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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135582
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20220908BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 G
B24B23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035497
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慈
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 諭
(72)【発明者】
【氏名】大谷 亮介
(72)【発明者】
【氏名】中西 信人
【テーマコード(参考)】
3C064
3C158
【Fターム(参考)】
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC03
3C064BA02
3C064BA18
3C064BB02
3C064CA03
3C064CA08
3C064CA26
3C064CA80
3C064CA82
3C064CB33
3C064CB64
3C064CB69
3C064CB74
3C064CB91
3C064DA02
3C064DA19
3C064DA28
3C064DA37
3C064DA39
3C064DA56
3C064DA59
3C064DA60
3C064DA68
3C064DA72
3C064DA78
3C158AA04
3C158AA16
3C158AC02
3C158AC05
3C158BA06
3C158BC03
3C158BC05
3C158CB06
(57)【要約】
【課題】交流電源から電力供給を受けてモータを駆動するように構成された電動工具において、モータに流れる電流を検出することなく、モータの過負荷状態を判定して、モータへの電力供給を制限できるようにする。
【解決手段】電動工具は、モータからツールへ駆動力を伝達する出力軸の実回転数を検出する検出部と、交流電源からモータへの通電経路上に設けられたスイッチ素子と、検出部にて検出された実回転数が目標回転数に到達するよう、スイッチ素子をスイッチング動作させて、モータに印加される実効電圧を制御する制御部と、検出部にて検出された実回転数と目標回転数との差が閾値以上であるとき、制御部にて制御される実効電圧を制限して、モータの回転を低下若しくは停止させるトルクリミッタ部と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生するように構成されたモータと、
前記駆動力を受けて回転し、ツールを駆動するように構成された出力軸と、
前記出力軸の実回転数を検出するように構成された検出部と、
交流電源から前記モータに交流電力を伝達するように構成された通電経路と、
前記通電経路上に設けられたスイッチ素子と、
前記検出部にて検出された前記実回転数が予め設定された目標回転数に到達するよう、前記スイッチ素子をスイッチング動作させて、前記モータに印加される実効電圧を制御するように構成された制御部と、
前記検出部にて検出された前記実回転数と前記目標回転数との差が閾値以上であるとき、前記制御部にて制御される前記実効電圧を制限して、前記モータの回転を低下若しくは停止させるように構成されたトルクリミッタ部と、
を備えている、電動工具。
【請求項2】
前記モータは、ブラシ付きモータである、請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記制御部は、前記モータに印加される交流電圧の導通角を制御することで、前記実効電圧を制御するように構成され、
前記トルクリミッタ部は、前記導通角を制限することで、前記モータの回転を低下若しくは停止させるように構成されている、請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記制御部は、制御開始後、時間の経過に従って前記目標回転数に近付くように指令回転数を設定し、該指令回転数に基づき前記実効電圧を制御するように構成されており、
前記トルクリミッタ部は、前記指令回転数と前記目標回転数との差が予め設定された開始判定値以下になってから、前記実回転数と前記目標回転数との差が前記閾値以上であるか否かの判定を開始するように構成されている、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の電動工具。
【請求項5】
前記目標回転数の設定を受け付けるように構成された目標設定部を備え、
前記トルクリミッタ部は、前記目標設定部を介して設定された前記目標回転数に応じて、前記開始判定値を設定するように構成されている、請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記トルクリミッタ部は、前記制御部が前記モータの制御を開始してから所定時間が経過する間、前記実回転数が予め設定された最低回転数に未到達であるときにも、前記実効電圧を制限するように構成されている、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の電動工具。
【請求項7】
前記目標回転数の設定を受け付けるように構成された目標設定部を備え、
前記トルクリミッタ部は、前記目標設定部を介して設定された前記目標回転数に応じて、前記閾値を設定するように構成されている、請求項1~6の何れか1項に記載の電動工具。
【請求項8】
前記トルクリミッタ部は、前記目標設定部を介して設定された前記目標回転数が予め設定された制限実施回転数よりも低いときには、前記実効電圧を制限しないように構成されている、請求項7に記載の電動工具。
【請求項9】
前記トルクリミッタ部は、前記実効電圧を制限しているときに、前記実回転数が予め設定された復帰回転数を超えると、前記実効電圧の制限を解除するように構成されている、請求項1~請求項8の何れか1項に記載の電動工具。
【請求項10】
前記トルクリミッタ部が前記実効電圧を制限していることを報知するように構成された報知部、を備えている請求項1~請求項9の何れか1項に記載の電動工具。
【請求項11】
前記報知部は、前記トルクリミッタ部が前記実効電圧の制限を解除するか、又は、当該電動工具の電源スイッチがオフされると、前記報知を停止するように構成されている、請求項10に記載の電動工具。
【請求項12】
マイクロコンピュータを備え、
前記マイクロコンピュータは、前記制御部及び前記トルクリミッタ部を含む、請求項1~請求項11の何れか1項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交流電源から電力供給を受けてモータを駆動するように構成された電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のグラインダは、モータの回転軸及びスピンドルに設けられた2つのベベルギヤを介して、モータの回転をスピンドルに伝達するように構成されている。そして、スピンドル側のベベルギヤは、スピンドルの軸受けと、スピンドルの軸方向への移動が規制された固定部材との間に挟まれた状態で、スピンドルに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-51582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記グラインダにおいては、スピンドルに取り付けられた円盤状砥石等のツールに大きな負荷が加わったときに、スピンドル周りでベベルギヤがスリップし、スピンドルからモータの回転軸に過大なトルクが加わるのを抑制できる。つまり、特許文献1において、スピンドルに固定されたベベルギヤは、機械的なトルクリミッタとして機能する。しかし、グラインダにおいて、機械的なトルクリミッタを構成すると、ベベルギヤがスリップするように固定する固定機構によって、グラインダのヘッド部分が重たくなる。
【0005】
一方、トルクリミッタとしては、モータに流れる電流が所定値以上になったときに、モータが過負荷状態になったと判断して、モータへの電力供給を制限する、電流検出方式のものも知られている。しかし、電流検出方式のトルクリミッタにおいては、モータの駆動系に電流検出部を設ける必要があり、電動工具のコストアップを招くという問題がある。
【0006】
本開示の一局面は、交流電源から電力供給を受けてモータを駆動するように構成された電動工具において、モータに流れる電流を検出することなく、モータの過負荷状態を判定して、モータへの電力供給を制限できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面の電動工具は、モータと、出力軸と、検出部と、通電経路と、スイッチ素子と、制御部と、トルクリミッタ部と、を備える。
モータは、駆動力を発生するように構成されており、出力軸は、その駆動力を受けて回転し、ツールを駆動するように構成されている。また、検出部は、出力軸の実回転数を検出するように構成されている。
【0008】
通電経路は、交流電源からモータに交流電力を伝達するように構成されており、スイッチ素子は、その通電経路上に設けられている。そして、制御部は、検出部にて検出された実回転数が予め設定された目標回転数となるよう、スイッチ素子をスイッチング動作させて、モータに印加される実効電圧を制御するように構成されている。つまり、制御部は、出力軸の回転数が目標回転数となるようにモータへの印加電圧をフィードバック制御する。
【0009】
また、トルクリミッタ部は、検出部にて検出された実回転数と目標回転数との差が閾値以上であるとき、制御部にて制御される実効電圧を制限し、モータの回転を低下若しくは停止させるように構成されている。
【0010】
従って、本開示の電動工具によれば、機械的なトルクリミッタを設けることなく、モータを過負荷状態から保護することができる。
また、本開示の電動工具によれば、モータに流れる電流を検出する電流検出部を設けることなく、モータの過負荷状態を判定して、モータへの印加電圧を制限することができるので、電気的なトルクリミッタを低コストで実現できる。
【0011】
つまり、本開示では、モータの過負荷状態の判定に検出部を利用するが、検出部は、制御部において出力軸の実回転数を目標回転数に制御するのに用いられるため、トルクリミッタとしての機能を実現するために別途設ける必要はない。従って、本開示の電動工具によれば、トルクリミッタとしての機能を低コストで実現できる。
【0012】
ところで、モータは、ブラシ付きモータであってもよい。また、制御部は、モータに印加される交流電圧の導通角を制御することで、実効電圧を制御するように構成されていてもよく、トルクリミッタ部は、その導通角を制限することで、モータの回転を低下若しくは停止させるように構成されていてもよい。
【0013】
また、制御部は、制御開始後、時間の経過に従って目標回転数に近付くように指令回転数を設定し、その指令回転数に基づき実効電圧を制御するように構成されていてもよい。
また、トルクリミッタ部は、指令回転数と目標回転数との差が、予め設定された開始判定値以下になってから、実回転数と目標回転数との差が閾値以上であるか否かの判定(換言すれば過負荷状態の判定)を開始するように構成されていてもよい。
【0014】
トルクリミッタ部がこのように構成されていれば、制御部によりモータの駆動が開始されてから、モータの回転数が上昇するまでの間に、モータの過負荷状態が誤判定されて、モータに印加される実効電圧が制限されるのを抑制できる。
【0015】
次に、本開示の電動工具は、目標回転数の設定を受け付けるように構成された目標設定部を備えていてもよい。そして、トルクリミッタ部は、その目標設定部を介して設定された目標回転数に応じて、開始判定値を設定するように構成されていてもよい。
【0016】
また、トルクリミッタ部は、制御部がモータの制御を開始してから所定時間が経過する間に、実回転数が予め設定された最低回転数に未到達であるときにも、制御部にて制御される実効電圧を制限するように構成されていてもよい。
【0017】
トルクリミッタ部がこのように構成されていれば、モータの駆動開始時に、既に出力軸に大きな負荷が加わっていて、出力軸の回転数が上昇しないときに、モータの過負荷状態を速やかに検知して、モータの回転を低下若しくは停止させることができる。
【0018】
また、トルクリミッタ部は、目標設定部を介して設定された目標回転数に応じて、閾値を設定するように構成されていてもよい。
また、トルクリミッタ部は、目標設定部を介して設定された目標回転数が予め設定された制限実施回転数よりも低いときには、制御部にて制御される実効電圧を制限しないように構成されていてもよい。
【0019】
つまり、目標回転数が低く設定されている場合には、外部からツールに加わる負荷によって出力軸の回転が低下しても、実回転数と目標回転数との差は小さく、モータに大電流が流れることはない。そこで、このような場合には、トルクリミッタ部の機能を停止させるようにするのである。
【0020】
また次に、トルクリミッタ部は、制御部にて制御される実効電圧を制限しているときに、実回転数が予め設定された復帰回転数を超えると、実効電圧の制限を解除するように構成されていてもよい。このようにすれば、モータが過負荷状態から復帰したときに、制御部によるモータの制御を通常制御に速やかに復帰させることができる。
【0021】
また、本開示の電動工具には、トルクリミッタ部が実効電圧を制限していることを報知するように構成された報知部、が備えられていてもよい。このようにすれば、使用者は、報知部からの報知によって、モータが過負荷状態にあることを検知して、モータの駆動の停止等、適切な対応をすることができる。
【0022】
また、報知部は、リミッタが実効電圧の制限を解除するか、又は、当該電動工具の電源スイッチがオフされると、報知を停止するように構成されていてもよい。
また次に、本開示の電動工具には、マイクロコンピュータが備えられていてもよい。そして、マイクロコンピュータは、制御部及びトルクリミッタ部を含むように構成されていてもよい。
【0023】
この場合、制御部及びトルクリミッタ部は、マイクロコンピュータが実行するプログラムの一つとして実現することができるようになり、制御部及びトルクリミッタ部を専用の回路で構成した場合に比べて、装置構成を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態のグラインダの構成を表す斜視図である。
図2】グラインダ内部のコントローラの配置状態を表す断面図である。
図3】コントローラの回路構成を表すブロック図である。
図4図3に示すマイクロコンピュータにおいて実行される制御処理を表すフローチャートである。
図5図4に示すトルクリミッタ判定処理の詳細を表すフローチャートである。
図6図4,5に示す処理で用いられる各種パラメータの具体例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本開示の例示的な実施形態を図面と共に説明する。
図1に示すように、本実施形態のグラインダ2は、モータハウジング4と、ギヤハウジング6と、リヤハウジング8と、ホイールカバー10と、を主体として構成されている。
【0026】
モータハウジング4は、円筒形状のハウジングであり、内部にモータ12が収容されている。図2に示すように、モータ12は、モータハウジング4内に、モータ12の回転軸14がモータハウジング4の中心軸と平行で略一致するように配置されている。そして、モータ12の回転軸14は、ギヤハウジング6に向かって突出されている。
【0027】
リヤハウジング8は、モータハウジング4の中心軸の一端側(詳しくはギヤハウジング6とは反対側)に設けられている。リヤハウジング8は、グラインダ2の後端側で使用者が片手で把持できるように構成されている。そして、リヤハウジング8の後端からは、商用電源等の交流電源から交流電圧を取り込むための電源コード16が引き出されている。
【0028】
ギヤハウジング6は、モータハウジング4のリヤハウジング8とは反対側に設けられ、モータ12の回転軸14と直交する方向にスピンドル18が突出されている。スピンドル18には、円盤状の砥石等、所定のツールを位置決め固定するためのインナフランジ20が設けられている。
【0029】
また、スピンドル18のインナフランジ20よりも更に先端部分には、ロックナット22が螺合されている。ロックナット22は、インナフランジ20との間でツールを挟持するためのものである。
【0030】
スピンドル18は、ギヤハウジング6内にベアリングを介して回転自在に固定されている。また、ギヤハウジング6内には、スピンドル18に固定されたベベルギヤと、モータ12の回転軸に固定されたベベルギヤとを含むギヤ機構が収納されている。
【0031】
このため、モータ12の回転は、ギヤ機構を介してスピンドル18に伝達され、スピンドル18はモータ12の回転に応じて回転する。従って、ロックナット22を介して、ツールをスピンドル18に固定しておけば、モータ12によりツールを回転させて、研削、研磨、切断等の作業を行うことができる。
【0032】
ホイールカバー10は、この作業時に生じる被加工材やツールの破片の飛散から使用者を保護するためのものである。このため、ホイールカバー10は、スピンドル18に固定されたツールの一部(本実施形態では略半分)をギヤハウジング6側から覆うように、略半円形状に形成されている。
【0033】
また、ギヤハウジング6には、ハンドル部24が着脱自在に設けられている。ハンドル部24は、グラインダ2の使用時等に、使用者が把持して、ツールを手で位置決めできるようにするためのものである。このため、ハンドル部24は、モータ12の回転軸14及びスピンドル18の中心軸と直交する方向に、ギヤハウジング6から突出されている。
【0034】
また、ギヤハウジング6内には、モータ12を駆動制御するためのコントローラが収容されている。図2に示すように、コントローラは、モータ12の回転を制御する制御用コントローラ30と、制御用コントローラ30からの指令に従いモータ12を駆動する駆動用コントローラ32とを含む。この2つのコントローラ30,32は、ギヤハウジング6内に、モータ12を挟むように配置されている。
【0035】
図3に示すように、駆動用コントローラ32は、双方向サイリスタ(所謂トライアック)34と、モータ駆動回路36とを備える。なお、双方向サイリスタ34は、本開示のスイッチ素子の一例に相当する。
【0036】
双方向サイリスタ34は、電源コード16を介して交流電源26から入力される交流電力を、モータ12に伝達するように構成された、通電経路33上に設けられている。モータ12は、ブラシ付きの交流モータである。
【0037】
このため、モータ12は、双方向サイリスタ34がオン状態になって、交流電源26から供給される交流電圧が印加されることにより、駆動力を発生し、回転軸14,延いては、スピンドル18を回転させる。なお、モータ12には、回転軸14の回転数を検出するための回転数検出部12Aが設けられている。この回転数検出部12Aは、本開示の検出部の一例に相当する。
【0038】
モータ駆動回路36は、制御用コントローラ30からの指令に従い、双方向サイリスタ34をオン・オフさせて、モータ12に印加される交流電圧の導通角を制御するように構成されている。従って、モータ12に印加される交流電圧の実効値(つまり実効電圧)は、モータ駆動回路36が制御する導通角に応じて変化する。
【0039】
双方向サイリスタ34にはモータ12の駆動のための大電流が流れ、モータ駆動回路36にも双方向サイリスタ34を駆動するための電流が流れるため、駆動用コントローラ32は高温になり易い。このため、駆動用コントローラ32は、図2に示すように、外壁に放熱用のフィン38が設けられた金属製のハウジング内に収納されている。
【0040】
次に、通電経路33上には、使用者の操作によってオン・オフ状態が切り替えられる電源スイッチ28が設けられている。このため、モータ12は、この電源スイッチ28がオン状態にあるときにだけ、交流電圧を印加し、回転させることができるようになる。
【0041】
なお、電源スイッチ28は、モータハウジング4に設けられている。また、モータハウジング4には、使用者の操作によって、モータ12の目標回転数を段階的に切り替えるためのダイヤル50、及び、LEDを備えた表示部56、が設けられている。
【0042】
ダイヤル50は、本開示の目標設定部の一例に相当するものであり、図6に例示するように、「1」~「5」のダイヤル位置に応じて、モータ12の目標回転数を5段階に設定できるように構成されている。
【0043】
また、表示部56は、本開示の報知部の一例に相当するものであり、後述のトルクリミッタ部70の動作によって、モータ12の過負荷状態が検出され、モータ12の回転が抑制若しくは停止されると、LEDが点灯してその旨を報知するように構成されている。なお、本開示の報知部としては、警報音や音声にて過負荷状態を報知するように構成されていてもよい。
【0044】
次に、制御用コントローラ30は、マイクロコンピュータ40、電源回路42、ゼロクロス検出回路44、スイッチ入力検出回路46、ダイヤル位置検出回路48、回転信号入力回路52、及び、表示回路54を備える。なお、以下の説明では、マイクロコンピュータ40を、MCU40という。
【0045】
電源回路42は、電源スイッチ28がオン状態であるときに交流電源26から入力される交流電圧を直流電圧に変換して、MCU40及びその周辺回路を動作させるための電源電圧(直流定電圧)Vccを生成するように構成されている。
【0046】
ゼロクロス検出回路44は、交流電源26から入力される交流電圧のゼロクロス点を検出するように構成されており、ゼロクロス点の検出信号はMCU40に入力される。
また、スイッチ入力検出回路46は、通電経路33に交流電圧が入力されているときに電源スイッチ28がオンであることを検出して、その旨を表す検出信号をMCU40に入力するように構成されている。
【0047】
また、ダイヤル位置検出回路48は、ダイヤル50のダイヤル位置を検出し、MCU40に入力するように構成されている。
また、回転信号入力回路52は、回転数検出部12Aから、モータ12が所定角度回転する度に出力される回転信号をパルス信号に波形整形して、MCU40に入力するように構成されている。
【0048】
また、表示回路54は、MCU40から出力される報知指令に従い、表示部56のLEDを点灯させるように構成されている。
次に、MCU40は、CPU,ROM,RAM,及び,これら各部を接続するバスラインを含む。そして、MCU40は、CPUがプログラムを実行することにより、モータ出力制御部60,スイッチ判定部62,指令回転数判定部64,モータ回転数算出部66,表示制御部68,及び,トルクリミッタ部70として機能する。
【0049】
ここで、スイッチ判定部62は、スイッチ入力検出回路46からの検出信号に基づき、電源スイッチ28がオン状態であることを検出し、検出結果をモータ出力制御部60及びトルクリミッタ部70に出力する。
【0050】
また、指令回転数判定部64は、ダイヤル位置検出回路48から入力されるダイヤル位置に基づき、モータ12の目標回転数及び指令回転数を設定し、これら各回転数をモータ出力制御部60及びトルクリミッタ部70に出力する。
【0051】
なお、指令回転数は、モータ12の駆動開始後、時間の経過に従って目標回転数に近付くように更新される回転数であり、モータ出力制御部60は、この指令回転数に基づき、モータに印加される交流電圧の導通角を制御する。
【0052】
また、モータ回転数算出部66は、回転信号入力回路52から入力されるパルス信号の入力間隔からモータ12の実回転数を算出し、その算出した実回転数をモータ出力制御部60及びトルクリミッタ部70に出力する。
【0053】
次に、モータ出力制御部60は、電源スイッチ28がオン状態であるとき、モータ12の実回転数が指令回転数に到達するように、モータ12に印加される交流電圧の導通角を制御する。
【0054】
つまり、モータ出力制御部60は、モータ12の実回転数が、逐次更新される指令回転数となるように導通角を設定する。そして、その導通角に従い、双方向サイリスタ34をオンさせるタイミングを設定し、そのタイミングでモータ駆動回路36に制御信号を出力する。
【0055】
この結果、モータ駆動回路36は、制御信号の入力タイミングで双方向サイリスタ34をオンすることで、所謂位相制御を実行するようになり、その位相制御により、モータ12に印加される実行電圧が制御されることになる。
【0056】
つまり、双方向サイリスタ34は、ゲート電圧が印加されることによりオン状態となり、交流電圧の次のゼロクロス点でオフ状態となる。そのため、モータ駆動回路36は、制御信号の入力タイミングで双方向サイリスタ31にゲート電圧を印加することで、双方向サイリスタ34をスイッチング動作させる、所謂位相制御を実行するのである。
【0057】
なお、モータ出力制御部60は、本開示の制御部の一例に相当する。また、上述したように、双方向サイリスタ34は、本開示のスイッチ素子の一例に相当するが、スイッチ素子としては、双方向サイリスタに限定されるものではなく、FET等、スイッチング動作によって導通角を制御し得る半導体素子であれば利用できる。
【0058】
次に、トルクリミッタ部70は、指令回転数判定部64にて設定された目標回転数及び指令回転数と、モータ回転数算出部66にて算出された実回転数とに基づき、モータ12が過負荷状態であるか否かを判定する。そして、モータ12が過負荷状態であれば、モータ12の回転を低下若しくは停止すべく、モータ出力制御部60が制御する導通角を制限する。
【0059】
また、表示制御部68は、トルクリミッタ部70がモータ12の過負荷状態を判定して導通角を制限しているときに、表示回路54に表示指令を出力することで、表示部56のLEDを点灯させる。この結果、表示部56からは、モータ12が過負荷状態でありモータ12の回転が制限されていることが報知されることになる。
【0060】
なお、表示制御部68は、トルクリミッタ部70が導通角の制限を解除するか、或いは、スイッチ判定部62にて電源スイッチ28がオフされたと判定されると、表示指令の出力を停止して、表示部56からの報知を解除する。
【0061】
次に、上記各部の機能を実現するために、MCU40において実行される制御処理について、図4及び図5のフローチャートに沿って説明する。なお、この処理は、CPUがROM、不揮発性RAM等の非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより行われる。
【0062】
図4に示すように、MCU40は、制御処理を開始すると、まずS100にて、以降の処理で使用する各種変数を初期化し、続くS110にて、ゼロクロス検出回路44からの入力信号に基づき、交流電源26の電源周波数(AC周波数)を判定する。なお、この判定処理は、AC周波数が50Hzであるか60Hzであるかを特定して、モータ駆動回路36に印加される交流電圧の導通角を制御できるようにするための処理である。
【0063】
次に、S120では、スイッチ入力検出回路46からの入力信号に基づき、電源スイッチ28がオンされていることを判定する、スイッチ判定部62としての処理を実行し、S125に移行する。
【0064】
S125では、後述の処理でモータ12が過負荷状態であると判定されて、制限位相角が設定されているときに、表示回路54に表示指令を出力して、表示部56のLEDを点灯させる、表示制御部68としての処理を実行する。
【0065】
なお、S125では、モータ12が過負荷状態から復帰したとき、或いは、電源スイッチ28がオフされたときには、表示回路54への表示指令の出力を停止して、表示部56のLEDを消灯させる。
【0066】
次に、S130では、S110にてAC周波数が判定され、且つ、S120にて電源スイッチ28がオン状態であると判定されているか否かを判断する。
S130にて、AC周波数及び電源スイッチ28のオン状態が共に判定されていると判断されると、S140に移行し、そうでなければ、S100に移行して、S100~S120の処理を再度実行する。
【0067】
S140では、ダイヤル位置検出回路48からの入力信号に基づき、ダイヤル50の操作位置(つまり、ダイヤル位置)を特定する、ダイヤル位置判定処理を実施し、続くS150にて、S140にて特定したダイヤル位置に応じた目標回転数を決定する。
【0068】
なお、ダイヤル位置から目標回転数を決定する際には、図6に例示したマップが使用される。このマップは、当該制御処理のプログラムと共に、非遷移的実体的記録媒体に格納されている。
【0069】
そして、このマップには、ダイヤル位置に対応する目標回転数に加え、後述の処理で使用される、モータ駆動判定用の最低回転数及び上限時間と、トルクリミッタの判定開始割合、閾値、制限位相角及び復帰回転数が、予め設定されている。また、トルクリミッタの判定開始割合、閾値、制限位相角及び復帰回転数は、それぞれ、目標回転数に応じて設定されている。
【0070】
S150にて、目標回転数を決定すると、MCU40は、S160に移行し、指令回転数は目標回転数と一致しているか否かを判断する。そして、指令回転数は目標回転数と一致している場合には、S200に移行し、指令回転数は目標回転数と一致していない場合には、S170に移行する。
【0071】
S170では、目標回転数は指令回転数よりも大きいか否かを判断する。そして、目標回転数が指令回転数よりも大きい場合には、S180に移行して、指令回転数を予め設定された所定回転数だけ増加させ、S200に移行する。また、目標回転数が指令回転数よりも小さい場合には、S190に移行して、指令回転数を予め設定された所定回転数だけ減少させ、S200に移行する。
【0072】
つまり、S170~S190では、目標回転数と指令回転数とが一致していないときに、指令回転数を所定回転数だけ増加又は減少させることで、指令回転数が目標回転数に近付くように、指令回転数を更新する。この結果、指令回転数は、当該制御処理の開始後、時間の経過に従って目標回転数に近付くように、逐次更新されることになる。
【0073】
なお、指令回転数の初期値は、モータ12の駆動開始前の停止回転数「0」であり、S100の初期化の処理により設定される。そして、上記S150~S190の処理により、指令回転数判定部64としての機能が実現される。
【0074】
次に、S200では、回転信号入力回路52からの入力信号に基づき、モータ12の回転数(実回転数)を算出する、モータ回転数算出部66としての処理を実行する。
そして、続くS210では、S200にて算出されたモータ12の実回転数と、S150~S190の処理にて設定されたモータ12の目標回転数及び指令回転数とに基づき、モータ12が過負荷状態であるか否かを判定する、過負荷判定処理を実行する。なお、この過負荷判定処理については、図5のフローチャートに沿って、後で詳しく説明する。
【0075】
次に、S220では、S210の過負荷判定処理にて、現在、モータ12が過負荷状態であると判定されているか否かを判断する。そして、モータ12が過負荷状態であると判定されていれば、S240に移行し、モータが過負荷状態であると判定されていなければ、S230に移行する。
【0076】
S230では、モータ12の実回転数が指令回転数(延いては目標回転数)となるよう、モータ12に印加する交流電圧の導通角を更新する、モータ制御処理を実行し、S250に移行する。
【0077】
一方、S240では、モータ12に印加される交流電圧の実効電圧を低減させるために、モータ12に印加する交流電圧の導通角の制限値である、制限位相角を設定し、S250に移行する。
【0078】
なお、制限位相角については、図6に例示するように、モータ12の目標回転数に応じて、目標回転数が高いほど、導通角が大きくなるように設定される。また、ダイヤル位置が「5」で、モータ12の目標回転数が最も高い場合には、制限位相角として0°が設定される。これは,モータ12の高回転時にモータ12が過負荷状態になると、モータ12に大電流が流れて破損することがあるので、モータ12への通電を停止させるためである。
【0079】
次に、S250では、S230にて更新された導通角、若しくは、S240にて設定された制限位相角と、S110にて判定したAC周波数と基づき、出力タイミングを設定して、モータ駆動回路36に制御信号を出力する、モータ出力処理を実行する。
【0080】
つまり、S250では、モータ駆動回路36を介して、モータ12に印加される交流電圧の導通角を制御する、位相制御を実行することで、モータ12に印加される実効電圧を制御する。なお、S220~S250の処理により、モータ出力制御部60としての機能が実現される。そして、S250の処理実行後は、S110に移行し、上記一連の処理を再度実行する。
【0081】
次に、S210にて実行される過負荷判定処理について説明する。この過負荷判定処理は、トルクリミッタ部70としての機能を実現する処理であり、本開示のトルクリミッタ部の一例に相当する。
【0082】
図5に示すように、MCU40は、過負荷判定処理を開始すると、まずS310にて、モータ12の駆動を開始してから現在までのモータ駆動時間を計測し、続くS320にて、現在、モータ12の過負荷状態を判定中であるか否かを判断する。
【0083】
S320にて、モータ12の過負荷状態は判定されていないと判断されると、S325に移行して、モータ12の目標回転数は、予め設定されたトルクリミッタの実施回転数を越えているか否かを判断する。そして、目標回転数が実施回転数以下である場合には、当該過負荷判定処理を終了する。
【0084】
これは、目標回転数が低く、モータ12を駆動し続けても、通電経路33に過電流が流れて、モータ12や双方向サイリスタ34が故障する虞がないときには、モータ12の過負荷状態を検出して、モータ12の回転を抑制する必要がないためである。
【0085】
なお、実施回転数は、トルクリミッタによる実効電圧の制限を実施する際のモータ12の回転数の下限値であり、本開示の制限実施回転数の一例に相当する。
そして、この実施回転数についても、上述した最低回転数や上限時間と同様、一定回転数(例えば、12000rpm)に設定すれば、目標回転数が実施回転数よりも低い場合(例えば、ダイヤル1の場合)に、トルクリミッタを無効にすることができる。
【0086】
次に、S325にて、目標回転数が実施回転数よりも大きいと判断された場合には、S330に移行して、S200にて算出されたモータ12の実回転数と、予め設定された最低回転数とを比較する。
【0087】
S330にて、モータ12の実回転数は、最低回転数よりも低いと判断されると、S340に移行して、S310にて計測したモータ駆動時間は、予め設定された上限時間を経過しているか否かを判断する。
【0088】
なお、最低回転数及び上限時間は、モータ12は駆動開始直後から過負荷状態になっていることを判定するためのパラメータであり、図6に例示するマップに記載のように、一定回転数(2000rpm)、一定時間(1sec)が設定されている。
【0089】
S340にて、モータ駆動時間は上限時間を経過していないと判断されると、S380に移行する。またS340にて、モータ駆動時間は上限時間を経過していると判断されると、S350にて、モータ12は過負荷状態であると判定し、S360にて、モータ12の導通角を制限する、制限位相角を設定し、S380に移行する。
【0090】
つまり、モータ12の駆動開始後、上限時間を経過するまでの間に、モータ12の回転数が最低回転数に達していなければ、モータ12は既に過負荷状態であると判断して、制限位相角を設定するのである。なお、上記説明の通り、制限位相角は、図6に例示するマップに従い、モータ12の目標回転数に応じて、目標回転数が高いほど、導通角が大きくなるように設定される。
【0091】
次に、S380では、トルクリミッタの判定開始回転数を算出し、S390に移行する。この判定開始回転数は、目標回転数と指令回転数との差が所定の開始判定値以下になったことを判定するのに用いられる回転数である。そして、S380では、目標回転数に、図6に例示するマップから得られる判定開始割合を乗じることで、判定開始回転数(=目標回転数×判定開始割合)を算出する。
【0092】
次に、S390では、指令回転数が、S380にて算出された判定開始回転数よりも大きいか否かを判断することで、指令回転数と目標回転数との差が、所定の開始判定値以下になったか否かを判断する。なお、開始判定値は、目標回転数から判定開始回転数を減じた値となる。
【0093】
そして、S390にて、指令回転数は、判定開始回転数以下である、換言すれば、指令回転数と目標回転数との差は開始判定値よりも大きい、と判断されると、当該過負荷状態判定処理を終了する。
【0094】
これは、指令回転数と目標回転数との差が開始判定値よりも大きいときには、モータ12は、目標回転数に向けて加速している途中であり、実回転数と目標回転数との差からモータ12の過負荷状態を正確に判定することができないためである。
【0095】
一方、S390にて、指令回転数は、波安定開始回転数よりも大きい、換言すれば、指令回転数と目標回転数との差が開始判定値以下である、と判断されると、S400に移行して、実回転数と目標回転数との回転差を算出する。
【0096】
つまり、S400では、S390にて指令回転数は概ね目標回転数まで上昇していると判断されているので、実回転数と目標回転数との回転差を算出することで、モータ12の負荷状態を検出するのである。
【0097】
次に、S410では、S400にて算出された回転差が、予め設定された閾値以上であるか否かを判断することで、モータ12が過負荷状態であるか否かを判断する。なお、閾値は、図6に例示したマップに基づき、目標回転数に応じて設定される値である。
【0098】
そして、S410にて、回転差は閾値よりも小さいと判断された場合には、モータ12は過負荷状態ではないと判断して、当該過負荷状態判定処理を終了する。
また、S410にて、回転差は閾値以上であると判断された場合には、S420にて、モータ12は過負荷状態であると判定する。そして、続くS430にて、図6に例示するマップに基づき、モータ12の導通角を制限する制限位相角を設定し、当該過負荷状態判定処理を終了する。
【0099】
次に、S320にて、現在、モータ12の過負荷状態を判定中であると判断された場合には、S440に移行して、モータ12の実回転数と、予め設定された復帰回転数とを比較する。
【0100】
なお、復帰回転数は、図6に例示するマップに従い、モータ12の目標回転数に応じて設定される。図6に例示するマップにおいて、復帰回転数は、ダイヤル位置が「5」の場合にも設定されるが、ダイヤル位置が「5」の場合、制限位相角は0°であるため、実回転数が復帰回転数よりも大きくなることはない。
【0101】
S440にて、モータ12の実回転数が復帰回転数よりも大きいと判断されると、モータ12は過負荷状態から通常の負荷状態に復帰したと判断して、S450に移行し、制限位相角による導通角の制限を解除し、当該過負荷状態判定処理を終了する。
【0102】
また、S440にて、モータ12の実回転数は復帰回転数以下であると判断された場合には、モータ12は過負荷状態から復帰していないと判断して、当該過負荷状態判定処理を終了する。
【0103】
以上説明したように、本実施形態のグラインダ2においては、モータ12の回転数が目標回転数となるように、目標回転数に基づき指令回転数を設定して、モータ12の駆動を制御するように構成されている。
【0104】
そして、モータ12の駆動を開始してから、指令回転数が概ね目標回転数まで上昇すると、モータ12の実回転数と目標回転数との回転差が閾値以上であるか否かを判断し、回転差が閾値以上になると、モータ12が過負荷状態であると判断する。
【0105】
このため、本実施形態のグラインダ2においては、機械式のトルクリミッタや、モータ12に流れる電流から過負荷状態を判定する電気式のトルクリミッタを利用することなく、モータ12を過負荷状態から保護することができる。
【0106】
そして、機械式のトルクリミッタのように、被加工材からスピンドル18に加わるトルクが上昇したときに、スピンドル18とモータ12の回転軸14とを連結するベベルギヤがスリップするように、ギヤ機構を構成する必要がない。
【0107】
従って、本実施形態のグラインダ2によれば、機械式のトルクリミッタを搭載したグラインダに比べて、グラインダ2のヘッド部分(つまりギヤハウジング部分)を軽くして、使い勝手を向上することができる。
【0108】
また、本実施形態のトルクリミッタ部70は、モータ12の実回転数と、目標回転数及び指令回転数とに基づき、モータ12の過負荷状態を判定するため、電気式のトルクリミッタのように、モータ12に流れる電流を検出する必要がない。
【0109】
従って、本実施形態のグラインダ2によれば、電気式のトルクリミッタを搭載したグラインダに比べて、装置構成を簡単にして、低コストで実現できるようになる。
また、本実施形態では、モータ12の過負荷状態を判定するのに用いられる、閾値、判定開始割合、制限位相角、復帰回転数を、ダイヤル50を介して設定される目標回転数に応じて設定するようにされている。
【0110】
このため、本実施形態によれば、目標回転数が変化しても、モータ12の過負荷状態及び過負荷状態からの復帰を適正に判定することができるようになり、モータ12を良好に保護することができる。
【0111】
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示の電動工具は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、モータ12の回転軸14の回転数を実回転数として検出し、その検出した実回転数が目標回転数となるように、モータ12への通電を制御するものとして説明した。
【0112】
しかし、本開示は、スピンドル18の回転数等、モータ12の駆動力を受けて回転する出力軸の回転数を実回転数として検出し、その検出した実回転数が目標回転数となるように、モータ12への通電を制御するように構成された電動工具であれば、適用できる。
【0113】
また、上記実施形態では、グラインダ2を例にとって説明したが、本開示は、グラインダ2に限らず、交流電源から電力供給を受けてモータ12を駆動するように構成された電動工具であれば、上記実施形態と同様に適用することができる。
【0114】
また、上記実施形態では、制御用コントローラ30にMCU40が設けられており、MCU40内のCPUが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより、本開示の制御部、トルクリミッタ部として機能するものとして説明した。
【0115】
しかし、制御用コントローラ30は、例えば、制御部、トルクリミッタ部、として機能する複数のコンピュータを備えていてもよい。
また、MCU40内のCPUが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される、上記各部の機能の全て若しくは一部は、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて実現してもよい。
【0116】
また、制御用コントローラ30と駆動用コントローラ32とは、一つのコントローラとして構成されていてもよい。
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。
【0117】
また、本開示は、電動工具の他、電動工具を構成要素とするシステム、電動工具としてコンピュータを機能させるためのプログラム、プログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、電動工具の制御方法など、種々の形態で実現することもできる。
【符号の説明】
【0118】
2…グラインダ、12…モータ、12A…回転数検出部、14…回転軸、18…スピンドル、26…交流電源、28…電源スイッチ、33…通電経路、34…双方向サイリスタ、50…ダイヤル、56…表示部、60…モータ出力制御部、70…トルクリミッタ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6