(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135593
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】線状設備の保護構造体
(51)【国際特許分類】
E02B 3/08 20060101AFI20220908BHJP
E02B 3/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
E02B3/08 301
E02B3/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035514
(22)【出願日】2021-03-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】390019323
【氏名又は名称】小岩金網株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391047190
【氏名又は名称】岡三リビック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(71)【出願人】
【識別番号】593033980
【氏名又は名称】トワロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】坂本 茂
(72)【発明者】
【氏名】小浪 岳治
(72)【発明者】
【氏名】青田 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和隆
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA01
2D118BA01
2D118BA05
2D118BA07
2D118DA03
2D118GA51
(57)【要約】
【課題】長尺かつ扁平な布団篭を機能の異なる保護セルと係留セルの組合せから構成することで線状設備を確実かつ安定的に保護可能な保護構造体を提供すること。
【解決手段】本発明の線状設備の保護構造体1は、長尺かつ扁平な六面体からなる布団篭10と、中詰材20と、を備え、布団篭10は、内部を複数の仕切網11dで長手方向に仕切ることで、連続する3つ以上のセルCを構成し、中詰材20は、粗粒材21と、粗粒材21より粒径の小さい細粒材22と、からなり、布団篭10における長手方向両側の複数のセルC内に充填した粗粒材21によって、係留セルCbを構成し、係留セルCbに挟まれたセルC内に充填した細粒材22によって、保護セルCaを構成したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に設置した線状設備を被覆して保護する、保護構造体であって、
長尺かつ扁平な六面体からなる布団篭と、中詰材と、を備え、
前記布団篭は、内部を複数の仕切網で長手方向に仕切ることで、連続する3つ以上のセルを構成し、
前記中詰材は、粗粒材と、前記粗粒材より粒径の小さい細粒材と、からなり、
前記布団篭における長手方向両側の複数のセル内に充填した粗粒材によって、係留セルを構成し、
前記係留セルに挟まれたセル内に充填した細粒材によって、保護セルを構成したことを特徴とする、
保護構造体。
【請求項2】
前記保護セルにおける少なくとも側面及び底面の内側に、前記布団篭の網目より網目寸法の小さい内貼材を付設したことを特徴とする、請求項1に記載の保護構造体。
【請求項3】
前記内貼材が、格子状の鋼材からなることを特徴とする、請求項2に記載の保護構造体。
【請求項4】
前記内貼材が、格子状の樹脂製ジオグリッドからなることを特徴とする、請求項2に記載の保護構造体。
【請求項5】
前記係留セル及び/又は前記保護セルの内部における、対向する2面を連結する複数の拘束線材を備えることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の保護構造体。
【請求項6】
前記複数の拘束線材を、前記係留セルにおいて平面視略十字型に配置し、前記保護セルにおいて、前記布団篭の幅方向にのみ配置したことを特徴とする、請求項5に記載の保護構造体。
【請求項7】
前記粗粒材の粒径が100mm~300mmの範囲内にあり、前記細粒材の粒径が100mm以下であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の保護構造体。
【請求項8】
前記粗粒材の粒径が100mm~300mmの範囲内にあり、前記細粒材の粒径が20mm~100mmの範囲内にあることを特徴とする、請求項7に記載の保護構造体。
【請求項9】
前記布団篭における、長さL、幅W、及び高さHが、[L≧3W]かつ[W≧3H]の関係を満たすことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の保護構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線状設備の保護構造体に関し、特に、長尺かつ扁平な布団篭を機能の異なる保護セルと係留セルの組合せから構成することで、線状設備を確実かつ安定的に保護可能な、保護構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電設備の海底ケーブルや、天然ガスや石油等を輸送するためのパイプラインは、海底に沿って連続して敷設されている。
これらの線状設備は、潮流の影響により本来の設置場所から移動することがあり、移動に伴って底部や連結部に損傷を受けるおそれがある。また、潮流によって線状設備の下方の土砂が洗堀されると、線状設備がこの洗堀孔内に沈み込んで変形し、損傷を引き起こすおそれがある。
特に、海岸に比較的近い浅い水域においては、波浪の影響が非常に大きいため、海底に敷設した線状設備を保護する必要がある。
特許文献1には、合成繊維製の網状袋体の内部に粒径50~300mmの砕石を充填してなるフィルターユニットを用い、海底に敷設した海底ケーブルの上部に複数のフィルターユニットを設置して被覆することで海底ケーブルを保護する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には下記のような問題点がある。
<1>粒径の大きい砕石を介して、フィルターユニットの荷重が線状設備の表面に点状に作用するため、線状設備に変形や損傷を与えるおそれがある。また、潮流によってフィルターユニットが揺動すると、編目を通して砕石が線状設備を噛むことで、線状設備を損傷させるおそれがある。
<2>団子状の形状であり安定性が低いため、潮流によって転動しやすく、線状設備の上から転落して保護機能を失うおそれがある。
<3>砕石の粒径が大きいため、砕石間の空隙を通じて下方の砂が吸い出されることで、線状設備が沈下して変形するおそれがある。
<4>1ユニット当たりの敷設面積が小さいため、所定長の線状設備を被覆するのに多数のフィルターユニットが必要であり、材料コスト施工コスト共に嵩む。また、被覆面が略円形状となるため、ユニット間に隙間が多く、保護機能が十分でない。
<5>海底に吊り下ろす際に、砕石の荷重で球状になるため、正確に線状設備を被覆するのが難しい。このため、施工精度が低く、施工効率が悪い。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決可能な、線状設備の保護構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の線状設備の保護構造体は、長尺かつ扁平な六面体からなる布団篭と、中詰材と、を備え、布団篭は、内部を複数の仕切網で長手方向に仕切ることで、連続する3つ以上のセルを構成し、中詰材は、粗粒材と、粗粒材より粒径の小さい細粒材と、からなり、布団篭における長手方向両側の複数のセル内に充填した粗粒材によって、係留セルを構成し、係留セルに挟まれたセル内に充填した細粒材によって、保護セルを構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明の線状設備の保護構造体は、保護セルにおける少なくとも側面及び底面の内側に、布団篭の網目より網目寸法の小さい内貼材を付設してもよい。
【0008】
本発明の線状設備の保護構造体は、内貼材が、格子状の鋼材からなっていてもよい。
【0009】
本発明の線状設備の保護構造体は、内貼材が、格子状の樹脂製ジオグリッドからなっていてもよい。
【0010】
本発明の線状設備の保護構造体は、係留セル及び/又は保護セルの内部における、対向する2面を連結する複数の拘束線材を備えていてもよい。
【0011】
本発明の線状設備の保護構造体は、複数の拘束線材を、係留セルにおいて平面視略十字型に配置し、保護セルにおいて、布団篭の幅方向にのみ配置してもよい。
【0012】
本発明の線状設備の保護構造体は、粗粒材の粒径が100mm~300mmの範囲内にあり、細粒材の粒径が100mm以下であってもよい。
【0013】
本発明の線状設備の保護構造体は、粗粒材の粒径が100mm~300mmの範囲内にあり、細粒材の粒径が20mm~100mmの範囲内にあってもよい。
【0014】
本発明の線状設備の保護構造体は、布団篭における、長さL、幅W、及び高さHが、[L≧3W]かつ[W≧3H]の関係を満たしていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の線状設備の保護構造体は、上述した構成により以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
<1>中央の保護セルで線状設備の上部を抑えて保護し、両端の係留セルを直接水底に設置して係留する構造であるため、安定性が高いと共に、線状設備にかかる荷重が少なく、変形や損傷を与えにくい(
図4)。
<2>長尺で扁平な形状であるため、線状設備の外形に応じて追従変形しやすく、線状設備を水底に確実に係留できる。
<3>細粒材を充填した保護セルで線状設備を抑えることで、荷重を点ではなく面状に分散させることができる。このため、線状設備に変形や損傷を与えにくい。また、中詰材の噛み込みによって線状設備を損傷させるおそれがない。
<4>扁平な形状であるため、潮流の影響を受けにくく移動しにくい。このため、線状設備を長期間安定的に保護することができると共に、揺動による線状設備への損傷を防ぐことができる。
<5>保護セル内の細粒材が、線状設備周辺の砂を捕捉して吸出しを防止することで、線状設備の沈下を防ぐことができる。
<6>1ユニット当たりの敷設面積が広いため、安価なコストで線状設備を長距離被覆できる。また、平面形状が長方形であるため、隙間無く敷設して、線状設備を確実に保護することができる。
<7>長尺な布団篭を線状設備と交差させて設置するため、施工が容易で、施工効率が高い。
<8>係留セル内の空隙を魚介類の生息空間とすることで、漁礁機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る線状設備の保護構造体の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の線状設備の保護構造体について詳細に説明する。
【実施例0018】
[保護構造体]
<1>全体の構成(
図1)。
本発明の保護構造体1は、海底ケーブルやパイプライン等、水底に沿って敷設される線状設備Aを被覆して保護する構造体である。ここで「保護する」とは、線状設備Aを覆って水中の漂流物や水底の転動物による衝突から守ることの他、線状設備Aを水底に係留して水流による移動を防ぐこと、線状設備Aの下方が水流によって洗掘されるのを防ぐこと等を含む。
保護構造体1は、長尺かつ扁平な六面体からなる布団篭10と、布団篭10内に充填した中詰材20と、を少なくとも備える。
保護構造体1は、布団篭10内を長手方向に仕切ることで、布団篭10の内部に、連続する3つ以上のセルCを構成する。
複数のセルCは、布団篭10の長手方向両側の係留セルCbと、係留セルCbに挟まれた保護セルCaと、の組合せからなる。
本例では保護構造体1のサイズを、長さ6m×幅2m×高さ0.6mとする。
【0019】
<2>布団篭。
布団篭10は、内部に中詰材20を収容する函体である。
布団篭10は、篭本体11を少なくとも備え、本例では、更に篭本体11内の保護セルCa内に付設した内貼材12を備える。
内貼材12の網目寸法は、篭本体11の網目寸法より小さい。
本例では、篭本体11の菱形金網の網目寸法が150mm、内貼材12のジオグリッドの網目寸法が1辺30mmである。
ここで菱形金網の網目寸法とは、列線で囲まれた空間四辺形の一辺の長さを意味し、ジオグリッドの網目寸法とは、目合いではなくストランドで囲まれた空間四辺形の一辺の長さを意味する。
【0020】
<2.1>篭本体(
図2)。
篭本体11は、金網からなる函体である。
篭本体11は、複数の側面網11aと、底面網11bと、蓋面網11cと、を長尺の函状に組んでなる。篭本体11の内部は、仕切網11dによって長手方向に仕切り、内部に複数のセルCを構成する。
本例では、側面網11a、底面網11b、蓋面網11c、及び仕切網11dがそれぞれ、矩形の枠線の内側に菱形金網を展設してなる、金網パネルである。
ただし、側面網11aは必ずしも独立の部材である必要はなく、例えば篭本体11の幅方向両側の2枚の側面網11aを、底面網11bに対して折り畳み可能に連結した3面一体構造としてもよい。また、例えば長辺側の側面網11aを1枚ではなく複数枚の側面網11aを連結して構成してもよい。
本例では、各枠線及び菱形金網の素材として、亜鉛アルミ合金めっき鋼線をポリエチレンアイオノマー樹脂で被覆した線材(IR被覆めっき鋼線)を採用する。
ただし、枠線等の素材はこれに限らず、例えば亜鉛アルミ合金めっき鉄線、亜鉛めっき鉄線等であってもよい。
【0021】
<2.1.1>篭本体の寸法。
篭本体11の寸法は、長さL、幅W、及び高さHが、[L≧3W]かつ[W≧3H]の関係を満たすことが望ましい。
本例では篭本体11のサイズが、長さ6m×幅2m×高さ0.6mであるから、[L=3W]かつ[W=3.3H]である。
以上のような長尺で扁平な寸法とすることで、柔軟性、線状設備Aの外周への追従性、荷重分散効果等の効果を発揮することができる。また、1ユニット当たりの敷設面積が広くなるため、従来技術に比べてm2当たりの材料コスト及び施工コストが安価となる。
【0022】
<2.2>内貼材。
内貼材12は、細粒材22の流失を防ぐための面材である。
内貼材12は、保護セルCa内の、少なくとも側面網11a、底面網11b、及び仕切網11dの内側に付設する。本例では、蓋面網11cにも内貼材12を付設する。
本例では内貼材12の材料として、樹脂製のジオグリッドを採用する。
ジオグリッドとは、引張抵抗のある構成要素を格子状に連結してシート状に構成してなる土木資材である。ジオグリッドは、高い強度、優れたクリープ特性、耐候性、耐衝撃性、耐摩擦性等を兼ね備えた部材である。
本例ではジオグリッドとして、高強度ポリエステル樹脂(PET)製の繊維からなる芯材を、ポリプロピレン樹脂(PP)で被覆することで格子状に構成した製品を採用する。このような製品として、例えば岡三リビック株式会社製の『TRIGRID(登録商標)』等がある。
以上のように、内貼材12の材料はジオグリッドが最適であるが、これに限られず、例えば篭本体11の網目寸法より網目寸法が小さい溶接金網等からなってもよい。
【0023】
<2.3>連結材。
連結材13は、篭本体11の側面網11a、底面網11b、蓋面網11c、及び仕切網11dを相互に連結する部材である。
本例では、連結材13として硬鋼線をコイル状に巻いてなる連結コイルを採用する。
例えば、隣接する2枚の側面網11aの縦線材に連結コイルを巻き付けることで、2枚の側面網11aを簡易かつ確実に連結することができる。
なお、連結材13はコイル材に限られず、番線やクリップなど他の公知の連結手段であってもよい。
【0024】
<2.4>拘束線材。
拘束線材14は、篭本体11の対向する2面の金網を拘束する部材である。
詳細には、対向する2面の側面網11a、又は対向する側面網11aと仕切網11dの間を、複数の拘束線材14で相互に連結する。
篭本体11の対向する2面の金網を拘束線材14で相互に拘束することによって、中詰材20の充填による側面網11aの孕み出しを防ぐことができる。
本例では、拘束線材14として、両端に側面網11a等の網目に掛止する鉤状部を備えたIR被覆めっき鋼線を採用する。
ただし拘束線材14はこれに限らず、例えば繊維製ロープ、ワイヤロープ等であってもよい。要は所定の強度及び耐候性を備えた素材からなり、対向する2面の金網間を拘束して補強可能な構成であればよい。
【0025】
<2.4.1>拘束線材の配置(
図3)。
本例では、保護セルCa内と、係留セルCb内とで、拘束線材14の配置を変える(なお、
図3では、説明の便宜上、底面網11b、蓋面網11c、内貼材12、及び中詰材20を省略して表示している)。
詳細には、係留セルCb内では、2本の拘束線材14によって、篭本体11の幅方向の2枚の側面網11a同士、及び長手方向の側面網11aと仕切網11dとを連結する。すなわち拘束線材14を平面視略十字型に配設する。
一方、保護セルCa内では、1本の拘束線材14によって、篭本体11の幅方向の2枚の側面網11a同士を連結する。すなわち、拘束線材14は幅方向にのみ配設し、長手方向には配設しない。
このように、保護セルCa内の長手方向に拘束線材14を配設しないことで、保護セルCaが篭本体11の長手方向に湾曲しやすくなり、線状設備Aの外形への追従が容易になる。
【0026】
<3>中詰材。
中詰材20は、布団篭10内に充填する塊状又は粒状の部材である。
中詰材20は、粗粒材21と、粗粒材21より粒径の小さい細粒材22と、の組合せからなる。
ここで、「粒径が小さい」とは、粗粒材21と細粒材22がそれぞれの粒度範囲を有し、少なくとも細粒材22の粒度範囲の下限が、粗粒材21の粒度範囲の下限より小さいことを意味する。
【0027】
<3.1>粗粒材。
粗粒材21は、篭本体11のセルC内に充填する中詰材20である。
本例では粗粒材21として、粒径200mmの割栗石を採用する。
粗粒材21の粒径はこれに限らず、細粒材22より粒径が大きく、かつ篭本体11の金網の目合より大きな粒度範囲内にあればよいが、粒径100mm~300mmの範囲にあるとより好適である。
また、粗粒材21の種類は割栗石に限らず、単粒度砕石、岩砕、コンクリート塊やレンガ塊などの再生砕石等であってもよい。
篭本体11の幅方向両側のセルC内に充填した粗粒材21によって、係留セルCbを構成する。
係留セルCbは、粒径の大きい粗粒材21によって粗粒材21内に大きな空隙を確保できるため、水中の波力エネルギーを粗粒材21間で順次分散させて吸収することで、周辺の洗掘を起こさない水準まで低減させることができる。
また、係留セルCbは、粗粒材21の空隙率が高いため、粗粒材21の空隙を魚介類の生息空間として利用することで、漁礁機能を発揮することもできる。
【0028】
<3.2>細粒材。
細粒材22は、内貼材12内に充填する中詰材20である。
本例では細粒材22として、粒径50mmの砕石を採用する。
細粒材22の粒径はこれに限らず、粗粒材21より粒径が小さく、かつ内貼材12のジオグリッドの目合より大きな粒度範囲内にあればよいが、粒径20mm~100mmの範囲にあるとより好適である。
これは、20mmより細粒化すると捕獲する金網のコストや強度面から非合理であり、かつ100mmより粗粒化すると、細粒材22同士の噛み合わせ力が強くなり重機ではなく手詰め作業が必要となるためである。
また、細粒材22の種類は砕石に限らず、割栗石、玉石、再生砕石等であってもよい。
係留セルCbに挟まれたセルC内に充填した細粒材22によって、保護セルCaを構成する。
保護セルCaは、底面網11b下部の砂が水流によって海底から吸引される際に、水のみを排出して、砂を細粒材22の隙間の小さな空隙内に捕捉することで、砂の吸出しを防止することができる。
【0029】
<4>保護構造体の使用方法(
図4)。
保護構造体1の使用方法について、海底に風力発電設備の送電ケーブルが敷設されている例を説明する。
陸上の仮置き場に設置した保護構造体1を、起重機船のクレーンによって吊り上げて海上輸送し、設置場所で海中に吊り込む。
続いて、保護構造体1の長手方向を線状設備Aと直交する方向に向け、保護セルCaが線状設備Aの上部を覆うように海底へ吊り下ろす。
すると、細粒材22を充填した保護セルCaが線状設備Aの外形に追従変形して線状設備Aを面状に抑えると共に、両側の係留セルCbが海底に直接設置される。この際、係留セルCb内の粗粒材21が、底面網11bの網目を通して海底の砂に噛み込むことで、線状設備Aを確実に係留することができる。
保護構造体1は、潮流の影響を受けにくく海底への接触面積が大きい長尺扁平な形状からなるため、線状設備Aを長期間安定的に保護することができる。
また、線状設備Aを跨いで両側で係留する構造であるため、線状設備A上にかかる荷重が少なく、線状設備Aに変形や損傷を与えにくい。