(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135500
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】カッター
(51)【国際特許分類】
B26B 1/02 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B26B1/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035341
(22)【出願日】2021-03-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】399028078
【氏名又は名称】ハイソル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 孝幸
【テーマコード(参考)】
3C061
【Fターム(参考)】
3C061AA08
3C061BA25
3C061CC30
3C061EE40
(57)【要約】
【課題】刃の向きが対象物の形状に追従する。
【解決手段】刃5取り付けた球体2と、回転体2を収容する収容部4aを有する把持部1aと、刃5の軸を元に戻す復元力を回転体2に付与する復元力付与する弾性部材3とを備える。収容部4aは、球体2を回転可能に収容する球状空間4aと、該球状空間4aに連続し、弾性部材3を配設する押圧部材収容部4bとを有する。弾性部材3は、球体2に設けられた突起物2aの位置が変化したときに、突起物2aに復元力を付与する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃を取り付けた回転体と、
前記回転体を収容する収容部を有する把持部と、
前記刃の軸を元に戻す復元力を前記回転体に付与する復元力付与部材と
を備えることを特徴とするカッター。
【請求項2】
請求項1に記載のカッターであって、
前記回転体は、球体であり、
前記収容部は、前記球体を回転可能に収容する球状空間と、該球状空間に連続し、前記復元力付与部材を配設する押圧部材収容部とを有する
ことを特徴とするカッター。
【請求項3】
請求項2に記載のカッターであって、
前記球体は、その表面に突設された突起物を有し、
前記復元力付与部材は、一端が前記押圧部材収容部の内面に支持されたコイルバネであり、
前記突起物が前記コイルバネの他端に挿入されている
ことを特徴とするカッター。
【請求項4】
請求項2に記載のカッターであって、
前記球体は、前記刃の軸の方向に着磁した球体磁石であり、
前記復元力付与部材は、前記球体磁石との間に吸引力を発生させるように配置された柱状磁石である
ことを特徴とするカッター。
【請求項5】
刃を取り付けた回転楕円体と、
前記回転楕円体を収容する収容部を有する把持部と、
を備えることを特徴とするカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
刃物を用いて、基板やウェハ等の対象物を任意の形状に切断したり、傷を付けたりすることがある。通常、刃物の方向は、切断方向に一致させる。
【0003】
特許文献1には、往復運動刃及び固定刃からなる刃物をボールジョイントで固定した、医療用の揺動剃り刃(体毛剃り器)が開示されている。この揺動剃り刃は、ボールジョイントの揺動により、刃物の刃先を人体の皮膚表面に沿わせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3989977号公報(段落0022)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の体毛剃り器では、皮膚(対象物)に沿って移動させることが想定されている。しかしながら、カッターで対象物を任意の形状に切断等する場合、カッターを固定し、刃先を立てた状態で対象物を移動させることもある。この場合には、カッターの刃の向きや傾斜角が対象物の形状に追従することが好ましい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、刃の向きや傾斜角が対象物の形状に追従することができるカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のカッターは、刃(5)を取り付けた回転体(2、12)と、前記回転体を収容する収容部(4)を有する把持部(1a、1b、1c)と、前記刃の軸を元に戻す復元力を前記回転体に付与する復元力付与部材(弾性部材3、柱状磁石13)とを備えることを特徴とする。なお、括弧内の符号や文字は、実施形態において付した符号等であって、本発明を限定するものではない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、刃の向きが対象物の形状に追従することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態であるカッターの断面図、及び底面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態であるカッターの使用方法を説明する図である。
【
図3A】刃を移動させたときの対象物に罫書かれた罫書き線を示す図である。
【
図3B】把持部を固定したときの対象物に罫書かれた罫書き線の動きを示す図である。
【
図4】対象物の表面が把持部の軸に対して傾斜したときの状態を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態であるカッターの断面図、及び底面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態であるカッターの断面図、及び底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本実施形態を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の第1実施形態であるカッターの断面図、及び底面図である。
カッター10は、把持部1aと、回転体である球体2と、弾性部材3と、刃5とを備えて構成される。
把持部1aは、円柱形状の樹脂で形成されている。なお、把持部1aの形状は、容易に把持することができる形状であればよい。球体2は、樹脂製であり、刃5が取り付けられている。球体2の表面であって刃5の軸上に、略円柱形状の突起物2aが延在している。
【0012】
把持部1aには、軽量化のために円柱状の空洞6が形成されている。把持部1aの底部には、球体2及び弾性部材3を収容する収容部4が形成されている。収容部4は、開口部4dを備えた凹部であり、把持部1aの底面に開口している。収容部4は、開口部4d側に位置する球状空間4aと、球状空間4aよりも奥に位置する押圧部材収容部4bと、円柱状の突起物4cとを備えている。
【0013】
球状空間4aの直径は、球体2よりも僅かに大きい。球状空間4aは、球体状の内面を備えており、刃5及び球体2の下部は、開口部4dから露出する。押圧部材収容部4bは、球状空間4aに連続する略円柱状の空間であり、弾性部材3を収容する。弾性部材3は、両端部3a,3bがリング状に形成された圧縮コイルバネである。また、弾性部材3の端部3a,3bの内径は、突起物2a,4cの直径よりも僅かに大きい。このため、端部3bは、押圧部材収容部4bの奥側の内面に形成された突起物4cに回転自在に挿入(遊挿)される。これにより、弾性部材3の端部3bは、押圧部材収容部4bの奥側の内面で支持される。また、端部3aは、球体2の突起物2aに回転自在に挿入(遊挿)される。これにより、弾性部材3の端部3aは、球体2の突起物2aで支持される。
【0014】
また、球状空間4aの径は、球体2よりも大きい。このため、球体2は、軸中心に自在に回転することができる。また、球体2の中心Oは、開口部4cの内側に位置し、開口部4cの直径は、球体2の直径よりも短い。このため、球体2は、球状空間4aに保持される。
【0015】
弾性部材3の全長(いわゆる自由高)は、押圧部材収容部4bの奥行きLよりも僅かに短い。そのため、弾性部材3は、圧縮・伸張しないが、軸ズレに対して、球体2の突起物2aの位置を維持しようとする。つまり、弾性部材3は、位置を維持しようとする復元力を突起物2aに付与する復元力付与部材として機能する。この復元力により、対象物の形状に応じて、刃5の軸が傾斜したとしても、カッター11は、刃5の軸と把持部1aの軸とが一致しようとする。そのため、刃5の傾斜角は、対象物20(
図2)の形状に追従しようとする。
【0016】
なお、弾性部材3の全長(自由高)が押圧部材収容部4bの奥行きLよりも僅かに短ければ、弾性部材3の端部3aと球体2の突起物2aとを嵌挿し、端部3bと突起物2aとを嵌挿しても構わない。このとき、弾性部材3が僅かに伸張し、吸引力が働く。言い換えれば、弾性部材3は、反発力が働かない。
【0017】
(使用方法)
図2は、本発明の第1実施形態であるカッターの使用方法を説明する図である。
カッター10は、基板やウェハ等の対象物20を切断したり、罫書き線を描いたりするものである。本実施形態においては、カッター10を固定し、対象物20を水平方向に移動させたり回転させたりするものとする。カッター10では、刃5を固定する球体2が自在に回転するので、刃5を対象物20に立てた状態で対象物20を移動等させると、刃5の対象物20の移動方向や回転方向に追従して球体2が回転し、刃5の先端部5aの方向は、罫書き線の方向(対象物20の移動方向や回転方向)に一致しようとする。
【0018】
図3Aは、刃を移動させたときの対象物に罫書かれた罫書き線の軌跡を示す図であり、
図3Bは、把持部を固定したときの対象物に罫書かれた罫書き線の動きを示す図である。
図3Aにおいて、刃5の位置を、例えば、5-a,5-2,5-3,5-4の順に移動させると、目的の罫書き線Lが描かれる。一方、把持部1aを固定し、対象物20(
図2)を移動させると、それに伴い、刃5が罫書く罫書き線がL-1,L-2,L-3のように移動する。
【0019】
図4は、対象物の表面が把持部の軸に対して傾斜しているときの状態を示す図である。
刃5の傾斜により、弾性部材3が変形するが、弾性部材3の復元力が突起部2aに付与されるので、刃5の軸の傾斜が元に戻る。傾斜の戻りにより、刃5の軸と把持部1aの軸とが一致する。なお、球体2の突起物2aや弾性部材3が押圧部材収容部4bの壁面に当接すると、刃5のそれ以上の傾斜が阻止されるので、刃5が過度に傾斜することはない。
【0020】
なお、弾性部材3の全長(自由高)が押圧部材収容部4bの奥行きL(
図1)よりも長いときには、弾性部材3によって反発力が働き、刃5の軸が把持部1aに対して傾斜する傾斜状態で安定する。
【0021】
(第2実施形態)
前記第1実施形態では、弾性部材3の復元力で、刃5の軸を把持部1aの軸方向に戻していたが、磁石の磁力で刃5の軸を戻すこともできる。
【0022】
図5は、本発明の第2実施形態であるカッターの断面図、及び底面図である。
カッター11は、前記第1実施形態のカッター10と同様に、把持部1bと、刃5とを備えて構成される。しかしながら、カッター11は、球体2の代わりに、球状磁石12を備え、弾性部材3の代わりに柱状磁石13を備えている点で相違する。把持部1bは、球状空間4aと、球状空間4aに連続する押圧部材収容部4bとから構成される収容部16を有する。
【0023】
球状磁石12は、刃5を取り付けた部分がS極又はN極に着磁されており、反対側が逆極性に着磁されている。つまり、刃5の軸と球状磁石12の軸とは、一致する。柱状磁石13は、全体として円柱形状の磁石であり、その軸が把持部1bの軸と一致する。これにより、刃5の軸と把持部1bの軸とが一致する。球状磁石12は、前記第1実施形態の球体2と同一の大きさであり、球状空間4aに収容される。
【0024】
また、柱状磁石13の一方の端部は、球面状の凹部に形成されており、球状磁石12が近接する。また、球状磁石12と柱状磁石13とを異極同士で近接させることにより、柱状磁石13は、球状磁石12の軸が変化したとき、変化した軸を元に戻す復元力を球状磁石12に付与する復元力付与部材として機能する。
【0025】
前記実施形態のカッター10では、軸ズレに対して、球体2の突起物2aの位置を維持しようとする復元力を突起物2aに付与する弾性部材3を用いていたが、本実施形態では、球状磁石12及び柱状磁石13の磁力で元の軸位置に戻している。
【0026】
(第3実施形態)
前記第1実施形態のカッター10の球体2及び前記第2実施形態のカッター11の球状磁石12は、何れも球状であったが、回転楕円体にすることもできる。
【0027】
図6は、本発明の第3実施形態であるカッターの断面図、及び底面図である。
カッター15は、前記第1,2実施形態と同様に、把持部1c及び刃5を備えており、刃5は、樹脂製の回転楕円体14に取り付けられている。一方で、カッター15は、弾性部材3や磁石13を有しておらず、把持部1cの収容部4eは、回転楕円体空間のみで形成されている。
【0028】
収容部4eは、回転楕円体14よりも僅かに大きく、回転楕円体14が回転可能である。このため、刃5は、把持部1cの軸を中心に回転する。また、カッター15は、刃5の軸と把持部1cの軸とが一致する。また、カッター15は、前記第1実施形態のカッター10と同様に、刃5を固定する回転楕円体14が自在に回転するので、刃5の方向は、罫書き線の方向に一致しようとする。
【符号の説明】
【0029】
1a,1b,1c 把持部
2 球体(回転体)
2a,4c 突起物
3 弾性部材(復元力付与部材)
4,16 収容部
4a 球状空間
4b 押圧部材収容部
4d 開口部
4e 収容部(回転楕円体空間)
5 刃
10,11,15 カッター
12 球状磁石
13 柱状磁石
14 回転楕円体
20 対象物
【手続補正書】
【提出日】2021-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃を取り付けた球体と、
前記球体を収容する収容部を有する把持部と、
前記刃の軸を元に戻す復元力を前記球体に付与するコイルバネと
を備え、
前記収容部は、前記球体を回転可能に収容する球状空間と、該球状空間に連続し、前記コイルバネを配設するコイルバネ収容部とを有し、
前記コイルバネは、一端が前記コイルバネ収容部の内面に支持されており、
前記球体の表面に突設された突起物が前記コイルバネの他端に挿入されている
ことを特徴とするカッター。
【請求項2】
刃を取り付けた球体磁石と、
前記球体磁石を収容する収容部を有する把持部と、
前記球体磁石との間に吸引力を発生させるように配置された柱状磁石とを備え、
前記球体磁石は、前記刃の軸の方向に着磁したものであり、
前記収容部は、前記球体磁石を回転可能に収容する球状空間と、該球状空間に連続し、前記柱状磁石を配設する柱状磁石収容部とを有し、
前記柱状磁石は、前記刃の軸を元に戻す復元力を前記球体磁石に付与する
ことを特徴とするカッター。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
前記目的を達成するために、第1発明のカッターは、刃(5)を取り付けた球体(2)と、前記球体を収容する収容部(4)を有する把持部(1a)と、前記刃の軸を元に戻す復元力を前記球体に付与するコイルバネ(3)とを備え、前記収容部は、前記球体を回転可能に収容する球状空間(4a)と、該球状空間に連続し、前記コイルバネを配設するコイルバネ収容部(4b)とを有し、前記コイルバネは、一端が前記コイルバネ収容部の内面に支持されており、前記球体の表面に突設された突起物が前記コイルバネの他端に挿入されていることを特徴とする。
また、第2発明のカッターは、刃(5)を取り付けた球体磁石(12)と、前記球体磁石を収容する収容部(16)を有する把持部(1b)と、前記球体磁石との間に吸引力を発生させるように配置された柱状磁石(13)とを備え、前記球体磁石は、前記刃の軸の方向に着磁したものであり、前記収容部は、前記球体磁石を回転可能に収容する球状空間(4a)と、該球状空間に連続し、前記柱状磁石を配設する柱状磁石収容部(4b)とを有し、前記柱状磁石は、前記刃の軸を元に戻す復元力を前記球体磁石に付与することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
1a,1b,1c 把持部
2 球体(回転体)
2a,4c 突起物
3 弾性部材(コイルバネ)
4,16 収容部
4a 球状空間
4b 押圧部材収容部(コイルバネ収容部、柱状磁石収容部)
4d 開口部
4e 収容部(回転楕円体空間)
5 刃
10,11,15 カッター
12 球状磁石
13 柱状磁石
14 回転楕円体
20 対象物