(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135587
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】気化洗浄液回収装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/08 20060101AFI20220908BHJP
B08B 5/00 20060101ALI20220908BHJP
F26B 5/04 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B08B3/08 B
B08B5/00 Z
F26B5/04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035506
(22)【出願日】2021-03-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】592068635
【氏名又は名称】アクトファイブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 郁男
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
3L113
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AB02
3B116BB02
3B116BB11
3B116BB62
3B116BB78
3B116CC03
3B116CD22
3B116CD32
3B201AA46
3B201AB02
3B201BB02
3B201BB12
3B201BB62
3B201BB78
3B201CB15
3B201CC11
3B201CD22
3L113AA01
3L113AB01
3L113AC23
3L113CB15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】洗浄液の蒸気が排気回収槽の外に排出されることを抑えることができる気化洗浄液回収装置を提供する。
【解決手段】気化洗浄液回収装置は、回収対象である洗浄液が溶解可能な貯留液が貯留される排気回収槽と、一端が前記洗浄液の蒸気の発生源に接続され、他端122が前記排気回収槽内の第1位置に開口する第1気体排出路12と、第1気体排出路12中に設けられた、前記発生源の気体を排出する第1ポンプと、一端141が排気回収槽内の前記第1位置よりも上である第2位置で開口し、他端が排気回収槽の外にある第2気体排出路14と、第2気体排出路14中に設けられた、排気回収槽内の気体を排出する第2ポンプと、第2気体排出路14の第2ポンプよりも前に設けられた、排気回収槽内の圧力が所定の第1値以上になったときに開き、該圧力が所定の第2値以下になったときに閉じる開閉弁16とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 回収対象である洗浄液が溶解可能な貯留液が貯留される排気回収槽と、
b) 一端が前記洗浄液の蒸気の発生源に接続され、他端が前記排気回収槽内の第1位置に開口する第1気体排出路と、
c) 前記第1気体排出路中に設けられた、前記発生源の気体を排出する第1ポンプと、
d) 一端が前記排気回収槽内の前記第1位置よりも上である第2位置で開口し、他端が前記排気回収槽の外にある第2気体排出路と、
e) 前記第2気体排出路中に設けられた、前記排気回収槽内の気体を排出する第2ポンプと、
f) 前記第2気体排出路の前記第2ポンプよりも前に設けられた、前記排気回収槽内の圧力が所定の第1値以上になったときに開き、該圧力が所定の第2値以下になったときに閉じる開閉弁と
を備えることを特徴とする気化洗浄液回収装置。
【請求項2】
前記排気回収槽内の圧力が前記第1値以上のときにおいて、該圧力が大きいほど前記開閉弁の開度が大きいことを特徴とする請求項1に記載の気化洗浄液回収装置。
【請求項3】
前記開閉弁が逆止弁であることを特徴とする請求項1又は2に記載の気化洗浄液回収装置。
【請求項4】
さらに、前記第1気体排出路の開口に、複数の孔が設けられたノズルを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の気化洗浄液回収装置。
【請求項5】
さらに、前記排気回収槽内の貯留液を冷却する冷却装置を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の気化洗浄液回収装置。
【請求項6】
さらに、前記排気回収槽内の前記第1位置と前記第2位置の間に、該第1位置側から該第2位置側に気体が移動する際の抵抗となる部材を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の気化洗浄液回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気洗浄や蒸気洗浄後の真空乾燥において生じる洗浄液の蒸気(気体)や、浸漬洗浄で用いる洗浄液が蒸発した気体を回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークに対して蒸気洗浄と真空乾燥を組み合わせた処理が行われている。蒸気洗浄では、ワークを真空容器に収容し、真空容器内を真空にしたうえで、洗浄液の蒸気を真空容器に導入することにより、蒸気よりも低温であるワークの表面で蒸気を液化させ、それによって該表面を洗浄する。蒸気の圧力が低下した時点で真空容器内に再び蒸気を導入し、ワークの表面を洗浄する。このような動作を繰り返すと、ワーク表面が十分に洗浄されるとともに、ワークの温度が上昇し、蒸気の温度に近くなる。そして最後に、真空槽内の圧力を急速に低下させることにより、ワークの表面に付着している洗浄液を突沸・気化させ、該表面を乾燥させる(真空乾燥)。
【0003】
蒸気洗浄の際には通常、1回の操作で真空容器内に供給した洗浄液の蒸気は、その全てがワークの表面で液化するのではなく、一部が蒸気(気体)のまま残る。残った蒸気は温度が低下しているため、次の蒸気洗浄の操作の前に真空容器から排出することが洗浄効率の点から望ましい。また、真空乾燥の際にはワークの表面の洗浄液が気化し、それにより発生する気体が真空容器から排出される。このようにして生じる洗浄液の気体は環境を汚染する原因となるため、環境中に排出することなく回収する必要がある。
【0004】
特許文献1には、蒸気洗浄及び真空乾燥を行う真空槽内の気体を排出する第1の排出管と、第1の排出管に設けられた、真空槽から気体を吸引する真空ポンプと、洗浄液を溶解させることが可能な液体(又は該洗浄液と同じ成分が溶解した液体。以下、これらの液体を「貯留液」と呼ぶ)が貯留され、該貯留液内に前記第1の排出管の一端(真空ポンプ側とは反対側の端)が挿入されている排気回収槽と、一端が排気回収槽に接続され他端が大気に開放されている第2の排出管と、第2の排出管に設けられた排気ファンとを備える装置が記載されている。この装置では、真空槽内から真空ポンプで吸引された洗浄液の蒸気を、排気回収槽内の貯留液に溶解させることにより回収する。真空ポンプで吸引された気体には、洗浄液の蒸気の他に、真空容器内に残存していた空気等も含まれる。吸引された気体のうち貯留液に溶解しないものは排気ファンにより第2の排出管から排気回収槽の外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、未だ洗浄液の蒸気が排気回収槽の外へ排出されてしまう。
【0007】
ここまでは蒸気洗浄及び真空乾燥の場合を例として説明したが、洗浄槽内に貯留した洗浄液に浸漬することによりワークを洗浄する浸漬洗浄においても、洗浄液が蒸発することにより発生する気体を回収する際に同様の問題が生じる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、洗浄液の蒸気が排気回収槽の外に排出されることを抑えることができる気化洗浄液回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る気化洗浄液回収装置は、
a) 回収対象である洗浄液が溶解可能な貯留液が貯留される排気回収槽と、
b) 一端が前記洗浄液の蒸気の発生源に接続され、他端が前記排気回収槽内の第1位置に開口する第1気体排出路と、
c) 前記第1気体排出路中に設けられた、前記発生源の気体を排出する第1ポンプと、
d) 一端が前記排気回収槽内の前記第1位置よりも上である第2位置で開口し、他端が前記排気回収槽の外にある第2気体排出路と、
e) 前記第2気体排出路中に設けられた、前記排気回収槽内の気体を排出する第2ポンプと、
f) 前記第2気体排出路の前記第2ポンプよりも前(前記排気回収槽寄り)に設けられた、前記排気回収槽内の圧力が所定の第1値以上になったときに開き、該圧力が所定の第2値以下になったときに閉じる開閉弁と
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る気化洗浄液回収装置では、排気回収槽の第1位置と第2位置の間の高さまで貯留液を貯留した状態で、発生源で発生した蒸気を第1ポンプにより、第1気体排出路を通して貯留液に導入する。これにより、洗浄液の蒸気は貯留液に溶解する。発生源から貯留液には、洗浄液の蒸気の他に空気等、該蒸気以外の気体も導入され得る。該蒸気以外の気体のうち貯留液に溶解しないものは、第2ポンプにより、第2気体排出路を通して外部に排出される。
【0011】
排気回収槽内では、前記蒸気を含む気体が第1ポンプによって導入されることが圧力の上昇の要因となる一方、貯留液に溶解しない気体が第2ポンプによって外部に排出されることが圧力の低下の要因となる。これら2つの要因が合わせられた結果、排気回収槽内の圧力が低下したときには、貯留液内の洗浄液が気化し易くなると共に、発生源から貯留液に導入された洗浄液の蒸気が貯留液に溶解し難くなる。その結果、第2ポンプによって洗浄液の蒸気が排気回収槽から外部に排出されてしまうおそれがある。
【0012】
そこで、第2気体排出路の第2ポンプよりも前(すなわち排気の方向に関して上流側)に、排気回収槽内の圧力が所定の第1値以上になったときに開き、該圧力が所定の第2値以下になったときに閉じる開閉弁を設ける。ここで、第1値及び第2値はいずれも、貯留液内の洗浄液が気化することが(ほとんど)ない値とする。また、第1値及び第2値は同じ値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。
【0013】
本発明に係る気化洗浄液回収装置はこのような開閉弁を備えることにより、排気回収槽内の圧力が洗浄液の気化の(ほとんど)発生しない第1値以上のときには、開閉弁が開くことにより、貯留液に溶解しない気体が排気回収槽から外部に排出される。一方、排気回収槽内の圧力が第2値以下になったときに開閉弁が閉じることにより、排気回収槽内の圧力が洗浄液の気化が発生する圧力まで低下することがなく、洗浄液の蒸気が排気回収槽から外部に排出されることが防止される。
【0014】
前記開閉弁には例えば、第2気体排出路に設けられた弁本体、前記弁本体を開閉させる駆動源、排気回収槽内の圧力を測定する圧力計、及び前記圧力計による測定値に基づいて前記駆動源を制御する制御部を組み合わせたものを用いることができる。
【0015】
また、前記開閉弁として逆止弁を用いることができる。逆止弁は、それよりも上流側の圧力が第1値以上になったときに該圧力によって開放され、その後、上流側の圧力が第2値以下になったときに下流側の圧力や弁体の自重等によって閉鎖される弁である。逆止弁は駆動源、圧力計及び制御装置を用いることなく動作させることができるため、装置を簡素化、低コスト化することができる。
【0016】
本発明に係る気化洗浄液回収装置において、前記排気回収槽内の圧力が前記第1値以上のときにおいて、該圧力が大きいほど前記開閉弁の開度が大きいことが好ましい。これにより、排気回収槽内の圧力が比較的低いときに開閉弁の開度が大き過ぎることで排気回収槽内の洗浄液が気化しやすくなることを防ぐと共に、排気回収槽内の圧力が上昇したときに開閉弁の開度が不足して排気回収槽内が加圧状態になることを防ぐことができる。このような開閉弁の開度の調整は、前述の弁本体、駆動源、圧力計及び制御部を備える開閉弁を備える構成では、圧力計による測定値に基づいて弁本体の開度を調整するように制御部が制御を行えばよい。また、蓋体の自重によって開閉する開閉弁を用いる場合には、排気回収槽内の圧力が大きいほど、蓋体を押し上げる力が大きくなり、それによって開度も大きくなるため、開度の調整を自然に行うことができる。
【0017】
本発明に係る気化洗浄液回収装置において、前記第1気体排出路の開口に、複数の孔が設けられたノズルを備えることが好ましい。孔は、例えば、板材を穿孔することにより設けたものであってもよいし、網目状の部材における網目であってもよい。
【0018】
このようなノズルを用いることにより、第1気体排出路から供給される気体は、該ノズルが無い場合よりも多数の気泡となって貯留液内に拡散する。気泡1個当たりの体積はノズルが無い場合よりも小さくなり、それによって気泡の表面積の総計は大きくなる。そのため、第1気体排出路から供給される気体が貯留液に溶解し易くなり、該気体に含まれる洗浄液の蒸気が貯留液に溶解することなく排気回収槽の外に排出されることが抑えられる。
【0019】
気泡が貯留液の液面ではじけると、洗浄液の一部が液面よりも上側の空間に霧状に放出されて気体と共に排気回収槽の外に排出されてしまう。それに対して上記のように複数の孔が設けられたノズルを用いることで気泡1個当たりの体積を小さくすることにより、放出される霧状の洗浄液の量を少なくすることができるため、洗浄液の減少をさらに抑制することができる。
【0020】
また、前記ノズルにおいて、孔を設けた部材(穿孔した板材や網目状部材)を複数重ねて設けてもよい。これにより、気泡を細かく且つ均一に生成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る気化洗浄液回収装置によれば、洗浄液の蒸気が排気回収槽の外に排出されることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態の気化洗浄液回収装置を含む洗浄装置の概略構成図。
【
図2】本実施形態の気化洗浄液回収装置の要部の詳細を示す図。
【
図3】本実施形態の気化洗浄液回収装置で用いるノズルの縦断面図。
【
図4】気化洗浄液回収装置の一変形例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1~
図4を用いて、本発明に係る気化洗浄液回収装置の実施形態を説明する。
【0024】
(1) 本実施形態の気化洗浄液回収装置及びそれを有する洗浄装置の構成
図1に、本実施形態の気化洗浄液回収装置10を有する洗浄装置1の構成を概略的に示す。
図1において、太い一点鎖線は液体(主に洗浄液)の流路を示し、太い実線は気体(主に洗浄液の蒸気)の流路を示している。
【0025】
洗浄装置1は、気化洗浄液回収装置10の他に、浸漬洗浄槽21、蒸気洗浄・真空乾燥槽22、蒸留槽23、コンデンサ槽24及びリザーブ槽25を有する。気化洗浄液回収装置10の説明の前に、これら各槽について説明する。
【0026】
浸漬洗浄槽21は洗浄液を貯留し、該洗浄液にワークWを浸漬することにより、ワークWを洗浄するものである。浸漬洗浄槽21の底面には、浸漬洗浄の効率を高めるために超音波振動子211が接触している。蒸気洗浄・真空乾燥槽22は、浸漬洗浄槽21で洗浄したワークWに対して、仕上げの洗浄として蒸気洗浄を行い、さらに真空乾燥を行うためのものである。浸漬洗浄槽21及び蒸気洗浄・真空乾燥槽22は後述の第1気体排出路12に接続されている。
【0027】
蒸留槽23には、後述の排気回収槽11から、浸漬洗浄槽21及び蒸気洗浄・真空乾燥槽22で使用された使用済洗浄液が供給される。排気回収槽11と蒸留槽23の間の流路には、使用済洗浄液中の固形物を除去するフィルタ231が設けられている。
【0028】
蒸留槽23は、使用済洗浄液を加熱して蒸発させることにより、不純物が除去された洗浄液の蒸気を発生させるものである。発生した蒸気は、三方弁232が開放される方向によって、蒸気洗浄・真空乾燥槽22とコンデンサ槽24のいずれかに流入する。三方弁232は、蒸気洗浄・真空乾燥槽22で蒸気洗浄を行う際には蒸気洗浄・真空乾燥槽22側に開放し、それ以外のときにはコンデンサ槽24側に開放する。蒸気洗浄・真空乾燥槽22に流入した蒸気は蒸気洗浄に用いられる。一方、コンデンサ槽24に流入した洗浄液の蒸気は冷却されて液化する。従って、これら蒸留槽23とコンデンサ槽24により、使用済みの洗浄液が蒸留され、不純物が除去された再生洗浄液が得られる。得られた再生洗浄液はエゼクタ251の作用によってリザーブ槽25に取り込まれた後、浸漬洗浄槽21に供給される。
【0029】
気化洗浄液回収装置10は、排気回収槽11と、第1気体排出路12と、第1ポンプ13と、第2気体排出路14と、第2ポンプ15と、逆止弁(前記開閉弁に相当)16とを有する。
図2に、気化洗浄液回収装置10のうち、排気回収槽11及び逆止弁16、並びに第1気体排出路12及び第2気体排出路14のうち排気回収槽11近傍の部分を拡大して示す(第1気体排出路12及び第2気体排出路14の全体構成、並びに第1ポンプ13及び第2ポンプ15は
図1参照)。
【0030】
排気回収槽11には、第1気体排出路12及び第2気体排出路14がそれぞれ接続されている。
【0031】
第1気体排出路12の一端は蒸気洗浄・真空乾燥槽22に接続され、他端122は排気回収槽11内で開口している。この開口には後述のノズル17が接続されている。
【0032】
第2気体排出路14の一端141は排気回収槽11に接続されており、該一端141の位置(第2位置)は、第1気体排出路12の他端122の位置(第1位置)よりも上にある。
【0033】
排気回収槽11内には、第1位置と第2位置の間の位置まで貯留液Lが貯留されている。従って、第1気体排出路12の開口及びノズル17は貯留液L内に配置されているのに対して、第2気体排出路14の開口は貯留液Lよりも上にある。貯留液Lは、本実施形態では浸漬洗浄槽21及び蒸気洗浄・真空乾燥槽22で使用されるものと同じ洗浄液である。洗浄液そのものの代わりに、洗浄液が溶解し得る他の液体を貯留液Lとして用いてもよい。
【0034】
第1ポンプ13は、第1気体排出路12中に設けられている。本実施形態では、第1気体排出路12は第1ポンプ13よりも蒸気洗浄・真空乾燥槽22側(上流側)で分岐しており、分岐した第1気体排出路12の上流側は浸漬洗浄槽21に接続されている。この分岐は、浸漬洗浄槽21内の洗浄液を脱気することによって浸漬洗浄の効果を高めるために設けられている。浸漬洗浄槽21で自然に蒸発する蒸気の量は、蒸気洗浄・真空乾燥槽22から回収される蒸気の量よりも十分に少ないことから、環境に与える影響が無視できるほど小さい場合には当該分岐を省略してもよい。本実施形態では、第1ポンプ13には真空ポンプを用いる。
【0035】
第2ポンプ15は、第2気体排出路14中に設けられている。本実施形態では、第2ポンプ15には排気ファンを用いるが、真空ポンプを用いてもよい。
【0036】
逆止弁16は、第2気体排出路14中の前記一端141寄りであって該第2気体排出路14が略鉛直方向に延びている位置に設けられている。逆止弁16は板状の蓋体1601を備え、該蓋体の一端が蝶番1602により第2気体排出路14の内壁面に取り付けられている。蓋体1601は、蝶番1602を支点として上下方向に旋回可能であり、下方向に旋回して略水平となったときに第2気体排出路14を閉鎖するように形状が形成されている。逆止弁16は、排気回収槽11内の圧力と大気圧との差が0.4kPa以上、すなわち排気回収槽11内の圧力が大気圧よりも0.4kPa高い第1値以上になったときに、蓋体1601が該圧力で押し上げられて上方に旋回することにより開放し、排気回収槽11内の圧力が前記第1値と同じ値である第2値以下になったときに蓋体1601が自重で下方に旋回して降下することにより閉鎖する。このように蓋体1601が圧力及び自重で動作するように、蓋体1601の重量及び第2気体排出路14の圧力(第2ポンプ15の出力)が設定されている。排気回収槽11内が大気圧のときには逆止弁16は閉鎖され、該排気回収槽11内の圧力が第1値以上になったときに逆止弁16を開放することにより、排気回収槽11内の圧力が過度に上昇して洗浄液の蒸気が排気回収槽11の外に漏出することが防止される。本実施形態では、蓋体1601の重量は0.173kgW、蓋体1601の位置における第2気体排出路14の断面積は19.6cm2(内径50mm)、第2気体排出路14内の圧力は-0.65kPa(大気圧との差)とした。
【0037】
ノズル17は、
図3に示すように、径が小さい順に(言い換えれば内側から順に)に第1管1711、第2管1712及び第3管1713の3つの管が同軸状に配置され、さらに第3管1713の表面にメッシュ1714を巻き付けたものである。第1管1711の一端は開放されており、第1気体排出路12の他端122に接続されている。第1管1711の他端、並びに第2管1712及び第3管1713の両端は板材により閉鎖されている。第1管1711、第2管1712及び第3管1713の側壁には、気体が通過する孔172が多数設けられている。孔172の径は、本実施形態ではいずれも1.0mmとした。メッシュ1714は、0.14mmの網目を有する。
【0038】
なお、ノズル17を構成する多重管(本実施形態では三重管)が有する管の数は、本実施形態における3には限定されず、2であってもよいし、4以上であってもよい。また、メッシュ1714は省略してもよい。あるいは。多重管の代わりに、一重又は多重のメッシュを設けてもよいし、多数の孔が設けられたシャワーヘッド状のノズルを用いてもよい。さらに、本発明ではこのような多数の孔が設けられたノズルを用いることは必須ではなく、第1気体排出路12の他端122をそのまま排気回収槽11内に配置してもよい。
【0039】
排気回収槽11内の、第2気体排出路14の一端141よりも下側である貯留液Lに浸漬される位置(高さ)には、貯留液Lを冷却するための冷媒を内部に流す冷却コイル181が設けられている。冷却コイル181を設ける位置は、本実施形態ではノズル17の周囲としたが、この位置には限定されない。なお、冷却コイル181以外の、排気回収槽11内の貯留液Lを冷却する冷却装置を用いてもよいし、冷却コイル181を省略してもよい。
【0040】
排気回収槽11内の第1気体排出路12の他端122と第2気体排出路14の一端141の間の位置には、排気回収槽11内を上下に仕切るように、金属製の線材を網目状に編んだ網目状部材182が配置されている。網目状部材182は、前記第1位置側から前記第2位置側に移動する気体を整流すると共に、第1位置側から第2位置側に気体が移動することへの抵抗を付与するために設けられている。なお、網目状部材182の代わりに、板状部材に多数の孔を設けたもの等を配置してもよい。また、網目状部材182を含む前記等の各種部材は省略してもよい。
【0041】
排気回収槽11の側壁には、貯留液Lを排気回収槽11内に補充するための液補充口19が設けられている。
【0042】
(2) 本実施形態の気化洗浄液回収装置の動作
次に、本実施形態の気化洗浄液回収装置10の動作を説明する。
【0043】
予め、浸漬洗浄槽21及び蒸気洗浄・真空乾燥槽22で使用するものと同じ洗浄液を液補充口19から供給することにより、排気回収槽11内の第1位置と第2位置の間(第1気体排出路12の他端122と第2気体排出路14の一端141の間)の位置まで貯留液Lを貯留しておく。気化洗浄液回収装置10に網目状部材182を設けた場合には、貯留液Lの液面は網目状部材182よりも下側になるようにする。また、気化洗浄液回収装置10に冷却コイル181を設けた場合には、冷却コイル181内に冷媒を流すことにより、貯留液Lを冷却する動作を継続的に行う。
【0044】
洗浄装置1の使用中は、第1ポンプ13及び第2ポンプ15を稼働させる。第1ポンプ13が稼働することにより、浸漬洗浄槽21内で蒸発した、蒸気洗浄・真空乾燥槽22内で蒸気洗浄に使用された、及び蒸気洗浄・真空乾燥槽22内で真空乾燥で蒸発した、洗浄液の蒸気を含む気体は、第1気体排出路12を通って、ノズル17から排気回収槽11内の貯留液L中に放出される。ここで、洗浄液の蒸気を含む気体が、ノズル17に設けられた多数の孔172を通過して貯留液L中に放出されることにより、当該気体は細かい気泡となって貯留液L中に拡散する。これにより、ノズル17が無い場合よりも気泡1個当たりの体積が小さくなり、それによって気泡の表面積の総計は大きくなるため、当該気体が貯留液Lに溶解し易くなる。そのため、当該気体に含まれる洗浄液の蒸気が貯留液Lに溶解することなく排気回収槽11の外に排出されることが抑えられる。
【0045】
第1気体排出路12から排気回収槽11内に供給される気体のうち、浸漬洗浄槽21や蒸気洗浄・真空乾燥槽22内に存在していた空気等、洗浄液の蒸気以外の成分であって貯留液Lに溶解しなかった気体が排気回収槽11内の貯留液Lよりも上側の空間に放出される。排気回収槽11内の圧力が大気圧+0.4kPa(前記第1値)未満のときには、逆止弁16が閉鎖されているため、前記空間に気体が放出されることによって排気回収槽11内の圧力が上昇してゆく。
【0046】
そして、排気回収槽11内の圧力が大気圧+0.4kPa(前記第1値)以上になったとき、その圧力の作用によって逆止弁16が自然に開放される。これにより、排気回収槽11内の気体は第2気体排出路14内に流入し、第2ポンプ15の動作により外部に排出される。このように気体が排出されることによって排気回収槽11内の圧力が大気圧+0.4kPa(前記第2値)以下になったとき、逆止弁16が弁体1601の自重によって自然に閉鎖される。このように、本実施形態の気化洗浄液回収装置10によれば、逆止弁16の動作によって排気回収槽11内の圧力が大気圧+0.4kPa以上に維持される。
【0047】
仮に逆止弁16が無ければ、第2ポンプ15の作用によって排気回収槽11内の圧力が大気圧+0.4kPa未満に低下し、それによって貯留液Lから洗浄液が蒸発して、その蒸気が第2気体排出路14を通って外部に排出されてしまうおそれがある。それに対して本実施形態では、逆止弁16の作用によって排気回収槽11内の圧力が大気圧+0.4kPa以上に維持されるため、洗浄液が蒸発してその蒸気が貯留液Lから外部に排出されることを抑えることができる。
【0048】
また、蒸気洗浄・真空乾燥槽22では、蒸気洗浄前には略大気圧となるのに対して、蒸気洗浄・真空乾燥中には蒸気洗浄前よりも圧力が数桁低くなる。それに伴って、排気回収槽11内の圧力も大きく変動し得る。特に、蒸気洗浄・真空乾燥中に、排気回収槽11から排出される量よりも多くの蒸気が排気回収槽11内に流入すると、排気回収槽11内が加圧状態となり、気体が排気回収槽11から漏出するおそれがある。そのため、第2ポンプ15は蒸気洗浄・真空乾燥中の全体に亘って排気回収槽11内の圧力が気体の漏出を生じさせない程度となるように排気量を設定する必要がある。しかし、そのように排気量を設定すると、蒸気洗浄・真空乾燥中に排気回収槽11内の圧力が過度に低下してしまうことで貯留液Lからの洗浄液の蒸発が促進されてしまうおそれがある。それに対して本実施形態の気化洗浄液回収装置では逆止弁16を設けることにより、排気回収槽11内の圧力が過度に低下することを防ぎ、それによって洗浄液が蒸発してその蒸気が貯留液Lから外部に排出されることを抑えることができる。
【0049】
さらに、本実施形態では逆止弁16に加えてノズル17を設けることにより、貯留液L内の気泡1個当たりの体積が小さくなり、第1気体排出路12から供給される気体中の洗浄液の蒸気が貯留液Lに溶解し易くなるため、該蒸気が排気回収槽11から外部に排出されることを抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態では、冷却コイル181を用いて貯留液Lを冷却することによっても、洗浄液が貯留液Lから蒸発することが抑えられる。
【0051】
さらに、網目状部材182は、それよりも下側から上側に気体が移動する際の抵抗となるため、該下側(貯留液L側)の圧力を高くして貯留液Lの蒸発を抑える役割を有する。それと共に、網目状部材182は、貯留液Lの蒸気の流速を低下させ、それによって該網目状部材182において蒸気の一部を液化させて排気回収槽11内に留める役割も有する。
【0052】
(3) 本実施形態の気化洗浄液回収装置を用いた実験
次に、本実施形態の気化洗浄液回収装置10において、第2気体排出路14から排出される気体に含まれる洗浄液由来のVOC(揮発性有機化合物)の量を測定する実験を行った結果を説明する。ここでは、気化洗浄液回収装置10の一部を省略した実施例1と、気化洗浄液回収装置10の全ての構成を有する実施例2~4について、それぞれ実験を行った。
【0053】
実施例1では、気化洗浄液回収装置10よりノズル17を省略(第1気体排出路12の他端122の開口を直接、貯留液Lに浸漬)し、冷却コイル181により貯留液Lの温度が30℃となるように制御した。実施例2~4ではノズル17を設け、冷却コイル181の動作によって貯留液の温度を30℃(実施例2(実施例1と同じ))、20℃(実施例3)及び10℃(実施例4)という異なる値とした。
【0054】
さらに、比較例として、実施例1の構成において、逆止弁16の代わりに第2気体排出路14の開口1411を常時1/4開放する蓋を設けた(貯留液Lの温度は実施例1と同じく30℃とした)気化洗浄液回収装置についても実験を行った。
【0055】
これら実施例1~4及び比較例につき、蒸気洗浄・真空乾燥槽22において蒸気洗浄を160秒間行った後、真空乾燥を140秒間行い、これら蒸気洗浄及び真空乾燥の間に第2気体排出路14から排出される気体に含まれるVOCの濃度を測定した。ここで測定するVOCの濃度は、測定期間中(300秒間)の平均値とした。なお、実施例1及び比較例では、蒸気洗浄の終了後に、一旦蒸気洗浄・真空乾燥槽22内の真空を破ったうえで真空乾燥を行ったのに対して、実施例2~4では蒸気洗浄の終了後にそのまま真空乾燥を行った。
【0056】
【0057】
この測定結果より、ノズル17及び網目状部材182を省略した実施例1においても、比較例よりも排気中のVOCの濃度(量)が減少していることがわかる。従って、実施例1と比較例の実験によって、逆止弁16の作用によって、洗浄液の蒸気が排出されることを抑制することができることが確認された。
【0058】
また、この測定結果より、ノズル17及び網目状部材182を用いた実施例2~4では、排気中のVOCの濃度をより一層抑制することができることもわかる。さらに、実施例2~4の間で比較すると、冷却コイル181によって貯留液Lの温度を低くするほど、排気中のVOCの濃度を抑えることができることが分かる。
【0059】
(4) 変形例
上記実施形態では、開閉弁として、排気回収槽11内の圧力により持ち上げられることで開放され自重で降下することにより閉鎖される逆止弁16を用いたが、本発明では開閉弁の構成はこれには限定されない。例えば、開閉弁として逆止弁16とは異なる構成を有する逆止弁を用いてもよい。また、開閉弁に関して
図4に示す構成を用いることができる。
図4に示す構成では、開閉弁161と、該開閉弁161を開閉させる駆動源162と、排気回収槽11内の圧力を測定する圧力計163と、圧力計163による測定値に基づいて駆動源162を制御する制御部164とが設けられている。排気回収槽11内の圧力が第1値以上になったことを圧力計163が検出したとき、制御部164は開閉弁161を開放するよう駆動源162を制御する。一方、排気回収槽11内の圧力が第2値以下になったことを圧力計163が検出したとき、制御部164は開閉弁161を閉鎖するよう駆動源162を制御する。
【0060】
開閉弁の構成以外の構成についても、本発明は上記実施形態には限定されず、本発明の主旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…洗浄装置
10…気化洗浄液回収装置
11…排気回収槽
12…第1気体排出路
122…第1気体排出路の他端
13…第1ポンプ
14…第2気体排出路
141…第2気体排出路の一端
15…第2ポンプ
16…逆止弁(開閉弁)
1601…蓋体
1602…蝶番
161…開閉弁
162…駆動源
163…圧力計
164…制御部
17…ノズル
1711…第1管
1712…第2管
1713…第3管
1714…メッシュ
172…孔
181…冷却コイル
182…網目状部材
19…液補充口
21…浸漬洗浄槽
211…超音波振動子
22…蒸気洗浄・真空乾燥槽
23…蒸留槽
231…フィルタ
232…三方弁
24…コンデンサ槽
25…リザーブ槽
251…エゼクタ
L…貯留液
W…ワーク