特開 2022-135711 板材の接合構造、板材の接合方法、及びキャビネット

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022135711

(43)【公開日】2022-09-15

(54)【発明の名称】板材の接合構造、板材の接合方法、及びキャビネット

(51)【国際特許分類】

   F16B 5/10 20060101AFI20220908BHJP

   F16B 12/10 20060101ALI20220908BHJP

   F16B 12/12 20060101ALI20220908BHJP

   F16B 5/00 20060101ALI20220908BHJP

   F16B 12/26 20060101ALI20220908BHJP

   E04B 1/61 20060101ALI20220908BHJP

   A47B 47/04 20060101ALI20220908BHJP

【ＦＩ】

F16B5/10 Z

F16B12/10 Z

F16B12/12 C

F16B5/00 F

F16B12/26

E04B1/61 505Z

A47B47/04 B

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021035677

(22)【出願日】2021-03-05

(71)【出願人】

【識別番号】000104973

【氏名又は名称】クリナップ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100120868

【弁理士】

【氏名又は名称】安彦 元

(72)【発明者】

【氏名】吉江 邦将

【テーマコード（参考）】

2E125

3B054

3J001

3J024

【Ｆターム（参考）】

2E125AA70

2E125AE12

2E125AE13

2E125AE15

2E125AE16

2E125AG06

2E125AG07

2E125AG13

2E125AG23

2E125AG24

2E125AG26

2E125BB08

2E125BB13

2E125BB25

2E125BD01

2E125BD03

2E125BE07

2E125BE08

2E125BF01

2E125CA92

3B054BA05

3B054BA10

3B054BA15

3J001FA07

3J001GA02

3J001GA06

3J001GA10

3J001GB01

3J001HA04

3J001HA08

3J001HA09

3J001JD28

3J001KA07

3J001KA19

3J001KB03

3J024AA45

3J024BA02

3J024BA03

3J024BA05

3J024CA16

(57)【要約】

【課題】接着剤を必要とせず、外観が損なわず、低コストで、且つ作業者に負担がかからない板材の接合構造、板材の接合方法、及びキャビネットを提供する。
【解決手段】第１板材の主平面に第２板材の端面を接合するための板材の接合構造において、その主平面におけるその端面の長さ方向と平行な面内方向に向けて延設されると共に、当該主平面に開口された開口部と、当該開口部の内部に、前記主平面に向けて開口された断面略Ｃ字型であり、外側に弾性変形可能なその両端が互いに内側に向けて折り曲げられ、前記長さ方向に沿って嵌合された被接合部材によって形成された係合凹部と、が設けられた接合孔を有する前記第１板材と、その端面から突出する足部と、当該足部の先端にくびれ部を介して当該くびれ部より厚さ方向に拡幅されて設けられ、前記係合凹部に嵌合可能な係合凸部と、を有する前記第２板材と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

第１板材の主平面に第２板材の端面を接合するための板材の接合構造において、
その主平面におけるその端面の長さ方向と平行な面内方向に向けて延設されると共に、当該主平面に開口された開口部と、当該開口部の内部に、前記主平面に向けて開口された断面略Ｃ字型であり、外側に弾性変形可能なその両端が互いに内側に向けて折り曲げられ、前記長さ方向に沿って嵌合された被接合部材によって形成された係合凹部と、が設けられた接合孔を有する前記第１板材と、
その端面から突出する足部と、当該足部の先端にくびれ部を介して当該くびれ部より厚さ方向に拡幅されて設けられ、前記係合凹部に嵌合可能な係合凸部と、を有する前記第２板材と、を備えること
を特徴とする板材の接合構造。

【請求項2】

前記接合孔は、前記被接合部材の少なくとも片側の側面と離間するように形成されていること
を特徴とする請求項１に記載の板材の接合構造。

【請求項3】

前記接合孔に嵌合されると共に前記足部又は前記係合凸部を前記長さ方向に係止する止め具をさらに備えること
を特徴とする請求項１又は請求項２に記載の板材の接合構造。

【請求項4】

請求項１～３の何れか１項に記載の板材の接合構造により、前記第２板材の前記足部及び前記係合凸部が、前記第１板材の前記開口部から挿入され、前記係合凸部が、前記係合凹部に嵌合される接合構造を含むこと
を特徴とするキャビネット。

【請求項5】

第１板材の主平面に第２板材の端面を接合するための板材の接合方法において、
その主平面におけるその端面の長さ方向と平行な面内方向に向けて延設されると共に、当該主平面に開口された開口部と、当該開口部の内部に、前記主平面に向けて開口された断面略Ｃ字型であり、外側に弾性変形可能なその両端が互いに内側に向けて折り曲げられ、前記長さ方向に沿って嵌合された被接合部材によって形成された係合凹部と、が設けられた接合孔を有する前記第１板材と、
その端面から突出する足部と、当該足部の先端にくびれ部を介して当該くびれ部より厚さ方向に拡幅されて設けられ、前記係合凹部に嵌合可能な係合凸部と、を有する前記第２板材と、を備え、
前記第２板材の前記足部及び前記係合凸部を、前記第１板材の前記開口部から挿入させ、前記係合凸部を、前記係合凹部に嵌合させること
を特徴とする板材の接合方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、板材の接合構造、板材の接合方法、及びキャビネットに関する。

【背景技術】

【0002】

従来の、キャビネットに使われている側板等の板材へ、天板、底板、背板等の板材を取り付ける構造においては、板材の接合部にダボを取り付け、接着剤を塗布することが一般的に行われている。この際、塗布する接着剤の量や、板材の寸法のバラツキ等により、キャビネットを支持する強度にバラツキが生じる。さらに家具やキャビネット等に付属の扉の開閉動作等による振動により、或いはキャビネットへの大きな積載物荷重等により、接合部が弛んでくるおそれがある。

【0003】

この接合部の弛みを防ぐために、板材の間に補強具を取り付ける場合もあるが、この補強具が露出し目立つので外観を損ね、キャビネットの商品価値を低下させるおそれがある。さらに、背板と側板を構成する板材に、補強具などをねじによって接合させなければならず、そのねじ止め作業のために組み立てに時間が掛かり、その分人件費等が多く嵩み、低コストでキャビネットを組み立てることができなかった。

【0004】

また、キャビネットを組み立てる際に、接着剤を用いることで、接着が完了するまでの養生時間が必要となる。このため、接着剤を養生させるためにさらに時間が掛かり、このことも低コストでキャビネットを組み立てることができない一因となっていた。

【0005】

これらの問題点を踏まえ、板材の接合の際に接着剤を必要とせず、接合箇所が目立ちにくく外観を損ないにくいようにすることを目的とした接合構造のキャビネットも提案されている（例えば特許文献１参照）。

【0006】

特許文献１には、第一パネルに主平面上の接合部位に開口する第一挿入孔を設け、これと対応させて第二パネルに接合端面に開口する第二挿入孔を設け、第二パネルにはその主平面に開口し且つ第二挿入孔に連通する係止用分岐孔を設け、第一挿入孔及び第二挿入孔には結合部材が挿入され、結合部材の第一挿入孔への挿入側表面には抜止凸部を、第二挿入孔への挿入側先端部に係合部を設け、この係合部に係合する係止部を持つ係止部材を係止用分岐孔から挿入して結合部材を止着した構成のキャビネットが開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【特許文献1】特開２００２－１０６５２５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

しかしながら、特許文献１に開示された従来のキャビネットでは、結合部材を止着するために、第一接合孔及び第二接合孔だけでなく、係止部材を挿入するための係止用分岐孔を設ける必要がある。このため、特許文献１に開示された従来のキャビネットでは、この係止用分岐孔に挿入された係止部材の上端面が、キャビネットの外側から見える箇所である場合は、目につき、外観を損ねるおそれがあるという問題点があった。また、特許文献１に開示された従来のキャビネットでは、接合構造がやや煩雑なことから、コストアップにつながるうえに、工具を用い、それなりの組立要領が必要とされることも加わり、作業者の負担が多く、組立の作業性が良いとは言えないという問題点もあった（同文献１の図１～図４等を参照）。

【0009】

また、特許文献１では、結合部材２０３を止着するために、係止用分岐孔２０５に係止部材２０４を設ける必要がある。このため、特許文献１の開示技術では、係止部材２０４を設けるための道具や技術が必要とされ、作業者の負担が多くなる問題点があった。

【0010】

そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、接着剤を必要とせず、外観が損なわず、低コストで、且つ作業者に負担がかからない板材の接合構造、板材の接合方法、及びキャビネットを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0011】

前記目的を達成するために、第１発明に係る板材の接合構造は、第１板材の主平面に第２板材の端面を接合するための板材の接合構造において、その主平面におけるその端面の長さ方向と平行な面内方向に向けて延設されると共に、当該主平面に開口された開口部と、当該開口部の内部に、前記主平面に向けて開口された断面略Ｃ字型であり、外側に弾性変形可能なその両端が互いに内側に向けて折り曲げられ、前記長さ方向に沿って嵌合された被接合部材によって形成された係合凹部と、が設けられた接合孔を有する前記第１板材と、その端面から突出する足部と、当該足部の先端にくびれ部を介して当該くびれ部より厚さ方向に拡幅されて設けられ、前記係合凹部に嵌合可能な係合凸部と、を有する前記第２板材と、を備えることを特徴とする。

【0012】

第２発明に係る板材の接合構造は、第１発明において、前記接合孔は、前記被接合部材の少なくとも片側の側面と離間するように形成されていることを特徴とする。

【0013】

第３発明に係る板材の接合構造は、第１発明又は第２発明において、前記接合孔に嵌合されると共に前記足部又は前記係合凸部を前記長さ方向に係止する止め具をさらに備えることを特徴とする。

【0014】

第４発明に係るキャビネットは、第１発明～第３発明の何れかの板材の接合構造により、前記第２板材の前記足部及び前記係合凸部が、前記第１板材の前記開口部から挿入され、前記係合凸部が、前記係合凹部に嵌合される接合構造を含むことを特徴とする。

【0015】

第５発明に係る板材の接合方法は、その主平面におけるその端面の長さ方向と平行な面内方向に向けて延設されると共に、当該主平面に開口された開口部と、当該開口部の内部に、前記主平面に向けて開口された断面略Ｃ字型であり、外側に弾性変形可能なその両端が互いに内側に向けて折り曲げられ、前記長さ方向に沿って嵌合された被接合部材によって形成された係合凹部と、が設けられた接合孔を有する前記第１板材と、その端面から突出する足部と、当該足部の先端にくびれ部を介して当該くびれ部より厚さ方向に拡幅されて設けられ、前記係合凹部に嵌合可能な係合凸部と、を有する前記第２板材と、を備え、前記第２板材の前記足部及び前記係合凸部を、前記第１板材の前記開口部から挿入させ、前記係合凸部を、前記係合凹部に嵌合させることを特徴とする。

【発明の効果】

【0016】

第１発明～第５発明によれば、本発明の板材の接合構造、板材の接合方法、キャビネット、及びキャビネット組み立て方法において、第２板材は、足部の先端にくびれ部を介して当該くびれ部より厚さ方向に拡幅されて設けられ、係合凹部に嵌合可能な係合凸部を有する。これにより、第１板材が有する接合孔に嵌合される被接合部材が第２板材の端面から突出する足部及び係合凸部を挿入された状態でくびれ部を両端で挟持することで、足部及び係合凸部が被接合部材に係止され、第１板材に第２板材を接合することができる。これにより、接着剤を必要とせず、外観が損なわず、低コストで、且つ作業者に負担をかけずに板材を接合させることができる。

【0017】

特に、第２発明によれば、本発明の接合構造において、接合孔は、被接合部材の少なくとも片側の側面と離間するように形成されている。これにより、被接合部材の側面が接合孔と接触せずに、干渉することなく弾性変形が可能となる。このため、被接合部材に係合凸部を挿入するときに、係合凸部と被接合部材の軸がズレないため、被接合部材に係合凸部を挿入しやすくなり、作業者の負担をさらに減らすことができる。

【0018】

特に、第３発明によれば、本発明の接合構造において、接合孔に嵌合されると共に足部又は係合凸部を長さ方向に係止する止め具をさらに備える。これにより、係合凸部の端面が止め具により長さ方向に係止され、固定をすることできるため、第２板材を所定の位置に固定することができる。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】図１は、キャビネットの一例を示すの斜視図である。

【図2】図２（ａ）は、実施形態における接合構造の接合前の一例を示す図である。図２（ｂ）は、実施形態における接合構造の接合後の一例を示す図である。

【図3】図３は、実施形態における接合構造の図２（ｂ）の断面Ａの一例を示す図である。

【図4】図４（ａ）は、実施形態における止め具が設けられた接合構造の接合前の一例を示す図である。図４（ｂ）は、実施形態における止め具が設けられた接合構造の接合後の一例を示す図である。

【図5】図５は、実施形態における第１板材の一例を示す図である。

【図6】図６は、実施形態における第２板材の一例を示す図である。

【図7】図７（ａ）は、実施形態における足部及び係合凸部の一例を示すの斜視図である。図７（ｂ）は、実施形態における足部及び係合凸部の端面の一例を示す図である。

【図8】図８（ａ）は、実施形態における接合孔の一例を示す図である。図８（ｂ）は、実施形態における接合孔の図８（ａ）の断面Ｂを示す図である。

【図9】図９（ａ）は、実施形態における被接合部材の一例を示す斜視図である。図９（ｂ）は、実施形態における被接合部材の側面の一例を示す図である。図９（ｃ）は、実施形態における被接合部材の上面の一例を示す図である。

【図10】図１０（ａ）は、止め具を示すの斜視図である。図１０（ｂ）は、止め具の上面を示す図である。図１０（ｃ）は、止め具の側面を示す図である。図１０（ｄ）は、止め具の前面を示す図である。図１０（ｅ）は、止め具の底面を示す図である。

【図11】図１１（ａ）は、止め具を端部に嵌合する一例を示す図である。図１１（ｂ）は、止め具が係合凸部を係止する一例を示す図である。

【図12】図１２（ａ）は、挿入ステップの一例を示す図である。図１２（ｂ）は、押し込みステップの一例を示す図である。

【図13】図１３（ａ）は、被接合部材に係合凸部を挿入する前の断面の一例を示す図である。図１３（ｂ）は、被接合部材に係合凸部を挿入中の断面の一例を示す図である。図１３（ｃ）は、被接合部材に係合凸部を挿入後の断面の一例を示す図である。

【図14】図１４（ａ）は、背板接合ステップの一例を示す図である。図１４（ｂ）は、底板接合ステップの一例を示す図である。

【図15】図１５（ａ）は、間口材接合ステップの一例を示す図である。図１５（ｂ）は、側板接合ステップの一例を示す図である。

【図16】図１６は、実施形態２におけるキャビネットの一例を示す図である。

【図17】図１７は、特許文献１の開示技術を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0020】

以下、本発明を適用して例示した実施形態について、図面を参照しながら説明する。

【0021】

［実施形態１］
本発明の実施形態１に係るキャビネット１００は、図１に示すように、接合構造１０により接合された複数の板材を含む棚等である。キャビネット１００は、例えばキッチンのシンクの下に取り付けられるシンクキャビネットでもよい。また、キャビネット１００は、実施形態２で後述するように、壁面に取り付けられる吊戸棚等であってもよい。

【0022】

このキャビネット１００は、第１側板１１と、背板１２と、底板１３と、手前側間口材１４と、第２側板１５と、のそれぞれを接合することで構成されている。このキャビネット１００では、例えば背板１２と、底板１３と、が接合構造１０により接合されている。なお、その他の板材は、不図示の接着剤を必要としない他の接合構造により接合されているので、説明は省略する。すなわち、本発明のキャビネットは、接合構造１０により接合された２つの板材を含んでいればよい。接合構造１０について以下で詳細に説明する。

【0023】

（接合構造１０）
本発明の実施形態に係る板材の接合構造１０は、図２に示すように、第１板材１の主平面１ａに第２板材２の端面２ｂを接合するための板材の接合構造である。ここで、上記したキャビネット１００において、例えば背板１２が第１板材１であり、底板１３が第２板材２である。

【0024】

この接合構造１０は、図２に示すように、第１板材１と、第２板材２と、を備えている。接合構造１０は、例えば図２（ａ）に示すように、主平面１ａにおける端面１ｂの長さ方向ｙと平行な面内方向に向けて延設され、主平面１ａに開口された開口部４１と、開口部４１の内部に、主平面１ａに向けて開口された断面略Ｃ字型であり、外側に弾性変形可能なその両端が互いに内側に向けて折り曲げられ、長さ方向ｙに沿って嵌合された被接合部材６によって形成された係合凹部４２と、が設けられた接合孔４を有する第１板材１と、端面２ｂから突出する足部５と、足部５の先端にくびれ部５１を介してくびれ部５１より厚さ方向ｘに拡幅されて設けられ、係合凹部４２に嵌合可能な係合凸部５２と、を有する第２板材２とを、図２（ｂ）に示すように接合した板材の接合の構造である。

【0025】

接合構造１０は、図３に示すように、第２板材２の足部５及び係合凸部５２が、第１板材１の開口部４１から挿入され、係合凸部５２が、係合凹部４２に嵌合される。

【0026】

また接合構造１０は、図４（ａ）に示すように、接合孔４の端部４０に嵌合されると共に足部５及び係合凸部５２を長さ方向ｙに係止する止め具９をさらに備え、第１板材１と第２板材２とを、図４（ｂ）に示すように接合した板材の接合の構造であってもよい。

【0027】

第１板材１は、例えば無垢材、合板、集成材、ＭＤＦ（Medium density fiberboard）、又はパーチクルボード等の木材であってもよい。また、第１板材１は、例えば鋼板やステンレス等の金属であってもよい。また、第１板材１は、例えばアクリル系、ウレタン系、又はＦＲＰ（Fiber Reinforced Plastics）等の樹脂であってもよい。第１板材１は、図５に示すように、例えば主平面１ａに開口する接合孔４が穿設される。

【0028】

第２板材２は、第１板材１と接合するための板材である。第１板材１と同様に例えば無垢材、合板、集成材、ＭＤＦ（Medium density fiberboard）、又はパーチクルボード等の木材であってもよい。また、第２板材２は、例えば鋼板やステンレス等の金属であってもよい。また、第２板材２は、例えばアクリル系、ウレタン系、又はＦＲＰ（Fiber Reinforced Plastics）等の樹脂であってもよい。第２板材２は、第１板材１と同様な素材、形状又は大きさのものを用いてもよいが、この限りではない。第２板材２は、図６に示すように、例えば端面２ｂから足部５が突出される。第２板材２は、接合孔４が穿設される代わりに、足部５が突出される点で第１板材１と異なるが、第２板材２に接合孔４が穿設され、第１板材１に足部５が突出されてもよい。また、第１板材１及び第２板材２に接合孔４及び足部５がそれぞれ１以上設けられてもよい。

【0029】

足部５は、例えば図７（ａ）に示すように、端面２ｂから突出するくびれ部５１と、くびれ部５１より第２板材２の厚さ方向ｘに拡幅された係合凸部５２とが形成される。また、図７（ｂ）は、第２板材２の端面２ｂ側の図である。

【0030】

係合凸部５２は、図示しない被接合部材６へ挿入され、足部５が第１板材１に係止されるために足部５の先端に設けられる。例えば図７（ａ）に示すように、先端面５２ａが丸みを帯びた形状であることが好ましいが、この限りではなく、くびれ部５１より第２板材２の厚さ方向ｘに拡幅された形状を有するものであればよい。また、くびれ部５１と係合凸部５２の境界部５２ｂは、厚さ方向ｘと平行な平面となっていてもよい。

【0031】

接合孔４は、例えば図８（ａ）に示すように、主平面１ａに開口してなると共に長さ方向ｙに向けて延長するように穿設される。接合孔４は、一端面のみを貫通させたり、両端面を貫通さなかったりして実施してもよい。接合孔４は、例えば主平面１ａの長さ方向ｙの端面１ｂまで延長して穿設されてもよい。また、接合孔４は、上述したように端面１ｂまで延長されない場合、端部４０が設けられてもよい。また、端部４０は、接合孔４を開けるための孔開具の単なる機能上で設けられたものであり、無くてもよい。

【0032】

接合孔４は、図示しない被接合部材６が長さ方向ｙに沿って嵌合されるように形成される。また、接合孔４は、長さ方向ｙに沿って嵌合された被接合部材６が、長さ方向ｙに挿通可能であってもよい。接合孔４は、例えば図８（ｂ）に示すように、主平面１ａに開口された開口部４１と、開口部４１の内部に、開口部４１より厚さ方向ｘに拡幅された係合凹部４２が設けられてもよい。

【0033】

開口部４１は、例えば厚さ方向ｘの幅が、足部５よりも大きく、被接合部材６の幅よりも小さな幅を有する。開口部４１は、主平面１ａから図示しない足部５が挿通可能であり、主平面１ａから図示しない被接合部材６を挿通できない構造である。

【0034】

係合凹部４２は、例えば図８（ｂ）に示すように、係合凹部４２は、厚さ方向ｘの幅が、図示しない足部５及び被接合部材６よりも大きな幅を有する。係合凹部４２は、嵌合された被接合部材６の長さ方向ｙに挿通可能な構造である。また、係合凹部４２は、被接合部材６が嵌合されたとき、被接合部材６の側面６２と係合凹部４２の側面４２ａとが離間するように形成されてもよい。

【0035】

被接合部材６は、例えば図９（ａ）に示すように、断面略Ｃ字型であると共に接合孔４に嵌合される弾性可能な金属部材、樹脂部材、又はその他の材料からなるものである。また、被接合部材６は、図９（ｂ）に示すように上述した断面略Ｃ字型の両端が互いに内側に向けて折り曲げられる係止部６１が設けられる。被接合部材６は、上述した断面略Ｃ字型の側面６２が、断面略Ｃ字型の外側の方向ｆに弾性変形可能である。また、被接合部材６は、断面略Ｃ字型の角部６１ａと６２ａとが湾曲していてもよい。

【0036】

係止部６１は、例えば断面略Ｃ字型において、互いの幅ｄが係合凸部５２より小さく、くびれ部５１より大きくなるように形成されてもよい。また、係止部６１は、側面６２の弾性変形に伴い、互いの幅ｄが係合凸部５２より大きくなるように形成される。また、係止部６１は、断面略Ｃ字型において、側面６２との角度θが９０度より小さくなるように湾曲し、形成されてもよい。

【0037】

止め具９は、接合孔４の端部４０に嵌合される。止め具９は、図１０に示すように、端部嵌合部９１と、底面９２とを備える。なお、止め具９には、樹脂製のものが使用されているが、これに限定されず、例えば金属製やその他の材料からなるものを使用してもよい。

【0038】

端部嵌合部９１は、図１１（ａ）に示すように、接合孔４の端部４０に主平面１ａから挿入され、端部４０と接合されるように形成される。

【0039】

底面９２は、止め具９が接合孔４の端部４０に嵌合されることで、図１１（ｂ）に示すように、例えば足部５の長さ方向ｙに当接し、足部５を長さ方向ｙに係止するように形成される。

【0040】

〈板材の接合方法〉
次に、上述した板材の接合構造の接合方法を説明する。接合方法は、図１２（ａ）に示すように、被接合部材６を接合孔４に挿入する挿入ステップＳ１０と、図１２（ｂ）に示すように、接合孔４に足部５を押し込むことにより、挿入ステップＳ１０により挿入された被接合部材６に足部５を挿入する押し込みステップＳ１１とを実行することにより接合する。

【0041】

まず、挿入ステップＳ１０において、図１２（ａ）に示すように、被接合部材６を接合孔４に挿入する。このとき、例えば接合孔４が主平面１ａの長さ方向ｙの端面１ｂまで延長して穿設されている場合、端面１ｂから被接合部材６を挿入してもよい。かかる場合、端面１ｂから挿入した被接合部材６を、長さ方向ｙに押し込むことにより、被接合部材６を接合孔４に挿入する。また、接合孔４を穿設した際に、予め接合孔４に被接合部材６を嵌合しておいてもよい。

【0042】

次に、押し込みステップＳ１１において、図１２（ｂ）に示すように、接合孔４に足部５及び係合凸部５２を主平面１ａの面直方向の下向きに押し込むことにより、挿入ステップＳ１０により挿入された被接合部材６に係合凸部５２を挿入させる。

【0043】

図１３（ａ）は、被接合部材６に足部５を挿入する前の断面の一例を示す図である。図１３（ｂ）は、被接合部材６に足部５を挿入中の断面の一例を示す図である。図１３（ｃ）は、被接合部材６に足部５を挿入後の断面の一例を示す図である。

【0044】

押し込みステップＳ１１において、係合凸部５２の先端面５２ａが丸みを帯びた形状である場合、接合孔４に足部５を押し込むことにより、図１３（ｂ）に示すように、係止部６１に断面略Ｃ字型の外側の方向ｆに力が働く。このため、被接合部材６に足部５を挿入させることが容易となり、作業者の負担を減らすことができる。また、押し込みステップＳ１１において、図１３（ｂ）に示すように、係止部６１が、断面略Ｃ字型において、側面６２との角度が９０°より小さくなるように湾曲し、形成されている場合、接合孔４に足部５を押し込むことにより、係止部６１に断面略Ｃ字型の外側の方向ｆに力が働く。このため、被接合部材６に足部５を挿入させることが容易となり、作業者の負担を減らすことができる。また、このとき、図１３（ｃ）に示すように、係止部６１がくびれ部５１を挟持することにより、係合凸部５２を係止することにより、第１板材１と第２板材２との接合構造の強度を向上させることができる。すなわち、係合凸部５２が、係合凹部４２に嵌合しやすく、係止部６１はその復元力で略元の位置に戻るので、抜けにくい構成とすることができる。また、くびれ部５１と係合凸部５２の境界部５２ｂが、厚さ方向ｘと平行な平面となっている場合、係止部６１が境界部５２ｂを係止することにより、係合凸部５２に引き抜きにくくなることにより、第１板材１と第２板材２との接合構造の強度を向上させることができる。

【0045】

また、押し込みステップＳ１１において、図１３（ｂ）のように被接合部材６の側面６２と係合凹部４２の側面４２ａとが離間するように形成される場合、側面６２が断面略Ｃ字型の外側に弾性変形したときに、側面６２と側面４２ａが接触せずに干渉しない。このため、足部５と被接合部材６との軸５３がずれないため、被接合部材６に足部５を挿入させることが容易となり、作業者の負担を減らすことができる。

【0046】

上述した各ステップを実行することで、板材の接合が完了する。これにより、接着剤を必要とせず、外観が損なわず、低コストで、且つ作業者に負担をかけずに板材を接合させることができる。

【0047】

〈キャビネットの組み立て方法〉
上述した構造のキャビネット１００の組み立て方法について説明する。以下において説明する組み立て手順は、第１側板１１に対して背板１２と、底板１３と、手前側間口材１４、第２側板１５とをそれぞれ接合する。更に背板１２、底板１３、及び手前側間口材１４に対して第２側板１５を接合する。但し。この組み立て手順は一例であり、他のいかなる組み立て手順に基づいてキャビネット１００を組み立てるようにしてもよい。

【0048】

かかる組み立て手順では、キャビネット１００は、図１４（ａ）に示すように、上述した接合方法により、第１側板１１の主平面１ａの接合孔４に背板１２の足部５を接合する背板接合ステップＳ１００と、図１４（ｂ）に示すように、上述した接合方法により、第１側板１１の接合孔４に底板１３の足部５を接合する底板接合ステップＳ１１０と、図１５（ａ）に示すように、上述した接合方法により、第１側板１１の接合孔４に手前側間口材１４の足部５を接合する間口材接合ステップＳ１２０と、図１５（ｂ）に示すように、背板接合ステップＳ１００、底板接合ステップＳ１１０、及び間口材接合ステップＳ１２０において第１側板１１と接合した、背板１２と底板１３と手前側間口材１４との足部５に、第２側板１５の接合孔４をそれぞれ接合する側板接合ステップＳ１３０とを実行することによって組み立てられる。

【0049】

先ず、背板接合ステップＳ１００において、図１４（ａ）に示すように、上述した接合方法により、第１側板１１の接合孔４に背板１２の足部５を接合する。このとき、接合孔４の端部４０に止め具９を設けてもよい。これにより、背板１２を接合孔４の長さ方向に係止することができるため、板材を所定の位置に固定することができる。

【0050】

次に、底板接合ステップＳ１１０において、図１４（ｂ）に示すように、上述した接合方法により、第１側板１１の接合孔４に底板１３の足部５を接合する。

【0051】

次に、間口材接合ステップＳ１２０において、図１５（ａ）に示すように、上述した接合方法により、第１側板１１の接合孔４に手前側間口材１４の足部５を接合する。また、背板接合ステップＳ１００、底板接合ステップＳ１１０、及び間口材接合ステップＳ１２０は順序を問わず、何れから先に実行してもよい。

【0052】

次に、側板接合ステップＳ１３０において、図１５（ｂ）に示すように、背板接合ステップＳ１００、底板接合ステップＳ１１０、及び間口材接合ステップＳ１２０において第１側板１１と接合した、背板１２と底板１３と手前側間口材１４の足部５に、第２側板１５の接合孔４をそれぞれ接合する。

【0053】

上述した各ステップを実行することで、キャビネット１００の組み立てが完了する。また、必要に応じて、その他の板材をそれぞれ接合させてもよい。これにより、接着剤を必要とせず、外観が損なわず、低コストで、且つ特別な道具を要することなく容易に作業が可能であるため、作業者に負担をかけずにキャビネット１００を組み立てることが可能となる。

【0054】

また、これらの第１側板１１と、背板１２と、底板１３と、手前側間口材１４と、第２側板１５とを予め作成しておき、作業現場に輸送し、作業現場で組み立てることで、作業時間を短縮することが可能となり、輸送の際にもかさばることなく、容易に輸送ができるため、コストを削減することができる。また、かかる場合、キャビネット１００の組み立ての時に、工具を使用することなく組み立てることが可能であるため、作業者の負担を減らすことができる。

【0055】

［第２実施形態］
次に、図１６を用いて、本発明の実施形態２に係るキャビネット１００について説明する。図１６は、実施形態２に係るキャビネット１００を示す斜視図である。上述の第１実施形態に係るキャビネット１００と相違する点は、主に、吊戸棚であることなので、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。

【0056】

この実施形態２に係るキャビネット１００は、図１６に示すように、壁３００、床４００、天井５００、壁６００を有するキッチン等の部屋７００の壁３００の表面に吊られるように設けられた吊戸棚である。

【0057】

このキャビネット１００は、背板１１０、第１側板１２０、天板１３０、底板１４０、第２側板１５０と、のそれぞれを接合することで構成されている。このキャビネット１００では、それぞれの板材が接合構造１０により接合されていてもよいが、この限りではない。このキャビネット１００は、例えば背板１１０、第１側板１２０、及び第２側板１５０が底板１４０と、それぞれ接合構造１０により接合され、残る接合は、不図示の接着剤を必要としない他の接合構造によって接合されている。

【0058】

本発明の実施形態２に係るキャビネット１００によれば、背板１１０、第１側板１２０、及び第２側板１５０が底板１４０と、それぞれ上記した接合構造１０により接合されているので、特に背板１１０、第１側板１２０、及び第２側板１５０の鉛直方向のそれぞれの荷重により、接合構造１０の強度がより向上された吊戸棚であるキャビネット１００を提供することができる。また、本発明の実施形態２に係るキャビネット１００によれば、背板１１０、第１側板１２０、底板１４０、及び第２側板１５０は類似した形状及び大きさの板材であり、引出し等のかさばる付属部品が少ない。このため、輸送コストを下げることができ、組み立て現場での組み立てに特に適している。

【0059】

本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

【符号の説明】

【0060】

１ 第１板材
１ａ 主平面
１ｂ 端面
２ 第２板材
２ｂ 端面
４ 接合孔
４０ 端部
４１ 開口部
４２ 係合凹部
４２ａ 側面
４２ｂ 隙間
５ 足部
５１ くびれ部
５２ 係合凸部
５２ａ 先端面
５２ｂ 境界部
５３ 軸
６ 被接合部材
６１ 係止部
６１ａ 角部
６２ 側面
６２ａ 角部
９ 止め具
１０ 接合構造
１１ 第１側板
１２ 背板
１３ 底板
１４ 手前側間口材
１５ 第２側板
９１ 端部嵌合部
９２ 底面
１００ キャビネット
１１０ 背板
１２０ 第１側板
１３０ 天板
１４０ 底板
１５０ 第２側板
２００ 第一パネル
２０１ 第二接合孔
２０２ 第一接合孔
２０３ 結合部材
２０４ 係止部材
２０５ 係止用分岐孔
２０６ 第二パネル
３００ 壁
４００ 床
５００ 天井
６００ 壁
７００ 部屋
Ｓ１０ 挿入ステップ
Ｓ１１ 押し込みステップ
Ｓ１００ 背板接合ステップ
Ｓ１１０ 底板接合ステップ
Ｓ１２０ 間口材接合ステップ
Ｓ１３０ 側板接合ステップ

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】