(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135610
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】蓄電装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6555 20140101AFI20220908BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220908BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20220908BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220908BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20220908BHJP
H01G 11/18 20130101ALI20220908BHJP
H01G 2/08 20060101ALI20220908BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20220908BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20220908BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M10/613
H01M10/647
H01M2/10 S
H01G11/86
H01G11/18
H01G2/08 A
H01G2/02 101E
H01G11/10
H01G4/38 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035538
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 大樹
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5E078AA09
5E078JA02
5E078ZA01
5E082BC23
5E082CC01
5E082PP10
5H031AA09
5H031HH01
5H031KK01
5H040AA28
5H040AT02
5H040AY08
5H040CC34
5H040NN03
5H040NN05
(57)【要約】
【課題】冷却の効率および均一性の高い蓄電装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】蓄電装置は、第1の方向に積層された複数の蓄電セルと、複数の蓄電セルの間に設けられた熱伝導材とを備える。複数の蓄電セルの各々は、筐体と、筐体上に設けられた電極端子とを含む。筐体は、電極端子が設けられた上面と、上面に対向する底面と、第1の方向に沿って対向する2つの第1側面と、第1の方向に直交する第2の方向に沿って対向する2つの第2側面とを含む。熱伝導材は、底面から2つの第1側面および2つの第2側面の一部を覆う第1部分と、第1部分に対して電極端子側に設けられ、2つの第1側面の少なくとも一部を覆う第2部分とを含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電セルと、
前記複数の蓄電セルの間に設けられた熱伝導材とを備え、
前記複数の蓄電セルの各々は、底部および上部を有する筐体を含み、
前記熱伝導材は、前記筐体の前記底部を覆う第1部分と、前記第1部分から前記筐体の前記上部に向かって突出する第2部分とを含む、蓄電装置。
【請求項2】
第1の方向に積層された複数の蓄電セルと、
前記複数の蓄電セルの間に設けられた熱伝導材とを備え、
前記複数の蓄電セルの各々は、筐体と、前記筐体上に設けられた電極端子とを含み、
前記筐体は、前記電極端子が設けられた上面と、前記上面に対向する底面と、前記第1の方向に沿って対向する2つの第1側面と、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って対向する2つの第2側面とを含み、
前記熱伝導材は、前記底面から前記2つの第1側面および前記2つの第2側面の一部を覆う第1部分と、前記第1部分に対して前記電極端子側に設けられ、前記2つの第1側面の少なくとも一部を覆う第2部分とを含む、蓄電装置。
【請求項3】
前記複数の蓄電セルの各々は、前記筐体に収納された電極体を含み、
前記熱伝導材の前記第2部分は、前記電極体を前記2つの第1側面に投影した領域に設けられる、請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記熱伝導材の熱抵抗は、0.2K/W以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記熱伝導材の体積抵抗率は、1×1010Ω・cm以上である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記熱伝導材の絶縁破壊電圧は、5kV以上である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記熱伝導材は放熱性グリスにより構成される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項8】
底部および上部を有する筐体を含む蓄電セルを準備する工程と、
前記筐体の前記底部を流動性を有する熱伝導材に浸漬して前記熱伝導材の第1部分を形成する工程と、
前記底部よりも前記上部側に位置する前記筐体の側面に前記熱伝導材を塗布して前記熱伝導材の第2部分を形成する工程とを備えた、蓄電装置の製造方法。
【請求項9】
電極端子が設けられた上面と、前記上面に対向する底面と、第1の方向に沿って対向する2つの第1側面と、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って対向する2つの第2側面とを有する筐体を含む蓄電セルを準備する工程と、
前記底面から前記2つの第1側面および前記2つの第2側面の一部を流動性を有する熱伝導材に浸漬して前記熱伝導材の第1部分を形成する工程と、
前記第1部分に対して前記電極端子側に位置する前記2つの第1側面の少なくとも一部に前記熱伝導材を塗布して前記熱伝導材の第2部分を形成する工程とを備えた、蓄電装置の製造方法。
【請求項10】
前記蓄電セルを準備する工程は、電極体を前記筐体に収納することを含み、
前記熱伝導材の前記第2部分は、前記電極体を前記2つの第1側面に投影した領域に設けられる、請求項9に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項11】
前記熱伝導材の熱抵抗は、0.2K/W以下である、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項12】
前記熱伝導材の体積抵抗率は、1×1010Ω・cm以上である、請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項13】
前記熱伝導材の絶縁破壊電圧は、5kV以上である、請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項14】
前記熱伝導材は放熱性グリスにより構成される、請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、蓄電装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電装置として、たとえば特開2015-111493号公報(特許文献1)に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池などの蓄電装置においては均一な冷却が求められる。冷却効率が低い場合、および冷却効率にばらつきがある場合、蓄電装置の出力のパフォーマンスを十分に向上させることができない。
【0005】
従来の蓄電装置は、上記観点から必ずしも十分な構成を備えるものではない。
【0006】
本技術の目的は、冷却の効率および均一性の高い蓄電装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの局面では、本技術に係る蓄電装置は、複数の蓄電セルと、複数の蓄電セルの間に設けられた熱伝導材とを備える。複数の蓄電セルの各々は、底部および上部を有する筐体を含む。熱伝導材は、筐体の底部を覆う第1部分と、第1部分から筐体の上部に向かって突出する第2部分とを含む。
【0008】
他の局面では、本技術に係る蓄電装置は、第1の方向に積層された複数の蓄電セルと、複数の蓄電セルの間に設けられた熱伝導材とを備える。複数の蓄電セルの各々は、筐体と、筐体上に設けられた電極端子とを含む。筐体は、電極端子が設けられた上面と、上面に対向する底面と、第1の方向に沿って対向する2つの第1側面と、第1の方向に直交する第2の方向に沿って対向する2つの第2側面とを含む。熱伝導材は、底面から2つの第1側面および2つの第2側面の一部を覆う第1部分と、第1部分に対して電極端子側に設けられ、2つの第1側面の少なくとも一部を覆う第2部分とを含む。
【0009】
1つの局面では、本技術に係る蓄電装置の製造方法は、底部および上部を有する筐体を含む蓄電セルを準備する工程と、筐体の底部を流動性を有する熱伝導材に浸漬して熱伝導材の第1部分を形成する工程と、底部よりも上部側に位置する筐体の側面に熱伝導材を塗布して熱伝導材の第2部分を形成する工程とを備える。
【0010】
1つの局面では、本技術に係る蓄電装置の製造方法は、電極端子が設けられた上面と、上面に対向する底面と、第1の方向に沿って対向する2つの第1側面と、第1の方向に直交する第2の方向に沿って対向する2つの第2側面とを有する筐体を含む蓄電セルを準備する工程と、底面から2つの第1側面および2つの第2側面の一部を流動性を有する熱伝導材に浸漬して熱伝導材の第1部分を形成する工程と、第1部分に対して電極端子側に位置する2つの第1側面の少なくとも一部に熱伝導材を塗布して熱伝導材の第2部分を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、冷却の効率および均一性の高い蓄電装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1に示す組電池における電池セルおよびエンドプレートを示す図である。
【
図3】
図1に示す組電池における電池セルを示す図である。
【
図6】電池セルの筐体の底部に熱伝導材を設ける工程を示す図である。
【
図7】熱伝導材を設けた電池セルを示す斜視図である。
【
図8】熱伝導材と電極体との位置関係を示す図である。
【
図9】熱伝導材を設けた電池セルを積層した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0014】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0015】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0016】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0017】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0018】
本明細書において、「蓄電装置」、「蓄電セル」、「蓄電モジュール」、および「蓄電パック」なる用語が用いられる場合、「蓄電装置」、「蓄電セル」、「蓄電モジュール」、および「蓄電パック」は、電池、電池セル、電池モジュール、および電池パックに限定されず、キャパシタセル等を含み得る。
【0019】
図1は、組電池1(蓄電装置)の基本的構成を示す図である。
図2は、組電池1に含まれる電池セル100とエンドプレート200とを示す図である。
図3は、組電池1における電池セル100を示す図である。
【0020】
図1,
図2に示すように、組電池1は、電池セル100と、エンドプレート200と、拘束部材300とを備える。
【0021】
複数の電池セル100は、Y軸方向(配列方向)に並ぶように設けられる。電池セル100は、電極端子110を含む。複数の電池セル100の間には、図示しないセパレータが介装されている。2つのエンドプレート200に挟持された複数の電池セル100は、エンドプレート200によって押圧され、2つのエンドプレート200の間で拘束されている。
【0022】
エンドプレート200は、Y軸方向(配列方向)において組電池1の両端に配置されている。エンドプレート200は、組電池1を収納するケースなどの基台に固定される。
【0023】
拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに接続する。拘束部材300は、2つのエンドプレート200に取り付けられる。
【0024】
複数の電池セル100およびエンドプレート200の積層体に対してY軸方向の圧縮力を作用させた状態で拘束部材300をエンドプレート200に係合させ、その後に圧縮力を解放することにより、2つのエンドプレート200を接続する拘束部材300に引張力が働く。その反作用として、拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに近づける方向に押圧する。
【0025】
図3に示すように、電池セル100は、平坦面状の直方体形状に形成されている。電極端子110は、正極端子111と、負極端子112とを含む。電極端子110は、角型の筐体120上に形成されている。筐体120には、電極体140(
図8参照)および電解液が収容されている。
【0026】
図4は、電池セル100周辺の構造を示す図である。
図5は、
図4におけるV-V断面図である。
【0027】
図4,
図5に示すように、筐体120は、電極端子110が設けられた上面120Aと、上面120Aに対向する底面120Bと、Y軸方向(第1の方向)に沿って対向する2つの長側面120C(第1側面)と、X軸方向(第2の方向)に沿って対向する2つの短側面120D(第2側面)とを含む。上面120Aと底面120BとはZ軸方向(第3の方向)に沿って対向する。X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向は互いに直交する。
【0028】
筐体120の長側面120C上および短側面120D上には絶縁シート130が設けられる。絶縁シート130は、絶縁性のシュリンクフィルムなどにより構成される。筐体120の底面120B、長側面120Cおよび短側面120D上には熱伝導材400が設けられている。熱伝導材400としては、たとえば積水ポリマテック株式会社製のCGW(登録商標)シリーズなど、室温硬化が可能な放熱性グリスを用いることができる。
【0029】
熱伝導材400の下側(上面120Aの反対側)には、冷却プレート500が設けられる。冷却プレート500の内部に冷却液通路が設けられ得る。電池セル100の熱は、熱伝導材400を介して冷却プレート500に伝達される。これにより、電池セル100の冷却が促進される。
【0030】
熱伝導材400の熱抵抗は、たとえば0.2K/W以下程度であることが好ましい。熱伝導材400の体積抵抗率は、たとえば1×1010Ω・cm以上程度であることが好ましい。熱伝導材400の絶縁破壊電圧は、たとえば5kV以上程度であることが好ましい。
【0031】
図6は、電池セルの筐体の底部に熱伝導材を設ける工程を示す図である。
図6に示すように、本実施の形態では、容器400Aから型枠600内に熱伝導材400が供給される。その後、型枠600に筐体120の底部を挿入し、流動性を有する熱伝導材400に筐体120の底部を浸漬する。なお、最初に筐体120の底部を型枠600に挿入しておいて、その後、容器400Aから型枠600内に熱伝導材400を供給してもよい。
【0032】
図7は、熱伝導材を設けた電池セルを示す斜視図である。
図7に示すように、熱伝導材400は、筐体120の底部を覆う第1部分410と、第1部分410に対して電極端子110側に設けられた第2部分420とを含む。
【0033】
熱伝導材400の第1部分410は、底面120Bから2つの長側面120Cおよび2つの短側面120Dの一部を覆う。第1部分410は、
図6に示すように、筐体120の底部を型枠600内の熱伝導材400に浸漬し、付着した熱伝導材400を硬化させることにより形成される。
【0034】
熱伝導材400の第2部分420は、第1部分410から筐体120の上部に向かって突出する。第2部分420は、2つの長側面120Cの一部を覆うように形成される。第2部分420は、第1部分410を形成した後、筐体120の長側面120C上に熱伝導材400を塗布することにより形成される。
【0035】
図8は、熱伝導材400と電極体140との位置関係を示す図である。電極体140は、筐体120に収納されている。熱伝導材400の第2部分420は、電極体140を筐体120の長側面120Cに投影した領域に設けられる。発熱しやすい電極体140に対応する位置に熱伝導材400を選択的に設けることにより、電池セル100の冷却効率およびその均一性を向上させることが可能である。
【0036】
図9は、熱伝導材を設けた電池セルを積層した状態を示す断面図である。
図9に示すように、複数の電池セル100の間に位置する熱伝導材400第2部分420から、電池セル100の底部に設けられる第1部分410を介して冷却プレート500への伝熱が促進されることにより、隣接する電池セル100への伝熱が抑制される。したがって、個別の電池セル100が高温に達した場合でも、複数の電池セル100にわたる熱暴走連鎖を抑制することが可能である。なお、本実施の形態では、筐体120上に絶縁シート130を設けているが、絶縁シート130を無くして熱伝導材を筐体120に直接付着させてもよい。
【0037】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0038】
1 組電池、100 電池セル、100A 長側面、100B 短側面、110 電極端子、120 筐体、120A 上面、120B 底面、120C 長側面、120D 短側面、130 絶縁シート、200 エンドプレート、300 拘束部材、400 熱伝導材、400A 容器、500 冷却プレート、600 型枠。