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特開2022-135499水底土攪拌装置および水田水混濁装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135499
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】水底土攪拌装置および水田水混濁装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/22 20180101AFI20220908BHJP
   B01F 31/80 20220101ALI20220908BHJP
【FI】
A01G22/22 A
B01F11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035340
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】天野 大器
(72)【発明者】
【氏名】大川 透
(72)【発明者】
【氏名】奥野木 雅和
【テーマコード(参考)】
4G036
【Fターム(参考)】
4G036AB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水底の土壌に太陽光が届くことを防止することができ、メンテナンス性が良好な水底土攪拌装置および水田水混濁装置の提供。
【解決手段】振動子32を有する超音波発生手段と、中空の筒部42と、前記筒部42の一方の端部に接続しており前記振動子32が配置される底部44と、を有し、前記筒部42の他方の端部には開口が形成される波ガイド部材40と、を有する水底土攪拌装置10。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子を有する超音波発生手段と、
中空の筒部と、前記筒部の一方の端部に接続しており前記振動子が配置される底部と、を有し、前記筒部の他方の端部には開口が形成される波ガイド部材と、を有する水底土攪拌装置。
【請求項2】
前記筒部は、硬質部材で形成されることを特徴とする請求項1に記載の水底土攪拌装置。
【請求項3】
前記振動子は、圧電材料を有することを特徴とする請求項1に記載の水底土攪拌装置。
【請求項4】
前記超音波発生手段は、水中で動作するように防水処理されており前記振動子を駆動する駆動制御部を有する請求項1から請求項3までのいずれかに記載の水底土攪拌装置。
【請求項5】
前記筒部の外周部には、水底土壌に接触する設置部が形成されている請求項1から請求項3までのいずれかに記載の水底土攪拌装置。
【請求項6】
振動子を有する振動発生手段と、
中空の筒部と、前記筒部の一方の端部に接続しており前記振動子が配置される底部と、を有し、前記筒部の他方の端部には開口が形成される波ガイド部材と、を有する水田水混濁装置。
【請求項7】
前記振動発生手段は、前記振動子が超音波振動する超音波発生手段であることを特徴とする請求項6に記載の水田水混濁装置。
【請求項8】
前記筒部は、硬質部材で形成されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の水田水混濁装置。
【請求項9】
前記振動子は、圧電材料を有することを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれかに記載の水田水混濁装置。
【請求項10】
太陽光を電力に変換する太陽電池と、
前記太陽電池によって生じた電力を、前記振動発生手段において前記振動子を駆動する駆動制御部に対して供給する電力供給部と、をさらに有する請求項6から請求項9までのいずれかに記載の水田水混濁装置。
【請求項11】
明るさを検知する照度計を有し、
前記振動発生手段において前記振動子を駆動する駆動制御部は、前記照度計が検出した明るさに応じて、前記振動子の駆動を変化させることを特徴とする請求項6から請求項10までのいずれかに記載の水田水混濁装置。
【請求項12】
前記筒部の一方の端部から他方の端部へ向かう方向が水平方向に略一致するように、前記波ガイド部材を水田の水底土壌に対して固定する固定設置部を有する請求項6から請求項11までのいずれかに記載の水田水混濁装置。
【請求項13】
水の透明度または濁度を検出する検出部を有し、
前記振動発生手段において前記振動子を駆動する駆動制御部は、前記検出部の検出結果に応じて、前記振動子の駆動を変化させることを特徴とする請求項6から請求項12までのいずれかに記載の水田水混濁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底土壌を攪拌する水底土攪拌装置および水田の水を混濁させる水田水混濁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イネなどを耕作する水田や浅い池の湖底には、太陽光が届くため、光合成を行う植物が発芽して育つことができる。たとえば、水田の土壌からは、水田雑草などが発芽して育つ場合があり、このような水田での雑草の発生は、育成対象であるイネなどの生育に悪影響を与えることが報告されている。
【0003】
農薬以外の方法で水田における雑草の発生を抑制する技術として、水田の水面を遮光シートで覆う方法や、除草ロボット(特許文献1参照)により除草を行う方法などが提案されている。しかしながら、水面を遮光シートで覆う方法では、広いシートを水面に安定して配置することが難しく、シートの廃棄処理についても課題がある。また、現状提案されている除草ロボットは、粘土質の土壌を車軸などの可動部分に巻き込む問題があり、安定した可動やメンテナンス性の観点で課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-41921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、水底の土壌に太陽光が届くことを防止することができ、メンテナンス性が良好な水底土攪拌装置および水田水混濁装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る水底土攪拌装置は、振動子を有する超音波発生手段と、
中空の筒部と、前記筒部の一方の端部に接続しており前記振動子が配置される底部と、を有し、前記筒部の他方の端部には開口が形成される波ガイド部材と、を有する。
【0007】
本発明に係る土壌攪拌装置は、振動子により超音波を発生させ、これを波ガイド部材により効率的に水底土壌の表面に当てることができる。そのため、本発明に係る土壌攪拌装置は、水底の土壌を効果的に攪拌して水を濁らせ、水底の土壌に太陽光が届くことを防止することができる。また、本発明に係る土壌攪拌装置は、機械的な可動部分が少なく動きも小さいため安定的に動作することができ、メンテナンス性が良好である。
【0008】
また、たとえば、本発明に係る土壌攪拌装置において、前記筒部は、硬質部材で形成されていてもよい。
【0009】
筒部が、硬質部材で形成されていることにより、振動子で生じた超音波を筒部の壁面で吸収してしまうことを防止し、このような波ガイド部材は、振動子で生じた超音波を効率的に開口へガイドすることができる。
【0010】
また、たとえば、前記振動子は、圧電材料を有してもよい。
【0011】
振動子が圧電材料を有することにより、振動子自体を小型化することができ、また、土壌を攪拌するために必要なエネルギーを容易に発生させることができる。
【0012】
また、たとえば、前記超音波発生手段は、水中で動作するように防水処理されており前記振動子を駆動する駆動制御部を有してもよい。
【0013】
防水処理した駆動制御部を有することにより、装置を小型化して、駆動制御部を含むユニットを水中に配置することができる。
【0014】
また、たとえば、前記筒部の外周部には、水底土壌に接触する設置部が形成されていてもよい。
【0015】
外周部に設置部を形成することにより、筒部の一方の端部から他方の端部へ向かう方向が水平方向に略一致する姿勢で、水底土攪拌装置を容易に設置することができる。
【0016】
本発明に係る水田水混濁装置は、
振動子を有する振動発生手段と、
中空の筒部と、前記筒部の一方の端部に接続しており前記振動子が配置される底部と、を有し、前記筒部の他方の端部には開口が形成される波ガイド部材と、を有する。
また、たとえば、振動発生手段は、前記振動子が超音波振動する超音波発生手段であってもよい。
【0017】
本発明に係る水田水混濁装置は、振動子により振動を発生させ、これを波ガイド部材により効率的に水田における水底土壌の表面に当てることができる。そのため、本発明に係る水田水混濁装置は、水底の土壌を効果的に攪拌して水を濁らせ、水田における水底の土壌に太陽光が届くことを防止することができる。
【0018】
これにより、水田水混濁装置は、水田の土壌から雑草などが発芽して育つことを防止し、イネなどの育成植物の育成環境を良好に保つことができる。また、本発明に係る水田水混濁装置は、機械的な可動部分が少なく動きも小さいため安定的に動作することができ、メンテナンス性が良好である。
【0019】
本発明に係る水田水混濁装置において、振動発生手段は、超音波振動以外の振動を生じるものであってもよいが、超音波振動を生じる超音波発生手段であることにより、より効果的に水底の土壌を攪拌して水を濁らせることができる。
【0020】
また、たとえば、前記筒部は、硬質部材で形成されていてもよく、前記振動子は、圧電材料を有していてもよい。
【0021】
筒部が、硬質部材で形成されていることにより、振動子で生じて水中を伝わる振動波を筒部の壁面で吸収してしまうことを防止し、波ガイド部材は、振動波を効率的に開口へガイドすることができる。振動子が圧電材料を有することにより、振動子自体を小型化することができ、また、水田水を混濁するために必要なエネルギーを容易に発生させることができる。
【0022】
また、たとえば、本発明に係る水田水混濁装置は、
太陽光を電力に変換する太陽電池と、
前記太陽電池によって生じた電力を、前記振動発生手段において前記振動子を駆動する駆動制御部に対して供給する電力供給部と、をさらに有してもよい。
【0023】
このような水田水混濁装置は、イネの育成のために必要である太陽光によるクリーンなエネルギーを用いて、効果的に水田における雑草の発生を抑制できる。また、天候や時間帯により太陽光が弱くなると、水を濁らせて太陽光を遮蔽する必要性も低くなる。そのため、このような水田水混濁装置は、水を濁らせて太陽光を遮蔽したいタイミングに同期して、太陽電池においてより大きな電力が生じて、電力供給部から振動子に電力が供給される。したがって、このような水田水混濁装置は、シンプルな構成で、効果的に水田における雑草の発生を抑制できる。
【0024】
また、たとえば、本発明に係る水田水混濁装置は、明るさを検知する照度計を有してもよく、
前記振動発生手段において前記振動子を駆動する駆動制御部は、前記照度計が検出した明るさに応じて、前記振動子の駆動を変化させてもよい。
【0025】
このような水田水混濁装置は、たとえば照度が高いタイミングで振動子を駆動して水を濁らせ、照度が低いタイミングでは振動子の駆動を停止するなどして、電力の消費を抑えつつ、効果的に水田における雑草の発生を抑制できる。
【0026】
また、たとえば、本発明に係る水田水混濁装置は、前記筒部の一方の端部から他方の端部へ向かう方向が水平方向に略一致するように、前記波ガイド部材を水田の水底土壌に対して固定する固定設置部を有してもよい。
【0027】
このような水田水混濁装置は、筒部の一方の端部から他方の端部へ向かう方向が水平方向に略一致することにより、振動子で生じた振動波を効果的に土壌表面に伝えて水田水を濁らせることができる。また、筒部が固定されることにより、筒部の向きや姿勢が外力により変わることを防止できる。
【0028】
また、たとえば、発明に係る水田水混濁装置は、水の透明度または濁度を検出する検出部を有してもよく、
前記振動発生手段において前記振動子を駆動する駆動制御部は、前記検出部の検出結果に応じて、前記振動子の駆動を変化させてもよい。
【0029】
このような水田水混濁装置は、たとえば水田の水の透明度が高かったり濁度が低い場合には振動子を駆動して水を濁らせ、水田の水の透明度が低かったり濁度が高い場合には振動子の駆動を停止するなどして、電力の消費を抑えつつ、効果的に水田における雑草の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る水田水混濁装置を水田に設置した状態を示す概念図である。
図2図2は、図1に示す水田水混濁装置の概略構成を示す概念図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態に係る水田水混濁装置の概念図である。
図4図4は、本発明の第3実施形態に係る水田水混濁装置の概念図である。
図5図5は、本発明の第4実施形態に係る水田水混濁装置の概念図である。
図6図6は、図1に示す水田水混濁装置の水田への配置例を示す概念図である。
図7図7は、筒部の長さを変更した場合における水の濁りの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る水田水混濁装置10の第1筐体部12(ケース20および波ガイド部材40を含む)を水田90に設置した状態を示す概念図である。図1に示すように、水田水混濁装置10の第1筐体部12は、湛水された水田90において、水底土壌94の上に設置して使用される。水田90に溜められる水田水(「田面水」ともいう。)92は、通常は、水上から水底土壌94の表面(土壌面)が容易に目視できる程度に澄んでおり、日中は太陽光が容易に水底土壌94の表面に届く状態である。
【0033】
図1に示す水田水混濁装置10は、後述する振動発生手段30および波ガイド部材40などにより、水田水92の中を伝わる振動波96を発生させる。水田水混濁装置10によって生じる振動波96が、粘土質である水底土壌94の表層を攪拌し、土壌表面の粒子を水中に拡散させることにより、水田水混濁装置10は、水田水92を混濁させることができる。
【0034】
図2は、図1に示す水田水混濁装置10の概略構成を示す概念図である。図2では、振動子32の周辺と筒部42が断面で示されている。図2に示すように、水田水混濁装置10は、振動発生手段30、波ガイド部材40、ケース20、電源部55等を有する。
【0035】
振動発生手段30は、振動子32を有する。振動発生手段30は、振動子32を振動させることにより水田水92(図1参照)に振動を伝え、水田水92中を伝わる振動波96を発生させる。振動発生手段30は、振動子32が超音波振動する超音波発生手段であることが、水底土壌94の表層を効率的に攪拌するうえで好ましい。ただし、振動発生手段30は、超音波振動以外の振動を発生する振動子を有するものであってもよい。
【0036】
また、振動子32としては、圧電材料を有するものを用いることができる。圧電材料を用いる振動子32は、機械的な可動部分が少なく、単純な構造で水中を伝わる振動子32を構成することができ、エネルギー効率や耐久性の面で優れている。振動子32は、振動板(ダイアフラム)を介して水田水92に振動を伝えるものなどが挙げられるが、特に限定されない。振動子32の大きさも特に限定されないが、たとえば、振動板が数mm~数十mm程度のものを用いることができる。
【0037】
超音波発生手段である振動発生手段30は、振動子32に加えて、振動子32を駆動する駆動制御部50を有する。駆動制御部50は、ケース20に収容されており、水中で動作するように防水処理されている。駆動制御部50には、電源部55から供給される電力により、振動子32を駆動する。駆動制御部50は、振動子32へ伝える電圧波形などを発生させる電気回路などを有する。
【0038】
電源部55は、ケース20の外に配置されており、ケーブル等によりケース20の駆動制御部50に対して電気的に接続されている。電源部55は、交流電源または電池などで構成される。ただし、電源部55は、図2に示すようにケース20の外に配置されているもののみには限定されず、ケース20の内部の配置される電池などで構成されていてもよい。
【0039】
図2に示すように、水田水混濁装置10は、駆動制御部50等を有する波ガイド部材40を有する。波ガイド部材40は、中空の筒部42と、筒部42の一方の端部42aであるケース20側の端部に接続しており振動子32が配置される底部44とを有する。筒部42の他方の端部42bには開口46が形成されており、図1に示すように水田水92内に水田水混濁装置10を配置すると、筒部42内に水が流入する。
【0040】
波ガイド部材40は、他方の端部42bに開口46が形成される略有底円筒形状の外形状を有する。ただし、波ガイド部材40の外形状としては、円筒形状のみには限定されず、略球郭形状、略多角筒状など、内部が空洞となっており底部44と反対側に開口46が形成される他の形状であってもかまわない。
【0041】
図2に示すように、振動子32は、波ガイド部材40の底部44の中央付近に配置されている。また、筒部42は、振動子32で生じた振動波96を効率よく反射できるように、たとえばプラスチックや金属などの硬質部材で形成されることが好ましい。
【0042】
図1に示すように、筒部42の外周部には、水底土壌94に接触する設置部43が形成されている。水田水混濁装置10は、ケース20の一部および波ガイド部材40の設置部43が水底土壌94に接触する状態で、水田90に設置される。
【0043】
水田90に設置される水田水混濁装置10は、図1に示すように、筒部42の一方の端部42aから他方の端部42bへ向かう方向が水平方向に略一致するように、水底土壌94に設置される。これにより、波ガイド部材40の底部44に配置される振動子32で生じた振動波96は、水底土壌94に沿って略水平方向に伝わる。この際、図2に示すように、振動子32が波ガイド部材40の底部44に配置されていることにより、振動子32によって生じた振動波は、上方などへの広がりが抑制され、振動子32から開口46へ向かう水平方向への指向性が強くなる。
【0044】
これにより、水田水混濁装置10は、筒部42の一方の端部42aから他方の端部42bへ向かう方向に関して、波ガイド部材40の開口46の先にある水底土壌94に対して、効果的に振動波96を伝えることができる。これにより、水田水混濁装置10は、水田90における水底土壌94の表面に振動波96を当てることができるとともに、水底土壌94の表層の土壌を効率的に水中に拡散させることで、水田水92を効果的に濁らせることができる。
【0045】
波ガイド部材40の筒部42における一方の端部42aから他方の端部42bまでの長さLは、振動子32の出力や振動板(ダイアフラム)の大きさなどによっても変更可能であるが、たとえば、1cm~8cmとすることが好ましく、2cm~7cmとすることがさらに好ましい。筒部42の長さが短すぎると、振動波96が拡散して水底土壌94に効率的に振動を伝えられなくなると考えられる。一方、筒部42の長さが長すぎると、水底土壌94に到達するまでの減衰が大きくなって、水底土壌94に効率的に振動を伝えられなくなると考えられる。
【0046】
図6は、図1に示す水田水混濁装置10を、一辺が10mの略正方形の水田90へ配置する配置例を示す概念図である。図6に示すように、水田90の各コーナーに、開口46が配置場所とは異なるコーナーを向くように水田水混濁装置10を配置することにより、比較的少ない数(図6では4つ)の水田水混濁装置10により、水田90の水田水92全体を混濁させることができる。ただし、水田90に配置される水田水混濁装置10の数は特に限定されず、1~3つの水田水混濁装置10を水田90に配置してもよく、5つ以上の水田水混濁装置10を水田90に配置してもよい。
【0047】
図1に示すように、水田水混濁装置10は、比較的小型で単純な装置により、水田水92を濁らせて、水底土壌94に届く太陽光を減少させることにより、水底土壌94に雑草などが発芽して育つことを防止するとともに、イネなどの育成植物の育成環境を良好に保つことができる。また、水田水混濁装置10は、機械的な可動部分が少なく動きも小さいため、小さい消費電力で安定的に動作することができ、メンテナンス性も良好である。
【0048】
第2実施形態
図3は、本発明の第2実施形態に係る水田水混濁装置110を示す概略図である。第2実施形態に係る水田水混濁装置110は、固定設置部170や太陽電池160等を有する点で図1に示す水田水混濁装置10とは異なることを除き、図1に示す水田水混濁装置10と同様である。水田水混濁装置110の説明では、水田水混濁装置10との相違点を中心に説明を行い、水田水混濁装置10との一致点については、説明を省略する。
【0049】
図3に示すように、水田水混濁装置110は、太陽光を電力に変換する太陽電池160と、太陽電池160によって生じた電力を駆動制御部50に対して供給する電力供給部165とを有する。電力供給部165が、振動発生手段30において振動子32(図2参照)を駆動する駆動制御部50に対して電力を供給することにより、水田水混濁装置110は、振動子32に振動波96を生じさせることができる。
【0050】
図3に示すように、水田水混濁装置110は、水底土壌94に立設される支柱状の固定設置部170を有する。固定設置部170の基端の一部は水底土壌94内に埋め込まれる一方、固定設置部170の先端は水田水92の水面上方の大気中に露出している。太陽電池160は、固定設置部170の先端に取り付けられており、太陽光を浴びて効率的な発電を行うことができる。
【0051】
固定設置部170のうち水底土壌94の直上であって水田水92中にある部分には、水田水混濁装置110のケース20とこれに接続する波ガイド部材40が固定されている。これにより、水田水混濁装置110では、波ガイド部材40における筒部42の一方の端部42aから他方の端部42bへ向かう方向が水平方向に略一致するように、波ガイド部材40が、水田90の水底土壌94に対して固定される。
【0052】
水田水混濁装置110は、波ガイド部材40が、水田90の水底土壌94に対して固定されているため、水田水92に比較的強い流れが生じたような場合にも、振動発生手段30の少なくとも一部を収容するケース20や波ガイド部材40が水流に流されることが防止される。また、固定設置部170により、ケース20や波ガイド部材40を、水田水92を濁らせるために最適な位置および向きに、安定して維持しておくことができる。
【0053】
水田水混濁装置110は、太陽電池160で発電した電気を蓄える蓄電部を有していなくてもよい。なぜなら、天候や時間帯により太陽光が弱くなると、水を濁らせて太陽光を遮蔽する必要性も低くなるためである。すなわち、水田水混濁装置110では、水を濁らせて太陽光を遮蔽したいタイミングに同期して、太陽電池160においてより大きな電力が生じて、電力供給部165から振動子32に電力が供給される。したがって、このような水田水混濁装置110は、シンプルな構成で、効果的に水田90における雑草の発生を抑制できる。
【0054】
ただし、水田水混濁装置110は、太陽電池160で発電した電気を蓄える蓄電部を有していてもよく、これにより、太陽光が弱く太陽電池160での発電量が少ない状況でも、水田水92を濁らせることができる。その他、第2実施形態に係る水田水混濁装置110は、図1に示す水田水混濁装置10と同様の効果を奏する。
【0055】
第3実施形態
図4は、本発明の第3実施形態に係る水田水混濁装置210の概略構成を示す概念図である。図4に示す水田水混濁装置210は、水の透明度または濁度を検出する検出部285を有する点や、駆動制御部250がケース20の外部に配置される点で第1実施形態に係る水田水混濁装置10とは異なるが、その他の点では図1に示す水田水混濁装置10と同様である。
【0056】
図4に示すように、水田水混濁装置210は、水の透明度または濁度を検出する検出部285を有する。検出部285としては、たとえば発光部と、発光部により生じた光を受光する受光部とを有し、受光量に応じて水の透明度または濁度を検出するものが挙げられる。
【0057】
検出部285は、図1に示す水田水92の中であって、開口46を出た振動波96が伝わる水底土壌94の近傍に配置される。これにより、検出部285は、振動発生手段30により生じた振動波96による水田水92の透明度または濁度の変化を検出することができる。
【0058】
図4に示す水田水混濁装置210において、検出部285は、駆動制御部250と同様に、電源部255から電力の供給を受けて駆動する。また、検出部285の検出出力は、駆動制御部250に伝えられる。振動発生手段30において振動子32を駆動する駆動制御部250は、検出部285の検出結果に応じて、振動子32の駆動を変化させることができる。
【0059】
たとえば、水田水混濁装置210の駆動制御部250は、検出部285の検出結果により、水田水92の透明度が高い(又は濁度が低い)ことを検出した場合、振動子32の駆動出力や駆動頻度を上げて、より強く水底土壌94を攪拌することができる。一方、水田水混濁装置210の駆動制御部250は、検出部285の検出結果により、水田水92の透明度が低い(又は濁度が高い)ことを検出した場合、振動子32の駆動出力や駆動頻度を下げて、水底土壌94の攪拌を弱めたり、停止したりすることができる。
【0060】
このような水田水混濁装置210は、水田水92の透明度または濁りを、適切な所定の状態に維持することができる。また、水田水92が適度に濁っていることを検出部285が検出した場合には、振動子32の駆動出力や駆動頻度を下げたり、振動子32の振動を停止させたりすることにより、水田水混濁装置210の消費電力を低減したり、振動発生手段30の耐久年数などを延ばすことができる。
【0061】
なお、水田水混濁装置210では、図2に示す水田水混濁装置10とは異なり、駆動制御部250がケース20の内部に収容されておらず、水田水92の外の大気中に配置される第2筐体部に、電源部255とともに収容される。ただし、駆動制御部250は、図2に示す水田水混濁装置10と同様に、水田水92中に設置されるケース20の内部に収容されていてもよい。その他、水田水混濁装置210は、第1実施形態に係る水田水混濁装置10と同様の効果を奏する。
【0062】
第4実施形態
図5は、本発明の第4実施形態に係る水田水混濁装置310を示す概念図である。水田水混濁装置310は、照度計380を有する点などで、第1実施形態に係る水田水混濁装置10とは異なるが、その他の点では、図2に示す水田水混濁装置10と同様である。第4実施形態に係る水田水混濁装置310の説明では、第1実施形態に係る水田水混濁装置10との相違点を中心に行い、水田水混濁装置10との共通点については、説明を省略する。
【0063】
図5に示すように、水田水混濁装置310は、明るさを検知する照度計380を有する。照度計380は、ケース20または波ガイド部材40の上面に設けられており、上下方向に関して設置部43の反対側に配置される。照度計380は、水底土壌94に設置されるケース20または波ガイド部材40に設けられる。そのたえ照度計380は、水田水92を透過して水底土壌94表面近傍まで到達する光の量を検出することができる。
【0064】
照度計380で検出する明るさは、時間帯や天候による地上の明るさの変化にも影響を受けるが、これと併せて、水田水92の濁り方にも影響を受ける。すなわち、地上の明るさが同じであっても、水田水92が濁っている場合には照度計380で検出する明るさは暗く、水田水92が澄んでいる場合は、照度計380で検出する明るさは明るい。
【0065】
照度計380は、電源部55から電力の供給を受けて駆動され、照度計380の検出結果は、駆動制御部350に伝えられる。振動発生手段30において振動子32を駆動する駆動制御部350は、照度計380が検出した明るさに応じて、振動子32の駆動を変化させることができる。
【0066】
たとえば、駆動制御部350は、照度計380が検出した明るさが明るい場合は、水底土壌94表面に届く光の量を少なくして雑草の発芽や成長を防止するために、振動子32の駆動時間を長くしたり、振動子32を強く振動させたりして、水田水92を濁らせることができる。一方、駆動制御部350は、照度計380が検出した明るさが暗い場合は、振動子32の駆動時間を短くしたり、振動子32の振動を停止させたりすることができる。
【0067】
図5に示す水田水混濁装置310は、水底土壌94の表面近傍の明るさを検出して振動子32の振動を変化させることにより、水底土壌94表面に届く光の量を好適に制御し、水底土壌94における雑草の発芽や成長を効果的に抑制できる。また、水田水混濁装置310は、水底土壌94に届く光の量が少ない場合は、振動子32の振動を抑制または停止させることにより、電力消費を抑制することができる。その他、水田水混濁装置210は、第1実施形態に係る水田水混濁装置10と同様の効果を奏する。
【0068】
以上、実施形態を示しつつ本発明を説明してきたが、本発明の実施形態は上述したもののみには限定されず、多くの他の実施形態が本発明の実施形態に含まれることは言うまでもない。たとえば、図5に示される照度計380は、水田水92の中に配置される第1筐体部312ではなく、大気中に配置される第2筐体部に設けられてもよい。また、たとえば、上述の実施形態では、第1筐体部12、312(図1参照)を水田90における水底土壌94に配置する場合を例に説明を行ったが、図1に示す水田水混濁装置10などを、水田90以外の水底土壌に設置し、水底土壌攪拌装置として用いてもかまわない。
【0069】
水底土壌攪拌装置を設置する場所としては、特に限定されないが、例えば池、湖、貯水池などが挙げられる。また、水底土壌攪拌装置を設置する目的としては、水田と同様に水底土壌における雑草の発芽や育成を防止することのみには限定されず、水の透明度を落として水底土壌を遮蔽する目的など、他の目的で使用されてもよい。
【0070】
実施例
以下、実施例を挙げて本願発明をさらに詳細に説明するが、本願発明は実施例のみには限定されない。
【0071】
図7は、図4に示す水田水混濁装置210を、水田を模した水槽中に設置し、水田水混濁装置210による水槽中の水の濁りを検出した結果を示している。グラフの縦軸は、検出部285で検出された水槽の水の濁度(濁りの度合いを示す指標値)を示し、横軸は水田水混濁装置210の駆動制御部250が振動子32の振動を開始してからの時間を示している。
【0072】
実施例に使用した水槽は52cm×85cmの長方形であり、水底土壌として水槽の底に10cmの深さで土壌を敷きつめ、さらに水槽の底から17cmの高さまで水を水槽内に投入した。さらに、水槽中の水底土壌の上に水田水混濁装置210の第1筐体部を設置したのち、水面の揺れが収まるのを待ってから、駆動制御部250の振動子32の振動を開始した。各実施例では、周波数1600~1720kHzの超音波振動を生じる振動子32を用いた。
【0073】
実施例に係る水田水混濁装置210としては、筒部42の長さL(図2参照)が異なる3つのものを用意し、それぞれについて、振動子32の振動を開始してからの水槽の水の濁度の変化を測定した。図7の1点鎖線は長さLが2cmの実施例の結果を、図7の破線は長さLが4cmの実施例の結果を、図7の実線は長さLが6cmの実施例の結果を表している。
【0074】
図7に示すように、筒部42の長さLが異なるいずれの実施例でも、振動子32が振動を開始してから150秒前後には、振動波が土壌を攪拌したことによる水槽の水の濁りが顕著に表れた。その後、振動子32の振動を継続することにより、水槽の中の水の濁りは、振動子32を駆動しない状態を上回る所定の値付近を、変動しながら推移した。
【0075】
3つの実施例の中では、筒部42の長さLが6cmの実施例(図7における実線)が、振動子32を駆動してから最も短時間で水槽の中の水の濁りを生じさせた。
【0076】
また、比較例として、筒部42を有さず、振動子32がケース20の端部に露出している点のみが実施例とは異なる装置を、水田水混濁装置210と同様の条件で水槽中の水底土壌の上に設置して振動子32を振動させた。比較例では、振動子32の振動を開始してから5分間継続しても、検出部285で検出される水槽の水の濁度の上昇は見られなかった。
【符号の説明】
【0077】
10、110、210、310…水田水混濁装置
12…第1筐体部
20…ケース
30…振動発生手段
32…振動子
40…波ガイド部材
42…筒部
42a…一方の端部
44…底部
42b…他方の端部
46…開口
43…設置部
50、250、350…駆動制御部
55、255…電源部
90…水田
92…水田水
94…水底土壌
96…振動波
160…太陽電池
165…電力供給部
170…固定設置部
285…検出部
380…照度計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7