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特開2022-135478ポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135478
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布
(51)【国際特許分類】
   D21H 13/20 20060101AFI20220908BHJP
   D04H 1/4326 20120101ALI20220908BHJP
【FI】
D21H13/20
D04H1/4326
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035306
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯田園 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光男
(72)【発明者】
【氏名】宮城 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】江角 真一
【テーマコード(参考)】
4L047
4L055
【Fターム(参考)】
4L047AA26
4L047AA28
4L047AB02
4L047BA21
4L047CB01
4L047CC12
4L055AF30
4L055AF44
4L055CF03
4L055EA07
4L055EA16
4L055FA13
4L055GA01
4L055GA39
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、装置形態に加工する工程において、不織布の破れが生じ難いポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布を提供することである。
【解決手段】ポリフェニレンサルファイド繊維のみからなり、延伸ポリフェニレンサルファイド繊維及び未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を含有するポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布において、該不織布の破裂強度が220kPa以上500kPa以下であることを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンサルファイド繊維のみからなり、延伸ポリフェニレンサルファイド繊維及び未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を含有するポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布において、該不織布の破裂強度が220kPa以上500kPa以下であることを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布。
【請求項2】
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の繊維長が10mm以上、30mm以下である請求項1に記載のポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維は、耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性能、吸湿時の寸法安定性、絶縁性、難燃性、保温性に優れている高機能繊維であるため、用途が拡大している。例えば、高温のガス集塵に用いるフィルター、特殊な工業用フィルター及びフィルター基材、分離膜用基材、工業製品の乾燥工程に使用するドライヤー用カンバス、オフィス用コピー機のロール拭き取り材、電気機器や電子機器の絶縁材、成型材、緩衝材(クッション材)、保温布、電池用セパレータ等の用途が挙げられる。
【0003】
PPS繊維からなる不織布として、湿式抄紙法で製造されたPPS繊維含有湿式不織布が知られている。例えば、延伸PPS繊維と未延伸PPS繊維とを併用するPPS繊維含有湿式不織布が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。湿式抄紙法で湿式不織布を製造する場合、抄紙網で製造された湿紙から搾水するウェットプレス部、湿紙を乾燥機まで搬送する工程等が存在する。延伸PPS繊維と未延伸PPS繊維とを含有してなるPPS繊維含有湿式不織布では、ウェットプレス部や搬送工程で断紙が起こりやすいという問題があった。そして、PPS繊維の乾熱収縮率を下げることで低目付でも熱寸法安定性の高い湿式不織布が得られることが知られている(例えば、特許文献4参照)。この場合、湿紙及び湿式不織布の比引張強さが十分に確保できないという問題があった。これに対し、特許文献5では、異型断面を有するPPS繊維を含有することで、抄紙時のウェットプレス部や搬送工程で断紙が発生し難くなると記載されており、特許文献6では、PPS繊維に捲縮を付与することで、低目付で高強力なシートを得られると記載されている。しかし、いずれにおいても、依然として、湿式不織布を複合化し、装置形態に加工する際、不織布の破れ等が生じる場合があり、さらに高い機械的強度が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-272899号公報
【特許文献2】特開2010-24574号公報
【特許文献3】特開2011-106043号公報
【特許文献4】特開2004-285536号公報
【特許文献5】特開2020-066818号公報
【特許文献6】特開平9-67786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、装置形態に加工する工程において、不織布の破れが生じ難いポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、下記発明によって解決することができる。
【0007】
(1)ポリフェニレンサルファイド繊維のみからなり、延伸ポリフェニレンサルファイド繊維及び未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を含有するポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布において、該不織布の破裂強度が220kPa以上500kPa以下であることを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布。
【0008】
(2)延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の繊維長が10mm以上、30mm以下である(1)に記載のポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置形態に加工する工程において、不織布の破れが生じ難いポリフェニレンサルファイド繊維含有湿式不織布を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ねじ締め耐性試験において、蓋と瓶の間にPPS繊維含有湿式不織布を挿み、蓋を閉栓及び開栓した後のPPS繊維含有湿式不織布の状態(破れが発生していない)を示した写真である。
図2】ねじ締め耐性試験において、蓋と瓶の間にPPS繊維含有湿式不織布を挿み、蓋を閉栓及び開栓した後のPPS繊維含有湿式不織布の状態(破れが発生している)を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維含有湿式不織布は、PPS繊維のみでからなり、延伸PPS繊維及び未延伸PPS繊維を含有し、不織布の破裂強度が220kPa以上、500kPa以下であることを特徴としている。本発明のPPS繊維含有湿式不織布は、主体繊維として延伸PPS繊維を含有し、バインダー繊維として未延伸PPS繊維を含有している。未延伸PPS繊維は、大部分が非結晶構造であり、熱を加えることで溶融し、バインダー繊維として働くことができる。延伸PPS繊維は、繊維製造工程において延伸を加えられることで、繊維の単繊維強度が強く、寸法安定性に優れており、未延伸PPS繊維のバインダー効果が発現する温度まで加熱しても、延伸PPS繊維は溶融・変形し難く、不織布の骨格を形成する役割を果たす。本発明において、延伸PPS繊維及び未延伸PPS繊維を使用した場合には、耐熱性及び耐薬品性を併せ備えたPPS繊維含有湿式不織布を提供することが容易になる。
【0012】
ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylenesulfide)繊維とは、ポリマー構成単位として-(C-S)-を主要構造単位とする重合体(PPS重合体)からなる合成繊維である。PPS重合体の代表例としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドスルホン、ポリフェニレンサルファイドケトン等が挙げられる。また、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体等も挙げられる。さらに、前記重合体の混合物が挙げられる。特に好ましいPPS重合体としては、ポリマーの主要構造単位として、-(C-S)-で表されるp-フェニレン単位を、好ましくは90質量%以上含有するPPS重合体が挙げられる。
【0013】
本発明のPPS繊維含有湿式不織布において、延伸PPS繊維の含有量は、全繊維量に対して35質量%以上、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、60質量%以下である。また、未延伸PPS繊維の含有量は、全繊維量に対して30質量%以上、65質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、60質量%以下である。延伸PPS繊維の含有量が70質量%よりも多くなると、繊維同士を接着させるバインダー効果が不足し、不織布として十分な機械的強度が得られない場合がある。また、未延伸PPS繊維の含有量が65質量%よりも多くなると、熱圧加工時に幅方向の収縮が大きくなり、プロファイルを悪化させる場合がある。
【0014】
湿式抄紙法における製造効率を考慮すると、PPS繊維の直径は、好ましくは0.1~30μmであり、より好ましくは1.0~25μmであり、さらに好ましくは2~20μmである。PPS繊維の直径が0.1μm未満の場合、湿式抄紙機の抄紙網から脱落してしまう場合がある。一方、PPS繊維の直径が30μmを超えた場合、スラリー中での繊維同士の絡み度合いが不十分になり、繊維間の接点が少なくなり過ぎて、機械的強度の維持が困難になる場合がある。なお、異型断面を有するPPS繊維の直径は、湿式不織布を鋭利な刃物でカットして、その断面を2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した繊維100本の各面積から真円の直径として算出した各繊維の直径の算術平均値である。
【0015】
本発明において、延伸PPS繊維の繊維長は、好ましくは5~35mmであり、より好ましくは10~30mmであり、さらに好ましくは15~25mmである。5mm未満の場合、湿紙強度が十分に向上せず、断紙が起こりやすくなる恐れがある。また、得られたPPS繊維含有湿式不織布を装置形態に加工する際に機械的強度が不足し、破れ等が発生する場合がある。一方、35mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こす場合があり、均一な地合が得られない場合がある。
【0016】
本発明において、未延伸PPS繊維の繊維長は、好ましくは1~30mmであり、より好ましくは2~27mmであり、さらに好ましくは3~20mmである。1mm未満の場合、湿式抄紙機の抄紙網から脱落してしまう場合があり、十分な機械的強度が得られない場合がある。一方、30mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こす場合があり、均一な地合が得られない場合がある。
【0017】
本発明のPPS繊維含有湿式不織布の破裂強度は、220kPa以上500kPa以下であり、より好ましくは220kPa以上400kPa以下であり、さらに好ましくは230kPa以上350kPa以下である。破裂強度が220kPaに満たない場合は機械的強度が不十分であり、装置形態に加工する際に不織布の破れ等が発生し、加工性が低下する。破裂強度が500kPaを超えた場合、PPS繊維含有湿式不織布の密度が高くなり過ぎる場合がある。その結果として、空隙が低下するため、不織布としての通気性や保水性が低下する問題がある。
【0018】
本発明のPPS繊維含有湿式不織布の破裂強度を220kPa以上500kPa以下にする方法としては、
(1)湿式不織布の坪量を高くする。
(2)主体繊維の繊維長を長くする。
(3)湿紙を熱ロールの表面温度100~180℃、圧力100~800N/cmの好ましい範囲に調整して熱圧乾燥する。
(4)湿式不織布原紙を熱ロールの表面温度100~260℃、ニップ圧力190~1800N/cmのより好ましい範囲に調整して熱圧加工する。
(5)異型断面形状の繊維を含有する。
等が挙げられる。
【0019】
本発明のPPS繊維含有湿式不織布は、湿式抄紙法で製造された湿式不織布である。まず、繊維を均一に水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通し、スラリーを調製する。スラリーの最終繊維濃度は、好ましくは0.01~0.50質量%である。該スラリーが、抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。工程中で、分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
【0020】
抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網を単独で使用した抄紙機、同機種又は異種の2以上の抄紙網がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を使用することができる。また、不織布が2層以上の多層構造の場合は、各々の抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する「抄き合わせ法」や、一方の層を形成した後に、該層上に繊維を分散したスラリーを流延して積層とする「流延法」等で、不織布を製造することができる。繊維を分散したスラリーを流延する際に、先に形成した層は湿紙状態であっても、乾燥状態であってもいずれでも良い。また、2枚以上の乾燥状態の層を熱融着させて、多層構造の不織布とすることもできる。
【0021】
湿式抄紙法では、抄紙網で製造され、ウェットプレス部で搾水された湿紙を、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等の乾燥機で乾燥することによって、湿式不織布原紙が得られる。湿紙の乾燥の際に、ヤンキードライヤー等の熱ロールに密着させて熱圧乾燥させることによって、密着させた面の平滑性が向上する。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押しつけて乾燥させることを言う。熱ロールの表面温度は、好ましくは100~180℃であり、より好ましくは120~160℃である。圧力は、好ましくは50~1000N/cmであり、より好ましくは100~800N/cmである。
【0022】
次に、熱ロールによる熱圧加工について説明するが、本発明は下記説明に限定されない。熱圧加工装置(カレンダー装置)において、ニップされているロール間に湿式不織布原紙が通されることによって、湿式不織布原紙が熱圧加工される。ロールの組み合わせとしては、2本の金属ロール、金属ロールと樹脂ロール、金属ロールとコットンロール等が挙げられる。2本のロールのうち、少なくとも一方のロールが加熱されて、熱ロールとして使用される。主に、金属ロールが熱ロールとして使用される。熱ロールによる熱圧加工は2回以上行うことも可能であり、その場合、直列に配置された2組以上の上記のロール組み合わせを使用しても良いし、1組のロール組み合わせを用いて、2回加工しても良い。必要に応じて、湿式不織布原紙の表裏を逆にしても良い。熱ロールの表面温度、ロール間のニップ圧力、加工速度を制御することによって、所望のPPS繊維含有湿式不織布が得られる。
【0023】
熱圧加工の際、熱ロールの表面温度は、好ましくは100~260℃であり、より好ましくは150~250℃である。熱ロールの温度が100℃より低いと、未延伸PPS繊維の溶融が進まず、繊維-繊維間の結着が進まない場合がある。また、熱ロールの温度が260℃より高いと、PPS繊維含有湿式不織布を構成する繊維が、熱ロールに貼り付き、不織布表面の均一性を損なう場合がある。
【0024】
熱圧加工時のニップのニップ圧力は、好ましくは190~1800N/cmであり、より好ましくは200~1400N/cmである。加工速度は、好ましくは5~150m/minであり、より好ましくは10~80m/minである。
【0025】
本発明のPPS繊維含有湿式不織布は、単層であっても良く、各層の繊維配合が同一である多層構造であっても良く、各層の繊維配合が異なった多層構造であっても良い。単層構造に比べ多層構造である場合、各層の坪量が下がることにより、スラリーの繊維濃度を下げることができるため、PPS繊維含有湿式不織布の地合の均一性が向上する。また、各層の地合が不均一であった場合でも、積層することで補填できる。さらに、抄紙速度を上げることができ、操業性が向上するという効果も得られる。
【0026】
本発明のPPS繊維含有湿式不織布の坪量は、好ましくは20~150g/mであり、より好ましくは30~100g/mである。坪量が20g/m未満では、不織布の機械的強度が低くなる場合がある。坪量が150g/mを超えると、厚みが増して装置形態へ組み込む加工の際に、切断や折り等の加工性が低下する問題が発生する。
【0027】
本発明のPPS繊維含有湿式不織布の密度は、好ましくは0.20~0.90g/cmであり、より好ましくは0.30~0.70g/cmである。密度が0.20g/cm未満の場合には、装置形態への加工に際し、十分な機械的強度が得られない場合がある。一方、密度が0.90g/cmを超えると、空隙が低下するため、不織布としての通気性や保水性が低下する問題が発生する。
【0028】
PPS繊維含有湿式不織布の厚みは、50~300μmであることが好ましく、60~200μmであることがより好ましく、70~150μmであることがさらに好ましい。不織布の厚みが300μmを超えると、装置形態に組み込めなくなることがある。一方、50μm未満の場合、十分な機械的強度が得られない場合がある。
【0029】
本発明のPPS繊維含有湿式不織布の通気度は、特に限定しないが、10~200cm/cm・secが好ましく、より好ましくは10~150cm/cm・secである。不織布の通気度が10cm/cm・sec未満の場合、空隙が低下するため、不織布としての通気性や保水性が低下する問題がある。通気度が200cm/cm・secを超える場合、十分な機械的強度が得られない問題が発生する。
【実施例0030】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における部や百分率は断りのない限り、全て質量によるものである。
【0031】
<PPS繊維1>
断面形状が三つ葉形状であり、繊度1.3デシテックス、直径11μm、繊維長5mmの異型断面を有する延伸PPS繊維を「PPS繊維1」とした。
【0032】
<PPS繊維2>
断面形状が三つ葉形状であり、繊度1.3デシテックス、直径11μm、繊維長10mmの異型断面を有する延伸PPS繊維を「PPS繊維2」とした。
【0033】
<PPS繊維3>
断面形状が円形断面形状であり、繊度1.1デシテックス、直径10μm、繊維長10mmの延伸PPS繊維を「PPS繊維3」とした。
【0034】
<PPS繊維4>
断面形状が三つ葉形状であり、繊度1.3デシテックス、直径11μm、繊維長15mmの異型断面を有する延伸PPS繊維を「PPS繊維4」とした。
【0035】
<PPS繊維5>
断面形状が三つ葉形状であり、繊度1.3デシテックス、直径11μm、繊維長20mmの異型断面を有する延伸PPS繊維を「PPS繊維5」とした。
【0036】
<PPS繊維6>
断面形状が三つ葉形状であり、繊度1.3デシテックス、直径11μm、繊維長25mmの異型断面を有する延伸PPS繊維を「PPS繊維6」とした。
【0037】
<PPS繊維7>
断面形状が三つ葉形状であり、繊度1.3デシテックス、直径11μm、繊維長30mmの異型断面を有する延伸PPS繊維を「PPS繊維7」とした。
【0038】
<PPS繊維8>
断面形状が三つ葉形状であり、繊度1.3デシテックス、直径11μm、繊維長35mmの異型断面を有する延伸PPS繊維を「PPS繊維8」とした。
【0039】
<PPS繊維9>
断面形状が三つ葉形状であり、繊度2.6デシテックス、直径16μm、繊維長5mmの異型断面を有する未延伸PPS繊維を「PPS繊維9」とした。
【0040】
<PPS繊維10>
断面形状が三つ葉形状であり、繊度2.6デシテックス、直径16μm、繊維長10mmの異型断面を有する未延伸PPS繊維を「PPS繊維10」とした。
【0041】
〈PPS繊維11〉
断面形状が円形断面形状であり、繊度1.7デシテックス、直径13μm、繊維長10mmの未延伸PPS繊維を「PPS繊維11」とした。
【0042】
[実施例1]
PPS繊維2:PPS繊維10=50:50の繊維配合で、分散濃度0.2%で5分間、繊維を水に分散し、傾斜ワイヤー抄紙機で湿紙を形成した後、表面温度160℃、タッチロール圧力100N/cmのヤンキードライヤーにて熱圧乾燥し、目標坪量を40g/mとして、湿式不織布原紙を得た。
【0043】
得られた湿式不織布原紙を、加熱した金属ロール(熱ロール)と樹脂ロールの組み合わせのカレンダー装置を用いて、熱ロール温度240℃、ニップ圧力600N/cm、加工速度20m/minの条件で熱圧加工を行い、PPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0044】
[実施例2]
PPS繊維3:PPS繊維10=50:50の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0045】
[実施例3]
熱圧乾燥でのタッチロール圧力600N/cmに変えた以外は、実施例1と同じ方法で得られた湿式不織布原紙をPPS繊維含有湿式不織布とした。
【0046】
[実施例4]
PPS繊維4:PPS繊維10=50:50の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0047】
[実施例5]
PPS繊維5:PPS繊維10=50:50の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0048】
[実施例6]
PPS繊維5:PPS繊維11=50:50の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0049】
[実施例7]
PPS繊維5:PPS繊維10=50:50の繊維配合で、目標坪量を25g/mに変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0050】
[実施例8]
PPS繊維5:PPS繊維10=50:50の繊維配合で、目標坪量を30g/mに変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0051】
[実施例9]
PPS繊維5:PPS繊維10=50:50の繊維配合で、目標坪量を80g/mに変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0052】
[実施例10]
PPS繊維5:PPS繊維10=50:50の繊維配合で、目標坪量を100g/mに変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0053】
[実施例11]
PPS繊維6:PPS繊維10=50:50の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0054】
[実施例12]
PPS繊維7:PPS繊維10=50:50の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0055】
[実施例13]
PPS繊維8:PPS繊維10=35:65の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0056】
[実施例14]
PPS繊維2:PPS繊維5:PPS繊維10=25:25:50の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0057】
[実施例15]
PPS繊維1:PPS繊維5:PPS繊維10=15:35:50の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0058】
[実施例16]
PPS繊維5:PPS繊維9:PPS繊維10=50:25:25の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0059】
[実施例17]
PPS繊維5:PPS繊維10=35:65の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0060】
[実施例18]
PPS繊維5:PPS繊維10=40:60の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0061】
[実施例19]
PPS繊維5:PPS繊維10=70:30の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0062】
[比較例1]
PPS繊維1:PPS繊維9=50:50の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0063】
[比較例2]
PPS繊維8:PPS繊維10=50:50の繊維配合に変え、得られた湿式不織布原紙をニップ圧力2000N/cm、加工速度10m/minの条件で熱圧加工を行った以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0064】
[比較例3]
PPS繊維5:PPS繊維10=30:70の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0065】
[比較例4]
PPS繊維5:PPS繊維10=80:20の繊維配合に変えた以外は、実施例1と同じ方法でPPS繊維含有湿式不織布を得た。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例及び比較例において、坪量及び破裂強度を測定し、フラジール通気度、引張強度、地合及びねじ締め耐性試験の評価を行い、結果を表2に示した。
【0068】
(坪量)
JIS P 8124:2011に準拠して、PPS繊維含有湿式不織布を100mm×100mmにカットして試験片とし、電子分析天秤(島津製作所社製)を用いて20枚測定した各値の平均値を坪量とした。
【0069】
(破裂強度)
破裂強度の測定方法としては、50mm×50mmの試験片を5枚採取し、JIS L 1096の6.16.1 A法に従い、ミューレン形破壊試験機を用いて試験片を破裂させるのに要する力(kPa)を測定し、その平均値を示した。
【0070】
(通気度)
JIS L 1096:2010に準拠して、フラジール法による通気度を測定した。PPS繊維含有湿式不織布を200mm×200mmにカットして試験片とし、通気度試験機(カトーテック株式会社製、商品名:KES-F8-AP1)を用いて5枚測定した各値の平均値を通気度とした。
【0071】
(引張強度)
機械的強度は、引張強度を評価した。JIS P 8113:2006に準拠して、定速緊張形引張試験機「シングルコラム型材料試験機、型番:STB-1225S」(エー・アンド・デイ社製)を用いて、チャック間距離100mmに設定し、チャックの移動速度を100mm/分として、定速で引張り、引張試験用試料が破断した際の強度を引張強度とした。引張強度は縦方向(MD方向)と横方向(CD方向)をそれぞれ10枚測定し、相乗平均を算出した。
【0072】
(地合)
PPS繊維含有湿式不織布について、それぞれ300mm×300mmに断裁し、繊維ダマ、ヨレの状態を観察した。
【0073】
◎:繊維ダマやヨレが全く見られず、均一性が非常に良好。
○:直径5mm以下の小さなダマやヨレが1~3箇所見られるが、均一性が良好。
△:直径5mm以下の小さなダマやヨレが4~10箇所見られるが、使用可能な範囲。
×:直径5mm以下の小さなダマやヨレが11箇所以上、または直径が5mmより大きいダマが見られ、均一性不良。実用上問題がある。
【0074】
(ねじ締め耐性試験)
装置形態への加工性を評価するねじ締め耐性試験は次の方法で行った。液漏れ防止の嵌合部を有するポリプロピレン(PP)製広口瓶(商品名:アイボーイ(登録商標) 250ML)の蓋(スクリューキャップ)と瓶の間にPPS繊維含有湿式不織布を挿み、スクリューキャップを閉栓した後に開栓し、PPS繊維含有湿式不織布の状態を確認した。図1は、スクリューキャップ閉栓時に破れが発生しなかったPPS繊維含有湿式不織布の写真である。図2は、スクリューキャップ閉栓時に破れが発生したPPS繊維含有湿式不織布の写真である。PPS繊維含有湿式不織布が破れ、切れ、不織布が伸びたことによる透け等により、最終用途として機能できない状態になるまで、同一不織布の同じ箇所を繰り返しねじ締め耐性試験を行い、ねじ締めを行った回数から以下の評価基準にて評価した。
【0075】
◎:15回以上のねじ締めに耐え、非常に良好なレベル。
○:10回以上15回未満のねじ締めに耐え、良好なレベル。
△:5回以上10回未満のねじ締めに耐え、使用可能なレベル。
×:5回未満のねじ締めで破れ、切れ又は透けが発生し、使用不可レベル。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例1~19と比較例1~4を比較することで、PPS繊維のみからなり、延伸PPS繊維及び未延伸PPS繊維を含有し、不織布の破裂強度が220kPa以上500kPa以下である実施例1~19のPPS繊維含有湿式不織布は、不織布の破裂強度が220kPa未満である比較例1、3及び4のPPS繊維含有湿式不織布と比較して、ねじ締め耐性に優れ、不織布の破裂強度が500kPa超である比較例2のPPS繊維含有湿式不織布と比較して、地合の均一性に優れ、また、通気度に優れていることが分かる。
【0078】
実施例12、13及び17を比較すると、繊維長が30mm超である延伸PPS繊維を含んでいる実施例13のPPS繊維含有湿式不織布と比較して、実施例12及び17のPPS繊維含有湿式不織布は、地合の均一性に優れることが分かる。また、実施例4、14及び15を比較すると、繊維長が10mm未満である延伸PPS繊維を含んでいる実施例15のPPS繊維含有湿式不織布と比較して、実施例4及び14のPPS繊維含有湿式不織布は、ねじ締め耐性及び引張強度に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のPPS繊維含有湿式不織は、高温のガス集塵に用いるフィルター、特殊な工業用フィルター及びフィルター基材、分離膜用基材、工業製品の乾燥工程に使用するドライヤー用カンバス、オフィス用コピー機のロール拭き取り材、電気機器や電子機器の絶縁材、成型材、緩衝材(クッション材)、保温布、電池用セパレータ等に利用することができる。
図1
図2