(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135504
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】セパレータ及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/409 20210101AFI20220908BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220908BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20220908BHJP
【FI】
H01M2/16 L
H01M2/16 P
H01M2/16 M
H01M10/0566
H01M10/0587
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035351
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 菜摘
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE21
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH10
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ23
5H029DJ04
5H029EJ08
5H029EJ12
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】セパレータ、正極、及び負極を含む電極体と非水電解液とを用いて電池を製造する際に、電極体の内部に速やかに非水電解液を含浸させることができるセパレータ及びそれを備えた非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】電池用のセパレータは、セパレータが有する端辺のうちの少なくとも1つの端辺を含む端部領域と、セパレータの平面視において端部領域よりも内側に配置される中央部領域と、を含む。端部領域の細孔径は、中央部領域の細孔径よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池用のセパレータであって、
前記セパレータが有する端辺のうちの少なくとも1つの端辺を含む端部領域と、
前記セパレータの平面視において前記端部領域よりも内側に配置される中央部領域と、を含み、
前記端部領域の細孔径は、前記中央部領域の細孔径よりも大きい、セパレータ。
【請求項2】
前記セパレータは、帯状のシート体であり、
前記端部領域は、前記シート体の長手方向に沿った一対の端辺を含む領域である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記セパレータは、ポリオレフィン製の基材層と、前記基材層上に設けられ、かつセラミック粒子及びバインダーを含む耐熱層と、を有し、
前記耐熱層において、前記端部領域に対応する第1領域の細孔径が、前記中央部領域に対応する第2領域の細孔径よりも大きい、請求項1又は2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記第1領域の細孔径と、前記第2領域の細孔径との比(第1領域の細孔径/第2領域の細孔径)は、2.5以上25以下である、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のセパレータ、正極、及び負極を含む電極体と、
非水電解液と、を備える非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記セパレータ、前記正極、及び前記負極は、いずれも帯状のシート体であり、
前記電極体は、前記正極、前記セパレータ、及び前記負極をこの順に積層した積層体を、前記シート体の長手方向に巻回した巻回電極体であり、
前記端部領域は、前記セパレータを構成する前記シート体の長手方向に沿った一対の端辺を含む領域である、請求項5に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
さらに、前記巻回電極体及び前記非水電解液を収納するケースを備え、
前記ケースは、開口部を有する外装体と、前記開口部を封口するための封口板とを備え、
前記封口板は、前記非水電解液を注入するための注液孔を有し、
前記巻回電極体は、その巻回軸が前記開口部と平行となるように、前記外装体に収納される、請求項6に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ、及び、それを備えた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-57522号公報(特許文献1)は、捲回電極体のセパレータシートにおいて、幅方向の非水電解液の透過性を、長手方向の非水電解液の透過性よりも所定以上高くすることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池は、通常、捲回電極体を収容した電池ケースに非水電解液を注入することによって作製される。二次電池を作製する際に、非水電解液の透過性が異なる領域を設けたセパレータを用いた場合、当該領域の配置によっては、非水電解液の注入時に捲回電極体への非水電解液の含浸性が低下することがあった。
【0005】
本開示の目的は、セパレータ、正極、及び負極を含む電極体と非水電解液とを用いて電池を製造する際に、電極体の内部に速やかに非水電解液を含浸させることができるセパレータ及びそれを備えた非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕 電池用のセパレータであって、
前記セパレータが有する端辺のうちの少なくとも1つの端辺を含む端部領域と、
前記セパレータの平面視において前記端部領域よりも内側に配置される中央部領域と、を含み、
前記端部領域の細孔径は、前記中央部領域の細孔径よりも大きい、セパレータ。
〔2〕 前記セパレータは、帯状のシート体であり、
前記端部領域は、前記シート体の長手方向に沿った一対の端辺を含む領域である。
〔3〕 前記セパレータは、ポリオレフィン製の基材層と、前記基材層上に設けられ、かつセラミック粒子及びバインダーを含む耐熱層と、を有し、
前記耐熱層において、前記端部領域に対応する第1領域の細孔径が、前記中央部領域に対応する第2領域の細孔径よりも大きい。
〔4〕 前記セパレータにおいて、前記第1領域の細孔径と、前記第2領域の細孔径との比(第1領域の細孔径/第2領域の細孔径)は、2.5以上25以下である。
〔5〕 前記セパレータ、正極、及び負極を含む電極体と、非水電解液と、を備える非水電解質二次電池。
〔6〕 前記非水電解質二次電池において、前記セパレータ、前記正極、及び前記負極は、いずれも帯状のシート体であり、
前記電極体は、前記正極、前記セパレータ、及び前記負極をこの順に積層した積層体を、前記シート体の長手方向に巻回した巻回電極体であり、
前記端部領域は、前記セパレータを構成する前記シート体の長手方向に沿った一対の端辺を含む領域である。
〔7〕 非水電解質二次電池は、さらに、前記巻回電極体及び前記非水電解液を収納するケースを備え、
前記ケースは、開口部を有する外装体と、前記開口部を封口するための封口板とを備え、
前記封口板は、前記非水電解液を注入するための注液孔を有し、
前記巻回電極体は、その巻回軸が前記開口部と平行となるように、前記外装体に収納される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電池を製造する際に、電極体の内部に速やかに非水電解液を含浸することができるセパレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示のセパレータの一例を模式的に示す平面図である。
【
図2】本開示のセパレータの他の一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】本開示のセパレータのさらに他の一例を模式的に示す平面図である。
【
図4】本開示のセパレータのさらに他の一例を模式的に示す平面図である。
【
図5】本開示の非水電解質二次電池の一例を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について説明する。
(セパレータ)
図1~
図4は、本開示のセパレータの一例を模式的に示す平面図である。本実施形態のセパレータ10は、非水電解質二次電池等の電池に用いられる。セパレータ10は、セパレータ10が有する端辺11のうちの少なくとも1つの端辺を含む端部領域15と、セパレータ10の平面視において端部領域15よりも内側に配置される中央部領域16とを含む。内側とは、セパレータ10の平面視において、端部領域15に含まれる端辺とは反対側にあるセパレータ10の中央側をいう。
【0010】
セパレータ10において、端部領域15の細孔径は中央部領域16の細孔径よりも大きい。本明細書において細孔径は、端部領域15及び中央部領域16のそれぞれについて、水銀圧入式ポロシメータで測定した細孔分布の累積細孔容積が全細孔容積の50%となる細孔径(平均細孔径)をいう。
【0011】
後述するように、セパレータ10は正極及び負極とともに電極体を構成し、電池は電極体を収容したケースに非水電解液を注入することによって製造される。セパレータ10では端部領域15の細孔径が中央部領域16の細孔径よりも大きいため、毛細管現象により端部領域15から中央部領域16に向けて非水電解液が浸透しやすい。これにより、電極体の内部に速やかに非水電解液を含浸させることができるため、電池を製造する際の非水電解液の注液時間を短縮することができる。
【0012】
端部領域15は、セパレータ10が有する少なくとも1つの端辺11の全体を含む領域である。端部領域15は、セパレータ10の平面視において互いに離間して設けられた2以上の領域で構成されてもよく(
図1~
図3)、連続的に設けられた1つの領域で構成されてもよい(
図4)。端部領域15は、
図1~
図3に示すように、セパレータ10の平面視において互いに対向する一対の端辺11の全体をそれぞれ含むように離間して設けられた少なくとも2つの領域で構成されていることが好ましい。端部領域15が2以上の領域で構成されている場合、それぞれの領域の細孔径は、同じであってもよく異なっていてもよい。セパレータ10の端辺11は、直線状であってもよく、曲線状であってもよいが、互いに対向する一対の端辺11は、平行であることが好ましい。
【0013】
セパレータ10の端部領域15の端辺11から中央部領域16に向かう方向の長さw1(以下、「端部領域15の幅w1」ということがある。)は特に限定されない。例えば、セパレータ10の平面視形状が方形(長方形又は正方形)であり、端辺11a,11bに沿って同じ幅で端部領域15が形成されている場合(
図1)、端部領域15の幅w1は、互いに対向する一対の端辺11a,11bを結ぶ端辺11c,11dの長さLabの15%以内であることが好ましく、10%以内の範囲であることがより好ましく、また、通常5%以上であり、7%以上であってもよい。端部領域15が2以上の領域で構成されている場合、それぞれの領域の幅w1は、同じであってもよく異なっていてもよい。
【0014】
中央部領域16は、セパレータ10の平面視において、端部領域15よりも内側に配置されている領域であって、端部領域15の細孔径よりも小さい細孔径を有する領域であればよい。中央部領域16は、セパレータ10の端部領域15以外の領域のうちのすべての領域であってもよく、一部の領域であってもよい。中央部領域16は、セパレータ10の平面視において端部領域15に接するように設けられてもよく、離間して設けられてもよい。中央部領域16と端部領域15とが離間している場合、両領域の間の領域の細孔径は、端部領域15よりも大きく中央部領域16よりも小さいことが好ましい。
【0015】
セパレータ10の中央部領域16の端部領域15に向かう方向の長さw2(以下、「中央部領域16の幅w2」ということがある。)は特に限定されない。例えばセパレータ10の平面視形状が方形であり、端辺11a,11bと平行な方向に沿って同じ幅で中央部領域16が形成されている場合(
図1)、中央部領域16の幅w2は、端辺11c,11dの長さLabの50%以内であることが好ましく、40%以内であることがより好ましく、通常5%以上であり、10%以上であってもよく、20%以上であってもよい。中央部領域16は、セパレータ10の中心Pを含むように設けられることが好ましく、端辺11c,11dの中心(Lab/2の位置)を含むように上記幅w2の範囲内で設けられることが好ましい。
【0016】
セパレータ10は、
図1に示すように平面視形状が長尺の帯状のシート体であってもよい。帯状のシート体は、後述する巻回電極体に好適に用いることができる。帯状のシート体は、長辺方向に沿う一対の端辺11a,11bが平行であることが好ましい。この場合、端部領域15は、一対の端辺11a,11bの全体を含む2つの領域によって構成され、中央部領域16は、この2つの領域の間に配置され、短手方向に沿う一対の端辺11c、11dの一部を含むことが好ましい。
【0017】
セパレータ10は、
図2~
図4に示すように平面視形状が枚葉状のシート体であってもよい。枚葉状のシート体は、積層型電極体に好適に用いることができる。枚葉状のシート体は方形であることが好ましい。この場合、端部領域15は、対向する一対の端辺11の全体を含む2つの領域によって構成され、中央部領域16は、この2つの領域の間に配置されてもよい(
図2及び
図3)。あるいは、端部領域15は、セパレータ10のすべての端辺11の全体を含むように連続的に設けられた領域で構成され、端部領域15の内側に中央部領域16が配置されてもよい(
図4)。
【0018】
端部領域15の細孔径と中央部領域16の細孔径との比(端部領域の細孔径/中央部領域の細孔径)は、1よりも大きく、2.5以上であることが好ましく、5以上であってもよく、10以上であってもよい。上記比は、50以下であってもよく、40以下であってもよく、30以下であってもよいが、25以下であることが好ましい。上記比が大きすぎると、端部領域15の細孔径に比較して中央部領域16の細孔径が小さくなりすぎるため、端部領域15から中央部領域16への非水電解液の浸透速度が低下する傾向にある。
【0019】
端部領域15の細孔径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であってもよく、また、1.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましい。中央部領域16の細孔径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であってもよく、また、0.2μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であってもよい。
【0020】
セパレータ10は、単層構造又は多層構造のポリオレフィン製の多孔質フィルムであってもよく、ポリオレフィン製の基材層と、基材層上に設けられた耐熱層とを有していてもよい。基材層上に設けられる耐熱層は、基材層の片面にのみ設けられてもよく、両面に設けられてもよい。
【0021】
ポリオレフィン製の多孔質フィルムとしては、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のフィルムが挙げられる。多孔質フィルムが多層構造である場合、各層は同じ樹脂材料で形成されてもよく、異なる樹脂材料で形成されてもよい。セパレータ10が多孔質フィルムである場合、端部領域15と中央部領域16とにおいて細孔径を異ならせる方法としては、無孔のフィルムを加熱しながら延伸して多孔質化する際に、端部領域と中央部領域とで加熱温度を異ならせる方法、端部領域と中央部領域とで延伸量を異ならせる方法等が挙げられる。
【0022】
基材層は、ポリオレフィン製の多孔膜であることが好ましい。多孔膜としては、多孔質フィルムで説明したものが挙げられる。基材層の厚みは、例えば5μm以上40μm以下とすることができる。
【0023】
耐熱層は、セラミック粒子及びバインダーを含むことが好ましい。セラミック粒子としては、例えばアルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、シリカ、チタニア、窒化ケイ素、及び窒化チタンからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。セラミック粒子の平均粒子径(D50)は、例えば0.1μm以上15μm以下である。バインダーとしては、例えばアクリル系バインダー、フッ素ポリマー系バインダー、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。耐熱層中のセラミック粒子の含有量は、例えば90重量%以上98重量%以下である。耐熱層中のバインダーの含有量は、例えば2重量%以上10重量%以下である。耐熱層の厚みは、例えば0.5μm以上10μm以下とすることができる。
【0024】
セパレータ10が基材層と耐熱層とを有する場合、基材層及び耐熱層のうちの少なくとも一方において、端部領域15及び中央部領域16に対応する領域の細孔径を異ならせればよい。セパレータ10は、基材層の端部領域15及び中央部領域16に対応する領域の細孔径が同じであり、耐熱層において、端部領域15に対応する第1領域の細孔径が中央部領域16に対応する第2領域の細孔径よりも大きいことが好ましい。
【0025】
第1領域の細孔径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であってもよく、また、1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましい。第2領域の細孔径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であってもよく、また、0.2μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であってもよい。耐熱層の第1領域の厚みと第2領域の厚みとの比(第1領域の厚み/第2領域の厚み)は、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、また、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1であってもよい。第1領域と第2領域とにおいて細孔径を異ならせる方法としては、耐熱層を構成するセラミック粒子の量及び/又はバインダーの量を調整する方法、セラミック粒子の粒径を調整する方法等が挙げられる。
【0026】
基材層の端部領域15及び中央部領域16に対応する領域の細孔径を異ならせる方法としては、上記した多孔質フィルムにおいて細孔径を異ならせる方法が挙げられる。
【0027】
セパレータ10において、端部領域15の透気度は、中央部領域16の透気度よりも小さいことが好ましい。透気度は、王研式透気度試験機を用いて測定された値である。端部領域15の透気度は、中央部領域16の透気度よりも10s/100mL以上小さくてもよく、20s/100mL以上小さくてもよく、22s/100mL以上小さくてもよく、また、通常100s/100mL以下小さく、90s/100mL以下小さくてもよく、80s/100mL以下小さくてもよい。
【0028】
セパレータ10において、端部領域15の気孔率は、中央部領域16の気孔率よりも大きいことが好ましい。気孔率は、JIS-L1096(2010)に規定される「気孔容積率」に準じて算出することができる。端部領域15の気孔率の値から中央部領域16の気孔率の値を差し引いた値(差)は、3%以上であってもよく、5%以上であってもよく、また、15%以下であってもよく、12%以下であってもよい。
【0029】
セパレータ10の厚みは、通常1μm以上であり、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であってもよく、また、通常50μm以下であり、35μm以下であってもよく、25μm以下であることが好ましい。
【0030】
(非水電解質二次電池)
図5は、本開示の非水電解質二次電池の一例を模式的に示す概略図である。非水電解質二次電池30(以下、「電池30」ということがある。)としては、例えばリチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池等が挙げられる。電池30は、正極、セパレータ及び負極をこの順に積層した積層体を含む電極体と、図示しない非水電解液とを備える。電極体は、積層型電極体であってもよく、
図5に示すように巻回電極体31であってもよい。巻回電極体31は、正極、セパレータ及び負極としてそれぞれ帯状のシート体を用い、正極、セパレータ及び負極を積層した積層体をシート体の長手方向に巻回することによって製造することができる。巻回電極体31では、巻回軸Xに平行な方向の両端から非水電解液が取り込まれるため、
図1に示すようにセパレータ10の端部領域15をシート体の長手方向に沿った一対の端辺を含むように設けることが好ましい。
【0031】
電池30は、巻回電極体31及び非水電解液を収納するケース35を備える。ケース35は、例えば角形(扁平直方体)の金属製の容器である。ケース35は、開口部を有する外装体36と、開口部(
図5では外装体の上面)を封口するための封口板37とを備える。封口板37は、非水電解液を注入するための注液孔33を有する。電池30は、開口部から巻回電極体31等を外装体36に収納した後、開口部を封口板37によって封口し、注液孔33から非水電解液を注入することによって得られる。ケース35内には、巻回軸Xが開口部に平行となるように巻回電極体31が収納される。巻回電極体31に含まれるセパレータは端部領域及び中央部領域を有し、巻回軸Xに平行な方向の両端に端部領域が設けられている。そのため、ケース35内に注入された非水電解液が端部領域から中央部領域に向けて浸透しやすく、巻回電極体31の内部に速やかに非水電解液を含浸させることができる。これにより、電池30を製造する際の非水電解液の注液時間を短縮することができる。
【0032】
正極、負極、及び非水電解液には、公知の非水電解質二次電池に用いられているものを用いることができる。正極としては、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金等のアルミニウム材料を用いて構成された正極集電体の片面又は両面に、正極活物質層を設けたものが挙げられる。正極活物質層に含まれる正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1。5O4等)、リチウム遷移金属リン酸化合物(LiFePO4等)等が挙げられる。正極活物質層は、カーボンブラック(アセチレンブラック、ファーネスブラック等)等の炭素材料で構成される導電材、ポリフッ化ビニリデン等の結着材等を含むことができる。
【0033】
負極としては、例えば、銅及び銅合金等の銅材料を用いて構成された負極集電体の片面又は両面に、負極活物質層を設けたものが挙げられる。負極活物質層に含まれる負極活物質としては、例えば炭素材料(黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等)、チタン酸リチウム、Si、Sn等が挙げられる。負極活物質層は、スチレンブタジエンゴム等の結着材、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤を含むことができる。
【0034】
非水電解液としては、例えば、有機溶媒等の非水溶媒中に、支持塩を含有させたものが挙げられる。非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、及びトリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)からなる群より選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。支持塩としては、例えば、リチウム塩(LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3等)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下であることが好ましい。
【実施例0035】
以下、実施例及び比較例を示して本開示をさらに具体的に説明する。
〔実施例1〕
(セパレータの作製)
球形粒子状のアルミナ(平均粒子径(D50):1μm)とポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、アルミナ:PVDF=95:5(重量比)で混合してスラリーを調製した。ポリエチレン製の多孔質膜で構成された基材層(厚み9μmの単層構造)の片面に、上記スラリーを塗布して耐熱層を形成して、平面視において長手方向に延在する端辺の長さが350mm、短手方向に延在する端辺の長さが120mmの長方形状のセパレータを作製した。上記スラリーは、セパレータの端部領域に対応する領域(耐熱層の第1領域)において、目付量が0.3mg/cm2、厚みが2μmとなり、セパレータの中央部領域(耐熱層の第2領域)において、目付量が0.8mg/cm2、厚みが2μmとなるように塗布した。セパレータの端部領域は、長手方向に延在する一対の端辺の全体をそれぞれ含む互いに離間した2つの領域とし、各領域の幅(短手方向の長さ)は、セパレータの短手方向に延在する端辺の長さの20%の長さ(2.4mm)とした。セパレータの中央部領域は、端部領域以外の領域とした。
【0036】
[耐熱層の細孔径の測定]
セパレータの端部領域(2領域)及び中央部領域のそれぞれにおいて、その短手方向の中心付近で、セパレータの短手方向に2cm、セパレータの長手方向に3cmの長方形状に切出した切出片について、水銀圧入式ポロシメータを用いて細孔分布を測定した。また、基材層についても、上記と同様に切出した切出片について水銀圧入式ポロシメータを用いて細孔分布を測定した。セパレータの端部領域及び中央部領域の細孔分布から、基材層の細孔分布を差し引き、耐熱層の第1領域及び第2領域における細孔分布を得、累積細孔容積が全細孔容積の50%となる細孔径(平均細孔径)を、耐熱層の第1領域及び第2領域における細孔径として決定した。耐熱層の第1領域の細孔径は、セパレータの端部領域を構成する2つの領域のそれぞれから切出した切出片について細孔径を決定し、その平均値とした。結果を表1に示す。
【0037】
[セパレータの透気度の測定]
王研式透気度試験機を用い、セパレータの端部領域(2領域)及び中央領域のそれぞれにおいて3箇所の透気度の測定を行い、その平均値を各領域における透気度とした。セパレータの端部領域の透気度は、セパレータの端部領域を構成する2つの領域について得られた透気度をさらに平均した。結果を表1に示す。
【0038】
[セパレータの気孔率の算出]
セパレータの端部領域及び中央領域のそれぞれにおいて、直径が20mmの円形となるように打抜いた打抜片を3つ用意し、3つの打抜片を重ねて重量及び厚みを測定し、測定値を3で除して打抜片1つあたりの重量及び厚み(表1)を決定した。決定した打抜片1つあたりの重量及び厚みを用い、JIS-L1096(2010)に規定される「気孔容積率」に準じて算出した。結果を表1に示す。
【0039】
(正極の作製)
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を用い、導電材としてアセチレンブラック(AB)を用い、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いて、厚み70μm、平面視において長手方向の長さが300mm、短手方向の長さが115mmの長方形状の正極を作製した。
【0040】
(負極の作製)
負極活物質として黒鉛を用い、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用い、結着材としてスチレンブタジエンゴム(SBR)を用いて、厚み80μm、平面視において長手方向の長さが330mm、短手方向の長さが118mmの長方形状の負極を作製した。
【0041】
(電極体の作製)
上記で作製した正極、セパレータ、及び負極をこの順に積層した積層体を、長手方向に巻回して巻回電極体を作製した。
【0042】
[非水電解液の含浸性の評価]
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、EC:DMC:EMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解させた非水電解液をバットに入れた。バット内の非水電解液に、巻回電極体の巻回軸に平行な方向の端部を浸漬し、3分後に取り出した。その後、巻回電極体を解体し、浸漬側の端部から巻回軸に平行な方向に非水電解液が浸透した高さを測定し、非水電解液の含浸性を次の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:非水電解液が浸透した高さが4cm以上
B:非水電解液が浸透した高さが2.5cm以上4cm未満
C:非水電解液が浸透した高さが2.5cm未満
【0043】
〔実施例2~6、比較例1及び2〕
基材層に塗布するスラリーの目付量を調整して、耐熱層の第1領域及び第2領域の細孔径を表1に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様の手順でセパレータ及び電極体を作製した。作製したセパレータについて、透気度の測定及び気孔率の算出を行った。また、作製した電極体について、実施例1で行った手順で非水電解液の含浸性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
実施例1~6では、基材層の細孔径は全体に亘って同じであり、耐熱層の第1領域の細孔径が第2領域の細孔径よりも大きいため、セパレータの端部領域の細孔径が中央部領域の細孔径よりも大きくなっている。一方、比較例1では、端部領域の細孔径と中央部領域の細孔径とが同じであり、比較例2では端部領域の細孔径よりも中央部領域の細孔径の方が大きくなっている。このことから、実施例1~6では、毛細管現象により端部領域から中央領域に向けて非水電解液が浸透しやすく、巻回電極体の内部に速やかに非水電解液が含浸し、比較例1及び2では、毛細管現象による非水電解液の浸透が生じにくいために、非水電解液の含浸性が低かったと考えられる。実施例5では、第1領域の細孔径に比較して第2領域の細孔径が大幅に小さいため、実施例1~4及び6に比較すると含浸性の評価が低くなったと考えられる。
【0046】
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 セパレータ、11 端辺、11a~11d 端辺、15 端部領域、16 中央部領域、30 非水電解質二次電池、31 巻回電極体、33 注液孔、35 ケース、36 外装体、37 封口板、X 巻回軸。