内に設けられた軸等の部材に取付筒702をはめ込むことにより、位置決めを行うことができる。
【0045】
<減速機構100の組み立て>
図4に示されるように、減速機構100の外観は、ケース10及びベース70が接続された筐体と、ケース10の上方から被せるようにして配置された整列部材200からなる。これらの組み立ては、図7に示されるように、各部材同士の中心軸を上下方向に重ねあわせた状態でなされる。
【0046】
そして、スライダー220の第1天壁溝226及び第1底壁溝228に軸芯31を水平方向に移動させながらスライドさせる。このとき、ローレット240はスライダー220の内部に、ピニオンギア50はスライダー220の外部に配置される。また、第2天壁溝227及び第2底壁溝229に軸芯41水平方向に移動させながらスライドさせる。このとき、ローラ部42がスライダー220の内部に配置される。そして、内歯付キャリア260に設けられた内歯車261とピニオンギア50が互いに歯合するように、スライダー220と内歯付キャリア260が互いに近づくように相対移動させる。
【0047】
その後、これらの部材の下側にベース70を配置し、スライダー220の突起230がケース10の溝118を通るようにしてケース10を上方から被せる。このとき、スライダー220に設けられたコイルスプリングSPがケース10の内周壁と当接し、スライダー220が前方に付勢される。そして、ケース10に設けられた第1係合溝111a及び第2係合溝111bと、ベース70に設けられた第1係合板部701a及び第2係合板部701bを互いに係合させ、ケース10とベース70を固定する。
【0048】
最後に、ケース10及びベース70で構成される筐体の上方から、整列部材200を被せる。そして、整列部材200に設けられた爪部を、ケース10に設けられた係合孔19と係合させ、整列部材200とケース10を固定する。
【0049】
減速機構100の組立完了後、2本の昇降コード3を配置する。2本の昇降コード3は、整列部材200の上方に配置するか、又は整列部材200の内部に挿通させる。そして、これらの昇降コード3がケース10の前後に設けられたガイド溝113及びスライダー220の前後に設けられた貫通孔225に通され、減速機構100の組み立てが完了する。
【0050】
1.3.下限位置決定手段
本実施形態のパネル昇降装置1は、パネル4の鉛直方向における下限位置を決定するための下限位置決定手段として、コードイコライザ7を利用する。パネル4が上昇させた後、操作部8を操作しロック部9による昇降コード3のロックを解除すると、パネル4が自重降下を開始し、これに伴いヘッドボックス2から引き出された各昇降コード3はヘッドボックス2内へと引き戻される。その後、図1に示すようにパネル4が下限位置に到達すると、コードイコライザ7がヘッドボックス2に当接し、これによりパネル4のさらなる降下が規制され、パネル4を適切な位置で停止させることができる。なお、下限位置決定手段は上述した構成に限定されるものではなく、例えば、コードイコライザ7とは別の構成部品を昇降コード3上に設けてヘッドボックス2に当接させてもよい。
【0051】
1.4.下限位置調整手段20
本実施形態のパネル昇降装置1は、図1及び図2に示すように、パネル4の鉛直方向における下限位置の調整を行うための下限位置調整手段20を備える。下限位置調整手段20は、昇降コード3の長さを調整可能に構成され、図17及び図18に示すように、突起20a、第1通過孔20b、第2通過孔20c、押圧部20d、スプリング20e、及び筒部20fを備える。押圧部20dはスプリング20eにより付勢されており、スプリング20eの付勢力に抗して突起20aを内側に押し込むことで筒部20f内を摺動する。第2通過孔20cは、突起20aを押し込んだ状態において下限位置調整手段20の上面から下面まで貫通する。
【0052】
ヘッドボックス2から垂下された昇降コード3の一端は、第1通過孔20bを通過した後にパネル4の挿通孔4aに挿通される。さらに、突起20aを押し込んだ状態で鉛直方向に貫通する第2通過孔20cを通過して、上方に引き出される。
【0053】
図19Aに示す下限位置調整手段20のロック状態においては、スプリング20eの付勢力により押圧部20dが第2通過孔20c内の昇降コード3を押圧している。この状態から突起20aをスプリング20eの付勢力に抗して押し込むと、図19Bのように押圧部20dによる昇降コード3の押圧が解除され、第2通過孔20cが下限位置調整手段20の上面から下面まで貫通する。この状態で、図19Cに示すように昇降コード3の一端を第2通過孔20cの上方に引き出すことで、パネル4の下限位置を鉛直方向に上昇させることができる。突起20aの押し込みを解除すると、図19Dに示すように第2通過孔20c内の昇降コード3が再び押圧部20dにより押圧され、ロックされる。また、逆の操作を行うことにより、パネル4の下限位置を鉛直方向に下降させることもできる。このような下限位置調整手段20を設けることで、使用状況の変更、例えば、パネル4の下方に位置する台の高さの変更等に応じて、パネル4の下限位置を微調整することができる。
【0054】
なお、下限位置調整手段20は上述した構成に限定されるものではなく、昇降コード3の一端を任意の長さにロック可能であれば、他の構成としてもよい。
【0055】
1.5.パネル昇降装置1の動作
本実施形態のパネル昇降装置1においては、パネル4が下降する際の、図4における昇降コード3の前方向の移動に対して減速機構100が制動力を与え、パネル4が上昇する際の、図4における昇降コード3の後方向の移動に対しては減速機構100が制動力を与えない。
【0056】
<定常状態>
図1のように、コードイコライザ7がヘッドボックス2に当接しパネル4が下限位置で停止している場合、昇降コード3は長手方向に移動していない状態(定常状態)にある。定常状態おいて、減速機構100のスライダー220はコイルスプリングSPにより前方に向かって付勢されて、ケース10の前方に位置する。このため、張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40も前方に位置することとなるが、第1天壁溝16と第2天壁溝17は、前方に向かうにつれて互いに距離が小さくなるため、ローレット240とローラ部42の間の距離も小さくなる。これにより、ローレット240はローラ部42に押圧され、ローレット240及びローラ部42により昇降コード3が挟着される。
【0057】
<非制動状態>
上述のような定常状態から操作部8を下方へ引くと、各昇降コード3がその長手方向の一方向(減速機構100に対しては後方向)に移動する。当該移動に伴い、張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40が後方に移動することとなるが、軸芯31及び軸芯41を各々案内する第1天壁溝16と第2天壁溝17は後方に向かうにつれて互いに距離が大きくなるため、ローレット240とローラ部42の間の距離も大きくなる。昇降コード3に対するローレット240及びローラ部42による挟着力が弱まり、張力伝達ローラ30への回転の伝達が抑制されて、制動力を受けることなく昇降コード3を引っ張ることが可能となる(非制動状態)。パネル4が適当な位置まで上昇した時点で操作部8をもう一度下方へ引いて手を放すと、パネル4がわずかに自重降下した直後に昇降コード3がロック部9によりロックされて停止し、定常状態となり、ローレット240及びローラ部42により昇降コード3が再び挟着される。
【0058】
<制動状態>
さらに操作部8を下方へ引いて手を離すと、昇降コード3のロックが解除されてパネル4の自重降下が開始し、各昇降コード3がその長手方向の他方向(減速機構100に対しては前方向)に移動する。当該移動に伴い昇降コード3との間に生じる摩擦力により、ローレット240及びローラ部42が回転し、ローレット240の回転に伴ってピニオンギア50も回転(自転)する。この際、張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40は前方に移動し、軸芯31及び軸芯41が第1天壁溝16と第2天壁溝17に各々案内されて左右方向に相互に近接するため、ローレット240とローラ部42による昇降コード3の挟着力が強くなり、昇降コード3の移動に応じてローレット240が確実に回転するようになる。
【0059】
ローレット240及びこれと連結されているピニオンギア50が回転すると、ピニオンギア50は内歯車261と歯合しているので、内歯付キャリア260も回転(自転)し、内歯付キャリア260に設けられた遊星歯車280も同様に回転(公転)する。ここで、遊星歯車280は太陽歯車323及びケース10により固定された内周ギア115と互いに歯合しているので、公転方向とは逆向きに自転することとなり、遊星歯車280の内側で遊星歯車280と歯合する太陽歯車323も回転する。このとき、遊星歯車280により太陽歯車323の回転は増速され、太陽歯車323と共に回転する太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持されるウェイト340も回転を開始する。
【0060】
すると、遠心力によりウェイト340がケース10の内周壁に当接し、回転に対して抵抗力が生じる。そして、昇降コード3の移動速度が上昇すると、回転速度が上昇し、これにより遠心力が上昇する。遠心力が上昇すると、ウェイト340がケース10の内周壁により強く当接することになり、抵抗力が増加する。これにより、パネル4の降下時の昇降コード3の移動速度を低減させることができる。
【0061】
図16A及び図16Bは、パネル4の降下時に昇降コード3に加わる力の関係を説明するための概念図である。パネル4が降下している間、昇降コード3には、長手方向に沿ってパネル4の自重による一定の張力F1が加わる。仮に減速機構100を設置しなかった場合、パネル4は自由落下し、その降下速度はパネル4の下降に伴い単調に増加する。本実施形態に係る減速機構100を設置した場合、昇降コード3の長手方向に沿って張力F1とは反対の方向に減速機構100による抵抗力F2が加わる。パネル4の降下開始直後は抵抗力F2に対して張力F1が大きく、パネル4の降下速度が急激に上昇する。その後、パネル4の降下速度の上昇に伴い抵抗力F2が上昇し、それに伴いパネル4の加速度が減少し、降下速度の上昇が緩やかになる。張力F1と抵抗力F2が釣り合った時点(図16Bにおいて、パネルの鉛直方向の位置がXとなった時点)でパネル4の降下速度の上昇は止まり、降下速度は略一定となる。このようにして、パネル4をゆっくりと安全に降下させることができる。
【0062】
パネル4のサイズや厚みが大きい場合、パネル4の自重による張力F1に対して抵抗力F2が不十分であると、パネル4の降下速度が十分に低減されない可能性がある。特に、パネルの自重降下の開始直後からの抵抗力F2の上昇が遅い場合(言い換えれば、図16Bにおいてパネルが上限位置から降下を開始し位置Xに到達するまでの抵抗力F2の立ち上がりが遅い場合)、抵抗力F2に対して張力F1が大きい状態のまま降下速度がほとんど低減されずにパネル4が降下してしまうおそれがある。本実施形態に係る減速機構100において、遊星歯車280の回転に対して太陽歯車323は、(太陽歯車323の歯数+内歯車261の歯数)/(太陽歯車323の歯数)の速比で増速回転するため、この速比をパネル4の重さに応じて適切に設定することで、パネルの自重降下の開始から短時間で十分な抵抗力F2を実現することができる。また、ウェイト340の重さ又は数を適切に設定することで、抵抗力F2を調整してもよい。一方、減速機構100をオイルダンパにより構成する場合には、パネル4の重さに応じて適切な粘度の流体を用いることで、十分な抵抗力F2を実現することができる。
【0063】
なお、減速機構100をヘッドボックス2に設置する際の減速機構100の前後(図1の幅方向)の向きは、操作部8を下方へ引いてパネル4を引き上げる際に昇降コード3の挟着を解除し、操作部8を手放してパネル4を自重により降下させる際に昇降コード3を挟着する向きとすることが好適である。すなわち、昇降コード3が図3における前方に移動する向きをパネル4の下降する向きとし、昇降コード3が後方に移動する向きをパネル4の上昇する向きとする。また、ロック部9は、図1に示すように、減速機構100に対して幅方向の左側に配置される。
【0064】
このような向きに減速機構100を組み付けることで、パネル4を上昇させるため操作部8を下方に引っ張る場合には、張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とが離間するため、昇降コード3を小さな抵抗力で引くことができる。一方、パネル4が下降しきっていない状態且つロック部9により昇降コード3がロックされていない状態において、昇降コード3を離した場合には、パネル4は自重降下しようとする。この際、減速機構100が昇降コード3に制動力を付与するため、パネル4の下降速度が低減される。
【0065】
2.第2実施形態
2.1.全体構成
次に、図20及び図21を用いて第2実施形態に係るパネル昇降装置1について説明する。第2実施形態に係るパネル昇降装置1は、パネル4の鉛直方向における上限位置を決定するための上限位置決定手段が設けられており、また昇降コード3がその途中で分離可能に構成されており、さらにパネル4の上端に補強材4bが取り付けられている点で第1実施形態と異なっている。以下、その相違点について説明する。
【0066】
2.2.上限位置決定手段
本実施形態のパネル昇降装置1は、パネル4の鉛直方向における上限位置を決定するための上限位置決定手段として、昇降コード3上に球状のストッパ21を備える。ストッパ21は、図20に示すように、ヘッドボックス2から垂下され一端がパネル4に接続された昇降コード3上であって、ヘッドボックス2と当該一端との間に設けられている。パネル4が下限位置にある図20の状態から操作部8を操作しパネル4を上昇させると、図21のようにストッパ21がヘッドボックス2に当接し、これによりパネル4のさらなる上昇が規制される。このようにパネル4が上限位置に達した状態で操作部8から手を離すと、パネル4がわずかに自重降下した直後に昇降コード3がロック部9によりロックされ、パネル4が停止する。
【0067】
このような上限位置決定手段を設けることにより、商品の受け渡し等のためにパネル4を上昇させる際、必要最小限の大きさの隙間を安定して確保することができる。
【0068】
なお、本実施形態においては上限位置決定手段としてヘッドボックス2に当接する球状のストッパ21を用いたが、上限位置決定手段は上述した構成に限定されるものではなく、昇降コード3の移動を一定範囲に規制可能であればよい。
【0069】
2.3.昇降コード3の構成
上限位置決定手段として用いられるストッパ21は、図22A及び図22Bに示すように、相互に接続及び分離が可能な第1部材21a及び第2部材21bから構成されており、昇降コード3のうちパネル4に接続された一端を含む下側昇降コード3aと、下側昇降コード3aよりも鉛直方向の上側に配置された上側昇降コード3bとを分離可能に接続している。昇降コード3がヘッドボックス2から垂下された状態において鉛直方向の下側に位置する第1部材21aは、下側昇降コード3aに接続され、第1部材21aの上面にはネジ穴21b2が形成されている。第1部材21aに対して鉛直方向の上側に位置する第2部材21bは、上側昇降コード3bに接続され、第2部材21bの下面にはネジ穴21b2に対応するネジ部21b1が形成されている。ネジ部21b1及びネジ穴21b2の螺合及び分離により、下側昇降コード3a及び上側昇降コード3bの接続及び分離が可能となる。
【0070】
昇降コード3を上側昇降コード3b及び下側昇降コード3aに分離可能に構成することにより、パネル4の清掃や交換等のメンテナンスが容易となる他、使用状況の変更等に応じて異なるサイズのパネル4に容易に変更することが可能となる。
【0071】
なお、本実施形態においては上限位置決定手段としてのストッパ21において下側昇降コード3a及び上側昇降コード3bを分離可能に接続するよう構成しているが、下側昇降コード3a及び上側昇降コード3bの分離及び接続位置は当該構成に限定されるものではなく、昇降コード3上の他の位置に接続手段として別途部品を設けて分離可能に接続してもよい。また、下側昇降コード3a及び上側昇降コード3bの接続手段は、上述のようなネジ構造を利用したものに限定されず、分離可能な接続を実現可能な任意の手段を適用可能である。
【0072】
2.4.補強材4b
図20及び図21に示すように、本実施形態のパネル4の上端には、幅方向の左端から右端にわたって補強材4bが取り付けられている。補強材4bはパネル4の反りや撓みを抑制するためのものであり、補強材4bを取り付けることにより、パネル4が比較的薄い場合であってもその形状を平板状に保ちつつ安定して昇降することが可能となる。補強材4bの素材は特に限定されるものではなく、例えば、プラスチックや金属を用いることができる。
【0073】
3.他の実施形態
本発明は、以下の態様でも実施可能である。
上述した実施形態においては、昇降コード3をヘッドボックス2から引き出すことによりパネル4を上昇させ、パネル4の自重により昇降コード3をヘッドボックス2内へと引き戻すことによりパネル4を下降させているが、昇降コード3の移動を他の構成により実現することも可能である。例えば、昇降コード3の一端をパネル4に接続し、多端をヘッドボックス2内に取り付けられた巻取軸に接続し、巻取軸を回転させることによって昇降コード3の巻取り及び巻戻しを行うことによって、パネル4を昇降させてもよい。
【0074】
操作部8は、昇降コード3の移動方式に応じて適宜構成することができる。例えば、上述のように昇降コード3を巻取軸に対する巻取り及び巻戻しにより移動させる場合、ヘッドボックス2内に回転可能に取り付けられた操作プーリーにループ状の操作コードを装着し、当該操作コードを操作することにより操作プーリーを回転させ、その回転を巻取軸に伝達することによって巻取軸を回転させて昇降コード3を巻取ることができる。
【0075】
減速機構100の構成は、上述した実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態においては減速機構100の抵抗付与部RAを遠心ガバナにより構成したが、他の構成としてもよく、例えばオイルダンパにより構成してもよい。オイルダンパを用いる場合、運動変換部DTにより昇降コード3の運動を回転運動に変換した後、当該回転運動を粘性流体(オイル)中に設置された移動部材に伝達し、当該移動部材が粘性流体中を移動又は回転して粘性抵抗を生じさせることにより、抵抗力を付与することができる。
【0076】
また、減速機構100の構成は、昇降コード3の移動方式に応じて適宜構成することができる。上述した実施形態においては、ヘッドボックス2内において昇降コード3が直線運動により移動するため、当該移動を回転運動に変換する運動変換部DTを減速機構100に導入した。一方、昇降コード3を巻取軸への巻取り及び巻戻しにより移動させる場合、巻取軸の回転運動を直接(運動変換部DTを介することなく)減速機構100に伝達する構成とすることも可能である。
【0077】
上限位置決定手段及び下限位置決定手段は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、他の構成により実現することも可能である。例えば、上述のように昇降コード3を巻取軸に対する巻取り及び巻戻しにより移動させる場合、ネジ軸、ネジ軸に沿って移動する移動部材、及び移動部材と当接可能な当接部を備えるリミット装置を設け、巻取軸の回転に伴ってネジ軸を回転させて移動部材を移動させ、移動部材が当接部に当接するとネジ軸の回転が停止、それに伴い巻取軸の回転が停止するように構成することで、パネル4を所望の上限位置又は下限位置に停止させるようにしてもよい。
【0078】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1:パネル昇降装置、2:ヘッドボックス、3:昇降コード、3a:下側昇降コード、3b:上側昇降コード、4:パネル、4a:挿通孔、4b:補強材、5:支持部材、6:台、7:コードイコライザ、8:操作部、9:ロック部、10:ケース、11:天壁部、12a:内壁面、12b:後側壁部、12f:前側壁部、12l:左側壁部、12r:右側壁部、13:鍔部、13C:円筒部、15d:内壁、16:第1天壁溝、16a:第1ガイド壁、17:第2天壁溝、17a:第2ガイド壁、19:係合孔、20:下限位置調整手段、20a:突起、20b:第1通過孔、20c:第2通過孔、20d:押圧部、20e:スプリング、20f:筒部、21:ストッパ、21a:第1部材、21b:第2部材、21b1:ネジ部、21b2:ネジ穴、30:張力伝達ローラ、31:軸芯、40:アイドルローラ、41:軸芯、42:ローラ部、50:ピニオンギア、70:ベース、81:操作コード、82:操作用イコライザ、100:減速機構、111a:第1係合溝、111b:第2係合溝、112:カバー部、113:ガイド溝、114:支持溝、115:内周ギア、118:溝、200:整列部材、220:スライダー、221:天壁部、222:後側壁部、223:底壁部、224:前側壁部、225:貫通孔、226:第1天壁溝、227:第2天壁溝、228:第1底壁溝、229:第2底壁溝、230:突起、231:凹部、240:ローレット、241:ワッシャー、260:内歯付キャリア、261:内歯車、262:フランジ、263:支持軸、264:円柱部、280:遊星歯車、300:プレート、320:太陽歯車付ウェイトホルダ、321:凸部、322:凹部、323:太陽歯車、324:リング部、340:ウェイト、341:突起、701a:第1係合板部、701b:第2係合板部、702:取付筒、706:第1ベース溝、707:第2ベース溝、708:円柱部、DT:運動変換部、RA:抵抗付与部、SP:コイルスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22