(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135715
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】寸法検査システムおよび寸法検査方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/02 20060101AFI20220908BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220908BHJP
【FI】
G01B11/02 H
G06T7/00 610Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035685
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓五
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA17
2F065AA22
2F065AA23
2F065BB12
2F065BB28
2F065CC14
2F065DD03
2F065DD06
2F065EE00
2F065FF04
2F065FF61
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ31
2F065SS13
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA21
5L096DA01
5L096EA26
5L096FA26
5L096FA60
5L096FA62
5L096FA64
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】検査対象を斜めから撮影しても、後の管理時において設計図面との比較を容易に行うことができるとともに、検査対象の寸法を精度よく取得することができる寸法検査システムおよび寸法検査方法を提供する。
【解決手段】画像を取得する撮像手段14と、取得した画像を画像処理して、画像内の寸法計測装置12の標尺本体に相当する領域とマーカーを抽出する抽出手段16と、抽出した標尺本体に相当する領域に基づいて、標尺本体の長尺方向と幅方向を検出するとともに、抽出したマーカーに基づいて、マーカーに対応する目盛りの位置を検出する検出手段18と、検出した標尺本体の長尺方向、幅方向、マーカーに対応する目盛りの位置、寸法計測装置12の出力部により出力される寸法情報に基づいて、画像を検査対象に正対した正射投影画像に変換する変換手段20と、出力する出力手段22とを備えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の寸法を検査するシステムであって、
目盛りを有する長尺の標尺本体と、標尺本体の長尺方向に沿ってスライド移動可能であるとともにスライド移動した位置で標尺本体に固定可能な複数のマーカーと、標尺本体におけるマーカーの位置を寸法情報として計測する計測部と、計測した値を出力する出力部とを有する寸法計測装置と、
寸法計測装置を含んだ検査対象を撮影して、画像を取得する撮像手段と、
取得した画像を画像処理して、画像内の寸法計測装置の標尺本体に相当する領域とマーカーを抽出する抽出手段と、
抽出した標尺本体に相当する領域に基づいて、標尺本体の長尺方向と幅方向を検出するとともに、抽出したマーカーに基づいて、マーカーに対応する目盛りの位置を検出する検出手段と、
検出した標尺本体の長尺方向、幅方向、マーカーに対応する目盛りの位置、寸法計測装置の出力部により出力される寸法情報に基づいて、画像を検査対象に正対した正射投影画像に変換する変換手段と、
変換した正射投影画像を出力する出力手段とを備えることを特徴とする寸法検査システム。
【請求項2】
検査対象の寸法を検査する方法であって、
目盛りを有する長尺の標尺本体と、標尺本体の長尺方向に沿ってスライド移動可能であるとともにスライド移動した位置で標尺本体に固定可能な複数のマーカーと、標尺本体におけるマーカーの位置を寸法情報として計測する計測部と、計測した値を出力する出力部とを有する寸法計測装置を含んだ検査対象を撮影して、画像を取得する撮像ステップと、
取得した画像を画像処理して、画像内の寸法計測装置の標尺本体に相当する領域とマーカーを抽出する抽出ステップと、
抽出した標尺本体に相当する領域に基づいて、標尺本体の長尺方向と幅方向を検出するとともに、抽出したマーカーに基づいて、マーカーに対応する目盛りの位置を検出する検出ステップと、
検出した標尺本体の長尺方向、幅方向、マーカーに対応する目盛りの位置、寸法計測装置の出力部により出力される寸法情報に基づいて、画像を検査対象に正対した正射投影画像に変換する変換ステップと、
変換した正射投影画像を出力する出力ステップとを備えることを特徴とする寸法検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法検査システムおよび寸法検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設工事の施工管理項目の一つとして、出来形等の寸法管理が知られている。寸法の管理は通常、施工者、現場監督、設計監理者らが各施工段階において寸法を現地で検査・確認することによって行われている。その検査・確認の様子は写真に撮影され、後の管理に活用される。
【0003】
図6は、その際に撮影された写真の一例を示したものである。これらの図に示すように、寸法管理の際に撮影される写真は、検査対象の構造物の寸法や形状がわかるように、目盛りの付いた標尺を添えて撮影されるのが通常である。
【0004】
一方、寸法管理用の標尺に関して、本特許出願人は特許文献1に記載の寸法計測装置を既に提案している。この特許文献1の寸法計測装置は、長尺の標尺本体と、標尺本体に設けられ、標尺本体の長尺方向に沿ってスライド移動可能であるとともにスライド移動した位置で標尺本体に固定可能な複数のマーカーと、標尺本体に設定した基準位置からマーカーまでの距離または各マーカー間の距離を計測する計測手段と、計測した距離を記録する記録手段とを備えるものである。この装置によれば、従来のように標尺本体を例えば配筋箇所に配置した後、マーカーを鉄筋の位置に合わせるだけで基準位置からマーカーまでの距離または各マーカー間の距離を記録することができる。このため、例えば配筋ピッチや鉄筋の径などの寸法を容易に計測することができるとともに、配筋ピッチ等の複数区間の寸法を一度に計測することができ、配筋検査などの寸法検査の手間を軽減することができる。
【0005】
他方、従来の画像処理技術として、斜めから撮影した写真の画像を正対した画像に補正する技術が知られている(例えば、特許文献2および3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-112513号公報
【特許文献2】特開2017-34576号公報
【特許文献3】特開2019-56961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の寸法管理は、検査対象を撮影した写真から読み取った寸法と、設計図面に示された設計寸法とを比較することによって行われる。設計図面は通常、正面図、平面図、側面図などの正投影図で構成される。したがって、使用する写真は、検査対象(被写体)を斜めから撮影した写真よりも、正対して撮影した写真の方が設計図面と比較を行い易いので好ましい。しかし、実際の写真撮影では、検査対象に対して正対して撮影することは稀であり、通常は斜めからの撮影になることが多い。
【0008】
斜めからの撮影写真を使用すると、設計図面との比較がしづらくなるという問題がある。また、寸法読み取り精度が低下するおそれがある。このため、検査対象を斜めから撮影しても、後の管理時において設計図面との比較を容易に行うことができるとともに、検査対象の寸法を精度よく取得することができる技術が求められていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、検査対象を斜めから撮影しても、後の管理時において設計図面との比較を容易に行うことができるとともに、検査対象の寸法を精度よく取得することができる寸法検査システムおよび寸法検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る寸法検査システムは、検査対象の寸法を検査するシステムであって、目盛りを有する長尺の標尺本体と、標尺本体の長尺方向に沿ってスライド移動可能であるとともにスライド移動した位置で標尺本体に固定可能な複数のマーカーと、標尺本体におけるマーカーの位置を寸法情報として計測する計測部と、計測した値を出力する出力部とを有する寸法計測装置と、寸法計測装置を含んだ検査対象を撮影して、画像を取得する撮像手段と、取得した画像を画像処理して、画像内の寸法計測装置の標尺本体に相当する領域とマーカーを抽出する抽出手段と、抽出した標尺本体に相当する領域に基づいて、標尺本体の長尺方向と幅方向を検出するとともに、抽出したマーカーに基づいて、マーカーに対応する目盛りの位置を検出する検出手段と、検出した標尺本体の長尺方向、幅方向、マーカーに対応する目盛りの位置、寸法計測装置の出力部により出力される寸法情報に基づいて、画像を検査対象に正対した正射投影画像に変換する変換手段と、変換した正射投影画像を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る寸法検査方法は、検査対象の寸法を検査する方法であって、目盛りを有する長尺の標尺本体と、標尺本体の長尺方向に沿ってスライド移動可能であるとともにスライド移動した位置で標尺本体に固定可能な複数のマーカーと、標尺本体におけるマーカーの位置を寸法情報として計測する計測部と、計測した値を出力する出力部とを有する寸法計測装置を含んだ検査対象を撮影して、画像を取得する撮像ステップと、取得した画像を画像処理して、画像内の寸法計測装置の標尺本体に相当する領域とマーカーを抽出する抽出ステップと、抽出した標尺本体に相当する領域に基づいて、標尺本体の長尺方向と幅方向を検出するとともに、抽出したマーカーに基づいて、マーカーに対応する目盛りの位置を検出する検出ステップと、検出した標尺本体の長尺方向、幅方向、マーカーに対応する目盛りの位置、寸法計測装置の出力部により出力される寸法情報に基づいて、画像を検査対象に正対した正射投影画像に変換する変換ステップと、変換した正射投影画像を出力する出力ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る寸法検査システムによれば、検査対象の寸法を検査するシステムであって、目盛りを有する長尺の標尺本体と、標尺本体の長尺方向に沿ってスライド移動可能であるとともにスライド移動した位置で標尺本体に固定可能な複数のマーカーと、標尺本体におけるマーカーの位置を寸法情報として計測する計測部と、計測した値を出力する出力部とを有する寸法計測装置と、寸法計測装置を含んだ検査対象を撮影して、画像を取得する撮像手段と、取得した画像を画像処理して、画像内の寸法計測装置の標尺本体に相当する領域とマーカーを抽出する抽出手段と、抽出した標尺本体に相当する領域に基づいて、標尺本体の長尺方向と幅方向を検出するとともに、抽出したマーカーに基づいて、マーカーに対応する目盛りの位置を検出する検出手段と、検出した標尺本体の長尺方向、幅方向、マーカーに対応する目盛りの位置、寸法計測装置の出力部により出力される寸法情報に基づいて、画像を検査対象に正対した正射投影画像に変換する変換手段と、変換した正射投影画像を出力する出力手段とを備えるので、検査対象を斜めから撮影しても、正射投影画像として出力される。したがって、後の管理時において設計図面との比較を容易に行うことができるとともに、検査対象の寸法を精度よく取得することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る寸法検査方法によれば、検査対象の寸法を検査する方法であって、目盛りを有する長尺の標尺本体と、標尺本体の長尺方向に沿ってスライド移動可能であるとともにスライド移動した位置で標尺本体に固定可能な複数のマーカーと、標尺本体におけるマーカーの位置を寸法情報として計測する計測部と、計測した値を出力する出力部とを有する寸法計測装置を含んだ検査対象を撮影して、画像を取得する撮像ステップと、取得した画像を画像処理して、画像内の寸法計測装置の標尺本体に相当する領域とマーカーを抽出する抽出ステップと、抽出した標尺本体に相当する領域に基づいて、標尺本体の長尺方向と幅方向を検出するとともに、抽出したマーカーに基づいて、マーカーに対応する目盛りの位置を検出する検出ステップと、検出した標尺本体の長尺方向、幅方向、マーカーに対応する目盛りの位置、寸法計測装置の出力部により出力される寸法情報に基づいて、画像を検査対象に正対した正射投影画像に変換する変換ステップと、変換した正射投影画像を出力する出力ステップとを備えるので、検査対象を斜めから撮影しても、正射投影画像として出力される。したがって、後の管理時において設計図面との比較を容易に行うことができるとともに、検査対象の寸法を精度よく取得することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る寸法検査システムの実施の形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態に係る寸法計測装置を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る寸法検査方法の実施の形態を示す概略フロー図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態に係る画像処理の説明図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態に係る歪み補正の説明図であり、(1)は補正前、(2)は補正後である。
【
図6】
図6は、従来の検査写真の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る寸法検査システムおよび寸法検査方法の実施の形態について、鉄筋の配筋検査に適用する場合を例にとり、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
(寸法検査システム)
まず、本実施の形態に係る寸法検査システムの構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る寸法検査システム10は、配筋箇所(検査対象)の寸法を検査するシステムであって、寸法計測装置12と、撮像手段14と、抽出手段16と、検出手段18と、変換手段20と、出力手段22とを備える。
【0017】
寸法計測装置12は、
図2に示すように、目盛り24を有する長尺矩形の標尺本体26と、標尺本体26の長手方向L(長尺方向)に沿ってスライド移動可能であるとともにスライド移動した位置で標尺本体26に固定可能な複数(図の例では3つ)のマーカー28と、標尺本体26におけるマーカー28の位置を寸法情報として計測する計測部30と、計測値を記録する記録部32と、計測値をデジタル数値で出力する出力部34とを有する。この寸法計測装置12には、例えば上記の特許文献1に記載の寸法計測装置を用いることができる。
【0018】
標尺本体26は、平坦な長尺矩形板で構成され、幅方向Bの幅Wは既知である。なお、標尺本体26の厚み部分については、抽出手段16による画像処理において邪魔とならないように処理(例えば、黒色の塗装処理)が施されている。マーカー28は、目盛り指示線を有する矩形状のものである。図の例では、マーカー28の目盛り指示線を鉄筋Sの位置に合わせてある。計測部30は、標尺本体26に設定した基準位置からマーカー28までの距離や各マーカー28間の距離を計測してもよい。
【0019】
この寸法計測装置12は、寸法検査システム10に備わる図示しないデータ入出力部にデータ送受信できるように無線方式またはケーブル等の有線方式で接続される。例えば、寸法計測装置12は、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信によってデータ入出力部に接続されてもよいし、WiFi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)によってデータ入出力部に接続されてもよい。なお、寸法計測装置12は、BluetoothやWiFi以外の無線方式でデータ入出力部と接続されてもよい。
【0020】
撮像手段14は、寸法計測装置12を含んだ配筋箇所を撮影して、画像を取得するものであり、例えばデジタルカメラで構成することができる。撮像手段14で取得された画像データは、撮影時のマーカー28の位置データ(寸法情報)とともに、寸法検査システム10に備わる図示しないデータ入出力部に出力される。
【0021】
抽出手段16は、取得した画像を画像処理して、画像内の寸法計測装置12の標尺本体26に相当する領域Aと、マーカー28の位置を抽出するものである。領域Aの抽出処理には、例えば、
図4(1)に示すように、標尺本体26の色とその領域の形状(細長い形状)を画像から認識することによって標尺本体26を抽出する周知の画像処理方法を適用することができる。マーカー28の位置の抽出処理には、例えば、抽出後の領域Aからマーカー28の色とその領域の形状(矩形状)を認識し、その部分を構成するピクセル(画素)の重心Gをマーカー28の位置として抽出する方法を適用することができる。マーカー28を斜めから撮影した場合、上記の重心Gと実際のマーカー28の中心は完全に一致しないとも考えられるが、各マーカー28は同じようなズレを持つと考えて処理する。なお、これらの抽出処理には、機械学習による手法を適用してもよい。
【0022】
検出手段18は、抽出した標尺本体26に相当する領域Aに基づいて、標尺本体26の長手方向Lと幅方向Bを検出する。また、検出手段18は、抽出したマーカー28の重心Gに基づいて、マーカー28に対応する目盛りの位置を検出する。これらの検出処理には、周知の検出処理方法を適用することができる。なお、検出した長手方向Lに対して垂直な方向を幅方向Bとして検出してもよいが、検出精度が低くなるおそれがある。そこで、例えば、
図4(2)に示すように、標尺本体26の表面に幅方向Bを示す模様(例えば目盛り線など)を入れておき、この模様を画像から抽出することで幅方向Bを検出してもよい。このようすれば、幅方向Bを精度よく検出することが可能である。標尺本体26の幅Wは、検出した幅方向Bに沿って検出することができる。
【0023】
変換手段20は、検出した標尺本体26の長手方向L、幅方向Bの幅W、マーカー28に対応する目盛りの位置、寸法計測装置12により計測したマーカー28の位置データ(寸法情報)に基づいて、斜めに歪んだ画像を配筋箇所に正対した正射投影画像に変換するものである。本実施の形態では、標尺本体26の長手方向Lに離れた少なくとも2つのマーカー28に対応する目盛りの位置と、これら各位置での幅方向Bの既知の幅Wの位置を結びつける射影変換行列を解く方法による変換を想定しているが、本発明はこれに限るものではない。例えば、変換前後の画像において両方の位置対応がとれる4点(例えば、領域Aの四隅など)を選定し、両方の各位置を結びつける射影変換行列を解く方法や、複比を用いた方法などを適用してもよい。
【0024】
出力手段22は、変換した正射投影画像を出力するものであり、例えば、モニターやプリンタなどにより構成することができる。
【0025】
上記の構成によれば、検査対象である配筋箇所を斜めから撮影しても、正射投影画像として出力される。したがって、後の管理時において設計図面との比較を容易に行うことができるとともに、配筋ピッチなどの寸法を精度よく取得することができる。
【0026】
(寸法検査方法)
次に、本実施の形態に係る寸法検査方法について説明する。
図3に示すように、本実施の形態に係る寸法検査方法では、まず、寸法計測装置12の標尺本体26を配筋箇所に配置した後、各マーカー28をスライドさせて鉄筋Sの位置に合わせる(ステップS1)。こうすることで、寸法計測装置12の計測部30がマーカー28の位置を計測する。これにより、配筋ピッチや鉄筋の径などの寸法を容易に計測することができる。また、配筋ピッチ等の複数区間の寸法を一度に計測することができる。
【0027】
次に、撮像手段14で標尺本体26(寸法計測装置12)を含んだ検査対象の領域を撮影して、画像を取得する(ステップS2:撮像ステップ)。ただし、標尺本体26は、それ自体の全景が画像内に映り込む必要はない。取得された画像データは、マーカー28の位置データとともに寸法検査システム10に備わる図示しないデータ入出力部に送られる。
【0028】
次に、抽出手段16は、図示しないデータ入出力部から画像を読み取り、読み取った画像処理して、画像内の寸法計測装置12の標尺本体26に相当する領域Aを抽出する。続いて、マーカー28の重心Gを抽出する(ステップS3:抽出ステップ)。
図4(1)に、抽出状況の一例を示す。
【0029】
なお、本実施の形態では、マーカー28が3つあるため、マーカー28と目盛りの値の対応がずれたり、あるいは一部のマーカー28のみが撮影されるなどの事態も考えられる。このような事態を避けるため、あらかじめユーザーに対処方法をいくつか提示しておき、そのうちから適当なものを選択してもらうなどの対応をとってもよい。また、各マーカー28の色を別々に設定しておき、画像内でのマーカー28の位置を抽出する際に、データ入出力部から読み取ったマーカー28の位置データとの照合を容易にしてもよい。
【0030】
次に、検出手段18は、抽出した標尺本体26に相当する領域Aに基づいて、標尺本体26の長手方向L(長尺方向)と幅方向Bの幅Wを検出する。さらに、抽出したマーカー28の位置に基づいて、マーカー28に対応する目盛りの位置を検出する(ステップS4:検出ステップ)。
図4(2)に、抽出状況の一例を示す。
【0031】
次に、変換手段20は、検出した標尺本体26の長手方向L、幅方向Bの幅W、マーカー28に対応する目盛りの位置、寸法計測装置12によるマーカー28の位置データ(寸法情報)に基づいて、画像を検査対象に正対した正射投影画像に変換する(ステップS5:変換ステップ)。
図5(1)は撮像手段14で取得した画像、(2)は変換手段20によって変換された正射投影画像である。
図5(1)に示すように、水平格子状に配置された鉄筋Sの上に寸法計測装置12が配置されている。
図5(2)に示すように、変換手段20による画像変換処理によって、斜めの画像歪みが補正されることがわかる。
【0032】
次に、出力手段22は、変換した正射投影画像を出力する(ステップS6:出力ステップ)。
【0033】
このように本実施の形態によれば、検査対象である配筋箇所を斜めから撮影しても、正射投影画像として出力される。したがって、後の管理時において設計図面との比較を容易に行うことができる。また、標尺本体26を配置した検査対象の近傍における寸法を精度よく取得することができる。これにより、施工管理の精度向上と、将来的な省人化に貢献することができる。
【0034】
なお、上記の実施の形態においては、寸法計測装置12を1台使用する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、寸法計測装置12を2台使える場合は、標尺本体26を互いに直角に配置し、撮影した画像から各標尺本体26の長手方向L、各マーカー28に対応する目盛りの位置を検出して、画像を正射投影画像に変換してもよい。このようすれば、画像の変換精度をより向上させることができる。
【0035】
以上説明したように、本発明に係る寸法検査システムによれば、検査対象の寸法を検査するシステムであって、目盛りを有する長尺の標尺本体と、標尺本体の長尺方向に沿ってスライド移動可能であるとともにスライド移動した位置で標尺本体に固定可能な複数のマーカーと、標尺本体におけるマーカーの位置を寸法情報として計測する計測部と、計測した値を出力する出力部とを有する寸法計測装置と、寸法計測装置を含んだ検査対象を撮影して、画像を取得する撮像手段と、取得した画像を画像処理して、画像内の寸法計測装置の標尺本体に相当する領域とマーカーを抽出する抽出手段と、抽出した標尺本体に相当する領域に基づいて、標尺本体の長尺方向と幅方向を検出するとともに、抽出したマーカーに基づいて、マーカーに対応する目盛りの位置を検出する検出手段と、検出した標尺本体の長尺方向、幅方向、マーカーに対応する目盛りの位置、寸法計測装置の出力部により出力される寸法情報に基づいて、画像を検査対象に正対した正射投影画像に変換する変換手段と、変換した正射投影画像を出力する出力手段とを備えるので、検査対象を斜めから撮影しても、正射投影画像として出力される。したがって、後の管理時において設計図面との比較を容易に行うことができるとともに、検査対象の寸法を精度よく取得することができる。
【0036】
また、本発明に係る寸法検査方法によれば、検査対象の寸法を検査する方法であって、目盛りを有する長尺の標尺本体と、標尺本体の長尺方向に沿ってスライド移動可能であるとともにスライド移動した位置で標尺本体に固定可能な複数のマーカーと、標尺本体におけるマーカーの位置を寸法情報として計測する計測部と、計測した値を出力する出力部とを有する寸法計測装置を含んだ検査対象を撮影して、画像を取得する撮像ステップと、取得した画像を画像処理して、画像内の寸法計測装置の標尺本体に相当する領域とマーカーを抽出する抽出ステップと、抽出した標尺本体に相当する領域に基づいて、標尺本体の長尺方向と幅方向を検出するとともに、抽出したマーカーに基づいて、マーカーに対応する目盛りの位置を検出する検出ステップと、検出した標尺本体の長尺方向、幅方向、マーカーに対応する目盛りの位置、寸法計測装置の出力部により出力される寸法情報に基づいて、画像を検査対象に正対した正射投影画像に変換する変換ステップと、変換した正射投影画像を出力する出力ステップとを備えるので、検査対象を斜めから撮影しても、正射投影画像として出力される。したがって、後の管理時において設計図面との比較を容易に行うことができるとともに、検査対象の寸法を精度よく取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係る寸法検査システムおよび寸法検査方法は、建設工事における寸法管理に有用であり、特に、撮影写真における寸法と設計図面の寸法との比較を容易に行うのに適している。
【符号の説明】
【0038】
10 寸法検査システム
12 寸法計測装置
14 撮像手段
16 抽出手段
18 検出手段
20 変換手段
22 出力手段
24 目盛り
26 標尺本体
28 マーカー
30 計測部
32 記録部
34 出力部
A 領域
B 幅方向
G 重心
L 長手方向(長尺方向)
S 鉄筋
W 幅