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特開2022-135643低温輸送容器及び低温輸送容器への物品の梱包方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135643
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】低温輸送容器及び低温輸送容器への物品の梱包方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/18 20060101AFI20220908BHJP
   F25D 3/14 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B65D81/18 C
F25D3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035584
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】311004773
【氏名又は名称】住友ファーマアニマルヘルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】上田 忠佳
(72)【発明者】
【氏名】木原 孝洋
【テーマコード(参考)】
3E067
3L044
【Fターム(参考)】
3E067AA24
3E067AB83
3E067AC01
3E067BA05A
3E067BB14A
3E067BB17A
3E067BC06A
3E067CA18
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA02
3L044AA03
3L044AA04
3L044BA03
3L044CA11
3L044DC02
3L044KA01
3L044KA04
(57)【要約】
【課題】大型化と重量増大を抑制しつつ、物品の保冷性能を向上できる低温輸送容器を提供する。
【解決手段】低温輸送容器10は、上端に開口21bが形成された収容部21aを有する断熱容器本体21と、断熱容器本体21の開口21bを塞ぐ断熱蓋28と、収容部21aを画定する壁面それぞれに隣接するように収容部21a内に配置され、内側に物品1を収容する収容空間32を画定する複数の板状ドライアイス31とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び前記第1方向と交差する第2方向に延びる四角形状の底内面、前記底内面の前記第1方向の両端にそれぞれ連なって上向きに延びる一対の第1内側面、及び前記底内面の前記第2方向の両端にそれぞれ連なって上向きに延びる一対の第2内側面によって画定されており、上端に開口が形成された収容部を有する断熱容器本体と、
前記断熱容器本体の上部に取り付けられ、前記開口を塞ぐ断熱蓋と、
前記底内面、前記一対の第1内側面、前記一対の第2内側面、及び前記断熱蓋の内面それぞれに隣接するように前記収容部内に配置され、内側に物品を収容する収容空間を画定する複数の板状ドライアイスと、
を備える、低温輸送容器。
【請求項2】
前記収容空間のうち前記物品が収容される領域以外の部分に充填された多数のフレーク状ドライアイスを備える、請求項1に記載の低温輸送容器。
【請求項3】
前記複数の板状ドライアイスは、
前記底内面のうち前記第2方向の中央に配置された底部ドライアイスと、
前記一対の第1内側面にそれぞれ隣接するとともに、前記底部ドライアイス上の前記第1方向の両側に配置された一対の第1側部ドライアイスと、
前記一対の第2内側面にそれぞれ隣接するとともに、前記底部ドライアイスの前記第2方向の両側に隣接して配置された一対の第2側部下側ドライアイスと、
前記一対の第2内側面にそれぞれ隣接するとともに、前記一対の第2側部下側ドライアイス上に配置された一対の第2側部上側ドライアイスと、
前記断熱蓋の前記内面に隣接するとともに、前記一対の第1側部ドライアイス上に跨がって配置されて、前記一対の第2側部上側ドライアイス間に位置する頂部ドライアイスと
を含む、請求項1又は2に記載の低温輸送容器。
【請求項4】
前記複数の板状ドライアイスは全て同一寸法であり、
前記収容部の寸法と前記板状ドライアイスの寸法とは、以下を満たす、
請求項3に記載の低温輸送容器。
D=(w+2t)×k
W=d×k
H=(2t+d)×k
1<k≦1.1
D:収容部の第2方向寸法
W:収容部の第1方向寸法
H:収容部の高さ方向寸法
d:板状ドライアイスの長さ
w:板状ドライアイスの幅
t:板状ドライアイスの厚み
k:係数
【請求項5】
前記収容部を画定する前記断熱容器本体の壁の厚み、及び前記断熱蓋の壁の厚みは、以下を満たす、
請求項1から4のいずれか1項に記載の低温輸送容器。
Wt=A×Hr×ΔT×λ/Dw/150
Wt:断熱容器の壁の厚み
A:収容部の壁面の総面積(m
Hr:輸送時間(hour)
ΔT:外気温と目標保冷温度との温度差
λ:断熱容器の熱伝導率
Dw:板状ドライアイスの総重量(Kg)
【請求項6】
前記断熱容器本体及び前記断熱蓋は、段ボール紙製の外箱に収容されており、
前記外箱の長さ方向寸法、前記外箱の幅方向寸法、及び前記外箱の高さ方向寸法の3辺の合計は、1000mm以下である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の低温輸送容器。
【請求項7】
断熱容器本体のうち上端が開口された収容部を画定する壁面それぞれに隣接するように、複数の板状ドライアイスを配置し、前記収容部内に収容空間を形成する収容空間形成工程と、
前記収容空間に物品を収容する物品収容工程と、
前記複数の板状ドライアイスとは別の板状ドライアイスによって、前記収容空間の上部を塞ぐ閉塞工程と、
前記断熱容器本体の上部に断熱蓋を取り付け、前記収容部の前記開口を塞ぐ封緘工程と
を備える、低温輸送容器への物品の梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温輸送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物品を-20℃以下に保冷して輸送するための低温輸送容器が開示されている。この低温輸送容器は発泡スチロール製の断熱容器本体と断熱蓋を備え、内部には物品と一緒にドライアイスが収容されている。物品は、断熱容器本体の収容部の底面上に配置され、2枚の板状ドライアイスで側方から挟み込まれている。また、2枚の板状ドライアイスと物品の間、及び2枚の板状ドライアイスと容器の間には、多数のフレーク状ドライアイスが充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-116165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動物用の細胞製剤等の再生医療製品が収容された物品を輸送する場合、-20℃よりも更に低温(例えば-70℃以下)に保冷する必要があり、更に輸送に係る日数を考慮して低温に保冷した状態を少なくとも3日間(72時間)維持する必要がある。このような輸送条件を特許文献1の低温輸送容器で満足するには、多量のドライアイスが必要になるため、低温輸送容器の過度の大型化と重量の増大を招来する。また、特許文献1の低温輸送容器では、収容部に物品を載置した後、物品の周囲にドライアイスを配置するので、物品は外気に晒される時間(非冷却時間)が長く、収容作業中に物品の温度が上昇する虞がある。
【0005】
本発明は、大型化と重量増大を抑制しつつ、物品の保冷性能を向上できる低温輸送容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1方向及び前記第1方向と交差する第2方向に延びる四角形状の底内面、前記底内面の前記第1方向の両端にそれぞれ連なって上向きに延びる一対の第1内側面、及び前記底内面の前記第2方向の両端にそれぞれ連なって上向きに延びる一対の第2内側面によって画定されており、上端に開口が形成された収容部を有する断熱容器本体と、前記断熱容器本体の上部に取り付けられ、前記開口を塞ぐ断熱蓋と、前記底内面、前記一対の第1内側面、前記一対の第2内側面、及び前記断熱蓋の内面それぞれに隣接するように前記収容部内に配置され、内側に物品を収容する収容空間を画定する複数の板状ドライアイスと、を備える、低温輸送容器を提供する。
【0007】
本態様では、断熱容器本体の底内面、一対の第1内側面、一対の第2内側面、及び断熱蓋の内面それぞれに隣接するように、収容部内に複数の板状ドライアイスが配置されている。つまり、物品が板状ドライアイスによって取り囲まれている。よって、外気温は、断熱性を有する容器の壁と板状ドライアイスによって遮断されるため、物品への外気温の伝達が最小限に抑えられる。また、板状ドライアイスはフレーク状ドライアイスと比較して比表面積が小さいため、昇華しにくく、長時間にわたって冷却性能を維持し易い。その結果、断熱蓋を含む断熱容器本体の大型化と重量増大を抑制しつつ、物品の保冷性能を向上できるため、輸送に係る日数(例えば3日間)にわたって、物品を-20℃よりも低温(例えば-70℃以下)に保冷することが可能である。そのため、再生医療製品が収容された物品がであっても輸送条件を満足できる。
【0008】
本発明の他の態様は、低温輸送容器への物品の梱包方法を提供する。この梱包方法は、断熱容器本体のうち上端が開口された収容部を画定する壁面それぞれに隣接するように、複数の板状ドライアイスを配置し、前記収容部内に収容空間を形成する収容空間形成工程と、前記収容空間に物品を収容する物品収容工程と、前記複数の板状ドライアイスとは別の板状ドライアイスによって、前記収容空間の上部を塞ぐ閉塞工程と、前記断熱容器本体の上部に断熱蓋を取り付け、前記収容部の前記開口を塞ぐ封緘工程とを備える。
【0009】
本態様では、複数の板状ドライアイスによって画定される収容空間の組立後に物品を収容するため、物品が常温に晒される時間(非冷却時間)は殆どない。よって、低温に維持された物品の収容作業中における温度上昇を抑制できる。特に、上述した特許文献1に開示されているように、ドライアイスが収容されていない収容部に物品を配置した後、その周囲にドライアイスを配置する場合と比較して、収容作業中における物品の温度上昇を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の低温輸送容器では、大型化と重量増大を抑制しつつ、物品の保冷性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る低温輸送容器の分解斜視図。
図2図1の断熱容器の分解斜視図。
図3図1のIII-III線断面図。
図4図1のIV-IV線断面図。
図5図1の断熱容器本体から断熱蓋を外した状態を示す分解斜視図。
図6図1の断熱容器の正面図。
図7図1の断熱容器の平面図。
図8図1の断熱容器の底面図。
図9図1の断熱容器の左側面図。
図10図2の板状ドライアイスのうち1個を拡大した斜視図。
図11A】物品の梱包方法の収容空間形成工程を示す断面図。
図11B】物品の梱包方法の物品収容工程を示す断面図。
図11C】物品の梱包方法のドライアイス充填工程を示す断面図。
図11D】物品の梱包方法の閉塞工程を示す断面図。
図11E】物品の梱包方法の封緘工程を示す断面図。
図11F】物品の梱包方法の第6工程を示す断面図。
図11G】物品の梱包方法の第7工程を示す断面図。
図12】本発明の低温輸送容器を用いて物品を輸送した実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る低温輸送容器10を示す。この低温輸送容器10は、断熱性を有する材料からなる断熱容器20と、断熱容器20を収容する外箱40とを備え、再生医療製品等が収容された物品1(図3参照)の輸送に用いられる。
【0014】
図2から図4を参照すると、断熱容器20は、有底筒状の断熱容器本体21と、断熱容器本体21の開口(上端開口)21bを塞ぐ断熱蓋28とを備える。また、断熱容器20は、複数の板状ドライアイス31と、多数のフレーク状ドライアイス33とを備え、これらが物品1と一緒に収容されている。
【0015】
本実施形態では、以下の3条件を満足するように、断熱容器20の材質、断熱容器本体21の内寸と複数の板状ドライアイス31からなる板状ドライアイス群30の外寸との関係、及び板状ドライアイス31の総重量(収容量)を最適化している。
【0016】
第1条件は、物品1に再生医療製品が収容されている場合の輸送条件である、外気温が35℃の状態で72時間以上-70℃以下に物品1を保冷することである。第2条件は、1人で持ち運ぶことが可能で、専用の宅配ではなく、一般的な宅配によって輸送可能な重さとサイズにすることである。第3条件は、外箱40に浸潤が生じない程度に、断熱容器20の外表面での結露を抑制することである。
【0017】
以下、上記3条件を満足する低温輸送容器10の構成を具体的に説明する。
【0018】
以下の説明では、断熱容器本体21の幅方向をX方向、断熱容器本体21の長さ方向をY方向、断熱容器本体21の高さ方向をZ方向と言うことがある。X方向が本発明の第1方向であり、Y方向が本発明の第2方向である。Z方向は第3方向である。
【0019】
図1及び図2を参照すると、断熱容器20は、X方向の寸法がY方向の寸法よりも短い直方体状である。但し、断熱容器20の外形は、必要に応じて変更が可能である。
【0020】
断熱容器20が備える断熱容器本体21と断熱蓋28は、いずれも熱伝導率が低い断熱材によって構成されている。断熱容器本体21と断熱蓋28は、断熱容器20に適した所望の剛性を有しており、気密性を高め易く、かつ軽量で、熱伝導率が40mW/mK以下のプラスチック発泡体が採用されている。例えば、断熱材としては、発泡スチロール(Encapsulated PostScript)にグラファイト粒子を添加したものを用いることができる。グラファイト粒子を添加した断熱材の熱伝導率は、グラファイト粒子を添加していない断熱材の熱伝導率(概ね33mW/mK)よりも低く、グラファイト粒子を添加した断熱材の断熱性は、グラファイト粒子を添加していない断熱材の断熱性よりも優れている。このような断熱材としては、例えばsunpor社製のLambdapor(登録商標)を用いることができ、その熱伝導率は概ね30mW/mKである。
【0021】
図2から図4を参照すると、断熱容器本体21は、概ね四角形状の底壁22と、底壁22の外周に立設された筒状の外周壁23とを備える。外周壁23は、一対の第1側壁24と、一対の第2側壁25とを備える。一対の第1側壁24は、X方向に対向し、底壁22に連なっている。一対の第2側壁25は、Y方向に対向し、底壁22に連なるとともに第1側壁24に連なっている。
【0022】
断熱容器本体21は、上端を開口21bとした直方体状の収容部21aを備える。収容部21aは、底壁22の内表面である底内面22a、第1側壁24の内表面である一対の第1内側面24a、及び第2側壁25の内表面である一対の第2内側面25aによって画定されている。
【0023】
底内面22a、第1内側面24a及び第2内側面25aは、いずれも四角形状である。底内面22aは、XY平面に沿って平坦に延びている。一対の第1内側面24aはそれぞれ、概ねYZ平面に沿って平坦に延び、所定曲率の曲面部26a(図3参照)を介して底内面22aのX方向の端に連なって上向きに延びている。一対の第2内側面25aはそれぞれ、概ねXZ平面に沿って平坦に延び、所定曲率の曲面部26b(図4参照)を介して底内面22aのY方向の端に連なって上向きに延びている。また、一対の第2内側面25aはそれぞれ、所定曲率の曲面部26c(図2参照)を介して第1内側面24aのY方向の端に連なっている。曲面部26a~26cの曲率半径は、全て同じであり、後述する板状ドライアイス群30と収容部21aとの隙間Sの半分(S/2)よりも小さい。
【0024】
第1内側面24aと第2内側面25aはいずれも、Z方向の下端から上端に向けて外向きに傾斜している。これにより、XY平面に沿って切断した収容部21aの断面積は、底内面22aから開口21bに向けて次第に大きくなっている。Z方向に延びる基準線(図示せず)に対する第1内側面24a及び第2内側面25aそれぞれの傾斜角度は、断熱容器本体21を金型で成型するときの抜け勾配に等しく、可能な限り小さい値に設定されている。
【0025】
底壁22の外表面である底外面22bは、底内面22aに対して間隔をあけて平行に延びる平坦面である。第1側壁24の外表面である第1外側面24bは、第1内側面24aに対して間隔をあけて平行に延び、所定曲率の曲面部27a(図3参照)を介して底外面22bのX方向の端に連なっている。第2側壁25の外表面である第2外側面25bは、第2内側面25aに対して間隔をあけて平行に延び、所定曲率の曲面部27b(図4参照)を介して底外面22bのY方向の端に連なるとともに、所定曲率の曲面部27c(図2参照)を介して第1外側面24bのY方向の端に連なっている。底外面22b、第1外側面24b及び第2外側面25bは、いずれも四角形状である。但し、第1外側面24bと第2外側面25bについては、外向きに膨出した円弧面であってもよいし、多数の平面が連なる多角形状であってもよい。
【0026】
図3から図5を参照すると、外周壁23の上端には、四角筒状の嵌合凸部21cが設けられている。嵌合凸部21cは、第1側壁24の上端及び第2側壁25の上端からZ方向上向きに突出している。嵌合凸部21cの横幅は、全周にかけて一様である。本実施形態では、嵌合凸部21cの内周面は、第1内側面24a、第2内側面25a及び曲面部26cに対して面一に位置する。よって、本実施形態では、この嵌合凸部21cの上端内周縁が、実質的に断熱容器本体21の開口21bを構成する。
【0027】
引き続いて図3から図5を参照すると、断熱蓋28は、断熱容器本体21の開口21bを塞ぐ概ね四角形状の板体である。断熱蓋28は、XY平面に沿って平坦に延びる内面28aと、この内面28aに対して間隔をあけて平行に延びる外面28bとを備える。また、断熱蓋28は、第1外側面24bに対して面一に延びる第1外側面28cと、第2外側面25bに対して面一に延びる第2外側面28dと、曲面部27cに対して面一に延びる曲面部28eとを備える。
【0028】
断熱蓋28の内面28aには、断熱容器本体21の嵌合凸部21cに嵌合する嵌合凹部28fが設けられている。嵌合凹部28fは、内面28aから外面28bに向けて窪み、四角筒状に連なる溝である。嵌合凹部28fの溝幅は、嵌合凸部21cを圧入できる範囲で、可能な限り小さい寸法で形成されている。これにより、収容部21aの気密性と液密性が確保されている。
【0029】
嵌合凸部21cに嵌合凹部28fを嵌合させることで、図6から図9に示すように、断熱容器本体21の上端が断熱蓋28によって塞がれる。なお、図5は断熱容器20の分解斜視図であり、断熱蓋28については裏返しにした状態を表している。図6は断熱容器20の正面図であり、断熱容器20の背面図は図6の正面図と同一に表れる。図7は断熱容器20の平面図であり、図8は断熱容器20の底面図である。図9は断熱容器20の左側面図であり、断熱容器20の右側面図は図9の左側面図と同一に表れる。
【0030】
図3及び図4を参照すると、収容部21aの開口21bは、断熱蓋28の内面28aのうち嵌合凹部28fの内側に位置する部分によって閉塞される。図3及び図4に示す物品1の収容状態では、断熱容器本体21と断熱蓋28に跨がって粘着テープ(図示せず)を周方向に貼着し、断熱容器本体21と断熱蓋28を固着することが好ましい。
【0031】
以上のように、熱伝導率が40mW/mK以下の断熱材によって断熱容器20を形成することで、収容部21aの内部と外部との断熱性を確保している。また、嵌合凸部21cと嵌合凹部28fの嵌合によって断熱容器本体21に対して断熱蓋28を取り付けるとともに、断熱容器本体21と断熱蓋28の間をテープで塞ぐことで、密閉性及び保冷性能を確保している。これらによって、前述した第3条件である断熱容器20の外表面での結露抑制を図っている。
【0032】
引き続いて図3及び図4を参照すると、板状ドライアイス31及びフレーク状ドライアイス33は、温度が概ね-79℃の冷却材である。複数の板状ドライアイス31はそれぞれ、収容部21aの壁面それぞれに隣接して配置され、内側に物品1を収容する収容空間32を画定する。フレーク状ドライアイス33は、物品の周囲を埋めるように、収容空間32のうち物品1が収容される領域以外の部分に充填される。
【0033】
図2から図4を参照すると、複数の板状ドライアイス31は、全て同一寸法の直方体状である。ここで、同一寸法とは、幾何学的に厳密な意味での同一寸法に限られず、製造時に生じ得る許容誤差(例えば5mm)が含まれる。図10を参照すると、個々の板状ドライアイス31は、それぞれ厚み方向に直交する方向に対向する一対の長側面31aと一対の短側面31b、及び厚み方向に対向する一対の端面31cを備える。板状ドライアイス31は、一対の短側面31bが対向する方向における長さが、一対の頂側面31aが対向する方向における長さよりも長い。ここで、本明細書では、板状ドライアイス31の長さd、幅w、および厚みtは、一対の短側面31b間の寸法、一対の長側面間31aの寸法、および一対の端面31c間の寸法としてそれぞれ定義されている。
【0034】
図3及び図4を参照すると、フレーク状ドライアイス33は、最大寸法が9mmから13mmの範囲で形成されており、板状ドライアイス31の長さd、幅w及び厚みtのいずれよりも小さい。なお、板状ドライアイス31の寸法については後で詳述する。
【0035】
次に、収容部21aに対する板状ドライアイス31の配置について説明する。
【0036】
図2から図4を参照すると、複数の板状ドライアイス31は、収容部21aを画定する底内面22a、一対の第1内側面24a、一対の第2内側面25a及び内面28aそれぞれに隣接するように配置されている。より具体的には、複数の板状ドライアイス31は、物品1を収容する収容空間32を画定するように、合計で8個配置されている。
【0037】
複数の板状ドライアイス31のうちの1個である底部ドライアイス底部ドライアイス31Aは、底内面22aのY方向の中央に配置されている。底部ドライアイス31Aのうち、一対の長側面31aはそれぞれ第2内側面25aに対して間隔をあけて配置され、一対の短側面31bはそれぞれ第1内側面24aに対向して配置され、一対の端面31cのうち一方が底内面22a上に載置されている。短側面31bと第1内側面24aの間には、それぞれ隙間S1(図3参照)が確保されている。
【0038】
複数の板状ドライアイス31のうちの2個である第1側部ドライアイス31Bはそれぞれ、第1内側面24aに隣接するように、底部ドライアイス31A上のX方向の両側部に配置されている。第1側部ドライアイス31Bのうち、一対の長側面31aはそれぞれ第2内側面25aに対して間隔をあけて配置され、一対の短側面31bのうちの一方が底部ドライアイス31A上に載置され、一対の端面31cのうちの一方が第1内側面24aに対向して配置されている。この一方の端面31cは、底部ドライアイス31AからX方向外側へ突出し、一部が第1内側面24aに接触している。
【0039】
複数の板状ドライアイス31のうちの2個である第2側部下側ドライアイス31Cはそれぞれ、第2内側面25aに隣接するように、底内面22aのY方向の両側に配置されている。第2側部下側ドライアイス31Cのうち、一対の長側面31aのうちの一方が底内面22a上に載置され、一対の短側面31bはそれぞれ第1内側面24aに対向して配置され、一対の端面31cのうちの一方が第2内側面25aに対向して配置されている。一対の短側面31bと一対の第1内側面24aの間には、それぞれ隙間S1(図3参照)が確保され、端面31cと第2内側面25aの間には、それぞれ隙間S2(図4参照)が確保されている。
【0040】
複数の板状ドライアイス31のうちの2個である第2側部上側ドライアイス31Dはそれぞれ、第2内側面25aに隣接するように、第2側部下側ドライアイス31C上に配置されている。第2側部上側ドライアイス31Dの一対の長側面31aのうち、一方は第2側部下側ドライアイス31C上に載置され、他方は内面28aに対向して配置されている。また、一対の短側面31bがそれぞれ一対の第1内側面24aに対向して配置され、一対の端面31cのうちの一方が第2内側面25aに対向して配置されている。長側面31aと内面28aの間には、それぞれ隙間S3(図4参照)が確保されている。
【0041】
複数の板状ドライアイス31のうちの1個である頂部ドライアイス31Eは、内面28aに隣接するように、一対の第1側部ドライアイス31B上に跨がって配置されている。頂部ドライアイス31Eのうち、一対の長側面31aはそれぞれ第2側部上側ドライアイス31Dの内側面に隣接して配置され、一対の短側面31bはそれぞれ第1内側面24aに対向して配置され、一対の端面31cのうちの一方が内面28aに対向して配置されている。端面31cと内面28aの間には、隙間S3(図3参照)が確保されている。
【0042】
図3及び図4を参照すると、収容部21aの寸法D,W,Hと板状ドライアイス31の寸法d,w,tとは、以下の数式1を満たす。
【0043】
[数1]
D=(w+2t)×k
W=d×k
H=(2t+d)×k 又は 2w×k
1<k≦1.1
D:収容部の第2方向寸法
W:収容部の第1方向寸法
H:収容部の高さ方向寸法
d:板状ドライアイスの長さ
w:板状ドライアイスの幅
t:板状ドライアイスの厚み
k:係数
【0044】
図4に示すように、Dは、収容部21aのY方向寸法、つまり一対の第2内側面28a間の寸法である。図3に示すように、Wは、収容部21aのX方向寸法、つまり一対の第1内側面24a間の寸法である。図3及び図4に示すように、Hは、収容部21aのZ方向寸法、つまり底内面22aと内面28aの間の寸法である。本実施形態の第1内側面24aと第2内側面25aは上広がりに傾斜しているため、収容部21aのY方向寸法Dは、一対の第2内側面25a間の最小部分の寸法として定義され、収容部21aのX方向寸法Wは、一対の第1内側面24a間の最小部分の寸法として定義される。
【0045】
前述のように、dは、板状ドライアイス31の長さ、つまり一対の短側面31b間の寸法であり、wは、板状ドライアイス31の幅、つまり一対の長側面31a間の寸法であり、tは、板状ドライアイス31の厚み、つまり一対の端面31c間の寸法である。
【0046】
上記数式1において、kは、収容部21aの壁面寸法と、板状ドライアイス群30のうち壁面と対向する部分の寸法との関係を規定する係数である。係数kは、1よりも大きく、1.1以下に設定されている。つまり、収容部21aの壁面寸法は、対向する板状ドライアイス群30の寸法よりも大きい。これにより、収容部21aに対する複数の板状ドライアイス31の収容作業性を確保している。
【0047】
収容部21aの寸法D,W,Hと板状ドライアイス31の寸法d,w,tとは、以下の数式2を満たすようにしてもよい。
【0048】
[数2]
D=w+2t+S
W=d+S
H=2t+d+S 又は H=2w+S
5≦S≦15
D:収容部のY方向の寸法
W:収容部のX方向の寸法
H:収容部のZ方向の寸法
d:板状ドライアイスの長さ
w:板状ドライアイスの幅
t:板状ドライアイスの厚み
S:収容部の壁面と板状ドライアイス群の隙間
【0049】
上記数式2において、Sは、収容部21aの壁面と板状ドライアイス31との間の隙間である。図3及び図4を参照すると、板状ドライアイス群30と第1内側面24aの間には、それぞれ前述した隙間S1が形成され、板状ドライアイス群30と第2内側面25aの間には、それぞれ前述した隙間S2が形成され、板状ドライアイス群30と内面28aの間には、前述した隙間S3が形成されている。本実施形態では、2つの隙間S1を合計したX方向の隙間寸法、2つの隙間S2を合計したY方向の隙間寸法、及び1つの隙間S3からなるZ方向の隙間寸法は、いずれも同じである。これらの隙間(2×S1,2×S2,S3)が上記数式2における隙間Sである。但し、これらの隙間(2×S1,2×S2,S3)は、異なっていてもよい。
【0050】
隙間Sは、5mm以上15mm以下の範囲に設定されている。言い換えれば、隙間Sが5mm以上15mm以下になるように、上記数式1の係数kが設定されている。隙間Sを過度に小さくすると、収容部21a内に板状ドライアイス31を配置する際の作業性が悪くなる。隙間Sを過度に大きくすると、収容部21a内で板状ドライアイス31が移動可能になるため、収容状態での安定性が損なわれる。これらの不都合を防ぐために、隙間Sは、上記定められた範囲に設定することが好ましく、本実施形態では10mmに設定されている。
【0051】
ここで、保冷に必要な板状ドライアイス31の総重量は、収容部の容積(総面積)、輸送時間、輸送時期(温度差)によって異なる。一方、一般的な宅配業者によって輸送可能とするという前述の第2条件を満足するには、低温輸送容器10の総重量は12Kg以下とすることが好ましく、この場合、板状ドライアイス31の総重量は10Kg以下にする必要がある。そこで、本実施形態では、10Kgのブロック状ドアライスを8等分することで、複数の板状ドライアイス31を形成している。個々の板状ドライアイス31のサイズは、長さdが130mm、幅wが120mm、厚みtが55mmに設定されている。
【0052】
個々の板状ドライアイス31を上記サイズとした場合、板状ドライアイス群30のY方向の長さ(w+2t)は230mmになり、板状ドライアイス群30のX方向の幅(d)は130mmになり、板状ドライアイス群30のZ方向の高さ(2t+d)は240mmになる。この場合、上記隙間Sを加えた収容部21aのサイズは、Y方向寸法Dが240mm、X方向寸法Wが140mm、Z方向寸法Hが250mmに設定される。物品1は、長さが26mm、幅が30mm、高さが62mmの直方体状である。
【0053】
板状ドライアイス31による保冷効果は、断熱材の材質(熱伝導率)及び厚みに影響を受ける。図3及び図4を参照すると、底内面22aから底外面22bまでの底壁22の厚みWt1、第1内側面24aから第1外側面24bまでの第1側壁24の厚みWt2、第2内側面25aから第2外側面25bまでの第2側壁25の厚みWt3、及び内面28aから外面28bまでの断熱蓋28の厚みWt4は、全て同じ寸法である。これらの厚みWtは、前述した第1条件である物品1の輸送条件、第2条件である宅配業者を利用、及び第3条件である結露防止に大きく影響する。そして、これらの3条件を実現するために、断熱容器20の壁の厚みWtは、前述した板状ドライアイス31の総重量、収容部の総面積、輸送時間、及び温度差を踏まえ、以下の数式3を満足するように設定されている。
【0054】
[数3]
Wt=A×Hr×ΔT×λ/Dw/150
Wt:容器の壁の厚み
A:収容部の壁面の総面積(m
Hr:輸送時間(hour)
ΔT:温度差
λ:容器材料の熱伝導率
Dw:板状ドライアイスの総重量(Kg)
【0055】
上記数式3のうち、Aは収容部21aの壁面22a,24a,25a,28aの総面積であり、この総面積Aは、板状ドライアイス31のサイズと配置によって前述のように決まる定数である。Hrは輸送時間であり、この輸送時間Hrは、仕様によって決められる定数である。ΔTは断熱容器20内外の温度差であり、この温度差ΔTは、許容外気温と保冷温度の仕様によって決められる定数である。Dwは板状ドライアイス31の総重量であり、この総重量Dwは、断熱容器20の保冷性能(第1条件)と、宅配業者による輸送(第2条件)の考慮によって必然的に決まる定数である。
【0056】
上記数式3のうち、λは断熱容器20の成形材料による熱伝導率であり、この熱伝導率λは、断熱容器20の成形材料の変更によって変わる。つまり、上記数式3において変数は熱伝導率λだけである。この熱伝導率λを低くするに従って、断熱容器20の断熱性能は向上し、断熱容器20の壁の厚みWtは薄くなる。逆に、熱伝導率λを高くするに従って、断熱容器本体20の断熱性能は低下し、断熱容器20の壁の厚みWtは厚くなる。
【0057】
本実施形態では、熱伝導率λが概ね30mW/mKの断熱材によって断熱容器20を形成している。これにより、断熱容器20の壁の厚みWtは、40mmに抑えることができる。よって、断熱容器20のサイズは、X方向寸法(W+2Wt)を220mm、Y方向寸法(D+2Wt)を320mm、Z方向寸法(H+2Wt)を330mmとすることができる。その結果、図1に示す外箱40の大きさは、一般的な宅配によって輸送可能な100サイズとなる。100サイズとは、外箱40の長さ方向寸法、外箱40の幅方向寸法、及び外箱40高さ方向寸法の3辺の合計が、1000mm以下の大きさを意味する。
【0058】
図1を参照すると、外箱40は、四角筒状の外周壁41と、外周壁23の上下にそれぞれ連設された蓋壁44とを備え、段ボール紙によって形成された汎用の包装箱である。段ボール紙は、表ライナと裏ライナの間に波状の中しんを配置した周知の構成である。
【0059】
外周壁41は、断熱容器20の第1側壁24の外側にそれぞれ位置する一対の長側板42と、断熱容器20の第2側壁25の外側にそれぞれ位置する一対の短側板43とを備える。一対の長側板42は、X方向に対向し、互いに間隔をあけて位置している。一対の短側板43は、Y方向に対向し、互いに間隔をあけて位置するとともに、Y方向の両端がそれぞれ長側板42に連なっている。
【0060】
蓋壁44は、長側板42にそれぞれ連設された一対の長フラップ45と、短側板43にそれぞれ連設された一対の短フラップ46とを備える。例えば、短側板43に対して短フラップ46をそれぞれ内向きに折り曲げた後、長側板42に対して長フラップ45をそれぞれ内向きに折り曲げる。そして、長フラップ45の突き合った先端部分を粘着テープ等の固着部材によって固着することで、蓋壁44が形成され、外周壁41の開口が封緘される。
【0061】
次に、低温輸送容器10の使用方法の一例について説明する。
【0062】
前述のように寸法設定した断熱容器20、複数の板状ドライアイス31、及び外箱40を用意し、これらによって物品1を梱包する。低温輸送容器10への物品1の梱包は、収容空間形成工程、物品収容工程、ドライアイス充填工程、収容空間の閉塞工程、及び封緘工程を備える。具体的には以下の通りである。
【0063】
まず、上端を開放した断熱容器本体21の収容部21a内に、底部ドライアイス31A、第2側部下側ドライアイス31C、第1側部ドライアイス31B、及び第2側部上側ドライアイス31Dを、この順で配置する(収容空間形成工程)。詳しくは、図11Aに示すように、収容部21aの底内面22aのY方向中央に底部ドライアイス31Aを横向きの姿勢で配置する。続いて、図11Bに示すように、底部ドライアイス31AのY方向両側に隣接するように、一対の第2側部下側ドライアイス31Cを底内面22aのY方向両側に縦向きの姿勢でそれぞれ配置する。続いて、図11Cに示すように、底部ドライアイス31A上のX方向両側に、一対の第1側部ドライアイス31Bを縦向きの姿勢でそれぞれ配置する。続いて、図11Dに示すように、一対の第2側部下側ドライアイス31C上に、第2側部上側ドライアイス31Dを縦向きの姿勢でそれぞれ配置する。
【0064】
次に、図11Eに示すように、板状ドライアイス31A~31Dによって囲まれた上端開口の収容空間32の底部ドライアイス31A上の中央に、物品1を配置する(物品収容工程)。その後、図11Fに示すように、収容空間32において物品1を配置した領域以外の部分にフレーク状ドライアイス33を充填する(ドライアイス充填工程)。続いて、図11Gに示すように、一対の第1側部ドライアイス31B上かつ一対の第2側部上側ドライアイス31D間に、頂部ドライアイス31Eを横向きの姿勢で配置する(閉塞工程)。その後、図3及び図4に示すように、断熱容器本体21の上部に断熱蓋28を取り付け、断熱蓋28によって開口21bを閉塞した後(封緘工程)、断熱容器本体21と断熱蓋28を粘着テープによって固着する。
【0065】
次に、図1に示すように、下側の断熱蓋28を閉塞し、上側の断熱蓋28を開放した外箱40内に、断熱容器20を収容させる。続いて、前述のように一対の短フラップ46を折り曲げた後、一対の長フラップ45を折り曲げ、一対の長フラップ45を固着する。
【0066】
このように構成した低温輸送容器10は、以下の特徴を有する。
【0067】
断熱容器本体21の底内面22a、一対の第1内側面24a、一対の第2内側面25a、及び断熱蓋28の内面28aそれぞれに隣接するように、収容部21a内に複数の板状ドライアイス31が配置されている。つまり、物品1が板状ドライアイス31によって取り囲まれている。よって、外気温は、断熱性を有する断熱容器20の壁と板状ドライアイス31によって遮断されるため、物品1への外気温の伝達が最小限に抑えられる。
【0068】
また、板状ドライアイス31はフレーク状ドライアイス33と比較して比表面積が小さいため、昇華しにくく、長時間にわたって冷却性能を維持し易い。その結果、断熱蓋28を含む断熱容器本体21の大型化と重量増大を抑制しつつ、物品1の保冷性能を向上できるため、輸送に係る日数(例えば3日間)にわたって、物品1を-20℃よりも低温(-70℃以下)に保冷することが可能である。そのため、再生医療製品が収容された物品1であっても、その輸送条件を満足できる。
【0069】
板状ドライアイス31によって画定された収容空間32には、物品1を配置した領域以外の部分に多数のフレーク状ドライアイス33が充填されている。つまり、板状ドライアイス31と物品1の隙間がフレーク状ドライアイス33で埋められている。よって、比表面積が大きいフレーク状ドライアイス33によって、物品1を収容した直後の冷却性能を確保し易いため、物品1の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0070】
複数の板状ドライアイス31は、底内面22aに配置された底部ドライアイス31Aと、底部ドライアイス31A上に配置された一対の第1側部ドライアイス31Bと、底内面22aの両側に配置された一対の第2側部下側ドライアイス31Cと、第2側部下側ドライアイス31C上に配置された一対の第2側部上側ドライアイス31Dと、一対の第1側部ドライアイス31B上に跨がって配置された頂部ドライアイス31Eとを含む。よって、物品1を確実に取り囲むことができるため、物品1への外気温の伝達を最小限に抑えることができる。
【0071】
複数の板状ドライアイス31は全て同一寸法に形成されているため、収容部21a内に板状ドライアイス31を配置する際、所定の大きさの板状ドライアイス31を選択する必要がない。しかも、収容部21aの壁面と板状ドライアイス群30の間には、係数kによって所定の隙間Sが確保されている。そのため、収容部21a内に板状ドライアイス31を配置する際の作業性を向上できる。
【0072】
断熱性を有する断熱容器20の壁の厚みは、容器材料の熱伝導率λに基づいて数式3(Wt=A×Hr×ΔT×λ/Dw/150)によって定められている。よって、断熱容器20内への外気温の伝達を最小限に抑えることができ、物品1に再生医療製品が収容されている場合の輸送条件を満足できる。
【0073】
断熱性を有する断熱容器20を収容する外箱40は、長さ方向寸法、幅方向寸法、及び高さ方向寸法の3辺の合計が1000mm以内の100サイズである。よって、一般的な宅配によって物品1を輸送できるため、利便性を向上できる。
【0074】
低温輸送容器10は、規格化された複数の板状ドライアイス31からなる板状ドライアイス群30のサイズに基づいて、収容部21aのサイズが設定されている。よって、物品1の梱包作業を迅速に行うことができるため、梱包作業中における板状ドライアイス31の昇華を抑制できる。
【0075】
低温輸送容器10への物品1の梱包方法は、複数の板状ドライアイス31によって画定される収容空間32の組立後に物品1を収容するため、物品1が常温に晒される時間(非冷却時間)は殆どない。よって、低温に維持された物品1の収容作業中における温度上昇を抑制できる。特に、上述した特許文献1に開示されているように、ドライアイスが収容されていない収容部に物品を配置した後、その周囲に板状ドライアイスを配置し、フレーク状ドライアイスを充填する場合と比較して、収容作業中における物品1の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0076】
(実験例)
本願の発明者らは、実施形態に係る低温輸送容器10の効果を確認するために、実験を行った。実験に用いた断熱容器20は前述した実施形態と同じ態様であり、sunpor社製のLambdapor(登録商標)によって形成されている。断熱容器20のX方向寸法は220mm、断熱容器20のY方向寸法は320mm、断熱容器20のZ方向寸法は330mm、断熱容器20の壁の厚みは40mmである。外箱40は、X方向寸法が236mm、Y方向寸法が334mm、Z方向寸法が336mmの段ボール箱である。
【0077】
断熱容器20内には、同一寸法とした8個の板状ドライアイス31、物品1、適量のフレーク状ドライアイス33の他に、温度を測定するための温度ロガーを収容空間32に収容させた。板状ドライアイス31の総重量は10Kgである。温度ロガーには、株式会社藤田電機製作所製のKT-155F/EXを使用した。
【0078】
第1日目(2020年6月16日)、第1地点(大阪の医療センター)で梱包と温度計測を開始し、第4日目(2020年6月19日)、同第1地点で開封するまで、6分間毎に収容空間32の温度を測定及び記憶した。梱包には9時から10時までの1時間を要し、開封には13時から14時までの1時間を要した。
【0079】
第1日目、第1地点から第2地点(大阪の空港)まで陸輸した後、更に第3地点(東京の空港)まで空輸し、第3地点で低温輸送容器10を常温保管した。第2日目(2020年6月17日)、第3地点から第2地点まで空輸し、第2地点で低温輸送容器10を常温保管した。第3日目(2020年6月18日)、第2地点から第1地点まで陸輸し、製品保管室で保管し、翌日の第4日目に開封を行った。
【0080】
第1日目、最高気温については第2地点が30.0℃で第3地点が30.5℃であり、最低気温については第2地点が21.9℃で第3地点が21.8℃であった。第2日目、最高気温については第2地点が30.9℃で第3地点が28.8℃であり、最低気温については第2地点が19.6℃で第3地点が19.3℃であった。第3日目、第2地点の最高気温は24.4℃で最低気温は17.8℃であり、第1地点の製品保管室の温度は22.4℃であった。第4日目、第1地点の製品保管室の温度は22.0℃であった。
【0081】
このような条件で実験した結果を図12に示す。図12において、縦軸は収容空間32の温度を示し、横軸は時間を示している。
【0082】
図12を参照すると、収容空間32の温度は、梱包時の室内温度(概ね27℃)から急激に低下し、梱包が完了した状態では、ドライアイス31,33の温度(-79℃)まで低下することが解る。梱包完了(第1日目の10時)から開封開始(第4日目の13時)までの73時間、収容空間32の温度は、緩やかに上昇するが、開封時には-77℃であった。開封後には、収容空間32の温度は室内温度(概ね26℃)まで急激に上昇した。このように、本実施形態の低温輸送容器10によれば、物品1を72時間以上-70℃以下に保冷するという、再生医療製品の輸送条件を満足できることを確認できた。
【0083】
なお、本発明の低温輸送容器10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、板状ドライアイス31A~31Eは、2枚以上の板状ドライアイスを重ね合わせて構成されてもよい。また、複数の板状ドライアイス31の配置は、前記実施形態の構成に限られず、収容部21aを画定する壁面に隣接し、物品1を取り囲むように収容空間32を画定できる構成であれば、必要に応じて変更が可能である。また、複数の板状ドライアイス31は、異なる寸法であってもよい。
【0085】
フレーク状ドライアイス33を用いることなく、複数の板状ドライアイス31のみによって物品1を保冷してもよい。この場合、梱包方法におけるドライアイス充填工程は省略される。
【0086】
断熱容器20を成形材料は、熱伝導率が40mW/mK以下という条件を満たすものであれば、必要に応じて変更が可能である。
【0087】
断熱容器20は、外箱40に収容しなくてもよい。つまり、外箱40を用いなくてもよい。
【0088】
輸送対象物は、再生医療製品が収容された物品1に限られず、-20℃よりも低い温度に保冷する必要がある製品であれば、いずれでも使用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 物品
10 低温輸送容器
20 断熱容器
21 断熱容器本体
21a 収容部
21b 開口
21c 嵌合凸部
22 底壁
22a 底内面
22b 底外面
23 外周壁
24 第1側壁
24a 第1内側面
24b 第1外側面
25 第2側壁
25a 第2内側面
25b 第2外側面
26a~26c 曲面部
27a~27c 曲面部
28 断熱蓋
28a 内面
28b 外面
28c 第1外側面
28d 第2外側面
28e 曲面部
28f 嵌合凹部
30 板状ドライアイス群
31 板状ドライアイス
31A 底部ドライアイス
31B 第1側部ドライアイス
31C 第2側部下側ドライアイス
31D 第2側部上側ドライアイス
31E 頂部ドライアイス
31a 長側面
31b 短側面
31c 端面
32 収容空間
33 フレーク状ドライアイス
40 外箱
41 外周壁
42 長側板
43 短側板
44 蓋壁
45 長フラップ
46 短フラップ
X 幅方向(第1方向)
Y 長さ方向(第2方向)
Z 高さ方向(第3方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12