(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135622
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】紙製容器
(51)【国際特許分類】
B65D 3/00 20060101AFI20220908BHJP
A45D 33/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B65D3/00 B
A45D33/00 610Z
A45D33/00 650Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035554
(22)【出願日】2021-03-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】592081391
【氏名又は名称】中井紙器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】中井 正裕
(57)【要約】
【課題】環境問題及び資源問題に対応しつつ、紙製容器本体及び紙製蓋体を備える容器において容器の密封状態を安定的に維持可能とすること。更に、廃棄の際に部材の分別の必要のない容器を提供すること。
【解決手段】開口部及び収容部を有する紙製容器本体、並びに、紙製蓋体を備える容器であって、前記紙製容器本体が紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる第1の係合部材を備え、前記紙製蓋体が紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる第2の係合部材を備え、前記第1の係合部材及び前記第2の係合部材が係合可能であり、前記第1の係合部材及び第2の係合部材を係合することにより、前記紙製容器本体の前記開口部を前記紙製蓋体によって封止可能であることを特徴とする、容器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部及び収容部を有する紙製容器本体、並びに、
紙製蓋体
を備える容器であって、
前記紙製容器本体が紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる第1の係合部材を備え、
前記紙製蓋体が紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる第2の係合部材を備え、
前記第1の係合部材及び前記第2の係合部材が係合可能であり、
前記第1の係合部材及び第2の係合部材を係合することにより、前記紙製容器本体の前記開口部を前記紙製蓋体によって封止可能であることを特徴とする、容器。
【請求項2】
前記紙製容器本体の前記開口部が前記第1の係合部材を備える、請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記紙製蓋体の端部が前記第2の係合部材を備える、請求項1又は2記載の容器。
【請求項4】
前記第1の係合部材の表面が第1のネジ部を備えており、
前記第2の係合部材の表面が第2のネジ部を備えており、
前記第1のネジ部及び前記第2のネジ部が係合可能である、請求項1乃至3のいずれかに記載の容器。
【請求項5】
前記紙が古紙である、請求項1乃至4のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
前記紙が紙粉体である、請求項1乃至5のいずれかに記載の容器。
【請求項7】
前記紙又は炭酸カルシウム含有樹脂がポリオレフィン樹脂を含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の容器。
【請求項8】
前記第1の係合部材及び前記第2の係合部材以外の樹脂部材を含まない、請求項1乃至7のいずれかに記載の容器。
【請求項9】
前記紙製容器本体の前記収容部が化粧料を含む、請求項1乃至8のいずれかに記載の容器。
【請求項10】
前記化粧料が粉末化粧料である、請求項9記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製容器、特に、化粧料用紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な化粧料容器が存在している。例えば、頂面を開口した有底の容器本体に収容した化粧料をパフ等の塗布具へ付着させて使用するにあたり、化粧料の付着量を調節可能な化粧料容器として、伸縮性の網を用いたものが、実開昭63-177406号公報、実開平3-72808号公報等に記載されている。
【0003】
上記の化粧料容器は、伸縮性の網の上方からパフ等の塗布具を化粧料に押し付けて拭うことにより、その押し付ける力に応じた量の化粧料を塗布具に付着させることができ、また、化粧料の表面を網で覆うことにより化粧料が飛散するのを防止することができる、等の利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-177406号公報
【特許文献2】実開平3-72808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の容器は、主に、化石資源である石油由来の合成樹脂から製造されているが、焼却時に生じる二酸化炭素による地球温暖化等の環境問題、並びに、石油枯渇等の資源問題に対応すべく、容器を紙製とすることが提案されている。
【0006】
しかし、容器本体及び蓋体を備える容器を紙製とする場合、容器本体及び蓋体に所定の強度を有するネジ山及びネジ溝を紙材料によって直接形成することはできないので、容器本体及び蓋体に相互に係合するネジ山及びネジ溝を形成することはできず、単に、容器本体の開口部を蓋体で単に覆うことになる。この場合、容器本体の開口部から蓋体が容易に外れてしまうので、容器の密封状態を安定的に維持することができない。
【0007】
容器の密封状態を安定的に維持することができないと、容器から内容物が漏洩するリスクが生じる。特に、容器の内容物が粉末化粧料のような粉体物である場合、容器から漏洩した粉体物は周囲を容易に汚染してしまう。
【0008】
そこで、紙製容器本体及び蓋体に合成樹脂製のネジ等の部材を取り付けることが考えられる。しかし、完全合成樹脂製の部材の使用は上記の環境問題及び資源問題の解決に相反することになる。また、紙製容器の廃棄の際に、完全合成樹脂製の部材を紙製容器本体及び蓋体から取り外す分別作業が必要となり廃棄の作業性に劣る。
【0009】
本発明は、環境問題及び資源問題に対応しつつ、紙製容器本体及び紙製蓋体を備える容器において容器の密封状態を安定的に維持可能とすることを目的とする。
【0010】
また、本発明は、紙製容器本体及び紙製蓋体を備える容器であって、廃棄の際に部材の分別の必要のない容器を提供することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
鋭意検討の結果、本発明者らは、
開口部及び収容部を有する紙製容器本体、並びに、
紙製蓋体
を備える容器であって、
前記紙製容器本体が紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる第1の係合部材を備え、
前記紙製蓋体が紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる第2の係合部材を備え、
前記第1の係合部材及び前記第2の係合部材が係合可能であり、
前記第1の係合部材及び第2の係合部材を係合することにより、前記紙製容器本体の前記開口部を前記紙製蓋体によって封止可能であることを特徴とする、容器により上記目的を達成可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
前記紙製容器本体の前記開口部が前記第1の係合部材を備えることが好ましい。
【0013】
前記紙製蓋体の端部が前記第2の係合部材を備えることが好ましい。
【0014】
前記第1の係合部材の表面が第1のネジ部を備えており、
前記第2の係合部材の表面が第2のネジ部を備えており、
前記第1のネジ部及び前記第2のネジ部が係合可能であることが好ましい。
【0015】
前記紙は古紙であることが好ましい。
【0016】
前記紙は紙粉体であることが好ましい。
【0017】
前記紙又は炭酸カルシウム含有樹脂がポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0018】
本発明の容器は前記第1の係合部材及び前記第2の係合部材以外の樹脂部材を含まないことが好ましい。
【0019】
前記紙製容器本体の前記収容部が化粧料を含むことが好ましい。
【0020】
前記化粧料が粉末化粧料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の容器は、環境問題及び資源問題に対応しつつ、容器の密封状態を安定的に維持可能である。すなわち、本発明の容器は内容物の漏洩を回避することができる。したがって、本発明の容器の内容物が粉末化粧料のような粉体物である場合でも、容器から漏洩した粉体物が周囲を汚染することがない。
【0022】
また、本発明の容器は、廃棄の際に部材の分別の必要がない。したがって、本発明の容器は廃棄が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の容器の容器本体及び蓋体の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の容器は、
開口部及び収容部を有する紙製容器本体、並びに、
紙製蓋体
を備えており、
前記紙製容器本体が紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる第1の係合部材を備え、
前記紙製蓋体が紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる第2の係合部材を備え、
前記第1の係合部材及び前記第2の係合部材が係合可能であり、
前記第1の係合部材及び第2の係合部材を係合することにより、前記紙製容器本体の前記開口部を前記紙製蓋体によって封止可能であることを特徴とする。
【0025】
図1は、本発明の容器の容器本体及び蓋体の実施の形態の一例を示す断面図である。
図1(a)は容器本体及び蓋体の非係合状態を示し、
図1(b)は容器本体及び蓋体の係合状態を示す。
【0026】
図1に示す例では、容器本体1及び蓋体2は、略円筒形であり、容器本体1は、内容物を収容する有底の収容部、及び、内容物の外部への取り出しを可能とする開口部を有する。
【0027】
図1に示す例では、容器本体1及び蓋体2は、略円筒形であるが、本発明の容器本体及び蓋体の形状は特に限定されるものではなく、略直方体、略立方体等の任意の形状とすることができる。
【0028】
容器本体1及び蓋体2は紙製である。容器本体1及び蓋体2に使用される紙としては、特には限定されるものではないが、所定の形状を維持するためには厚紙が好ましい。厚紙の厚みは100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、200μm以上が更により好ましい。また、厚紙の厚みの上限は特には限定されるものではないが、3mm未満が好ましく、2mm未満がより好ましく、1mm未満が更により好ましい。また、厚紙の坪量は200g/m2以上が好ましく、300g/m2以上がより好ましく、400g/m2未満以上が更により好ましい。厚紙の坪量の上限は特には限定されるものではないが、1000g/m2以下が好ましく、900g/m2以下がより好ましく、800g/m2以下が更により好ましい。
【0029】
紙の原料は、特に限定されるものではなく、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプが挙げられる。なお、木材パルプにレーヨン繊維等の再生セルロース繊維を混合してもよい。
【0030】
容器本体1及び蓋体2に使用される紙は、サイズ剤として、中性ロジンやアルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸を含んでもよく、定着剤としてカチオン性のポリアクリルアミドやカチオン性デンプン等を含んでもよい。また、硫酸バンドを使用してpH6以上pH9以下の中性領域で抄紙した紙を使用することも可能である。その他、必要に応じて上記のサイズ剤のほか、定着剤の他、製紙用各種填料、歩留向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、結合剤、分散剤、凝集剤、可塑剤、接着剤を適宜含有していてもよい。
【0031】
図1に示す例では、容器本体1に第1の係合片1aが取り付けられており、蓋体2に第2の係合片2aが取り付けられている。
【0032】
第1の係合片1aは単一の部材でもよく、複数の部材でもよいが、単一の部材であることが好ましい。
図1に示す例では、第1の係合片1aは略円筒形の単一の部材である。
【0033】
第2の係合片2aも単一の部材でもよく、複数の部材でもよいが、単一の部材であることが好ましい。
図1に示す例では、第2の係合片2aは略円筒形の単一の部材である。
【0034】
図1に示す例では、
図1(a)に示すように、第1の係合片1aは容器本体1の開口部の周囲に取り付けられており、その表面の一部に螺旋形のネジ山及びネジ溝を備える第1のネジ部が形成されている。第2の係合片2aも蓋体2の端部に取り付けられており、その表面の一部に螺旋形のネジ山及びネジ溝を備える第2のネジ部が形成されている。
【0035】
図1に示す例では、第1の係合片1aの第1のネジ部及び第2の係合片2aの第2のネジ部が係合(螺合)可能とされており、第1のネジ部及び第2のネジ部が係合することにより、容器本体1の開口部が蓋体2によって封止可能とされている。
【0036】
したがって、
図1に示す例では、
図1(b)に示すように、第1の係合片1a及び第2の係合片2aを係合することによって、容器本体1の開口部を蓋体2によって密封することができる。
【0037】
図1(b)において、容器本体1の収容部及び蓋体2によって形成された容器内部の空間には、内容物として、各種の物品を収容することができる。
【0038】
物品としては、例えば、食品、化粧料が挙げられる。本発明の容器は密封状態を安定して維持することができるので、粉末状の食品、化粧料を好適に収容することができる。粉末状の食品としては、例えば、食塩、砂糖、香辛料等の各種の粉末調味料が挙げられ、粉末状の化粧料としては、例えば、ルースパウダー又はプレストパウダーの形態の、ファンデーション、ファンデーション塗布後の仕上げに使用するフェイスパウダー、ボディパウダー、チーク、アイシャドウ、アイブロウ等の粉末化粧料が挙げられる。
【0039】
上記物品はそのまま容器本体1の収容部に収容してもよく、或いは、皿等の別途の容器に充填された状態で容器本体1の収容部に収容されてもよい。
【0040】
図1に示す例では、第1の係合片1a及び第2の係合片2aをネジ機構を用いて係合しているが、第1の係合片1a及び第2の係合片2aの係合手段はネジ機構に限られるものではなく、第1の係合片1a及び第2の係合片2aを安定して係合し、蓋体2による容器本体1の開口部の密封状態を安定的に維持可能であれば、容器本体1の開口部周囲に形成された突起と、蓋体2の端部に形成されたT字溝との組合せ等の任意の機構を使用することができる。
【0041】
図1に示す例における第1の係合片1a及び第2の係合片は紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる。したがって、
図1中の第1の係合片1a及び第2の係合片2aは、それぞれ、本発明の第1の係合部材及び第2の係合部材に対応する。
【0042】
以下、まず、紙含有樹脂について説明する。
【0043】
本発明で使用される紙含有樹脂に含まれる紙の種類は特には限定されるものではなく、新紙及び古紙のいずれも使用することができるが、環境負荷の低減の点では、古紙を使用することが好ましい。古紙には、新聞古紙、雑誌古紙、印刷古紙、包装古紙、段ボール古紙、OA古紙等の各種古紙、バージン紙の製造時に発生した破紙や損紙、雑誌などの裁断屑、研摩粉、シュレッダー屑等が含まれる。
【0044】
本発明で使用される紙含有樹脂に含まれる紙の形態は特には限定されるものではないが、粉体(粒子)の形態の紙を使用することが好ましく、平均粒径25μm以上50μm未満の紙粉体を使用することがより好ましい。紙粉体の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。紙粉体の形状が非球形の場合、紙粉体の平均粒径は球体積相当平均粒子径である。紙粉体はセルロース繊維を含むことができる。
【0045】
平均粒径25μm以上50μm未満の紙粉体を製造する方法は特には限定されるものではないが、例えば、粗粉砕された紙粉を、竪型ローラミル又は薬研式ミルを用いて粉砕し、平均粒径50μm以上150μm未満の微細紙粉を得る第1微粉砕工程と、該第1微粉砕工程で得た微細紙粉に平均粒径25μm以上50μm未満の微細紙粉を混入した微細紙粉を、竪型ローラミル又は薬研式ミルを用いて粉砕し、平均粒径25μm以上50μm未満の微細紙粉を得る第2微粉砕工程を経ることにより製造することが好ましい。
【0046】
本発明で使用される紙含有樹脂は、紙含有樹脂の重量を基準として、紙を50重量%以上含む。紙の含有量の上限は特には限定されるものではないが、紙含有樹脂の重量に対して80重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましく、60重量%以下が更により好ましい。
【0047】
本発明で使用される紙含有樹脂に含まれる樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの混合物等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、ポリアミド樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂を混合して使用してもよい。
【0048】
前記熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、これらの混合物等のポリオレフィン樹脂がより好ましい。ポリプロピレンとしては、例えば、ブロック重合ポリプロピレン、ランダム重合ポリプロピレン、ホモ重合ポリプロピレン、メタロセン触媒重合ポリプロピレン等を使用することができる。ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレン等を使用することができる。
【0049】
本発明で使用される紙含有樹脂は樹脂改質剤を含むことが好ましい。樹脂改質剤としては、例えば、シランカップリング剤、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、エチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、マレイン酸変性ワックス、マレイン酸エステル変性ワックス、低分子量結晶性ポリオレフィン等が挙げられる。シランカップリング剤は、紙に含まれる無機粒子に吸着して、無機粒子と樹脂との相互作用を高めることにより、紙と樹脂との相溶性を高めて両者の混合均一性を高めることができる。他の樹脂改質剤は、紙粉と樹脂との相互作用を高めることにより両者の混合均一性を高めることができる。
【0050】
本発明で使用される紙含有樹脂がポリオレフィン樹脂を含む場合、紙含有樹脂は樹脂改質剤を含むことが特に好ましい。ポリオレフィン樹脂用の樹脂改質剤としては、マレイン酸変性ポリオレフィン、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、マレイン酸変性ワックス及びマレイン酸エステル変性ワックス等が挙げられる。これらの樹脂改質剤はポリオレフィン樹脂に極性基を導入し、紙とポリオレフィン樹脂との相互作用を高め、両者の混合均一性を高めることができる。
【0051】
本発明で使用される紙含有樹脂は、酸化防止剤、滑剤、無機粒子等の各種の添加剤を含んでもよい。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、リン系及びイオウ系の酸化防止剤が挙げられる。滑剤としては、例えば、第1級アミド、第2級アミド、エチレンビスアミド、ステアリン酸金属塩、ヒドロキシステアリン酸金属塩等が挙げられる。無機粒子としては、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏、クレー等が挙げられる。
【0052】
樹脂改質剤、酸化防止剤、滑剤、無機粒子等の添加剤は、紙含有樹脂の重量を基準として、例えば、0.1重量%以上5重量%以下の範囲で使用することができる。
【0053】
紙含有樹脂は押出機を用いて製造することができる。例えば、押出機の後端部に設けた投入口(ホッパー)から、紙粉体及び樹脂、更に、表面改質剤、樹脂改質剤等の各種の添加剤を必要に応じて投入する。押出機の内部は加熱されており、回転するスクリューにより紙粉体と樹脂が混練され、紙粉体が樹脂に略均一に分散した融解混合物となる。この融解混合物は、押出機の前端部に設けたダイ(金型)から押し出され、所定断面形状の紙含有樹脂が製造される。ダイのリップ形状に応じて、紙含有樹脂は、ペレット状、板状、シート状等に成形される。ペレット状の紙含有樹脂は、射出成型、ブロー成型、インフレーション成型、真空成型、溶融圧縮成型、プレス成型等により様々な形状の部材に加工することができる。
【0054】
紙含有樹脂として市販のものを使用することもできる。市販の紙含有樹脂としては、例えば、株式会社環境経営総合研究所製の「マプカ」(登録商標)を使用することができる。
【0055】
以下、次に、炭酸カルシウム含有樹脂について説明する。
【0056】
本発明で使用される炭酸カルシウム含有樹脂に含まれる炭酸カルシウムの種類は特には限定されるものではなく、表面処理を施したもの及び表面処理を施していないもののいずれか、或いは、これらの混合物を使用することができる。表面処理の種類は特に限定されるものではなく、シランカップリング剤処理、ステアリン酸カルシウム等による金属石鹸処理等を挙げることができる。
【0057】
本発明で使用される炭酸カルシウム含有樹脂に含まれる炭酸カルシウムの形態は特には限定されるものではないが、粉体(粒子)の形態の炭酸カルシウムを使用することが好ましく、球体状、紡錘形状、直方体状、立方体状等の任意の形状とすることができ、花弁状等の不定形状であってもよい。
【0058】
炭酸カルシウム粒子の平均粒径は15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更により好ましく、2μm以下が特に好ましい。炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。炭酸カルシウムの形状が非球形の場合、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は球体積相当平均粒子径である。
【0059】
本発明で使用される炭酸カルシウム含有樹脂は、炭酸カルシウム含有樹脂の重量を基準として、炭酸カルシウムを50重量%以上含む。炭酸カルシウムの含有量の上限は特には限定されるものではないが、炭酸カルシウム含有樹脂の重量に対して80重量%以下が好ましく、75重量%以下がより好ましく、70重量%以下が更により好ましい。
【0060】
本発明で使用される炭酸カルシウム含有樹脂に含まれる樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの混合物等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、ポリアミド樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂を混合して使用してもよい。
【0061】
前記熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、これらの混合物等のポリオレフィン樹脂がより好ましい。ポリプロピレンとしては、例えば、ブロック重合ポリプロピレン、ランダム重合ポリプロピレン、ホモ重合ポリプロピレン、メタロセン触媒重合ポリプロピレン等を使用することができる。ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレン等を使用することができる。
【0062】
本発明で使用される炭酸カルシウム有樹脂は、酸化防止剤、滑剤、炭酸カルシウム以外の無機粒子等の各種の添加剤を含んでもよい。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、リン系及びイオウ系の酸化防止剤が挙げられる。滑剤としては、例えば、第1級アミド、第2級アミド、エチレンビスアミド、ステアリン酸金属塩、ヒドロキシステアリン酸金属塩等が挙げられる。炭酸カルシウム以外の無機粒子としては、酸化チタン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏、クレー等が挙げられる。
【0063】
炭酸カルシウム含有樹脂は押出機を用いて製造することができる。例えば、押出機の後端部に設けた投入口(ホッパー)から、炭酸カルシウム粉体及び樹脂、更に、各種の添加剤を必要に応じて投入する。押出機の内部は加熱されており、回転するスクリューにより炭酸カルシウムと樹脂が混練され、炭酸カルシウム粒子が樹脂に略均一に分散した融解混合物となる。この融解混合物は、押出機の前端部に設けたダイ(金型)から押し出され、所定断面形状の炭酸カルシウム含有樹脂が製造される。ダイのリップ形状に応じて、炭酸カルシウム含有樹脂は、ペレット状、板状、シート状等に成形される。ペレット状の炭酸カルシウム含有樹脂は、射出成型、ブロー成型、インフレーション成型、真空成型、溶融圧縮成型、プレス成型等により様々な形状の部材に加工することができる。
【0064】
炭酸カルシウム含有樹脂として市販のものを使用することもできる。市販の炭酸カルシウム含有樹脂としては、例えば、株式会社アースクリエイト製の「Stone-Sheet」(登録商標)を使用することができる。
【0065】
図1に示す例における第1の係合片1a及び第2の係合片は紙又は炭酸カルシウム含有樹脂の射出成型により好適に製造することができる。
【0066】
容器本体1への第1の係合片1aの取り付け、及び、蓋体2への第2の係合片2aの取り付けの手段は特に限定されるものではなく、例えば、接着剤を使用して取り付けることができる。
【0067】
廃棄の容易性の点で、本発明の容器は、第1の係合部材及び第2の係合部材以外の樹脂部材を有さないことが好ましく、特に、本発明の容器を構成する容器本体及び蓋体が第1の係合部材及び第2の係合部材以外の樹脂部材を有さないことが好ましい。なお、本発明の容器が第1の係合部材及び第2の係合部材以外の樹脂部材を有する場合でも、当該樹脂部材を分別することにより、本発明の容器を廃棄することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の容器は、紙製でありながら、食品、化粧料等の各種の物品の収容に好適に使用することができる。本発明の容器は粉体物の容器として好ましく、粉末化粧料の容器としてより好ましい。
【0069】
本発明の容器は、カーボンニュートラルな材質である紙からなる容器本体及び蓋体、並びに、比較的多量の紙又は炭酸カルシウムを含む樹脂製の部材によって構成されるので、焼却しても大気中の二酸化炭素量の増大を全体として抑制することができる。したがって、本発明の容器は、大気中の二酸化炭素増大による地球温暖化、石油枯渇等の資源問題に対応することができる。
【0070】
また、本発明において紙含有樹脂を使用する場合、紙含有樹脂は50重量%以上が紙から構成されているので、資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)により、本発明の容器には所謂「紙マーク」を付与することが可能であり、廃棄時には紙含有樹脂を分別する必要はなく、紙製の容器本体及び蓋体と共にそのまま焼却廃棄することができる。
【0071】
そして、本発明において炭酸カルシウム含有樹脂を使用する場合、炭酸カルシウム含有樹脂は50重量%以上が炭酸カルシウムから構成されているので、容器包装リサイクル法の適用除外となり、廃棄の際に炭酸カルシウム含有樹脂を分別する必要はなく、紙製の容器本体及び蓋体と共にそのまま焼却廃棄することができる。
【0072】
したがって、本発明の容器は環境に優しいものであり、また、廃棄時の作業性に優れている。
【符号の説明】
【0073】
1 容器本体
2 蓋体
【手続補正書】
【提出日】2022-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部及び粉末化粧料を含む収容部を有する紙製容器本体、並びに、
紙製蓋体
を備える容器であって、
前記紙製容器本体が紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる第1の係合部材を備え、
前記紙製蓋体が紙又は炭酸カルシウムを50重量%以上含む紙又は炭酸カルシウム含有樹脂からなる第2の係合部材を備え、
前記第1の係合部材及び前記第2の係合部材が係合可能であり、
前記第1の係合部材及び第2の係合部材を係合することにより、前記紙製容器本体の前記開口部を前記紙製蓋体によって封止可能であることを特徴とする、粉末化粧料用容器。
【請求項2】
前記紙製容器本体の前記開口部が前記第1の係合部材を備える、請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記紙製蓋体の端部が前記第2の係合部材を備える、請求項1又は2記載の容器。
【請求項4】
前記第1の係合部材の表面が第1のネジ部を備えており、
前記第2の係合部材の表面が第2のネジ部を備えており、
前記第1のネジ部及び前記第2のネジ部が係合可能である、請求項1乃至3のいずれかに記載の容器。
【請求項5】
前記紙が古紙である、請求項1乃至4のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
前記紙が紙粉体である、請求項1乃至5のいずれかに記載の容器。
【請求項7】
前記紙又は炭酸カルシウム含有樹脂がポリオレフィン樹脂を含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の容器。
【請求項8】
前記第1の係合部材及び前記第2の係合部材以外の樹脂部材を含まない、請求項1乃至7のいずれかに記載の容器。