(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135548
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】オリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20220908BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20220908BHJP
C01B 25/30 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
H01M4/58
C01B25/45 Z
C01B25/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035433
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】初森 智紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050FA17
5H050GA01
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイクロ波照射による低温での合成反応を用いて、充分に製造工程の効率化を図りつつも、優れた電池特性を発現することのできるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法を提供する。
【解決手段】LiaMnbFecMxPO4で表されるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法であって、(I)リン酸化合物(a)、硫酸、塩酸及び硝酸から選ばれる1種又は2種以上の酸化合物(b)、リチウム化合物(c)、及び水(d1)の混合液に、アルカリ化合物溶液を添加後、固液分離して、BET比表面積が10m2/g~200m2/gのリン酸三リチウム粒子Aを得る工程、(II)得られたリン酸三リチウム粒子A、及び水(d2)を混合、次いでマンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物(e)を添加後、80℃~120℃にてマイクロ波を照射して正極活物質前駆体を得る工程を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(X):
LiaMnbFecMxPO4・・・(X)
(式(X)中、MはMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びxは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦x≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(Mの価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表されるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法であって、次の工程(I)~(II):
(I)リン酸化合物(a)、硫酸、塩酸及び硝酸から選ばれる1種又は2種以上の酸化合物(b)、リチウム化合物(c)、及び水(d1)を混合して得られた混合液iに、アルカリ化合物溶液を添加してスラリーIを得た後、得られたスラリーIを固液分離して、BET比表面積が10m2/g~200m2/gのリン酸三リチウム粒子Aを得る工程
(II)得られたリン酸三リチウム粒子A、及び水(d2)を混合してスラリーII1を調製し、次いでスラリーII1にマンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物(e)を添加してスラリーII2を得た後、温度80℃~120℃にてマイクロ波を照射して正極活物質前駆体を得る工程
を備える、オリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法。
【請求項2】
さらに次の工程(III):
(III)工程(II)で得られた正極活物質前駆体、炭素源(f)及び水を混合し、次いで乾燥して得られた粉末を焼成する工程
を備える、請求項1に記載のオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法。
【請求項3】
工程(II)において、スラリーII1中のリン酸三リチウム粒子Aのモル量と、スラリーII1に添加する金属化合物(e)中のマンガン及び鉄のモル量との比(Li3PO4:(Mn+Fe))が、0.95:1~1.05:1である請求項1又は2に記載のオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法。
【請求項4】
工程(II)におけるスラリーII2の固形分濃度が、10質量%~80質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載のオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法。
【請求項5】
工程(I)にて得られるスラリーIにおいて、リチウム化合物(c)に含まれるリチウムのモル量と、リン酸化合物(a)に含まれるリンのモル量との比(リチウム:リン)が、2.5:1~3.2:1である請求項1~4のいずれか1項に記載のオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法。
【請求項6】
工程(II)において、スラリーII2の25℃におけるpHが、4.8~7.0である請求項1~5のいずれか1項に記載のオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯電子端末や電気自動車等に不可欠な、高容量で軽量な電源としての地位を確立している。近年の電子機器の高性能化による消費電力の増大に伴い、リチウムイオン二次電池の更なる高容量化が要求されている。かかる電池を構成する正極材料の一つとして、オリビン型構造を有するリン酸マンガンリチウムやリン酸鉄リチウム等の、いわゆるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質が知られており、その多くが、耐圧容器の使用とともに蒸気吹込みや加温を要するとされる水熱合成反応によって、製造されている。
【0003】
こうしたなか、オリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造工程における効率化等を図るべく、水熱合成反応に代えて、マイクロ波照射による合成反応を用いた製造方法も開発されている。例えば、特許文献1には、遷移金属を含む化合物と、リン酸を含む化合物と、リチウムを含む化合物とからなる、Li:Fe:Pのモル比をほぼ1:1:1とする固体混合物にマイクロ波を照射するリン酸遷移金属リチウムの作製方法が開示されている。また特許文献2には、Li源原料、P源原料、金属源原料及び溶媒とよりなる液状原料を、マイクロ波が照射される反応域で低温短時間反応処理するオリビン型化合物の液相高速合成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-52996号公報
【特許文献2】特開2013-163618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載の技術であっても、マイクロ波を照射するにあたり、充分に温度を低めることができない上に、核生成と粒成長が同時に進行して正極活物質の粒径制御が困難になりがちであるため、製造工程における効率化を図りつつ、電池特性を充分に高め得る正極活物質を製造するには、未だ改善の余地がある。
【0006】
したがって、本発明の課題は、マイクロ波照射による低温での合成反応を用いて、充分に製造工程の効率化を図りつつも、優れた電池特性を発現することのできるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、リン酸三リチウム(Li3PO4)粒子を用いてマイクロ波照射を施すことにより、一般的な水熱合成反応に比べ、低温での処理を可能としつつも、充分に電池特性を高め得るオリビン型リン酸リチウム系正極活物質を安定的に製造できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(X):
LiaMnbFecMxPO4・・・(X)
(式(X)中、MはMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びxは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦x≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(Mの価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表されるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法であって、次の工程(I)~(II):
(I)リン酸化合物(a)、硫酸、塩酸及び硝酸から選ばれる1種又は2種以上の酸化合物(b)、リチウム化合物(c)、及び水(d1)を混合して得られた混合液iに、アルカリ化合物溶液を添加してスラリーIを得た後、得られたスラリーIを固液分離して、BET比表面積が10m2/g~200m2/gのリン酸三リチウム粒子Aを得る工程
(II)得られたリン酸三リチウム粒子A、及び水(d2)を混合してスラリーII1を調製し、次いでスラリーII1にマンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物(e)を添加してスラリーII2を得た後、温度80℃~120℃にてマイクロ波を照射して正極活物質前駆体を得る工程
を備える、オリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法であれば、用いるリン酸三リチウム粒子の物性を制御しつつ、充分なる低温域にてマイクロ波を照射することで製造工程の効率化を図ることができる正極活物質前駆体が得られるとともに、これから得られるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の粒径を容易に制御することをも可能とし、電池特性の向上を効果的に図ることのできるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質を安定的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法は、下記式(X):
LiaMnbFecMxPO4・・・(X)
(式(X)中、MはMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びxは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦x≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(Mの価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表されるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の製造方法であって、次の工程(I)~(II):
(I)リン酸化合物(a)、硫酸、塩酸及び硝酸から選ばれる1種又は2種以上の酸化合物(b)、リチウム化合物(c)、及び水(d1)を混合して得られた混合液iに、アルカリ化合物溶液を添加してスラリーIを得た後、得られたスラリーIを固液分離して、BET比表面積が10m2/g~200m2/gのリン酸三リチウム粒子Aを得る工程
(II)得られたリン酸三リチウム粒子A、及び水(d2)を混合してスラリーII1を調製し、次いでスラリーII1にマンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物(e)を添加してスラリーII2を得た後、温度80℃~120℃にてマイクロ波を照射して正極活物質前駆体を得る工程
を備える。
【0011】
本発明の製造方法により得られるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質は、下記式(X):
LiaMnbFecMxPO4・・・(X)
(式(X)中、MはMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びxは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦x≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(Mの価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表される。
すなわち、本発明では、工程(I)において得られる、限られた範囲のBET比表面積を有するリン酸三リチウム(Li3PO4)粒子Aを用いることにより、かかる粒子Aを核として反応を進行させることができるため、粒成長を適度に緩やかにすることが可能となる。そして、続く工程(II)において、充分なる低温域にてマイクロ波を照射して得られる正極活物質前駆体を用いれば、過度な粒成長を抑制することができるため、優れた電池特性を発現するオリビン型リン酸リチウム系正極活物質を得ることができる。このように、製造工程の効率化を図ることを可能としながらも、有用性の高いオリビン型リン酸リチウム系正極活物質を安定的に製造することができる。
【0012】
上記式(X)で表されるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質は、少なくともマンガン(Mn)又は鉄(Fe)を含むオリビン型リン酸リチウム系正極活物質(以下、「粒子(X)」とも称する)であって、一次粒子が凝集することにより形成される二次粒子である。式(X)中、Mは、Mg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示し、好ましくはMg、又はZrである。aは、0<a≦1.2であって、好ましくは0.6≦a≦1.2であり、より好ましくは0.65≦a≦1.15であり、さらに好ましくは0.7≦a≦1.1である。bは、0≦b≦1.2であって、好ましくは0.25≦b≦0.8であり、より好ましくは0.35≦b≦0.8である。cは、0≦c≦1.2であって、好ましくは0.2≦c≦0.75であり、より好ましくは0.2≦c≦0.65である。そして、これらb及びcは、b+c≠0を満たす。xは、0≦x≦0.3であって、好ましくは0≦x≦0.15であり、より好ましくは0≦x≦0.1である。そして、これらa、b、c及びxは、a+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(Mの価数)×x=3を満たす数である。
上記式(X)で表されるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質としては、より具体的には、例えばLiMnPO4、LiFePO4、LiMn0.8Fe0.2PO4、LiMn0.1Fe0.9PO4、LiMn0.8Fe0.1Mg0.1PO4、LiMn0.8Fe0.1Zr0.05PO4、等が挙げられる。
【0013】
本発明の製造方法が備える工程(I)は、リン酸化合物(a)、硫酸、塩酸及び硝酸から選ばれる1種又は2種以上の酸化合物(b)(以下、「酸化合物(b)」とも略す)、リチウム化合物(c)、及び水(d1)を混合して得られた混合液iに、アルカリ化合物溶液を添加してスラリーIを得た後、得られたスラリーIを固液分離して、BET比表面積が10m2/g~200m2/gのリン酸三リチウム粒子Aを得る工程である。
【0014】
用い得るリン酸化合物(a)としては、オルトリン酸(H3PO4、リン酸)、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等が挙げられる。なかでもリン酸を用いるのが好ましく、70~90質量%濃度の水溶液として用いるのがより好ましい。
【0015】
用い得る酸化合物(b)は、硫酸、塩酸及び硝酸から選ばれる1種又は2種以上であって、混合液IのpH環境を整えつつ、リチウム化合物(c)の溶解性を高める作用をもたらす。なかでもリチウム化合物(c)の溶解性を高める観点から、硫酸を用いるのが好ましく、95%質量以上の濃度の濃硫酸を用いるのがより好ましい。
【0016】
用い得るリチウム化合物(c)としては、水酸化リチウム(例えばLiOH・H2O)、炭酸リチウム(例えば、Li2CO3)、硫酸リチウム、酢酸リチウム、及びこれらの水和物が挙げられる。なかでも、リン酸三リチウム粒子AのBET比表面積を所望の範囲に制御する観点、及び製造工程の効率化や製造コスト低減の観点から、炭酸リチウムが好ましい。
【0017】
混合する水(d1)の量は、各成分の溶解性又は分散性を確保する観点、及びリン酸三リチウム粒子Aの生成効率を高める等の観点から、リン酸化合物(a)に含まれるリン1モルに対し、6モル~25モルとなる量が好ましく、8モル~18モルとなる量がより好ましい。
【0018】
これらリン酸化合物(a)、酸化合物(b)、リチウム化合物(c)、及び水(d1)を予め混合して混合液iを得た後、かかる混合液iに対し、後述するようにアルカリ化合物溶液を添加してスラリーIを得ればよい。
得られる混合液iにおいて、リチウム化合物(c)に含まれるリチウムのモル量と、リン酸化合物(a)に含まれるリンのモル量との比(リチウム:リン)は、好ましくは2.5:1~3.2:1であり、より好ましくは2.6:1~3.1:1であり、さらに好ましくは2.8:1~3.05:1である。
このような量的関係となるような量で、リン酸化合物(a)、酸化合物(b)、リチウム化合物(c)、及び水(d1)を混合し、混合液iを調製すればよく、次いで後述するように、得られた混合液iにアルカリ化合物溶液を添加してスラリーIを得れればよい。
【0019】
なお、リン酸化合物(a)、酸化合物(b)、リチウム化合物(c)、及び水(d1)を混合する順序は、特に制限はないが、各成分の溶解性又は分散性を確保する観点から、リン酸化合物(a)、酸化合物(b)、及び水(d1)を混合した後、得られた混合液にリチウム化合物(c)を添加して混合するのが好ましい。
【0020】
次いで、得られた混合液iにアルカリ化合物溶液を添加する。これにより、リン酸三リチウム粒子AのBET比表面積を制御可能にすることができる。用い得るアルカリ化合物溶液としては、水酸化ナトリウムを含有する水溶液、又は水酸化カリウムを含有する水溶液が挙げられる。
【0021】
アルカリ化合物溶液を添加するにあたり、上記混合液iにアルカリ化合物溶液を滴下するのが好ましい。この際におけるアルカリ化合物溶液の滴下速度は、混合液iに滴下するアルカリ化合物溶液に含有されるアルカリ化合物のモル量基準で、好ましくは0.03モル/分~4モル/分であり、より好ましくは0.04モル/分~3モル/分である。
【0022】
得られるスラリーIの25℃におけるpHは、リン酸三リチウム粒子Aの生成効率を高める観点、及びリン酸三リチウム粒子AのBET比表面積を所望の範囲に制御する観点から、好ましくは-1~3であり、より好ましくは-1~2.5であり、さらに好ましくは-1~2.0である。
【0023】
次に、得られたスラリーIを固液分離して、沈殿回収することによりリン酸三リチウム粒子Aが高収率で得られる。固液分離に用いる装置しては、例えば、ブフナー漏斗、フィルタープレス機、遠心濾過機、減圧濾過機等が挙げられる。なかでも、効率的にLi3PO4粒子を得る観点から、ブフナー漏斗やフィルタープレス機を用いるのが好ましい。
【0024】
得られた沈殿物は、さらに水で洗浄してケーキを得た後、これをろ過することにより、リン酸三リチウム粒子Aとして単離するのが好ましい。洗浄する際における水の使用量は、リン酸三リチウム粒子A 1質量部に対し、好ましくは50~2000質量部であり、より好ましくは100~1500質量部である。なお、その後乾燥してもよい。かかる乾燥手段としては、真空乾燥、噴霧乾燥、箱型乾燥、流動床乾燥、外熱式乾燥、凍結乾燥が挙げられる。なかでも、箱型乾燥が好ましい。
【0025】
得られるリン酸三リチウム粒子AのBET比表面積は、製造工程の効率化を図りながらも優れた電池特性を発現させる観点から、10m2/g~200m2/gであって、好ましくは13m2/g~180m2/gであり、より好ましくは15m2/g~150m2/gである。なお、リン酸三リチウム粒子AにおけるBET比表面積とは、窒素吸着法による吸着等温線から求められる値を意味する。
【0026】
また、リン酸三リチウム粒子Aの平均粒径(D50)は、好ましくは1.0μm~12μmであり、より好ましくは1.5μm~12.0μmであり、さらに好ましくは2.0μm~12.0μmである。なお、リン酸三リチウム粒子Aにおける「平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
【0027】
本発明の製造方法が備える(II)は、工程(I)で得られたリン酸三リチウム粒子A、及び水(d2)を混合してスラリーII1を調製し、次いでスラリーII1にマンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物(e)を添加してスラリーII2を得た後、温度80℃~120℃にてマイクロ波を照射して正極活物質前駆体を得る工程である。
【0028】
スラリーII1を調製するにあたり、混合する水(d2)の量は、各成分の溶解性又は分散性を確保する観点、及びオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の生成効率を高める等の観点から、リン酸三リチウム粒子A 1質量部に対し、好ましくは1.5~8質量部であり、より好ましくは2~5質量部である。
【0029】
なお、スラリーII1にマンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物(e)を添加する前に、予めスラリーII1を撹拌するのが好ましい。この際における撹拌時間は、好ましくは1分間~180分間であり、より好ましくは5分間~120分間である。
【0030】
次いで、スラリーII1にマンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物(e)を添加して、スラリーII2を得る。
【0031】
金属化合物(e)としては、式(X)で表されるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質に応じて、マンガン化合物、鉄化合物、並びにマンガン化合物及び鉄化合物以外の金属(M:Mは式(X)中のMと同義である)化合物を用いればよい。これら金属化合物(e)は、少なくともマンガン化合物又は鉄化合物を含んでいればよく、さらにマンガン化合物及び鉄化合物以外の金属(M)化合物を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0032】
かかる金属化合物(e)としては、例えばフッ化物、塩化物、ヨウ化物等のハロゲン化金属塩、硫酸金属塩の他、有機酸金属塩、並びにこれらの水和物等が挙げられる。このうち、有機酸金属塩を構成する有機酸としては、炭素数1~20の有機酸、さらに炭素数2~12の有機酸が好ましい。さらに好ましくは、シュウ酸、フマル酸等のジカルボン酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸、酢酸等の脂肪酸が挙げられる。
【0033】
スラリーII1中のリン酸三リチウム粒子Aのモル量と、添加する金属化合物(e)中のマンガン及び鉄のモル量との比(Li3PO4:(Mn+Fe))は、オリビン型リン酸リチウム系正極活物質の生成効率を高める観点から、好ましくは0.95:1~1.05:1であり、より好ましくは0.96:1~1.04:1であり、さらに好ましくは0.97:1~1.03:1である。
【0034】
なお、スラリーII1に金属化合物(e)を添加する際、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。かかる酸化防止剤としては、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、ハイドロサルファイトナトリウム(Na2S2O4)、アンモニア水等を使用することができる。酸化防止剤の添加量は、過剰に添加されることでオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の生成が阻害されるのを防止する観点から、金属化合物(e)1モルに対し、好ましくは0.01~1モルであり、より好ましくは0.03~0.5モルである。
【0035】
得られるスラリーII2の固形分濃度は、製造工程の効率化を図る観点から、好ましくは10質量%~80質量%であり、より好ましくは15質量%~75質量%であり、さらに好ましくは20質量%~75質量%である。
なお、スラリーII2は、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物(e)を添加した後、撹拌するのが好ましい。この際における撹拌時間は、好ましくは1分間~60分間であり、より好ましくは3分間~45分間である。
【0036】
得られるスラリーII2の25℃におけるpHは、オリビン型リン酸リチウム系正極活物質の生成効率を高める観点から、好ましくは4.8~7.0であり、より好ましくは5.0~6.8であり、さらに好ましくは5.5~6.5である。
【0037】
次に、得られたスラリーII2に、温度80℃~120℃にてマイクロ波を照射する。これにより、低温での合成反応を可能として、充分に製造工程の効率化を図りながら、有用性の高いオリビン型リン酸リチウム系正極活物質を製造するための正極活物質前駆体を得ることができる。
【0038】
マイクロ波を照射する際における温度は、80℃~120℃である。
なお、マイクロ波を照射するにあたり、スラリーII2を密閉容器に格納するが、上記温度とは、マイクロ波発生装置内側面に付帯された放射温度計で測定した温度を意味する。またスラリーII2を密閉容器に格納した際に、特に加圧する必要はないため、簡易で効率的な合成反応を可能にすることができる。
密閉容器内に格納したスラリーII2は、撹拌するのが好ましい。かかる攪拌は、マイクロ波発生装置の中心部を軸とした遊星式によって行うのがよい。
【0039】
また、照射するマイクロ波の周波数は、好ましくは2GHz~30GHzであり、より好ましくは2.45GHz~30GHzである。
マイクロ波を照射する時間は、有用性の高いオリビン型リン酸リチウム系正極活物質を生成しつつ、製造工程の効率化を充分に図る観点から、好ましくは1分間~60分間であり、より好ましくは3分間~60分間であり、さらに好ましくは5分間~60分間である。
【0040】
マイクロ波を照射した後のスラリーは、リン酸三リチウム粒子Aと同様、固液分離した後、得られた沈殿物を水で洗浄してケーキを得た後、これをろ過し、次いで乾燥することにより正極活物質前駆体を得ることができる。
【0041】
工程(II)で得られた正極活物質前駆体は、さらに次の工程(III):
(III)工程(II)で得られた正極活物質前駆体、炭素源(f)及び水を混合し、次いで乾燥して得られた粉末を焼成する工程
を経ることにより、オリビン型リン酸リチウム系正極活物質を得るのがよい。これにより、電池特性を有効に高め得るリチウムイオン二次電池を構成する正極の材料として用いることができる。
【0042】
用い得るセルロースナノファイバーの繊維径は1nm~1000nmであり、これを構成するセルロース分子鎖では、炭素による周期的構造が形成されている。そのため、セルロースナノファイバーが炭化されてオリビン型リン酸リチウム系正極活物質に担持されることによって、電子導電パスの低下を有効に抑制し、効果的に電池特性を高めることができる。
【0043】
用い得る水溶性炭素材料としては、例えば、糖類、ポリオール、ポリエーテル、及び有機酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、ポリビニルアルコール、グリセリン等のポリオールやポリエーテル;クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、溶媒への溶解性及び分散性を高めて炭素材料として効果的に機能させる観点から、グルコース、フルクトース、スクロース、デキストリンが好ましく、グルコースがより好ましい。
かかる水溶性炭素材料は、セルロースナノファイバーと同様、炭化されて炭素となり、これがオリビン型リン酸リチウム系正極活物質に担持されることとなる。
【0044】
これら炭素源(f)のなかでも、製造工程の効率化を図りつつ、効果的に電池特性を高める観点から、セルロースナノファイバー及び/又はグルコースを用いるのが好ましく、セルロースナノファイバーを用いるのがより好ましい。
【0045】
工程(III)において混合する炭素源(f)の量は、オリビン型リン酸リチウム系正極活物質100質量部に対し、炭素源(f)の炭素原子換算量で、好ましくは0.8質量部~15質量部であり、より好ましくは1質量部~10質量部である。固液分離に用いる装置しては、例えば、スターラー、攪拌ミキサ、回転型粉体混合機、攪拌型粉体混合機、遊星ミル、ボールミル、ビーズミル、アトライタミル等が挙げられる。なかでも、遊星ミル、ボールミル、ビーズミル、アトライタミルによる混合粉砕が好ましい。
また、工程(III)における焼成は、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下に400℃以上、好ましくは400℃~800℃で5分~3時間、好ましくは0.3時間~1.5時間の条件にて行うのが好ましい。焼成に用いる装置しては、雰囲気が制御できる加熱炉であればよく、例えば、箱型炉、外熱式ロータリーキルン等が挙げられる。
【0046】
得られるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質の平均粒径(D50)は、好ましくは1μm~12μmであり、より好ましくは2μm~12μmである。なお、オリビン型リン酸リチウム系正極活物質における「平均粒径」とは、リン酸三リチウム粒子Aと同様、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
また、得られるオリビン型リン酸リチウム系正極活物質のBET比表面積は、優れた電池特性を発現させる観点から、好ましくは14m2/g~50m2/gであり、より好ましくは14m2/g~30m2/gである。なお、オリビン型リン酸リチウム系正極活物質におけるBET比表面積とは、リン酸三リチウム粒子AにおけるBET比表面積と同様、窒素吸着法による吸着等温線から求められる値を意味する。
【0047】
本発明のオリビン型リン酸リチウム系正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いる材料である。具体的には、例えば本発明のオリビン型リン酸リチウム系正極活物質と、アセチレンブラックやケッチェンブラック、ポリフッ化ビニリデン、N-メチル-2-ピロリドン等とを混練して正極スラリーを調製した後、集電体に塗工し、次いでプレス成形して正極を作製する。
本発明のオリビン型リン酸リチウム系正極活物質を用いて得られた正極を適用できる、リチウムイオン二次電池としては、正極と負極と電解液とセパレータ、若しくは正極と負極と固体電解質を必須構成とするものであれば特に限定されない。
【0048】
本発明のオリビン型リン酸リチウム系正極活物質であれば、高純度で微細な粒子であるため、有用性の高い正極を得ることができる。
【0049】
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト、シリコン系(Si、SiOx)、チタン酸リチウム又は非晶質炭素等の炭素材料等を用いることができる。そしてリチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。さらに、2種以上の上記の負極材料を併用してもよく、たとえばグラファイトとシリコン系の組み合わせを用いることができる。
【0050】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0051】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF3)2及びLiN(SO3CF3)2、LiN(SO2C2F5)2及びLiN(SO2CF3)(SO2C4F9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【0053】
固体電解質は、正極及び負極を電気的に絶縁し、高いリチウムイオン電導性を示すものである。たとえば、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、Li7La3Zr2O12、50Li4SiO4・50Li3BO3、Li2.9PO3.3N0.46、Li3.6Si0.6P0.4O4、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3、Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4、30Li2S・26B2S3・44LiI、63Li2S・36SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、70Li2S・30P2S5、50Li2S・50GeS2、Li7P3S11、Li3.25P0.95S4を用いればよい。
【0054】
上記の構成を有するリチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限を受けるものではなく、コイン型、円筒型,角型等種々の形状や、ラミネート外装体に封入した不定形状であってもよい。
【実施例0055】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
各製造例にしたがって、Li3PO4粒子を製造した。
得られた各Li3PO4粒子のBET比表面積及び平均粒径(D50)を表1に示す。
【0057】
[製造例1:Li3PO4-A粒子の製造]
リン酸124.6g(純度85%、関東化学社製)、硫酸73.6g(純度96%、関東化学社製)、及び水270gを2Lポリ容器に入れ、撹拌羽根を用いて5分間攪拌し、混合液i-1を調製した。次いで、得られた混合液i-1に炭酸リチウム59.9g(純度99.95%、関東化学社製)を20g/分の速度で添加し、撹拌羽根を用いて15分間撹拌して、炭酸リチウムを完全に溶解させた。その後、水酸化ナトリウム水溶液180.09g(純度48%、関東化学社製)を30g/分の速度で添加し、スラリーI-1を得た。得られたスラリーI-1をブフナー漏斗により固液分離し、次いで得られた固形分を1Lの水で洗浄してLi3PO4ケーキを得た後、これを100℃の恒温槽中で12時間乾燥してLi3PO4-A粒子を得た。
【0058】
[製造例2:Li3PO4-B粒子の製造]
水酸化ナトリウム水溶液を添加する速度を200g/分とした以外、製造例1と同様にしてLi3PO4-B粒子を得た。
【0059】
[製造例3:Li3PO4-C粒子の製造]
水酸化ナトリウム水溶液を添加する速度を15g/分とした以外、製造例1と同様にしてLi3PO4-C粒子を得た。
【0060】
[製造例4:Li3PO4-D粒子の製造]
水酸化ナトリウム水溶液を添加する速度を5g/分とした以外、製造例1と同様にしてLi3PO4-D粒子を得た。
【0061】
【0062】
上記各Li3PO4粒子を用い、各正極活物質を製造した。
製造時における各諸条件とともに、得られた各正極活物質の平均粒径(D50)及びXRD分析による異相の有無の評価結果、並びにリチウムイオン二次電池における放電容量の評価結果を表2に示す。また、スラリーII2の固形分濃度、及び得られた各正極活物質のBET比表面積を表3に示す。
【0063】
なお、正極活物質のBET比表面積は、流動式比表面積自動測定装置(FlowSorbIII2305、島津製作所社製)を用い、窒素を30%含有する窒素・ヘリウム混合ガスを使用して測定した。
正極活物質の平均粒径(D50)は、粒子の粒度分布をレーザー回折装置(マイクロトラックMT3000II、MicrotracBEL社製)を用い、測定条件として粒子透過性:透過、粒子形状:非球形、粒子屈折率:1.52を採用し、溶媒としてエタノールを用い、溶媒屈折率:1.36として測定した。
【0064】
[実施例1]
製造例1で得られたLi3PO4-A粒子 11.6gと水30gを混合して5分間撹拌し、スラリーII1x1を調製した。得られたスラリーII1x1にMnSO4・5H2O 16.9g、及びFeSO4・7H2O 8.34gを添加して5分間撹拌し、スラリーII2x1(25℃におけるpH=6.1)を得た。
得られたスラリーII2x1をフッ素樹脂製容器に入れ、マイクロ波加熱装置(MWS-2、Berghof社製、周波数2450MHz)にて温度90℃で10分間マイクロ波を照射して、スラリーII3x1を得た。得られたスラリーII3x1をブフナー漏斗により固液分離し、次いで得られた固形分を500mLの水で洗浄してケーキを得た後、これを100℃の恒温槽中で乾燥して正極活物質前駆体(e1')を得た。
得られた正極活物質前駆体(e1')3g、セルロースナノファイバー 0.85g(含水率80%、炭素原子換算量2.5質量%)、水5g、及びジルコニアボール80g(φ1mm)を遊星ボールミル容器に入れ、遊星ボールミル(P-5、フリッチュ社製)にて400rpmの速度で10分間混合した後、80℃の恒温槽中で乾燥して粉末を得た。
次いで、得られた粉末を管状電気炉(TMF-500N、アズワン社製)を用いて、窒素フロー(300mL/分)の条件にて700℃で1時間加熱し、炭素が担持されてなる正極活物質(e1)(式:LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
【0065】
[実施例2]
マイクロ波加熱装置にて温度90℃で30分間マイクロ波を照射した以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e2)を得た。
【0066】
[実施例3]
マイクロ波加熱装置にて温度80℃で10分間マイクロ波を照射した以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e3)を得た。
【0067】
[実施例4]
マイクロ波加熱装置にて温度80℃で30分間マイクロ波を照射した以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e4)を得た。
【0068】
[実施例5]
マイクロ波加熱装置にて温度100℃で30分間マイクロ波を照射した以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e5)を得た。
【0069】
[実施例6]
マイクロ波加熱装置にて温度110℃で30分間マイクロ波を照射した以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e6)を得た。
【0070】
[実施例7]
マイクロ波加熱装置にて温度120℃で30分間マイクロ波を照射した以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e7)を得た。
【0071】
[実施例8]
スラリーII1x1にMnSO4・5H2Oを24.14g添加するのみで、FeSO4・7H2Oを添加しなかった以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e8)(式:LiMnPO4)を得た。
【0072】
[実施例9]
スラリーII1x1にFeSO4・7H2Oを27.80g添加するのみで、MnSO4・5H2Oを添加しなかった以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e9)(式:LiFePO4)を得た。
【0073】
[実施例10]
Li3PO4-A粒子の代わりに、製造例2で得られたLi3PO4-B粒子を用いた以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e10)を得た。
【0074】
[実施例11]
Li3PO4-A粒子の代わりに、製造例3で得られたLi3PO4-C粒子を用いた以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e11)を得た。
【0075】
[実施例12]
Li3PO4-A粒子の代わりに、製造例4で得られたLi3PO4-D粒子を用いた以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e12)を得た。
【0076】
[実施例13]
製造例1で得られたLi3PO4-A粒子 11.6gと水30gを混合して5分間撹拌し、スラリーII1x13を調製した。得られたスラリーII1x13に水酸化ナトリウム水溶液0.25g(スラリーII1x13中のLi3PO4粒子1モルに対して3モルの相当量)、MnSO4・5H2O 16.9g、及びFeSO4・7H2O 8.34gを添加して5分間撹拌し、スラリーII2x13(25℃におけるpH=6.7)を得た。
スラリーII2x1の代わりに、得られたスラリーII2x13を用いた以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e13)を得た。
【0077】
[実施例14]
製造例1で得られたLi3PO4-A粒子 11.6gと水30gを混合して5分間撹拌し、スラリーII1x14を調製した。得られたスラリーII1x14にリン酸0.35g、MnSO4・5H2O 16.9g、及びFeSO4・7H2O 8.34gを添加して5分間撹拌し、スラリーII2x14を得た(25℃におけるpH=5.0)。
スラリーII2x1の代わりに、得られたスラリーII2x14を用いた以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e14)を得た。
【0078】
[実施例15]
スラリーII1x1を調製する際の水を20gとし、かつマイクロ波加熱装置にて温度90℃で30分間マイクロ波を照射した以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(e15)を得た。
【0079】
[比較例1]
マイクロ波加熱装置にてマイクロ波を照射する代わりに、スラリーII2x1をオートクレーブに入れて160℃で60分間保持した以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(c1)を得た。
【0080】
[比較例2]
マイクロ波加熱装置にて温度70℃で30分間マイクロ波を照射した以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(c2)を得た。
【0081】
[比較例3]
スラリーII2x1をオートクレーブに入れて100℃で60分間保持した以外、比較例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(c3)を得た。
【0082】
[比較例4]
製造例で得られたLi3PO4粒子を用いることなく、正極活物質を製造した。具体的には、LiOH・H2O 2.569g(60mmol)、NaOH 4.4g(110mmol)、水 30mLを混合してスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを25℃の温度に保持しながら10分間撹拌しつつ、85%のリン酸水溶液 6.918gを35mL/分の速度で滴下し、続いて12時間撹拌して混合液e1(リチウムのモル量とリンのモル量との比(リチウム:リン)=1:1)を得た。
得られた混合液e1全量に対し、MnSO4・5H2O 10.1g、FeSO4・7H2O 5.00gを添加して、混合液e2(pH4.3)を得た。このとき、添加したMnSO4とFeSO4のモル比は、7:3であった。得られた混合液e2を大気圧下、90℃で12時間撹拌し、反応を進行させて正極活物質前駆体(c4')を得た。
正極活物質前駆体(e1')の代わりに、得られた正極活物質前駆体(c4')を用いた以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(c4)を得た。
【0083】
[比較例5]
製造例で得られたLi3PO4粒子を用いることなく、正極活物質を製造した。具体的には、CH3COOLi・2H2O(和光純薬特級)、Mn(CH3COO)2・4H2O(和光純薬特級)、及びNH4H2PO4(和光純薬特級)を各々10mmol秤量し、40mLの蒸留水に添加して、混合液e5を得た。
スラリーII2x1の代わりに、得られた混合液e5を用いた以外、実施例1と同様にして、炭素が担持されてなる正極活物質(c5)を得た。
【0084】
《生成相(異相の有無)の観察》
得られた正極活物質について、XRD(X線回折測定装置(D8-Advance、BRUKER社製)分析により生成相を観察し、異相の有無を評価した。
具体的には、測定条件をターゲットCuKα、管電圧35kV、管電流350mA、走査範囲10°~80°(2θ)、ステップ幅0.02°、及びスキャンスピード0.13秒/ステップとし、得られたチャートを元に、各ピーク(2θ)に対応する面間隔を有する結晶相を対応付けて結晶相の同定を行い、異相の有無を確認した。
【0085】
《放電容量の評価》
得られた正極活物質を用い、まずリチウムイオン二次電池の正極を作製した。具体的には、得られた正極活物質、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを質量比90:5:5の配合割合で混合し、これにN-メチル-2-ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜き、ハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記正極を用いてコイン型リチウムイオン二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレン等の高分子多孔フィルムからなる公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が-50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウムイオン二次電池(CR-2032)を製造した。
【0086】
得られたリチウムイオン二次電池を用い、定電流密度での充放電試験を行った。具体的には、電流0.2CA(34mAh/g)、電圧4.5Vの定電流充電後に、電流3CA、終止電圧2.0Vの定電流放電を行った。なお、充放電試験は全て30℃で行った。
【0087】
【0088】